仙谷大臣記者会見要旨 平成22年6月1日

(平成22年6月1日(火) 8:34~8:54  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 閣議、閣僚懇の報告をまずいたします。
 私からの発言は、「パッケージ型インフラ海外展開の推進について」ということで、成長戦略として我々が考えてき、また、先般ベトナムへも行ったわけでありますけれども、アジアを中心に、そして北米もにらみながら環境、省エネ、安全・安心面で日本の持つ大変すぐれた技術、そして日本の金融資産として蓄積された金融面でのストック、これを有効に使う、廻すという観点で、これから大変競争の激しい分野ではありますけれども、「パッケージ型インフラ」という分野を大々的に海外に展開・提供していくということで体制をつくりたいと思いますので、各省庁の各大臣の横断的な取組について協力をお願いしたいということであります。
 一つは、内閣総理大臣を委員長に、国家戦略担当大臣を委員長代理として、国家戦略プロジェクト委員会を設置したいと。それから、その中で在外公館内にインフラプロジェクト専門官を指名して配置をしていただきたいと。さらに、ファイナンスが重要でありますからファイナンス機能の確保を含めて、JBIC、NEXI、JICA、JETROの機能・取組を強化して、情報収集、そして相手側に対する働きかけをできるだけ一元的に行うような体制をとってもらいたいと。また、JBICにつきましては、機動性、専門性、対外交渉力を強化する観点から、改めてその機能について検討をするということを閣僚懇談会で申し上げました。
 総理からも、東アジア共同体構想に関する今後の取りまとめとして、今日、資料が配られました。それから、先般の「アジアの未来」という、これは日経新聞でしょうか、国際交流のシンポジウムを催していただいたときのスピーチが配られまして、これから更に日本という国を開くための制度改革をやりたいので、その取組を是非推進してもらいたいと。新しい新成長戦略の実現にもそのことが大変有益であるという話をいただきました。スピード感を持って、各閣僚が実行に移していただきたいというお話がございました。
 それから、私のほうから、アスベスト訴訟の控訴について、昨夜の段階で、法務省に控訴手続をとるようにという指示をしたという報告と、今、政府相手の訴訟が私の知る限り件数で1万8,000件ぐらいあり、本省・法務省扱いが約2,000件弱ありますが、その中で政治的、社会的な対応が必要な訴訟があるのかどうなのか、その日程管理等を含めた進行管理が、各省の大臣官房でどのようになされているのか、なされていないのか、早急に調べて官房長官まで御報告いただきたいとお願いいたしました。
  以上です。

2.質疑応答

(問)その発言は閣僚懇談会の中でということでよろしいでしょうか。
(答)そうです。
(問)あと、JBICの機能を改めて検討するというのは、これはいわゆる独立も含めてという意味合いでしょうか。
(答)そこまで至るのかどうなのか。いずれにしても、JBICの資金調達と、更にはリスクのとり方、それから途上国、先進国問わず、ファイナンスがついていかないと話になりませんので、JBICの活動とその仕切り方みたいなものを議論をしなければいけないと思っていますし、それがひいては先ほど申し上げました国内に凍りついている金融資産、私の見方では個人金融資産1,400兆円のうち600兆円ぐらいが凍りついているんじゃないかというふうに見ておりますけれども、そのお金を有益かつ有効に育てる資本主義のために、世界経済としての実体経済の再構築のために使えないだろうかという観点でJBIC問題を整理・検討したいと思っております。
(問)国家戦略プロジェクト委員会の設置については、閣僚懇談会ではある程度了承されているということでよろしいですか。
(答)今日の報告で確認されたということでいいと思います。
(問)メンバーとしては、どういうメンバーになるんでしょうか。
(答)これは各インフラプロジェクト、あるいは成長戦略の対応に必要な大臣ということになりますが、実質上は副大臣が出てこられる場合もあり得るということになろうかと思います。
(問)民間は。
(答)民間はその下に委員会をつくるとか何とかという議論になるんだろうなと思います。それはやっぱり日本の場合、民間のほうがこの種のものは意外と情報をお持ちの場合がありますので、それが丁寧に集約されて、政府のオーソライズしたプロジェクトとして認定というか、位置付けられるのかどうなのかと、そういうことが重要ですから、民間にも幅広く、あるいは専門的な方々をお願いすると、現場にできるだけ近いところにいらっしゃる方にお願いすると、こういうことになろうかと思います。
(問)初会合は、いつごろを考えていらっしゃいますか。
(答)国会日程との関係もありますが、できるだけ早くと思っています。
(問)閣議の後にEPAの関係の関係閣僚会議があったようなんですけれども、その内容と今後の進め方、あと大臣は先週金曜日に韓国を訪問されていますけれども、日韓首脳会談などの今回の成果について、どういうふうに評価されているか。
(答)一般的に、日韓、日中韓、それから日本・EU、日本・ペルー、その他幅広く、先ほど申し上げた鳩山総理大臣の東アジア共同体構想の非常に重要な要素であるEPA、FTA戦略について、これから内閣でもう少し詰めた議論をして基本方針をつくらなければならないということが1点です。
 それから、日韓FTAについては、李明博大統領と鳩山総理の会談で、いよいよハイレベルに上げて再開できるかどうかという議論を詰めていこうという話になったようであります。
 従来、日韓のFTAの交渉が停止になった原因が農水産物の件だというふうに言われておったわけでありますが、私が先週向こうに行きまして、李相得さんや全経連の会長にお会いして詰めた話をさせてもらったんでありますが、そのときの感じも、実はもう韓国側の関心の焦点も、製造業・工業といいましょうか、もっと言えばエレクトロニクスと自動車関連ということになろうかと思いますが、これが日本であまり売れないで撤退したことを大変わだかまっているということで、焦点がちょっと非関税分野に移っているというのが率直な実情でございます。やっぱりこの停滞中の5年間で韓国の産業構造も、あるいは日本の産業構造も実はそこまで変わってきたということなんだろうなと。
 他方、中国の工業のこの5年間での台頭が一方であって、韓国の工業界もできれば有利な条件で立地をしたいという願望が大変あるようでありますが、ここはまた皆さん方も鉄鋼や自動車、あるいは遅からず電気製品の問題が日本マーケットでも、あるいは韓国マーケットでも、製品化されたものがどういうふうになってくるのかという大問題があります。それから、よく言われておりますように、垂直的な分業でなくて水平的な分業体制をとることが、アップルにしても、ヒューレット・パッカードといった会社にしても、台湾に組み立て部品工場がある、あるいは台湾でつくった部品をむしろ中国で組成させる、台湾と中国の合弁会社の中国における部品を組み合わせてつくると。その企画部門だけを握って、そこで収益をとっていくという時代に、そういうビジネスモデルの時代になってきている部分もあって、なかなか考え方が容易ではないと私も見ておりますが、これは日中韓の中で処理をしていかざるを得ないと。
 ただ、問題は、そういうインバランスと物の流れの問題だけではない、安全保障上、あるいはマーケットをできるだけ統合化することによって、安全保障面や社会面での国境の低い状態をつくり出すことが、東アジア全体の発展と成長につながるかどうか、日本から言えば、このアジアの成長を我が国の成長に取り込めるかどうかということになりましょうから、なかなか難しい判断がないわけじゃないんだけど、ここは鳩山内閣としては大胆に国を開いて、受け入れるものを受け入れ、出ていくべきものは出ていくと、こういう戦略で展開しようと思っておりますので、そういう観点から各省庁にこちらのほうも対応方をお願いをしておくということだと思います。
(問)何か基本方針のイメージとか、スケジュール感というのは。
(答)「国を開く」というのは一体全体どういうことなのかと。今度の成長戦略の中でも、例えば人の受け入れ、これは今日の大学間交流というようなことを鳩山総理もおっしゃいましたけれども、人を受け入れる、技術を受け入れる、あるいは日本での技術習得を行うというふうなこと等と絡めて、この辺については何となく日本人総体にまだまだ、受け入れた以上、ある程度中期的な滞在を認めて、その上で日本ファンになって帰ってもらうとかということが、もう一つ心理的に引っかかるものがあるみたいなところがありますから、ここは払拭していくということがなかなかできないと思います。それから、海外向けは、これはNHKさんも他の民放さんもいらっしゃるんで、やっぱりもうちょっと日本ファンになってくれるようなコンテンツを、どういうふうに特に東南アジアに提供していくのかというふうなことに、これは著作権の問題があってなかなかややこしいようでありますけれども、その辺は乗り越えた上での判断を民放連になるのかどうか知りませんが、していただいて、「日本のコンテンツは『クール・ジャパン』ですばらしい」なんて、この国の中だけで思い込んだり、百遍言ったところで、他の地でそう思われないと意味がないわけでありますから、そういう精神のありようから含めて、このグローバリゼーションの中でそのアクター、プレイヤーとして我々がどのように生きていくのかという観点が大事です。今度の成長戦略が出たら皆さん方の御批判、御意見をいただきたいんですが、その具体的な受け入れ方、展開の仕方については、二国間協定という問題ではEPA、FTAになってくる場合があると。そういうことが今、私の頭の中にある粗々の話であります。
(問)普天間問題などもあって、マニフェストや中期財政フレーム、成長戦略の進捗状況に当初の予定より遅れがあるんじゃないかという指摘もありますが、現状の進捗状況についての評価と、今後の段取りについてどのようにお考えか。
(答)極めて順調に進んでおります。皆さん方のそういう政局的憶測は全く不要であると思います。
(問)今の質問に関連なんですけれども、では、中期財政フレーム等は6月中に出るということに変わりはありませんか。
(答)はい。予定どおりです。
(問)参院民主党を中心に「鳩山総理では参院選は戦えない」という声が相当強まっていますけれども、大臣は鳩山首相で選挙を戦えるとお考えでしょうか。それと併せて「普天間問題で社民党の連立離脱を招いたのは首相の判断ミスだ」という声も上がっていますけれども、これについてはどのようにお考えですか。
(答)この種の議論が出てくるときに、私はやっぱり1989年の参院選、私自身は当時はまだ国会にポジションはなかったわけですけど、そのときのことを拳々服膺しなければいかんというか、だんだん思い出しますね。やっぱり歴史に学ぶことは必要だと思いますね。
(問)それに関連して、今日、鳩山総理と小沢幹事長が会談するんですけれども、先日、「政治的な体制づくり」ということを大臣も言われていましたが、まずどういう協議を期待されるかということと、もし総理が替わられるということであればダブル選挙ということも、前に言及されたこともあると思うんですが、それについての考えは変わりないですか。
(答)それは論理的にという話で僕は言っただけの話で、替わることは全く想定をいたしておりません。先ほど申し上げたように、替わることを全く想定なしに、私の守備範囲を粛々と予定どおりやろうというふうに思っているところでございます。

(以上)