与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年8月7日

(平成20年8月7日(木) 17:35~18:08  於:記者会見室)

1.発言要旨

 本日、月例経済報告等に関する関係閣僚会議が開催されましたので、その概要を私から御報告申し上げます。
 景気の基調判断については、「景気は、このところ弱含んでいる」と下方に変更しております。1つは、アメリカ経済減速の直接・間接の影響から、輸出の弱含み状態が定着したことなどを受け、生産が2四半期連続で減少し、緩やかな減少傾向がはっきりとしてきたこと。第2は、生産は在庫調整局面に入った可能性があることから、当面は減少傾向が続くと見られること。第3は、雇用情勢が弱含み、実質所得が下打ちされていることから、当面は個人消費の回復を見込みにくいこと。これらのことから、このように判断いたしました。
 輸出、生産、雇用情勢の3項目については、個別の判断も下方に変更しております。
 我が国の経済の先行きについては、当面、弱い動きが続くと見られ、アメリカ経済や株式・為替市場、原油価格の動向等によっては、景気がさらに下振れするリスクが存在することに留意する必要があると認識しております。
 政策の基本的態度については、変えておりません。ただし、原油、食料、飼料、原材料等価格の高騰の影響を踏まえまして、水産業についての抜本的対策を含め、6月26日に取りまとめました原油等価格高騰対策を着実に実施する等としております。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)経済の基調判断なのですけれども、今回、「回復」という文字が取れて、「このところ弱含んでいる」という下向きの方向性を意味する表現になったわけですが、まず大臣の認識として、既に景気は踊り場状態ではないという御認識ですか。
(答)町場の景況感というのは、以前から大分悪化しておりまして、統計上、いろいろな数値が出てまいりまして、「弱含んでいる」という表現に変えましたのは、実際、数字の上でも日本の経済が、まさに若干、踊り場状態から弱含みの方向に極相が移動したということを、率直に申し上げた表現でございます。
(問)一方で、実際に後退局面に入っているかどうかは、当然、事後的に厳密な分析を経て決まることなのですけれども、大臣の御認識として、現在は景気後退局面に入っているという御認識ですか。
(答)専門用語であまり使われない表現なので、「後退」という言葉は使いませんけれども、まさに文字どおり弱含みであるというのは、日本の経済が必ずしも楽観視できない状況に入りつつあるということを、率直に表現したものであると思っております。
(問)先行きについて、月例経済報告の記述から、海外経済の回復とともに輸出が戻って、日本経済も回復していくというシナリオの記述が一切なくなって、当面、弱い動きが続くと見られるという記述だけになったのですけれども、大臣は、日本経済の回復の道筋と、あるいはその時期、それについてどうお考えですか。
(答)将来のことを正確に見通せるほど経済は簡単なものではない。国内要因もありますし、国際的な要因にも影響されるわけですが、今回は、月例経済報告の中でも述べましたように、やはりアメリカ経済を中心とした外的な要因に、日本なりに影響を受けているということでございます。
 したがいまして、日本経済が回復局面にもう一度行くためには、やはりアメリカを初めとした諸外国の経済の状況に依拠しているところも多いわけでございます。アメリカの政府、民間の予想ですと、いずれ回復局面に入るということでございますが、しかしながら、金融システムが完全に安定するまでどれだけの時間がかかるかということは、日本においては予測できないこともありまして、若干の日本政府の予想にもぶれが生じる、また、日本経済にもリスク要因は存在し続けるということを言っているわけでございます。
(問)要するに、日本経済が回復軌道に戻る時期というのは予測しがたいと、そういうことでしょうか。
(答)そんなことはなくて、アメリカ経済を初め各国の予想は、そう長い時間をかけずに経済は戻ってくるという予想でございますから、それと並行して日本の経済も戻ってくるというふうに確信しております。
(問)今、取りまとめていらっしゃる最中の経済対策ですけれども、今回の月例経済報告の結果を受けまして、何らか変更される箇所というのはございますでしょうか。例えば、中・長期のスパンでの取組よりも、短期的なスパンでの取組のウエートが高まるだとか、何かしらそういった変更というのはあり得ますでしょうか。
(答)福田総理が指示された経済対策の必要性と根拠が強まったというふうには思いますけれども、本日の月例報告の内容によって経済対策がドラスチックに変わるということは、想像しておりません。
(問)日本経済は、回復にそれほど時間がかからないというお話でしたけれども、タイムフレームというか、年内はスローダウンが続いて、来年から回復に向かうのか、そのあたりのスケジュール感というのはお持ちでしょうか。
(答)バブル経済が崩壊した後というのは、相当長い時間がかかるということは予想されたわけでございますし、その経済回復は時間がかかるということについては、皆が覚悟して取り組んだわけでございますけれども、今回は、日本経済自体の体質はしっかりしていると。いわゆるそれぞれの企業の3つの過剰と言われるもの、すなわち、設備、借入、あるいは雇用、そういうものもきれいになっておりますし、それぞれの企業の体質は強まっているというふうに考えますので、日本経済の内在的なマイナス要因はないと。それによって今回の状況が招来されたものだというふうには思っておりません。
 したがいまして、対外的な要素、要因が解決されれば、日本経済はおのずと元に戻ると、それは確信を持って申し上げられます。
(問)今日出席された方から、簡単で結構なのですけれども、どんな意見があったのか。懸念の声は、多かったのでしょうか。
(答)幾つか議論がありますが、1つは、やはり物価指数については、横長の資料の11ページにありますけれども、やはり消費者が毎日使うような品物の物価水準というものが、国民の生活実感としての物価上昇だと。これが3.5%になっているということも考慮しながら、政策的な判断をしていってほしいと、そういう御意見がありました。そのほか、やはり自民党からは、自民党も経済対策を急いでいるという意見もありました。その他、大きな意見はございませんでした。
(問)戦後最長の景気回復局面が、大きな節目を迎えたのですけれども、この戦後最長の景気拡大局面は、とかく実感がないというふうにも言われておりますし、地方と中央との格差が広がったというふうにも言われているのですけれども、改めてこの大きな節目を迎えた中で、この戦後最長の景気拡大についての大臣なりのお考えをお聞かせ願えますでしょうか。
(答)その間、やはり実際の企業の業績は回復したということはあっても、労働分配率は下がり続けたということがあって、国民の実質購買力が果たして上がったかどうかということもあって、多分、実感というものがなかったのだろうと、私はそのように思っております。
(問)対策に関連して、1点お伺いしたいのですけれども、常々「ばらまきはしない」というふうに何度も繰り返しておっしゃっていますが、「ばらまき」という概念が不明確なものですから、大臣がお考えになる「ばらまきではない」というのは、どういうことを指していらっしゃるのかお教えいただけますでしょうか。
(答)ケインズ型の経済政策を指しておりまして、いわゆる有効需要を創出するためには、穴を掘って埋めても有効需要だというのがケインズの教科書の中にありますけれども、有効需要を財政出動によって無理やり創出するという、以前やりました公共事業を中心とした有効需要の創出の方法というのはとらないと。やはり、経済政策をやる場合、予算を考える場合、国民の生活に直接・間接寄与するとか、あるいは日本の経済の競争力に寄与するとかという、やはり一定の目的や、大げさに言えば哲学があっての支出というのは、ばらまきには当たらないと、そのように思っております。
(問)基調判断なのですけれども、今回、「弱含んでいる」という言葉を、2001年5月以来、使ったということなのですが、今の経済の状態は、その当時、景気後退期だと思うのですけれども、それと同じくらい悪いという理解でよろしいのでしょうか。
(答)平成に入ってからは、平成2年に株価が急落する、土地の価格も急落する、経済全体が縮小傾向を示す、それから金融機関の状態がどんどん悪化していくという、何年にもわたっての経路をたどりました。
 しかしながら、2000年代に入りましてからは、経済は落ち着きを取り戻しておりまして、先ほども御質問がありましたように、それぞれの国民は実感がそう強くなかったとはいえ、やはり指標的には、経済は順調な歩みを示してきたと思っております。長い間続いたその順調な歩みというのが、やはりここで曲がり角というものが来たということは、1つはやはり日本経済の循環的な要因もあるでしょうし、あるいは、アメリカ経済を中心とした対外的な経済要因もあるでしょうし、また、原油や食料の価格の高騰という原因もあったでしょうし、非常に複雑な要因で現在に至っておりまして、1つの要因に帰するとか、あるいは過去の日本の経済と直接比較するということは、できないのではないかというふうに私は理解しております。
(問)経済対策の骨子なのですけれども、いつぐらいにアナウンスされて、しかも、その効果が実感できる政策という指示がございましたけれども、具体的にどんなものが盛り込まれそうでしょうか。
(答)結局、やはり経済対策をやる場合には、やや大げさな表現を使えば、理念とか哲学というものは必要なのだろうと私は思っておりまして、それに対する政府・与党とのきっちりした打ち合わせ、合意というものが、まず第1段階。その理念や哲学に基づいてどういう政策を展開していくかと。これは、各省庁や党からいろいろな考え方を、今、集めております。
 しかし、まず第1は、経済対策を行う理念をきちんと国民の前にお示しするということが、作業の第一歩であるというふうに思っておりまして、その作業は急いでおりますので、間違いなくお盆前には御提示できると確信しております。日程につきましては、もう一度、明日、官房長官のところにお伺いして、きちんと決めたいと思っております。
(問)「お盆前」というのは、次回の閣議の15日当日も含まれるのでしょうか。「お盆前」という言葉の定義は。
(答)もっと前という意味です。─「もっと」という表現が正しいかどうかわかりませんが、それより以前です。

(以上)