菅大臣記者会見要旨 平成22年5月11日

(平成22年5月11日(火) 9:54~10:23  於:官邸記者会見室)

1.発言要旨

 ギリシャ問題に端を発したユーロ圏の問題が、一応の合意を見て安定化に向かいつつあることは大変喜ばしいと思っております。この問題では先週末の金曜日からG7の電話での会議というものも断続的に開かれておりまして、その経緯は私もその都度電話会議にも参加をいたしましたので、ある意味ではヨーロッパの動きも同時並行的に把握をいたしておりました。結論的にはご承知のように、EUの財務相理事会において、色々組み合わせはありますけれども、合計で5,000億ユーロの金融安定化維持の包括的パッケージが決定され、またIMFにおいてもそれに2,500億ユーロの1つの枠が提示をされたと。そういう中でさらに欧州中央銀行がユーロ圏の国債及び民間債券市場への介入等の実施についても触れているということで、巨額の資金が用意されるという中で、マーケットも安心感を取り戻したということだと理解しております。我が国はIMFに大きないわば融資枠を提供しておりますし、そういった立場で、もちろんユーロ圏ではありませんし、EUでもありませんが、IMFを通しての支援という形で、この枠組みが出来ることに一定の役割を果たしたものと、このように理解をいたしております。今回のことで一定のマーケットの信認が回復しつつあるわけですが、やはり翻って今後のことを考えますと、これまで以上にソブリンリスクというものが注目される、あるいは敏感にそういうものにマーケットが反応しやすくなっていると思っております。今、我が国の財政状況に関しても債務残高は先進国の中でダントツに高いという、GDP比率が高いという中にありまして、現在、党と政府の間での色々なマニフェストをめぐる議論の中でもかなり財政健全化についてもしっかりと取り組むようにという指摘が、党の方からもいただく声が強くなってきております。私としてはやはり、我が国も今申し上げたように債務残高が先進国中、GDP比で最大であるということを踏まえますと来年度の予算編成に当たっては新規国債の発行は、これは現在進んでいる枝野大臣による無駄の削減などにも大きく期待しながら、新規国債の発行についてはやはり今年度、平成22年度の44兆3,000億円を超えないで済ませるように全力を挙げる必要がある、全力を挙げて努力する必要があると、このように考えているところであります。私からは以上です。

2.質疑応答

(問)B型肝炎訴訟の和解勧告の対応についてであります。14日が1つの期限になっているかと思いますが、内閣としての対応について今どうなっているのかというのを伺います。
 2問目ですけれども、2011年度の予算編成に関連していわゆるシーリングを復活させるかどうか、これについて現段階での大臣のお考えを伺います。
 3点目ですけれども、今冒頭おっしゃられました来年度の予算編成に関連して新規国債の発行については22年度の44兆3,000億を超えないで済ませるように全力を挙げる必要があると。ただ今現在、民主党のマニフェストの中では新たな新規事業、福祉関連の例えば1兆円の新たな新規事業というものも盛り込まれております。参議院選挙のマニフェストにもかかわると思うんですが、新発債44兆3,000億円を超えないで済ませるようにするためにはさらなる削減努力というのが、歳出の枠をはめる必要があるかと思うんですが、具体的なお考えが今大臣におありになるんでしょうか。
(答)B型肝炎についてはいつも申し上げていますように、仙谷大臣を中心にした対応の、いわば閣僚会議も出来ておりますので、仙谷大臣の指導の下で対応していくと、このように理解いたしております。
 シーリングということについては何か言葉が多少色々に理解されて、色々に表現されるわけですが、私がかつて申し上げたのは、もし私の言葉ということで言えば最近はあまり言っておりませんが、つまり従来型のシーリングというのは最初にシーリングありきだったわけです。つまりは金額の枠があって中身はその枠の中に収まれば何でも良いのだと。そうすると非常に質の悪い財政出動は残りながら、質の良い財政出動が逆に止められるということも、シーリングの枠の中であれば各省庁に任せると。もっと分かりやすく言えば、天下り先にはちゃんとお金は積むけれども、国民にとって必要なものは場合によっては削ってもシーリングの枠にさえ入っていれば良いという、そういう悪しきシーリングということも念頭にあったわけです。ですから今年度の予算の編成に当たっては当初シーリングを外したというのは、そういうシーリングという枠の中で、しかもそれは多くの場合はプラスマイナスせいぜい5%幅程度のことでありますので、そういうことではなくて、まさに「コンクリートから人へ」という大きな変化をもたらすには政治的な主導性が必要だということで、シーリングを外した予算編成を今年度はやったわけであります。来年度の予算編成に当たってどういうやり方をとっていくのか、少なくとも従来のような意味でのシーリングを復活するということは考えておりません。つまりは、中身は各役所に任せるから何が何でもこの枠だけは守れという発想に戻るつもりはありません。そこはきちんとマニフェストを含む、今新たな方向性を議論しておりますが、そういうことに沿ってやるわけですが、その中でさらに部分的にこういう範疇からもうちょっと何とか削減努力が出来るのではないか。まずは優先度の高い方から並べてみて、低い方を削ったらどうなのというような時に、部分的にそういう手法を使うということまで全て否定するかどうかというのは、かつて私が申し上げたのはそういうことは若干検討しても良いのかなと。ただ、今一般的にシーリングという議論は最初に申し上げたようなことでありますので、少なくとも従来型のシーリングに戻すというつもりはありません。
 3つ目の問題は、簡単に言えばこれは誰が考えても、例えば今年度の予算規模を考えますと、予算規模と新規国債とそれから税の増収と言うのか、税、この3つから成り立つわけです。ですから予算規模が色々な判断のもとであまり縮減すべきでない、特に今のような景気の状況からして縮減すべきでないということを置けば、あとは借金と税収がどうなるかであり、逆に言うと借金をこれ以上増やしたくないとなれば、歳出と税収がどうかということになる。つまりは3つの要素の組み合わせであるというのは、これは誰が考えても確かなわけで、今のご質問は借金をこれ以上増やさないということはどんどん削るのですかと言われるけれども、もちろん無駄なものは大いに削ります、枝野大臣のところで。しかし、それと含めて税収の問題もありますから、そういうものの中で議論していくと。今申し上げたのはソブリンリスクを考えれば、これ以上の新規の国債のさらなる、今年を超えた増発はやはり極力避けるべきだと、そのための努力が必要だということを申し上げたわけです。
(問)今のお答えに関連してですけれども、国債の部分ですけれども、おっしゃられる3つの要素というのは非常によく分かりまして、仮定の話になってしまいますが、税収がまたさらなる落ち込みをした場合に、結局連動して予算規模も縮小するのかどうか。大臣自身は来年度予算についても今年度並みの予算規模は必要だとずっと国会答弁でもおっしゃっていますけれども、結局今の段階から新発債44兆3,000億円という枠をはめると、税収減に伴って当然予算規模もそのままシュリンクしてしまうわけで、今から型をはめる必要があるのかどうかというところが1点疑問なのですが、それだけ伺います。
(答)何か枠をはめたとか色々な表現をされますが、私の発想から言うと逆です。つまり今回のギリシャやユーロ圏の状況というのは、マーケットが信認しなくなった時には、その国の単に財政が厳しくなるということを超えて、国民生活そのものが極めて大きな打撃を受けるというのをまさにあの画像を通して私達に伝えているわけです。つまりそれは数字のことを超えて現実に、例えば年金の給付開始年齢を大幅に引き上げるとか、あるいは公務員が大きいわけですが人件費の大幅削減とか、場合によっては民間に対しても色々な削減とか、色々なことが起きるわけです。そういうことは、ここまでやったら駄目で、ここまでなら大丈夫というのは、実は相手がマーケットですから、必ずしも確実に言える人は、それはもう神のみぞ知るの世界でありますから。しかし今回のことを考えれば、ソブリンリスクというものに対してみんなが敏感になっていますから、私としてはそういうふうなことにならないためには、やはりぎりぎりの努力として今年度の新規国債発行44兆3,000億を超えないように最大限の努力をすることは、まさに国民生活を守るために必要だということで申し上げたわけです。その中でどういう仕組みで、今度はそのギリシャ的な崩壊現象ではない中で、限られた財源を何に振り向けるのか、あるいは税も、今、所得税、法人税、消費税、色々専門家委員会の方で議論していただいております。例えば、法人税なども多少単年度的に増収しても前年度がマイナスだとほとんど増収にならないようなこともありますが、そういうものも、ある程度を超えた増収分は単年度内にも一応あるものを超えれば払っていただくような仕組みも、その代わりには7年から8年延ばしてやるようなやり方もありますし、あるいは所得税の問題もありますし、もちろん消費税についても少し長い、若干長いスパンですが議論が始まっておりますので、そういうことがまさに3つの要素ですから、何か2つの要素のようなことをあまり考えないでください。つまり国債がこうだったら、これを下げるしかないですねと。3つ要素はあるのですから。三元方程式ですから、二元方程式で頭を整理しないようにしてください。
(問)B型肝炎なんですけれども、財政支出が場合によっては1兆円単位になるとも言われていますが、その財政負担のあり方についての基本的な考え方を伺います。
 あと国債発行についてですけれども、今年度、昨年度もそうだったんでしょうけれども、国債発行額が税収を上回る状況になっているわけですが、来年度については新規国債発行額を44兆3,000億円に抑えるために税収よりも下に持っていくというようなお考えはあるのか。
 あと普天間なんですけれども、5月末決着と言われていたものが実際は先送りされる感がありますが、調整が6月以降も残る現状についてどうお考えか、それに関連する総理の責任問題についてどうお考えか、お願いします。
(答)B型肝炎は何度も同じことを申し上げるしかないわけで、関係閣僚に私も入っておりますから、議論の展開についてある程度は関わっておりますけれども、しかしこれは裁判所とか色々な対応、原告団とかの対応の問題がありますので、そういうものを含めて仙谷大臣の戦略担当ということもありますと同時に弁護士としてこういった問題にも、色々な手続上も大変経験豊かということを含めて内閣として窓口を仙谷大臣に一元化しておりますので、そういう意味を含めてしっかりした対応をしたいから逆にあまり他の大臣があれこれ申し上げない方がよいという趣旨であります。
 それから、税収を超えたということは確かに今年の当初予算は税収見通しを超えました。実はご承知のように去年の予算も結果として税収見通しは高めに設定を麻生政権でしたわけですが、9兆円見通しを下回りしましたから結果としては税収に対して決算レベルでは国債発行が超えているわけです。そういった意味で税収というのは100%見通しどおりになるということは言えません。ですから言い方としてどういう言い方が良いか、色々とあると思うのですが、私が今申し上げたのは今年度の当初予算での新規国債の発行を超えないように最大限努力するということが必要ではないかと申し上げたわけで、税収との関係について今申し上げたようなことも含めて、あまりはっきり見通しが立たないものをベースに物を考えるというのは逆に考える方が難しくなりますから、私の頭の中では私のような言い方の方が分かりやすいのではないかということで申し上げました。
 普天間のことについては、これも色々な方が言われておりますけれども、5月末に向けて最大限と言いましょうか、総理自ら自分の言われたことを踏まえて今努力をされている、まさに最大の力を振るっておられる真っただ中でありますので、総理を中心とした努力に期待をしたいと、このように思っております。
(問)国債発行額のご発言に絡んでなんですけれども、来年度予算はマニフェストの新規政策5兆円超と合わせて社会保障の自然増とか、それから今年度予算で使った埋蔵金が枯渇する分などを合わせて10兆円程度の新たな財源が必要ではないかというふうに言われておりますけれども、国債発行額を据え置くというふうに考えるとマニフェストの政策なんかはかなりやる余裕がなくなってくるんじゃないかと思うんですが、大臣、マニフェストの新規政策についてはどのようにお考えでしょうか。
(答)同じことを言わなくてはいけないのですが、今年度当初予算の国債発行というのは決して小さな額ではありません。少なくとも野党の皆さんからは、それこそ税収を超えるような、当初予算からそういうものを出したのはけしからんと、昭和21年以来初めてのことであるという指摘までいただきながら私達の景気、経済の判断とマニフェストに関してのやれるもの、一部お約束どおり出来ないものもありましたが、そういうことの判断の中で今年度予算を組み上げたわけです。ですから何か今年度の当初予算の新規国債の発行を超えないように努力するということが、即、緊縮財政につながるようなイメージの質問をいただくというのは、ちょっと私には理解出来ません。それに加えて、先ほど来何度も言っていますように3つの要素があるわけですから、つまりは税収、税収というのは今の制度の中での税の増収ということもありますし、制度そのものに対する見直しということもありますし、そういうことも含めて先ほど来、私達が考えなければいけないのは国民の皆さんにとって、あるいは日本の国にとって短期的により良いことであることはもちろん望ましいわけですが、中期長期にわたってもまさに持続可能な形での財政を考えなければ、今年さえ何とかなれば来年はどうなってもよいというわけにはいきませんので、少なくとも政権交代をした直後の今年度予算はそうした中長期のことをしっかり見定めるだけの十分な準備の時間がありませんでしたが、今回は昨年の12月25日に政府としての予算編成が終わってからフルに来年度以降のことを考えて今手を打っているわけですから、そういう考えの中で申し上げているということです。
(問)子ども手当の満額支給などマニフェストの実現には引き続き努力していくということでよろしいですか。
(答)ですからそういうことも当然、マニフェストについては努力をするということは当然だと一般的に思っておりますが、まさにそういう議論を現在は内閣の中で議論するだけではなくて、党の方も積極的に参加をされた場が出来ていますので、そういうところで今議論をしていただいていると、このように受け止めています。
(問)財政健全化法の提出はまだ調整中と昨日も答弁されていましたけれども、実際に提出が遅れている理由というのは何なのか、例えば普天間問題などの政策案件があって調整が進んでいないのか、そこの背景を教えてください。
 2点目なんですけれども、先ほど税調の方で議論が進んでいるというお話がありましたが、実際どのようなタイミングで案をまとめようとされているのか、また法人税にも触れられていましたけれども、消費税以外でも増税というものが必要とお考えか、その2点をお願いします。
(答)法案に関しては特に普天間問題等々が影響しているとは全く思っておりません。法案については、法案そのものの理解がまだ不十分ではないかということで先週でしたか、連休前に総理から少し慎重に対応するようにと言われました。このことは皆さんの前では何度も申し上げましたが、この法案を私自身が1つの法案という形もあり得るのかなと考えたのは、色々な審議の中で自民党の議員の皆さんから自らもこういう法案を出しているのだと、財政健全化責任法というのを出しているのだと。だからぜひこういうことも含めて議論しようではないかということを言われたものですから、やはり日本の現在の財政の厳しさは、つまり債務残高がGDP比180%と言われていますけれども、そのうちの多くは過去の政権の中で生まれたものですから、逆に言えば与野党を超えての責任を持って話し合うのにふさわしいテーマ、逆に言えばそういう形でないとなかなか乗り越えられないテーマでもあると、こう思っておりますので、そういう国会での議論を広く行う意味で法案という形で出したらどうかということを申し上げてきております。皆さんの前ではずっとこう言っているので理解されていると思います。ただそれについて、なかなか国会日程も厳しいので成立が難しいからそれは慎重にした方が良いとか、ちょっとまた別の観点から色々言われているところもあります。ですからそういう理解がどこまで進むかということが1つです。もう1つは、必ずしも法律でなくても議論をしなくてはいけないという意味では同じなんです。ですから議論の仕方の問題として私は申し上げているので、いずれにしても議論は、例えば中期財政フレームとか財政運営戦略といったものの中でも全く同じ議論を既に戦略室を中心にしておられるわけですから、内容的にはどちらであってもそう変わらない。ただ国会の場を積極的に活用するかどうかという意味での選択だと思っています。
 税調の方は、専門家委員会がかなり活発に動いていただいていまして、近いうちに一度税調三役なりの方で、そうした専門家委員会の今の議論の様子をお聞かせいただこうということにもいたしております。当初から所得税、法人税、消費税を含めた基幹的な税については大いに議論してくれということを言っておりまして、その中ではさらにそういうものの中で色々な、こういう場合にはこういうことがあり得るとか、例えば過去の20年間を見渡して、例えば所得税でもずっとフラット化されてきていますから、そういうものについて若干再配分機能が低下したとか、色々指摘も既に一般的に聞こえてきておりますので、そういう場合に、例えばこういう形をとればこうなるとか、あるいは法人税の場合、例えば外国での収益をどういうふうにするかとか、こういった問題もありますし、消費税はもとより逆進性の問題を含めてどういう考え方が必要かということもありますし、そういう議論に、専門家の皆さんの議論として進めていただくということをお願いしております。
(問)NHKの世論調査で内閣支持率が11ポイント下がって21%に下落し、一方、不支持が12ポイント上がって68%になったんですけれども、この数字に対する受け止めをお願いします。
(答)数字そのものは大変厳しい数字だと受け止めております。いつも言うことですが、そういう中で私の今与えられている役割としては財政、経済といった分野でありますので、この分野でしっかりした形で政策を進め、あるいは中期長期のしっかりした方向性を出すことで国民の皆さんの信頼を確保していくように努力するのが、私がやらなければいけない最大の仕事だと、こういうふうに認識をいたしております。

(以上)