仙谷大臣記者会見要旨 平成22年3月5日

(平成22年3月5日(金) 9:10~9:40  於:本府5階522会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 閣議では、昨日の地域主権戦略会議に関する法案2本についての署名をしてまいりました。
 その程度です。御質問があれば。

2.質疑応答

(問)国家公務員法改正案について2点お伺いしたいんですが、3月に入ったんですけれどもまだ審議入りしてなくて、年度内成立というのが日増しに厳しさを増しているかと思うんですけれども、大臣の御認識はというのがまず1点。
 あと、内閣人事局の設置が4月1日から後ろにずれ込んだ場合、幹部人事の実施に何らかの影響があるかどうかということをお尋ねしたいんですが。
(答)後の質問については、当然、ずれ込む期間の程度によって大変関係すると思いますね。だから、早期の審議入りをお願いしたいと思います。
 ただ、現実には内閣委員会で審議されることになるんだろうと思ってますけども、内閣委員会では所管大臣が9人いて、いわゆる所信に対する一般質疑もまだ終わってないと。参議院の予算審議との関係で大臣の時間がとれないということなんでしょう。だから、これは何とかやり繰りをお願いするしかないなと思っております。
(問)関連ですが、それで仮にずれ込む場合、例年、公務員の大規模人事というのが7月に行われるとされていますが、これに間に合わせるためには、ぎりぎりいつまでに設置が必要というふうにお考えになりますでしょうか。
(答)その場合はその場合で、慣例として7月に行っている人事を延ばしていただくというようなことも含めて考えざるを得ないと思いますね。
(問)あくまでも、夏の人事は新しい人事システムで行うという……。
(答)今の内閣としてはそういうつもりです。
(問)その場合、民間人の公募については、さらに準備期間が必要だと思うんですけれども、そういったところまで含めてやられるお考えなんですか。
(答)ということですね。
(問)例えばですけれども、どれぐらい民間人を公募のポストで選ぶかというイメージというか、数値目標みたいなのは大臣の中ではありますか。
(答)法案の審議も始まっていませんし、その辺はこれからのことじゃないでしょうか。
(問)来週から新しい年金制度の検討会が議論を始めるということなんですが、大臣としてどういうところが議論のポイントで、いつごろまでに中間報告的な成果を出したいとお考えでしょうか。
(答)今、いろんな議論がこの間の状況変化をめぐってありますよね。やっぱり社会基盤や経済構造の問題として、これまで、まあ、極論すれば、新自由主義的改革が行われた後の日本の殺伐とした、荒涼たる風景のような問題をどう考えていくのかというか、社会学的な議論がまずここは必要なんだろうなというふうに思っています。
 今般実施する幸福度調査も、そういう観点から改めてやってみようと。いろんな指標の数字が落ちてきているけれども、しかし、実感としてそれほど暗澹たるものではないと。歴史的に振り返ってみても、あるいは他の地域や他の国でお住まいになっている方々との比較においても、そんなにひどくはないぞと。日本はまだまだすばらしいところがいっぱいあるぞという感じでおるんですが、しかし、指標的にはこの2、3年で何かがっくり落ちた部分があると。幸福度は、世界の中で9か10位ぐらいだというような、そういう外国の調査まで出てきているようです。また、現実に自殺者がどうも年間で3万人の大台に乗ってしまうおそれもあります。そうしたことは、相対的貧困率の問題とか、昨日、共産党の小池議員が参議院でがんがん質問された国保の収納率といったことともつながってくる。保険料を支払いできない方々と資格証明書の交付の問題など、深刻になる可能性のある事態が進んでいて、高齢者層の中でそういう問題が出てくるとすれば、ここは正に最低保障年金の問題と連動するといいましょうか、あるいは生活保護の問題とどう重なり合うのかということが出てくる。そのときに社会の連帯の問題といいましょうか、国民全体のそういう意識として、そういう苦しい人々を放っといて切り捨てていいんだという話でいいのかどうなのかというようなことですね。まずは、そういう議論がされなければならないんではないかと。つまり、金額が幾らがどうのこうのという話よりも、支え合うための会費としての税、保険料というようなことを改めて問い返してみて、一体全体年金というものが何なのか、必要なのかというような議論もしてみないといけない。それで、皆さん方を含めて若い世代がこれをどう考えているのかということも、調査をするなり、御意見を聞く機会を持つなりして、やらないといかんなと思ってはおります。
(問)昨日、党のほうで政調の復活を求める会合が設置されまして40名ほど集まりました。今、党の中でも実質的にもっと政策の議論にかかわりたいという声が高まっていることについて、大臣はどのようにお感じでしょうか。
(答)形云々かんぬんというのは、党の状況がよくわかりませんので、何とも言えない部分もないことはないんですが、一般論というか、私が昔から感じてきたことから言うと、やっぱり政策論議を大らかに行い、共有化していくという時間とか場は必要なんだろうなと思いますね。そのことと、政府・与党の一体化をどういうふうに折り合いをつけていくのかというのは、始まったばかりですから、少々試行錯誤のところが今の段階であると思いますけども、最終的にはやっぱり政策の判断は内閣に一元化していただかないと、自民党時代のように、与党の中に事前審査制というふうなものがあったんでは、これはいかんともしがたいと。ただ、そのプロセスにおける議論というのは試行錯誤中でしょうけども、いろんな工夫をして、政策思想なり、政策について、多くの議員、党員ができるだけ共有化できる方法が模索されるべきだろうなと思います。
 それは我々も含めてですけども、特に若い議員の先生方には、一つのオン・ザ・ジョブ・トレーニングとして、そういうところで揉まれていくという機会も重要なことだろうなと思っています。
(問)その関係なんですけれども、鳩山総理は政策会議を充実させることで対応できるのではないかと、小沢幹事長もですが、そう言っていますけれども、それについてはどうお考えですか。
(答)それも試行錯誤、模索の一つだと思いますね。結局、皆さん方もよくおわかりだと思うけども、すべては制度半分、人半分という面があって、つまり誰がどういうふうにマネジメントするかというのが、絶えずこの種の問題が行き着く問題ですので、その辺をよく考えて、鳩山総理もおっしゃっているんだろうと思います。いろんな試行錯誤を行わざるを得ないということだと思いますね。
(問)鳩山総理が、マニフェストについての検証検討委員会を立ち上げるということをおっしゃられていますけれども、国家戦略室としてはどのようにかかわっていくのか、枠組みなどがわかりましたら。
(答)国家戦略室としてかかわるかどうかは、これはもう官邸の御判断次第ですから。昨年の政権成立以降、国家戦略室が現実的な政策についても総合調整的な役目を果たせという要請があり、これは事実上、そういうふうになってくるのかなという気はします。つまり、予算編成でも、国家戦略室の担当は税財政の骨格について企画立案をするという役目があるわけですが、これはちょっと抽象度が高いというか、普遍度が高くて、現実には予算編成過程で、菅さんが副総理ということもあって、財務省と一緒にもう半歩ぐらい高いところから調整に入ったわけですね。ついでにと言ったらおかしいけど、行政刷新会議も無駄を削るという観点もあって、刷新担当大臣もちょっと来いという感じで、官房長官も含めて、4人が最終的には協議しながら進めていったというような経緯がありました。短期的な政策展開についても総合調整は国家戦略室の役目だということになっており、このマニフェスト検証でも、総理大臣なり官房長官が判断すれば、そういう格好で関与することになる可能性があるなと。ただ、まだ今のところ、そういう議論があるかどうかは聞いていません。
(問)「新しい公共」でちょっと伺いたいんですけれども、円卓会議の委員の中からも、なかなか一般の人に「新しい公共」というのが何かというのが、なかなかわかってもらえないんじゃないかという意見が出たり、具体的にどういうものを指すのか、ボランティアとか社会奉仕活動を指すのか、それとも昔、町内会とかそういうところでやっていたものを、行政サービスに頼っていたものを自分たちでやるように、そういうものを指すのか、いまいちその具体的な部分というのが「新しい公共」についてわからないんじゃないかという話があるかと思うんですけれども、大臣の……。
(答)「新しい公共」円卓会議に参加されている方々が、あなたがおっしゃるように否定的な感覚で意見を言っているわけでも何でもない。「我々のやっていることが、そうか、言われてみれば「新しい公共」という概念で括られるんだな」というふうに思ってくださる方は、世の中で大変多いと思いますね。  ただ、鳩山さんが言っている「新しい公共」であるという認識をしていただくとか、あるいはそういうところにまだ関与していらっしゃらない方々に、そういう営みが大変重要なんだということを感じていだたく部分が、まだまだ少ないんではないだろうかと、こういう議論は当然のことながらありますよね。  あなたがおっしゃったような話ではなくて、いろんな形態が僕はあると思っていまして、例えば先般も出席いただいた徳島の「いろどり」というのは、第三セクターの株式会社です。これも我々から見れば「新しい公共」の一つの姿だし、ビル・ドレイトンさんが選ぶ世界のソーシャルビジネス、ソーシャルアウトプレナーの世界の100人にここの社長は入っているわけですね。  だから、そういう意味では、形態は株式会社であろうと、生活協同組合であろうと、NPOであろうと、あるいは任意の団体であろうと、それは形はいろんな形が多様にあるだろうと。ただ、やっぱりこの時代に必要なことは、自然発生的に地域で何かをやるということでは、こぼれていく方々が多いし、そんな条件がだんだん少なくなっているので、テーマで結びつくだけのコミュニティというのがあってもいいし、それに地域が重なってくると、そこに参加した方々にとっては、正に居場所と出番があるという実感が持てて、この社会はお金だけでもないし、お金を否定しても成り立たないという、いい組み合わせができてくるんではないかと、そういうふうに思っています。  だから、私はあの会議で今まで強調してきたのは、寄附金控除であれ、小規模金融であれ、事業継続性に対するファイナンスを否定しては成り立たないということです。その手段として、小規模金融でいくのか、税制でいくのか、あるいはそれに対する助成はどうでなければならないのかということを含めて、資金をどうつくり出すのか。これはもう自主的につくっていただくのが一番いいんだけども、それを誘導するための措置、あるいは側面支援する制度的な担保が政策的にも必要なんではないかと言ってきたわけです。  日本の場合には、やっぱりボランティアというと、基本的にそれは奉仕の世界とされがちですが、何か歯を食いしばって奉仕をしなければならないのでは多分長続きしないんですね。経験上、やっぱり事業化するということが重要だというふうに思っておりますが、それを政府がどう応援していけるか。これは、特に政治との関係では制度的な担保を鳩山内閣がどうするのかがもう少し見えてきたら、国民の皆さん方にもわかっていただけるのではないかと思います。  それと、これは枝野君の所掌範囲ですが、公益法人の公益認定制度がこの1年間の実績から見ると、公益法人をそういう新しい公共的な観点で担ってきた方々から言えば、ちょっと重いし、期待外れだなという感じがどうも雰囲気としてはあるようですね。NPOとは違った格好ですけども、正に「新しい公共」の担い手としての公益法人がそういう環境づくりに資するようにというか、役に立つように、新年度から公益認定の問題を変えていただくということが重要だろうと思っています。それは、枝野君のところで精力的にやっていただいております。
(問)直接的には枝野さんの担当で恐縮なんですけれども、規制改革の話なんですが、成長戦略にも関係するということでちょっと質問させていただきたいんですけれども、民主党政権がやろうとしている規制改革というのは、自民党政権の小泉政権がやった規制改革と比べて何が違うのかと。新自由主義に見えないためというか、行き過ぎた規制改革にならないためにはどういうことを考えていらっしゃるでしょうか。
(答)行き過ぎとか、量の問題ではなくて、まずは特定の事業者の利権、権益にさせないことが必要なんじゃないでしょうか。これは僕の感覚ですが、ともすればなぜあんなに悪評になったのか、規制改革会議の議論で、ある業界の方々が出てきて声高に主張して、それを踏まえた規制緩和、規制改革が行われて、その当の御本人の会社と業界は何かこの間うまくいっているけども、その反作用として、タクシーの運転手の待遇とか、派遣問題とかもお考えいただけばすぐわかりますけども、大変影の部分が強かったみたいな話がありますよね。  だから、そうは絶対にさせてはならないんだと。この間、申し上げているように、事前の行政的な縛りをなくすことが規制改革の最大の問題。つまり、いつも申し上げているように、官製市場からこうした縛りを解き放って、民間で解決できるものを市場に開放していくということなんだろうと思っているんだけども、そのときに事後的な監視みたいなものもつけておかないと、むちゃくちゃになるという危惧があります。それはもう枝野君も十二分にわかっていると思いますので、やってくれると思います。  それから、さっき公益認定の話をしましたけども、今、規制を改革することによって、サプライサイドのほうから新たな事業が立ち上がってくると。そのことによって、国民の皆さん方が新たにそこで消費の支出をしていただけると、こういう構造を成長戦略との関係ではつくっていかなければならない。私に言わせれば、それは第三次産業の部分が多くて、いつも申し上げているように、今、保育の世界でもベビーシッターに子どもを預けて働いていらっしゃる方々も相当多いようですが、ここを保育産業のような格好にできないだろうかと。もっと言えば、そこを「新しい公共」のような、何かそういう担い手、例えば資格を持っている保育士さんと世の中のお父さん、お母さんが一緒になって、自分の住む町か、あるいは勤務場所でそういう構造をつくれないだろうかなという気がしますね。そういうものの種銭として、子ども手当を使っていただいたら、なおいいんだけどなあと。  だけど、それをしようにも、いろんな規制があるわけでしょ。部屋は何平米でないといかんとか、こういう基準でやらなければいかんとか、調理場をつくらないといかんとか、保健所がどうのこうのとかという規制があるわけでしょ。そういうものは、できる限り基準を緩めますが、やらずぼったくりの劣悪な保育環境にあるとか、そこで子どもたちが病気に頻繁にかかるとか、そういうことのないようにするため、事前に書類審査などでがんがん縛るというよりも、そこは相当程度緩やかにして、事後的な審査のほうにお任せするというイメージなんですね、例えばの話。
(問)また所管外の話で恐縮なんですけれども、普天間基地の移設問題について、官房長官を中心に今まとめていますけれども、鳩山総理が3月中にまとめたいということも表明されました。政権にとってすごい重要なテーマだと思うんですが、内閣の一員としてどのように見ていらっしゃるか。
(答)これだけは特命事項でなさっていますから、私のほうでは見守るしかないということです。

(以上)