菅大臣記者会見要旨 平成21年11月24日

(平成21年11月24日(火) 10:44~11:10  於:官邸記者会見室)

1.発言要旨

 閣議後の定例会見を始めたいと思います。

 先週来、国家戦略室として、マニフェストに盛り込まれた課題について、それぞれ関係の省庁の副大臣クラスから話を聞いております。大きい項目は、一通り1回目のヒアリングを終えまして、今日、閣僚懇の場でも、一応、そういう1回目のヒアリングを終えたことを皆さんにお伝えすると同時に、今後の進め方について、それぞれの閣僚において、省庁を越えた問題もありますので、場合によっては直接、関係省庁とある程度協議してほしいと。そういうところでうまくまとまればよいですし、また必要に応じては、さらに大臣、いわゆる閣僚クラスの皆さんとのいろいろな話をお聞きする機会も、必要であれば持ちたいということも申し上げておきました。週が明けましたので、11月も残り少なくなっております。そういう点では、来年度予算編成に向けて、特にマニフェストという国民の皆さんに対する民主党の約束を実現する、そのためにどう具体化するかという、この課題をしっかりと煮詰めていきたい、このように考えております。

 あと、今、少し水面下で進めている課題に、森林・林業再生というものについて、これは環境にもつながり、雇用にもつながるということで、場合によったらそういう森林・林業再生本部といったようなものを総理の下につくっていただけないかなと、そんなことを、今、下打ち合わせをしているところであります。日本は、本当に緑の多い、7割以上の国土が森林に覆われているわけですが、しかし、材木の自給率はわずかに20%。普通は、重くてかさばるものというのは、そう輸入に適するものではないわけですけれども、しかも、国産で十分に潜在的には材木があるにもかかわらず、8割もの材木を輸入して、一方で、日本の中にある森林は、いわば材が出ない、荒れ放題といった状況になっております。これを根本的に立て直す仕組みを、そういう本部を立ち上げることを含めて、何とかやっていけないかと。これは国家戦略室というよりも、それを超えた存在として、総理にも個別には少し相談しているところであります。

 今、皆さんは、予算に非常に注目されていて、それはそれで理解はできるのですけれども、私は、予算の後ろにある構造、制度とか組織とか、その構造そのものを変えていかない限り、いわゆる予算というのは、その構造の上に乗ってお金を使うわけですから、お金を使う、使わないということの根っこには、どういう組織や構造、制度の中でお金が使われているか、制度が悪ければ、幾らお金を使っても効果が出ませんし、そういうところに入っていく必要があると思っております。この林業の問題もそうでありまして、従来から間伐に対する補助金などは、国・地方を含めれば相当の額が出ているのですが、切り捨て間伐といって、単に間伐するだけで切った木はそのまま山に放置する、出そうにも道がないから出せない、こんな状況が長年続いているわけであります。これは一例ですけれども、そういった意味で予算という問題を一歩進めて、こういった制度改革といったことについても、来年度の予算編成というものと連動させる形で推し進めていきたい。例えば、もう一つの課題でいえば、保育園が不足している。一方で、学校にはたくさんの空き教室がある。そういう、幼保一元化という表現もできますし、また別な言い方をすれば、地域の中でそういう学校施設を保育園施設に活用するといったようなことも含めて、省庁の壁を越えた取組を進められるような制度的な整理が必要ではないか。これも、そういう関係の皆さんにいろいろと検討していただいておりまして、できればこういう課題も来年度の予算と並行して、今度は新たな制度変更、制度改革につなげていきたい、このように考えているところであります。

 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)弊紙と一部報道機関の報道によるものですが、鳩山総理の政治献金問題で、東京地検が元秘書を政治資金規正法違反、いわゆる虚偽記載の関係で立件する方向ということです。改めて今回の総理の政治資金の虚偽記載問題について、副総理の御感想と、今後の総理の対応としてどうするべきかという御所見があれば承りたいと思います。
(答)総理の政治献金の取り扱いについては、総理御自身が、間違いがあった、あるいは虚偽記載があったということを認めた上で、捜査当局に必要な資料をすべて提供されて、その判断を待つという姿勢でおられるわけでありまして、私はそうした総理の御姿勢というのは、一つのあり方として、そういう姿勢で臨まれていることについては、それでよいのではないか、このように思っています。
(問)政権への影響については、どのよう考えられますでしょうか。
(答)これは、もちろん国民の皆さんがどのように判断されるかでありますけれども、私は、鳩山総理の性格といいましょうか、割とあらゆる皆さんに丁寧に説明するという姿勢といいましょうか、そういうことを含めて、いろいろ批判もあるのは当然でありますけれども、政権そのものが揺るがされるようなことにはならないのではないかと。国民の皆さんも、批判するべきところは批判する中で、しかし、この間、鳩山内閣が大きな政治の転換を図ろうとしていることについては、期待を強く持っていただいている、このように思っております。
(問)先ほど、官房長官の会見の中で、デフレ問題ですとか、このマニフェストの一連の扱いの問題について、官房長官の下に集約するのか、副総理の下に集約するのかは、まだ未定の部分があるという趣旨の御発言をされたのですが、そのことについては官房長官と、その後はどのような調整をなされるおつもりでしょうか。
(答)御承知のように、もともと官邸は、総理の下に官房長官が全体の仕切りをするというのが通常の形で、今回の内閣では総理のほうから、ある意味での政策調整のある部分を、副総理として、あるいは国家戦略室としてやってほしいという、そういう総理のいわば指示で生まれたのが国家戦略室であり、あえて言えば副総理という私の立場でもあります。
 これも御承知のとおり、それではどこでその線を引くのかということでありますが、もともと税財政の骨格づくりとか経済財政担当ということで、そういった分野は私に主に任されているわけですが、それ以外のことでいえば、総理のほうから、例えば私のほうに「ここはぜひやってくれ」という指示があったものを、今、雇用とか環境といった問題で取り組んでいるところです。
 デフレ問題を含めて予算も、そうはいってもいろいろな側面がありますので、必要であれば、最終的には総理から、「こういう形で協力し合ってやってくれ」という指示があると思いますが、今でもしょっちゅう官房長官とは相談しながらやっておりますし、また複数の閣僚が、フォーマルにもインフォーマルにも相談しながらやっておりますので、特に今、デフレの問題の対策、これはいろいろな側面がありますので、何かそこの間にそごが起きているとは思っておりません。ですから、私も経済財政担当という立場で、当然ながらデフレの問題、対策を含めてしっかり取り組んでいくし、官房長官も連携しながら、また別の側面については、官房長官が中心になってやっていただかなければならないところもあると、このように思っています。
(問)税財政の骨格についてなのですけれども、子ども手当の所得制限の部分ですが、民主党は党の政策の中で、納税と社会保障給付に共通の番号を導入するとうたっていますが、今後、納税者番号の制度の検討についてはどのようにお考えなのでしょうか。
(答)これも先ほど申し上げたように、予算という問題の背景にはいろいろな制度の問題があるわけで、私は、納税者番号というのは、やはりこれからの福祉の分野が財政の中で大きなウエートを占めるような社会になればなるほど、公平性あるいは透明性というものが非常により重要になってくる、このように思います。いわゆる小さな政府的に、ほとんどのことは自分の負担でやるというような社会であれば、多少の不公平ぐらいは、大部分は自分の力なのだから仕方がないということになるかと思いますが、やはりかなりの社会的な負担を国民がして、それを福祉分野などに大きく振り向ける場合には、より透明性、公平性が必要になると思います。そういった点では、納税者番号という課題は非常に長くからあった課題でありますけれども、そろそろ本格的に導入を念頭に検討に入るべきではないか、このように思っております。
 また、それとも連動しますが、我が党のマニフェストの中では、歳入庁構想といいましょうか、つまりは、今は、国税は国税庁、地方税は都道府県、市町村、そして社会保険関係は社会保険庁と、いわば大体は個人なり法人の所得をベースに課税される、あるいは負担が求められるものを、大きく言って3つの性格の違う機関が担当しているというのは、私は非常に非効率でもありますし、また透明性といった点でも非常に曖昧になっています。
 ですから、納税者番号、社会保障番号という言い方もありますが、それを含めて導入することと、歳入庁にそういったものを一本化するということは、私は併せて検討していくことが適切ではないか、このように考えております。
(問)今の件で、日曜日のテレビ出演の中で、各党で協議していきたいということを、副総理自身、御発言されましたが、与野党協議を今後呼びかけるということでよろしいのでしょうか。その辺のお考えをお願いします。
(答)マニフェストなどでは明記しておりますけれども、政治的なプロセスとしてどの段階から本格的な議論をすべきか、今日は質問もあったので、私の個人的見解は申し上げましたが、まだそういう時間的なプロセスについては、まだ閣内でもそういう話題での相談はあまりいたしておりません。ですから、基本的な考え方は申し上げましたが、今後の進め方、まして他党云々ということについては、まだ今の段階でどうこう申し上げられるような段階ではないと思います。
(問)先ほどお答えがあったマニフェストの具体化に関する作業ですが、必要があれば大臣との協議もというお話がありましたけれども、マニフェストの具体化の作業については、最後まで基本的に国家戦略室というか、国家戦略担当大臣として副総理がやられるという理解でよろしいのでしょうか。
(答)11月17日の、いわゆる予算に関する閣僚委員会の中で、マニフェストなど重要課題については、戦略室のほうで、言葉はどういう言葉でしたか、私の理解では、原案を取りまとめろと趣旨の指示というか、決定をいただいていますので、ある段階までの取りまとめはやらなければいけないだろうと。もちろん、それはその後、必要に応じて基本政策閣僚委員会や、当然のことですが、予算閣僚委員会に上げて、そこで最終的な判断、さらに最終の最終は、もちろん閣議ということになるわけですが、このマニフェストに関する問題での案づくりの段階は、国家戦略室としてやるようにという指示をいただいていますので、やらなければならないと思っています。
(問)今後の大臣との折衝も、副総理がやられるという理解でよろしいのでしょうか。
(答)まだ、先ほど申し上げたように、大臣との折衝を具体的にセットしているとかということではありませんが、必要に応じては必要な形で、私がでることも含めて、国家戦略室の、もちろん古川副大臣を初め何人かのメンバーがおりますので、そういうメンバーの中でまとめていきたい。大臣におでましいただくときには、もちろん私も出なければならないだろう、こう思っています。
(問)スーパーコンピュータの事業仕分けの結果について、予算の大幅縮減という結果に対して、そうではなくて、ある程度予算をつけるべきだというお考えをお持ちなのかどうか、一部、テレビ番組等で発言されているようですが、改めて確認させていただきたいのですけれども、どのようなお考えなのでしょうか。
(答)それぞれ仙谷大臣も、また枝野さんも言われているように、事業仕分けというのは、あくまでああいった国民の目線に立った多くの人にオープンの場で、特にその事業が政策的にというよりも、本当にそのお金が生きた形で使われているのかというところを中心に、いわば仕分けをしてもらうというプロセスであるわけです。ですから、もともとそこでの結論を改めて行政刷新会議の場に出して、そして議長は総理でありますから、その場で行政刷新会議の結論を得て、さらにそれが最終的には予算案という形に集約されてくると思っております。私も、行政刷新会議のメンバーの1人でもありますので、どの段階かでスーパーコンピュータを含めて科学技術関係についての事業仕分けにおける一定の結論というものについて、例えば、少しそれは見直したほうがよいのではないかという部分があれば、そういう場がちゃんとその段階まで来たときには、必要であればまた申し上げたいと思っております。
 もう一つ、今、私が担当している科学技術担当大臣という立場で、改めて今回の概算要求、実は概算要求は私のところでやっていないのですね。概算要求は、多くは文科省のほうが担当され、あるいは各省庁がそれぞれ予算要求されているわけですが、それを改めて全体の状況を把握して、昨年、一昨年等とも比較しながら、場合によっては科学技術担当という立場から見て、総合的にどういう形が望ましいのか。これは、もともと日本の科学技術全体を見渡して考えるために、そういう総合科学技術会議というものが現在あります。将来は、もっと効果的なものに改組したいとは思っておりますが、現在ある会議は会議としてきちっと動いておりますので、場合によってはその皆さんの意見も、改めて来年度予算について拝聴することも含めて、そういう立場からも必要があれば、必要な場面で何らかの意見は申し上げたい、こう思っています。
 スパコンについてだけいろいろ言われるものですから、あまりその部分にだけお話しするのはやや誤解を生むかもしれませんが、これについてもきちんとした知見を持って、必要であれば必要なことは申し上げたいと思っています。
(問)先ほど、副総理か官房長官の下につくるかという会議の話なのですけれども、そこではデフレの話、それから予算編成の話、総合的にいろいろ話し合っていくということなのでしょうか。特に、あと金融政策が重要になってくると思うのですけれども、そこについて副総理は、これから日銀とこんな話をしていきたいとか、そういう場をつくりたいというのは、何か今の段階でお考えになっていることはあるのでしょうか。
(答)官房長官がどういう表現をされたか、ちょっとテレビを見ていなかったものですから細かくはわかりませんが、今日は特に閣僚懇談会でいろいろな意見が出る中で、「そういう議論をどこかでしなければいけないですね、多少時間をとっても」という意見が出ました。ただ、何か定常的な組織なり委員会を改めてつくる、つくらないというところまで、今日の閣僚懇の席では決まったというところまでいったとは思っていません。ですから、どういう場で議論するか。多少、閣議の後の閣僚懇を、長時間予定をとって話をするようなこともあるかもしれませんし、形はまだ必ずしも決まったとは思っておりません。
 それから、日銀との関係は、この間も、先日は津村政務官に出てもらいましたが、財務省とこの経済財政担当の部局から、大臣、副大臣、政務官、あるいは職員のいずれかを、日銀の政策決定会合に出席して、政府としての考え方は伝えるようにしております。また、月例報告などの席には、先日も日銀副総裁が出席されて、若干、その場でも幾つかの質問などについて副総裁からもお話があったりして、意見交換をいたしております。こういうフォーマルな場、あるいは間接話法、直接話法を含めてインフォーマルな場などもありますけれども、しっかりこれまでも意思疎通はとってきたつもりですが、これからもさらにしっかり意思疎通は図っていきたい、こう思っています。

(以上)