与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年10月30日

(平成20年10月30日(木) 18:43~19:15  於:共用220会議室)

1.発言要旨

 先ほど4時から開かれました政府・与党、経済対策閣僚合同会議において、新たな経済対策が決められました。内容は既に資料をお配りしているとおりでございますし、また6時からの記者会見で、麻生総理のこれに対する基本的な考え方は明らかにされていると思っております。
 何かご質問があれば、それについてお答えをさせていただきたいと思っております。
 以上です。

2.質疑応答

(問)まず今回の対策の位置づけについてお伺いしたいんですが、大臣御自身、景気の押し上げ効果というのは限定的であるという旨を、以前、会見でもおっしゃっていたかと思うのですが、やはり表題にも「生活対策」と銘打ってあるのですけれども、景気刺激というよりは当面の生活支援、これに重点を置いたと考えていいのでしょうか。
(答)一次補正を行ったときの経済に対する考え方は、やはり何といっても原油に代表される原材料高にどう対応していくかということに重点があったと思います。<  今の局面は、9月15日のリーマンの破綻以降の世界的な金融不安、またこの金融不安、危機がもたらす現実の経済に対する大きな影響、これをできるだけ少なくする。これが基本的な視点であったと思いますし、こういう金融危機の中で中小企業あるいは小規模企業が打撃を受けたり、それからそれに伴って雇用不安が起きたりということをできるだけ少なくするため、考えられるあらゆる政策手段をとったつもりでございます。<
(問)位置づけとしては、やはり景気刺激というよりは、あくまで生活対策というものであるということですか。
(答)当然、いわゆる昔の総需要対策的な景気対策ではありませんけれども、経済のインフラとも言うべき金融部門や何かは、非常に手厚く対策を講じたつもりでございます。
(問)もう一つ、今日、麻生首相が会見で、経済情勢なども見た上で、3年後には消費税率の引き上げをお願いしたいという旨の発言をされているのですが、今から諮問会議を中心にまとめられる中期プログラムでは、それを受けて、あるいは年末の税制改革論議を受けて、年明けの通常国会には中期のプログラム法にまとめるという方向なのでしょうか。
(答)最終の姿は予断をもって申し上げられないわけでございますけれども、社会保障を安定的なものにするためには、安定した財源が必要だということは、随分長い間議論をされてまいりました。財政再建をやらなければならないというのは、橋本内閣時代の財政構造改革法に始まりまして、長い間の政権与党の課題であったわけでございます。
 これは、麻生総理の発言をどう解釈するかでございますが、少なくとも3年間は消費税を上げないということを宣言されたと。しかし、その後は行政改革が徹底し、また経済の状況が好転していれば、当然のごとく、中福祉というものを守っていくためには財源が必要であると。また、子供たちの世代にツケを回すというのは余りにも無責任であると、そういう態度を表明されたと思っていまして、私は極めて率直な、正しいお話をされたということを確信をしております。
(問)今の大臣のお話にもありましたが、先ほど総理は3年後の消費税の引き上げをお願いしたいとおっしゃった中で、2つの担保をつけられました。1つは大胆な行政改革、もう1つは経済状況を見た上でというお話だったんですが、与謝野大臣がお考えになるこの「担保」なんですけれども、大胆な行政改革というのは、今、甘利大臣のもとで進められていらっしゃいますけれども、大体何がどの程度進むことなのか、というイメージを持たれているのかということと。
 3年後の経済状況というのは、なかなか難しいのかもしれませんけれども、経済状況を見た上でというのも、もう少し具体的に言うと、何がどうなっていることなのかということを御解説いただけないでしょうか。
(答)実は、アメリカ、スウェーデン、日本というものの財政構造を調べてみますと、社会保障部門は別にして、社会保障以外の非社会保障分野の数字を比べてみますと、アメリカ、スウェーデンなどに比べまして、日本の対GDP比の国の予算というのはこの中では極めて小さい。そういうことですから、これから政府の非社会保障部門をどうスリム化していくかというのは、なかなか苦労の多いところだろうと思います。
 また、例えば人口10万あたりの公務員の数等を比べましても、日本は多分、世界最小のグループに入ってくる。したがいまして、大胆な行政改革といったときには、やはり政府が関与する部分をなるべく小さくしていく、あるいは随分切り詰めたけれども、公務員の数を十分減らしていく。また、公務員がより目的意識を持って働けるような環境をつくるとか、いろいろな努力が必要だろうと思います。一つの分野であっと驚くような行政改革はできない。むしろ、随分行政改革をやってまいりましたから、後はどんな小さいところでも丁寧に行政改革をやっていくということで、行政改革を徹底していくということだろうと思います。
 それから、経済状況が好転したらというのはどういうことを想像できるかといいますと、極めて難しい御質問なので、うまくお答えできるかどうかわかりませんけれども、少なくとも、日本の潜在成長力が顕在化するという状況でなければならないと思っております。
(問)真水5兆円、事業規模26兆ということですけれども、事業費が26.9兆円程度という対策ですが、これによって、どれぐらいのGDP押し上げ効果を見込んでいらっしゃるのかが1点。
 あと、3年後には消費税をという総理の発言の意味を、もうちょっと詳しく大臣なりに分析いただきたいのですけれども。2009年、2010年、2011年については上げないで、2012年以降は上げる可能性があるということなのでしょうか。
(答)まず、GDPに今回の経済対策がどの程度寄与するのかというのは、まだ計算をしておりません。有効需要をどのぐらい増やすのかというのは、むしろ、もうちょっと正確な数字を申し上げるためには専門家に作業させますので、それを待っていただければと思っております。
 日本の財政と歳入改革の話ですけれども、これはどなたが見ても、この財政状況をこれから5年も10年も続けられないということは一目瞭然でございまして、財政学を学ぶまでもなく、収入に比して支出が大きいと。現在のところは、国債を発行しても1.5%前後の利率で皆様方が国債を買ってくださると。国債の消化が可能な状況が今続いておりますけれども、これ以上、公的な債務というものが増えていけば、やはり国債の消化能力というものも落ちてくるでしょうし、それにつれて金利も上昇する可能性がある。これは国民の生活や国民の経済にとって、大きなマイナスになる。
 加えまして、我々のような年齢は、いわば「逃げ切り世代」で、借金だけしてあの世に行くことはできるわけですけれども、この社会を何十年もこれから支えていく方々が現におられるわけで、そういう方に大きな重荷を置いたまま次の世代にバトンタッチをしていくというのは、やはり余りにも無責任である。今日の麻生総理の記者会見も、多分心の底には、将来世代に対しても責任を持たなければならないという強い意思が込められていたと私は思っております。
(問)今の問題にも関連するのですけれども、将来世代にツケを残さないという観点で取り組むことが大事だということではありますが、財投特会から本来であれば国債償還に、いわば借金返済に使われるはずであったお金を今回の対策に回すと。さらに今日、一部報道でもありましたけれども、今年は大幅な税収の減も見込まれる中で、いわば「埋蔵金」というものに手をつけたことに対して、改めて大臣のお考えが知りたいということと。
 総理の会見でも、これに関する補正予算を今国会に出すのかということについて、明確な返答がございませんでしたけれども、技術的に考えても、関連法案も含めて、臨時国会で11月28日、11月末までには、この補正予算を衆議院で上げなければいけない、関連法案も上げなければいけないという中で、非常に難しい国会運営を迫られると思うのですが、この問題に関して、民主党あるいはその他の野党に対して、何らかの政策協議でありますとか話し合いというものを、何か特別な場を設けて求めていくようなお考えがあるのかどうか、この2点についてお願いします。
(答)まず、財融特会の中のお金というのは、今の原則はストックからストックへということであって、その原則というのは極めて重要な原則だと私は思っております。しかし、今のような経済状況あるいは法人税収の欠陥がもう明らかになっている段階で、赤字国債を出すことは財政規律からいっても余りにも無責任だということで、臨時、異例の措置として財融特会を使わせていただくと、こういうことになったわけでございます。財融特会を使うということが、財政運営上100点満点の措置だということは、私は決して思っておりません。
 それから、補正予算については、淡々と事務的にやっていきますと計数整理だけで2週間以上はかかるだろうと。また、これを予算書として印刷して国会に提出するのは、もう2週間ぐらいかかるだろうと、そう思いますので、予定された会期の中で、今回経済対策の中に書かれたものを全部補正予算に落として実現することにしても、予算書を提出するまでの期間を1カ月と考えますと、今の臨時国会の会期内では処理できないというのが、自明のことではないかと思います。そういう意味で、今日はそういうことを背景に総理が発言されたものと私は理解をしております。
(問)中期プログラムの記述ですけれども、抜本改革を2010年代半ばまで段階的に行うという、この「段階的に」の意味なのですけれども、消費税については、大臣は党の研究会で2010年代半ばに10%程度と打ち出されておりますけれども、これは3年後プラスアルファで10%というのが当面のゴールになるという見方でよろしいのでしょうか。
(答)「段階的に」というのは、いろいろな説があります。1%ずつ5回上げろという説もあるし、3%上げて次に2%上げろという人もいるし、2%上げて3%上げろという人もいるし、「段階的に」ということは、一挙に5から10のレベルにはなかなかいけないということを言っているだけで、その刻みについてはいろいろな説があると思います。
 それから、10%の段階になったら、やはり生活必需品については低い税率で据え置くべきだという複数税率論を言う方もおられて、なかなか有力な説だと私は思っております。
(問)先ほど3年間は消費税を上げないというふうに宣言されたと御解説いただきましたけれども、それであるならば基礎年金国庫負担割合の2分の1への安定財源というのは、どのような形で確保されるのか。また、今回の資料に09年度に上げるというのは明記されていませんが、その時期は維持されるおつもりなのかどうか、これをお願いします。
(答)そこは、実際は頭の痛いところでございます。
 消費税は3年間は上げないという話、それから基礎年金国庫負担分を2分の1にする。よく2兆5,000億前後かかるとも言いますけれども、この財源をどこに求めるのかというのは、年末にかけての税制抜本改革のときの重要な、最も重要な議論になると思います。今日のところは、実は政府・与党とも、方向とか結論が出ているわけではありません。残された重要な問題であると思っております。
 それから、プライマリーバランスの話ですけれども、総理は、所信表明の中でも「達成されるよう努力する」ということを表明されておりまして、努力目標としては存在しております。ただ、法人税収の実績というものを10月末の締め、11月、12月と見ていったときに、冷静、客観的に物事を判断しなければならない時期も来てしまうと、私は思っております。
(問)今の大臣のプライマリーバランスのことについて再度確認させていただきたいのですが、麻生総理が3年間は上げないというのは、何とか2011年のプライマリーバランス黒字化には間に合わせるという、この努力目標は守るという意味での部分を指して言っているのかというところを確認させていただきたいのと。
 今回のこの追加経済対策の生活対策の財源で、特会の活用を行うということですが、5兆円の国費のうち、どの程度をこの特会で賄うという見通しになるのかというところを、現時点でもしわかりましたらお示しいただければと思います。以上です。
(答)これは、中川昭一財務大臣とよく御相談しなければならないのですが、真水で出ていくものは、ほかに当てがあるわけではありません。ただ、今回の経済対策の中で、建設国債を発行する的確性と申しますか、そういうものもありますので、そういうものの全体を含めて財源の話は、財務省を中心にもう一度詳細に詰めなければならないと思っております。
 なお、今日の総理の御発言というのは、2011年のプライマリーバランスの話を直接されているわけではなくて、将来の財政にも今からきちんとした考え方を持ち、責任ある行動をとらなければならないと、そういうお考え方から出てきたものと私は思っております。
(問)先ほどの質問にもあったのですけれども、確認させてもらいたくて質問いたします。
 「消費税は3年間は上げない」ということの意味ですけれども、9年度、10年度、11年度は上げない。それから、総理が言われた3年後に、条件つきながら消費税は上げる。これは12年度以降に条件が合えば上げると、こういうふうに考えてよろしいんでしょうか。
(答)「景気は全治3年」といったときに、去年からもう景気は悪くなっているから去年から数えなさいという人もいるし、今景気対策、「全治3年」と言っているんだから、今から3年だという人もいるし、両説まちまちです。消費税に関しても「3年」という表現を使いましたが、そう余り数学者的な、厳密な考え方で発言されておられるわけではないと思っています。
(問)それから、潜在成長率のところですけれども、先ほど大臣は経済状況が好転したというところで、1つ潜在成長率を目安的におっしゃいましたけれども、今、日本の潜在成長率はどうなのでしょう。2%程度だというふうに考えて、そういったことを念頭に置いておられるのでしょうか。
(答)民間の研究所の予測などでは、今年の経済成長がプラスになるのかどうかということを心配されている方も少し増えてこられた。こういう異常事態ですから、異常な値を示しているんだろうと思います。
 日本の潜在成長力というのは2%ぐらいだろうというのは、大体、経済の専門家の間ではコンセンサスだろうと私は思っておりまして、そういう日本の持っている力が、フルに発現された状況が、経済が回復したと言える状況だと思っております。
(問)少なくとも、景気後退期ではなくて景気回復期でなければならないというようなことは大臣は考えていらっしゃいますか。
(答)総理が言われた経済が普通の状況に戻るというのは、回復期かまた上昇かは別にして、経済が正常に戻って日本の潜在成長力がよりよく生かされ、それが現実のGDPとしてあらわれると、そういう状況のことを言っておられるのだと思います。
(問)今日のこの対策の財源のところを見ると「赤字国債に依存しない」と書いてあるのですけれども、今までは麻生政権は「極力依存しない」とおっしゃって、確か大臣は以前の会見のときも「神風でも吹かないか」とおっしゃって、その流れでおっしゃったのではないかと記憶しているのですが、いわばハードルを引き上げた形になっていると思うのですけれども、そのひもときをしていただきたいのと、その「極力」という言葉を抜くに当たって、政府・与党の間でどういう議論があったのかということも教えていただけないでしょうか。
(答)何の議論もなく抜け落ちたということで、現実、赤字国債に依存しないということで財源を構成するというのは、財務省も意見が一致しましたので、そのような表現になっています。「極力」というのは、もしかしたら、依存する部分があるのかなと疑問符がついていた時代の話で、依存しないというのは本当に依存しないということです。
(問)依存しなくても済む見通しが立ったという。
(答)そういうことです。
(問)今、財源のお話がありましたけれども、赤字国債は出さなくて済む見通しであると。一方、ここの紙にも書いてありますように、財政投融資特別会計の準備金を一時的に使うとか、恐らく建設国債対象経費もかなり含まれていますし、それ以外の一般の不用額とか、いろいろ想定されている財源はあると思うのですけれども、現時点でこの5兆円の国費の中で、どういったものをどれぐらい使うイメージなのか。5兆円の国費のうちどういった財源をどれぐらい当て込んでいるのか、可能な範囲で結構ですので、御説明いただければと思います。
(答)詳しい数字を申し上げられないのは極めて残念でございますけれども、財融特会の金利変動準備金のうち余っている部分の一部、それからもうなくなりましたけれども、旧公営企業金融公庫が持っているお金、これも法律改正を行わないで使えるお金、これの一部、建設国債を一部等々であると思います。いずれ財務省から明らかにされると思います。
(問)先ほど大臣は、段階的な消費税の引き上げのところで、刻みについては諸説あるとおっしゃっておられましたけれども、これは実際に、その刻みをどれくらいの程度で上げていくのか、最終的にどの程度まで上げるかというのは、どの段階で明示することができるのか。そこがわからないと、目先、定額給付金をもらったとしても、生活者の安心感というのは、先の負担増が見えない中では安心できないのではないかという気もするのですけれども、これはどの段階で提示できるのでしょうか。
(答)将来のことをすべてわかったほうが安心であることは間違いないと、私はそう思います。しかし、この問題は12月の税制調査会の議論、それから経済状況に対する判断、政治的実現性に関する判断、もろもろのことを総合的に判断して決めていかざるを得ない話で、かっちりした刻みとか時期とかというのは、12月まで待っていただけないかなと思っております。

(以上)