仙谷大臣記者会見要旨 平成22年5月11日

(平成22年5月11日(火) 9:40~10:03  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 閣議については、ほとんど報告することはございませんが、6カ月間の鳩山内閣の成果といいましょうか、補正予算の組み替えや行政刷新会議の事業仕分け等々から始まって、政治主導の政策運営をやってきたことについて、もう少しアピールをしてもいいんではないか、しようではないかという議論が相当出まして、6カ月の総括といいましょうか、それぞれの省で何をやっているかというようなことも含めて、中間的にちゃんと国民に説明していこうという話になりました。また、おいおいやっていきたいと思います。
 ギリシャ危機については、ユーロ圏内の混乱と矛盾というのが大変大きいわけで、昨日の段階で、これを防止する枠組み、手立てができました。このことについては、私ども歓迎をするということでありますが、問題はまだまだ伏在しているといいましょうか、根っこのところの大問題があるようでございますから、EUのほうで的確なある意味での構造改革を行っていただければと考えております。
 私の方からは以上です。
 御質問をどうぞ。

2.質疑応答

(問)今、御紹介のあった6カ月間の成果をアピールしようという話は、これは閣僚懇での話ということでよろしいですか。
(答)はい。
(問)あと、口火を切ったのはどなたが。
(答)官房長官からです。
(問)今の関連で、これは参議院選挙を前に、政権のアピールをしようという話なんでしょうか。
(答)こう言っちゃなんだけども、メディアでは割と政治とカネの問題と普天間の問題にスペースが割かれているような印象を受けるんで、鳩山内閣も歴史的な政権交代を行って、更にそのコンセプトというか、掲げてきた理念、旗印というものを粛々と実践、実行しているということをもう少し我々のほうからも説明しようということであります。
(問)それは、昨今の支持率の低下を踏まえたものなんでしょうか。
(答)いや、別にそれは関係なしに、我々がやってきたこと、やっていることをちゃんと説明しようということです。
(問)支持率低下についてですけれども、各社20%ぐらいになっていますけれども、それについての受け止めをいただけますか。
(答)皆さん方のニュースが、今、申し上げたように、実行していることよりも実行できていないことにスペースを割かれると、どうしても世の中の心理はそちらのほうへ動くということなんだろうと思います。
(問)確認ですが、取りまとめ役の閣僚とか、誰か御指名とかされたんでしょうか。
(答)内閣官房のほうで取りまとめているということです。
(問)ギリシャ問題なんですけれども、大臣は前も他人事ではないとおっしゃっていましたが、今回のギリシャ問題を受けて、日本が何を教訓にすべきか、どこを一番教訓とすべきだとお考えかをお聞かせください。
(答)ヨーロッパの実体経済がどういう方向に動いていくのか。ユーロ経済が、日本がこの間経験してきたような低金利、低成長という、失われた10年とか何とか言われているわけでありますけども、そういう方向に動いていくのか、それともそうじゃなくて、どこかで巡航速度に変える成長を果たすことができるのか。これが一つのポイントです。ヨーロッパの実体経済を支える、あるいは育てるような金融がこれから行われるのかどうなのか。それに対応するアジアの経済が、日本がこれから貢献しようと思っているインフラとか、システムを受け入れられるだけの余力を持ちつつ、成長していってくれるのか。この辺が実体経済との感覚では大変重要な点だと思います。
 今、実体経済の話を申し上げたのは、ヨーロッパ、アメリカとの関係で、アジアを挟んで日本の経常収支の黒字をどういうふうに維持し続けることができるか、あるいはし続けるのかという観点からです。従前からお話ししてきたように、日本の政府債務残高が世界一の水準を持っていることだけは間違いがございませんので、経常収支の赤黒とのバランスで国際的な金融マーケットの反応が相当出てくる可能性があると。ギリシャの問題を他山の石とすれば、緊張感と危機感を持って、財政の規律について考えていかなければならない。そういう観点からも、従前よりもはるかに強い危機感で中期財政フレームと財政運営戦略を考えていく必要があるんではないかという流れになると思います。
 ギリシャと比べたときに、日本のGDPは、全然比べものにならないぐらい大きいわけですね。もしものことがあったときに、他国とかIMFの手助けなんていうことは期待できないような大きさであるということもまた認識をしておかなければいけないんではないかということを、私はその課題の対応の一端を担う閣僚として、改めてひしひしと思います。
 経常収支については、ギリシャは全く厳しい状況ですから、そこは日本と決定的に違うと。ギリシャは、付加価値税の税率が21%ですが、財政規律の観点から23%に上げると。要するに、2%の引上げですが、財政健全化の方向性について、あるいは国債の償還可能性について、マーケットのほうは安心できるという反応をなかなか示し切れないというのが、今のギリシャ問題のもう一つの大きな要因です。
 もう一つは、ギリシャという国は軍事政権が終わったのが1974年のようですね。それまでは共産党と反共産党の戦いがずっと続いたというふうなこともあった。それから30年ぐらいたってオリンピックが開かれた。軍事クーデターの後に民主化されて、それで今のような状況になっていると、こんな歴史のようですね。公務員が30%ぐらいいらっしゃって、53歳で定年して、あとは割と高水準の年金で暮らしていけると。このことが、ドイツ国民からすれば、なぜ救済しなければいけないんだという声もあるようです。
 報道によると、9日にドイツのノルトファーレン州の地方選挙で、メルケル首相の与党が負けた。直ちに上院の議席に跳ね返るという選挙制度ですから、そのことによって、上院の与野党の議席数が逆転したというようなこともあったと。大きな貿易黒字を出しているのは、ドイツのほかは余りないんですね。あとは北欧の国とかルクセンブルグとか、そういう規模の割と小さい国で、救済する主軸になるとすればドイツだということのようですけども、そのドイツがそういうことになっているんです。
 ギリシャのほうから見ると、例のナチスの亡霊がまた出てきて、要するにさっき申し上げたギリシャの共産党対反共産党の戦後の30年ぐらいの戦いは、ドイツといかに戦い、いかに自立をしたかという名声を共産党が一手に博していたということと、「いや、そんなものじゃないんじゃないか」という戦いでもあったようですね。また、ドイツとの戦いみたいな心理的な亡霊が出てきてて、ああいう激しいデモになるという話もある。そこへ公務員問題が絡むと、こういう話のようですから、事が収まらない。労使協議なのか、政労協議なのかはともかくとして、この話し合いで、要するに政府の行財政改革のようなところにいかないというのがもう一つの要因だと言われていますので、そのことも他山の石としなければいけない。つまり、経常収支と公務員問題と財政赤字の担保たる将来の財政規律のつくり方、これについてのアローアンスと我々の構えといいいましょうか、政府債務残高をこれから我々がどう位置付けて、これを増やさない、あるいは減らしていくというところにどこかで反転する必要があるのではないかということを、やっぱり今度のギリシャ問題が深く教えているというふうに僕は見ています。
 ただ、日本は、ヨーロッパの金融機関でリーマンショックのときに見られたような、サブプライムとか証券化商品で過剰なレバレッジをかけて過剰な自己売買を含む投資で、金融機関の資産内容が悪くなっているという事態にまでいっていないところが救いでもありますから、そういうプラスとマイナス、あるいは我々が将来気をつけなければいけない要素というのをじっくり見ながら、6月の中期財政フレーム・財政運営戦略、そして成長戦略の策定にちょっと気を引き締めて臨んでいきたいと思っております。
(問)関連で、今のお話の中で、間接税を上げる余地の話がありましたけれども、今回の件を受けて、フレームなり運営戦略の中でそれを書き込んでいくことになるのかというのが1点と、菅大臣のほうで財政健全化法の検討が進んでいると思うんですけれども、それと中期財政フレームと運営戦略との関係性について、大臣はどう見ていますでしょうか。
(答)財政については皆さん方もこの間いろいろ聞かれて、私も答えられる範囲で答えてきたんだけども、金融と連動した、あるいは実体経済に直接、間接を問わず、大きい影響のある財政、特に財政規律の問題を考える上では、経済と金融、特に金融が相当目まぐるしく動く、もっと言えば、暴れると言っていいのかもわかりませんが、生き物であるだけに、余り硬直した話にはならないですよね。
 つまりこの2月、3月、4月は、ほかの国はみんな出口戦略を持ち、こういう出口戦略をやるんだというのを、国際金融のマーケットに向けて、財務当局の財政規律として相当言ってまいりました。日本はまだ書けていないじゃないかという声もあります。僕は、マーケットの状況を見ないと、何か書いたところで、一夜にしてそれがもう一遍出直しみたいな話になるのでは、かえってそのことによって、書いたその戦略そのものの信頼性が失われるんではないかという気がしたものだから、6月ぐらい、あるいは7月を超えるところまで様子を見たいし、見ているんだということを申し上げたと思います。案の定といったら語弊がありますけども、日本でいえば連休で、別にヨーロッパは連休でもなかったんでしょうけども、この4月末から大きく動いたように我々には見えるわけですよね。多分ここでヨーロッパ、アメリカの出口戦略というのは実質上見直さざるを得ないと。
 ヨーロッパで日本円にして89兆円規模にまで積み上げて構えなければならないという事態は、各国の財政金融当局からすれば、今まで描いてきた出口戦略とは違う、大きな要素ですよね。そんなこともございますので、どこまで現時点でフレキシブルな内容にするのか、あるいは臨機応変の措置を含むのかというようなことも含めて、しかし、さはさりながら、今日も政府債務残高が882兆円という新聞報道を拝見しましたけども、根っこの話は厳然として日本も残っておるわけですから、やっぱりどういう表現が国民の皆さん方に理解が得られやすいのか、それから、マーケットがそのことによって極端な反応をしないようにするのか。悩ましい話になることは間違いないけども、考えに考え抜いた書き方をしなければいけない。
 今年の予算も、あるいは昨年度の決算も数字はまだ出ていませんけども、これはこれで鳩山政権以前の政権のツケがどんと来ているという前提で考えることができるわけですから、新しい政権に代わったこの段階で、やっぱり反転の意思を明確にあらわすべきだというのが私の考えです。
(問)普天間の問題なんですけれども、結局、5月末決着を断念するという形になっているようですが、閣内の主要閣僚として、どのように今の状況を御覧になっていますか。
(答)私はこの問題に関与していないから、今までコメントもしなかったし、今もコメントする材料はほとんど持っていないんですが、普天間の問題だけを性急に、そこだけに焦点を当てて政治責任がどうのこうのといわれますが、鳩山政権が申し上げてきた東アジア共同体形成、そして、アジアとの関係で、共有するもの、共通するものを見つけ出しながら、アジア経済の成長に貢献をし、そのことをもって日本の成長に結びつけていくという考えからすると、日米同盟というのはその基軸ではあるわけでありますけれども、従来も申し上げましたとおり、5月末にこだわってどうのこうのというよりも、鳩山総理、鳩山政権のやるべきことはもっと広く大きくあるわけです。歴史的な使命を果たすという観点で、当然のことながら、普天間の解決にも努力をしなければいけない。
 これは皆さん方も御承知のように、沖縄の人々のしわ寄せをしてきた、そのツケをどこでどういうふうに解消していくかという話でもありますから、それは全精力を傾注をしなければいけないんでしょうけども、ただ、話の枠組みとしては、先ほど言ったようなものの中の重要な問題ということになるんだろうと思いますので、それを拳々服膺して、内閣全体でそういう位置付けでこれから取り組んでいかなければいかんなと、そんなふうに私自身は思っております。

(以上)