原口内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成22年9月10日

(平成22年9月10日(金) 10:09~10:32  於:会見室)

1.発言要旨

(原口大臣)
 おはようございます。閣議後の会見をさせていただきます。
 まず、第1点は、これ、郷原顧問にも後で言及を頂きますが、今日、閣議において、「貸切バスの安全確保対策に関する行政評価・監視」の結果に基づく勧告を国土交通省に対して実施しました。皆さん御記憶のとおり、零細なバス事業会社が、非常に無理な運行を強いられて、大変多くの方の人命を危険にさらすといった事案もございました。調査の結果、貸切バス事業者の法令違反が後を絶たない中、指導・監督の仕組みが必ずしもうまく機能していない状況が判明しました。貸切バスの安全確保対策の推進を図る観点から、行政処分の実効性の確保、安全確保に必要なコストを勘案した適正な公示運賃の設定及び届出運賃の適正収受、運賃はあるのだけれども、それを、独占禁止法にいうところの優越的地位の乱用、それは個別の事案に即して、どうだったかというのは検証されるべきでありますが、やはり立場の弱い貸切バス事業者が、適正な運賃を確保できない、あるいは、そういったことで、旅行業者に対する指導の徹底等を、勧告をしているものでございます。この調査及び取りまとめに際しては、郷原顧問から、貸切バス事業者に対する制裁システム、つまり、安心・安全の最も大事なところ、その大事なところをしっかり担保するために、どのようなことが考えられればいいのか。私たちは、独占禁止法の民主党案を作るときの、私、座長でありましたけれども、そのとき郷原先生にも大変、国会でも多くの御知見を頂きまして、マーケットそのものをアビューズする独占禁止の企業に対して、経済的なサンクションを与えていくという、私たちは法律を作らせていただきましたが、この場合についてもどのようなことが考えられるのか、有益な御助言を頂いています。本日は、この勧告の意義付けについて、郷原顧問の方から更にお話を頂けるということで会見に立ち会っていただいていますので、一言お話を頂きたく存じます。

(郷原顧問)
 これは私のかねてからの持論でもあるのですが、昔のように行政官庁が企業に対して何でも手取り足取り指導をしていた時代であれば、法律というのが象徴的に存在しているだけで、実際に行政処分とか告発などを行わないということで良かったわけですが、正に今、自立的・自主的な事業活動、自由な事業活動が保障され、その一方で、行政がしっかり法律を守らせるということをやっていかないといけない時代においては、違反行為、違法行為に対して、その悪質性、重大性に応じて、しっかり行政処分とか、悪質なものに対しては告発というのが機能していかないといけない、非常に重要な課題になっていると思います。今回の貸切バスの案件は、一つ間違うと、国民の生命・身体に大変な危害が及びかねない、こういう分野において行政がどう機能しているのか、法律がきちんと機能しているのかということを、実態を詳しく調査して、問題点を明らかにしています。そして、そういう実態に基づいて、行政処分が非常に恣意的に行われて、実効性をもっていないということとか、告発についても、全然基準らしきものがなくて、ほとんど行われていないという実態についてですね、しっかりとした考え方、基準を明確にするようにと。告発についても、その考え方を明確にして、場合によっては検察当局ともしっかり話し合うというようなことの必要性が示されているわけです。行政の有効な資源配分、リソースの配分ということからしても、こういうような制裁システム、サンクションシステムがしっかりと機能していくということは、極めて重要だろうと思います。そういう面で、今回の総務省の勧告を、国土交通省の方で重く受け止められ、これをどんどんほかのところに一般化していっていただきたいと思っていますし、今回の勧告は非常に意義のあるものと考えております。

(原口大臣)
 郷原顧問、ありがとうございます。この「貸切バスの安全確保対策に関する行政評価・監視」の結果に基づく勧告は、ひとえに行政同士で様々なチェックをし合うということもですけれども、それを更に深めて、今顧問がおっしゃったように、安心・安全のために行政そのものの在り方、あるいは、これまでの指導の徹底。実際に安かろう、悪かろう、危なかろうといったことでは、決して国民の皆さんの安心・安全にはつながりません。そのことについて私たち総務省としても、強い危機感を抱き、調査を行い、この勧告に至ったものでございます。
 2点目は、来週、更に詳しく御報告をさせていただきますが、NHK及び在京キー局の字幕放送時間の割合ということで、調査をさせていただきました。それぞれ、字幕拡充計画における計画値と実績値の比較ということで、キー局5局とNHKということで、大変多くの皆さんが、いわゆるバリアを無くすということで御努力を頂いてきているわけでございまして、ただ、放送総時間に占める字幕放送時間の割合は、NHK総合は前年度比1.9%の減に、残念ながら、なりました。もちろん、NHKは他の民放の、いわゆる字幕の対象とする番組に対して広く対象番組を取っていますので、1.9%の減ということをどのようにとらえるかというのは、更なる、私たちの分析が必要だと思っております。また、在京キー局も前年度比0.4%減ということでございます。字幕拡充計画においては、平成20年度がNHK53.3%、日本テレビ86.5%、TBS76.3%、テレビ朝日90.9%、フジテレビ86.8%、テレビ東京81.4%。これを平成29年度までに100%にするという計画を頂いていますが、現状では、まだなかなか、現下の厳しい経済的な情勢が反映したとは思えませんけれども、このような数字が出ているということでございまして、総務省としては、更なる字幕放送の拡充に向けて、生放送番組への字幕付与の促進、録画番組への字幕付与の徹底等に、放送事業者が取り組んでいただくことを期待するものであります。これが2番目でございます。
 私の方からの会見の内容は、今日は以上です。御質問がございましたらどうぞ。できましたら、社名とお名前をおっしゃって、質問をお一人1問に限らせていただきたいというふうに思います。どうぞ。

2.質疑応答

(問) 幹事社の日本経済新聞、林です。
(答) 林さん、おはようございます。
(問)おはようございます。幹事社からですね、携帯端末向けのマルチメディア放送についてお伺いします。8日にですね、電波監理審議会の答申を受けて、昨日、免許の付与が、交付がなされました。今回ですね、総務省があらかじめ選定先を内定するような通常の形ではなく、電波監理審議会に選定先をゆだねるような形で諮問が行われました。その結果、審議の時間が長期間に渡ったりとか、いろいろな、通常とは異なる点が出てきたと思うのですが、大臣として、改めて今回の審議に対する受け止めについてお伺いできれば。KDDI側が、今回の審議プロセスに関して疑義を呈するような発言が一部の報道であったと思うのですが、それについての大臣の見解もあわせてお願いします。
(答)今回のマルチメディア放送、いわゆるVハイの事業者選定に当たっては、その選定プロセスの客観性、中立性、これを確保することが非常に重要だというふうに判断をいたしました。事前に、これまではですね、総務省が案を示して、それを電波監理審議会にお諮りをするというやり方をしていたわけです。ただ、こと新しいメディア、しかも、多くの方々の関心のところでもある。平成20年の電波法の一部改正、これにより、総務省としての案を示さない、つまり、行政が、自分たちがこれが良いですよというようなことを、案を出して、そして、それに対して電波監理審議会にお諮りをするという形ではなくて、全く白紙で諮問をすることが可能となったわけです。平成20年の改正には、私自身が、確か記憶が間違えていなければ、その趣旨説明をさせていただいたというふうに記憶をしています。したがって、今回、2社からのお申し出があり、それを、2社体制がいいのか、1社体制がいいのか。これ自民党政権時代から様々な、Vハイについては、有効利用について議論があったわけですが、原則1社というようなことで、パブリックコメントも付し、そして、それぞれの事業者からも、1社の方が望ましい、つまり、限られた電波帯域を、2社にすることによるデメリットということについてお話があり、そして1社ですねと。それで、私たちの中で幾つかの基準をオープンにして、これ基準を全部オープンにしていますけれども、どちらがいいのかということを、その選定プロセスに入っていたわけです。ただ、その選定プロセスが、更にだれから見ても公平で公正であるということを更に担保する上で、今のような形にさせていただいたわけです。諮問以降、電波監理審議会においては、3回に渡って長時間の審議、あるいは、申請者から直接意見をお聞きになる場を設けていただくなど、集中的に公正かつ精緻な審議の御議論の上で答申を頂いたものと考えています。特定の事業者が何をおっしゃっているかというのは、私、聞いておりませんので、特にこういう事業者選定にかかわるところについては、伝聞によって、その会社の御主張を、私が総務大臣として批評や判断を加える立場にはございません。
(問)読売新聞の古川です。昨日、菅さんが札幌で、地方と国の財源分配についての考えを示した発言がありまして、従来から国・地方5対5というお話がある中で、昨日、菅さんが1対2の配分を目指すのだというような趣旨のことをおっしゃったのですが、かつて、三位一体改革のときに税源移譲した結果、税収に偏在が起きて、ただ東京に集中するというようなこともあったと記憶している中で、1対2というお話を率直に担当大臣としてどう思われるのかということと、具体的にどうやったら、それができると、あるいは、かねての目標の5対5をまず目指してから、最終形1対2という形とか、そういうお考えがあればお教えください。
(答)その前提として、大変、良い御質問だと思います。公的歳出の3分の2は地方で行われているのですね。1対2の状況で事業の、歳出規模だけで見ると、形になっている。総理は、更にそれを支えるしっかりとした財源、税源についてお話をされたのではないかなというふうに考えます。つまり、税源のまずは1対1を目指していくと。更にどのようにしてそこに向かわせるかと言うと、一つそこのかぎになるのは一括交付金であるというふうに考えています。一括交付金、それから様々な税財源の移譲、これを併せていって、それから、その中途では、二重行政を無くして、地域主権改革を進めるということが前提ですけれども、地域のことは地域でできる、安定的な財源によって、安定的なサービスを、持続可能性をもってやっていくと。これが基本でございますので、総理が札幌でお話になった1対2という、国が1・地方が2というお考えは、私たちの地域主権改革の中での一つの大きな、税源だけではなくて、財源あるいは自主的な地方の富を生み出す力も含めて、補強していくべきところだというふうに考えています。昨日お話になったところなので、御真意については、そういうことをおっしゃっているのではないかと。かねてから、地域主権改革では、総理とそのような議論をさせていただいたものですから、大変、力強い御発言ではなかったかと思っています。
(問)大臣、確認とかされたりは、まだされていないのですか。
(答)閣議でもしょっちゅうお会いしていますけれども、テーマがたくさんあるので、総理に昨日の発言どうでしたかということを伺うことはなかったです。むしろ、私の方から幾つか政策課題についてメモをお渡しするということはしましたけれども。
(問)フリーランスの上出と申します。ちょっと古くなるのですが、御質問する機会が無かったので。ICTフォーラムのことについてお聞きしたいのですが、8月 25日に私も取材しておりまして、このとき大臣は珍しく、BPO、放送倫理・番組向上機構ですね、このことについて問題点なんかを、自ら指摘をされる、積極的にお話をされていたのですが、事務方の方に聞いても、今回第8回目だったのですが、この後どうなるというようなことはちょっと分からないのですが、元々は日本型FCC、放送通信委員会、日本の独立したそういう委員会を作るということがマニフェストにも書かれていて、それが中心かなと思っていたのですが、いろいろな問題に広がってきて、どういうふうに収まっていくのかちょっと見えない。それはそれで良いことだと思うのですが、大臣、今の段階で、大体いつごろまでにそういった結論を出して、特に注目されている放送独立委員会について、どういう形で、日本だけ先進国の中でそういうものが無くて、大臣が権限を持つ。それについて、今の段階で御説明できる範囲でお示しいただければと思います。
(答)日本版FCCという言い方は、私が大臣になってから、修正をしています。つまり、総務行政があって、またそこにアメリカのFCCと同じような強力な権限を持つものがあるということが、正に言論や放送・報道の自由、国民の知る権利といったところで、どうなのかということを問題提起し、今のICTフォーラムでは、憲法学者の方々、あるいは様々な言論界の皆様に集まっていただいて、そして、骨格となる御議論を頂いています。これは一応、私たちの、この4年の任期というものの中で位置付けをしていますけれども、拙速な議論でもって何かを決めていこうというふうには考えていないのですね。座長にお任せをして、そして、いわゆる総務省というものが、放送・通信といった行政の規制官庁であり続けていいのかといったことについても、様々な御議論を頂いているわけです。この間の行政指導といったことについても、この間御報告があったとおりで、あのBPO、BROの立ち上げについて、1990年代の後半、BPOの、私ごとですが、トップの飽戸先生は、私の学生時代の恩師でございまして、相次ぐ放送による人権被害、あるいは、様々な公正・公平な報道、そして、そのジャーナリストや、放送・報道の自由を守るといったことについて、やはり事業者自らが、自らの責任においてBPO、BROを作り、そして、自己規制をしていく。これが極めて大事だというふうに考えています。その一方で、私、前回、国民の知る権利、つまり、BPOは国民の権利といって、それは何を国民の権利と考えて、どのように保障していこうとされているのかということを当事者の方に伺ったわけでございまして、一人一人の国民の放送・報道、あるいは表現の自由、これを保障していく砦を、議論をしていく過程において更に更に強固にしていきたいと、このように考えています。このプロセスについてはもちろん、いついつに、どのような機関を作るかということよりも、むしろその言論の中で、様々な圧力や、あるいはそれを阻害する要因を減らしていく、無くしていくということが大事だというふうに考えています。
(問) 朝日新聞の堀口です。
(答)おはようございます。
(問)今日閣議で、政府の経済対策ですね、閣議決定しましたけれども、9,150億円という規模についての、中身についての評価、小沢前幹事長は、何か2兆円とおっしゃっていますけれども、評価をお願いできますでしょうか。
(答)これ予備費を使って、規制改革、あるいは、現在私たちが考え得る様々な成長戦略、そして、やはり私たちが一番問題だと考えているのはデフレの脱却。これについて明確に、中心部分に置けた。しかも、私たちが主張している光の道を中心とする成長戦略、これについてもしっかりと書き込むことができたというふうに考えています。この後補正予算の議論というのは、国会でもなされているとおりです。いろいろな方々が、今のデフレギャップ、これがどれぐらいあるのかというのをですね、見極めるというのはとても大事だと思います。ただ、その一方で、私たちは、やるべきことをすべてやらなければいけない。地域が非常に疲弊をし、その活性化のためのジャンプ台。ただ、疲弊をしていると言われている地方の中でも、様々な動きが新たに出てきました。その動きを引き出していく、古い経済のパラダイムが変わるときの、ある意味、構造的な転換時の通過点での悩みというところもございます。そういったところにもしっかり手当をしていく。それから、円高対策についても、今日少し、主要閣僚ともお話をしていきたいと思っているのですが、私たちの通貨、為替のゴールキーパーは一体だれなのか。ゴールキーパーは、これは少し所掌の範囲、財務大臣とも議論をしてみたいと思うのですけれども、ゴールキーパーはやはり、球を止めるからゴールキーパーであって、急激な円高に対してはしっかりとしたファイティングポーズを政府がとり、そして、総理のリーダーシップの下で生活の安定ということをやっていく。そういう成長戦略になっているというふうに考えています。
 よろしいでしょうか。
(問) どうもありがとうございました。
(答)ありがとうございました。

(以上)