大田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年4月18日

(平成20年4月18日(金) 18:15~18:29  於:記者会見室)

1.発言要旨

 ただいま、月例経済報告等に関する関係閣僚会議が終わりました。今月の景気の基調判断につきましては、「景気回復は、このところ足踏み状態にある」と、先月から変更しておりません。
 主な需要項目であります個人消費、設備投資、生産が、いずれも横ばいの状態にあります。これは先月から同じように横ばい状態です。
 今月の変更点としまして、「企業の業況判断は、慎重さが増している」と下方に変更いたしました。原油・素材価格の上昇、それから円高ということで、企業の収益が圧迫されておりまして、これを受けて日銀短観の業況判断DIが全体的に低下しております。
 それから、アメリカ経済につきまして、雇用者数が減少し、消費がおおむね横ばいになっております。これを踏まえ、「景気は弱含んでいる」と下方に変更いたしました。先行きについて、更に下振れするリスクがありますので、「後退局面入りの懸念がある」としております。
 我が国経済の先行きにつきましては、景気は緩やかに回復していくと期待しておりますが、株式・為替市場の変動、原油価格の動向等に加え、アメリカ経済が景気後退入りする懸念があります。景気の下振れリスクは高まっていると認識しています。先行きは慎重に見ていく必要があります。
 今日の関係閣僚会議では、格別の発言はありませんでした。 
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今回、企業の業況判断を下方修正したわけですが、来週から主要企業の決算発表も始まると思うんですけれども、今おっしゃられたように、自動車メーカーをはじめ、原材料価格の高騰とか、転嫁できないような状況にあるんですけれども、それを踏まえて今後の企業業績の先行きについてどう見られているか、改めてお願いします。
(答)原油価格の高騰、素材価格の高騰、それから、円高が進んでいることで、企業収益は圧迫されてきております。しかし、意外にしっかりしていると見られる点もありまして、まず在庫の水準が低いんです。したがって、在庫面からの生産の下押し要因は、今の時点でありません。
 それから、設備の過剰感、雇用の過剰感もありません。したがって、国内要因で企業業績が悪化していくということは、今の状態ではそれほどありません。やはりアメリカ経済の減速がどう効いてくるのかということが非常に大きい要因になっております。
(問)アメリカ経済について下方修正して、景気後退の懸念があるというところまで踏み込んだわけですね。それから、アメリカ経済の減速の影響が新興国経済の対米輸出の減少という形で、新興国の経済にも影響を及ぼしつつあるという中で、世界の景気は減速の動きに広がりが見られるという判断をされていますね。
 そういった中で、日本の景気についての先行きのところなんですが、輸出が増加基調で推移しというふうに書いてありますが、これはどういうことによってそれが可能になるのでしょうか。
(答)輸出全体としては増加基調にあります。今日の関係閣僚会議の資料の4ページをご覧ください。太い線が輸出全体ですけれども、緩やかに増加しています。アメリカ向けが足下で減っておりますけれども、アジア向けは増加しています。足下で落ちているのは、中国の春節の影響があると考えております。全体としてアジア向けは増加、EU向けが横ばい、アメリカ向けが減少している状況にあり、輸出全体としては緩やかに増加しているということがいえます。
 アジアからの輸出は好調ですけれども、中国、台湾、韓国ともに、アメリカ向けの輸出の伸びがやや鈍化してきている。これはアジアからアメリカ向けです。それが鈍化してきているということがあります。アジアの域内の貿易がありますので、アジアは輸出が好調ですが、アメリカ向けの輸出が鈍化してきているということがあります。
(問)アメリカ向けの輸出が鈍化してきている。
(答)伸びが鈍化してきております。
(問)その日本経済に及ぼす影響を、どんな形で見積もっていらっしゃいますか。
(答)これは、アメリカ経済の減速がどれぐらいの期間、どれぐらいの大きさで起こるかによります。今、アメリカ向けの輸出は落ちてきておりますけれども、これが今後、どれぐらい続いていくのか。アメリカのエコノミストの見方でも、2008年前半は、景気は低迷する。しかし、戻し減税が5月から7月に行われますので、その効果もあって、2008年後半は持ち直していくというシナリオが描かれております。このシナリオでいきますと、日本経済への影響は一時的で済む可能性があるということになります。アジアからアメリカへの輸出もアメリカ経済の落ち込みがどれぐらいであるのかということによります。したがって、まさに日本経済への影響は直接ルートを見ても、アジアを経由する間接ルートを見ても、アメリカ経済の減速の大きさと長さによります。したがって、アメリカで取られている景気対策の影響を見極める段階にあります。
(問)国内要因は、あまり減速の要因は多くないということでしたけれども、個人消費の見通しについては、いかがでしょうか。
(答)今、消費者マインドが落ちておりますが、景気ウオッチャー調査で、やや下げ止まってきた感じもあります。ただ、食料品の価格上昇は、これからも続くと思われますので、まだ個人消費は横ばい圏内の動きが続くのではないかと見ております。2月の消費総合指数は、プラスではありますけれども、これは閏年の影響がありますので、全体として横ばいに変化はないと思います。
(問)先行きなんですけれども、景気の下振れリスクが高まっていることに留意する必要があるという言葉は同じなんですけれども、リスクそのものは、これまでと比べて高まっているんでしょうか。それとも同じなんでしょうか。
(答)アメリカの減速感が強まってきておりますので、そういう意味では、やや下振れリスクは強まってきていると思います。原油価格も一段と上昇してきておりますので、下振れリスクは強まっていると見ています。
(問)中国経済について、先ほどおっしゃった対米輸出の鈍化、それからこのところの急激なドル安、人民元高、その一方で物価上昇率が非常に急ピッチです。これらを総合して今後の中国経済の見通しについて、もう少し詳しくお願いできますか。
(答)中国経済自体は、まだ非常に強い状態にあります。ただ、輸出の伸びがやや鈍化しています。これは、アメリカ向けの輸出の伸びの鈍化を反映しています。
 それから、依然として固定資産投資は高い伸びが続いておりますので、景気の過熱、それからインフレ懸念というのはあります。
(問)中国と米国の間の金利水準の開きが更に開いて、それでドル安、人民元高の傾向は更に強まるのではないかというような見方もあるようですけれども、その点に関してはどうですか。
(答)人民元は、完全に変動相場制ではありませんので、金利水準で動くということでもありませんので、今後の中国の為替政策によるんだろうと思います。
(問)今の景気の現状を踏まえて、マクロ経済政策、金融と財政、いかにあるべきか、もしお考えがあったらお聞かせください。
(答)金融政策は、日銀の専管事項ですので、コメントは控えたいと思います。また、財政出動をするかどうかということですが、先行きは全く予見を持って臨むわけには行きませんけれども、今の時点で、景気回復は足踏み状態ではありますけれども、回復局面は続いていると見ております。先ほど申し上げましたように、在庫や設備、雇用の過剰感もありません。そういうわけで、今の時点で、財政出動を行うという局面ではないと考えております。
 むしろ、今、通過した予算を効果的に執行していく、そういう意味で成長力強化への早期実施策をとりまとめたところですので、こういう必要なところに必要な政策を迅速に行っていくということが重要だと考えています。
(問)今日の会議でも、特にその辺りの議論は出なかったんですか。
(答)今日は、何の御発言もありませんでした。やはり全体としてアメリカ経済の今後の動向、それからアメリカで取られております財政政策、金融政策の効果を見極めながら、日本の経済の処方箋を描いていくということが重要だと考えています。

(以上)