菅大臣記者会見要旨 平成22年6月1日

(平成22年6月1日(火) 10:06~10:38  於:官邸記者会見室)

1.発言要旨

 家畜伝染病予防法に基づいて、宮崎で発生した口蹄疫により殺処分になった家畜に対する手当金の概算払いを進めているところでありますが、万全を期するため、本日96億円の予備費使用の決定を行いました。この予備費の決定は、5月19日の口蹄疫対策本部決定に沿うものであり、宮崎県においても農家支援のため支払い手続の迅速化に努められるよう希望しております。実はこの口蹄疫に関する色々な費用の手当ての問題は、大きく言えば、もともと存在する家畜伝染病予防費、家畜伝染病予防法に基づく枠組みと、先日議員提案され成立して6月4日に施行される口蹄疫対策特別措置法に基づく支出と大きく2つに分かれることになりますが、今日決定したのは、従来からある家畜伝染病予防法に基づくもので、分かりやすく言えばこの法律に基づいて、いわゆる口蹄疫に感染した家畜を殺処分にする、あるいはしたものに対する補償というのか、その分の費用を払うという部分であります。まずは第1弾ということで、今後さらにこの法律、つまり家畜伝染病予防法に基づいての費用もさらに発生することが予定されております。と同時に、先ほど申し上げました議員提案で出されて成立した口蹄疫対策特別措置法に基づく支出は、今後順次協議をして対応していくことになろうと思っております。なお閣議決定等が必要かどうかという問題については、この家畜伝染病予防法に基づく支出は、既に閣議決定が一般的になされておりまして、そういう位置付けがありますので、財務大臣が予備費の使用を決定出来る仕組みになっており、今日この96億円分について決定をしたところです。国会会期中の予備費の使用についても、この部分については出来るという認識でおります。なお、口蹄疫対策特別措置法に基づくものについては、これからの調整ですが、支出をする場合には閣議決定が改めて必要になるであろうと。しかし国会会期中の予備費の使用ということに関しては、災害等に相当するという考え方で、それは可能と、こういうふうに考えております。

 もう1点、今日平成21年度税収の見通し等について一部公表が予定されております。概略的なことを申し上げますと、平成21年度の第2次補正予算において、いわゆる税収見通しを麻生内閣当時の46.1兆から36.9兆と9.2兆円減額をしたわけです。その補正後の予算額36.9兆に対して、それがどうなるかということで、最終的には、特に法人税については5月末までに収納されるものがカウントされる、3月期決算の法人の分ですが、それで最終的な数字は概要が判明するのが例年6月下旬頃であり、7月初旬に公表ということになっております。従って現時点では4月末までの実績しか判明していないことから、21年度税収の水準について確たることは言えませんが、この間の傾向としては、補正後の予算額36.9兆円を上回る可能性が出てきていると、景気の回復に伴って上回る可能性が出てきております。ただ、前もって申し上げますと、企業収益が改善してきておりますが、その改善がすぐに税収に反映する部分とすぐには反映しない部分があるということをご理解いただきたいと思います。例えば、大きな赤字だった会社が赤字の幅が小さくなったといっても、赤字である以上は、いくら収益が改善したからといって黒字になってくれないことにはまず法人税がかからないということが1点ありますし、また黒字になったものでも、過去の赤字を繰り越しすることが出来る制度によって穴埋めをしますので、そういう場合も税収増という形では出てこないことがあります。そういった意味で企業収益の改善が見込まれるわけですが、今申し上げましたように補正後予算額は何とかクリア出来そうでありますが、そういった制約もあり、どこまでそれを超えることが出来るかは、最終的には6月下旬ないしは7月初旬ということにきちっとした形では公表することになっております。私の方からは以上です。

2.質疑応答

(問)先週末の朝日新聞、報道各社の内閣支持率、世論調査ですが、軒並み10%台に低下しました。参議院を中心に民主党内でも鳩山総理のままでは選挙を戦えないという声が強まっております。これについて鳩山総理のままで参議院選挙を戦えると思っていらっしゃるかどうかというのが1問目です。
 2問目ですけれども、この間、普天間問題あるいは社民党の連立離脱という事態を招いたわけで、これについての責任において総理の判断ミスというものがあったというふうにお考えになられますか。
(答)世論調査の数字も大変厳しい状況にありますし、また参議院選挙、特に候補予定者の皆さんの話を色々直接・間接に聞きますと、大変街頭での反応も厳しいと、そういうことは耳にいたしております。そういった点で現在の状況が非常に厳しい状況にあるということは多分、これは民主党の中のほぼ全ての人と言っても良いと思いますが、そういう認識は共通していると思っております。そういう点で何かこれからの活動の中で、確かに色々この8カ月間不十分な点もありましたけれども、かなりやれてきていることもあるわけでありますので、そういうことをしっかりと国民の皆さんに理解してもらえるような努力を一層しなければならない、このように思っております。
 普天間や社民党の連立離脱について、総理の対応に問題があったのではないかという趣旨のご質問であります。やはりこの問題は大変難しい問題であると。前政権時代も非常に時間をかけての調整が進んでいたわけでありますし、そういう点では大変難しい問題であるわけで、そういう点で総理としては政権交代という大きな変化の中で、ある意味で総理自身が思っておられたことを、ベストの道を選択出来ないかという努力をされたわけですが、結果として今回のような形の日米合意に落ち着いたというか、なったということで、そういう点では総理自身、この場の記者会見で国民の皆さんに謝罪をするところは謝罪をされたわけであります。そういう点では、これは総理ご自身の判断も含めてやはり十分ではなかったという認識はお持ちだと思いますし、私もその点は十分であったとは言えない、このように思っております。
(問)一方、内閣を支えるべき政権党である民主党執行部のメンバーの中から総理退陣論が出ていることについて副総理はどのようにお考えになりますか。総理の進退に言及するような、執行部のメンバーも含めてですけれども、そういう党内の状態を生んでいることについて、党の執行部の方にも責任というものはあるというふうにお考えになられますか。党の執行部の方にもそういう党内の状況を生んでいる責任があるというふうにお考えになるでしょうか。
(答)どういう意味の責任ですか。
(問)党内掌握が出来ていないというような言い方も出来るのかなと思いますが。
(答)こういう場面は私も色々な時期に色々な状況に立ち会ったことも当事者としてもありますし、他党ではありますが自民党の色々な時期の中でも色々なことがあります。先ほど申し上げましたように、候補予定者として色々活動されている皆さんからすると、なかなか候補者の努力だけでは越えられないいわゆる逆風と言うのでしょうか、そういうことについて色々何とかしてほしいという意見を言われるというのは、それは自然発生的なところでありますから、そういうところが出てくるのまで何か執行部の皆さんの対応が悪いという、そういう意味の責任ということにはならないと思っております。と同時に、この間しっかりと執行部の、党の皆さんも鳩山政権を支えてきていただいたわけで、と同時に特に党の関係の皆さんが中心になって参議院選挙の準備を進められてきたという、そういう多少の役割分担もありますので、まさにそういう立場でそうした候補者の声を踏まえて色々言われること自体が、すぐに何か責任とか責任でないというふうな位置付けをすることにはならないだろうと思っております。しっかりと総理と、総理ご自身がまさに党の執行部のトップでもあるわけでありますから、他の党の執行部の皆さんともよく話し合われて、しっかりした選挙に対する対応のあり方を、それはそれとして方向付けを出していかれるのではないかと、このように思っております。
(問)端的に言って、副総理はこのまま総理を交代しないで、続投のまま選挙に臨むべきだとお考えなのかというその1点を確認したいのと、社民党の中で内閣不信任案や総理問責が出た場合、賛成するという動きがありますが、特に参議院の場合、与党で過半数ぎりぎりの状況で、造反が出たら、万が一にも問責が可決する可能性も指摘される声もあると思うんですが、問責の可能性について、どう対応していくべきだとお考えでしょうか。
(答)今も申し上げましたが、参議院選挙を今の体制で迎えるべきかという趣旨のご質問ですが、今の私の立場は鳩山政権の下における閣僚という立場で色々財政や経済を中心にした役割を担っております。ですから選挙のことはもちろんぜひ選挙でも国民の皆さんから理解を得られるような努力をそれぞれの立場、私も含めてやらなければならないと思っておりますが、今の体制云々ということについて言えば、今、私の立場は鳩山政権のもとで鳩山総理を支えるという立場には変わりありません。もともと任期いっぱいの4年間総理をしっかりと務めていただきたいということを申し上げてきましたし、その気持ちは今でも変わっておりません。
 問責決議について社民党の皆さんから発言があるというのは報道を通して聞いております。問責決議案が出た時にどういう形になるのか、客観的にはかなり安定的な過半数という形にはなっておりませんので、非常にある意味その決議が成立するかどうか、数の上で見るときわどい状況にあるというふうには客観的には見ております。ただ最終的にどうなるかということはもちろん、もし出たとしても分かりませんし、問責決議の持っている法律効果というものは不信任案とはかなり違いますので、それに対する対応も今からあまりそういう状況を予測して、特に私のような閣僚という立場であれこれ申し上げるのは適切ではないと思います。
(問)先ほど税収が見込みを上回るのではないかというお話がありましたけれども、水準からすればかなり過去に比べても低い水準になるという実態についてどう思われるのかというのが1点。2点目がその関連で、水準を安定するためにかねてから財政健全化というのを大臣はおっしゃっていましたけれども、支持率が下がっている中でも、このご主張というのはきちんとおっしゃられるのか。また中期財政フレームなどできちんと目に見える形で、国民に分かる形で出てくるのか、そこら辺のお考えをお聞かせください。
(答)まず税収の見通しについては先ほど申し上げましたが、いずれにしても補正後予算額としての見込みが36.9兆円で、これを何とか超えるとしてもそんなに大きく超えるというふうには見ておりません。そうしますと、例えばどの程度を超えたとしても、もともと多い時には60兆からの税収があったわけでありますので、40兆を切っている今の状況というのは極めて低い水準だということは、これは客観的に見れば、誰の目からも明らかだと思っております。
 こういう中で今後の財政運営、あるいは税制についての議論でありますが、基本的には従来から準備している段取り、あるいは考え方を特に何か変えなければならないとは思っておりません。逆に言えばOECD、これは私が行けなくて津村政務官に行っていただいていますが、OECDでの議論などでも、OECDというのはどちらかというと経済の議論をするので、財政の議論はあまりしない、相対的にはしないところだと言われていますが、そういう中でさえやはり財政の健全化ということが言われておりますし、また日銀総裁も、今日の新聞を読むとギリシャのことは目覚まし時計だというような表現をされております。私は早くその目覚まし時計で目が覚めたのかもしれませんが、やはりしっかりとそれぞれを担当する人達が、我が国の状況をよく認識を深めて、どうすべきかをさらに議論をしていくと。そういう中で中期財政フレームあるいは財政運営戦略、もう6月に入りましたので今月中には、これは仙谷大臣、国家戦略室が中心ではありますけれども、私も深く関わっておりますので、しっかりしたものを出して、国民の皆さんあるいはマーケット関係者にしっかりとした信認が得られるような、そういうものにしなければならないと、こう考えています。
(問)今週末、韓国でG20会議が開かれますが、今の政局の状態を受けてG20の会議に欠席ということもお考えになっているのでしょうか。
(答)全く考えていません。出席予定です。
(問)今日から子ども手当の支給が一部自治体で始まりましたが、これに対して今予定されている経済効果等々がありましたら教えていただきたいのと、もし無ければそれに対する期待感についてどのように考えているか教えてください。また、来年度については満額支給するのか、あるいは現物給付の選択肢を取るのか、幾つかまだ検討中ということですが、大臣ご自身はどう考えているのか教えていただきたいと思います。
(答)子ども手当についていよいよ支給が始まるということで、マニフェストの大きな、つまり公約の大きな1つが少なくとも初年度としての、当初最終的に予定している2分の1を初年度、制度を創設して支払うと、まさに色々議論が色々な他の問題もありますが、マニフェストとしての実行ということをぜひ皆さんにも十分ご理解をいただきたいと思っております。
 その経済効果について、実は多少の予測は色々な仕方はあるのですけれども、しっかりした効果の推計なり、それの検証というのは多少時間をかけてやらなければいけない、それもどういうやり方があるのか、アンケート的なやり方等々若干の検討をいたしております。一般的には現金給付を受けたものがどれだけ消費に回るかということになるわけですけれども、少なくともプラスの効果があるということは間違いなく言えると、このように思っております。どの程度であるかということについては今この場で数字を挙げるという状況にはありません。またしかるべき段階ではそういうことも検証したいと、このように思っております。
 期待感についても、色々な立場の方がおられると思いますが、これは私の気のせいかもしれませんけれども、多少今若い皆さんも子どもということにより関心を強めて、3人、4人子どもを持ちたいといったような方の声も耳にしますので、この効果とまでは一足飛びには言えませんけれども、少なくとも子どもを大事にしよう、あるいは子どもを出来れば多くという言い方が良いかどうか知りませんが、子どもを産んで育てようという人が、そういう関心が高まっているという意味での期待感は、私はあるというふうに思っております。
 今後については、現在マニフェストについての議論の場でかなり煮詰まっていると認識をしております。確か、表現が正確かどうかちょっと皆さんで検証していただきたいのですが、来年度以降については現在の月額1万3,000円に上乗せをしていくと。その上乗せの部分については現金であるか、現物給付であるか、どの程度であるか、そういったことについて、今、党と内閣のメンバーも含めた企画会議などで議論が煮詰まりつつあるという認識を持っております。私の立場でまだこのことをあれこれ、あまり深く言うことは多少差し控えたいと思いますが、やはり現金給付には現金給付としての効果がありますし、現物給付には現物給付としての効果があります。現物給付の場合には雇用を生み出すという効果、つまりは保育園なり幼稚園を増やしていく、そしてそこに雇用が生まれる、そしてそれを通して子どもを育てることに対する支援にもつながっていくということを考えますと、上乗せ部分についてそういった実物的な給付というものが盛り込まれる、そういう可能性は十分あるわけですが、そういうことは、私は雇用という側面から見ると好ましいことではないかと。特に雇用というのは、別の表現をすると仕事です。またさらに別な言い方をすると需要です。やはり新成長戦略の中でも需要の拡大、雇用の拡大、それがデフレの解消にもつながるというふうに見ておりますので、理論的にもそう考えておりますので、そういった方向がより望ましいのではないかと私は思っております。
(問)先ほどの普天間の質問に対するお答えの中で、私も十分だったとは言えないと思うというふうにおっしゃっていましたけれども、とはいえ国と国との約束というのは非常に大事なので、そう簡単に覆せないものだと思うのですけれども、民主党政権が続いて今後何年か、いつになるか分かりませんが、総理大臣が例えば交代したりした時に、それがまた見直される可能性があるのか、それともやはり民主党政権である限り、この日米間の文書というのは見直すべきではないというふうにお考えなのか。
(答)一般的に国と国との政府間での約束というのは、もちろん条約のように国会手続で批准という手続がなければ発効しないものもありますが、政府間の約束というものが大きな意味を持つことが一般的だと思っております。そういった点で一般的な言い方で言えば、いったん約束したことを、大きな状況の変化とか何かがさらにあった場合について再議論することは一切ないとは言えない、あり得るわけですけれども、一般的に言えば約束をしたことは、その約束の実行に向けて努力をするというのが当然だと思っております。普天間の問題、先ほど申し上げたように前政権と言いましょうか、自民党政権時代から両国間の合意があっても現地の皆さんの理解がなかなか得られなくて、その時代の方も苦労されたわけですが、そういう点で両国間の合意ということについては今申し上げたようなことですが、それが合意されればどんどんそれだけで進むことが出来るかどうかというのは、やはり地元の理解というものが大変重要な、必要な要素になっていくのではないかと、こう思っています。

(以上)