鳩山内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年11月28日

(平成20年11月28日(金) 10:14~10:35  於:総務省会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。労働力調査結果、消費者物価指数、家計調査結果について、閣議で報告をいたしました。10月の完全失業率が3.7%と、前月の4%から0.3ポイント減ったという報告をしましたけれども、私は閣議できちんと説明をいたしました。これは雇用の情勢が改善されたということでは残念ながらありませんと。就業者数は36万人減っていますと。ただ数字が改善しましたのは、いわゆる非労働力人口が56万人増加して、4,406万人になったと。結局、非労働力人口という、つまり働きたい、職を探している、職が見つかったらすぐ働ける、だけど働く場所がないという人を完全失業者と呼ぶわけでございます。ですから完全失業者というのは、そういう意欲のある人が分子になっているわけです。
 ところが、「もうあきらめたから、今は当分働かなくていい」、「職を探してもいいところが見つからないから、もう職探しもやめた」という人は完全失業者から除かれ、いわゆる非労働力人口の方に入っていくので、妙な形で完全失業率が下がったということでございますので、ある意味では、警戒を十分にしなければならない要素かと思います。以上です。

2.質疑応答

(問)自民党の「郵政事業の検証・検討に関するプロジェクトチーム」が議論を始めまして、郵政グループの経営形態の見直しも視野に議論をしていくということなのですが、これに関する大臣の御所見を伺えませんか。
(答)自民党あるいは与党の中で郵政民営化あるいは郵政事業についての検証、あるいはより良い姿を求めて検討をするということは、大変結構なことだと思っております。私は郵政民営化担当大臣として、いつも申し上げておりますが、郵政民営化という大事業、偉業を成し遂げたのは小泉総理である。しかし世の中にはおよそ無謬、パーフェクト、これが絶対というものが存在をするわけはありません。あのとき採った、日本郵政という持株会社の下に4分社化したこの5社体制で、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株は10年間で売り切ると、日本郵政の株は3分の1を国が持ち続けるという形が本当にいいのかどうかというのを検証して、間違っていると思ったら直ちに、よりいいものが見つかったら直ちに、これを変更していくというのは当然あってしかるべき。郵政民営化という事柄は全く動かしませんが、その経営形態が、それはやってみなければ分からないというほど無責任なことではなかったでしょうが、様々な激論を戦わせた中であの形が出てきたわけでしょうけれども、例えば外国によっては、郵便事業会社が親会社になっていると。持ち株会社というよりも、郵便事業会社が親会社で、その下に金融会社があるとか、国によって採った道は違っていると思うし、要は、これは総理大臣もおっしゃっているように、5つの会社全部というか、分社化した郵便事業会社、郵便局会社、かんぽ生命、ゆうちょ銀行、この4つが全部健全に発展できるようにすることと、もう1つは、やはり日本の歴史と伝統と文化の上に成立したユニバーサルサービスとしての郵便局というものを考えますと、それはより良いものを考えていくのは当然ではないかと。
 例えば10年間で株を売り切ると、ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、国から言えば、完全に糸の切れた凧になるわけでしょう。10年間は郵便局に手数料を払うという委託契約があるのでしょうけれど、それがなくなって純粋の金融機関になったときに、郵便局が立ち行かなくなるようになったら、郵便事業と郵便局はユニバーサルサービスですから、やはり望ましくない形態があり得るわけです。そういう意味でどういう形態がいいかということを党でも大激論をやっていただきたいし、私も官邸とは打ち合わせしながら、見守っていきたいと思っております。見直しは大胆にやるべきですよ。
(問)給付金制度の概要が、今日発表されたのですが、その中で、所得制限について、設けないことを基本とする方針を示しているのですが、総理が、先月30日に給付金の創設を発表されて、そのあと、閣内とか与党でいろいろな議論があったと思うのですけれど、設けないことを基本とするという表現に至ったことについて、御感想というか御所見をお願いします。
(答)総理が最初に「全世帯に配る」という発言をされた。あの線を曲げてはいけないと思っているのです。ですから、ずっと言い続けてきた。ただ、「高額所得者は遠慮したらどうです」と地方自治体がもし決めようとしたら、これは排除はできない。自治事務でありますから。総務大臣の権限というのはいろいろあると思いますけれども、地方自治体にお願いをするとすれば、所得制限は付さないでいただきたいと、私は総務大臣としてそう思いますね。そういうシンプルな形でないといけないと基本は思っていますから。「高額所得者には御遠慮ください」というふうにされる地方自治体があってもそれは排除はできません。だが、全国民が等しく受け取っていただきたい。それがある意味での公平であると思いますから。さわやかにいきたいから。「シンプル、さわやか、全世帯」とこういうことですよ、私の願いはね。ただ、こういうふうには書かざるをえなかった。そのことは御理解ください。基本と書いてあるでしょ、基本と。
(問)すみません、先ほどの失業率のところなのですが、非労働力人口を入れてないことによって世界各国の失業率と大分乖離が出てきていると思うのです。見た目が、日本の方が良くなっていると思うのですが、この辺の見直しとかというのは考えられているのですか。
(答)それは統計の問題でございますから、統計の研究というのは、会議もあって、いろいろ進んでいくのだと思いますが、私は現場でどういう作業をしているのかを見たわけではありません。ただ、完全失業者の定義をそのように定めていますので、それをいろいろな方法で抽出していくと、早い話が「仕事をもう探してない」、「当分仕事しなくていい」という人が増えているというのは、何かちょっと悲しい感じがしますよね。閣議でも、中川財務大臣から、「総務大臣、そういうことですか。」と聞かれましたので、「あきらめるとか、仕事の意欲を持たない、今、仕事しようと思わないという人が増えた結果、意欲のある人のみが完全失業者ですから、それで数字が改善されるというのは、何か、社会問題につながるようなことがなければいいが。」と申し上げたわけです。
(問)とりあえず、そこは今のところ、定義上ということで。
(答)それは専門家と相談してみますよ。私が今、言えることではないから。
(問)大臣、すみません。先ほどゆうちょ銀行とかんぽ生命の話が出たのですけれども、2017年9月末の完全民営化以降もこの金融2社については、ユニバーサルサービスを担保した方がいいとお考えですか。
(答)だから、資本関係は糸の切れた凧になりますね。で、もちろん1千万円というのは当然、外さなければならないのでしょうけれども、郵貯のね1千万円。もちろん今は郵便局が委託を受けているわけだけど、それはそのときになってみなくては分からないけれど、郵便局ともう一切関係がどんどんなくなってくると。そうしたら郵便局自体が存立できなくなるじゃないですか。これは実は手数料のこともあるのですね。今は一定の枠組みがあって手数料が入って郵便局がやっていけるけれど、完全民営化したら当然それは手数料は1円でも安く、「では、コンビニでやってくれよ」ということもあるかもしれない。私はそういうことはやはり日本の文化の破壊につながる。
 私は、この間、委員会でもゲマインシャフトということを盛んに申し上げたけれど、日本的精神、精神的に結びついた地域共同体という、コミュニティという言葉よりはゲマインシャフトという言葉の方が好きだけど、そのゲマインシャフトが色濃く残っているとまだ思っているのですよ。その中心的な役割を果たしたのが当時の特定局長さんだったのではないのですかと。いわゆる従来の特定局が全くやっていけないような状況は、ひいては郵便事業のユニバーサルサービスにまで影響が出てくるのではないかなと。だから、これはどういう案がいいのか、私は今、答を言える立場ではないけれども、無謬のパーフェクトなシステムというのはあり得ないわけですから、いろいろな議論を見て、とりあえず日本郵政に4つぶら下がりと株についても決めたことがある。これを変えてはいけないという話はないので、国家国民のために変えていけばいいのでね。ただ、民営化は守るということですよ。
 それからですね、東北整備局中心に114億円のビルを建てるなどという地方分権改革推進委員会がこれから大胆に見直しをしようというときに、決して少なくない額、いろいろなものが入るということを言っていますがね、私はやはりそういうのは感心しませんね。これから都道府県に権限を移譲しよう、出先機関の整理合理化、統廃合をやろうというときに、豪華かは分からないけれど、ビルを建てるとしたら、世論もそういう行動は認めないのではないでしょうか。そのビルが強いて言うならば、県の総合庁舎になればいいわね。その移した権限を全部そこに入れるようなものになった方が、きっと国のためになるでしょう。地方整備局がこれをがっちり守るのではなくて、地方整備局も大胆に河川や道路の権限の縮小をやらなくてはならないのですから。そうしなければまた無駄が出て、カラオケセットとか、そういうようなこともいっぱいあるのだし、ダムでも道路でも河川でも、やはり今までの地方整備局の在り方は県民目線ではないと、国民の目が届かない部分が多過ぎるということで、これに大胆に取り組んでいるわけだから、そういうときに114億円のビルを建てようというセンスがもう間違っているのですよ。だから、ビルをもし作られたら、今後、分権で麻生総理の決断で県にどんどん移しますからね。県に移した権限と組織が入る総合庁舎になることを望みますね。
(問)大臣、その関連で丹羽委員長はですね、あれは来年度着工なのですけど、延期すべきだと言っているんですが、政府としてはこの計画を凍結するというようなお考えはあるのでしょうか。
(答)それは、少なくとも私の権限の範囲ではないと思うから、私から責任持って言えませんが、意見としては、私は延期すべきだと思います。権限に基づいてではない、私の一閣僚としての感想から言えば、今、分権をやるというときに、非常に腹立たしいと言っているのですよ。
(問)来年度の着工はやめるべきだということでしょうか。
(答)私はそう思います。
(問)大臣、その仙台の第一合同庁舎というのは大変な老朽化が進んでいて、例えば東北地方整備局もばらばらでつぎはぎだらけな庁舎でして。
(答)それは聞いています。
(問)おまけに宮城県というのは今後30年以内に、99%の確率で宮城県沖地震が起こると言われているところなのですね。そこでの建て替えというのは一定の合理性があると思うのですが。
(答)そういう老朽化とか耐震というか、地震対策とか、そういう意味で建て替えるということについての合理性は私は認めますよ。ただ、ならば、何が中に入るか分からないというふうに、私は申し上げている。地方整備局中心になるのか、私はそこのところは分からないが、延期すべきかどうか分からないが、建ったものの中に入るのは、当初の予定とは全く違う、地方整備局から大きく権限移譲された県の組織が入る、あるいは通商産業局も県に移譲された分が入るというふうになったら、かっこいいなとは思いますよ。
(問)もう一度先日のですね、参議院総務委員会の大臣の発言の確認をしたいのですが、「現在、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の株については、法律があって、10年間で全部売り切るとなっているが、今後の見直しの中で株の売却について見直しがあってしかるべきだと考えている」と御発言されましたが、これはどういうことを意図しておっしゃっているのでしょうか。
(答)「見直しがあってしかるべき」という表現のままでいいのか分からないけれども、見直しというのは私一人でやるものでは全くありません。郵政民営化委員会が3月までに出すでしょう。それから党の議論があるでしょう。国会の議論があるではないですか。そういう中で、先ほどから申し上げたようにパーフェクトな形態はこれだ、というのがあるわけではないから、日本郵政に4つぶら下がっているような形も変化が起きるかもしれないではないですか。だから、見直しによっては10年間で売り切るということにも当然変化があってしかるべし、と申し上げているわけですね。もちろん法律上は10年間で売り切ることになっているわけです。ただ今のような株価のときに総理は「売るわけがないでしょう。」とおっしゃっているけれど、それを不磨の大典のようにそれを引きずって持っていくものではないと、状況や見直しによって変わってしかるべしと、こう思っております。
(問)ほか、ございますか。よろしいですか。
 どうもありがとうございました。

(以上)