大田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年1月8日

(平成20年1月8日(火) 9:38~9:50  於:記者会見室)

1.発言要旨

 新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
 今日の閣議ですが、交通事故防止対策の推進、それから幾つか御出張の報告で、総理の中国訪問、高村大臣のタンザニア訪問、財務大臣のインド・ベトナム出張、文科大臣の中国出張、環境大臣のツバルへの出張の御報告がありました。
 閣僚懇談会では、昨年総理から、金融ビックバンから今12年ですか、その頃既にニューヨーク、ロンドンに並ぶ市場にと言っていたのに、今そうなっていないのはなぜかといったことをきちんと調べてくれという話がありまして、それに関連して渡辺大臣からお話がありました。バブル崩壊後のデフレ状況の中で、企業は過剰債務の解消に取り組み、それから家計も実物資産価格の下落や所得の減少があって金融資産への投資に慎重になり、金融機関は不良債権処理に追われていた。その間、諸外国の国際金融センターはかなり成長してきた。それで、相対的にプレゼンスが低下した。金融資本市場競争力強化プランをスピーディーに進めたいという発言がありました。
 閣僚懇では以上です。
 次回の諮問会議ですが、17日を予定しています。
 議題としましては、大きく3つあります。1つは「進路と戦略」の諮問・答申ができればと今準備を進めています。
 それから、毎年1月の最初の諮問会議で民間議員から今年の課題というのを提案していただきます。これが「骨太」に向けての主な課題の提示になる訳ですね。それが2つ目の議題です。1回目の諮問会議で民間議員に提案をしていただいて、2回目の諮問会議でそれを私のペーパーという形でお示しし、諮問会議の取りまとめという形で例年まとめています。1月の2度目の諮問会議で今年の諮問会議の課題といったものを取りまとめ、それに沿って、前半の「骨太」までの審議が大体スケジュールが出されていきます。
 それから、3つ目の課題が成長戦略の具体的な柱ですね。昨年、成長戦略の基本骨格をまとめました際に、民間議員から具体的な政策の柱について来年早々に提案したいということがありました。その御提案をいただくということになっております。今の時点で想定している議題は3つです。あと、時間の関係で追加されるかもしれませんが、今のところその3つを予定しています。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)年初から原油高を背景とした株安と円高が進んでいますが、それに対するコメントと、それから足元の景気認識についてコメントを頂戴したいと存じます。
(答)年末年始に、アメリカの景気減速懸念がニューヨーク市場の株価を下げ、それが日本の株価を下げるということがありました。もう御存じのように、27日は耐久財受注、設備投資の先行指標が市場予想を下回り、2日はISM製造業景況指数が市場予想を下回ったと。この時ブット元首相の暗殺や、在庫水準が低いといったことで原油高になり、100ドルを超しました。4日が雇用統計ですね。1万8,000人ということで市場予想を下回り、実体経済への波及が懸念されているというのが大きな原因だと思っています。
 ただ、年末年始は市場参加者が少ないために、かなり市場も振れが大きいことがございますので、もう少し様子を見る必要があります。現に先ほど終了した昨日のニューヨークマーケットでは27ドルの株高になっています。
 しかし、実体経済の減速懸念というのはかなり注意して見ていかなければいけないと思っています。したがいまして、15日の小売売上高、16日のCPIの動きには非常に注目しています。
 今度は日本の景気について言いますと、問題はこのアメリカ経済の減速懸念、原油高が日本経済にどういう影響を与えるか。注目すべき点は3つです。
 1つ目は、このアメリカ経済の減速が日本からの輸出の減速という形でつながってくるかどうか。2つ目は、この金融資本市場の変動による円高や原油高によって日本の企業収益にどういう影響が及ぶのか。3つ目は、これはやや間接的になりますが、アメリカ経済の減速がアジアにどういう影響を及ぼすのか。アジアに影響を及ぼしますと、そこを経由して日本にもまた影響が及びます。この3つの点は、細心の注意で見ていきたいと考えています。
 今の時点で、景気認識に変化はありません。
(問)年頭ということで伺いたいのですが、昨日の経済団体のパーティーなどでも2008年の景気見通しについて、なかなか厳しい中でもおおむね2%ぐらいはいけるのではないかといった発言が相次いだ訳ですが、大田大臣御自身は、2008年の日本経済の姿を、1年通して見るとどういう感じになると、今の時点ではお考えでしょうか。
(答)なかなか先のことは見通せませんが、2008年度の政府見通しは2%ということで見ております。ただ、下振れリスクは高まっています。リスク要因は3つです。1つ目はアメリカ経済の減速懸念、2つ目は原油高、3つ目は改正建築基準法の影響がどこで終息し、どの程度住宅投資が盛り返してくるか。この3つのリスク要因については、注意深く見ていきたいと思っております。
 マーケットは変動しておりますが、それが実体経済にどう波及してくるのかは、冷静にデータを見て、様々なところに目配りをして判断していきたいと思っています。
 今の時点で景気の回復基調に変化はないと思っておりますし、緩やかな景気回復は持続すると見ておりますが、リスク要因には十分に注意したいと思っています。
 3つのリスク要因にもう一つ加えてみますと、先ほどのアジア経済を経由してということを申し上げましたが、デカップリングが成立しているのかどうかですね。これまでは、アメリカ経済がややスローダウンしても、経済自体は堅調に推移しています。それは新興市場が堅調な訳で、デカップリングということが言われてはいる訳ですが、やはりそれほど強いデカップリングではないだろうと。やはりアメリカ経済が減速しますと、中国を始めアジアにも影響が及び、それを経由して日本にも影響が及ぶと見ております。これもアメリカ経済の減速がどの程度かということによりますので、新興市場での経済がどうなるかという点にもやはり十分注意していかなければならないと思っています。
(問)今、アメリカの方では、景気後退と物価上昇が同時に進行していくスタグフレーションといった懸念があると。それについての所見と、今後日本でもそうしたスタグフレーションみたいなことが起こり得るのかどうか、何か予兆できるのかどうか。その辺りをお願いします。
(答)まず、スタグフレーションにつきましては、今エコノミストでもマーケットでも見方は分かれております。CPIの発表など、もう少し様子を見ませんと、そこはまだ何とも言えません。実体経済についても雇用やISMの景況感という形で影響が出てきてはおりますが、消費という形ではまだ明示的に出てきておりません。生産もそれほど悪い訳ではありません。したがいまして、そこは冷静にアメリカの動向を見たいと思っています。スタグフレーションになりますと、採れる政策の余地も狭まってまいります。そこはやはり懸念すべきで、注意はしなくてはいけませんけれども、まだ様子を見ないと何とも言えないということですね。
 それから、日本に関しては、デフレに後戻りしないかどうかという点もはっきりしませんが、デフレ脱却は足踏みしている状態ですので、まだその懸念は弱いだろうと見ています。やはり今年一番注目されるのは、賃金が上昇するかということですね。私どもがデフレから完全に脱却するかどうかを見ている4つの指標を見ましても、GDPデフレーターのマイナス幅縮小にやや足踏みが見られます。その背景に、ユニット・レーバー・コストが下がってきているということがありますので、今年賃金が上がっていくのかどうか、ここは最も注目している点です。

(以上)