与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年8月29日

(平成20年8月29日(金) 16:45~17:02  於:共用220会議室)

1.発言要旨

 安心実現のための総合対策を政府・与党及び経済対策閣僚会議で合意いたしましたので、ポイントを御説明申し上げたいと思います。
 表題は、「安心実現のための緊急総合対策」ということになっております。この対策の基本的立場は、政府・与党は、まず第1に、内外景気の急速な減速と経済先行きに対する閉塞感、第2に、物価上昇と賃上げの不全との板ばさみになっている国民の痛み、第3には、医療・年金・子育てなど生活に関する国民の不安、これらの問題に真正面から取り組むことを最優先課題という、そういう立場でできる限りのことをできるだけ早くやろうと、超特急でまとめた訳でございます。
 ただし、政府の使えるお金は限られてございますから、そう大きな予算にはならない訳でございます。しかし、この総合対策というのは、1回限りの経済対策ではありません。いわば他段階ロケット方式とも呼ぶべきものでございまして、連続的に日本の経済や国民生活の後押しをすることを狙っております。
 本日は、その第1弾目でございまして、対策の全体像をまとめて、優先すべき政策目標や重点施策を明確にしたつもりでございます。
 今日、総理は財務大臣に補正予算編成の取り組みの指示をいたしましたので、明日からは第2弾として補正予算という形で施策の早期実行を図ってまいります。
 第3弾としては、年末に行われる税制の抜本改革、また21年度予算編成などの中で、更に安心実現と改革加速のための予算、税制、各種制度改革など、第2弾をはるかに上回るインパクトの施策を、第2弾に負けない規模を持って切れ目なく実行してまいりたいと思っております。
 今回の対策のポイントを幾つか申し上げたと思いますが、まず第1に、予算の規模、総事業の規模でございますけれども、使い道については、旧来型の公共事業増、あるいは公共事業の積み増しというものを中心とした景気対策という形はとっておりません。不測の事態や痛みに対する緊急避難の施策と、日本にとって必要な構造改革の実行加速のための施策、これらに対象を絞ったつもりでございます。
 一方、財源につきましては、補正予算のための赤字公債は出さないという総理の御指示を受けまして、財務大臣が財源捻出に最大限の努力をいたしまして、その結果が1兆8,000億という規模でございます。
 中小企業金融につきましては、金融情勢が悪化しておりまして、貸出態度も硬くなっております。また、原材料高のしわ寄せも中小企業に及んでおりまして、やはり中小企業金融というものに対しては、9兆円規模の資金繰り支援措置を講ずることといたしました。
 今からちょうど10年前の金融危機の際にも、大規模な金融支援策を行いましたけれども、今回は世界経済情勢の変化にも備えて、予防的に万全の措置をとったものでございます。念のため中小企業の規模を申し上げますと、日本の中小企業は全ての雇用の7割を受け持っていただいておりますし、また企業数では 99.7%と圧倒的な数が中小企業でございまして、国民の雇用の場そのものでありますし、我々としては、国民の職場の防衛というためには、思い切った措置が必要であると判断をいたした訳でございます。
 第3は、国民の不安の解消でございます。国民の生活に対する不安の解消に向けて、色々な措置をまとめました。本日発表の例えば物価指標に示されているように、物価高の進展は、政府・与党としては真剣に受け止めなければならない事態でございますし、できる限りの施策を講じていかなければならないと私どもは思っております。
 そういう観点から、特別減税など、臨時異例の単年度の措置として平成20年度にこれを実施するために、規模・実施方式等について、財源を勘案しつつ年末の税制抜本改革の議論に合わせて、引き続き検討することとなりました。
 高齢者医療については、70から74歳の方々の医療費自己負担見直しの凍結を継続することや、長寿医療制度被保険者の保険料負担軽減継続などを決めたところでございます。また、新型インフルエンザ対策の強化や、産科・小児科などの地域医療対策にも重点を置いたつもりでございます。
 高速道路料金につきましては、運送事業者の燃料対策という観点のみならず、地域経済の活性化のための効果的な料金引き下げ措置を講ずるとの方向性が与党主導で初めて打ち出されたものでございます。
 消費者政策の抜本強化では、消費者庁を来年4月に創設するとともに、地域における一元的な窓口整備や情報共有体制の整備を前倒しで進める。また、都市部を中心に10万人規模の待機児童を集中的に解消すべく、補正予算で手当を講じることとしております。
 第4は、「持続可能社会への変革加速」でございます。
 低炭素社会への変革に向け、世界を主導していくことが石油価格高騰対策としての王道であり、同時に日本の経済の競争力を高める所以であると考えております。太陽光発電やエコカーの導入の抜本的拡大のための種々の政策資源を傾斜配分していくという考え方で取りまとめました。
 また、農業については、食料自給率50%、これを実現するための強い農林水産業づくり、これを掲げました。自給率50%というのは、政府の政策としては初めてのことでございます。したがいまして、従来型の減反を中心とする政策から、大きな転換を図る、これを考えている訳でございます。
 第5番目は、新価格体系への移行でございます。
 中小企業資金繰り対策に加え、下請け事業者保護の強化のための措置、燃油比率が高い個別業種に対する支援強化、生産性向上、地域活性化のための措置などを盛り込んでおります。
 また、控え目に書かれておりますけれども、経済界には働く方々の賃上げというものを要望をしているところでございます。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)施策に盛られた特別減税の実施、これについてお伺いしたいんですが、こちらには家計への緊急支援としては、定額控除方式による所得税、個人住民税の特別減税を単年度の措置として実施しますとあるのですけれども、これについては、自民党内にすら一律の定額減税というのは明らかなばらまきだという声があったのですけれども、まず大臣御自身の御認識として、これがいわゆるこれまで大臣が否定されてきたばらまきに当たるのかどうかをお聞かせください。
(答)これは、特別減税を単年度の措置としてやったらどうかという御提案。しかし、財源のことも考えないで、単に減税するというのは、やはり後の世代にツケを回すということにもなるという考えも与党の中にはありまして、特別減税を20年度の措置として実行する場合には、幾つかの条件がついている訳でございます。
 これは、1つは単年度の措置であるということ、規模、また実施の方法、内容については、やはり財源のことを勘案しつつやらなければならないということが表明されていること、第3には、この税制改正は単独のものではなくて、やはり今年度12月に行われるであろう税制抜本改革に合わせて結論を出されるべきことということでございますから、この3点を考えますと、いわば無軌道な減税を考えている訳ではありません。
(問)ただ、一方でこの政策効果については、こちらで特別減税の目的が家計への緊急支援と掲げられているんですけれども、その目的を果たすには、お金持ちも収入の少ない人も一律に減税するのではなくて、社会保障なんかの歳出の方で対応する方が、よりターゲットが絞れて効果が高いのではないかという観点もあるかと思うのですけれども、これについてはどうでしょうか。
(答)長い間日本の所得再配分というのは所得税が担い、また社会保障政策の中でも、傾斜配分が所得再配分を担ってきた2つのものだと私は思っております。
 一方では、所得税が世界的にフラット化されてきた、また日本も所得税制については、その傾向を一応取り入れた。地方税、交付税合わせて所得税の最高税率が 50%のところまで下りてきた。課税最低限は325万であると、こういうようなこと、また非常に他段階である所得税率というものを極めて簡素なものにしたという中で、所得税の持っていた所得再配分機能というのは低下してきたと私は思っております。
 したがいまして、私の個人的な意見でございますけれども、次の抜本税制改革の中では、所得税が持っていた所得再配分機能をもう一度取り戻すということも考えなければならないと思っております。
 今般の減税のお話も、私どもとしては理解できる点はたくさんある訳でございますけれども、やはりこれは臨時異例の措置として考える、また財源のことも考える。また、税制抜本改革、所得税の体系の改革の一環としてとらえることによって、正しい税制改正と評価されるようにしなければならないと考えております。
(問)重ねてお伺いいたしますけれども、ここに掲げられている家計への緊急支援という政策目的に達するに当たって、定額減税よりも社会保障などの歳出の方がより必要な人にお金が届きやすいのではないかという指摘があるのですけれども、政策効果として、そういう歳出より一律の減税の方が優れているとお考えでしょうか。それとも、そうではないのでしょうか。
(答)いずれも家計の効果はありますし、消費購買力を増すというのは理論的には所得税制の方が高いことは間違いない訳ですけれども、そういう所得減税が正当化できる財源の問題とか、あるいは所得税制全体の体系から考えて正当化できるか、所得再配分機能からいってどう考えるか、そういう総合的な観点を勉強していただいて、結論を出していただかないと、この問題を単独で取り扱って、単独で結論を出すということは、今御指摘のようにばらまきというそしりを免れないと私は思っておりますから、与党の皆様方は正しい考え方のもとで両党の考え方をまとめられたものと思っております。
(問)2点あるのですけれども、1点目は定額減税の件なのですけれども、平成10年にも2回にわたって行われていまして、その時の財源は確か4兆円規模で減税が必要だということだったと思うのですけれども、今回の規模については、書かれていません。年末にかけて議論していくということになっているのですけれども、どのくらいの規模を念頭に置いて仰っているのか。前回の平成10年の規模を見ると、これはやはり相当な額になってくると思いますので、そこら辺をどうお考えになっているのかということが1点。
 今大臣が仰った所得税の抜本的な改正、所得税の体系全体を考えてというお話なんですけれども、そこら辺をもう少し具体的に仰っていただけるとありがたいんですが。
(答)財源との相談で規模は決まってくる話で、果たして借金までして減税をするということが可能かどうかというのは、これから論議をしていただきたいと思っております。
 所得税がどうあるべきであるとかと。これは、私の個人の考え方を申し上げるしかないのですけれども、私は、大変象徴的なのですけれども、税制抜本改革が行われるときには、最高税率は少し上げていただいた方が全体のバランスがとれるのではないかなと思っております。それ以上のことは実は余り考えておりません。
(問)今回の総合対策の規模についてですが、国費投入が1兆8,000億、事業費で11兆5,000億程度ということで、今後、定額減税の実施いかんではもう少し膨らんでくるのかと思います。今回、財布との相談というところで、限られた財源の中で実施ということですが、大臣御自身のお考えとして、この1兆8,000億、11兆5,000億、将来の所得税減税についてのもろもろの結論が出たんですが、財政規律との兼ね合いで、この財政規律という部分が、今回の対策の中で守られたのか、今後厳しいということになるのか、その辺の御見解をお聞きしたいと思います。
(答)まず、単純に言えば赤字国債を出さないで、手持ちの動員できる財源で補正予算を組むということになりましたので、財政規律は守られたと思っております。今、政府が課せられている財政規律のメルクマールは、やはり何といっても2011年には基礎的財政収支の黒字化を達成する。それから、2015年以降には、対GDP比、国債比率を安定的な水準で保っていく。できれば、2020年代には少しは借金返しができるような体制を整える、おおむねそういうことが我々に課せられた課題でありまして、今回のことは2011年の目標にも抵触しておりませんし、また赤字国債というものも出さないので、それなりの財政規律は守られたと思っております。
(問)今の質問に関連することでお尋ねします。
 1.8兆円、これは秋の補正予算で計上すべき国費の額というイメージだと思うのですけれども、今のお話では、手持ちの動員できる財源で赤字国債に頼らずという御説明がありましたけれども、これには建設国債も発行は想定していないという理解でよろしいのでしょうか。
(答)私が申し上げているのは、赤字国債という言葉で、建設国債という言葉は使っておりません。建設国債の対象となる適格な事業というものも当然あろうかと思いますけれども、財源の話は、伊吹財務大臣のもとで考えてくださっていると思っております。
(問)それともう一つ、手持ちの動員できる財源ということですけれども、今回1.8兆円というのは、税外収入とか既存経費の不要額であるとか、あるいは前の年度からの剰余金とか、そういうオーソドックな手法で出てくる財源だけで賄える範囲という理解でよろしいのか、それとも一部の言い方では埋蔵金があるとも俗に言われるような特別会計などにある積立金などを法改正で取り崩すということも想定しているのか、そこはいかがでしょうか。
(答)埋蔵金と称されるもの以外で動員できる法律改正不要の財源でございます。

(以上)