仙谷大臣記者会見要旨 平成22年1月15日

(平成22年1月15日(金) 10:20~10:40  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 お寒いですが、いよいよ来週から国会が始まりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 今日は、薬事法関連の政令の改正が閣議にかかりました。それ以外は内閣法制局長官、官房副長官補その他の人事の閣議了解がございました。その他に皆さん方に報告するテーマはないかと思います。
 何か御質問があれば。

2.質疑応答

(問)小沢さんの問題なんですけれども、総理、幹事長の政治と金の問題が浮上しまして、国民がこの問題に対して、どうなっているのかという目で見ていると思うんですけれども、大臣の今の現状認識、国民がどう見ているのかという認識をお願いします。
(答)重ねて申し上げておるんですが、一議員、一党員であれば何らかの見解をお示しすることはあり得るかもわかりませんが、先般、戦略担当大臣という拝命も受けて、官房の仕事も担当することになっております。そういう立場からすれば、果たして刑事事件なのかどうなのか、私は報道だけではわかりませんので、そのことも含めて一切、立場上もコメントしないほうが適切かなと思っております。
 それは私の政治家になる前の仕事の経験からも、こう言っては失礼なんでありますが、具体的な証拠をある種のプロとして見るまでは、もし刑事事件性があるとおっしゃるならば、そのことについては証拠を見ない限り、ああだこうだと論評してはならないという癖がどうもついているものですから、もっと言えば、報道については、眉に唾をつけて見るという癖がついているということであります。
(問)現政権は透明性ということをかなり主張をしておられると思うんですけれども、透明性という観点からはいかがでしょうか。
(答)そこは一政治家としてであれば、もう少し自由闊達に私も今まで議論してきたつもりでありますが、今はちょっと担っている仕事の中身が違いますから、どちらへ申し上げても、受け止め方によっては微妙な話になる可能性がありますので、論評しないというほうが正しいと思います。
(問)逆に閣僚として、事件そのものはまだ捜査の最中でもありまして、民主党の議員にかかわる疑惑によって国会運営に困難が予想されることと、本来、政治の内容に向くべき関心がそちらに行かなくなっているというこの現状を考えると、地検の事情聴取にこたえるなり会見を開くなり、疑惑を早期に払拭することが、より政治を進めるために必要だという閣僚からの御意見はないですか。
(答)一般論としても、私が何かを発言をすることで国会運営が影響するということもあり得ますので、ここはお話ししないほうが適切だろうなと思っています。
(問)独法の関係なんですけれども、昨日、副大臣会議で官房長官から大島副大臣に、独法の役員公募について改めてルールづくりをしてほしいというような指示が出たそうなんですけれども、大臣が考える独法の役員公募での選考の基準ですとか、あるべき選考のあり方みたいなもののお考えがあればお聞かせください。
(答)ガバナンスの問題だと思っておりまして、公開でやったナショナルセンターのガバナンス検討チームの議論はお聞きになっていらっしゃれば、提言が出ております。
 独法の役員公募については、一般的な基準づくりということを否定をするわけではありませんけども、現在ナショナルセンターについては、役員選考委員会もつくっていただいて、そこでその一つ一つの独法の存在理由というか、存在価値と使命、それから運営のあり方等々について、その個性というか特性に従って役員も選ばれなければならない。ただ、あの議論の中でも一般的な基準というのは、おのずから抽出されていると思いますので、その種の問題を一般論として基準としたものがいいものについては基準にすると。さらにその上で各独法を、これは理事長と監事の選任権は各大臣にあるわけですから、そこはよく各独法の持つ特性に応じた役員選考をしていただく。そこはこれまでの例えばある独法のあり方についての反省的に見て、この時代に即した業務を効果的、効率的に遂行するためのガバナンス、役員体制を、候補者の能力・適性等々を含めて作っていかなければならないので、基準にできるものは基準にしていく、個別具体的な役員選考をやる中で普遍的な基準が出てくると、こういうふうに思っていますので、そういうことを独法改革の中で、大島副大臣を中心にやっていこうというふうに考えております。
(問)外国人の地方参政権の問題ですけれども、まず大臣がどういうお考えをお持ちかということと、閣法でやるのか議員立法でやるのか。ちょっと閣内でも意見が分かれているところがありますが、これについてのお考えをお願いします。
(答)一般論としては、私は現在の日本の置かれた状況は「第3の開国」だと思っておりまして、参政権のみならず、外国人に対して我が国を開くとすれば、これは市民権保障をしかるべく行わないと。単に安い労働力を入れて、そして景気が悪くなったら出ていってもらうというふうな、安易なやり方は許されないというふうに考えております。
 そこで、日本の場合には、特に戦前の植民地侵略の歴史があって、その残滓としての在日問題というのがまだまだかかわっておりますので、この方々の人権保障というものを私は若いときからやってきましたし、そのことについて十二分のことをしなければいけないという思いはあります。
 したがって、地方参政権の問題も、その文脈の中では認めていくべきだという主張を今まで述べてきましたが、個別具体的に、今の時期に行うことがいいのかどうなのか、政治判断というのは、また別の問題だというふうに考えておるのが一つと、もしこれだけを取り上げて政治争点化されるとすれば、それはもう少しじっくりと考えなければいけない点もあろうかと、こういうふうに思っておるのが一つ。
 それから、「第3の開国」との関係で言えば、日本人も、あるいは在日の方々も含めて、あるいは今、我々がいろんな意味で東アジア共同体、あるいはアジア共同体の形成に向けて、着実に具体的な歩を進めていこうとすれば、考え方とすれば、我々もダブルアイデンティティーというか、トリプルアイデンティティーを持つということを前提にしなければならないわけで、そのときに国籍条項というのはどういうふうに考えるべきかという議論を改めてしておいたほうがいいと。
 つまり、在日の方のうち、国交がある国の国籍をお持ちの方だけを対象にするとかしないとかという小さい議論では、少々もうここへ来て、21世紀も2番目の10年に入った現在の状況からすると、もう少し大きく、広い、深い議論をする必要があるなというのが、若い時代にいわゆる入管問題等々で人権問題として戦ってきたというか、取り組んできた経験を踏まえた、ある種の今の時点での感慨です。
(問)先日、古川副大臣の会見で、国家戦略室の関係で予算の執行調査というのか、第2次補正予算について、まず仙谷大臣、菅大臣のところで報告を受けて、来年度予算は各省でチームをつくってもらうと。従来の財務省の予算執行調査との違いといったことについて、その辺の大臣のお考えをお聞かせください。
(答)執行調査と決算監査というのは、やや違うわけですけども、我々がやらなければいけないとすれば、これは今までのやり方を総括しながら、より現場性の強いものとかサンプル調査的なことを、個別具体的に事業仕分け的手法を用いてやるということが必要なのかもしれないなと思っています。
 ただ、自治体に対する補助金について、現在執行中のものを調査できるのかどうなのか。これはやったほうがいいのかどうなのか、つまり分権論との絡みもあって、その辺もこれから考えていくべきことだと思いますが。
(問)先ほどの参政権の関係で確認ですが、この時期にやるのは、要は時期は尚早、議論が足りないという認識でよろしいのでしょうか。
(答)私が在日韓国人の人権問題を担当していた40年前、30年前、あるいは20年ぐらい前までの状況と、特に現時点は相当変わってきたと。それはもう僕が明らかに違うなと思うのは、正に政府間のある種のトラブルがですね、日韓だけ取り上げても、両国間で、特にメディア上「炎上する」みたいな格好で問題が出ても、日本と韓国の庶民レベルというか市民レベルの交流というのは、韓流ブームに象徴されるように、ある種揺るぎないものになっていると思うんですね。
 それから、在日のパスポート、ビザの問題も、従来とは全く変わった形になって、そこは交流が行われておると。それから、中国との関係も、もう全然変わってきておると。東南アジアとの関係も変わってきておると。その一方では、ある種の優秀な労働力が欲しいとか、あるいは留学・就学を相互に保障するようなことがもっともっと必要だという議論は、ある種の論調としては正しいわけですね。これ経済界も、あるいは教育界というか大学の世界もですね。
 そういう垣根と国境が全然低くなっている状況の中で、さっき申し上げているように、みんながアジア人、日本人、それから私で言えば「徳島」という故郷の人間として、そのアイデンティティーをどう確認しながら、自らの存在をいろいろ市民権として保障されていくかということですから、韓国の方々であっても、韓国人であって、なおかつアジア人であって、ということだろうと思います。在日の方々は「在日」という、つまり生まれてからこの方ずっと日本で育って、それなりに日本文化というものも身につけられていると。しかし、自分の最終的なアイデンティティーは祖国にあるということは、これは無視するわけにはいかず、尊重すべきことで、そのことをわかった上で、この日本で生活していくということで市民権の保障は当然なされるべきだと思います。
 その一つとして、地方参政権というのがあり得るとすれば、ほかの権利をどう保障するのかということとあわせて、それは大変大きい重要な権利でしょうけれども、地方の政治に参画するということは、私はいろんな判例の積み重ねからして、公務員の仕事に就けるかどうかといったことにも多少かかわってきましたので、政治に関与する権利というか、参加する権利というのは、当然保障されてしかるべきだというふうに思っています。
 私が弁護士になって、4年後、5年後ぐらいだったかな、ある在日の方が司法試験を受かりながら、なかなか研修所に入れなかった。つまり司法修習生になれなかったということがあって、これは当時、我々弁護士が「それは全くおかしい、ある種の民族差別だ」ということで運動して、彼は研修所に入ることができました。研修所に入るということは準公務員になるということですから、駄目だという論理だったんですね。だけども、その研修所に入って、その後、弁護士として活躍を随分されておりました。随分、在日の方々の権利保護のために奔走する立派な弁護士になられておりましたけども。
 そういう原体験を持つものですから、就職も、それから政治への関与も、やっぱりそこはトータルに、人間が生きていくための環境づくりというのはつくっていかなければならない。ただ、国境があるかないか、あるいは相互主義という国際法上の原則をどう考えるのかというような問題は、当然のことながら存在すると思います。

(以上)