仙谷大臣記者会見要旨 平成22年4月27日

(平成22年4月27日(火) 9:25~9:50  於:本府5階522会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 どこかの新聞に大きく載っておりましたが、国家公務員の新規採用の方針について、私も入って4大臣で協議をした中身を、閣僚懇談会で、総務大臣からこういう基本方針のもとにこれから各省庁と折衝したいというお話がございました。閣議決定を行いたいので、それに向けて格段の御協力をお願いしたいということであります。総理大臣からも、この新規採用の抑制をするという方針については、天下り斡旋の根絶に伴う定員管理の問題ととらえるべきではないと。この新規採用する職員というのは、これから20年、30年お勤めになるとすれば、その時点での地方支分局というふうなものがどういう形になっているのか、あるいは政府組織が20年後、30年後にどういう機能や役割を果たすのか、これは当然人口構造、産業構造、就労構造が変わりますので、それに応じていわゆる中央政府の形といいましょうか、人員配置等々も変わってくるはずですし、例の総人件費の問題もこれありますから、そういう観点も含めて今年からこの新規採用をこういうふうにしようと。
 もう一つは、「官を開」くということを鳩山総理は国民の皆さん方に訴えをしております。官民を超えて社会から有為の人材を登用することができるような国家公務員制度をつくってほしいと。これは新しい公共のところでも力説をされているわけですが、要するに公を、官だけじゃなくて、民も支え、官もある種今までのやり方を開いて、質的に開かれた官の世界といいましょうか、新しい公共を担う人材をつくるという、公務員の意識改革もお願いをしたいということであります。
 そういう観点から、民間の人材を各府省に登用することができるように準備をしてほしいと。また、各府省の役人が広く役所の外に出て、民間企業や地方自治体、各種非営利法人など、現場での経験を積んで、能力向上と意識改革を進めることができるように、公務員制度改革担当大臣の私と、総務大臣及び枝野行政刷新大臣とが意見交換をせよということであります。
 それから、もう一つは、これは公務員制度とちょっと次元が違うんでありますが、「国を開く」という観点から、今、規制改革を枝野大臣のところで進めておるわけでありますが、一層の推進をお願いしたいと。特に内閣として東アジア共同体構想を提起している中で、先般の看護師国家試験におけるEPAに基づく外国人合格者が合計3名にとどまるなど、深刻な問題が現在存在しており、いま一度国際的な人材移動の大幅な自由化に向けての検討を急いでいただきたいという総理の発言がございました。
 先般、私も海老名の中心会という団体の介護老人施設に伺ったところでありますけれども、せっかく東アジアからある種の専門職人材を受け入れるということであるならば、やっぱりしっかりとした受け入れ体制と制度をつくらないと、かえって、この場合はインドネシア、フィリピンでありますが、そういう国の人々との友好関係を損なうということになってはまずいのではないかというふうに思います。
 さらに、今日の閣議前にも協議をしましたが、閣議でも総理大臣から、いわゆるEPA、包括的な経済連携協定について、国家戦略として展開するという位置付けの下に、内閣の重要政策として政府一体となって取り組む必要があると。このために本件に関する内閣官房としての総合調整については、仙谷国家戦略担当大臣にお願いすることとしたいと。対外関係については、岡田外務大臣を中心に、仙谷国家戦略担当大臣を含む関係各大臣が従来どおり協力して取り組んでいただきたいという発言がございました。
 今年だけでも外交日程が相当設定されております。明日から日本・EU定期首脳協議があって、5月の末には日中韓サミットがございます。それから、李明博大統領もいらっしゃる可能性があると。これは今年中にいらっしゃるということであります。それから、ASEMが10月に予定されていると。それからASEAN+3も10月末、それからAPECは横浜が最後の主会場ということになりますし、その直前にG20がソウルであります。そういう、いわばグローバルな、経済のみならず、人的、あるいは文化の交流というのが常識化している中で、もう少しドライブのかかったEPA、FTAについての取組をしなければ、東アジア共同体の正に下部構造をつくることにならないという思いでおっしゃったんだろうと思いますが、そういうことで私のほうに国内調整を中心とした総合調整を指示されましたので、どこまでできるかわかりませんが、「官を開き、国を開き、未来を開く」、その開くために微力を尽くしたいと思っているところでございます。
 新規採用抑制の方針については総務大臣のほうから詳しくブリーフされると思います。私のほうからは以上です。皆さん方の質問に移ります。どうぞ。

2.質疑応答

(問)EPAとFTAの件なんですけれども、対外調整は岡田外務大臣で、国内調整は仙谷大臣と、これを分けた理由を教えていただきたいのと、仮に一緒にやっていたほうが対外的、国内的に統一的に交渉ができるので、そういうメリットもあると思うんですけれども、そのあたりどうお考えなのでしょうか。
(答)この近時の状況というのは、外交と内政は正に一体であるというか、そういう観点で、内政の調整がなければ外交的にも、特にこの種のことで相手との五分の外交ができないということで、横並び官庁的意識のもとでいつまでもやっててもいけないので、そういう観点から、国内的な総合調整と、外交についても外務省、岡田大臣を補佐するというか、補完するということでやってくれと。
 外交自身は二元外交になってはいけませんが、韓国を見ると、これは外交通商省というよりも、いわば通商の問題も旧来型の外務省に含まれていると。アメリカの場合はUSTR、どこでもビジネス外交みたいな話は、古典的な外交とちょっとイメージが違う部分が多いと。そこを内閣官房として総合的にやろうとすれば、二元外交にならずに総合的な観点から、内閣官房がある種のイニシアチブを持ってやろうとすれば、現時点ではこういう格好しかないのかなと私は理解をしておりますが、ただ実際の動きの中でそれをうまく外務省とコラボしてやっていくと。
 この間、成長戦略としての問題で私どもから提起してありますが、要するに海外の出先機関から、日本の実情やいいところを諸外国の人々に対して宣伝すると言うと語弊がありますけども、情報をしっかりと流すということについても、どうも一元化していないというか、戦略性がないというか、みんなばらばらにそれぞれが縦割りの中で動いていらっしゃるような気配があると。やっぱり各国に置いている出先も一元化するというふうなことも、成長戦略の上では必要だということを提起させていて、やや各省庁ともそういう方向になりつつあると思います。
 そういう段階での外交というのは、もちろん安全保障の問題はゆめゆめ軽視できないというか、揺らぐことがあってはならないわけですが、外交といっても経済の比重が、つまり国境の垣根はどんどん下げられていますから、財政金融もマルチな外交マターになっていますよね。そういう観点から、外交にもそういう全体性、総合性が必要で、絶えずそこのところは国内の調整や仕切りも行われなければいけない。そういうことを総理はお考えになっていらっしゃるので、特に東アジア共同体という大きい旗を掲げていますから、そのためにどう戦略的に展開していくのかというのがやっぱり重要で、そこを考えつつ進めていかなければいかんなと、こう思っています。
 もう一つ、閣議の後、地球温暖化の関係の大臣会議が行われました。そこで鳩山イニシアチブについての具体的な展開の方針が外務大臣のほうから提起されて了解をされたと。これは外務省のほうから詳しいブリーフがあると思います。
 それから、もう一つは排出権取引について、従来、原単位方式でやられてたんですけども、CO2の総量方式に中身を変えながら、自主的取組としての排出権取引を行っていくようにしたいという提起が小沢環境大臣のほうからあり、これも了解されたということでございます。これは多分環境大臣のほうから提起があると思います。
 以上です。どうぞ。
(問)日韓のEPAはこれから重要になってくると思うんですけれども、これまでずっと停滞してきた要因と、今後、どういうところが突破口になるか、どういうふうに考えていらっしゃいますか。
(答)結局、私は一番大きい問題は、日本がこのグローバルマーケットのプレーヤーであることを、特に現時点でのプレーヤーというのはどういうものでなければならないかということをどこまで意識をするかということだと思いますね。製品、あるいはインフラの世界でも、これだけの要素技術を持ちながら、別にシュリンクしているということじゃないんだけど、もう一つグローバルマーケットで雄飛するということが少ないと。それから、海外から、観光にせよ、就労にせよ、あるいは資本が日本に入ってくるということにせよ、ちょっとこの間シュリンクしているんではないかと。ここは開いて打って出ることと、大きく国を開いて受け入れることを基本的に考えてやりませんと、非常に優れた技術を持ち、国の財政はそれほどよくありませんけども、国民の金融資産だけでもこれだけありながら、これが全部内向きに国債運用だけで回っていて、気がついたら日本だけがアジアマーケットからもかなり取り残されている、あるいはグローバルなマーケットからは大いに孤立無援な状況になっているというふうなことは絶対に避けなければいけないという思いがあります。
 多分、韓国の方々は、そういう意識が相当国民の中にも浸透して、子供をアメリカに留学にやる、あるいはアメリカまでやる費用が捻出できない御家庭は、お父さんを韓国に置いて、お母さんと子供でフィリピンに留学するということまで行われているそうで、せっかくここまで国境が事実上低くなってきているわけですから、国際社会の中の一員として、昔、「地球市民」なんていう言葉がはやりましたけども、そういう国際社会の一員として生きるという意識がないと、これはなかなか容易ならざる事態になる。つまり、宝の持ち腐れのまま沈んでいってしまうんでないかと。そういう観点から、このFTAもその通商の部分の課題ですから、戦略的にこなしていくという意識の部分が一番重要だと思います。
 例えば、日韓のFTAもそういう観点から、双方とも世界の中で生きていく戦略としてこれを位置付けて、改めてやっていくと。2004年に中止になってから6年間も中止状況が続いているわけですが、やっぱり最も近い国で、ある意味で価値観の問題としてはそれほど違わない、つまり、民主化をされ、市場経済をベースにしている。民主的な制度的インフラを持って、ルールについてもフェアネスということについても共通の価値観を持っているこの両国が連携をできないというのは、誠に不可思議なことだというふうに考えたほうがいいと私は思っております。私自身、20年間韓国の政治レベルの方々とはお付き合いをしてきましたんで、これは早急に、お互い言い分はいろいろあるんでしょうけども、進めるべきだと思っています。
(問)原発の売り込みについて伺いたいんですけれども、近くベトナムに原発を売り込みに行きたいという意向を示されていましたけれども、なぜ大臣は今ベトナムだというふうにお考えでしょうか。それと、日本の原発の技術をどのように評価しているのかという点と、ライバルである韓国の力というのをどのように見ていらっしゃるんでしょうか。
(答)ベトナムに行くのは原発の話だけではありません。もちろん石炭火力の話も、水の話も、そして僕は何よりもベトナムとの関係ではやっぱり人材の交流、あるいは人材の育成というか、人づくりの問題からベトナムとの関係をより深めるべきだと思っています。ベトナムでは日本語も第一外国語になっているんですよね、選択制のようですけども。今までも大変親日的空気が強いと。ベトナムはやっぱり人口から見ても、国土の広さから見ても、そして何と言ったってフランスとアメリカと中国と戦争をしてもすべて勝っているという、こんな民族はほかにはないわけであります。そういう独立心、自立心の強い国の発展、特にこれからエコフレンドリーな発展をしていただくことが重要なんで、人づくり、あるいはインフラづくりに御協力できるとすれば、それは大いに協力して、そのことが結果として日本のASEANにおける各企業のビジネスチャンスに結び付いてくればいいのではないかというふうに思っています。
 その1つとして、ベトナムの原発の第1次F/Sについてはロシアが受けたということになってますけども、伸び行くエネルギー消費の問題からいえば、エネルギーのインフラはまだまだ足りないことは目に見えていると。二、三年後にはもう石炭の輸入国にもなる可能性があるというふうなことで、日本の経験からすると、このエネルギー問題というのはやっぱり圧倒的にベストミックスを実現していかないと、それも環境に優しいエネルギー生産をやっていくという方向がなければ、持続可能ではないと。つまり、ある種の資源だけに傾斜したエネルギー構造ではよくないんじゃないかというのが日本の得た教訓で、そして、これから先、化石燃料に依拠することが環境にも、それから生産コストにも、相当問題が出てくるということは、もう日本のみならず、どこでも私は同じだと思っていますので、できる限りベストミックスをつくられたほうがいいと、こういう話になろうかと思いますね。
 日本の原発技術については、やっぱり安全の確保については世界最高だと思います。UAEの話は、やっぱり60年保証というようなことを韓国の国営の電力公社が約束されたようですけども、韓国政府としてもギャランティを与えていらっしゃるようでして、日本の場合はそういう格好での国のギャランティというのはあり得ない。ただ、しっかりした企業が従事しているんで、そこのところは心配ないんではないかと思います。

(以上)