仙谷大臣記者会見要旨 平成22年5月18日

(平成22年5月18日(火) 9:19~9:41  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 本日、閣議前にEPA・FTAに対する閣僚委員会が総理大臣出席のもとに開かれたことは御承知のとおりでございます。
 岡田外務大臣の韓国外相との会談の報告をいただきまして、総理が述べられているように、韓国、それからEU、インドとの交渉を精力的に進めていこうという話を閣僚委員会で一致をしたということでございます。
 なお、今日の閣僚委員会には、長妻厚生労働大臣、前原国土交通大臣も御参加をいただいております。
 長妻大臣の場合には、特にインドとの関係で、医療あるいは医薬品、医療機器が課題になっているそうでありまして、そのことについて、日本のいわば関税というよりも、国内的な審査のあり方等々の問題になるということで御参加をいただいたようでございます。
 それから、閣議でありますが、特殊会社の役員人事に関する当面の対応方針について、何かペーパーをお配りしてあるようでありますが、私のほうから閣議決定をお願いをして、更に閣議で発言をいたしました。これについては御質問があればお答えをいたしたいと存じます。
 それから、皆さん方が多少御注目されておるようでありますが、来年度の新規採用方針については、もう一歩のところまで来ておるんですが、もう少し細かく詰めなければいけない部分が若干残っておりますので、今日の閣議では決定に至らなかったということでございます。
 私のほうからは以上です。

2.質疑応答

(問)特殊会社の役員人事について閣議でどのような発言をされたのかということと、あと、それに対して総理とほかの閣僚から御発言があれば御紹介いただけますでしょうか。
(答)閣議の私の報告はペーパーのとおりです。
(問)それに対して総理やほかの閣僚から御発言はありましたでしょうか。
(答)官房長官が発言をされました。
 結局ですね、気持ちのレベルとしては、政権交代前の人事を全部ひっくり返したいという衝動はわからないわけではありません。それから、野党の皆さん方が、野党といってもみんなの党だけかな、実質は。要するに、天下り根絶みたいなことを言っていたんだから。当時我々が言っていたような、指定席ポストとして、何々省から何人、何々省から何人といっているような仕組みを全部ゼロにすべきだと。論理的にそれはもうまことにごもっともな話だと私も思います。
 ただ、現実的には、政府が100%であれ、30%であれ出資した、それなりの目的を持った会社ですから、そこのマネジメントなり、ガバナンスなり、経験なりがある機関でも、全く混乱して、頓挫しかけるというようなこともあってはならないことは間違いありません。
 それから、これまでの間つくづく思うのは、官民の壁がやっぱり日本はこんなに厚いんだなと。つまり、民間で大組織を経営していらっしゃる方々と政府のそういうポジションの方々と、今の時点でやっぱり処遇が2倍あるいは3倍近く違うんでしょうかね。そして、更にいろんな政府なり、内閣なりの方針が変わったときの地位の不安定さみたいなこともあったり、それから、ちょっと企業風土というか、企業文化がそうすぐになじめるような状況ではない。これはどっちがどっちかということは別にして、そんなことで、なかなか民間からの登用というのも、よほど準備をして、そういうつもりでお願いをしてスカウトするみたいなことがないと、変えるといってもなかなかそうはならない。
 今まで、こういうことを言っては何ですが、我々から見て失敗例というのも割と拝見しているものですから、これは1年の時間をかけて、それからこの4年間というか、残すところ大体3年間でありますが、鳩山内閣としてゼロにすると、天下り根絶という目標に向かってやるということで、今回は1年間の暫定期間ということでここに記載したような措置でいくということにさせてもらうことにしたというところです。
(問)確認なんですが、2分の1を3分の1にするというのが1年間の暫定期間で、ゆくゆくはそれをゼロにしたいという解釈でよろしいですか。
(答)そう考えてください。
(問)失敗例とおっしゃったんですけれども、大臣から見られた失敗例というのは具体的に何を指しているんでしょうか。郵政会社のことを指しているのでしょうか。あともう一つ、このペーパーの2の(2)のところで「官房長官に協議の上」とありまして、要は、郵政が失敗例であれば、内閣として全体できちんとオーソライズするような仕組みが今までなかったから、今回きちんと決めましょうという趣旨なんでしょうか。
(答)郵政のことは全く念頭にありません。実績の問題として、こういう言い方をすると、その担当した方々が傷つく可能性があるんですが、私のイメージでは、あまり成功じゃなかったなというのは社会保険庁と道路公団。ここは御両名、途中でやっぱり無理筋だということになったのか、それとも別の理由なのかわかりませんが、任務を全うすることなく、それから、与えられた目標に近づくことなくおやめになられたのかなという気持ちがあるものだから、企業風土の問題とか、あるいは処遇の問題とか、あるいは彼らの立場に立ってみれば、大変リスクが大きかったということで、同情というと語弊がありますけれども、御本人のためにもお気の毒なことをしたなという気は僕はします。
(問)関連して、公務員OBの役員の人数について、2分の1から3分の1にする理由のところで、「政府系金融機関の在り方」というふうに書いてあるんですけれども、そこのところをもうちょっと説明をいただけないでしょうか。
(答)官僚がどうのこうのという話以前に、日本政策金融公庫がなぜ統合したのか、あるいは統合後どうなっているのかというのは、内部におる人間ではないからすべてわかっているわけではないんですが、やっぱり政策金融公庫という傘があって、昔のままの国民生活金融公庫、あるいは農林漁業金融公庫、あるいは中小企業金融公庫というふうな分社化をしている。  一方では、よく申し上げているように、日本輸出入銀行もその傘の中に入って、全く性格が違うものが一緒になって、一つの金融機関としての有機体として、そのことによって選択と集中で無駄がなくなったり、非常に効率的になったのか、あるいは中長期的な投資とか、リスクをとった投資とか、そういうことになり得ているのかという観点から考えて、どうも旧態依然のような気がします。  その原因は、それぞれに各省出身者がちゃんと盤踞されておるということなんじゃないかなと思って僕は見ているんですね。国民にとっての金融機関に、それも政策金融をも行う金融機関になるためには、多分、政策金融論みたいなものをもう一遍議論し直さないとできない部分だろうと思います。  OBの方々に全部この際おやめいただいたところで、もうちょっと違う意味でのガバナンスが必要なんだろうなという気がします。  もう少し言えば、我々の人事情報を含めた管理能力というか、そういうこととも関係があるわけでありますが、国立高度医療専門センターのときも、私はガバナンス検討チームというのをつくって、ナショナルセンター特有のガバナンスがなければ、国民にとってラストリゾートというか、最終的な安心のできる先端医療の研究と、更にはその水準をもっての臨床ということができないと。できるようにするためにどうしたらいいのかということで検討チームをつくって、こういうガバナンスが必要だという提示をして、がんセンターだけはそのようにできておるのではないか、できつつあるのではないかと。現場からもそういう声が聞こえてきていますから。  他のところは、1年間の猶予期間を置いたようなやり方もしておることは御承知だと思います。その中で、自ら改革方針を出してほしいというふうなことを厚生労働大臣のほうからも言っておるはずでして、結局、そのレゾンデートルを改めて問うところから始めないといけません。前政権以前にある種の植民地経営として順繰り人事で入っていったという現実があり、元次官だからこういうポストだと、元局長だからこういうポストだというのをやめようというのは理屈としては正しいし、そうしたい、そうしようという方向性はあるんだけど、そして、もう少しプロパーの人にはつらつと活躍してほしいというコンセプトは立てておるんですが、そのために具体的にこうしたらいいのかというレゾンデートル論議と、具体的な人事として、どのような人をどこへお願いして持っていくのかが課題です。  さらには、企業で言えば取締役、執行役クラスだと思いますが、そのクラスをどういう構成にするのかというようなことまで、そこは政治が口を出さなくても、お任せできる人にお願いしないといかんわけですから、まだまだそこまでできる余裕もなければ、能力も若干不足しているということを率直に認めて、1年間時間を貸してほしいという趣旨です。
(問)参院選に向けたマニフェストの議論が詰めを迎えていると思うんですけれども、今までの中で、消費税を含む税制の抜本改革の書きぶりについて、いろいろ検討委員会の中でも議論があるようなんですが、改めて、大臣はどういうふうな書きぶりが望ましいというふうにお考えでしょうか。
(答)今日も明日も議論しますが、私はまとめる立場にありますから、今の段階でこうでないといかんということを言うと、報道を見てぎゃっと来る人が大分おりますので、そういうことを避けたいなと思っておるところでございます。ちょっとしばらくの間御勘弁いただきたいと思っております。
(問)関連で、昨日、小沢幹事長が会見で消費税の引き上げについて否定的な見解を示していますけれども、その辺はどのように今後調整して……。
(答)メディアの方々を間に挟んで何かやり合いをしているみたいなことを皆さん方が書いたら売れるのかどうか知らんけども、それが一番まずいと思うんですよ。  僕はだから、財政にせよ、税制にせよ、それは必要があるのであれば、今、筆頭副幹事長と細野副幹事長がその場に出てきてやっているわけで、更に必要があれば、政権公約会議という立派な会議をつくっているわけですから、そこで我々も議論をしますし、小沢幹事長にしてもそこで当然のことながら議論されると思いますよ。  小沢さんにしても、その種の間接情報を基に、皆さん方に聞かれるから、「いや、おれはこう思っている」というのは、それは全くそのとおりとしか言えないと思いますよ。腹を割って、現在の状況が当時マニフェストをつくったときの状況とどう違うのかと、何がどう違うのかということから始めないといかんわけでしょう。今年3月の決算が、つまり麻生内閣が組んだ予算の第二次補正まで組んだ予算の決算状況がまず財政を考える上では一つのポイントですよね。  当時からリーマンショックの影響がどう出てくるのかということは問題となっていましたが、昨年の秋のドバイショックが起こったときも、「しかし、ドバイショックって大したことないよね」というんで年を越えたんだけど、年を越えてからこのギリシャの有様ですから、根っこにあるものは何なのかと。国際金融、国際経済の問題として、我々がどうこれを認識するのか。一瞬にして伝わるような、それが伝わり方が投機的な短期間の振幅でおさまるのであればそれはいいのだけど、そういうものなのかどうなのかというのはやっぱり私がずっと言っていて、あまり確立した観点を、むしろ固定的な観点を持ってはいけないんじゃないかというふうな状況ですらあると。  3月末まではちょっと状況判断を見送らせてくれとこの場でも何回も言ったし、「年越えるまでは」とか、「3月までは」とか、ずっと言い続けてきて、3月末を過ぎたら、ギリシャの状況も悪化した。昨日も相当マーケットが荒れましたよね。特に上海マーケットと香港マーケットが荒れているというのは、日本の成長戦略にとって、あまり気持ちのいい話ではない。  そういうことも含めて、「だから」なのか、「しかし」なのかわかりませんが、どっちを考えるにしても、その辺の議論が、要するに昨年の春、マニフェストを確定していったときの状況とは相当違うんじゃないかということを感じています。それを踏まえて、現実的な路線を打ち出しつつ、我が党が持っておる「コンクリートから人へ」という産業構造の大転換、あるいは鳩山総理が常々言っておる「第三の開国」、そして、東アジアの中でウィン・ウィンの関係をつくって共に成長していくということを満たすようなマニフェストというのは何なのかと、こういう議論になるんだろうと思いますけどね。

(以上)