野田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成21年6月12日

(平成21年6月12日(金) 9:35~9:50  於:第4合同庁舎6階605号室)

1.発言要旨

 皆さん、おはようございます。
 本日の閣議については、特に御報告することはございません。
 私から1点ございます。
 お手元の資料のとおり、本日から1カ月間、内閣府のホームページで、将来の我が国において科学技術の発展で実現してほしいことや実現を期待していることについて、国民の皆様から広く意見を募集させていただきます。これは、先般取りまとめられた「経済危機対策」に盛り込まれている「世界最先端研究支援強化プログラム(仮称)」の円滑な推進を図る上で貴重な御意見として参考にさせていただきたく募集するものです。皆様の御理解、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 詳細については、科学技術政策・イノベーション担当までお問い合わせください。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今発言のあった科学技術の意見募集の件ですが、これは2,700億円の例の基金の配分先を決めるに当たって、国民から意見を募って、その中から選ぶという理解でよろしいですか。
(答)いえ、そういうことではありません。2,700億円という巨額のお金を使う施策でありますし、今回は従来の研究費と違って、中心研究者を選定した上で、その人にダイレクトに多年度、5年間分までの研究費を差し上げるという、これまでにない画期的な内容になっています。これは、一つには経済危機対策の中に表れた麻生総理の強い思い入れ、ホップ・ステップ・ジャンプで3年後にはこの国は経済危機から立ち直るんだと、そのための底力の一つは、これまでもそうでしたし、現在もそうなのですが、やはり科学技術の力だろうと、それが出発点になっています。現在、これまでのスキームで研究費が十分に行き届かなかったり、使いにくいと指摘する研究者が多数いらっしゃるということも、総理自身が研究者の方々とお目にかかってその窮状を聞かれておりまして、そうした隘路の部分でブレークスルーをするために、今回、全く前代未聞の取組を実行するわけです。実行に当たり、報道の皆さんも含めて多くの方たちから、プロセスの透明性、選定基準の透明性等々様々な御意見が出されると思いますが、旧来のやり方では、大体1年間で5万人ぐらいの研究者に研究費補助金が回っている中、今回のスキームでは、たった30人程度に限って選ぶことになるわけです。逆にそれが透明性にもつながると私は思いますが、その前提としては2,700億円ものお金を税金として出してくださっている国民の意思、何を望んでいるか、将来何を実現してほしいとお考えか、科学技術を使うことによって自分の人生をどういう面で豊かにしたいかといったニーズを把握することも、透明性を担保する一つの手だてだと考えて、これまでは恐らく研究費を出すときに、そういう視点が抜け落ちていたと思いますので、今回、やはり国民の御意見を伺うということを一つの柱として据えていきたいと考えた次第です。また、それ以外に、当然、専門家の人たち、言わば「目利き」による専門的な判断をしていただくのはもちろんのことですが、やはりこれまで国民不在の科学技術政策と、ややもすると指摘されてきたのに答えるためにも、今回、思い切って、国民の意見も反映させていただきたいなと思っています。ただ、繰り返しになりますが、国民の意見がすべてというわけではありません。
(問)国民の意見を参考にした上で有識者の方々にも意見を聞くということですか。
(答)いわゆる目利き、専門家の人たちの専門性ある判断も必要ですし、様々な複合的な取組が求められています。透明性と言っても皆が納得する定義はありませんので、何をもって透明だと言えるか難しいのは確かです。人によっては、自分が選ばれなかったら、透明性が担保されていないと言う人もいるかもしれませんが、最低限、多くのプレイヤー、関係者がこの基金にコミットしたのだと、かかわってきたのだということが大事だと思いますので、国民にも積極的に参加していただくことで透明性という要請に応え、取り組んでいきたいと思っています。
(問)今の説明を聞いていると5年後を目途に実現するような科学技術のあり方を求めている印象を受けました。ただ、意見募集をすると、もっと先の、将来の夢のようなものが集まるような気もしますが、その辺りのズレについては大臣自身どう受け止めていますか。
(答)経済危機対策の枠組みということで、やはり3年後、5年後の日本がしっかりと立ち直っていくための一つの武器として「科学技術」が役割を果たしてほしいということはもちろんですが、それに加えて、日本の価値というものを考えたとき、必ずしも定めた期間で出来上がったものに対してだけではなくて、将来の夢やロマンも当然価値基準の中に入ってくるわけです。今の質問の背景として、基礎研究は抜けてしまうのではないかという懸念をお持ちなのかなと思いますが、そもそも基礎研究があって初めて応用につながっていくわけですから、経済危機を克服するという本来の趣旨だけにこだわらずに、国民が夢見ていること、望んでいること、理想にしていることは何か、広く意見を募り、それを加味した上で選定していくべきなのだろうと思います。特に今回のスキームでは、世界の中で頑張っている日本のトップリーダーの人たちがしっかりと我が国の科学技術全体を牽引できるような、そしてその姿を見ることで国民が科学技術に対して今まで以上のサポート、支援をしたいという思いが涌くような、そういう基金の使い方にするということに一番こだわっていきたいと私自身思っています。
(問)関連で、国民の意見を選考基準に反映するということでよろしいのでしょうか。
(答)もちろん、国民の税金があっての基金の造成ですから、やはり国民が科学技術に望んでいることが何かというのは、選ぶ際にはきちんと参考にして、総理を始めとして私自身も、乖離がないように気をつけなければならないと思っています。
(問)公表資料の別紙に人工衛星やロボットのイラストが書いてありますが、この分野で採択するという方向を示しているのでしょうか。
(答)これは、著作権がかかっていないイラストを選んだそうでございまして、いずれにしても、科学技術っていろいろありますよねという例示にすぎませんので、あまり深刻に受け止めないでください。
(問)宇宙関係でお伺いします。来週、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」が完成する予定になっています。完成しますと、今後はそれを利用した上で成果をどう出すかが問われることになると思います。利用に当たってのビジョンについては宇宙基本計画でもいろいろ書かれていましたが、改めて「きぼう」をどう利用していくかビジョンを教えてください。
(答)宇宙基本計画に沿っていろいろ行われていくわけですが、特にこれからの宇宙開発は、研究そのものが目的というよりも、国民目線で、地上にいる国民の生活にどれだけ寄与できるかということも大きな比重を占めるものになってくると思います。とりわけ、宇宙で無重力の中にいると体内のカルシウムが急速に減るなどいわゆる老化の現象がおびただしいと言われておりますので、日本が超高齢社会、世界でもトップを行くような超高齢社会に入っている中で、人々が心配している骨粗鬆症や認知症といった症例、老化に伴う様々な現象について、宇宙空間にある「きぼう」の中というのは非常に研究しやすい環境にあるとするならば、そういうことにぜひ具体的に使っていただいて、宇宙と地上の普通の暮らしがつながるような研究開発に取り組んでもらいたいなと思っています。
(問)事故米関連で、名古屋のメーカー「浅井」の社長らが今日逮捕されました。発覚してからだいぶ時間が経っていますが、改めてこの事故米事件について振り返っていただいて、今後の消費者庁との関連で何か思いがあればお聞かせください。
(答)「浅井」の社長が逮捕されたということはもう既に連絡がありまして、これから当局できっちり捜査をしていただきたいなと思っています。振り返ってみて、事故米穀の不正規流通問題は、消費者庁ができる前に発生し、消費者庁が必要だと言われる所以の一つになっていたわけですね。つまり、農林水産省だけで管理していた結果、隠蔽とまでは言わないものの、問題意識の欠如、消費者不在の流通、そういうことが明らかになったのですが、今後、消費者庁ができたら、そんなことはあってはならないと思います。現在、消費者庁を先取りした「消費者安全情報総括官会議」の仕組みが設けられ、それぞれの役所が集まって意見交換したり、集まらなくても情報共有ができるようになったことで、とてもスピーディーに対応できるようになっています。だからこそ、現在ではマスコミの皆さんに叱咤されずに済んでいるわけですが、私が今一番懸念しているのは、せっかく消費者庁ができても、各府省庁内の情報の行き来の透明性にしっかり取り組んでいただかないと、そこで何か止まってしまったら駄目だということです。したがいまして、消費者庁からも総合調整の立場から各府省庁にしっかりと働きかけをしていかなければいけないと思っています。
(問)科学技術の意見募集の件に戻りますが、これは具体的に例えば認知症の研究分野にぜひお金を出してほしいといった推薦のような形でもよいのでしょうか。
(答)何でもかまいません。私が就任してから感じていたことは、日本はこれだけの科学技術のポテンシャルを持っている割には国民の熱狂的な支援が他の国に比べて低いなということでした。私は、担当大臣として予算を獲得する努力をするときに、どうしても世間では福祉、介護や医療といった分野に予算を充ててほしいという話になるのですが、実際のところ、そういう分野でサービスなりを安定供給していくためには科学技術という基盤が絶対に必要なのではないかと思っています。そこが先細りになってしまうと、大変なことになるのではないかという懸念がありましたので、今回はこういう基金を作るに当たって、優秀な研究者、本当に世界トップクラスの研究者が伸び伸びと研究していただける環境をまずは作って、いい成果を上げていただきたいと期待するとともに、そういう研究者の人たち以外の普段科学技術に馴染んでいないその他大勢の人たちが、「ああ、こういうことができるんだ」と思いを馳せていただく中で、研究者の方々との距離感を縮めることができたらいいなと、そういう思いでこの基金を作らせていただきました。ですから、意見は、何でもいいんです。
(問)研究者自身がこの分野にぜひお金を出してほしいというように、言わば自己推薦という形で意見を出してきてもいいのですか。
(答)基本的にこの意見募集は、投資をする側である国民から何を望むかを集めてというのが趣旨ですので、対象は一般の国民からということです。たとえ、自己推薦のような意見を書いても大体ばれますからね、書き振りで。本当に素朴な国民の声を科学技術政策に携わる我々が丁寧に拾い上げることが大事なのではないか、そういう気持ちですね。
(問)日本郵政の問題で西川社長続投の方向で調整という報道が出ていますが、今日の閣議でそのことについての閣僚の発言や総理からの説明はありましたか。
(答)全くありません。今日は専ら、後ほど官房長官から会見で御紹介があると思いますが、地球温暖化防止のための温室効果ガス排出削減の中期目標が決定されたことについて、関係閣僚が意見をおっしゃっていたということで、それだけでした。
(問)温室効果ガスの削減目標に関して、大臣はどう受け止めていますか。
(答)野心的ですよね。思うに、日本はすごくすばらしい国で、規制を強めることによってそれに打ち克ちスピンオフする新産業を幾らでも作ってこれた国なんですね。ですから、やはりチャレンジャーとして高い目標設定を置くことで、その目標に応えるような新産業、新技術を産み出そうと取り組む人たちの応援をしっかりとしていければよいのではないかと思っています。

(以上)