第 166回国会 衆議院災害対策特別委員会 溝手内閣府特命担当大臣(防災)所信表明

 第166回国会における御審議に当たりまして、災害対策に関する私の所信を申し上げます。
 昨年は、多数の死者が発生した平成18年豪雪にはじまり、平成18年7月豪雨、台風第13号、10月上旬の低気圧、北海道佐呂間町における竜巻など、各地で様々な災害が発生しました。これらの災害によりお亡くなりになられた方々とその御遺族に対し、深く哀悼の意を表しますとともに、不安で不自由な生活を余儀なくされておられる被災者の方々に心からお見舞い申し上げます。
 これらの災害については、引き続き、被災者への支援や被災地の復旧・復興に政府一体となって取り組んでまいります。なお、新潟県中越地震については、これまで着実に復興が図られておりますが、一方で、今なお仮設住宅での生活を余儀なくされている方がおられるなど、地域再生への道のりはまだ半ばです。今後も引き続き、この地域が魅力ある地域として復興されるよう、力を尽くしてまいります。
 続きまして最近の防災対策について御説明申し上げます。
 まず、大規模地震対策については、近い将来発生する可能性が指摘されているものについて、予防段階から発災後までを含めた全ての対策のマスタープランである「大綱」、地震発生時の政府の広域的活動の手続きや内容を具体化した「応急対策活動要領」、定量的な減災目標と具体的な実現方策等を定める「地震防災戦略」を策定し、想定される甚大な被害の軽減に取り組んでおります。
 東海地震及び東南海・南海地震については、これまで大綱等の計画を策定してまいりました。今後とも、見直しを行いながら、具体的対策の充実を図ってまいります。
 日本海溝・千島海溝周辺の海溝型地震については、昨年2月に、「大綱」を中央防災会議において決定するとともに、地震防災対策を推進すべき地域の指定を行いました。今後、「地震防災戦略」や「応急対策活動要領」を策定し、「大綱」の具体化を図ってまいります。
 首都直下地震については、これまで大綱等の計画を策定したところですが、特に、この地震では、膨大な数の避難者の発生や帰宅困難者の滞留による混乱の発生が想定されます。このため、中央防災会議に設置した専門調査会において、これらの避難者や帰宅困難者を極力減らすための対策などについて具体的検討を行ってまいります。また、発災時においても各省庁が機能を継続できるようにするために策定する業務継続計画の策定作業を支援するため、「中央省庁業務継続ガイドライン」を取りまとめることとしております。さらに、首都直下地震の復旧・復興対策についても検討を進めてまいります。
 また、近畿圏、中部圏の内陸直下の地震については、昨年12月に、想定される地震の震度分布を公表いたしました。今後、これらをもとに、被害の想定と取るべき防災対策について検討してまいります。
 次に、大規模水害対策について申し上げます。近年、異常気象と地球温暖化との関係も指摘されておりますが、一昨年、米国を襲ったハリケーン・カトリーナによる高潮災害をはじめとし、世界的に大規模な水害が多発するとともに、我が国においても集中豪雨が増加傾向にあります。このような状況を踏まえ、昨年6月、中央防災会議に専門調査会を設置し、大規模水害対策に関する検討に着手しております。利根川や荒川等を対象に、被害像を想定し、被害を最小限にするための対策の検討を行ってまいります。
 さらに、火山対策についてですが、我が国は、多数の火山を有する火山国であり、活火山は100余りに上ります。このうち、富士山については、これまでに整備してきたハザードマップや広域防災対策の検討結果を踏まえ、昨年2月に基本方針を中央防災会議で決定いたしました。今後は、これらの経験を活かしながら、全国の活火山について、より効果的な火山防災体制を構築するための火山情報と避難体制のあり方に関する検討を進めてまいります。
 続いて、最近の災害により明らかになった課題への対応について申し上げます。まず、竜巻等の突風対策については、昨年相次いで生じた甚大な被害の教訓を踏まえ、人的被害を軽減する取組を進める必要があります。このため、関係省庁からなる「竜巻等突風対策検討会」を設置したところであり、観測・予測技術の高度化、わかりやすい情報伝達、国民への意識啓発等の取組方針について検討を進め、具体的な対策の強化に努めてまいります。
 次に、災害時における高齢者や障害者などの災害時要援護者対策については、ここ数年の風水害や豪雪による死者・行方不明者のうち、65歳以上の高齢者がその多くを占めており、これらの被害を最小限にしていく取組を進める必要があります。このため、昨年3月に策定した「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」に沿って、引き続き市町村を中心とした要援護者情報の共有や避難支援プランの策定などの取組を促進してまいります。
 さらに、津波対策については、昨年11月と本年1月に千島列島沖を震源とする地震が発生し、沿岸の広い地域に津波警報等が発表されましたが、その際、住民の避難率が低かったなどの課題が指摘されました。このため、避難に向けた住民意識の向上策など政府としての今後の取組方針を取りまとめたところです。今後とも、津波ハザードマップの作成支援、津波避難ビルの整備・指定推進等を通じて、津波避難意識の向上を図り、ソフト・ハード一体となった津波対策を推進してまいります。
 次に、災害からの復旧・復興対策についてですが、被災者生活再建支援法については、平成16年に居住安定支援制度を創設し、支給限度額を100 万円から300万円に引き上げるなどの抜本的な改正を行い、その後も、運用面でさまざまな改善を図ってまいりました。今後とも、支給状況等をつぶさに点検しつつ、制度の適切な運用に努めるとともに、関係方面の御意見も伺いながら、国会の附帯決議の趣旨を踏まえ、制度の見直しなどの総合的な検討を行ってまいります。
 また、激甚災害制度については、昨年10月の低気圧災害において、漁業関係の被害が甚大であったことを踏まえ、指定基準の見直しに取り組んでおります。今後とも、制度の的確な運用を図ってまいります。
 国際防災協力についてですが、世界でも災害が頻発しており、防災は持続可能な開発を進める上で重要な課題であります。一方、防災分野は日本の顔が見える国際貢献において大きな強みと考えております。このため、我が国が開催国を務めた国連防災世界会議の成果である「兵庫行動枠組」を踏まえ、途上国をはじめ各国における災害に強い国づくりを支援する必要があります。私自身、1月に神戸で開催した「国際津波・地震フォーラム」に出席し、途上国の閣僚との対話も行いました。今後とも、アジア防災センターを通じた地域協力など、我が国の知識や技術を活用した国際防災協力を積極的に推進してまいります。
 最後に、災害への「備え」を実践する国民運動の推進について申し上げます。
 災害から安全・安心を確保するためには、これまで申し上げてきたような行政による災害対策を強化し、「公助」を充実させていくことはもとより、国民一人一人や企業等の発意に基づく「自助」や地域の多様な主体による「共助」の取組、さらにはこれらの連携が不可欠であります。このため、政府としては、国民の防災意識の啓発、ボランティア活動の環境整備を引き続き推進するとともに、企業の防災活動を促進してまいります。さらに、昨年4月に中央防災会議において決定した基本方針等を踏まえ、関係省庁、地方公共団体等と連携し、日頃から災害への「備え」を実践する国民運動の具体的な活動が全国各地で展開されるよう努めてまいります。
 以上所管行政について申し述べましたが、今後とも災害対策に全力を尽くしてまいる所存でありますので、木村委員長を始め理事、委員各位の格別の御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
 ありがとうございました。