大田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年6月16日

(平成20年6月16日(月) 18:48~19:03  於:記者会見室)

1.発言要旨

 今月の月例ですけれども、「景気回復は足踏み状態にあるが、このところ一部に弱い動きがみられる。」ということで、若干下方に変更いたしました。
 今、電子部品などの IT関連生産財で注意が必要な状態です。ここで輸出が鈍化しておりますし、それから在庫調整に入っていると見られます。IT関連生産財というのは生産全体を引っ張る傾向にあります。生産というのは景気を見る上では大変重要な指標ですので警戒が必要です。そこで「一部に弱い動きがみられる」と表現しています。
 電子部品デバイスなどIT関連生産財の弱さを受けまして、輸出、生産ともにこのところ弱含んでいると下方に変更しています。企業収益は、原油をはじめ原材料高を反映しまして、3四半期連続の減益になっています。ただ、設備投資、個人消費、いずれもおおむね横ばいの状態にありますので、景気後退とは見ておりません。横ばいの範囲内にあります。足踏み状態にあると、踊り場が続いているという判断をしています。IT関連生産財を除きますと、輸出、生産ともに横ばいの圏内にあります。
 先行きにつきましては、アメリカ経済が持ち直すにつれて、輸出が増加基調になって、景気は緩やかに回復していくと期待されます。ただ、サブプライム住宅ローン問題を背景とするアメリカの景気後退懸念、それから株式・為替市場の変動、原油価格の動向など、景気の下振れリスクは高まっておりますので留意が必要です。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)足下の状況なんですけれども、原油高、原材料高がどのように影響しているか、この点はどのように認識されているかお願いします。
(答)原油高、原材料高が企業収益に影響を与えております。これは特に中小企業にとって厳しい状況です。これが、設備投資にどのように反映してくるか、今注意しながら見ている状態です。今設備投資はまだ横ばいの状態ですけれども、さらに収益が圧迫されますと、設備投資に影響を与えますので、そこは注意しながら見ているところです。
 家計に対しては、食料品、ガソリン価格、いずれも上昇しておりまして、消費者マインドが非常に悪化しています。これは景気ウォッチャー調査などにも表れています。したがって、今、企業、家計両面でマイナスの影響が出てきておりますので、この状態は非常に注意が必要だと思っています。
(問)今回、横ばいの範囲内ということですけれども、また弱い動きという表現をとると、再び復調に戻るのに、第一に米景気の復調というお話をされているんですけれども、一部でやはり住宅の底入れ、かなり先になるんじゃないかという見方もあると思いますが、そこら辺でいつ頃になるとそういう持ち直しが期待できるのか、大臣の見方を教えてください。
(答)いつ頃ということは言えませんけれども、基本はアメリカ経済の減速がどこまで続くかということだと思います。今、戻し減税が4月末からスタートしておりまして、着々と行われていますので、この効果がどう出てくるのかというのを見ていきたいと思っています。住宅価格の下落が止まりませんので、決して楽観はできないと思っておりますけれども、基本はアメリカ経済の減速がどこまで続くかということが大きいと思っています。
 IT関連生産財が落ちているというのも、世界全体の需要が落ちています。これはやはりアメリカ経済の減速が全体として影響していると見ていますので、その点が大きいですね。あとは、この原油高が今後どう動いていくかというところを注目をしています。
 IT関連生産財を除きますと、在庫はそれほど積み上がっているわけではありません。設備投資も横ばいですので、全体として横ばいの範囲内だと、まだ踊り場にあるという判断をしています。
(問)IT関連財の在庫は、消費が下がっていることだと思うんですけれども、これは資源高、食料とかですね、そちらがある程度影響したのか、それともそこら辺とのつながりはあまり感じられないのか、この辺はどうですか。
(答)これに関しては、世界全体の需要が少し落ちているということが影響しています。国内で、例えばデジタル家電が売れないとか、そういうことではなくて、世界全体の需要が減少しております。これはIT関連生産財ですので、半導体であったり、液晶素子であったり、そういうものですね。
 アテネオリンピックの時は、オリンピックが終わった後、生産調整に入っているんですけれども、その時と比較しますと、それほど出荷も伸びてないんですね。アテネオリンピックはオリンピックの前に出荷が伸びて、その後、思ったほど伸びなかったがために、在庫が積み重なったということがありますが、今回はそれほど出荷も伸びていないと。ですから、オリンピックによる変動はそれほど大きくはありません。やはりアメリカ経済の減速などを受けて、世界全体として需要が低迷しているということが背景にあります。
(問)景気動向指数の判断では、局面変化の可能性もあるという判断でしたけれども、その判断と今回の月例経済の判断の下方修正というのは、直接的には関係ないということでしょうか。
(答)景気動向指数の場合は、11項目ですね。これは主に生産に関連したものです。ですから、月例の判断で使用したデータと重なっている面はあります。ただ、設備投資ですとか、家計消費というのは、遅行指数になってきますので、月例の場合はそちらも見て全体的に判断しているということです。したがって、景気動向指数と重なる項目については、当然同じものを見ているわけですから関係はありますけれども、月例経済報告はより広い範囲で家計消費や設備投資まで見て判断しているということです。
(問)アメリカ経済の先行きについて重なるかと思うんですが少しお伺いしたいんですけれども、月例の中での先行きの留意点として景気後退懸念という形で非常に慎重な言い方をされている一方で、日本経済の回復の背景としてアメリカ経済が持ち直すというふうに言及されていると。アメリカ経済が持ち直すと御覧になる理由というのを教えていただきたいのですが。
(答)アメリカでのブルーチップを初めエコノミストの見通しによると、年の前半は低迷するけれども、後半、戻し減税などの財政金融政策の影響で緩やかに持ち直していくというシナリオが描かれております。月例の判断でも大体そういう見方を背景に置いています。時期というのは何とも申し上げられませんけれども、戻し減税の影響などでまた緩やかに持ち直していくということを先行きとして置いてます。ただ下振れリスクというのは当然あります。その減速が思った以上に深くなる、あるいは長引くというリスクはもちろんありますので、下振れリスクが高まっていることには留意が必要だというリスクとして書いてあります。
(問)確認なんですけれども、アメリカ経済については年後半、緩やかに持ち直すということが月例の前提になっていると。
(答)はい。そういうことを背景として置いているということですね。その背景としては、お手元の関係閣僚会議資料の中でも使っておりますけれども、ブルーチップインディケーター、それからアメリカ商務省、まずブルーチップのインディケーターですね、先行きについては。こういうものを参考にしているということです。
(問)土曜日のG8の財務相会合なんですけれども、世界経済に対して資源高と原油高の話を中心に世界経済の試練だという声明が出ていますけれども、大臣の方は声明についてどのような見解を持たれているか、お話願えますでしょうか。
(答)世界経済が直面している動きというのはしっかり認識されたというふうに思います。今、日本も直面して苦しんでいる資源高、あるいは食糧高を含めて、一国で解決できない問題が増えているんですね。世界全体で対応するしかない問題が増えておりますので、それについてG8でもやはり認識がきちんと共有されましたし、いい意見交換がなされているというふうに思います。それぞれしっかりとそういう認識を共有した上で、それぞれの経済がやるべきことをやっていくということが共有されたというふうに思います。
(問)景気後退とは見ていないと仰いましたけれども、これは数カ月前と比べると、景気後退のリスクというのは高まっているんでしょうか。
(答)下振れリスクは高まっていると見ています。踊り場の範囲内ではありますけれども、下振れリスクは高まっていると判断しています。
(問)前月からも高まっている。
(答)はい、高まっている判断しています。やはり大きいのは、IT関連生産財ですね。ここが在庫調整入りしていると見られますので、この点で先行きのリスクが高まっていると見ています。もちろんそれを生んでいる背景がアメリカ経済の減速といった世界経済全体の動向を受けております。
(問)ITの生産調整は通常長引くと理解していますけれども、今回の局面もなかなか長引きそうだというふうに大臣は御認識でしょうか。
(答)前回、2004年の踊り場の時は大体半年より少し長めくらいでしょうか。これはまさに大きさによるわけですね。その前の2000年ですか、ITバブルが崩壊した時というのはもっと大きかったわけですね。ただ、半導体などが使われる範囲も広がっていますし、そこはちょっと何とも申し上げられないですね。IT関連生産財というのはそう古くからあるものではありませんので、経験値を見ても、生産調整が起こった時、それぞれ状況が違うんですね。2000年に起こった時というのは、例えばPCであるとか、半導体が使われていたところも限られていたというようなことがありますけれども、2004年の時はもっと広がっているわけですね。デジタル家電の範囲も非常に広がっているということもありまして、時間は長くなりましたけれども、それほど深かったわけではないんですね。
 ですから、今回ちょっとどういう形で出てくるのか、まだ何とも申し上げられません。今回、さっきちょっと申し上げたアテネオリンピックとの違いでいくと、出荷もそれほど急速に伸びているわけではありませんので、落ち込みも緩やかになる可能性があります。つまり、オリンピックを挟んで大きく崩れるということもないだろうと見ています。
(問)確認ですけれども、2000年2月からの景気拡大局面は今も続いていると。
(答)続いております。踊り場にあるということですね。踊り場というのは回復局面で使いますので。

(以上)