与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年9月19日

(平成20年9月19日(金) 17:45~18:17  於:記者会見室)

1.発言要旨

 本日、月例経済報告等に関する関係閣僚会議が開催されましたので、その概要を御報告を申し上げます。
 初めに、現在、欧米を中心に過去に例がないような金融不安が起こっており、政府・日銀が緊密に連携して、①国際協調は惜しまない、②実態の把握に最善を尽くす、③貸し渋りなどが起きないように万全を期す、これらのことが重要であると与党とも認識が一致いたしましたことを御報告申し上げます。
 次に、報告の内容でございますが、景気の基調につきましては、「景気は、このところ弱含んでいる」としております。これは、引き続き生産は緩やかな減少となっていることなどを踏まえたもので、先月から判断を変えておりません。
 個別項目としては、これまでおおむね横ばいとなっていた設備投資について、4-6月期の実績が弱めの数字であったことから、「弱含んでいる」と判断を下方に変更いたしました。また、我が国経済の先行きについて、当面、弱い動きが続くとみられております。ただし、アメリカにおける金融不安の高まりや株式、為替市場の変動などから、景気がさらに下振れするリスクが存在することに留意する必要があると認識しております。
 なお、世界経済の成長鈍化及び世界的な資源・食料価格の高騰といった状況を踏まえ、安心実現のための緊急総合対策を8月29日に決定いたしました。また、昨日、日本銀行が金融調節の一層の円滑化等のため、各国中央銀行との協調対応策を決定したことを記述いたしました。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)先ほど、大臣最初におっしゃられた「現在、金融不安というのがこれまで例のないものである」ということの一連の中で、「貸し渋り等を起こさない」ということで一致したということなんですが、今、大臣先ほど言われたことというのは、今回の閣議の中で一致して、何かその認識として一致したと、こういう理解でよろしいんですか。
(答)この件は、諮問会議でも意見が一致しておりますが、与党の皆さんにはお話をしてなかったわけで、月例経済報告の中で政府・与党の認識を一致させる必要があるということで、皆様方に御了解をいただきたい旨申し上げましたところ、認識は一致しているという了解をいただいたので、皆様方に御報告しているところでございます。
(問)今回の中で、恐らくポイントが、海外の判断状況について、やや厳しめに見て、日本の経済の先行きについても警戒を強めるということだと思われますが、その海外経済、また改めて、特に米国金融不安について、どのようにご覧になっているかお伺いしたいんですが。
(答)アメリカでは、かなりスピード感を持ってリーマン・ブラザーズはチャプター・イレブン、あるいはAIGに対してはFedが資金を供給する。また、今日の動きでは、最終的には決まっていないと思いますけれども、財務長官、Fedのバーナンキ議長、また議会の関係者が集まって、以前S&L危機のときにつくりましたRTCのようなものをつくって、不良債権の引き受けをやる仕組みはどうかということも検討をされているようでございます。
 したがいまして、アメリカの対応は極めて迅速だと私ども評価をいたしますし、各国中央銀行との協調もうまくいっていると思いますけれども、かなり根の深い金融不安でございますから、一歩一歩着実にこの状況から抜け出すということに努めていかなければならないわけですけれども、これが数週間とか数カ月で全部きれいに片がつくというものではなくて、やはり多くの専門家が、やはり1年ぐらいは続くであろうと。また、この金融不安が実体経済にも影響を与えてくるということでございますから、外需に依存する部分も多い日本の経済には、当然のこととして影響が出る。また、金融面では、例えばリーマン・ブラザーズに債権を持っているところ、あるいはリーマンの社債を持っているところは担保で確保している以外のところは損失になる可能性もあるわけでして、金融面でもマイナスの影響が出てくる、そういう可能性はあるわけでして、やはりそういう面からの日本経済の下振れリスクは存在するということを、正直に記述したものでございます。
(問)先ほど大臣が貸し渋りのところで言及されたかと思うんですが、貸し渋りということになってくると、補正予算をきちんと早めに通すということが重要になってくるかと思いますが、そこの認識について、再度確認したいんですが。
(答)これは、補正予算の規模は1兆8,200億と、10年前の補正予算とは比べ物にならないほど額は小さいんですけれども、やっぱりその基幹をなす部分というのは、中小企業に対する信用保証制度、中小企業金融などが含まれておりまして、中小企業が日本の雇用の7割を支えているということを考えれば、こういうものを確実に実現するというための補正予算は国会で通過させるべきものと私は確信をしております。
(問)先ほど実体経済に影響が出てくる可能性もあるというお話だったんですけれども、今日、東芝が通期の業績予想を大幅に下方修正していて、既に実体経済に影響が出始めているのではないかという見方も市場ではあるんですけれども、そのあたりの御認識について。
(答)既にサブプライム問題が問題として出てまいりましたときから、全体として日本の経済界も米国の経済界も、将来に対する見方というのは、強いものではなく弱い見方があって、そういう中で、やはり設備投資を始め、いろいろな面で弱気な経営方針になってきたと思います。また、多分外需も米国経済が減速する中で、それぞれの企業によって影響は違うと思うんですけれども、影響が出ていると思います。
 東芝のケースは、まだ私は検討しておりませんけれども、多分外需も相当収益が下方修正されたことに貢献しているんではないかと思っております。
(問)今日、国会で財金委で日銀総裁が現下の経済情勢についていろいろ御答弁なさいましたけれども、これは大臣は財金委には呼ばれなかったんでしょうか。それとも何かあったんでしょうか。
(答)呼ばれてもいいように準備をしておりまして、参議院の庭で待機をしていたんですが、与野党の協議がまとまらなかったようで、最終的にはお呼びいただけなかったので、出席はいたしておりません。
(問)昨日、麻生幹事長が秋田での街頭演説で、リーマンの経営破綻を引き合いに、世界恐慌に陥る可能性もあるというようなところまで厳しい認識を示していらっしゃったんですが、大臣はそのような可能性はあるとお考えですか。
(答)我々は、不安の連鎖を起こさないように努力をするという務めがあると思っておりまして、何をもって世界恐慌と呼ぶか、その定義は知りませんけれども、国民あるいは世界の方々が無用な不安や不信を抱かないように努力するのが、やはり政府の務めであり、中央銀行の務めであると思っております。
(問)もう1点、今日の会議で特に与党側から追加の経済対策というものの必要性について言及はありましたか。
(答)与党からの発言はたった一つでございまして、生活必需品、中でも買い物の頻度の高いものをきちんと集計したほうが生活と物価との関係がより鮮明になるという御注文があっただけで、追加の景気対策という話は一切ございません。
(問)今の注文はどなたから。
(答)公明党の山口政調会長からございました。
(問)内閣府が7月に出している経済見通しの試算の中で、日本の景気の先行きの見通しについて、まず世界経済は来年にかけて減速から緩やかな回復に向かうと。それを受けて、日本経済も緩やかな回復をしていくと見込まれるというような見通しを示しているんですけれども、今先ほど大臣がおっしゃったように、こうした金融関係の不安が1年くらい続くということを先ほど大臣おっしゃったと思うんですが、となると日本経済の回復の時期というのは、内閣府が考えているよりも後ずれする可能性があるということなのでしょうか。
(答)もちろん、7月とは多分状況が違っていて、悪い条件が追加されたと考えざるを得ない。内閣府は、7月にはそのとき与えられた条件の中でベストな判断をされたと思いますが、それに加えて深刻な金融不安が起きているというマイナス要素が加わったということであると思っております。
(問)アメリカの金融不安に関連して2つお伺いしたいんですけれども、先ほど無用な不安を起こさないようにベストを尽くすということなんですが、アメリカで今議論になっているRTC構想、これはかなり効果を持つというふうにお考えになるのかというのが1点と。先ほど1年ぐらい続くと予想されるのは、アメリカの金融不安が1年程度まだ続くという見方なんでしょうか。2つお伺いしたいんですが。
(答)それはわかりませんが、まずRTCの効果から申し上げますと、これは会社を清算する、あるいは不良債権を売却する、不要な不動産を売却して資金を得ると、いわば緊急時に投げ売り状態になります。そうなりますと、持っている財産の価値というものは劣化してしまうということと、動産、不動産の処分ができないという問題もあります。したがいまして、動産、不動産の処分をできる状況をつくる。なおかつ、適正な価格で損切りをすると、この2つをやりませんと、なかなか清算は進まないということでございまして、不良部分を切り離すときには、そういうRTCのような受け皿があって、資産が適正に評価され、また量的に供給過剰になっても、それを引き受けるだけのキャパシティーを持った組織というものがどうしても必要だと。そういう意味では、今アメリカでRTC構想が練られているというのは、論理、必然のことだと思っております。
(問)2つ目の質問に対するお答えは。
(答)どのぐらい続くかというのは、極めて難しい予想ですけれども、1日、2日とか数週間とか、数カ月で解決する問題ではないという認識は持って行動しなければならないということを申し上げたわけです。
 これは、やはりアメリカの住宅市場が底打ち感が出てくるということが、まず第一歩だということを言われる専門家が多いというふうに私は理解しております。
(問)今回、海外経済について、9月で景気は減速の動きに広がりが見られるというようなことに月例ではなっておりまして、久々に「回復」という文字がとれているということで、ヨーロッパも既にもうかなり後退局面になっているということで、アメリカ以外にもやはり世界全体に景気減速が広がっていることが、やはり日本の景気の先行きにかなりマイナスになるという認識でよろしいんでしょうか。
(答)それは、外需に依存している部分も多いわけですし、やっぱり日本が繁栄するためには、同時にどの地域であれ、世界が繁栄しているというのは、1つの需要の必要条件でありますので、ヨーロッパであれ、アメリカであれ、東南アジアであれ、中国であれ、やはり経済が減速をしていきますと、当然のことながら、日本に直接、間接の影響があるというふうに考えなければならないと思っております。

(以上)