仙谷大臣記者会見要旨 平成21年12月22日

(平成21年12月22日(火) 11:10~11:31  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 閣議については、特に皆さん方に報告することはございません。
 閣議後の犯罪対策閣僚会議について、ちょっと気がつきましたことがございました。日本の死因究明体制の強化というのが一番最後に提起されましたが、これは医療にかかわる専門家養成とも関係あるんですけども、法医学の世界がまことに日本はシャビーなまま推移しているということなんですね。
 パロマのガス事故なんかでも、死因究明体制、つまり解剖とか、その他の最近の近代機器を使って死因究明をする専門家が全国的に適切に配置されていれば、もう少し早く、「これはガス機器の問題ではないか」というようなことがわかったはずだという指摘が、法医学の専門家から提起されています。日本の医学界の今の大変困った話は、こういう縁の下の力持ちのところには予算も配分されず、したがって、そこに参入する若い方々もどんどん少なくなり、なおまたそこが乏しい状況になるという悪循環の中に入っている部門が、病理学とか解剖学とか法医学の世界とかにあるんですね。
 これは、本気になってやりませんと、犯罪対策という面からも問題がありますし、それから病死の事故原因に絡む、あるいはそのはざまにある、「犯罪なのか、病気なのか」というような問題でも日本だけが解明できないということになりかねません。
 今、週刊誌あるいはテレビのワイドショー的に興味を持たれている事件がありますよね。お付き合いをしていた人が、次々となぜか死んだと。こういうのも、その都度、迅速で適切な死因究明が行われておれば、割と早く犯罪になるか否かもわかるかもしれません。今、財政的にほとんど余裕がない状態にまでなってしまっているわけですけども、ここに予算措置をするとか、あるいはそういう施策を特別にとる必要があるだろうという思いがございまして、その旨、申し上げました。
 私の担当とは余り関係ございませんが、そのことを報告して、あとは御質問をいただきます。どうぞ。

2.質疑応答

(問)昨日、総理が暫定税率の実質的な維持と、子ども手当の所得制限見送りといった政治決断をされましたが、今回の総理の決断に対する大臣の評価をお伺いできますでしょうか。
(答)私は、総理がこの時点でリーダーシップを発揮して決断をされたことを多としたいと思っております。マニフェストは、国民との約束ですから、これを実行することが必要であり、重要だというふうに認識しております。総理もそのことに大変思い入れが深かったと見ておりました。しかし、客観的な経済状況、税収の問題等々から見て、ここはやっぱり優先順位をつけざるを得ないということでありますから、国民の皆さん方にマニフェストでのお約束を一時延期といいましょうか、今年は御勘弁を願いたいという観点から、政治的な義務履行ができなかったことをお詫びししつ、繰り延べをさせていただくと。
 特に、これだけ環境問題について世界的なメッセージを発信しておるわけですから、脱化石燃料社会を目指す戦略のもとでの環境税といいましょうか、そういうものとやはり並行してやっていかなければならないということで、暫定税率については、ここは国民の皆さん方に失礼をするというような苦しい決断だったと思いますけれども、それでよかったと、私は思っています。
 それから、子ども手当の所得制限のほうは、これは本来、総理も本当は所得制限をすべきじゃないと、論理的にも思いが強かったようでありますけれども、高額所得者問題が出てまいりましたので、多少、所得制限というのもやる必要もあるかなということを頭の片隅でお考えになったような感じもします。ただ、これも現実問題として、費用倒れになったり、地方自治体に迷惑をかけながら、その所得調査の費用とかが所得制約による節約額を上回るような話では、何をやっているのか、わけがわかりませんからね。
 そして、皆さん方にもちょっとお伺いしたいんですが、今の時点での子育て世代の高額所得者というのは、一体全体年収何百万円、何千万円なのかというのは大変悩ましい問題だと私は見ております。
 日本で中流とか中産階級とか言われていた層の生活が、マーケットによって分断・分裂させられようとしており、どうしても低い所得の方々はそうであります。子どもを産んで育て、教育に投資をせざるを得ないという日本の家庭の姿からいいますと、何をもって高額所得者というのか。冗談半分に、要するに国会議員の収入はやっぱり高額所得のほうに入れたほうがいいだろうみたいな議論をしていたんでありますけれども、そうなってくると、1,800万円、 1,900万円ぐらいですかね。そこで線を引くと、もうほとんど若い世代の方は該当者がいないということだそうです。それを行うためには費用が大変かかるし、手続が煩瑣であると。そんなことをやっている間に支給が相当程度遅れるかもわからないと。こういういろんなプラスマイナス考えて、ここは所得制限をしないというもともとの理念、理想どおりに行おうと。これは党側の要望に若干反することになるわけですが、それはそれで、代表のリーダーシップとしてよかったと私は思っています。
(問)官民人材交流センターが廃止されることに伴って、天下り監視のための新組織を来年4月に内閣府に設置するという報道がありますけれども、現時点では、どのような形のものでしょうか。
(答)今詰めているところです。
 独法改革、あるいは政府関連公益法人改革も併せて、この問題については、各府省にある評価委員会、それから人事院、総務省の行政管理局などに、それこそ横串を刺すといいましょうか、横断的に一つの基準でちゃんとした監視が行われているのか、どこまで徹底して行われているのかということを、今、あらゆる観点から見ています。しかしながら我々もわかりにくいところがありますので、改めて内閣人事局をつくる国家公務員制度改革の法案を、今、内閣官房と私どもとで共同して考え方をまとめようとしておるわけでありますが、その中で、新組織をどういう位置付けにするのかとか、天下り問題にどう対処していくのかとか、あるいは、人材抜擢のようなこととどのように関連するのかとかいうことなどを含めて、改めて基準と監視の制度を合理的に考えなければいかんなと、こういうふうに思っているところで、詰めている最中です。
(問)暫定税率の問題について、総理のリーダーシップというのはあるかもしれませんけれども、最終決断に至る過程で、やはりちょっと国民から見るとわかりにくく、総理の考えが変わったようにも見える経緯があったと思うんですけれども、この辺の透明性、公開性について、何か問題があったかなかったか、どういうご認識でしょうか。
(答)まあ、だけど、総理の頭の中の話ですから、あんまりかち割って広げてみろというわけにもいきませんのでね。この問題の、もう一つの要素として、皆さん方御承知のように、地方財源の問題と絡んでますよね。だから、もし行う場合には、どの税目をどのぐらいにするのかと。全面的にやめてしまうという場合には、地方の持っていた財源を誰がどのように担保するのか、あるいは担保しないでもいいのかという大論争になりますが、今回の場合にはそこまでできる税収環境ではないということは、これは誰もわかっているわけですね。
 だから、暫定税率を見直すといっても、その減収について国のほうは歯を食いしばってでも頑張ると自分で言ってしまえばおしまいですけども、地方のかなり重要な財源になっているわけで、そことについての副大臣、あるいは政務官クラスの折衝が、割と時間がかかっていたというのが実情じゃないでしょうか。
(問)今の予算編成の透明化の話に絡むんですけれども、予算編成前までは、菅副総理も藤井財務大臣も仙谷大臣も、「事業仕分けに引き続いて予算編成の過程ももうちょっと透明化する、国民に見えるようにする」とおっしゃっていたかと思うんですけれども、現時点でその透明化ということについては、どのように評価されていますか。
(答)政務官あるいは副大臣クラスの折衝を公開のもとで行うのかどうかということかと思いますが、行ったほうが煮詰まるかどうかというのは、これはなかなかケース・バイ・ケースで考えなければならないと思いますね。
 だから、皆さん方へのブリーフというか、その都度固まったものについてどう説明がされたかということなんでしょうけども、予算の場合のように、個別の問題について財務省と要求官庁の合意ができた段階で随時説明を積み上げていったらいいんだという話がある一方で、今回のように、税収の中でどういう全体的な絵柄を描くのかというような、なかなか難しい話の場合には、これはなかなか要求官庁と査定当局の議論を一つ一つさらすというのは容易ならざる話だと、こういうふうに私は感じております。透明化されればされたに越したことはないのかもわかりませんが、数字の問題でもあるし、数字というのは一遍外に出るとひとり歩きする傾向があるから、やむを得ないのかなと思っております。
(問)予算編成が今終盤に差しかかっているわけですけれども、その中で税外収入がどのぐらいになるのかというのが注目されているところなんですが、大臣は以前、10兆円を超したいということも言ってらっしゃるんですが、幾らぐらいになりそうでしょうか。
(答)そこまでわかりません。これは、最後の一声というか、できるだけ多いに越したことはないというのが政治家の立場ですけども、特別会計の中で、将来のことも考え、理論的にこういうふうにストックすべきだと、あるいはフローの余剰が生まれそうな分について、それをたちまち予算の支出に回していいのかというような議論もあって、ここはやっぱりバランスの問題があるでしょう。私とすれば、10兆円を超えるものを出していただければ、割と姿のいい予算ができるのになと、こういうふうに思っております。今、私は亀井金融担当大臣とはちょっと立場が違いますけども、ここは何とか頑張ってお願いしたいということを、私の立場からは申し上げているつもりです。
(問)亀井大臣と立場が違うというのは、亀井大臣は95兆円の歳出規模のために、外為特会とか、今まで使ってない特別会計の積立金も使って、税外収入を増やそうという話ですけれども、そういう考え方で歳出規模が膨らむことが望ましいのか、それとも税収に見合った形で歳出を切っていくのが望ましいことなのか、そのあたりは大臣はどのように。
(答)歳出で切っていくというよりも、むしろ要するに積み上げて、ある種の従来型予算執行もやったほうが、つまり地域社会の疲弊する建設業を中心の従来型予算執行の方が、お金の使い方としてはかえってスムーズに流れる世界というのもまだあるわけですね。前から申し上げているように、割とソフトのところにお金を使うというのは、余り上手じゃないし、そういうシステムに日本は、まだ切り替わってない。
 だから、例えば昨日、農業土木予算の復活のために来られた大先生がいらっしゃるわけですが、ああいう分野は、予算さえつければどーんと満遍なくその世界全体は潤うみたいな、そういう仕組みはあるんですよね。だけど、これから新たな保育の仕組みを考えて、そこに予算をつけたからって、なかなか予算をうまく使えないと。あるいは、雇用の話なんかは、今まではせっかく予算をつけたのになかなかうまく使えないというようなことがしばしば起こっているんですね。
 しかし、今からある種の地域社会の、例えば農業土木の世界に、この痛みを和らげるために予算をつけろというのは、まことに情緒的には麗しい話だと思いますけども、私は、それではその日暮らし精神みたいな感じになってしまうので、来年や再来年といった将来のことを考えれば、それはよろしくないと。だから、今の質問に対するお答えとすれば、まあ我々が見てもバランスがいいというか、品のいい、ここまで来ても姿のいい予算だなと思っていただける予算でありたいと。つまり、大きければいいとか、積み増したからいいとかという話ではないんではないかと、そんなふうに思っています。
 あと、年末8日、9日、頑張ってください。寒うございますので、風邪など引かないように。

(以上)