林 芳正 内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成21年7月28日

(平成21年7月28日(火)  11:00~11:24  於:記者会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 今日は、まず「国民生活安定緊急措置法施行状況報告書」というのがありました。これは、国民生活安定緊急措置法の施行状況について、半年に一度国会に御報告するということになっておりますので、今年前半、1月1日から6月30日までですが、同法に基づく特段の措置を講じていないという旨の報告書を決定したということでございました。
 それから、時間が前後しますが、閣議の前に、第5回緊急雇用・経済対策実施本部を開催しました。本日の会合では、関係閣僚から、これまでの経済対策の進捗状況等を総点検する観点から、対策の実施状況と、それから、今後どの施策がいつどういうふうに具体化していくかということにつきまして御報告がございました。
 総理からは、「日本経済の確実な底入れ反転に向けて、引き続き全力で取り組んでいく必要があるということ、それから、特に雇用情勢、これについて細心の注意を払って対応し、中でも次世代の日本を担う若年層、この雇用対策については、経済財政政担当大臣の下に設置をされるプロジェクトチームが中心となって、政府横断的に取り組んでもらいたい」といった御発言がございました。
 私のほうからは以上でございます。

2.質疑応答

(問)まず、今御紹介ありました「若年雇用対策のプロジェクトチーム」ですけれども、具体的にはどういうことをどういうスケジュールでやっていくのかということをもう少し詳しく教えてください。
(答)はい。これ、実は「基本方針2009」にも記述がございました。また、7月17日に行いました経済財政諮問会議でも御議論がございましたので、次世代の日本を担う若年層に対する重点的な雇用対策につきまして、府省横断的に取り組むということのために、ここで私の下で設置をするということにしたものでございます。
 それで、各省にまたがっておりますので、お配りがしてありますように、こちらでやりますが、文科、厚生労働、経産のメンバーに副主査になっていただいて、その他各省からメンバーになっていただいて、やはり横串で、言ってみればシームレス、ワンストップといいますか、対策が利用される方の視点に立って切れ目なく便利にやっていただけるようにしていきたいというふうに思っております。
 そういう観点で、まずは経済財政諮問会議で民間議員の方からも御指摘もあったところですが、若年層にかかる雇用情勢の分析というものをして、どの層がどういうふうになっているのかということをまず現状をよく把握するということと、それから、有識者のヒアリングというものも行っていきたいと思っております。そういうことを行いながら、平成22年度のシーリングで、経済危機対応等特別措置というのがございますので、こういうものも念頭に置いて、8月末の関係省庁の概算要求にも反映をしていけたらと思っておるところでございます。第1回目のPTの会合を7月30日に予定しております。
(問)昨日、民主党からマニフェストが公表されまして、内閣府の関係だと、経済財政諮問会議を廃止して国家戦略局を新設するとか、全体的にはさまざまな生活対策が盛り込まれる一方で、財源があいまいじゃないかとか、いろいろとそういった指摘もあるんですが、マニフェストについて大臣の御所見をお願いします。
(答)マニフェストを掲げて選挙を戦うということは非常に意味のあることだというふうに思っておりまして、民主党の出されたマニフェストについていろいろ議論が始まったということは大変いいことだと思います。自民党の話をすれば、今月末にも出されるということで、政策を比較して有権者の皆様に選択いただくということは非常に大事ではないかと思っております。
 その上で、財政というのは、どこかでお金を使いますと、そのお金をどこから持ってくるかということが必ず裏づけとしてないと、空約束になってしまいますので、そこは議論を深めていく必要があるんではないかと思っております。その意味では、従来から私も申し上げているように、ばらまき色が強い民主党のマニフェストだという第一印象を受け止めております。
 個々のものはいろいろございますが、例えば子供手当も、所得制限もございませんし、それから、各種控除を止めて手当てにするということですが、控除をやめて出てくる額と、それから手当てで支給する額にはかなり乖離がありますので、控除を全部止めたとしても残りの財源をどうするのかが非常にあいまいであると思います。また、農水大臣に聞いていただいたほうがいいかもしれませんが、戸別所得補償制度というのも本当にできるんだろうかと。
 一方で、FTA等で自由化をすると、こうおっしゃっているので、辻褄が合うのかなというような気がいたしております。
 それから、私、党で行革もやってまいりましたので、例えば、細かい記述になりますが、独立行政法人を見直して、原則国へ戻すか民営化すると書いていますが、国へ戻すということになると、国の定員が増えてしまう。それから、我々苦労して、社会保険庁、年金の部分を機構にするということで、公務員でなくすということをさんざん議論して決めましたが、これをあっさりと歳入庁にするということで、結局、国家公務員に戻ってしまうということがございます。その一方で、人件費を2割削減すると、こういうふうに言っているので、この辺はどうなるのかなということが非常に不明確である。
 私は、今の仕事に立ち返って申しますと、大きな政府に対する懸念が国内外の投資家に出ないかと。そういう懸念が出ますと財政状況がどうなるのかという懸念を惹起することもありますので、その辺も財源のきちっとした裏づけの議論をきちっとしていただきたいし、我々もこれから討論、議論を通じて明らかにしていきたいというふうに思います。
 それから、マクロの成長戦略といいますか、中長期の成長戦略や、それから、財政健全化も目標は定性的に書かれていますが、期限とか数値がないので非常に不十分ではないかと思っております。
(問)マニフェストの関連で、今これだけ財政が厳しい状況の中で、民主党が財源のなかなか裏付づけのないものを出してくるというのは、やはり、民主党は政権担当能力がないという見方をされているという理解でいいのでしょうか。
(答)はい。冒頭に申し上げたように、特に財政は、財源の裏づけというものがあって初めて回りますので、どこかからお金が降ってきたり、どこかに埋まっているというわけではないわけであります。そこをきちんと明確にして、必要があれば御負担もお願いするということが政権党としては責任ある立場だと思います。そこが明確でないということになると、端的に言って予算が組めるのかなというような疑念が出てきますし、それが将来負担増となって返ってくるんではないかというようなこともあるわけでございますので、政権担当能力というものに疑問符がつかざるを得ないと、こんな印象を持っております。
(問)内需か外需かという議論の中で、現在の政府は内需も外需も両方大事だというふうに、特に輸出を基点とした内外需が大事だという考えを示されていますが、民主党のマニフェストを見ると、生活者とか農家とか、中小企業とか、どちらかというと内需にかなり軸足を置いているように見えるんですけれども、その辺についてはどうお考えですか。
(答)そうですね、実は経済財政白書でも最後のほうで、外需から内需へということではなくて、外需と内需の双発エンジンと分析をさせていただきましたが、まさにおっしゃるように、その両方が相まってやっぱりやっていくという姿勢が必要ではないかと思っております。
 民主党のマニフェストで外需はもういいと書いてあるわけではないので、それはそれでおやりになるんだろうなというふうには思いますが、やはり総理がこの間の会見でおっしゃられた、行き過ぎた市場原理主義はとらないという中で、ではどうするのかというときに、やっぱり我々は今経済対策等でやっておりますのは、やっぱり国民の皆さんにやる気を出してもらう。いろいろなことを、就労意欲をエンカレッジして、いろいろな訓練もしていただいて、働けるように施策で応援をしていくとか、それから、企業や自営業者、農家の方にチャレンジ精神を出してもらうとか、それから、NPOとか公益法人改革を通じて、ノンプロフィットセクターにも頑張ってもらうと。
 こんなようなやる気を出してもらおうということをインセンティブとかエンカレッジということを中心にやっておりますが、一方で、やはり民主党のマニフェストを拝見すると、ばらまきで一律にお配りすると。例えば子供手当ても所得制限もございませんし、そういう意味では、長期の停滞みたいな、20世紀にイギリス病のようにならなければいいかなというふうに思います。冒頭申し上げました大きな政府になってしまうんではないかということが非常に懸念をされると思います。
(問)マニフェストの関係で、政策決定のあり方についてかなり言及されていて、経済財政諮問会議はやめると。国家戦略局というところで、予算のことを決めるとか、あと事務次官等会議もやめるということを言っています。政策の決め方についてはどのように評価されますか。
(答)政策の決定の仕方についても、まだよくわからないというのが第一印象です。国家戦略局というのをつくられると書いてあるのですが、どういう組織になるのか、だれがどういうふうに物事を決めていくのかというところがあんまり書いていない。鳩山代表の会見とかいろいろ聞いている範囲では、戦略局というのは外交もやると。それから予算もやるということで、どういう方がメンバーになられてやられるのかということがちょっとよくわからない。それから、政府に入った政治家100人が首相官邸にみんな来て議論をするということはインデックスに書いてあったと思いますが、例えば、ただ事実上の会議をやるのか、国家行政組織法上のきちんとした位置づけをして権限を与えるのかというのがわからないので、ちょっとコメントのしようがないところがございます。
 大きなことを決めていくというのは、今の制度でも、例えば経済財政諮問会議や総合科学技術会議、いろいろな本部もつくっておりますし、閣議や閣僚懇談会でもいろいろ議論をしておりますので、今とどこが違うのかということが非常にわかりにくいということであります。
 それから、事務次官等会議についても、やめられるのか残すのかというのは、ちょっといろいろな方がおっしゃっているんで判然としないところがありますし、どこかで準備をしてやるということは、そんなに目くじらを立ててやめる、やめないと言っていること自体が何か官僚にとらわれているような、官僚主導を打破するというスローガンのように聞こえて、そこで決めたことにもし不服があればひっくり返せばいいわけでございまして、そういうところにあんまり拘泥するというのは、いかほどの意味があるのかなという感じがしております。
(問)民主党のマニフェストについてですけれども、先ほど、単なるばらまきですと長期の景気停滞につながる可能性もあるし、大きな政府という懸念を招くという可能性もあるというふうにおっしゃいましたけれども、そうなりますと、単なる需要対策ではなくて、供給サイドでもやはり生産性をいかに高めるかですとか、あるいは、そういう変化に対応した経済構造の転換につながっていくということになってくるかと思いますけれども、その点で民主党のマニフェストというのはどのようにごらんになりますでしょうか。
(答)そうですね、今おっしゃられたように、そういう成長戦略とか経済財政の展望というものが余り見えてこないなというのが率直な印象でございます。
 我々のほうは、例えば最先端の研究開発、これは2,700億円で今からやっていくという基金をやりましたが、基金は全部だめだということになると、これもだめになるのかなという気がいたします。そういうことや、太陽光発電でかなり設備投資の計画が出てきていたり、そういうような取り組み等を支援すると、我々のほうはですね。
 それから、さっき農業も触れましたけれども、農地法を変えて集約化してやる気のある人に集約化してやってもらうと、こんなようなことも出しておりますけれども、そういう成長への展望というのがなかなか見えてこない。一方で、最低賃金1,000円というのが書いてありますが、地元に帰ったり、中小企業の方のお話を聞きますと、それではもうやっていけないという声も中小零細企業の皆さんから聞こえてきます。やはり全体として経済をどうしていくのかということがなかなか見えてこないなというのはおっしゃるとおりだと思います。
(問)若者の雇用の話ですけれども、大臣の今の若者の雇用で何が起こっているのかという所感と、あと若者の雇用を守っていく重要性についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
(答)これから有識者の方にいろいろ現場のお話を聞いてみたいと思っておりますが、よく言われておりますように、失われた10年とかフリーターという言葉がありますように、大きなトレンドとして、終身雇用、中学や高校や大学を卒業して、みんな就職して、そこにずっと定年近くまで勤めるという形態が徐々に変わってきている、これは大きなトレンドとしてあると思います。
 それに加えて、非常に景気が悪かった時期がありましたので、失われた10年、ロストジェネレーションと言われているような、もう一番上の方は30代にもなっておられると思いますが、そういう方がそういう終身雇用という仕組みの中で最初の機会というのがなかなか得られなかったと。私も昭和59年の就職ですが、入ってから社会人としての基礎みたいなこと、例えば電話の応対ですとか、タクシーに乗るときにはどういう順番に乗るかとか、そういうのをやったわけですね。そういう昔のトレンドでいくと、会社に入ってからやっていたことというのが、そのロストジェネレーションの場合は、その最初の機会がなかったということもあって、エンプロイヤビリティといいますか、そういうものが非常に備わらないままで過ぎてしまったというところがあるのではないかというふうに思います。
 そういった状況と、今回はこういう状況ですから、また新しくそういうことが起きるというリスクをどうやって回避していくかということもあると思いますし、それからもう一つは、今そういうふうになっている皆さんをどうやってきちんとエンプロイヤビリティを高めていくか、こういったこともあると思います。
 冒頭申し上げたトレンドが少し変わっていくんではないのかなというふうに思っておりまして、欧米を見ますと、必ずしもみんな同時に卒業して同時に就職というのでなくて、いろいろな選択肢があって、一度大学に戻ったりというのをしながら、また職場に帰ってくると、こういうのもありますので、それにすぐに全体が変わるということではないのかもしれませんけれども、そういったようなところと、それからもう一つは、先ほどNPOとか公益法人ということを申し上げましたけれども、やっぱり非営利セクターというもの、95年に阪神淡路大震災があったときに、「ボランティア元年」という言葉がございましたが、そういう意味では、必ずしもプロフィットセクターだけに焦点を当てるんではなくて、広くプロフィットセクターとノンプロフィットセクターというのを全部見た上で、どういうキャリアプランというのがあり得るのか。4月だけではなくて、例えば9月とか、途中、中途、いろいろなことを含めて、総合的に考えていきたいと。
 そういう意味では、冒頭申し上げましたように、いろいろな有識者の方に、今私が申し上げたような考え方にいろいろと御示唆をいただいて固めていきたいなというふうに思っております。
(問)確認ですけれども、8月中にもうこの若年雇用対策プロジェクトチームで取りまとめて、ただ予算は来年度の概算要求でということでしょうか。
(答)ええ。概算要求の締め切りというのがありますから、反映させるということになると、できればその締め切りの前の要求に反映させていきたいというふうに思っていますので、最後の出口よりも早くそれはやる必要があるかもしれません。

(以上)