与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年10月10日

(平成20年10月10日(金) 10:31~10:54  於:記者会見室)

1.発言要旨

 閣議は案件どおりでございましたが、私は、中川昭一大臣の出張不在中に財務大臣、金融担当大臣の臨時代理をやっておりまして、その観点から申し上げますと、本日、国内で規模の一番小さい大和生命が、会社更生法の適用申請を行ったということでございます。
 ただ、資産は2,500億円強、我が国の生命保険事業の中では最も規模の小さいものでございますし、債務超過額も百数十億という点では、いわゆる世界の金融危機の波の中で起きた事件としてとらえるのではなく、大和生命という特異な経営モデルを持ったところが行き詰ったと。
 保険契約者の保護という点からいえば、債務超過になった直後に会社更生法を適用して会社の財産を保護し、もって契約者の保護をするというのは、妥当な、法律的な筋道だと思っております。
 以上です。

2.質疑応答

(問)今、大和生命について、規模が小さく、金融システムへの影響は軽微であるような発言がありましたが、今のことも踏まえて、日本の金融システムの現状をどう御覧になっているのか、まだ健全であるのかどうなのか。今日、株価がまた大きく下げておりまして、一時1,000円を超す下げがあったと。これも含めて、経済への影響。以上2点、お願いします。
(答)これは、世界のすべての市場が動揺しているということの1つのあらわれであって、日本特異の現象ではないということが1つ。サブプライムの関係でいえば、実減損あるいは保有額等々の実際の数字を見ますと、業務純益が年間約5、6兆ある、あるいは自己資本がTier1で50兆を超えていると。こういうことを考えれば、サブプライム関連の損失というのは確かに痛いわけですけれども、これは消化可能、飲み込める規模でございまして、直接、日本の金融機関がそれによって大きな大きな打撃を受けるというわけではないということははっきりしております。
(問)株価については。
(答)株価は市場が決めるので、特段、政府としてコメントすべきことではないのですが、全体として世界の流れに引っ張られないように、引っ張られ過ぎないようにしなければならない。やはり、日本の経済のファンダメンタルズを見ながら、沈着冷静に投資家には御判断いただきたいと思っております。
 ただ、この中には、やはり外資が資金調達のために急ぎ売りをしているというものもありますので、市場が落ち着きを取り戻すよう、これは世界各国政府が全体で協調しながらやっていかなければいけないことだと思っております。
(問)アメリカで公的資金による資本注入の動きが出てきたという報道がありますが、これについて、大臣はどういう御感想をお持ちでしょうか。
(答)結局、不良債権買い取りというのは、いわば損切りと申しますか、損を確定する作業でしかないという側面を持っています。
 したがいまして、損切りをした後、やはり資本を棄損するわけでございますから、そこにリキャピタライゼーション、キャピタルインジェクションと言われるような作業をして、資本の部分を、やはり傷を治さなければいけないのは、日本の経験でもそうだったわけで、恐らくアメリカの専門家も、そういうことはとっくの昔に気が付いておられるので、国民の理解を得ながら物事をやらなければならないのですけれども、難しい仕事を、たぶん、アメリカの金融当局はやっておられるのだと思います。
(問)日本の方ですが、柳澤PTで追加景気対策をまとめるという中で、地域金融機関を中心に資本増強を行う枠組みを、復活させた方がよいのではないかという考え方が出ておりますが、この辺については、大臣、どうお考えになりますでしょうか。
(答)そういう考え方が自民党の中に出てくるのですけれども、地域金融機関も、例えばリーマンのサムライ債を思わず買ってしまったというようなところもあることは事実ですが、資本注入のための昔の法律をもう一度登場させる必要があるほど、現時点で経営が悪化しているところはない。もちろん、多少、痛みを感じているところはありますけれども、それが地域金融機関全体の現象かといえば、そうではないと。
(問)改めてお伺いしますが、今の地域金融機関も、多少の痛みはあるが、それほど痛んではいないということを、今、おっしゃられましたが、今日の大和生命の破綻と地域金融機関の現状を見た上で、日本の金融システムというのは、まだ健全であるかどうかということを確認したいのですが。
(答)これは、幾つもの原因があるのですけれども、東証の理事長に「この期間、日本の金融機関がお行儀よくやっていたのはどういうわけですか」と、「まじめにやろうという精神だったのか、あるいはバブルの後、「羹に懲りて膾を吹く」というような状態だったのですか」と言ったら、「まあ、どちらかと言えば「羹に懲りて」という方でしょうね」と。金融庁長官に同じ質問をしましたら、「「羹に懲りて膾を吹く」ということと、やはり慎重にまじめに経営してきたという両方ではないですか」と。
 これは、やはりこの期間、BIS規制の自己資本比率というのを、愚直に地銀も都市銀行も守ってきたと。これは大きいですし、「どうかな」と思いながら、「時価会計をちゃんとやれ」というので、「はい」ということで時価会計をまじめにやっていましたから、日本の金融機関の持っている資産内容というのは非常に透明性が高い。それと同時に、やはり貸し出し態度というものが、「担保価値が向上するんだからいいや」ということよりは、貸し出す案件の収益性などを考えた貸し出し態度に全く変わったと。こういうことで、日本の金融機関の健全性は維持できたのだと思っています。もちろん、その間、国民が低金利に甘んじたということも、銀行経営の改善には大いに役立っているはずなのです。
(問)こうした金融の混乱が、実体経済に与える影響についてはどうお考えですか。
(答)それは、カテゴリカルに2つの側面を考えたらよいと思うのです。これは、米国内で金融がこういう状況になりますと、資金調達も難しくなる。それから、株等が持っている資産効果が落ちる。失業も増える可能性があるということで、全体として米国の需要というのは落ちてくる。外需に依存している部分の大きい日本の経済にとっては、実体経済に当然のこととして影響が出てくる。外需が落ちますから、その分だけ日本の企業の収益構造が悪くなる。設備投資意欲も減退する。企業で働いている方々の賃金も上がらない。消費も増えない。消費者のマインドは冷え込む。こういうことで、国内の設備投資需要、消費需要も、当然、落ち込んでくる。それが、実体経済に反映する。そこで、ぐるぐる回りになるだろうと思います。
 もう1つ大事な側面は、やはり何とはなしに金融が不安だと、貸し出し態度がかたくなるということで、必要なお金が必要な事業分野に行かなくなる、いわゆる貸し渋りと呼ばれる現象が必然的に起きてくる。これが、実体経済に大きな影響を与える。そういうふうに、私は分類して考えております。
(問)今、「ぐるぐる回りになる」というような表現をされたのですが、金融部門のこうした混乱と実体経済の低下というものが、要するに、負のスパイラルとして起こる、そういうことですか。
(答)そう。そんなにきれいに起きるわけはないのですけれども、やはり金融が実体経済に影響を及ぼす。それがまた、政府の財政にも、また金融にも影響を及ぼしていく。そういうことだろうと思います。
(問)今回、かなり下位の生保が破綻しましたけれども、今の生保業界、この大和生命のような非常に危険な状態にあるところが、他におありだというような御認識でいらっしゃいますでしょうか。
(答)全くありません。
(問)今朝の一部報道で、財務省マターなのですが、日本側からG7で、IMFの融資枠の増枠について提案されるというような報道があったのですが、これについては何かございますでしょうか。
(答)IMFに考えていただかなければいけないのは、G7、G8のことではなくて、やはりこういう金融危機、信用収縮、ドル資金不足ということになると、いろいろな新興経済国その他の地域で、思わぬ余波を受ける可能性がある。したがいまして、こういうときにこそ、インターナショナル・マネタリー・ファンドとしてやるべきことがあるのではないだろうかということで、中川さんが各国の大蔵大臣と御相談になる。これは意義のあることだと思っております。
(問)現在、衆院の解散があるかどうかと取りざたされているわけですが、考え方として、こうした状況下で政治空白をつくってはいけないのではないかという一方で、やはり政府として思い切った手を打つには、現在、国会がねじれているわけですから、早期に解散・総選挙を行って、直近の民意を確認した上で、思い切った対策を打っていくべきではないか、そういう2つの考え方があるのですが、大臣はどちらの考えですか。
(答)そういう質問は、麻生さんに私がしたいくらいなので。
(問)大臣は、どう考えていらっしゃいますか。麻生さんの判断はともかくとして。
(答)結局、私がどう考えても、麻生さんが自分で決めるとおっしゃっているので、考えるのは労力の無駄遣いという感じなものですので。
(問)昨日の自民党の金融対策プロジェクトチームでも、地域金融機関に対する予防的な資本注入の枠組みというのが必要なのではないかという声がかなり出たようですけれども、今般、大和生命は特異な経営モデルとしても、保有する金融資産が劣化しているということは、その他の地域金融機関も同じかと思います。こういう状態の中で予防的に資本注入する枠組みというのは、必要であると考えられますでしょうか。
(答)これは、なかなか難しい問題で、そういうシステムがずっと続いてあれば、いろいろ機動的に対応できるのですけれども、今の時期にそういうシステム、仕組みが必要だとやった途端に、何か危ないのではないかということを発信することにもなりかねないので、よほど慎重にやらないと、騒ぎを起こすのではないかと思っております。今のところ、必要ないと判断していますけれども。
(問)貸し渋りの話ですけれども、景気ウォッチャー調査などを見ていると、地方の建設、不動産関連の業者の間で、既に貸し渋りが一時期より強烈になっているというような声があります。そうした中で、昨日、保利政調会長が、内需を拡大するためには、やはり公共事業をやるしかないだろうというようなことを麻生総理におっしゃったようなのですけれども、追加経済対策の一環として、このような政策手法について、大臣はいかがお考えでしょうか。
(答)昨日、私は、実は柳澤さんと園田さんに会って、「何でもいい、やってしまったらどうか」と言ったら、「そういうことはやってはいけません。財政規律はきちんと守らなければいけません」と言って党の方から説教されたくらいなので、多分、自民党も我々も、いわゆるばらまき的な公共事業で経済対策をやろうというのは、竹中さんにもしかられる可能性もあるから、やらないわけです。
(問)公共事業ではなく、また予防的な資本注入でもなく、どういった方法で地方経済を支えていくというお考えでしょうか。
(答)今晩から考えようと思っています。
(問)先ほどの地域金融機関への公的資金による資本増強の件ですが、地域金融機関の経営ということだけではなくて、地域の中小企業に対して貸し出しのための余力をつくると、こういう観点から見た場合には、いかがお考えでしょうか。
(答)余力をつくるという意味では、今度の補正予算というのは相当のものだと思います。信用保証と政府系金融機関で9兆円ぐらいのお金を用意できますし、特に信用保証の方は無担保、無保証で、しかも、実際お金を出す金融機関の責任を取り払っていますから、非常に貸しやすくなる、借りられる、借りやすくなる、そういう意味では効果がありますけれども、今日、閣議で二階さんに会ったら、「追加であれ、もう10兆ぐらい増やそうや」と言っていましたから。
(問)追加で10兆ですか。
(答)10兆。だから、全部で19兆になるのかな。そうやって気合をかけていましたから、そういう方面のことも何かやろうという考え方が出てくると思います。
 これは、立ち話の話ですから。別に、大きくやろうやという意味だけですから、お金の額は問題ではないのです。

(以上)