菅大臣記者会見要旨 平成21年11月16日

(平成21年11月16日(月) 9:15~9:32  於:合同庁舎第4号館6階共用643会議室)

1.発言要旨

それでは、7-9の、いわゆるQEについて御報告をさせていただきます。  本日公表した平成21年7‐9月期のGDP一次速報値、QEでは、実質成長率が前期比1.2%、年率で4.8%、名目成長率が前期比でマイナスの0.1%、年率で0.3%となりました。  我が国の景気は、依然として厳しい状況にあることに変わりはありませんが、今回のQEは、7-9月期において、まず第一に、世界の景気の改善を背景に輸出や生産が順調に持ち直してきたこと、第二に、経済対策の効果もあって、個人消費は持ち直しの動きが続いてきたこと、第三に、設備の過剰感はまだ高いものの、設備投資に底打ち感が出てきたことなどによって、こうした景気の持ち直しの動きを反映した結果が、今回のQEの数値になったと、こう考えております。先行きについては、海外経済の改善などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待されております。  一方、雇用情勢については、国内的にもまだまだ、ある意味で大変悪い状況が続いているわけですし、海外景気の下振れ懸念、金融・資本市場の変動の影響など、景気を下押しするリスクが存在していることに留意をしなければならない。つまりは、雇用もまだしっかりしていないし、いろいろな要素での下押しリスクが存在するということをしっかり頭に入れておきたいと思います。  なお、今回のQEでは、名目成長率が実質成長率を2四半期連続で下回る結果となりました。こうした結果から、私としては、デフレ的な状況に入りつつあるのではないかという懸念を持っておりますが、政府としてトータルに判断するには、その他の指標などを含めて精査の上、11月20日に予定されている月例経済報告でお示しをしたいと、こう思っております。  また、政府としては、経済の動向を注意深く見守りつつ、雇用情勢の悪化や地域経済、中小企業の資金繰りの厳しさなどの課題に対応して、日本経済を自律的な民需による回復軌道に乗せていきたいと、このように考えております。  私からは以上です。

2.質疑応答

(問)2点伺います。今回の実質GDPの結果なんですが、市場の予想も大幅に上回るような内容だと思いますけれども、かなりの大幅なプラスになったことについて、大臣の率直な感想を伺いたいのが1点と。  あと、これだけの成長を今後維持するのは相当難しいと思いますけれども、今後、政府として必要な対策は何が考えられるのか、どういった対策を考えていらっしゃるのかを伺いたいんですけれども、よろしくお願いします。
(答)今の御質問には、冒頭の話でほぼ答えていると思いますが、簡単に言えば、アジア、アメリカを含めて、世界の景気の状況がかなり改善の方向にあって、それが我が国の輸出の増大、ひいては生産の増大につながったということが1点と、それから個人消費についても、前の政権から継続している分もありますが、エコポイント等の効果もあって、個人消費が持ち直しの傾向が出ていると。設備投資については、この間ずっと厳しい状況が続いていたわけですが、底打ち感が出てきたと。こういうことが重なった結果が、ある意味で予想以上の実質GDPの成長につながったと、このように見ております。  今後についてでありますが、これも先ほど申し上げましたが、決してこれで手放しで喜べるというふうには全く思っておりません。特に、雇用の状況については、まだまだ予断を許さないと思っております。そこで、総理もシンガポールで話をされたようですが、今年度についての二次補正というものを、いよいよ本格的に検討していきたい、そして、本予算につないでいくと。その中で、雇用、さらには環境問題を念頭に置いて、この分野には景気刺激につながる部分もたくさんありますので、雇用、環境、景気、本予算になれば子育て支援、できれば科学技術も入れろと津村政務官から言われていますので、そうすると、雇用、環境、景気、子供、科学技術、5Kで、5つのKを柱にして、日本を景気回復からできれば成長への方向につなげていたきいと、こう考えております。
(問)先ほど「デフレ的な状況に入りつつある」というふうにおっしゃいまして、今までの発言よりやや、ちょっと踏み込まれているような感じもするんですが、検討中の日銀との新しい会合の中で、デフレに対して政府・日銀で何か対応していくというお考えはございますか。
(答)このデフレ的な要素というものの定義は、私もいろいろ聞いてみたんですが、必ずしも機械的に、こうなればデフレで、こうなればそうでないということでもないようです。ですから、今、日銀との話し合いということもありましたが、実はこの間も、折々いろんな形で日銀とのコミュニケーションは続けておりまして、そういう中で言えば、日銀も一部、CP等について、もうあまり需要がないので、そろそろやめたいというような部分もありますけれども、全体としては金融緩和の現状を変えることは、まだしないというふうに、そういうニュアンスを私は受けとめておりまして、そういう意味では、デフレ的な傾向がこれ以上強まらないように、十分、日銀とも意思疎通をきちっととっていきたいと、こう考えております。
(問)冒頭でおっしゃいましたけれども、自立的な景気回復につなげていく必要があると。そのためには、米国の消費バブルに依存した景気経済というものからの脱却ということが必要になってくるかと思いますけれども、そういった意味では、先ごろ開かれましたG20でも、米国依存の経済成長からの脱却を各国で進めていくと、そのための具体的な道筋を来年1月までにまとめるということで合意しましたけれども、これについて国家戦略室が中心になってまとめていかれるのかと思うんですが、これは具体的にどのような作業の進め方になるんでしょうか。また、年内にまとめるというふうにおっしゃっておられて、いわゆる成長戦略、これがそれに相当するものなのか、あるいはもうちょっと幅広い観点からまとめられることになるのか、そのあたりをお伺いいたします。
(答)いろんな場で、特に国際的には議論されておりますので、私なりの理解は、アメリカ・オバマ大統領もアジアの成長を背景に、アメリカでもその輸出というものを重視して、雇用を回復したいというようなことも言われております。  各国それぞれ内需を高めながら、しかし一方で、貿易も促進するということは当然だと思いますし、我が国にとっても内需の拡大はもちろん重要ですが、アジアを中心とした経済成長の中で、外需についても、しっかりとそれをつなぎとめるというのか、確保していかなければというふうに、基本的には思っております。  それで、どこでどういうタイミングで何をするかというのは、まだ全体のG20等、外交交渉などについてまで見据えた日程は決めておりませんが、少なくとも国家戦略室で考えているのは、当面早ければ、今日、明日にも補正予算、本予算をめぐっての方向性を出したいと思っておりますし、また、成長戦略というものについては、今年中を私は目指しているんですが、もうちょっとしっかりしたものをつくるには時間がかかるんではないかという意見もありまして、あまり遅れないように、しっかりしたものを出していきたいと思っております。  その中で、これは多少、私の個人的な見解ですが、新しい雇用が新しい成長を生むと、そういう分野があるわけです。例えば介護のような分野は今でも人手不足ですから、そこで働く人が10万人増えれば、10万人の人のサービス生産がGDPに上乗せされるわけです。ですから、新しい雇用でなくて、従来の雇用との置きかえではなくて、新しい雇用を生むという、そういう分野を私はもっと力を入れていくべきだと。林業再生なども、若干これは力が必要なんですが、その分野だと思っております。  また、財政に依存しない成長、例えば太陽発電の固定価格買い取り制、太陽に限らずクリーンエネルギーの固定価格買い取り制などは、社会のルールを変えることによって成長につながっていく。あるいは断熱を軸としたリフォームや新規住宅について、何らかの新しいルールや、場合によってはエコポイントのようにエコ住宅ポイントでもつくって若干の支援をすることで、財政出動が小さくても大きな成果を得られる分野があるはずだと。そういう意味で、関係者に大いに知恵を出してもらいたいと、今、叱咤激励をしているところであります。
(問)今回の内容とはちょっと離れるんですが、このGDPの発表の前に直嶋経産大臣が、このGDPの数字を石連の会合で話してしまったという事実を大臣が御存じかということと、このような発表の前に漏らすということは、マーケットにも影響を与えるのでよくないと思うのですが、この点についてどうお考えでしょうか。
(答)ちらりと報告は聞きましたが、まだ御本人からも、特に経緯の説明をいただいていませんので、この時点ではあまり、あれこれ言うのはちょっと早いかなと思います。
(問)今、財政に依存しない成長というお話があったんですが、二次補正の規模について、今回はかなりの高いプラス成長ということで、2.7兆円いるのかどうか、そんなに要らないんじゃないかという議論が出てくると思いますけれども、この点については大臣は今2.7にこだわるのか、それともある程度もっと少なくてもいいとお考えなのか、どうお考えでしょうか。
(答)私は、この「2.7」という数字は皆さんも御承知のように、一次補正のいわば凍結したものを新たな方面に振り向けるという考え方でありますので、もちろん景気対策ということが内容としては当然中心になる、雇用対策、景気対策が中心になりますが、そういう規模の問題は、今申し上げたような性格を持っておりますので、今日のこのQEの結果によって、それを、例えば小さくするといったようなことは考えておりません。それには影響されないという意味です。
(問)二次補正なんですけれども、先ほど今日、明日にも方向性を出したいということでしたけれども、今日の基本政策閣僚委員会と明日の閣議あたりで、そこら辺が決まってくるという理解でよろしいでしょうか。
(答)順調にいけば、そういうことです。明日は関係する閣僚委員会、さらには閣議も予定されていますので、順調にいけば、そういう形で進めたいと思っています。
(問)2.7兆円の中の雇用、環境とか、そこの中の大枠の額というのは今日、明日で示されるんでしょうか。
(答)それを数字で示すかどうかはまだ、また数字で示すことの意味がどうあるのかというのも考えていますが、現時点ではそれ以上、細かく区分を、数字という形で示すということは現時点では考えていません。ただ、実質的にはいろいろなものが出てくる中で、本当に雇用や環境に資するものなのか、この際また補正だから、えいやでやっておけばいいんじゃないかといって、ちょっと筋の違うものが出てくるのか、それはしっかり見定めたいと思っています。

(以上)