与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年10月16日

(平成20年10月16日(金) 18:48~19:22  於:中央合同庁舎4号館408号室)

1.発言要旨

 本日、18時15分より、新しい経済対策に関する政府・与党会議が開催されました。
 麻生総理より「安心実現のための緊急総合対策」以後の新たな事態に対応するため、新しい経済対策「生活対策」を早急に策定せよとの指示がございました。
 新しい経済対策の考え方は、次のとおりでございます。
 重点分野ですが、国民生活と日本経済を守るため、次の分野を重点にする。
 一つ、生活者。二つ、金融対策、中小零細企業等企業活力向上。三つ、地方。
 そして、財源につきましては、次のような指示がございました。
 対策の財源は、赤字国債に極力依存しないこととする。
 なお、持続可能な社会保障構築と、その安定財源確保に向けた中期プログラムを早急に策定する。この中には、基礎年金国庫負担を二分の一に引き上げるための前提となる税制抜本改革の姿を含める。
 私からは、会議の最後に、本日の議論を踏まえ、先行してさまざまな検討を進められている与党の方々とも緊密に意見交換を行って、新しい経済対策の取りまとめに向けて、検討を急ぎたい。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)今回のこの指示の中で、財源について「赤字国債については極力依存しないように」と、こういう表現になっているのですが、ここについてどういうことなのか、ということと、ほかに財源として考えられるものにどういったものがあるか、ということについて、教えていただきたいことが一つ。
 安定財源について、「中期的プログラムを早急に」と書いてあるのですが、この「早急」というのが、いつごろのスケジュール感を持っていらっしゃるのか、お願いしたいのですけれども。
(答)まず一つは、いろいろな対策を出しても財源に当てがないということは、政府としても与党としても責任を果たすことにはならない。したがいまして、いつまでにこの政策、「生活対策」という総理が名づけられたもの、これは総理の御発言を引用すれば、27日の週に取りまとめを行いたいということをおっしゃっておりましたので、スケジュールとしては、27日の週に取りまとめる。しかし、その段階で、どこまでこの中期プログラムができるかということは、今はっきり申し上げられませんけれども、それでも少なくとも方向性については述べなければならないと。
 また、私の途中の発言で、具体的な税制抜本改革の議論については、年末の党税調、政府税調等の議論までは多分できないだろうということを申し上げました。その中で、やはり麻生総理は、税制の抜本改革は避けられないと。でも、例えば消費税というような議論をする方がおられるけれども、今は無理だろうと。景気回復ができた後に議論すべき話ではあるけれども、しかし、それでもきちんと税制の姿というものを検討しなければならないし、裏づけがあるということをお示ししなければならないということをおっしゃいましたので、方向性を示すということ、具体的な税制の抜本改革を議論することという二段階を私は考えております。
(問)最初のところで「新たな事態に対応するため」と、こういうことが書いてあるのですが、大臣は現状の景気認識についてはどのようにお考えになっていますでしょうか。
(答)これは、総理も同じ御認識だと思いますけれども、現在のアメリカから始まりました国際的な緊迫した金融情勢、金融危機、こういうものは、やがて米欧の景気後退をもたらしますし、またそれによって、外需を中心とした日本の経済も困難に直面するという認識。それと同時に、やはり金融危機というものによって、日本の国内金融システムは、一定水準以上の健全性を持っておりますけれども、やはり国際的な危機というものが、いわば萎縮効果を持つ可能性があると。それに対して、対策をとるということでございます。
 いずれにしても、金融危機というのは、ある程度は実体経済に影響を及ぼすということは避けられないことでございまして、やがては、日本の国内経済にも一定の影響を、マイナスの影響を与えるということも確かでございますので、生活者を中心とした経済対策というものを新たに考える必要はあると。
 やはり考え方の分岐点は、9月15日のリーマン・ブラザーズの破綻、9月15日以前と9月15日以降というのは事態が、また局面が変わったと、そういう認識を持っての総理の指示であると私は理解しております。
(問)重点分野が「生活者」、「金融対策」、「地方」とありますが、これはもうちょっと敷衍して、具体的にどんなことを想定しているのかということを、わかりやすく御説明いただければと思います。
 また、この取りまとめは、与謝野大臣のところでやるのかということを。
(答)取りまとめは、今日の会議で私のほうでやるという具体的な御指示がありました。
 また、生活者というのは、税制も一つでございますし、また雇用対策等も含まれてくると思っております。
 今日、御指示がありましたので、明日早速、与党の皆さんの検討状況を正確に把握したいと思っております。
(問)取りまとめの時期という部分について、ちょっとわからないことがあるのですけれども、この重点分野並びに財源、ここに書いてあることすべてを含めて、新しい経済対策と位置づけて取りまとめたと考えるということなのでしょうか。つまり、中期プログラムであるとか税制抜本改革の姿も含めて、経済対策という位置づけということでよろしいのでしょうか。
(答)2つ、総理指示がございまして、1つは今月の9日だったと思いますけれども、与党に対する作業の御指示があって、それの作業が今始まっております。これの答えが、多分、23日ぐらいには総理のところに、その検討の結果が来るものと私は期待をしておりまして、そういう与党のお答えを含めまして、政府も各省の考え方、総理のお考えを全部まとめまして27日には答えを出したい。その中には、補正予算という姿になるもの、21年度の当初予算になるもの、税制改正を伴うもの、それから例えば金融情勢の安定のためのいろいろな政策、そういうものを含めたものであると。ただ、それぞれの対策が行き先がどこかといえば、二次補正、21年度当初予算、税制改正あるいは新たな制度、あるいは金融政策、それぞれ行き場所は違いますけれども、対策としては一まとめのものになる。そのように思っております。
(問)ということは、月末の27日の時点では、それぞれの財源とか制度の担保の仕方というところまでは、項目ごとに1対1で、対では出てこないということになりましょうか。
(答)項目は全部出てくると思います。
(問)数字はまだ出てこないと。
(答)数字も、大体のイメージは、恐らくおわかりいただけるような段階まで進めばいいなと思っております。
(問)先ほどの質問に関連するのですが、この重点分野の部分で「金融対策」、「中小企業活力向上」、「地方」とありますが、この点について現時点で想定されるイメージ、金融対策については公的資金の云々とも取りざたされておりますが、この2点についてお聞きします。
 また、財源の規模については、与党のほうで既に今日決まりました、一次補正のほうを上回る思いというのはあります。ちょっと気の早い話ですが、全体の規模感というのを今どのようにお考えになっているのか、お聞かせ願えますでしょうか。
(答)中小企業あるいは企業の活力のために何ができるかといえば、今、党で議論されている一連の税制改正、それから一つは信用保証、これを拡充するかどうかと、こういう大きな柱があると思いますけれども、いろいろなアイデアが出てくると、私はそう思っております。
 ただ、全体の規模がどのぐらいになるかということは、にわかには判断できない問題がありますけれども、少なくとも、今回の補正予算の規模を上回るべきだということを主張される方が多いように私は感じております。
(問)中期プログラムですけれども、この「中期」というのは例えば2年とか3年とか、そういう具体的な期間というのを示されるのか、それとも景気回復の時期によって左右されていくものなのかというのが一つと。
 定額減税については、9月15日以前にもう既にやると決まっているのですけれども、これは(1)に入ると考えていいのか、それともまた別の扱いになるのか、お願いします。
(答)後段のほうからお答えしますと、総理の御発言で、定額減税については規模と財源を明らかにしてほしいと、こういうことでございますから、この作業の過程で明らかになると。
 それから、「中期」というのはどういう意味かということですが、これは私の独自の解釈ですけれども、「日本の経済は、直すのに3年かかる」という総理の御発言がありまして、「全治3年」というお言葉がありますけれども、その「病気」になった時期をいつから数えるのかという問題はありますけれども、いずれにしても、経済と税制改正は、実は微妙に関係してくるので、中期というのは少なくとも治癒期間が終わった後のことを「中期」と呼んでいると私は想像しております。しかしながら、その治癒期間が終わった後のことを全く言及しない、計画をしない、無計画のままに進むというのは余りにも無責任だという思いを、強く総理は持っておられると私は思っております。
 したがいまして、いずれにしても、きちんとした改革の方向性というものを明らかにするという責任が、政府・与党にはあると私は判断しております。
(問)2点お尋ねします。
 まず1点目なのですけれども、今回の新しい経済対策には、需要を創出するための公共事業の積み増しというものは候補に入ってくるものなのか、それとも、8月末の対策のときには、そこはしないという整理だったと思うのですけれども、今回はどうされるのでしょうか。
(答)これは、いろいろ自民党の政調会長代理や柳沢さんともお話ししたのですけれども、公共事業といっても、国主導の公共事業というのは、あまりいいものは考えつかないというのが正直なところでございまして、地方が独自に住民ニーズに応えるために何かやるということはあり得る話ですけれども、総需要対策としての公共事業というのは、多分この総理指示の中には入っていないと解釈されるべきだと思います。
(問)それと、もう1点ですけれども、何度か質問が出ています財源の問題ですが、与党のほうでこれまでいろいろな議論をされ、最近も国会の論戦の中でいろいろなやりとりがあるわけですけれども、財政投融資特別会計の金利変動準備金を定額減税などの政策の財源に充てるべきだという意見が与党内でかなり広がっています。今回の新経済対策の中で、こういったやり方を採用するお考えはありますか。
(答)そこはなかなか難しい議論でございまして、財融特会の使い方というのは、今までの原則では、ストックからストックへという原則があって、その原則を崩すとしたら、やはり崩すだけのそれを正当化する、やはりきちんとした理屈がなければならないと、私は思っております。
 使うとも使わないともお答えできないのは残念でございますけれども、今までの原則は原則として存在しますし、新しい時代に対応するのであれば、それなりの理論と根拠が必要だろうと思っております。
(問)今の質問とも絡むのですが、8月29日の対策の中では、定額減税については税制の抜本改革とあわせて議論をすると、これは恐らく与謝野大臣がかなり持論として盛り込まれたところがあると思うのですが、それが前倒しでこの部分だけ財源と規模について明記されるというのは、その対策と矛盾するのではないかという点が1点。
 また、この安定財源確保に向けた中期プログラムの件ですが、これは大臣も以前に、これをじっくりと議論をするために諮問会議を利用したいと、それで吉川先生もメンバーに選ばれたという経緯があると思うのですが、それはもう諮問会議等々も含めて前倒しで早急にやってしまうということでよろしいのでしょうか。
(答)定額減税をやるということになれば、やるべきだと主張された方は、税制の抜本改革の議論からは逃げられないと、そういうものであると思っています。
 それから、吉川先生は社会保障国民会議の責任者をやっておられて、今月中には何らかの根拠のある数字が出てくると思います。やはり社会保障制度というのは、財源あっての社会保障制度であって、社会保障制度自体をよくするというのは簡単な話ですけれども、常に財源、これだけの財源があるから、これだけの社会保障制度ができる、これだけの社会保障制度だから、これだけの財源が必要である。そういうことを考えれば、社会保障を議論するということは、財源の問題を避けて通れないと、そういう宿命にある。それを避けて通るということは、空理空論に至ると私は考えております。
(問)中期プログラムの件で1件お伺いしたいのですが、2011年度にプライマリーバランスを黒字化するという目標の見直しを、これは含むものなのでしょうか。
(答)プライマリーバランスについては、これを達成するように努力をするというのが、総理の所信表明の中での表現ぶり、努力目標になっています。
 しかしながら、現実は大変厳しい。特に法人税の減収は非常に厳しくて、年末にかけて実際の税収予想がもう少しはっきりしていますと、そのギャップというのが、どの程度になるかという現実の数字が出てまいります。その段階で、やはり冷静に物事を考えなければいけない事態が来ると、私はそう思っております。
(問)要するに、10月末までの時点で、まだ11年度以降も含めた全体の財政の収支バランスの絵姿を示すというところまではいかないということなのですか。
(答)「神風が吹く」ということは多分ないのだろうと思いますが、努力目標は努力目標として、実際に数字があらかた固まってくるまでは、きちんと置いておくということも一つの大事な、やはり規範だろうと思っています。
(問)もう1点だけ。先ほど大臣も9月15日を境に事態が変わったというような考え方を示されていらっしゃいましたが、8月末に示したような、原油・原材料高の影響を緩和するという側面よりは、やっぱり景気そのものに対する対策という色彩が今回は濃いかと思うのですけれども、そういう意味で、景気浮揚効果がこれだけありますというような、効果の部分を示すお考えはあるのでしょうか。
(答)むしろ、著しい景気後退を回避するための考え方というふうに考えたほうが正しいのではないかと思います。いわゆる「景気浮揚」といって成長率がまた上がるということよりも、やはり米欧の経済、中国、東南アジアの経済、これもまた弱くなっていきますから、その中で日本経済が過度の落ち込みをしないための対策と考えたほうが、過剰期待を持たれないのだろうと私は思っています。
(問)要するに、我々もそうですけれども、国民が費用対効果を判断する上で、例えばこれだけお金を使ってやるから、これだけ景気の悪化を食いとめることができるのですというような、定量的な指標を試算されてもよいような感じはするのですけれども、今回については、ないということなのでしょうか。
(答)実際に、対策の大体の規模がわかった段階で、量的に計算できるものをお示しすることはできますけれども、例えば中小企業に対する信用保証制度というのは、どれだけ成長率に寄与するかというのは、実際はよくわからないという面もあって、質的・量的、両面からある程度の御説明はできると思いますが、大体対策の規模がわかるまで少しお待ちをいただければなと思っております。
(問)確認なのですけれども、定額減税の規模については、ある程度その金額を示すことになりそうだというお話がありましたけれども、これは示した上で、年末までの税制改革の中で、さらにそれに向けて調整を進めるという理解のほうがよろしいのでしょうか。
(答)福田内閣のときの経済対策の中で、既に定額減税というのはうたわれているわけです。それを、いよいよ具体化しなければならない時期が迫っているということで、規模、財源等を明らかにすべしという総理の御指示があったわけで、ただ、党税調もこの議論をするときに、財源の問題、単年度の措置とはいえ、財源の問題を考えるとなかなか難しい問題もありますし、また定額減税というのはうまく税制として実行できるかという問題があります。それから、生活者に対する配慮というものを考えると、課税最低限以下の方をどうするかという問題も新たに議論しなければならない問題で、実際に規模とか実施の方法とかということは、やはり相当深い議論をしないと、結論は出ないと思っています。
(問)目標は先出しするけれども、実際の方法などについては、さらに年末まで議論を進めるということですか。
(答)いや、規模、財源は、与党の間で急いで議論が始まると思います。ただ、その議論もなかなか困難に出会うのではないかなと思います。
(問)金融機能強化法のことなのですが、今国会に提出をするというようなお話が今出ておると思います。そうなりますと、この法律が年末にきちんと機能するような形になっていくのかどうなのか、というスケジュールについて教えていただきたいのですが。
(答)参議院での直嶋議員の御意見を静かに拝聴しますと、この金融機能強化法というのは、民主党もやってもいいと言って、これは経済対策ではないという御主張でしたけれども、「転ばぬ先のつえ」という意味でやったらいいんだろうというのは、民主党も自民党も同じ意見だと思います。
 今日も、中川財務・金融担当大臣から御発言があって、既にこの法律の検討を金融庁で事務的にやらせているということです。
 昨日は、柳沢さんの御意見を伺うと、仮にやるとしても、前回の金融機能強化法の使い勝手が悪い部分。それから、前回と事情が違うのは、やはり前回は日本発、日本の金融危機だったけれども、今回はどちらかといえば外国発。日本のそういう難しい状況ということがあるので、前の強化法をやや使いやすくしたほうがいいのではないかという御意見でした。「どこの部分ですか」ということをお伺いしましたら、一つは、責任の問題と。一つは、合併やその要件とか、そういうことだというのですが、専門的だったので、私はよくわからなかったということです。
(問)実際の施行は、年末に間に合うようなイメージなのでしょうか。それとも、施行日については1月以降になるイメージになるのでしょうか。
(答)この臨時国会というのは来月の30日までしかありませんから、どこまで話が進むかわかりません。わかりませんけれども、民主党の考え方、与党の考え方、こういうものがうまく合えば、物事はスムーズにいくはずだと思っています。
 なお、来週の土曜日、民主党の大塚耕平さんとBSイレブンで対談をする予定になっています。

(以上)