甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年9月26日

(平成20年9月26日(金) 10:25~10:43  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 私からは特にありません。

2.質疑応答

(問)昨日、小泉元総理が引退を表明されましたけれども、今後の構造改革への影響、構造改革の痛みに目を向けるべきだという声も高まっていますけれども、この辺どのように大臣は見ておられますでしょうか。
(答)まず、小泉元総理が政界を引退をされるという報道、月並みな言葉で驚いたということですけれども、感慨深いものがあります。ひとつの時代が終わって、新しい時代に入っていくのかなということを感じました。
 それから、構造改革とその痛みと言われるんですけども、誤解されるメッセージを与えてはいけないんですけれども、小泉総理がおっしゃった言葉で私が非常に印象的に残っておりますのは、時代の変化への対応を誤ったときにその国は滅びていくんだと、これは歴史が示している事実だと思うんですよ。構造改革というのは何のためにやるかというと、別に痛みを求めるためにやるわけではなくて、時代が変わっていくのに、その時代の変化を先取りして、体制を整えていくということなんですね。時代の変化に対応していく不断の努力というのが、構造改革なんです。
 だから、これをやめるとか、緩めるとかということは、日本が世界から取り残されてしまっていって、全部がだめになっちゃうということなんです。そこを間違えちゃいけないんですね。
 ただし、時代の変化を先取りして日本をその時代にたくましく生きていけるように変えていくということは、当然、従来の世界の中で安住している人にとっては居心地が悪くなるんですね。しかし、それをやらないと、やがて安住している人もだめになるということなんですが、ただしそれを変えていく場合には、きちんとシナリオを書いて、プロセスを描いて、そして処方箋を書き、痛みに対する対応もしていくという、全体的なデザインが必要なんですね。それを常に政府、政権というのは示していく必要があるんだと思います。
(問)政権が発足して各社の内閣支持率の世論調査が大体出揃ったんですけれども、支持が50%前後ということで、福田内閣、安倍内閣発足時に比べてやや下回っているということなんですけれども、国民的には非常に麻生総理は人気が高いと思うんですけれども、その割には若干伸び悩んでいるという印象があるんですが、閣僚の一人として、支持率についてどのような受けとめでしょうか。
(答)私ももっと頑張らなくちゃいけないですかね。
 麻生総理の前向きな性格というか、日本はまだ捨てたもんじゃないぞと、自信を取り戻そうと。みんなが一丸となって頑張れば、閉塞状況はブレークスルーできるんだと。その先頭に自分は立ちますよということで、日本だけじゃなくて世界に勇気を与えるリーダーになってもらいたい。そのメッセージをしっかり出して、具体的にどういうふうに日本の閉塞状況をブレークスルーしていく、世界の自信喪失をエンカレッジして、先頭に立っていくということを、わかりやすいメッセージを示すべきだと思うんです。
 私自身は、日本にとって何が大事かというと、パラダイムシフトが起きているということをしっかり認識をして、それを前提に基本設計をし直すということを示すことが大事だと思うんです。
 戦後の日本というのは、すべてが拡大をしていくということを前提に設計されています。人口は増えていく、労働力は増えていく、資本蓄積は増えていく、全部拡大で設計されているんです。だから、例えばまちづくり一つとってみても、中心街から外へ拡散していくという設計図でインフラも整備されているんです。これが人口減少に入っていくと、全くパラダイムシフト、日本を取り巻く基礎要件が転換していくんですね。
 ですから、私自身は十何年前かにまちづくり3法というのをつくった当事者ですが、数年前にこの見直しもやりました。そのときに考えたのは、日本を取り巻く基礎要件が変わっているのに、相変わらず従来の設計図でなされているという点に問題があると。外に広がっていく設計図ではなくて、人口減少下でインフラを無駄に外に整備していくのではなくて、効率的に使っていく、コンパクトシティという発想でまちづくりの設計を私はし直したことがあるんですけれども、そういう日本を取り巻く状況の基礎要件が転換しているという中で、どう設計をするかということなんです。
 例えば、国内消費が落ちています。GDPを支える6割は国内消費でありますけれども、これから買う人が減っていくんです。100年後には人口が7,000万になると。1億3,000万から7,000万になる、半分になるんですね。ということは、国内消費はそのままの設計図だったらどんどん減るんです、買う人が減りますから。それに対して、同じ施策ではだめなんです。
 そのときに何をするかというと、国内消費を深化させる、深くさせる、これはイノベーションの力です。新しい需要を起こすということですよね。経済産業大臣みたいな話になってきましたけれども。 要するに、深くしていく。例えば、皆さんが持っている携帯やパソコンも、それがなければそういう需要は起きてこないんです。それが起きたために需要が深くなってくるという、面積の横は狭くなってくるわけですけれども、縦を広くしていくというのがイノベーションの力です。
 それから、消費者が減るということは、消費者を足していくということが必要です。ということは、日本と同じ条件で商売ができる、経済対象領域を足していけばいいわけです。これがEPAの発想です。しかも、それは二国間のEPAではなくて、エリア、一つの大きなこれから伸びてくマーケットを日本と同じ対象、同じ条件にして日本に加えていくということですね。経済領土というと、ちょっとひとり歩きして語弊がありますけれども、その対象領域を広くしていくと。これが私が心血を注いで取り組んだ日・ASEAN・EPA交渉で、まさにパラダイムシフトが起きているということを頭にたたき込んで、何をするかということが大事なんですね。消費力を増やしていくと。
 それから、これからは日本と海外の位置づけをどうするかということが大事なんです。つまり、日本も海外と同じ生産拠点としていくと、コストが安い方との競争になりますから、日本の人件費を下げなきゃならない。日本は人件費を上げながら競争に勝つという設計図を引かなきゃならないわけであります。その際に日本の位置づけと、海外市場の日本企業の位置づけをどうするかということも設計しなきゃならない。つまり、日本は付加価値創造のヘッドクォーターにしていかないと、高い賃金でペイしていかないわけですね。そこで生まれた新しい知財というか、ノウハウというか、新しい技術やサービスを海外市場に投入していく。その際の海外市場を生産拠点として、その利益を日本の生活の向上に投入するという発想、つまりGDPからGNIという発想の転換をしていかなきゃいけない。これはすべてパラダイムシフトが起きている中での基本設計なんですね。
 そういう全体図を描いて、それから各項目ごとに政策論を展開していくと。その絵図を麻生総理が国民にしっかりと示すということだと思います。まずグランドデザイン、そのグランドデザインはパラダイムシフトが日本に起きている、あるいは世界にも起きている。そういう中でどう個々の施策を進めていくということを示すということが、やはり国民にもう一度勇気と希望を与えることになっていくんだと思っております。
(問)今おっしゃったようなことは、麻生総理にも提案というか、提言という格好にして、そういうグランドデザインを政府・内閣としてつくっていくというようなことを目指したいというふうに大臣はお考えなんでしょうか。
(答)麻生総理が、総裁の演説の中で、GDPからGNIへという言葉を使われたと思います。私はその説明をしました。
(問)先ほどまちづくり3法の話がありましたけれども、中心市街地活性化とか、そういった観点で、今規制改革の担当大臣でおられるので、流通業の活性化というと変な話ですけれども、コンパクトシティとかそういった観点と規制改革について、現時点でこれまでを振り返ってと、あと今後とをどのように感じていらっしゃるか。
(答)規制改革を進めていく際に、私が小泉総理に予算委員会で代表質問もしましたけれども、その際に申し上げたのは、規制があるために新しい事業やサービスが出ていかないというところは大胆にやるべきだと。規制緩和をして、単なる過当競争で生活水準が落ちている。つまり、パイが大きくなるという要素じゃなくて、パイを分け合う人が増えていってしまう規制緩和については、その影響を慎重に考えるべきだということを私が数年前に指摘をいたしました。
 規制改革というのは、規制緩和と、必要ならば規制強化も含めて、つまり改革をしていくということですから、100%規制緩和というのとは違うんですね。規制を見直して、安全の部分は強化をする。その安全も、よりコストパフォーマンスの高い安全のとり方をどうするかということをトータルに考えるから、規制改革であって、規制緩和担当大臣ではないわけなんですね。
 まちづくりの話が出ましたけれども、まちづくりの場合に、従来的発想で、そこにあるお店の一つ一つが、そこの範囲に限定されてどう売り上げを伸ばしていくという発想にとらわれている限り、伸びていかないんですね。バーチャルで、例えばインターネットでそういう個店をつないでいって、離れているところとつないでいって、情報を共有するということは、規制緩和にかかわってくると思うんですけれども、業に新しいツール、戦っていくツールを与えることになるんです。
 私は、フランチャイズに対してIT化を導入させた当事者なんです。これを導入していくという仕組みをつくって予算をつけた当事者なんですけれども、コンビニチェーンのすごさというのは情報力のすごさなんですね。例えば、同じ品揃えをするのでも、天気予報あるいは地域のイベントと連動させる。そうすると、出ていく品物が違うんですね。そういう情報を先取りして、今日の天気と今日の周辺のイベントで品揃えをどう変えるとか、あるいはどれを前に出して、どれを奥に展示するかとか、そういう情報戦略と販売戦略が絡まっているんです。そこで、ただ漫然と毎日同じものを同じ品揃えが並んでいる店と、そういう情報を先取りして販売する店との販売量の差が出てくるんですね。そういう意味で、商店街の活性化も規制改革と業の繁栄というのは絡んでくると思うんです。
 従来の発想だけで規制を緩和して、大型店がどんどん出て、それで取られちゃってお終いですと。そうすると、出ないようにしましょうというだけの発想しか出てこない。それじゃだめなんですね。従来の発想じゃない発想を導入して、三次元的に商売を伸ばしていく、業を伸ばしていくという発想を導入することが大事で、従来型でやっていたら、じゃあ大型店に対しては、こっちは売り上げが増えたけれども、日本全体では減ったとか、世界全体では沈没して、気がついたら日本全体が海の底ということになってしまうと。そこをしっかり考えなきゃいけないんじゃないでしょうか。
(問)昨日、中山大臣が、今朝の新聞で報道されていますけれども、種々の問題と言われる発言をされていますが、大臣はどのように受けとめていらっしゃいますか。
(答)私ね、彼が何を発言したか聞いてなかったんですよ。いろいろ個人的な思いの丈をおっしゃったんですか。
(問)そうでしょうね。
(答)閣僚の立場と、一衆議院議員とは違うんですね。これは私もおもしろいことを言おうとする、すぐ脱線する方ですから、気をつけなきゃいけないんですけれども、そこは閣僚であるということと、一衆議院議員であるということは、基本的に違うということをまず頭に放り込んで発言しなきゃならんと思います。
 私も気をつけますから。
(問)昨日、茂木大臣から引き継ぎを受けられたと思うんですけれども、差し支えない範囲でどのようなポイントで引き継ぎをされたんでしょうか。
(答)短いだけに、政策の中身についてはあんまりなかったんですね。彼が引いた線についてしっかり後退しないようにやっていくということが、一言で言えば中身です。それ以外に、実は私は彼の能力を買っているものでありますから、ごくごく間接的に引き続き彼が残った方がいいんじゃないかなというメッセージは出していたつもりなんですけれども、出していた当事者が本人と代わったというので、変な話だなという話をちょっとしました。

(以上)