甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成21年5月8日

(平成21年5月8日(金) 9:07~9:34  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 私からは特にありませんが。どうぞ。

2.質疑応答

(問)過日まで欧州、イギリス、フランスと御訪問されたと思いますが、規制改革、公務員改革等々、フランス、イギリスなど御視察を終えられて、その感想、御所見等、現地でも会見されたと思うんですが、改めてお願いします。
(答)フランス国とイギリス国を訪問し、それぞれ閣僚、関係機関の長、あるいは国際機関の長と数度にわたる会談を行ってきました。
 日本の公務員制度改革が100年ぶりの改革ということで今国会の審議が始まろうといたしておりますし、規制改革案件につきましても、これから中長期的な発展ということを視野に入れると極めて重大な課題であります。それぞれヨーロッパにおける取組を視察をし、関係責任者と議論を交わしてきたわけであります。
 まず公務員制度改革でいいますと、昨日も民主党の議員から、自分たちとしてはイギリス型を行いたいというような発言もありましたけれども、実際に現場に行ってみますと、彼らが想定しているのと少し違うなと。つまり、改革があっちを少し、こっちを少しというつまみ食い型になって、全体の整合性がとれなくなるおそれがあると、野党のお話をまとめるとですね、という感覚を持ちました。
 例えば、イギリスで公務員局長と1時間以上話をしましたけれども、結局公募ということ、ポストが空いたら必ず内外の公募にかけると。それはいいんでありますけれども、じゃ大臣に人事権はあるのかという質問をしましたら、大臣には人事権は結論から言えばありませんと。それで何で政治主導なのと。つまり、大臣は追認するだけと。事実上の人事権は、日本でいえば事務の副長官と、それから各省事務次官にありますと。
 大臣は何ができるのかというと、この人を使いたいという人が例えばいたら、公募に応じたらどうだと勧めるだけということでありまして、それ以上は大臣の人事権は全く及ばないということでありました。
 それから、通常、人事の中で優秀な人材を省内で引き上げていくという手順があるのかといったら、これもありませんと。本人に昇進をするという意志がない限り、未来永劫そこにとどまっているだけですと。だから、上司がいい点を見出してこいつを引き上げるというような仕組みがないと。引き上げたいというときには、空いたポストに応募したらどうですかということを勧めるだけということがわかったわけであります。
 ですから、我々が抱いているイメージと現場での実際というのは相当乖離があるなということなんであります。
 それから、フランスにおきまして、かの有名な高級官僚養成システムという国立行政学院、大学を終わった人、そうでない人も含めて、2年間の修士課程みたいなところだけを扱う行政エリート養成所でありますけれども、ここもやはり改革にトライをしておりまして、それまでは、エナを卒業するときに成績順位が1番から全部つくわけであります。そうすると、1番から順番に受験生のほうが好きなところを選べると。財務省に行きたいとか、会計検査院に行きたいとかいういろんなエリートコースがあるんだそうですけど、そこをトップから順番に自分の意志で全部選ぶことができるという仕組みで、つまり、卒業時点で全部決まっちゃうということから改革をして、卒業時の成績ということではなくて、27カ月間の研修がありますけれども、その研修期間全体の評価シートというものがつくられると。それは成績でもあるし、つまり能力でもあるし、適性でもあるし、人柄でもあるという総合評価と。その評価が基準になると。それから、客観性評価委員会というその2本立て、評価シートと評価委員会評価と、この2本立てで卒業時の成績にかわるものになると。
 今度は自分が選ぶ、好きに選ぶということでなくて、こういう適性評価というものが官庁側のほうに渡されて、向こうの意志も入って、相互意志によって選ばれるというふうに変わってくるということでありましたから、彼らも試行錯誤の中で、社会が要請される方向に向かって自己革新を行っているということがわかったわけであります。
 ただ、フランス、イギリス、両方について言えることは、閣僚、日本でいえば新しくつくろうとしている政治主導で、降昇任が自由になると、そういうところはないんですね。少なくとも不祥事を起こしたり、そういうことは別として、普通に勤めているにもかかわらず、任免協議、その他で降任・降格をするということはできない仕組みのように思われました。
 でありますから、我々がトライしているほうがよりダイナミズムを追求したものであるし、より時代の変化への対応力があるものであるという自信を持ったわけであります。
 それから、規制改革と経済発展のことに関しては、それぞれが試行錯誤しながらトライをしているということがよくわかりまして、私も随分日本のやり方の質問を受けました。
 フランスの閣内No.2のボルロー大臣は旧知の間柄でありますが、彼は、低炭素社会に向けた産業発展ということにやはり注力をしておりまして、その際にはインセンティブとペナルティという方式をとっているということでありました。車への買い換え促進という制度はやはりお互い持っているわけでありますけれども、彼の方法は、より環境に資するものについてはインセンティブを与えると、環境に資さないものについてはペナルティを与えるということで、とってきたペナルティでインセンティブを生み出すというようなことをやっているという話でありました。
 私どものほうは、ペナルティというところまで強烈な仕組みではない、有利な点がないという仕組みで、インセンティブ方式でありますから、そこが若干、これはフランスの話でありますけれども、メリハリのつけ方が違うのかなと。
 ただ、彼らからは、ボルロー大臣からは、日本のエコポイント制を説明をしましたら、極めて興味があると、是非その資料を送ってほしいということでありました。特に、環境家電を購入したポイントをそれ以外で地域振興に使えるという説明をいたしましたら、大変興味があって、どこの範囲までがそれがエコポイントが使えるのかと、得たエコポイントをですね。2,000品目くらいですよという話をしましたら、それも含めて詳しい資料を是非欲しいということでありました。
 イギリスのマンデルソン大臣、彼も旧知の間柄でありまして、WTO交渉をずっと缶詰で一緒にやった仲間でありますから、随分久しぶりだなということで会いました。ボルロー大臣同様旧知の間柄でありますが、彼が規制改革に取り組んでいて、とにかく規制改革に対する反動が強く出るということについてかなり懸念を表明しておりました。
 金融についてはあなたの担当かと聞きましたら、直接自分の担当ではないと。ただし、金融規制のリバウンドというのがバイアスがかかった方向でなされるということについては懸念を持っているということでありました。その点について見解を求められたものでありますから、私は、市場が悪いという風潮は決してプラスではないと。市場の機能がちゃんと発揮できるような適切なルールのあり方、その設定が大事なんではないかと自分は思うという話をいたしました。
 それから、直接の所管ではないんでありますけれども、ロンドンに行きましたら、電気自動車の充電をするためのポストですね、充電ポスト、ジュースポイントと書いてありました。ジュースというのは普通の飲むジュースのジュースで、ジュースポイント。これは渇きを癒す場所という意味なんでしょうね。つまり電気自動車の充電施設ですけれども、それが市内数十カ所にありまして、電力会社が主体的にそれを運営していると。電気自動車をそこに充電のためにとめる場合には駐車料金が要らないとかですね。それをイギリス政府はロンドン市内外で積極的に取り組んでいるということで、ちょっとした驚きでありました。
 それから、私のライフワークであります原子力政策、かつて経済産業大臣のときに再処理施設を見学にいきました。今、青森でもうすぐ本格稼働が始まる施設は、フランスのアレバという会社の技術導入、技術提携によって設置をされているところでありまして、その本元であります。
 その、かつて再処理施設を見学しまして、今回は全く離れたところなんですけれども、MOX燃料製造工場を放射線管理区域まで全部入りまして見てまいりました。これから原子力ルネッサンスの中で、産業としての原子力と環境としての原子力という二面性から猛烈な勢いで推進を世界中でされていきます。
 現地の話をいろいろ聞きましたら、イギリスは先ほどの電気自動車の普及と相まって、これをクリーンエネルギーで供給するということで、原子力の立地というのを猛烈な勢いで始めるということをイギリスが宣言をしておりまして、英国以外も欧州各国で原子力スタートが始まりましたし、原子力を設置しないという、とめるというモラトリアムの延期も始まっております。つまり、新規設置ととめるのを延期するとという両方の動きが出ているわけでありますが、CO2削減という意味で、原子力プラス電気自動車の取組が加速しているということを肌身で感じたわけであります。
 日本とフランスは原子力先進国でありますから、そこが組んで平和利用、プルトニウム管理等々にしっかりと協力をしていくことが大事だということを改めて実感した次第であります。以上です。
(問)解散についてなんですが、大臣は先日の会見で、補正予算が出されて、必要最低限の要件は揃いつつあるという御発言だったと思いますが、昨日は派閥総会などもいろいろあったことで、解散については幾つか発言がありました。
 町村元官房長官は、8月じゃないかという気がすると、あるいは中途半端ならダブル選挙のほうがいいかもと、あるいは山崎拓さんは8月9日がぎりぎりのラインだと、以上のような発言が出ているんですが、改めてお願いいたします。
(答)私がここで決めたほうがいいですか。
 総理がおっしゃったように、いずれにしてももう4カ月以内ですから、誤差の範囲だということが本当のところだと思います。
 私が申し上げていますのは、総理のお考えは、解散を行うに必要な最低限の環境整備、それが整った時点から十分な環境整備が整うまでの期間があります。その必要最低限の環境整備が整ったときからは、もういつでも総理の大権が振るえる環境が整うということでありますが、それは補正予算が関連法案を含めて成立をするということを総理は常々おっしゃっているわけでありますし、内閣の一員としての希望という点で申せば、内閣支持率は30%はあったほうがいいということをかねてから申し上げているわけであります。この2つが揃いますと、必要な条件は、最低限の条件は揃うんじゃないかと思っております。
 あとは、どこまでそれに上乗せをしていくか、どこまで上乗せができた時点で総理が判断をされるかということだと思います。補正関連以外にやはりどうしてもやりたい、やらなければならないという法案に関していえば、海賊対処法がありますし、公務員改革法がありますし、幾つかのものがあるわけであります。それを成立をさせていく、あるいは補正を成立させただけではなくて、国民がその景気対策を実感してもらうということも、ないほうがいいか、あるほうがいいかといえば、それはあるほうがいいわけであります。ボーナス商戦を通じて経済対策を実感をしてもらうということは、実行できればそれはあったほうがいいんだと思います。
 あれだけマスコミの評判が悪かった定額給付金も、実際に実行されてみれば、やってよかったと、できれば毎年やってもらいたいというような御要望が国民の皆さんから出ているわけでありますし、政策というのは、それを国民が体感することによってその真価を理解すると、その評価が定着するということでありますから、自動車の買い換えはもう既にスタートいたしております。これをボーナス商戦を通じて、本来手が届かなかった車、あきらめようと思っていた車を実際に買うことができた、数十万円本来よりも安く買えると。値引きが加わったらさらにそれに上乗せがなされるわけでありますし、5月15日からは家電エコポイント、エコポイントの再利用による地域経済の活性化という波及効果もこれから出てくるわけであります。
 政策の効能というものをより多くの方が実感していただくということは、十分条件に向かって歩んでいくということだというふうに思っております。その必要条件から十分条件に向かうどの時点で総理が御意志を発せられるか、それは総理のみぞ知るというところであります。
(問)今日、閣議の後に大臣、総理と多少話されていたようなんですけれども、何をお話しされていたんでしょうか。
(答)いや、今日は特に総理とはどの閣僚も話していなかったと思いますが。
(問)世襲制をめぐって、昨日伊吹元財務大臣が、国会議員が引退するときに資金管理団体や政党支部が集めた資金を党に移すような措置を考えたらどうかということをおっしゃっているんですけれども、それで公平性を保ったほうがいいという考え方だと思うんですが、大臣の御認識として、お考えとしてはいかがですか。
(答)世襲を認める、認めない、これは余りかりかりする必要じゃないんですね。物すごく簡単な話で、まず一つ、出てはいけないということは憲法上はできない、職業選択の自由ということですから、争えば負けるということであります。
 もう一つは、世襲候補者が出ないと出られないという、出馬の時点から圧倒的アドバンテージを持ってしまうということに対してはフェアーではないということでありますから、フェアーにするようにどう環境を整えるかということだけの話なんでありまして、出るべきだ、出てはいけないというような議論ではないんですね。出ていいんです。ただ、条件を二世、三世でないとなれないというようにしてしまってはいけないということなんであります。
 イギリスにおいて、後継者は前任者の選挙区から出られないと。これも極めて短絡的な議論、表層的な議論で、実態がおわかりいただいてないと。
 私は以前、イギリスに行きましたときに、イギリスでは、個人の評価が得票にどのくらい関与しますかということを当時の院内幹事長と会談をしましたときに聞きました。そうしましたら、せいぜい10%ですと言いました。せいぜい10%と。日本はというから、まあ人に、何党であれば誰でもいいと思う人はそんなにいないんじゃないですかと。個人の力が、いや知名度が7割、8割というんですかと言ったら、もう信じられないということを言っていました。
 つまり、イギリスでは、保守党公認の何とかさん、労働党公認の何とかさんと、下の名前がわからなくても、上の何とか党公認ということでそのうちの9割が投じられるということでありました。ですから、選挙区をイギリス中変わろうと大差はないんです。個人の努力というのは10%。イギリスは、誰が出ても保守党が勝つというところ、誰が出ても労働党が勝つところというのはあるんです。どちらが与党になるかという、いつも拮抗するところの選挙区というのが幾つかありまして、そこへプラス10%の知名度をどう使うかというのがイギリスの選挙なんですね。
 だから、いつも思いますのは、見よう見まねの論議ばっかりあるんですね。実態をつぶさに調査していない。公務員制度改革もそうですし、選挙制度でもそうですし、あっちでこうやっているからこうといいますけれども、党の影響力が全然違うんですね。
 日本で小選挙区制を敷くときに、そのトライをしたんです。つまり、党が全部組織を持って、党が全部資金の面倒も見て、つまり、その組織の上に誰を乗っけるかというトライがありましたけれども、これはできません。日本人のメンタリティとして、党で選びますか、候補者個人の人間性とか能力で選びますかというと、ほとんどが個人の能力なんです。これがイギリスでやりますとほとんどが党なんです。その違いを、バックグラウンドを理解しないで同じ制度を語ってもこれはせんないことでありますから、ですから、選挙区を変える云々ということは、この選挙区でこの人を出せば当選できるのにみすみす議席を失うということになりかねません。
 ですから、選考過程で、前任者の後援会も党の組織も決められた人にちゃんと向かうし、あらゆる候補者が決められた人に協力するという体制をとることが大事なんですね。その際に、候補者を決めていくときに、全くの新人にも平等なチャンスを、その能力、識見、人格、人柄、洞察力等々を客観的に評価して同列にしてあげるということが大事なんでありまして、そういう本質論で語ってもらいたいと思います。理にかなっているでしょう。経験に基づいていますから。

(以上)