玄葉内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成22年8月10日

(平成22年8月10日(火) 11:17~11:37  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 本日の閣議の中で、日韓の関係において、つまりは日韓併合条約締結100年ということでの内閣総理大臣談話についてサインをいたしました。既に皆様のお手元に文書が配布をされているのではないかと思います。後程聞いていただけるでしょうから、その際に私の意見を申し上げたいというふうに思います。
 さらに、もう1つ大事な案件がありまして、本日は人事院勧告を受けての給与関係閣僚会議がございました。これについては、結論は引き続き検討ということになりました。年間給与に換算すると、マイナス1.5%という人事院勧告が出たわけでありますけれども、この勧告は、現下の厳しい経済社会情勢を反映したものと認識をしているところでございます。
 また、労働基本権が制約されている現行制度の下では、これまで基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢に立って対処をしてきているということを承知しておりますが、私からは、本日の給与関係閣僚会議におきましては、現下の経済社会情勢、そして国の財政状況を踏まえれば、国民の皆様の理解を得るためにも、公務員給与については厳しい姿勢で臨むべきであるということを申し上げたところでございます。
 いずれにせよ、本日は引き続き検討ということでありますけれども、更に関係の閣僚会議を開いて検討していくことになりますので、政府として国民の理解を得られる適正な結論が得られるように努力をしてまいりたいと考えています。
 私からは以上でございます。

2.質疑応答

(問) 日韓の併合100年の談話ですけれども、大臣は、これまで慎重な姿勢とおっしゃっていましたが、今回こういう談話に至ったことについて改めて受け止めをお聞かせください。
(答)この問題は、積極的かそうではないかと聞かれれば、積極的ではありません。ただ、これまでも賠償の問題、補償の問題、絶対これについては蒸し返されることがあってはならないということを何度も申し上げてきましたけれども、その点は担保されていると思いました。
 それと同時に、日韓関係が極めて大切な二国間関係になってきていると。それはなぜかといえば、特に東アジアの戦略環境を考えたときに、北朝鮮の問題、そして中国の海軍力の増強の問題というのがありますので、日韓関係、もっと申し上げれば日米韓のきずなを深めていく、また固めていくという作業は、戦略的にはとても大切なことだと思っております。そういう意味で、この歴史の節目に当たって、このことで更に日韓関係が大きく発展をするということであるならばということで、私もサインをさせていただいたということでございます。
 併せて、閣僚懇の中で私から一言申し上げたのは、この種の総理大臣談話というのは、政府の責任において出されるものであると思っています。さはさりながら、私は政調会長という立場で閣僚を兼務しております。与党の中には、また民主党の中は様々な意見があります。やはりかなり早い段階で、つまりは準備の早い段階で政調会長により詳細な相談があってしかるべきではなかったのかと思います。固まってから持ってきてもらっても、こちらとして注文がつけにくい。それは、皆さん御想像のとおり、すべての段取りができ上がって、相手がある中で、固まってからどうしよう、このように言われても、大きな変更はできないわけでありまして、そういう意味では、今回はサインをするけれども、今後にあってはやはりかなり早い段階で御相談いただきたいということを、あえて閣僚懇の中で仙谷官房長官、そして菅総理に申し上げたところでございます。
(問)その関連ですが、文化財を引き渡すことについて、戦後補償とは別でも、ある種の物納、返還ではないかという受け止めをして批判している人もいますが、これについてはどうお考えですか。
(答)儀軌の話でありますけれども、これについては、一言で申し上げれば、様々な注意を払ってお渡しをするという表現をされていると私は見ていまして、このことが日韓関係にとって大きな今後の進展のプラス材料になるというのであれば、それは許容範囲と考えるべきなのではないかと、私自身は考えております。
(問)他方、我々の取材では、事前の折衝で、日本側が想定している返還する量の4倍ぐらいの数を韓国側は返還を求めているのですけれども、元々文化財がどちらに所属するかは、極めて歴史認識と切って切れないものがあると思います。そうすると、よかれと思ってやっている文化財返還でも、また議論を呼んでしまう部分もあるのではないかと思うのでが、いかがですか。
(答)そこのところについて、正に冒頭、私が申し上げたような様々な懸念が起こらないということについて、二国間で相当程度折衝をしているということが前提で、私はサインをしたということでございます。
(問)2点伺いますけれども、日韓の談話について、大臣は日韓関係が大きく発展することであるならばということでサインをされたとおっしゃいましたけれども、どの部分をもって、この談話がその日韓の発展につながると確証を持たれたのかということをもう少し御説明いただきたい。2点目は、党内には反対意見もかなり強くありますけれども、今回の談話が今後の菅総理の政権運営に与える影響と代表選への影響をお聞かせください。
(答)冒頭の御質問については、やや繰り返しになるところもありますけれども、元々私が積極的かと言われれば積極的ではありません。ただ、さはさりながら、今の東アジアの情勢を考えたときには、日韓関係、特にこの間、北朝鮮による哨戒艦沈没事件もあり、かつ、これからやはり日本にとって様々な意味で難しいのは中国との向き合い方です。経済的にはもう大変なマーケットで、日中関係は、もちろん最も大事な二国間関係の一つでありますし、また同時に、日本にとっても最大のマーケットだと今後考えていいと思いますが、一方、安全保障上、また政治的には、中国との向き合い方は非常に難しい局面だと私自身は思っていまして、結局パワーバランスというのは、常に東アジア全体で考えておかないといけないということを考えれば、日韓関係というのは、いわば価値観の共有というのが少なくとも日中よりは間違いなくあるということです。
 しかも、今の李明博大統領の日本に対する思い入れ、もっと申し上げれば、鳩山前総理との個人的な関係の深さというものがあるということを、私自身は何度か聞かされてまいりましたので、そうであるならば、やはりここは日韓関係の結びつきを重視する。もう既に国民の皆様の中では、韓流スターとかたくさん出て、今までよりも非常に密接な感情を、韓国の方々に対して抱くようになってきているという環境の中で、安保戦略上も更にそういうことであれば、これはここまで準備をしてきたわけですから、ここで一つの節目にするというのは一つの考え方だろうということであります。
(問)代表選と政権運営への影響についてはいかがですか。
(答)これは全くわかりません。私なりに考えるところはありますが、コメントするのは適切ではないと思っています。
(問)消費税ですけれども、党内などの議論をいつから始めるかということですが、城島政調会長代理はそのプロジェクトチームを今月中に立ち上げたいとのことです。一方では、代表選後にすべきだという話もあるようですけれども、大臣のお考えはどうでしょうか。
(答)私自身、頭の中に、いわゆる税と社会保障のプロジェクトチームの人事構想というのはございますが、これは9月に代表選挙があって、誰がなろうと大きく人事があるわけで、そのこととの兼ね合いをどうするかということについて、近いうちに最終判断をしたいなと思っております。城島代理がテレビでおっしゃったように、8月末につくるというのも有力な一つの案だと思っていますが、最終的に人事との兼ね合いがあるので、やはりトップとの考え方のすり合わせなども時と場合によっては必要なのではないかと考えております。
(問) 人事面以外に、消費税の議論を急いでやることで代表選に与える影響とか、党内の亀裂が深まるのではないかと、そういう懸念はあるんでしょうか。
(答)いや、今の日本にとってやるべきことは、私はもう決まっていると思っていますので、何の迷いもありません。それはすなわち、まず名目経済成長3%を達成するために予算、税、規制、金融のすべてを集中する、そして、蓮舫大臣を中心に様々な無駄を排除する。併せて、消費税を含む税の抜本改革もしっかり議論をしながら、社会保障制度を維持し、機能を強化するために税の抜本改革をするということですから、その考え方は私は揺らぎようがないと思っていまして、それについて別に逃げる必要も全くありません。ですから、税と社会保障のプロジェクトチームについては、いずれにしても秋には立ち上がります。ただ、その人事見合いというのがあって最終判断を若干持ち越しているということでございます。
(問)8月15日の終戦の日に大臣が靖国神社に参拝される予定はあるかどうかということと、その理由についてお願いします。
(答)8月15日に靖国神社に私が閣僚として参拝するということはございません。戦没者追悼式には出席をさせていただきます。
(問)人事院勧告の話ですけれども、給与関係閣僚会議で玄葉大臣は、公務員給与は厳しい姿勢で臨むべきだとおっしゃったということですけれども、これの意味するところは、人事院勧告からより深掘りするべきだという意味でおっしゃったんでしょうか。
(答)結論から申し上げると、私の立場はそういう立場だということであります。
(問)それについて、ほかの閣僚の皆さんの意見は、どういう意見だったのでしょうか。
(答)総務大臣は人事院勧告尊重、そして財務大臣も基本的には尊重ですけれども、未だに地域間格差というものが生じている現実をどうするかということをおっしゃっていました。また、厚労大臣は、労働基本権の代償措置である限りは人事院勧告を尊重という言葉を使っていました。荒井経済財政担当担当大臣も基本的に尊重すべきであると。私だけが厳しい姿勢で臨むべきだということを申し上げているということでございます。
(問)先ほどの日韓併合の談話に戻りますけれども、閣議・閣僚懇の中で、総理、仙谷官房長官のほうからは、今回、なぜこの内容の談話にしたかという御説明というのはあったんでしょうか。あれば、どのような内容だったのかをお伺いします。
(答)結局総理からは、最後に、未来志向の日韓関係を築くために、今回は決断をしたというお話が一言ございました。私の若干の感想を申し上げれば、菅総理、仙谷官房長官、もっと申し上げれば鳩山前総理の1つの世代の宿題だと思っておられるのかなという想像をしているところでありまして、私たちのような次の世代のためにも、自分たちの世代ですべてを決着させておかなきゃいけないという思いが恐らくおありなのではないかと想像いたします。
(問)他の閣僚から、何か御意見とかは出たのでしょうか。
(答)原口大臣からは出ましたが、それは御自身に聞いていただければと思います。
(問)大臣が政調会長としてもう少し早い段階からちゃんとお話を欲しかったということを、仙谷官房長官と菅総理に言ったことに対しては、どのような御返答や反応があったんでしょうか。
(答)「はい」というだけだったような気がしますけど。「はい」とおっしゃったか、「わかりました」とおっしゃったか、そんな感じだったと思います。
(問)それは総理ですか。
(答)官房長官です。

(以上)