鳩山内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年9月24日

(平成20年9月24日(水) 25:55~26:30  於:総務省会見室)

1.発言要旨

 これからしばらく皆さんとお付き合いをいただく、鳩山邦夫でございます。私も麻生政権に関しましては、総裁選挙の選対本部長を3年連続で務めるというような形で、いわば、身内でございますから、組閣に当たってものを言うような立場ではない。身内であるからこそ、総理が最もやりやすい、麻生カラーの出る内閣をお作りいただきたいと総裁選挙の最中から、そればかり申し上げていたところです。ですから「総務大臣を頼むよ。」と今日、電話があった時には、本当にびっくりいたしました。「いろいろなうわさが出ているけれど、これが本物だ。総務大臣を頼むよ。大変大きな役所であって、優秀な人材もそろっているところであるので、立派に仕事をこなしてほしい。自分も総務大臣の経験が非常に大きな役に立っている。」というような話でありました。それで、総務大臣に就任いたしたということでございまして、総理からは先ほども申し上げましたとおり、「やはり、去年の福田内閣誕生とともに無役になって、161か所の地方行脚、講演をして回って、やはり地方というものへ、地域というものに行ってみなくては分からないものだ。そこには大変元気なところもある。例えば、世界のトップレベルの技術を持って、世界にある分野で大変なシェアを持っているような中堅企業があるところもある。その同じ地域の中で、東と西とで具合が違う。あるいは、全く同じ場所である業種はすごく良いが、ある業種は悪い。総じて、景気が悪い。そして、地方は疲弊をしている部分がある。これを元気にしなければ、この国は元気にならないと確信をもった。」というのが、麻生総理大臣のこの10か月での経験から身に付けられた政治信条でありますから、したがって、「地域の元気回復が第一である。地方自治体が自ら、地域経営できるよう、地方分権改革に努めろ。」ということでありました。とりわけ、分権改革というのは、道半ばというか、これから本格的になって、また分権の一括法をいずれ作っていくわけでありましょうが、これは、前には機関委任事務の廃止ということをやっておりますが、今度は出先機関ということを考えますと、地方分権の有り様というのは、その先に道州制というものを見据えながらも、道州制になったら分権しようというのでは、分権が進まないから、分権を進めながら、道州制を見通していこうという考え方でありますので、これは、司馬遼太郎さんではないが、将来の国の形にかかわる問題でありますので、これは、大変重要な問題としてやっていく。地方再生、道州制、郵政民営化等も担当するように御指示があったところでございます。
 私は、幸いにも東京で20数年、福岡に行って3年、国会議員をやっておりますから、この東京と地方で中核市となった久留米市ではありますけれど、両方におりましたから、都会と地方が共生していくということが何より大事だと私は思います。東京は非常に便利で人も集まる、法人二税も集まる。しかし、地方でシャッター通りが増えていくような現状等、非常に厳しいものがある。麻生総理が全国を回って地方はくたびれているな、この地方を元気にする方法をみんなで考えようということ。これは切実な問題だ。例えば、東京に住んで東京を選挙区にしておりましたから、福岡に行って初めて分かったことはいっぱいあります。例えば、途切れた道路をつなぐことがいかに重要であるか。東京というのは渋滞はありますけれども、道だらけで、あまり考えたことはなかったし、東京というところは基本的なインフラ整備が一回は終わっているわけです。東京と地方を一律に論じるということはできない。財政的にも、地方交付税が不交付団体であるとしても、非常に恵まれている大都会というのはあるのだな。それに比べて三位一体というものがあって、完璧に理解しているかどうか分かりませんが、税源を移譲する、補助金は制度としてカットしていく、私は義務教育の国庫負担金については、反対した方ではありますけれども、それと同時に地方交付税の改革というものをやった。確かに、交付税特会の借入額が33兆6,000億円という話もあるので、地方交付税を見直そうということもわかる。地方も5.7%の定員削減を行うことになっている。昔はラスパイレス指数というものが話題になっていたわけですから、地方も行政の効率化やスリム化というものをやらなくてはならない。しかし、あの時に結果的に減った5兆円の地方交付税というものが、やはり、ボディーブローとして効いて地方の元気がないというところがあるかもしれない。ここのところは私も検証し、総理の指示をいただいて今後の施策に反映させていかなくてはならないと思っています。
 総理は、地域を元気にしろと、地方自治体が自ら地域経営できるような道を探せというわけですから、そこに全くお金がなくてよいという話ではないだろう。例えば、地方交付税が試算で出口ベースで平成21年度が6,000億円くらい減る計算になってしまう。しかし、地方交付税が三位一体改革で削減されて、さらに減るなどということであってはとても困るという、地方六団体の主張や要求というのも、切実な問題であると思います。私はもちろん、ほかに地デジや年金、定住自立圏構想、郵政民営化とかありますが、それはいずれ、追々お話をすることとして、私も勉強しなくてはならないことが多い。
 私は昔から自然との共生、環境革命ということを言い続けてきた。やはり、共生の思想なのです。小沢一郎さんは最近、共生と言いますが、私の方がはるかにずっと前から言っている元祖なわけです。これは、鳩山一郎の友愛という考え方にもつながってくるのですが、共生とは何だと考えた場合に、例えば、地方自治、地方行政、地方財政という問題も、とらえ方によっては地域、地域の共生、あるいは地方でも人口の少ないところと都市部の共生ということがうまくいかなければいけない。地方が元気にならなければ、絶対国が元気にならない。地方に元気がなくて、都会にだけ元気があるという状態は、いずれ都会と買いも元気がなくなるということにつながっていくのだろうと、私は思うわけです。日本人は縄文文化以来、共生の思想を非常に強く持っている。これは流域ということを考えれば一番よく分かる。川の上流に中山間地域、中流域に小都市、下流に大都会があるとする。安田喜憲さんという学者は、自治体というのは流域ごとに作ればよい。上流、中流、下流と一つの河川の流域ごとにすれば、日本人はもともと水利という超ハイテクを持っていて、麦作と違って稲作ですから、先に水を使った上流の人が水を汚せば、下流は稲ができない。だからきれいな水をきちんを流してやる。川というのは下流に行くほど、ある程度は汚れてしまう。しかし、あまり汚したら、下流の人がどうにもならないから、一生懸命水を汚さなくて、同じ水を循環させて有効利用できるように水利工事をやってきた。これは古のハイテクだったということをおっしゃっている。それが地方と都市との共生という話なのではないか。昔、水源税という話もあった。私は非常によく分かる考え方でした。今、それを強く主張するつもりはないですが、上流の人たちが水をきれいに保ってくれるから、水も環境も食料も地方があるから、あるいは中山間地域といわれるところ、あるいは小都市といわれるところがあるから、都会はその恩恵で豊かに暮らせる。そうだとすれば、そのバランスというものができるだけとれている方が、良いのではないかと思いまして、都会いじめをするという発想は全くありませんが、見事共生するためには、やはり地域が元気になる、地方が元気になる、文化が花開く、そういう政治をどこがやるかといえば、それは国を挙げてやらなくてはいけないことですが、総務大臣というのは、それに深くかかわる仕事でございますから、やりがいがあると思っております。

2.質疑応答

(問)地方を元気にすること、地方分権について大胆に進めていきたいとおっしゃっていますが、具体的に、早急にまず取りかかりたいと思っていらっしゃる施策やもしくは制度改正等々がありましたら教えていただきたいのですが。
(答)これは先ほども聞かれましたけど、それは麻生カラーというのがいずれ出てきて、こんなことやってみろというのが大胆に出てくることを、私は非常に楽しみに待っております。例えば、今回の緊急総合対策、これは当然補正予算、急に話が具体的になって申し訳ありませんが、いわゆる約656億円の暫定税率の失効期間による減収、これを地方税等減収補てん臨時交付金というものをきちんと作って、地方にお与えをするべきである。これは法律が必要なので、野党の理解も十分得て緊急にやらなければいけないというふうに思っております。あるいは、市町村合併をずっと進めてきて補助金の増額、40億円ほど前倒ししてやっていくということが補正予算に入っているのだと思いますし、もちろん消防や通信基盤の問題でも補正予算は絡んでおりまして、総額で言うと内閣府のものも含めまして1千億円くらいが、緊急に地方で手当てするものになってまいりますので、そうしたことは、きちんと急いでやらなければならないだろうと思います。定額減税を20年度中にやるということでしょうけれど、額や方法は決まってはいません。結局、例えがいいか分からないですけど、定額減税が所得の低い方、つまり税金を少ししか払っていない方にも恩恵があるようにということですと、住民税の方が課税最低限が低いから、所得税は払っていないけれども住民税は払っているというような方々にも恩恵がいくということを発想すると、定額減税が、所得税と住民税とどういう割合になるかという問題で、住民税の割合を増やした方が恩恵が幅広くなるという議論で進んでいったとすれば、それだけ地方の減収になりますから、その手当というものもきちんとしなければならないというふうに私は思っております。
(問)地方分権の関係で伺いたいのですが、地方分権改革推進委員会の第一次勧告に基づいた政府の方針で、国道と河川の地方への移譲について、国道は直轄国道の15%、河川については1つの都道府県内で収まる河川の4割を移譲しましょうということに現在のところなっているのですが、委員会側はこれをもう少し上積みしたいと考えているようですが、15%、4割というボリュームについて、これをもうちょっと増やした方がいいとか、これくらいで妥当だという現時点でのお考えはありますか。
(答)北海道は北海道内で完結する訳ですが、ひとつの都道府県内で完結する河川がどのくらいあるか、少しだけ他県に食い込んで上流があるとかいろいろあると思うのですが、そういうことで言えば、その数字が妥当であるかは、まだ就任したばかりでございますから、今後勉強して検討してからとしかお答えできません。
(問)与党の政権合意で、道州制の検討組織を作るという話があったかと思うのですが、担当大臣としてどのように道州制に当たっていくお考えですか。
(答)私は昔から相当強い道州制論者なのです。もう20年以上前からかもしれません。そういう意味で言えば、本当に夢のように語ってきた道州制が、随分具体的に語られるようになった。北海道特区という実験もあるけれども、かなり具体的に語られるようになって非常に嬉しく思うわけです。ですが、道州制にして国の権限を大幅に与えればいいではないかと昔はよく演説したのです。しかし、その考え方でいくと地方分権は進まないのです。その私の過去の演説というのは、多少訂正しなければいけない。地方分権をどんどん進めていく中で、その先に道州制を見つめていくということなのだろう。そして、本当に道州制になったらさらに分権をできます。法務大臣の時にフランスとドイツに行ったのですが、フランスは御承知のように中央集権の色彩の強い国ですが、ドイツでは、日本でいう不法滞在、今、半減計画をやっていますが、そういう人たちの収容所も地方でやっているのです。びっくりしたのですが、州によってやり方が違うわけです。その辺はどうなのか、裁判や退却強制関係などまで分権化していいかどうかは私は分からないけれど、道州になれば本当の分権というのは、更に一層の分権というのは絶対可能になると思っています。国の役割が極めて限定されてくるでしょうから、その先には道州制を見つめ続けていって、1年でも早くそういう方向にいけるように努力したいという気持ちは強く持っています。しかし、道州になったら分権するというのばかりやっていくと進まなくなってしまうから、進めながら道州制も見つめるという技が必要なのではないでしょうか。
(問)大臣、2点ほど伺いたいのですが。まず1点目なんですが、これから勉強されるということだと思うのですが、地デジのところはどのように考えてられるのかというのが1点目。
(答)どうというのは、地デジについて何をですか。
(問)地デジの対策について2,000億円というのを出されているのですが、そこら辺の今後の進め方についてどうか。
(答)地デジ、これだけの科学技術の発達があって、デジタルというものが、今はカメラもみなデジタルになっているわけで、その地上デジタル波というもので、双方向でテレビもやっていくということであれば、アナログをやめようということで、やってきているわけです。その方向は基本的に間違っていないと思っております。現在アナログしかない生活保護世帯にチューナーを配るとか、条件不利地域を受信できるようにするとかというので、3年間で2,000億円という話でございます。これは、人によっては2,000億円では全部はできないのではないかと、私におっしゃる専門家もいるから、なかなか金が絡んでくるとそう簡単ではないが、一応今のところは2011年7月、高度化したデジタル化を実現してアナログが終わるというように予定どおり考えており、そのためには全力を尽くしていかなければいけないし、先ほど申し上げたとおり、生活保護世帯へチューナーを配るなど、今、全くデジタルを受信できない地域に新しく設備を作るなど相当やらなくてはいけないことがいっぱいあるようですので、頑張っていきたいと思っています。
(問)もう1点、「麻生カラー」を出すようにということで、具体的指示が来るのを待たれていると先ほど言われたのですが、「鳩山カラー」はどのように出していかれるのでしょうか。
(答)これから出しますから御安心ください。まだ、私も少し自力を付けてからでないと。特にカラーを出すことがいいこととも思いませんが、一省庁の大臣をやる以上は自らのやるべきことというのはしっかりと打ち出していきたいと思っていますが、今日はまだ初日ですから、今しばらくお待ちください。
(問)郵政民営化からこの10月で1年を迎えるわけですが、これまで、政治家として民営化をどう見ていらっしゃったか、また、今回担当大臣になることでこの分野について、政治家として見てこられた経験を生かすとしたらどういう点があると考えていらっしゃいますか。
(答)大変大胆な改革を小泉元総理はなさったなと、つくづく思います。それは、郵政民営化をまだ小泉元総理が打ち出す前に、郵政問題を勉強した時に、もし郵政というものを民にしたら、例えば「ゆうパック」なんかがどうなるかという話が本に書いてあった。それは随分前、当時はそんな強い会社が民業を圧迫してどうにもならないというのがその本の結論であった。巨大な民間のものすごい資金力のある強い者が出てきて、民業がみんなやられてしまうというようなことが書いてあった。だけれども、実際には必ずしもそうはなっていないだろうとは思いますし、やはりユニバーサルサービスの問題というのはとても大事であり、やはり民営化したために光と影の影の部分があって、非常に不便になってしまったということがあるとすれば、その部分をどうやって解消するかということは考えていかなければならないので、郵政民営化委員会の今後の調査や意見というのをじっくり聞いていきたいと思っています。3年ごとの見直しということなので、今のところ郵政民営化を逆戻りさせるという考え方は私は全く持っていません。
(問)法務大臣時代に敢えてタブーに挑戦して議論を活性化させるというようなことを確か記者会見でおっしゃっていたと思うのですが、総務省でもそういう手法を考えていらっしゃいますか。
(答)そういう手法をやってみたいと思うけどまだ課題が見つかっていない。大き過ぎることだし、法務省の事柄というのは、いかにもタブーという部分があそこにありここにありというところがありましたから。しかし、この役所の場合は、例えば公務員の人数の問題から、給料の問題から、全部あるではないですか。それが、地方に対するそうした地方の行革に対する物言いというのもあるではないですか。しかもそれに地方交付税という仕組みもある。だから、タブーというのではないかもしれないが、単純に自分の頭で考えるのではあれば、三位一体といっても大変な改革だったと思うのです。現に私は、義務教育国庫負担制度、事実上、小学校と中学校を分けるとかいろいろな議論があったが、結局は2分の1が、3分の1になった。文部科学省的に言えばそういうやり方だったのだけれども、私は地方をかえって苦しめるのではないかということをうるさく言った。いや本来、義務教育の教職員は数が多いです。これを全部国家公務員にしてはどうかという考え方はある。フランスはそうである。これは私は必ずしも凝り固まっていませんが、民主党の西岡武夫先生はその意見なのです。例えば、義務教育の教職員を全て国家公務員にしますというのを私は提案しているわけではありませんが、それくらい三位一体というのはなかなかすごいことやってきたのだと思います。しかし、それでも税源移譲はわずか3兆円という話ではないですか。つまり、それによって、支出は地方が6、国が4。収入は国が6、地方が4。これがそもそもおかしいわけである。これがあの、3兆円によって少し違っただけではないですか。6:4、4:6問題というのが根本的に解決できるような道を考えなくてはならないということだと私は思います。それはそう簡単に解決できるはずではないわけですが、そういう道筋をつけるような議論が必要だろうなと思います。
(問)今の6:4、4:6の問題で、地方分権改革委員会でも話がありますが、税源配分を多分見直すという方向になるかと思いますけど、大臣の認識としては、どのくらいの割合で配分すべきかとお考えでしょうか。
(答)まだ、就任半日の総務大臣ですから、そこまで具体的には言えませんが、理念としてそういうものを持って努力すべき時期が来てるのだろうと思います。ただし、今は地方の活性化のためには、もっと手っとり早くできる幾つかのことがらがあるのだろうと思いますし、やはり地方の疲弊の1つは金目の問題があるわけで、暫定税率だけの問題ではなくて、地方全体が疲弊するのには、疲弊の原因の大本には地方交付税の改革の影がありはしないかということはさんざん言われているわけですから、その影を取り除くためにはどうするかということを真剣に考えないといけないと思います。
(問)解散総選挙含みの情勢なので選挙のことに関心をもたれる有権者が多いと思うのですが、補正予算はやはりしっかりやったほうが良いということで、10月26日ではなくて、その次の週以降になるという観測が多いが、11月2日なると選挙の中身ということで、選挙を抱える総務省としては、投票率を上げようと言っているのに2日というのはないのではないかという意見もあるのですが、政治家鳩山邦夫として選挙の日取りの見通しについて伺いたいのですが。
(答)これは大変重要な課題ですが、解散権というのは総理大臣の専権事項でありますから、これからいろいろな話し合いをする可能性はありますが、今ここで私がお答えするのは適当でないと思います。私はずっと、麻生総裁候補の時から申し上げているのは、麻生カラーというものが十分にいろいろな施策で出て、それが国民に浸透し、理解されることが選挙前に一番必要なことではないですかということを申し上げ、堂々とやってくださいと、堂々と麻生カラーをどんどん出して、「This is 麻生政治」を示し続けたらいいのではないですかと、ずっと申し上げている。
 そういう「This is 麻生政治」の中で、地方を元気にする素晴らしい政策というものが総理から御指示があれば、ありがたいなと思ってみています。
(問)よろしいですか。
(答)ありがとうございました。

(以上)