仙谷大臣記者会見要旨 平成22年4月2日

(平成22年4月2日(金) 8:58~9:35  於:本府5階522会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 今日は、閣僚懇で総理大臣から政治主導による地域主権改革の推進について発言がございました。一昨日、地域主権戦略会議が開かれましたが、義務付け、枠付けの問題については勧告が既に出ておるわけですが、それに基づいて、この地域主権戦略会議の民間ボードメンバーを中心にして、各省庁との交渉をしているわけであります。
 義務付け、枠付けの見直し、あるいは権限移管、一括交付金化についての省庁間折衝といったことをやっているわけでありますが、それについての現在の実施率や各省庁の回答状況について報告があって、それに対して議論が行われたわけでありますが、そのことについて、鳩山内閣総理大臣から、今日、閣僚懇で発言がなされたということであります。
 見直しがゼロの省庁とか、見直し実施が半分にも満たないという現状を踏まえて、いわゆる補完性の原理で、まずは市町村ができるものは市町村がやると、余計な口出し、おせっかいをするような義務付け、枠付けを撤廃すると、こういう原則だと、改めて強い調子で再検討を促したと、一括交付金化の問題についてもいろんな発言があるけども、これまでの発想を根本的に切り替えて取り組む必要があるというお話がございました。
 地域主権戦略会議を中心とする改革について、各大臣に対してこの取組に最大限協力してもらいたいという発言があったところでございます。
 そのときの議論も、この間の議論もそうでありますが、分担管理を一つの原則とする日本の内閣制度の中で、この種の問題については、全体的な立場から、やはり官邸、あるいは総理大臣のリーダーシップがきちんと実施されないといけないと。各省庁の大臣が分担管理の省庁大臣である前に、国務大臣でありますから、そういう観点でこの地域主権マターに取り組んでもらいたいということだと思います。
 私も一昨日の会議で申し上げましたが、せっかく地域主権戦略会議というボードをつくっているわけですから、各省庁がこの十数年、いろんな理屈をつけて、なるべく権限を分与しないと、付与しないと、市町村、都道府県に渡さないと。それから、この義務付け、枠付けについても自主性を認めないという、この傾向が繰り返されてきているわけでございまして、これはいろんな理屈はありましょうけども、彼らの自発性、自主性、あるいは自立性に任せてみて、できなければ地域住民が首長や議会を取り替えるということをやってもらうか、それかまた改めて、できなければできない、住民生活に問題が出てくれば、そのことについて中央政府で対処するということをやっていかないと、自治体側ではできないという前提で取り組むということでは、いつまでたっても進まないと、こういうふうに思います。
 ある種、補助金でやるのが一番楽だという自治体側の何とない潜在心理があって、それが国会議員にまで伝わってきていて、そのことが各省庁の所管の政務三役に影響しているという部分はあります。やっぱり原則との関係でどう考えるかということを絶えず反すうしながらやっていただかないと、いつまでたっても事態は改善しないというふうに思って、一昨日の発言をしたわけであります。
 その余の件については、私のほうからはございませんので、御質問があればお答えいたします。

2.質疑応答

(問)中期財政フレームの件ですけれども、中期財政フレームに財政再建の具体的な状況、プライマリーバランスとか、GDP比とか、そういうものを再建状況を数値目標として書き込むべきだとお考えなのかということと、その際に成長率はやっぱり厳しく見積もるべきなのか、それとも緩く見積もるべきなのか、この2点をお伺いします。
(答)どういう数値目標を書くのか、書かないのか、そういうことが書ける状況であるのか、それも検討中であります。
 それから、厳しく成長率を見るかどうかという御質問ですが、「厳しく」というような言葉を使ったことは一度もありません。「プルーデントに」というのが、今、各識者から指摘されている話で、これは日本に限ったことじゃなくて、出口戦略といい、財政フレームといい、先進各国でこの種のものを設定をするというときには、プルーデントに成長率を見込むというのが常識であるという指摘はされております。
 考えてみれば、その種の財政規律に資するメッセージを財政当局なり、政府全体として示すということになれば、甘めの話をしてはならないというのは、研究者の立場からしても当然のことでありますし、歴史的にも甘めに見込んで何の役にも立たなかったという経験からそういう御指摘をいただいているんだろうと、私は受け取っていますけども、「さあ、いくぞ」と成長戦略に勢いをつけるときの目標値と、財政規律を提示するときのある種成長率の見込み方とでは若干の違いが出てくるというのは当たり前だと思います。相手は生き物でありますから。そんなことを考えておりますが、具体的にどのような表現で数値目標を書くのかどうなのかも含めて、今の景気経済状況を見極めながら考えていくべきだというふうに思っております。
 昨日、日本で言えば年度末、あるいは欧米で言えば第一四半期末の段階での世界経済及びヨーロッパ、アメリカ経済についての見通しの報告を聞きましたけども、そのことも含めて考えておかないといけないなと、改めて思っております。
(問)官邸内に大臣の執務室をつくる準備が進められていると思いますが、その狙いと、いつごろから部屋が使えそうかということと、あとそれに関連して、最近、総理と一緒に昼食をとる機会が増えるなど、二人の距離が縮まっているんじゃないかという見方もありますが、そのあたりはどのようにお考えでしょうか。
(答)最後の御質問から言えば、距離は以前と全く同じです。時々電話をおかけすることはもう十数年前からあります。御自宅に電話をかけることもありますし、その他の方法で連絡を取り合うこともありますから、距離感は私はもう全く変わっておりません。
 御存じだと思いますけども、鳩山さんと菅さんが二人代表のときは、私は政調会長、それから鳩山さんが97年に幹事長になったときは、私は幹事長代理、羽田先生が幹事長になられて、鳩山さんが幹事長代理になった98年段階では、私は筆頭副幹事長。それから、99年に鳩山さんが代表になったときには、私は企画局長、その次に鳩山さんが再選されたときにも私は企画委員長ということで、仕事をしてきた経緯がございますので、そのころのことを振り返っても距離感は全く変わっていないと。
 それから、部屋の問題については、本格的に内閣府の大臣室のような部屋をつくるスペースももちろんありませんし、それから何と言っても、機能としての部屋ということになると、我が大臣室で言えば秘書官、あるいは参事官の方々という人的構成がないと、これは執務室といっても執務になりませんから、そういう意味では連絡場所ぐらいの感じになるんだろうなというふうに思っております。
 だから、本拠はあくまでもここ内閣府本府にある大臣室であり、ここで執務をしなければいかんだろうなと、こういうふうに思っています。
(問)時期については、目途というのは。
(答)いや、ちょっとわかりませんが、多分、4月中旬以降、15日以降ぐらいになるのではないかというふうに、僕は何となく雰囲気で感じておりますけども、今のところ不明です。
(問)参院選に向けた候補者擁立の話なんですが、党のほうで2人区に2人擁立の方針を出して、今、調整が進んでいますけれども、現職のほうから違和感を感じる発言があったり、関係の地方組織から、連合ですとか反発があったりするんですけれども、この件に関して、大臣のお考えはいかがでしょうか。
(答)今度の参議院選挙にどう勝ち抜くかという方針を、民主党の選対委員会委員長、それから幹事長がある種の専権を持ってなさっていることですから、一般論としては、それはそれとして、やっていただかなければならないと私は思います。
 もう少し一般化して言えば、これは地方選挙も含めて複数定数というか、大選挙区、中選挙区というのが地方選挙なんかは多いわけですけども、どうしても現職の議員は競合相手が少なければ少ないほどいいという心理になりますね。
 だから、旧中選挙区時代の衆議院選挙では、自民党の先生方は何よりも自民党公認候補が増えないようにするのが仕事みたいな感じになっていたという状況もございます。それは競争がないことによって、票数が自民党なら自民党、民主党なら民主党で固定化されて、増えないということのみならず、やっぱり切磋琢磨がないというのは、それはそれで議員の質を落とすことにつながるという意味で、そこは与党内であろうが、やっぱり国民の声を聞いていくための競争というのは、原則としては、それが私はあるべき姿だと思います。具体的な選挙戦術は、その時点、時点での支持の動向の、皆さん方のお調べになる数字も一つの参考資料ですし、現場を歩いてみての皮膚感覚も、これも大事にしなければいけませんし、そういうところから、戦術として、その場その場でどうするのかというのは、これはもう、その時点での選挙を担う方々と正に選挙現場での体感温度をよく分析して、どうするのかということは考えていく必要が、これはこれであるんだろうと思っています。
(問)足元の経済は、やはり外需主導で持ち直してきていると思うんですが、それが実際、内需中心の自律的な回復につながるかどうかというのがまたポイントだと思うんですが、成長戦略もその点で重要かと思うんですけれども、大臣は今後、外需拡大が内需に波及する見通しというのはどんな感じで御覧になっていますか。
(答)これは、僕は構造問題として見ておりますので、なかなか容易にそういう構造に転化してこないんじゃないかと。つまり、もっと言えば、医療、介護、あるいは保育、あるいは教育というようなところのサービス業、これをサービス産業とする、そういう消費者のマインドも強くなってくる。あるいは、そういうものが産業的にサプライサイドのほうから立ち上がってくるという状況がないと、需要は喚起されないし、そして、今、申し上げた分野の生産性が上がってくるような、自律的な動きが出てこないと、なかなか内需は増えにくいと思います。もう御覧いただいたらわかるように、内需でやっぱりマーケットに訴える、マーケット・ニーズに対応する商品開発が、あるいは商品の提供はなかなか難しくなっている、飽和経済で難しくなっている。
 もう一つの柱は、内需の製造業のほうから見ても、これはグリーン・イノベーションというか、グリーンかクリーンかに対応する政策提起もそうでありますが、民間のほうが思い切って、そういうところに設備投資をかけて、あるいはそのことで新製品を売り出していくと。つまり、非常に知識集約型産業への製造業の転換というふうなことが、もう少し目に見えてこないと、やっぱり液晶灯ぐらいでは、内需が一挙にわき立つような話になるというのは、なかなか難しい。
 もっと言えば、太陽光の蓄電がどこかでブレイクするかのような、例えばの話ですよ、そういう展開になってくれば、改めてサプライサイドのほうも、つまり、企業サイドのほうの設備投資も、それからこの需要側である事業所、つまり、ビル等々の事業所あるいは家庭といったところに需要もわき起こってきて、好循環に入っていく道というのはないわけじゃないと思いますが、政策的にも、やっぱり日本は要素技術で優秀な分だけ、気がつくのが1年か2年か、あるいは3年か4年かわかりませんが、この間の小泉以降の政策展開が遅れたのかなと。あるいは小泉政権の「官から民へ」という、民間で自由にやってくれれば何とかうまくいくと、そしてトリクルダウンで家計の所得も増えるというのが、そのとおりいかなかった、その部分のもだえが内需のシュリンク、それから企業の設備投資の何となく消極性、そして内部留保の積み上がり、銀行の貸し越しのシュリンクした状態と、こんなところでよどんでいて、だからアジアを中心とする外需の動向によってちょっと持ち上がったり、それでまたそれが下がるとちょっと下がったりという、こういう曲線を描いているというふうに見ておりますが、早くやっぱり、我々なりに言えば「チャレンジ25」なんでありますけれども、そこに向けての経済のグリーン化、クリーン化、これは生活のグリーン化、クリーン化にもつながるわけですが、そこに日本の産業界あるいは国民の意識が大きく集約してくれれば、ありがたいなと思っております。
(問)国家戦略室についてなんですが、昨日、4月1日で局への格上げを予定されていたと思うんですけれども、結局、実現されませんでしたが、これが中期財政フレームなど政策の取りまとめに影響は出ないのか、大臣のお考えをお聞かせください。
(答)全く関係ないと思います。影響ないと思います。
(問)昨日、テレビの収録で、今年度予算について「本来あり得てはならない姿だ」とおっしゃっていましたけれども、本来の姿にするには歳入はやっぱり増やさないと、なかなか本来の姿にならないと思うんですが、大臣は今、歳入を増やす方法について具体的なお考えをお持ちでしょうか。
(答)僕は日本の財政と経済全体について、あるいは私どもの精神のありようについても、大変危機感を持っているつもりです。従前から危機感を持っておりましたけども、いよいよ煮詰まってきたという意味で、危機感を持っております。
 その中で、本来的に理論的にあり得てはならない予算の姿だということを、予算編成の深くかかわった担当者としても、自己批判的に昨日も申し上げたつもりであります。それを「野党的」というふうな表現で書かれた新聞もあるわけでありますが、そんなことはどっちでもいい。
 つまり、日本の現状について精神のありようまで含めて、どのぐらいの危機感を皆さん方も持っていただけるのか。これをメディアが揶揄して、あいつの話はこうだとか、ああだとか、あるいは政局的に取り扱うだけで、日本の将来について何か未来が開けるのかと、このことを皆さん方も、是非考えてほしいというお願いをしたいんですね。
 だから、理論的な観点だけじゃなくて、この状態を何年続けることができるのかと。つまり、税収よりも借金が上回るような予算を何年組むことができるのかということをお考えいただければ、累積の債務残高がここまである国が、現在、経常収支の黒字を保っているから、まだ発散傾向にないといえばない。しかし、正常な姿でないことだけは、もう皆さんわかっているわけですよね。だから、それを財政を直接、間接に関与する担当者として、絶えずそのことを考えながら、あなたがおっしゃるように、税収を増やすということだけでいいのか、あるいはそれも税の体系全体を見直すということを考えなければいけないのか、あるいはその前提としての番号制度の問題や、間接税で言えばインボイスの問題も含めて、税の公平・簡素というところに改めてもう一遍踏み込まないと、国民の皆さん方の財政に対する、あるいは政府全体の資源配分に対する信頼感を取り戻すことができるのかと、そういう観点で僕は申し上げているわけで、これは今まではオオカミ少年だったかもわからないけども、ギリシャの姿が全く日本とは無関係の状況ということは私の頭の中にはなくて、やっぱり今の日本の姿というのは、あまりよくないのではないかと。同時に、これに対する危機感が、やっぱりまだまだ我々を含めて本物になっていないんじゃないかということを言いたいわけです。
(問)自民党のことで恐縮なんですけれども、若林元農水大臣が隣の人のボタンを押したということで、議員辞職願を提出されました。これについて、ちょっと御感想あればというのと、あと、自民党内で執行部の刷新を求める声が続いていますけれども、それでごちゃごちゃしている感じがありますが、それについてのコメントをお願いしたいと思います。
(答)僕は、他党のことをあれやこれや、それも内情をほとんどわからずにコメントする資格もないし、余裕もありませんので、後ろのほうの質問は遠慮します。最初の御質問についてですが、学生時代には「代返」というのは割とあるんだけれど、国会議員の投票について代理を行うというのは、何か想像がつかないような事態ですね。先生は自民党の両院議員総会長をお務めになられていた方ですから、何かちょっと体調でも悪かったんじゃないのかなと。だけど、議員辞職に値するかどうかというのは、よくわかりませんと言うと全く責任放棄でありますが、しかし、御本人が自らの職務の重大さと責任について、そういうふうに思い至られたということであれば、けじめのつけ方としては一つのあり方かなと思います。
(問)国家公務員法改正案について、お尋ねします。自民党が対案を出す方針を決めたんですが、課長級への降格というのは一つのポイントだと思うんですが、これを受け入れて政府案を修正する余地があるかどうか、大臣のお考えを聞かせてください。
(答)議論してみますけれども、今度の法案の枠組みの中では、その種の考え方、つまり、適格性審査を一度通っていらっしゃる方を、その審査が過ちであったと、あるいはいわゆる幹部に一度位置付けた方を何か懲罰的に降格をするとなると、そこはちょっと要件を何かいろいろ考えなきゃいけなくなってくる話で、要件を書くとですね、そして、そのことについて任命権者である各省大臣のほかに官邸が絡むとすれば大変な作業になると、結局はできないという話になりかねないのか、ということで、基本法をつくったときの政府を担った自民党の大勢の意見とどう整合性があるのか、ちょっとその辺は議論をしてみないとわからない。
 修正の話でありますが、これは私どもの立場とすれば、着実に堅実に、このいろんな要素が絡んだ国家公務員法を前進的にやっていくという方針を立てておりますので、今回は我々の内閣提案のこの法案を速やかに審議をしていただいて成立させていただきたいと、もう、ただただお願いをするだけであります。
(問)財政状況について、非常に危機感を持っていて、その認識をという先ほどのお話だったんですけれども、冒頭にお尋ねした中期財政フレームの目標設定との絡みでお伺いしたいんですが、具体的な達成年次も含めた目標を提示することによって、政府としての財政規律に対する姿勢を示すというのは一つの手法だと思うんですけれども、この4月の時点でまだ書けるかどうか、そういう状況にあるかどうか検討中であるというのは、現状はなかなか目標の達成が難しい状況にあるので書けるかどうかわからないという趣旨なんでしょうか。
(答)長期的な話と中期的な話をごちゃ混ぜにしていませんか。
(問)10年ぐらいのスパンで考えて……。
(答)中期財政フレームはそんなスパンじゃなくて、数年ということになっているわけでしょ。だから、10年先、20年先、30年先、50年先の話も書いてもいいんだけども、それはどのぐらいの意味があるのかという議論をもう一遍やらなければいけないということになると思いますね。
 だから、書けないというか、さっき申し上げたようにグローバル化した経済の中でこういう状況ですから、そこはより深く分析をし、ベストなものをつくらなければいけないと思って議論をしているということを申し上げておるんです。できないとか、できるとか、何かそんなことを言われても困ります。必ずやりますから。
(問)関連して、財政フレームなり健全化目標、先ほどプルーデント、慎重な目標とおっしゃっていましたけれども、市場関係者の中からは潜在成長率は1%ぐらいじゃないかと……。
(答)「目標」じゃなくて、「見込み」です。
(問)見込み、ごめんなさい、見通しについて1%ぐらいじゃないかという見方もありますけど、その数字について大臣は感触として……。
(答)それは民間のシンクタンクの平均値を出してこうだということなのか。これから始まる、日本で言えば「第三の開国」状況の中での成長戦略というか、日本の場合、何せ成長の可能性があるアジアが地政学的に一番近接したところにあり、それから、その産業群として要素技術については、これほどの技術体系を持っておる国であり、なおかつ、さっきから申し上げておりますように、サービス業がいろんな規制によって産業化されていない部分があるわけで、だから成長の余地は、私は政策展開の仕方によっては相当あると。
 ただ、成長戦略という姿ではなく、財政目標、財政フレームというようなことを考えるとすれば、やっぱり見通しはプルーデントでなければならないということなんだろうなと思っています。

(以上)