与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年11月11日

(平成20年11月11日(火) 9:23~9:44  於:記者会見室)

1.発言要旨

 閣議は、案件どおりでございまして、特段御報告することはございません。

2.質疑応答

(問)新しい経済対策の定額給付金の件ですけれども、昨日、総理は高額所得者に自発的な辞退を求めるけれども、実質的には所得制限はかからないと思われるような方法をされるということを表明されましたけれども、これは大臣のお考えとは違うと思うんですが、今後どのような形で取りまとめをされるお考えでしょうか。
(答)昨日、与党と御相談をして、もう案自体は決まっております。
(問)それは総理の考えに沿ったものということでしょうか。
(答)もちろん総理の考え方を基本として作っています。
(問)大臣のお考えでは、やはりそうは言っても所得制限の線引きというのは、目安としてはあった方がいい、というお考えなのでしょうか。
(答)これは、「名は体を表す」という言葉がありますけれども、あくまでも社会政策的に所得の少ない方々に対しての生活支援ということでありまして、生活支援を必要としない方に給付するということは、もともと考えていない制度であったわけです。
 ただ、所得制限をすると、市町村の窓口が混乱すると。そういうことは市、町村会全てからの話で、実際窓口に何万もの人が押しかけると、仮に所得制限をすると、その所得をチェックするのに非常に多くの時間を費やすということで、迅速に給付するという面からは、所得制限があると大変大きな障害になるということが、市長会を初め多くの地方自治体からそういう声が出てまいりましたので、それには対応しなければならないと。
 かてて加えまして、所得制限がなくても、これを三千数百万世帯に間違いなく配るということは、それぞれの自治体にとってはなかなか重い仕事量になる可能性があって、千九百前後の自治体がうまく対応できるかどうかということは、これからもう一度相談をしなければいけないことだと思っております。
(問)大臣は総理のお考えに納得されているのでしょうか。
(答)もちろん理解して、その線に沿って案を作っているわけです。
(問)今回、定額給付金については、朝日新聞の世論調査で、63%の方が「不必要な政策である」というように回答しているんですけれども、2兆円の費用をかけて、今回総合経済対策の目玉として打ち出した政策が国民の理解を得られていない、ということについては、どのようにお感じになっていますでしょうか。
(答)これはもともと定額減税という形で打ち出されて、税金を納めておられる方に減税をするということから始まったわけですけれども、これについては、課税最低限以下の方には何も政策がないと。それから、課税最低限を少し超えたところで起きる現象とうのは、納めた税金が少ないために、減税額が受け取れないという問題があったので、一律の給付金にしようということにしたわけです。
 2兆円のお金をまとめて使えば、相当大きな仕事ができるということは国民もよく知っておられるので、まとめて大きな仕事をした方がいいんじゃないかという意見が存在することは、私は認めますけれども、給付金自体は、私のところに来たメール全ては、「自分はある一定以上の所得があるけれども、ぜひ受け取りたい」「自分は長い間、納税をしてきました」と、そういう方が多いので、全体としては受け取りという行為が実際行われれば、また評価は違ってくるだろうと思います。
(問)同じく朝日新聞の世論調査で、一方、消費税については、総理が消費税引上げを明言されたことについて、「評価する」が45%、「評価しない」が44%と、二分するような形になったんですが。
(答)いい戦いしているんじゃないですか。日本シリーズ並みだよね。
(問)税の抜本改革に絡んで改めて伺うんですけれども、消費税の引き上げについて、プログラムにどこまで言及すべきか、書き込むべきかの考え方はいかがでしょうか。
(答)いっぱい色々なことを書きたいんですけれども、政治的にそれが消化できるかどうかという問題もあって、原案はなるべくフルメニューで書きたいなとは思っていますけれども、メタボにならないように党の方で色々やられるでしょうから。それでも総理があそこまではっきり消費税について言われているという状況を踏まえて、その状況と相矛盾しない、それを積極的に追認する中期プログラムでなければならないと思っています。
(問)時期、幅、あるいは目的税化、そのあたりについて言及すべきとお考えですか。
(答)時期は、「少なくとも3年は上げない」というのか、「3年後に上げる」のか、色々な表現ぶりはあるでしょう。段階的に実施するというわけですから、何年がかりで、どのぐらいの水準でやっていくのかという問題もあるでしょう。また、欧州のときに付加価値税の例では、複数税率の問題もありますし、多くのことは党税調において検討されると思いますが、我々としては、たたき台をつくりたいと思っております。
(問)昨日、中国が大型の景気浮揚策を打ち出して、株式市場とかが上がったわけですけれども、欧米経済の成長が減速する中で、今中国が世界経済を牽引するんだという「機関車論」が出てきているんですけれども、それについてどう思われますか。
(答)世界的にケインズ的な手法による景気回復というのを各国とも採用しなくなっているというのが現状ですけれども、最近はfiscal spending、財政出動ということが多くの国から言われるようになりました。
 中国の57兆円の大型経済プログラムは、日本の27兆円に比べまして30兆円も大きいので、なかなかすごいなと思いましたけれども、向こうは人口が13 億なので、日本に換算すると270兆円やらなければいけないというように頭の遊びで考えれば、中国としては精一杯の経済対策をやられているんじゃないかと思っています。これは、日本に対しても、欧米に対しても、近隣東南アジア諸国に対しても、極めて力強いメッセージになるというふうに考えておりまして、基本的には大変歓迎すべき迅速な政策決定だと思っております。
 ただ、一つ日本と違うのは、増値税を減税するというところです。
(問)15日のワシントンで開かれます金融サミットに関連してお伺いしたいんですけれども、依然として世界の金融システムというのはまだ脆弱な状況が続いていますし、総理は先月の会見の中でも監督強化ですとか、日本としての役割についてメッセージを出したいというような趣旨の発言をなさっていますけれども、大臣御自身は、金融サミットについてどういうことを期待されますか。併せて、日本の役割ということもお伺いできればと思いますが。
(答)まず、金融のことを心配して世界20カ国の首脳が集まるということ自体が、世界が連帯して世界の金融危機に立ち向かうという非常に重要なメッセージを世界に与える。多分これが最大のメッセージだと私は思っています。具体的には、IMFの改革、あるいは世銀の改革、あるいは他の国際金融機関の改革の方向も多分議論されるでしょうし、それぞれのIMF、世銀等の具体的な役割というのもそこで議論されるでしょう。
 それから、金融機関の多くは国境を越えて活動していますから、国際的な枠組みの中で規制をどう考えていくのか。それから今、規制が緩い、あるいは規制から外れている種々の取引、証券化商品の取引、あるいは場合によっては簿外取引の問題とか、そういうことに対する国際的な規制の強化ということも話し合われるでしょう。また、一応権威があるとされた格付機関があるわけですけれども、格付機関の業務範囲、あるいは国際的な規制、あるいは格付機関自体の透明性の確保、そういう技術的な問題も随分議論されるんだろうと思います。
 日本の経験を活かしていただくという話であるんですけれども、欧米先進諸国の日本のバブルの発生と崩壊の過程の研究は、もう既に非常に進んでいまして、おそらくそれは実務的には役に立つんだろうと思いますが、こちらは何か御参考になることがあれば、自分たちの経験を世界各国には進んで提供しなければならないと思っております。
 ただ、演説しているだけでは、相済まないことでして、やはり日本の近隣諸国、あるいは新興経済国が必要としている金融分野での事柄で、日本がお手伝いできることはお手伝いするという姿勢を持って、この会議に臨む必要はあると思っております。
(問)給付金の話に戻りますけれども、もし自主的に辞退しましょうというような話になったときに、大臣御自身はお受け取りになりますでしょうか、辞退されますでしょうか。
(答)女房は私の扶養家族ではないんですけれども、多分住民台帳では私は世帯主になっているので、多分時間がなくて区役所に行けないんじゃないかなと思っています。
(問)多くの家庭では、奥さんが勝手に受け取ってしまうんじゃないかという……
(答)それはできないんですね。世帯主が行かないといけないんです。
(問)先程話された、需要を創出するような財政政策は行われない傾向にあったんだけれども、今回の未曾有の危機に関して、中国もそうですし、他の国でも公共投資は少ないかもしれませんけれども、減税とかの手法をとられている国が結構ありますね。しかし、今回の日本の経済対策では、大臣の仰ったように需要を創出するようなものはしなかったということですけれども、これは理論的にそういったものは意味がないのか、それとも場合によってはあり得べしだけれども、日本の借金状況から考えるとできないのか、どういうお考えでしょうか。
(答)一次補正のときも伊吹大臣から、総需要対策ではないと、であってはいけないということを釘を刺されていましたので、そういうふうにいたしました。一次補正ですら16%の公共事業が入っていましたけれども、今回の生活対策というのは、4%ぐらいしか公共事業が入っていない。明らかにいわゆる公共事業を使ったような財政出動をやっていないというのが今回の経済対策です。
 しかし、世界的な傾向は、fiscal spendingという要するに財政をどんどん出動させていって有効需要を作り出す、そういう政策をやろうという方が各国で増えてきたなということを感じます。日本はもう、さんざんそれはテスト済みなので、日本は当面あまりそういう考え方を出してこられるという方は、一部の方を除いてはおられない。そういうふうに私は思っています。

(以上)