玄葉内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年8月30日

(平成23年8月30日(火) 11:11~11:46  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 本日は、菅内閣の総辞職ということで、最後の閣議がございました。
 菅総理からは、昨年6月に政権が発足をして、9月、そして今年1月に改造を行いました。この間、様々なご指摘を受けたけれども、社会保障と税の一体改革などにも道筋がついたし、地域主権なども確実に前進させることができたし、また、3月11日の東日本大震災以降の復旧についても、それぞれ全力で対応していただいて、感謝を申し上げたいという話がありました。
 私も、菅内閣が発足してから1年3カ月、2回改造があったわけでありますが、一貫して、政策調査会長と大臣を兼任する形で仕事をさせていただきました。
 本日は最後の会見になると思いますので、特に、幾つか申し上げたいと思います。
 1点目は、この1年3カ月を振り返ってみると、3月11日の東日本大震災が、私の人生観や価値観を変える、非常に大きい出来事だったと思います。人生の不条理というか、理不尽さというのが本当にあるということを、まざまざと感じさせる出来事でありました。
 ご存じのように、私の地元は福島です。私は防災ラインに入っていたわけではありませんけれども、精一杯、物資の補給を始め、原子炉対応も、自分のでき得ることを最大限に行ったという思いがあります。
 2点目は、補正予算等で、例えば、県が独自に復興基金をつくるときや先日の予備費の使用などは、主計局長、財務大臣とかけ合ったりしたわけであります。除染も含め、復旧、復興に全力を尽くしてきた思いがあります。
 それと関連しますけれども、1年3カ月の間に1回の本予算と3回の補正予算の編成を、政策調査会長、あるいは国家戦略担当大臣という立場でさせていただき、同時に「ねじれ」状況の中で、与野党交渉の最前線で汗をかかせていただきましたが、例えば、第一次補正予算を通すときの三党合意などにエネルギーを注いだという思いが、自分自身の中にあります。
 併せて税制についても、例えば、私の担当でもあった寄付税制などは、大幅に拡充されました。残念ながら、まだ実現していませんが、道筋はついたと思っているのが法人税で、財務大臣とかなり激しく渡り合いましたので、非常に印象深いです。
 3点目は、政策調査会機能の復活、新しい政策調査会機能をつくる試みです。政策調査会はない方がいいという国会議員は、今、民主党ではいないと思います。
 ただ同時に、大臣を兼務したことにより、閣僚として、予算委員会、内閣委員会、科学技術・イノベーション特別委員会に加え、この前は厚生労働委員会に出席するなど、物理的に大変でした。
 その上、「ねじれ」状況の中で与野党折衝があるので、政策調査会機能を強化する必要があると思いますが、これには2つの方法があると思います。1つは、政策決定の内閣一元化をあくまで維持するのであれば、大臣の職務を身軽にする、無任所大臣が最も適当だと思います。もう一つの方法は、やや自民党と近くなりますけれども、思い切って政策調査会を独立させて事前承認制にすることだと思います。ただ、自民党の場合は、手続が三重になっていますが、もう少し簡易な手続で事前承認制にするのも一つの方法かもしれません。簡易にすることで、今までの自民党政権時代の「スピーディーな意思決定がなかったのではないか」という反省を踏まえることが可能になるかもしれません。これは、新代表がお考えになることではないかと思いますが、相談を受けたら、様々なサジェスチョンはいたしたいと考えております。
 4点目は、経済連携で、昨年11月、包括的経済連携の基本方針を取りまとめたのは、印象的でありまして、皆さんから十二分に評価されていないかもしれませんが、バイの二国間の高いレベルの経済連携に踏み込んだのは、これまでになかったことであります。例えば、日豪でEPAをやろうなどという意思を、これまで日本国政府は持ったことがありませんでした。今回、党も含めてまとめることができたのは、私は今後にとっても非常に大きな成果ではないかと思っております。ただ、開国フォーラムも始まって、私自身も中心になって引っ張っていくつもりだったのですが、3月11日の東日本大震災があって、別にそれだけを理由にするつもりはありませんが、これからというときに中断したことが返す返すも残念なことでした。
 5点目は、社会保障と税の一体改革です。2010年代半ばと、やや抽象的な表現にはなりましたが、政府と党が一体となって成案を得ることができたこと、2つの大きな政党が足並みを揃えることができたことは、非常に大きな成果だと私自身は思っております。
 6点目は、エネルギー・環境会議です。原発事故を受けて、エネルギー政策の見直しについて、政調会長というよりは、国家戦略担当大臣として取りまとめをしてほしいということになりまして、「減原発」という方針を打ち出しました。同時に、当面の需給対策につきましては、特に来年夏の電力不足を起こさせない、しかも、電力料金の引き上げも起こさせないという大きな方針をつくったところでありまして、今、更なる具体化をしていて、必ず実現できるように、次の体制で、より具体化を期待したいと思っております。
 最後は、科学技術と宇宙であります。3月11日の東日本大震災を踏まえて、科学技術基本計画の見直しを行いました。そして、科学技術イノベーション戦略会議につきましては、科学技術顧問を1人置いて、その方が科学技術政策の司令塔役になっていただく方向性を打ち出しました。宇宙につきましても、準天頂衛星を、基本的には内閣府で開発、運用していく方向性を打ち出しました。先週、川端科学技術・イノベーション推進調査会長、樽床宇宙政策推進議連会長、そして、自民党の河村日本・宇宙議連副会長に直接お会いをして、確認をし、これから、それぞれの党内、政府内の調整に入るということで、一定程度レールが敷けたのではないかと考えております。
 以上、この1年3カ月、申し上げれば切りがありませんけれども、自分なりに、誠実に頑張ってきたつもりです。本日、ご出席の記者の皆さんにも大変お世話になりまして、この場をお借りして、厚く御礼を申し上げます。1年3カ月、本当にありがとうございました。お世話になりました。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)宇宙の関係で教えてください。内閣府で準天頂衛星を基本的に開発、運用するということは、宇宙庁を置くということなのでしょうか。
(答)そうではありません。準天頂衛星を予算化するためには、予算要求をする官庁が必要です。したがって、全省庁で利用する衛星でありますので、これは内閣府にしようと、この間、内々調整をしてきました。
 まだ、調整中でありますけれども、そういう方向で政治レベルから事務レベルに戻して、次の方にバトンタッチしようと考えております。
(問)準天頂衛星の数について随分もめてきましたけれども、これは7基ということなのでしょうか。
(答)そこは結論を出していません。
(問)そうしますと、どなたに引き継ぐにしても、内閣府にそれなりの体制をつくるということを、国の方針として出されますか。
(答)内閣府に一定の人員を整えることにはなるのですが、宇宙庁まではいきません。ただ、どの省庁もそうなのですが、実際のところは、専門家集団に運用はお任せをするということになります。今回もそういうことを前提にしていくことだと思います。
(問)では、その方針は、確実に引き継がれるということですか。
(答)基本的には、そういうことになると思います。
(問)科学技術イノベーション戦略会議の司令塔に関しては、1人顧問を置くことを、引き継がれるのですか。
(答)そういうことです。
 総合科学技術会議のような複数の方々にアドバイザリーになってもらうのは大事なことですが、責任者1人の体制が、私は望ましいと思います。
 例えば、イギリスなどは1人顧問であり、東日本大震災に際しては非常に的確な情報発信をあの原子炉の状況について行っていました。また、先般、アメリカの科学技術顧問がいらっしゃって、大変有意義な意見交換をしました。アメリカも専門家のトップを1人置いています。
 問題は、どういう方になっていただくかの人選だと思います。幅広い見識、そして人間性といったものを備えたトップでないと、ついてこないというところがありますので、最終的には人選が大事になると思います。
(問)先ほど、政策調査会の機能強化、改善について、玄葉大臣は、無任所の大臣が政策調査会長と兼務する、あるいは政策調査会を独立させて前進をするという2つの論点をおっしゃいました。党首代表選挙でも議論の一部になり、与党議員が政策決定に、よりかかわるという意味では、事前承認かなと思いましたが、玄葉大臣としては、どちらの方がベターだと思われますか。
(答)私は、選択肢をお示ししたいと思っておりまして、政権交代時に約束した一元化にこだわりたいのであれば、今の私の立場を、より改善する形がいいと思います。
 ただ、昨年の参議院選挙で「ねじれ」状況が生まれたわけです。そうすると、今回の私の動きをご覧になっていておわかりのとおり、事実上、党内の政策決定を行い、さらに、野党折衝を行うことを、見えないところで日々行うことになるわけです。
 一方で、国家戦略担当大臣、科学技術政策担当大臣、「新しい公共」担当大臣、宇宙開発担当大臣としての職務を行い、それぞれの委員会に出席し、特に、予算委員会では政策調査会長としても答弁をするという物理的な制約をどう考えるかではないかと思っておりまして、党を重視するのであれば、事前承認制にするしかないと思います。単なる提言機関というわけにはいかないと思います。
 また、三党協議なり、他党との協議で、物事が決まっていくことにならざるを得ないと思います。ただ、問題は、元々の原点は、スピーディーな意思決定をしたいということと、責任の所在は政府にあることを明確化したいということだったことからすると、ある意味、後退となってしまうことです。そこをどう判断するかだと思います。
 後退だろうが何だろうが、現実を踏まえて、「ねじれ」ですから、党でしっかりと決めてもらうのだと考えるのも、一つの考え方ではないかと思います。
(問)政策調査会の話が出たのでお伺いしますけれども、先ほど野田新代表が記者会見で、政策調査会長と閣僚の兼務は止めたほうがいいというようなことを述べられたのですが、それについてはどのようにお考えですか。
(答)私のこの間の大変さをご覧になっていたからではないかと思いますけれども、そうなると、先ほど申し上げた2つ目の案が浮上するのではないかと思います。事前承認制にして政策調査会を独立させて、かつ、できるだけ簡素なプロセスで意思決定をしていくことだと思います。
 これから、できるのであれば、三党協議なり野党協議を定期化、常態化するのは、私は一つの考え方ではないかと思います。
(問)民主党は野田新代表になりました。新しい体制について、野田新代表は、今日中に執行部の骨格は固めたいと記者会見でおっしゃっておりますけれども、現執行部でもある大臣として、どういった人事、政権運営を望まれますか。
(答)物事を前進させる政治にする、「どじょうの政治」と野田新代表はおっしゃいましたけれども、泥んこになっても前進させるということだと思います。
 そのためには、まず党内がまとまって、そして、野党と協調する体制が必要だろうと思いますので、党内がまとまりやすいことを考えていただきながら、人事をしていただけたらと、僭越ながら、そう思います。
(問)閣僚と政策調査会長の兼務の話ですけれども、これまで政策調査会長が閣内に入っていることで、党内の意見がより反映されやすいというメリットがあったと思うのですが、そういう一元化がなくなってしまうことで、メリットが失われることについては、どうお考えですか。
(答)すべて事前承認ということになると、問題はスピードだと思います。結局、手続が終わっていないからといって、なかなか政府で物事が決めにくくなる、決められないという状況が生まれる可能性はあると思います。特に、昨年12月24日に予算案を閣議決定できたのは、一元化の体制が極めてスムーズだったからだと思います。
 年が明けて、実際に「ねじれ」の中で法案を通す状況になって、いろいろな問題が浮上したと思っています。私が政策調査会長と大臣を兼任する立場を初めて体験したわけですが、もし、兼任がなくなったら、歴史上、私1人だけになるのかもしれませんけれども、長所と短所が両方あると思いますが、一元化の中では、一つの在り方だと思います。要は、責任の所在は政府にあると明確にして、かつスピーディーな意思決定ができるという意味では、一元化のメリットはあります。どちらに重きを置くかに尽きるのではないかと思います。
 もし、野田新代表がそうおっしゃったのであれば、「ねじれ」状況を、より重視したことだと思います。
(問)冒頭で、これまで取り組まれてきたことをおっしゃっておりましたけれども、振り返って、菅内閣全体として一番の功績、歴史的に評価されるべき点は、大臣からご覧になってどこにありますか。
 また、菅内閣が始まって、当初は非常に高い支持率がありましたけれども、特に、震災後は、支持率が低迷した状況にありました。どこにこうした原因があったのか、大臣はどうご覧になっていますか。
(答)成果については、結局、すべてが完結はしていないのですけれども、道筋はつけたという意味で3つあると思います。1つは経済連携、少なくともハイレベルEPAはやるということです。そして、社会保障と税の一体改革。あとは、直接私が担当しましたけれども、エネルギー・環境会議での一定の減原発方針。完結はまだしていませんけれども、大きな方向性、道筋はつけることができたと思います。
 支持率の話は、特に、尖閣漁船事件のときから下がり始めたということではないかと思います。3月11日の東日本大震災の危機管理もあったのかもしれません。
 もちろん、菅総理にはたくさんの長所がおありだと思いますし、1年3カ月、私は本当に御苦労さまでしたと申し上げたいと思いますし、感謝もしております。ただ、性格上、組織回しはあまり得手ではないので、そういうことも少し影響したのではないかと思います。
 ただ、3月11日の東日本大震災自体の対応は、特に、原子炉の対応は、多くの皆さんが批判するほど悪い対応ではなくて、ベターな対応をされたと思います。よく検証されたらいいと思っております。
 野田内閣がこれから発足をするわけですけれども、菅内閣のよかったところ、悪かったところをよく検証していただければと思います。悪かったところの一つは、テーマが拡散したところにあると思います。すごく大きなテーマで、間違いのないテーマを扱っているのですが、どうしても大きなテーマをたくさん扱い過ぎてしまっていました。優先順位をつけて、結果をしっかり残すという政治に、野田新内閣はなるべきだと思います。
 また、リーダーシップとフォロワーシップの両方が本当に必要だと感じていますので、私も含めて、全員がしっかりリーダーをフォローしていくことが大切だと思います。
(問)国家戦略担当大臣としてのお立場でお伺いしたいのですが、震災以降、国家戦略室でエネルギー・環境会議もやるなど、様々な重要案件が出てきました。ただ、国家戦略室は発足してから、大臣が代わるたびに役割が全く変わってきています。国家戦略室の在り様はどうあるべきとお考えですか。
 次に、今後、大臣はどういうお立場になられるかわかりませんが、ご自身が民間から有能な方々を何人かピックアップ、一本釣りされてこられたわけですけれども、そういう方々はどうされるのですか。
(答)鳩山政権のときは、国家戦略担当大臣は菅総理だったわけですが、菅総理と当時の古川担当副大臣が民間から人を連れてきたという経緯があり、ちょうど丸2年になります。
 国家戦略担当大臣はかなり替わりまして、短期間で菅総理、仙谷官房副長官、荒井大臣と代わり、私は1年いました。例えば、荒井大臣のときは、総理の直属スタッフ化、知恵袋でいいという発想になったわけですけれども、私のときに、直属スタッフはチームとして置きますが、各論をしっかり扱っていく、政府内の閣僚間調整もしていくという部署として、国家戦略室を使ったわけであります。新成長戦略、経済連携、エネルギー・環境会議もそうでありますし、農業もある意味そういうことだったと思います。
 これからの在り様という意味では、新代表、新総理が国家戦略室をどう考えていくのかが、重要なことだと思います。私が国家戦略担当大臣になったときには、当時、菅総理は初代の国家戦略担当大臣でありましたので、こういう使い方をしたいということをおっしゃっていました。それが、直属スタッフ化だったのですけれども、私と調整して、直属スタッフ化だけではいけないということで、各論をしっかり扱っていく、政府内の閣僚間調整もしていくという部署として使ったという経緯があります。
 まずは、野党と話し合って、国家戦略局をつくる法案をもう一度トライすべきだというのが一つです。それと、もう一つは、どういう各論をこれから扱っていくのか。基本的に今まで扱ってきた各論は扱うというのがあると思いますけれども、同時に、元々、民主党政権が発足したときの国家戦略室の在り方というのは、総論的な国家ビジョンをしっかりつくり上げ、そして、予算編成を主導するということをうたっていたわけです。その辺をどう考えるのか、既に国家戦略室の幹部と私とで話し合って引き継ぐため、こういう選択肢があるというものを作成しています。
 今までの各論は各論として基本的に扱いつつ、実はこの間も表に出しておりませんでしたけれども、国家ブランドの検討や、人口減少時代にどう対応するかなどという検討をずっとさせてきました。常に、国家ビジョンを考えている部署が政府の中にあることが、私は大事ではないかと考えておりまして、そういう意味で、より強化する方向にいくべきだと思っております。
 予算編成に関しては、基本方針とか、中期財政フレーム、財政運営戦略は、国家戦略室で扱っているわけです。例えば、予算編成の在り方は、国家戦略室で思い切って決めていくことがあってもいいと思います。先般も、政策調査会の会議で申し上げましたけれども、例えば、概算要求の在り方について、国家戦略室でも提言して、予算編成の閣僚委員会が丁々発止の議論をして分野ごとの削減率を決めるということを、国家戦略室が主導して行っていくことも一つの考え方ではないかと思いますし、そういう意味では、国家戦略室、あるいは将来の国家戦略局が行う守備範囲を決めた上で、人を集めることをした方がいいと思います。
 私は、一部の報道で、国家戦略室から民間の人が去っていくのは政権末期だからみたいな話をしていましたが、敢えて補強しないのは、守備範囲を新総理が決めた上で、その守備範囲、テーマに沿って、民間から人を集めてくることをやったほうがいいと私自身は考えておりましたので、敢えてこのような経緯になったわけです。
(問)野田執行部、あるいは野田政権で、大臣はどういう役割を果たすべきと、果たしていきたいとお考えでしょうか。一部報道では、1月の組閣のときもそうでしたけれども、官房長官という報道もありますが、その辺も踏まえてお願いします。
(答)フォロワーシップがこれからすごく大切になると思います。鳩山政権、菅政権のよくなかったところの一つは、フォロワーシップのなさだと思います。
 一人一人ができる限り黒子に徹してフォローアップするという姿勢が大切で、私もどんな立場になっても、1人の国会議員として、野田新総理を支えていくことに尽きるのではないかと思います。
 1年3カ月、大変お世話になりました。どうもありがとうございました。

(以上)