菅大臣記者会見要旨 平成21年12月1日

(平成21年12月1日(火) 10:12~10:35  於:官邸記者会見室)

1.発言要旨

 それでは定例会見を始めます。今日はお手元に「新たな経済対策について」という閣議了解されたものがお手元にいっていると思います。こういった閣議了解を、今日朝の閣議でしていただきました。中身は、見ていただくと、少し言葉の表現はやわらかくなっていますが、一言で言えば従来からのデフレ状況に加えて、ここにはドバイという言葉は入っておりませんけれども、ああいったドバイ発の経済危機などが重なって円高が急激に進んだと。さらに先週は株価も下落したと。こういうことを踏まえて総理のほうからの指示もありまして、改めてそうしたより厳しい状況に対して経済対策をしっかりと強めろという御指示でありましたので、それに基づいて以下の3点のことを決めて作業に入っていくということであります。

 第1点は、現下のこういった経済状況の変化に適切に対応できる第2次補正予算を編成するということで、従来1次補正の凍結分を念頭に作業を進めておりましたが、こういう状況の下では、1次補正の凍結分という範疇を超えて、やはり必要な財政出動はやらざるを得ない。そういう前提で、今週中を目途に作業を進めたいということであります。

 第2は、これは従来から繰り返し言っておりますように、新たな需要創出に向けて、制度とか規制など、ルールの変更によって積極的に取り組んでいく。つまりは財政出動も、従来の考えよりは大きな形で対応したいと思っておりますが、しかしそれだけで需要を満たすというところまではいきませんので、ルールの変更等によって需要が増えていく、そういう政策を積極的に取り入れていくという趣旨であります。

 そして同時にこういった経済情勢に対しては、財政政策と金融政策の2つの柱で対応しなければならないわけでありまして、「こうした政府の取組と整合的な形になるように、日本銀行に対して、金融面から経済を下支えするよう期待する。」という形で期待を表明をしたところであります。これに対して、日銀として何らかの期待に応えるような対応をしていただけるのではないかと、まさに期待をいたしているところです。

 昨日行政刷新会議がありまして、いろいろな議論があったことはもうお聞き及びのとおりであります。私も、あの事業仕分けという公の場で予算の具体的な中身について検討するというやり方は本当に画期的なことだと、このように思っております。そういった意味で、今回の事業仕分けで出された意見を十分尊重して来年度の予算編成に当たる、私もそうすべきだということで、出席した皆さん全員がそういった思いがあったと私は見受けました。

 さらに言えば、今回は幾つかの選択されたものについての事業仕分けでありますから、それと同様のものについても同様な形で対応するという、これは先の閣議なり閣議了解でも出てきているわけであります。さらに言えば制度問題、組織問題は、なかなか予算のようにちょっと削るとかというような対応ではできませんので、これからはそういった予算の後ろ側にある制度や組織の中で、まさにそれが国民にとって無意味である、あるいはさらに言えば、そういうものが税金のピンはねをしているというのも制度や組織であるとすれば、それを厳しくチェックというか洗い出していく作業が今後の大きな作業になるだろうと思っております。

 今日も何か朝の新聞で、車検の用紙が何十倍とか値段が上がっていると。まさにこういう形で、一見商業的な行為のように見えて、結局は権限を持っているわけですから、その用紙が使えなくなるということでいえば、100円の用紙が1万円になったってそれを使わざるを得ない。そういうやり方の中に、まさに税金の無駄遣いであったり国民から要らない負担を召し上げるという仕組みが隠されているわけですから、こういったものは今回の事業仕分けの延長上という意味も含めて、また元々の行政改革ということも含めて、徹底的に取り組んでいくというのが昨日の会議の結論でもありましたし、今日の閣議でもそういったことを確認したところであります。

 そういう中で、多少科学技術のことについて議論が出ました。私は科学技術担当でもありますので、科学技術の部分で一番注目されているスーパーコンピュータについて、議事録というか、議事の要旨を見ましたら、それについては見直そうという中に、総合科学技術会議で再検討したらどうかうという意見も、もともとの仕分けの中でも出されているというのがわかりました。私もその場で、そういった可能性も含めて提案いたしました。 ただ、この総合科学技術会議に対してもいろいろと意見がある方もありまして、総合科学技術会議としては、いずれにしても優先度判定という例年やっている作業がありますので、そういう中では総合科学技術会議としての意見は例年の形で言うことにはなると思いますが、仕分けに直接関係してどうこうするというのは、今の段階ではこの場にお願いするという形にはなりませんでしたというのか、ならないことになりました。この問題は、当面は予算要求された文科省と財務省の間で、文科省からも川端大臣の名前でいろいろな意見が刷新会議にも出されておりますので、そういう意見を含めて、文科省と財務省の間で、必要であればさらなる御議論をいただくということになると理解しております。最終的には、最後の最後はもちろん閣議ですが、あるいはその前に3党の基本政策とかいろいろ手続がありますが、予算関係の閣僚委員会というものもありますので、どうしてもさらなる大きな政治判断が必要だということになればそういうところで判断することになるかもしれません。それ以前の段階で決着がついている可能性も十分あると、このように見ております。そんなことで、科学技術関係については非常に注目されておりますので、どうなるにしてもしっかりと国民の皆さんに説明できる形にしなければならないと思っております。

 ただ、あえてといいましょうか、ついでと言えば、この総合科学技術会議のあり方そのものも当初から民主党のマニフェストではもっと機能すべきものに改組する、変えていくということが出ております。今回、科学技術予算等に対する議論の高まりの中で、この予算の問題が一山越えた段階から本格的に科学技術の推進という中で効果的な仕組みがどうあり得るかという、ある意味で総合科学技術会議のあり方に対する本格的な議論を始めたい、予算の一応の決着がついた後に本格的に始めたい、このように考えているところであります。とりあえず私からは以上です。

2.質疑応答

(問)2次補正予算の規模についてお伺いいたします。昨日も基本政策閣僚委員会がありましたけれども、国民新党としては11兆、社民党としては5、6兆円という主張を崩さない中で、藤井財務大臣は、「税収減以外の対応について、国債増発は考えていない」と明言されておられまして、実際回せる、これ以上、2.7から積み増そうと思っても、国債利払い費の使い残しだとか予備費の活用等で3兆円から4兆円が限界ではないかというふうに見られています。なかなか社民党や国民新党の要望に現実的に応えられる状況ではないと思われますが、予算の骨格を決める国家戦略相として、2.7兆円からどこまで拡大できるとお考えか、伺いたいと思います。
(答)今日、基本政策閣僚委員会の下に置かれた予算の作業チームの2度目の会議が開かれることになっております。前回のときも、2.7兆ということを含めて、数字を挙げることについていろいろ議論があった中で、数字そのものは挙げないで、考え方を挙げるにとどめた経緯もありますので、今回も、いろいろな考え方はもちろんありますけれども、まずはその作業チーム、ワーキングチームの方で議論をいただく中から、結果としてこの程度になるということも含めて、他の作業も含めて、今週中には取りまとめたいと。今、その3党の調整の閣僚委員会の担当者でもある私からあまり具体的な数字などを言うと、せっかくまとまるものもまとまりにくくなるので、数字を挙げるのは控えたいと思います。
(問)その場合、仮にこの数字が決まった場合に、なかなか今、残されている財源では足りなくて、財務大臣に対して赤字国債の増発を要請するという可能性も、現段階としては残っているという理解でよろしいでしょうか。
(答)ここは、財務大臣あるいは財務省自身がいろいろ工夫をされたいというニュアンスも伝わってきていますので、あえていえば、これだけ必要だというときに、そのいわば財源の捻出の仕方については、それはそれとしてまた議論が必要かなと思っています。
(問)今の関連で、藤井財務大臣は、2.7兆円をさらに積み増す場合は、2010年度本予算を取り崩して、その分を前倒しする形でやるのだという発言をされていますが、その辺は副総理と認識を共有されているということでよろしいのでしょうか。
(答)総理の方から、こういう厳しい経済情勢がさらに厳しくなった中でのより強力な対策をということが基本ですので、いろいろなやりくり等はありますけれども、より強力なものにしなければいけないし、なると思っています。単なる数字の付けかえということではなくて、もちろん早くやることによる効果とか、そういうものもありますけれども、場合によっては、ある政策をより強めていく、それにより多くの予算をつける、そういうことも十分あります。
(問)補正の件で確認なのですけれども、そもそも金額を増やす理由について、先週までは大臣は、お金ではなくて知恵を使うという考えを強調されていたと思うのですが、なぜ急に金額を増やすという考えに大きく変わられたのか。
 あと、亀井大臣は、特に公共事業を積み増す必要があると、地方重視の観点からおっしゃっていますけれども、公共事業についても、今度の新しい方針では、ある程度積み増すと考えていらっしゃるのかどうか。その点について教えてください。
(答)実質的な効果と、やはりマーケットに対しても、あるいは、逆に言うと皆さん方に対してもと言ってもよいのかもしれませんが、政府としての姿勢をきちんと伝えるということそれ自体が、またマーケットに与える効果もあります。私は、今回の先ほど申し上げたようなドバイのことも含めた新たな状況の中では、総合的な経済対策が必要だということが1点と、さらには2次補正で想定していたものを超えた、より強力な対応というものがもう1点、2つの柱だと思っております。特に、円高を含め、場合によっては、今日もここにも書きました金融面からの問題などを含めた問題は、短期的に財政だけでどうこうできるわけではありません。そういった意味も含めて、この2つの柱がより一体的に動くことは必要だ、このように考えてきたというか、特にそういうことが必要だということで、その1本の柱である財政についても、より効果的な形でより強めていくことが必要だと、そう考えたわけです。
 基本的な、よく「これだけ需給ギャップがあるから、これを埋めるのだ」という、そういう考え方でいえば、ここにも書いてあるように、需要を財政だけで埋めることはとてももともとできないわけですから、40兆も、あるいは30兆とも今でも言われていますが、需給ギャップを財政だけで埋めるというのはとてもできないわけですから、そういう意味では、あくまで民間的な資金が需要につながってくるような、いわばレバレッジとでも言うのでしょうか、より効果的な財政出動という考え方は、基本的には変わっていません。
 ただ、そのレバレッジをする上でも、全くルールの変更だけでできる需要拡大もありますが、エコポイントのような形で、ある程度、財政出動を伴うものも当然あるわけでありまして、それも強めようということで、従来よりも大きな補正予算ということに考え方を、改めたというよりも、新しい状況の中でそういう考え方に、総理の指示もあって切りかえた、こういうことです。
(問)即効性がある公共事業については、ある程度取り入れるお考えはあるのでしょうか。
(答)これも、先ほど言いましたように、今日、3党の予算のワーキングチームが、この新しい状況の中で初めて動くことになりますから、あまりそれがスタートする前に、こうだ、ああだという結論めいたことを言うのは、少なくともこの場では控えたいと思います。
(問)先ほどの説明で、日銀に対して、期待に応えるような対応をしていただきたいというお話がありましたが、量的緩和を再びやるとか、そういった追加緩和について、ある程度、政府として期待されているのか。あと、大臣御自身は、量的緩和政策等がデフレに効くというふうにお考えなのかどうか。この点についてはいかがでしょうか。
(答)ここは、しっかり政府としてメッセージを皆さんに送ると同時に、もちろん日銀にも、我々の考え方、あるいは意思は伝わっておりますので、それを踏まえてどういう判断をされるかは、それは日銀のほうで考えられると、また、そうあるべきだと思っていますので、それもそれ以上の言い方はすべきではないのではないかと思っています。  一般的な金融緩和云々も、今の段階で言うと、何か具体的なことを示唆することにもなりませんので、この時点ではこういった閣議了解をしたということをしっかりお伝えをしておりますので、それに対する対応を見守りたいというか、期待して見守っていきたいと思っています。
(問)しつこいようで恐縮なのですけれども、大臣御自身は量的緩和の政策効果ということについて、どのように御覧になりますか。日銀は、かつて、それほど政策効果は高くなかったというふうに検証していたかと思うのですが、今朝も閣議後の会見で藤井大臣は、仮に量的緩和をすれば経済効果はあるというような発言もされていますけれども、副総理御自身は量的緩和政策の政策効果ということについて、どのようにお考えなのか教えていただけますか。
(答)いろいろな見方、考え方はありますが、例えばアメリカとの関係で、円高に振れている背景に、アメリカの実質金利が日本の実質金利よりも低くなったという指摘もあります。これは、アメリカの金融緩和政策が、結果として日本の実質金利よりも低い金利水準になり、そのことがよい悪いは別として、円買いになっているという見方もありますし、逆に言えば、アメリカでは量的緩和がそういう効果を上げたということも言えるわけです。また、デフレ状態が続いているということは、日銀も政府と同じような見解を持っておられますので、それに対して量的緩和というのは、一般的に言えば、それはデフレをより強めない方向での影響は、それが大きいか小さいかは別として、あり得るのではないかと。一般的なところでとどめておきたいと思います。

(以上)