前原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成22年9月10日

(平成22年9月10日(金) 13:12~13:41  於:国土交通省会見室)

1.発言要旨

 私の方から三点冒頭に発言をさせていただきます。まず、沖縄政策協議会についてでございますが、本日閣議の前に沖縄政策協議会が開催をされました。会議では私から、沖縄担当大臣といたしまして、沖縄振興審議会の中間報告の概要を説明いたしました。また協議会の下に二つの部会、一つは沖縄振興部会、もう一つは米軍基地負担軽減部会を設置することを決定いたしました。今後、沖縄県始め関係各方面とも相談の上、具体的な議論を進めていきたいと考えております。二つ目は中国の漁船の公務執行妨害事案でございますが、9月7日、尖閣諸島の久場島沖の我が国領海内におきまして、しょう戒中の巡視船「よなくに」が、操業中の中国トロール漁船「ミンシンリョウ5179」を発見して、領海外へ退去するように警告を行っていたところ、午前10時15分に、航走を開始した当該漁船の左舷船首が、巡視船「よなくに」左舷船尾に接触をいたしました。当該漁船は接触後も航走を続け、午前10時56分、久場島の北北西約15kmの我が国領海内におきまして、突然、左に舵を切りまして、巡視船「みずき」の右舷中央部付近に衝突をさせました。さらに、巡視船「みずき」「はてるま」により針路規制、放水規制を段階的に実施をいたしましたけれども、なおも停船をしないことから、久場島の北北西約27kmの我が国領海外におきまして、巡視船「みずき」が強行接舷をして、海上保安官6名が移乗の上、停船をさせました。その後、8日午前2時3分、魚釣島西端から約8.7kmの我が国領海内の当該漁船船内におきまして、同船船長を公務執行妨害の容疑で逮捕いたしました。9日午前10時41分、同人は石垣海上保安部から那覇地方検察庁石垣支部に送致されました。本件は我が国領海内で発生した事案であり、海上保安庁において我が国の法令にのっとり、厳正に対処いたしました。最後に経済対策についてでございますが、本日追加経済対策が閣議決定をされました。本経済対策は、「雇用」「投資」「消費」「地域の防災対策」「規制・制度改革」を五本柱として、即効性があり需要・雇用創出効果が高い施策を厳選して実施することとしております。国土交通省に関連する施策といたしましては、「雇用」の基盤づくりとして、観光業における雇用創造・人材育成の推進、「投資」の基盤づくりといたしましては、新たなPPP/PFI事業の案件形成支援、「消費」の基盤づくりといたしまして、住宅エコポイント制度の延長及び優良住宅取得支援制度、いわゆる「フラット35S」の大幅な金利引下げの延長、耐震化・ゲリラ豪雨対策等の「地域防災」としての道路、河川等の防災・震災対策、日本を元気にする規制改革100として、都市再生の推進や老朽建築物の建て替えの促進に資する容積率緩和等18項目が盛り込まれております。これをしっかりとこれから実行するように努力をさせていただきたいと考えているところでございます。具体的に予算を申し上げますと、本経済対策で活用する経済危機対応、地域活性化予備費の全体総額は約9,200億円でございます。具体的な予算額につきましては9月中に決定をされる予定でございまして、現在引き続き調整中でありますけれども、国土交通省関連についてはおおむね以下のとおりでございます。観光業における訪日外国人に対応した人材育成事業の拡充は数千万円程度、海運業における若年船員の雇用支援策は1,000万円程度、それからPPP/PFI事業の案件形成支援は、既存の予算の活用でございますけれども、今、具体的な案件形成を行っている最中でございます。住宅エコポイント制度の延長、他省分も含みますが1,400億円程度、「フラット35S」の大幅な金利引き下げの延長は2,200億円程度、ゲリラ豪雨対策と緊急防災対策、公共事業の国土交通省関係ですと700億円程度、非公共は20億円弱でございます。予算額を国土交通省関連で申し上げますと、先ほどの住宅版エコポイントの他省庁分を含めた数になりますけれども、4,000億円台の前半となります。私の方からは以上であります。

2.質疑応答

(問)まもなく、大臣就任1年を迎えられますが、改めて御自身の実績について最も評価できる点、課題点をごく端的に挙げていただきたいのと、加えて代表選の結果如何では、新たな人が大臣に任命されるという可能性もありますけれども、そのことについて御所見をお願いいたします。
(答)政権交代で大臣にならせていただきまして、長年続いた自民党政権のツケをどう払っていくのかと、変えていくのかということで二つのことをしてまいりました。一つは人口減少、少子高齢化、莫大な財政赤字という制約要因の下で、公共事業費の見直しを行うこと、総花的に行われていた公共事業費を見直すということで、例えば河川については、できるだけダムに頼らない治水、あるいは港湾については選択と集中、そして空港については新たな空港整備は基本的に行わない、また整備新幹線についても既着工については粛々と進めてまいりますけれども、未着工については厳格な評価を行うということで、公共事業費の抑制を全体的に行ってまいりました。他方で、国土交通省はインフラをつかさどる役所ではありますけれども、同時に経済官庁でございまして、いかに成長をもたらすかということで、成長戦略作りに大臣就任直後から取り組んでまいりまして、5月17日に答申をまとめていただいたところでございます。この5月17日を待つだけではなくて、それ以前に例えば観光客の問題であれば、千歳空港の海外からの、いわゆる離発着枠の拡大、これは防衛省の御協力を頂きましたし、また他省の御協力も得て中国人観光客のビザ発給要件の緩和なども行ってまいりました。また成長戦略といたしましても、重要港湾の選定ということで、たくさんの重要港湾を43に絞り込む、また釜山や高雄、上海、香港、シンガポールに負けている国際港湾の競争条件を高めるために、国際コンテナ戦略港湾を2港に選定いたしましたし、今、国際バルク戦略港湾の選定も行っているところであります。また、空港関係で申し上げますと、羽田の24時間国際拠点空港化というものを宣言し、それについての整備を促しているところであります。例えば、羽田のターミナルビルの再拡張、あるいは成田におけるLCC、プライベートジェットのターミナルの設置に対する協力要請等、様々なことをやってまいりました。また住宅においては、生前贈与非課税枠の拡大ということで1,500万円、フラット35Sの金利の引下げ、あるいは建築基準法の運用改善ということで、提出図書の半減、あるいは申請期間の半減を目指した運用改善をもう既に行っているところでございますし、住宅版エコポイントの導入というものも景気刺激にある程度の効果があるのではないかと思います。また他方で、ダムによらない治水ということで、今見直しを行って、そして有識者会議の評価軸がまとまったところでございますけれども、具体的な検証はこれからでございまして、当該地域の皆様方にはダム建設を苦渋の選択として受け入れてくださった皆様方には大変お辛い思いをさせてきたということについては、率直に私はお詫びをしなければいけないというふうに思っております。やってきたことは今一部でございますけれども、評価は後世の方々、国民の方々にしていただくということで、この公共事業費の選択と集中、在り方の見直し、評価軸の見直しを引き続きやっていくと同時に、それから成長戦略を軌道に乗せるための施策をまとめておりますので、法改正、税制改正を含めてそれをしっかりとやっていくということが大事なことだと思っておりますし、もし私が代わることになれば、そういった方向性は是非引き継いでいただきたいと、このように思っております。またもう一つだけ申し上げると、これは野党時代に、天下りの根絶、そして公益法人の原則ゼロベースの見直しということを私どもは国会で追及をしてまいりました。これについては私は大きな所から手が付けられたと思っておりますし、道路保全技術センター、あるいは建設弘済会、あるいは空環協、駐車場整備推進機構等々、大きな所の解散ということも決定をしたところでございますし、天下りの根絶ということで、新たな天下りは認めないということもやってまいりました。大きな所については手が付けられておりますけれども、小さな所についても引き続き行っていかなければいけない改革だと思っておりますので、私がやるにしても他の方がやられるにしても、今申し上げた方向性は政権交代のやはり国民への責任としてしっかりとやり続けていきたいし、やり続けていっていただきたいと、このように考えています。
(問)先日の参議院国交委員会の質疑に関連してお尋ねしたいのですが、道路のB/Cの評価について、時間短縮、走行経費の減少、交通事故の減少の三便益に加えて、救急医療の観点ですとか、そういうプラスアルファを加味したB/Cの在り方をしっかり確立したいとの御趣旨で御答弁がありましたけれども、改めてこのお考えの具体的な趣旨と検討の今後のスケジュール感、予算編成への反映の考え方、こういったことを今後の流れも含めて御説明いただきたいのですが。
(答)これは従来から国会でも答弁をしてまいりましたけれども、三便益にプラスをして、いわゆる「命の道」としてのミッシングリンク解消というものの観点、それから観光振興というものの観点、こういったものを三便益、つまりは時間短縮、費用縮減、あるいは交通事故減少、この三便益に加えて加味すべきではないかということを申し上げてまいりました。ただ専門家の皆様方の議論の中で、「命の道」というものについては時間短縮とかぶるのではないかと、ダブルカウントになるのではないかと、こういう御指摘も頂いておりまして、現在試行という形で検証していただいているところでございまして、その検証結果を待ってどのような費用便益の在り方がいいのかということを、更にバージョンアップするための取組を進めてまいりたいと考えております。
(問)具体的な検討の取りまとめの時期ですとか、そういったもののめどはまだ立っていないのでしょうか。
(答)まだめどは立っておりません。
(問)経済対策ですが、円高で景気の先行きが不透明と言われていますが、今回の対策の規模や内容というのが、今の状況を打開していけると思われるかどうか、どのような評価をしているのかという点と、この中でPPPとPFIの案件形成が入っていますが、これについてどういう分野でいつまでに事業を決めていきたいと考えていらっしゃるのか、二点お願いします。
(答)大事なことは、デフレを脱却させるということ、これが一番大きなポイントだと思いますし、言ってみれば20年間前政権でできなかったことを我々としてやっていかなくてはいけないということになろうかと思います。その意味においては、短期的に対症療法として行うべきものと、中長期的に日本の経済の仕組み、あるいは体質そのものを変えていくという両面が必要なのだろうと思いますし、先ほど1年間何をやってきたんだということの中で、例えば公共事業費は抑制をし、選択と集中を行う。今までの自民党政権下における景気対策というのは、公共事業費の上増しというのが大きなポイントを占めていたわけでありまして、公共事業が全て悪いとは申しません、必要なものもございますけれども、カンフル剤にしかなってこなかった、あるいは額を確保するために不要不急なものまで取り組まれていたのではないか、そういった面があったわけであります。それをいわゆる成長戦略、できるだけ財政に頼らないという形の中で、あるいは財政も少しだけ、例えば住宅版エコポイント、これはテコです。そしてまた、観光というのは、これは財政に頼らなくて済むと。こういったもののいわゆる体質転換を政権交代で進めてきたのは事実でございます。ただやはり、現下の厳しい経済状況を考えたときには、私は今回の経済対策というのは第一弾というふうにとらえるべきではないかと、このように考えておりまして、まずはこれをしっかりやるということ、そして経済状況を見ながら臨機応変にしっかりとした対応を取ることが政府与党としての責任ではないかと考えております。PPP/PFIのことでございますが、様々な分野での案件形成を模索をしております。都市の関係では、自治体との協議の中で具体的な案件模索というものをしております。あるいは港湾関係であるとか、研究段階ではありますけれども鉄道とか様々な形での模索はしているところでございます。いずれにいたしましても、中心になってくるのは都市の再生にかかわることが大きいものでございますので、当該自治体と御相談をしながら案件形成を出していって、これだけ財政状況が厳しい中で、例えば高速道路の更新もやっていかなければいけないわけでございますけれども、いかに民間資本を入れていくのか、あるいは皆さん方にも視察に御同行いただきましたけれども、UR都市機構の公営住宅もかなり古くなっているものがたくさんあります。建て替えなければいけない、エレベーターも設置されていない、こういうものを建て替えていく際に医療法人、社会福祉法人、医療関係の株式会社、こういったものの参入を促して、そして建て替えを民の力も借りながらやっていき医住近接というものを実現をしていく、こういったものも案件形成で取り組まさせていただいているところでございます。
(問)今日の沖縄政策協議会についてお伺いしたいのですが、基地負担軽減部会では普天間問題を現段階では取り扱わないということを昨日官房長官がおっしゃっていましたが、今日、総理が冒頭の挨拶の中で基地問題の喫緊の課題としては、嘉手納以南の基地の返還の問題があるという認識を持っていますというふうにおっしゃっていますけれども、米軍再編は普天間と嘉手納以南について密接に関連していると思いますが、将来的に部会の中で普天間問題について取り扱う場になり得るものとして大臣自身お考えなのかということと、昨日の沖縄・北方特別委員会でポスト沖縄振興計画の期限については従来の10年ではなくて、もっと短いものにしても良いのではないかという御趣旨の発言がありましたが、県としては新たな法律は恒久法を求めていているのですが、大臣としては法律は恒久法にして、計画はその都度見直していくというお考えなのか、この二点お願いします。
(答)今回の沖縄政策協議会の設置に関連して、二つの部会が作られました。沖縄振興部会、そして米軍基地負担軽減部会の二つでございます。この米軍基地負担軽減部会については、当面は普天間の問題について議論することにはならないと思います。なぜならば、日米両国の間では専門家協議におきまして8月末に一定の方向性というのはまとめたわけでございますが、沖縄県にはお願いはこれからということでございますし、知事からは再三、なぜ方針が変わったのかという明確な説明がないという御指摘を受けているわけでございまして、そういう意味では、まずは沖縄政策協議会の場で総論としての、やはり鳩山政権の時の考え方がどう変わったのかという総括、これをしっかりとやはり沖縄県民の皆様方にお詫びも含めてお伝えをすることが大事だと思っておりますし、当面は含まれることにならないと思っております。ただし、この基地負担軽減においてはいくつかの観点があると思っておりまして、一つはですね、これは振興部会で議論をするポスト沖振と同時に、たとえば軍転法については同時期に切れるわけでありまして、その後のいわゆる跡地利用についてどうしていくのかというスキームの議論と、あとは今の軍転法について見直してほしいというポイントをいくつか沖縄県から御要望を頂いております。それについてしっかりと議論をしていかなくてはいけないと思っておりますし、また土壌汚染があるケースが多々あると思います。実際に返還された場合も、その際どういうような浄化策を行うのか、あるいはそれぞれの基地における、いわゆる返還後の利用計画、こういったものについては当該自治体の皆様方と、あるいは県と御相談をしながら、今から準備をしておくということも大事だというふうに思いますので、将来的には私は沖縄の皆様方の御理解を頂き、返還後の普天間基地の問題も含めて考える、あるいは移設に関する様々な負担軽減というものについての議論の場になるものと思っております。あと、ポスト沖振の期限の問題についてでございますが、これは今後沖縄県や、あるいは様々な専門家の方々との話合いを進めていきたいと思っておりますが、私の本心は沖縄の真の自立、持続的な経済発展をどうすれば担保できるのか、10年間という計画、それは固定してもらった方が安心だという意見もあるかもしれませんが、大事なことはそれがどうしっかりと実行されるのかということでありますし、また社会状況の変化というのは極めてスピードが早いわけでございますので、10年間で固めたものが、例えば後半、時代背景に合わなくなったものも出てくる場合においては、結果として私が目的としている沖縄の真の自立、持続的な経済発展につながっていかないという面もあると思いますので、そういった観点も加味してしっかりと議論させていただきたいと、このように考えております。
(問)政策協議会についてなんですけれども、今日、これが開催されたことの評価とですね、両部会がいつごろ開かれるという見通しなのか教えて下さい。
(答)最も沖縄のことが良く分かっておられる知事も加わっていただき、議論の場が政府と県との間でできたということは大変良かったと思っておりますし、沖縄の皆様方の思い、怒り、そして政府に対する御要望、これを真摯に我々は受け止めていかないといけないと考えております。なお、両部会についてどのようなタイミングで動かされるかということについては、官房長官と沖縄県の間で議論がなされることになろうかと思います。
(問) 代表選なのですけれども、各紙の報道を見る限りは菅総理がリードしているというような報道が増えてきているのですけれども、大臣の御実感としてはどうなのか。また、今回の選挙戦と選挙戦後でですね、自らどのような役割を果たしていきたいと思っておりますか。
(答)選挙を今まで計7回、自分の選挙をやった人間としてですね、優勢と書かれることは決して良いことではありません。緩むという部分もありますし、候補者を殺すのには刃物はいらないということをよく言います。そういう意味では、こういう優勢であるという報道がなされることは、菅陣営にとってはマイナスであるという認識を強く思っております。と言いますのも、我々自身、特に議員票を中心として票読みをしておりますけれども、小沢陣営の方が我々の票読みでは多いわけでございまして、そういう意味では菅陣営が優勢であるという皮膚感覚は全く持ち合わせておりません。しっかりと最後まで力を入れて、戦い抜きたいと思っております。今後のことについてと、9月14日の後についてということでございましたけれども、それはそれぞれの方の、どういう仕事をしていただくかということについては新たに代表になられた方がお決めになることだと思いますが、私の役割としては当然ながら、挙党一致体制が取れるようにですね、代表選挙というのはあくまでも党内の戦いであって、いよいよ代表選挙が終われば、これはもう一度、党内一致団結をして責任与党としての役割を政府一体となって果たしていくということが大切でございますので、その役割の一端でも微力ながら担えたら本望だと思っております。
(問)アメリカの国防総省の方が、オスプレイの配備ということを日本側に伝えているという発表がありましたけれども、大臣がお聞きになられているかということと、以前もオスプレイが配備されるとアセスのやり直しも必要になるのではないかというような言及がありましたけれども、普天間の代替施設に配備されることについての影響についてお伺いします。
(答)まず、オスプレイ配備について具体的にアメリカ側から聞いているか、ということについては直接も間接もございません。また、オスプレイが配備されたときの環境影響評価のやり直しについては、これは飛行経路、あるいは基地の面積、そういったものもかかわってまいりますので、それがどうなるかということ次第ではないかというように思っております。

(以上)