大田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成19年11月27日

(平成19年11月27日(火) 17:48~18:18  於:記者会見室)

1.発言要旨

 ただいま、月例経済報告等に関する関係閣僚会議が終了いたしました。
 今月の基調判断ですが、「景気は、このところ一部に弱さがみられるものの、回復している」ということで、先月から変えておりません。
 主な動きとしまして、輸出について、世界景気が引き続き回復していることを背景にしまして、増加幅が拡大しております。これまでは、「緩やかに増加」という表現をとっておりましたが、「増加している」と修正いたしました。
 一方、雇用情勢につきまして、雇用者数が弱い動きになっていることを背景としまして、完全失業率が8月に続き9月も上昇し、4.0%になりました。これを受けて、「厳しさが残るなかで、このところ改善に足踏みがみられる」と判断しております。
 それから、住宅建設につきましては、改正建築基準法施行の影響によりまして、総戸数が引き続き減少していると判断しております。当面は、法改正の影響が続くと考えられますので、住宅建設の動向はしっかりと注視してまいりたいと思います。
 先行きにつきましては、景気回復基調が続くと見込まれますが、このところの株安や円高、原油高は、日本経済にとって大きなリスク要因と考えられます。そこで、「サブプライム住宅ローン問題を背景とする金融資本市場の変動や原油価格の動向が内外経済に与える影響等には留意する必要がある」というふうにしております。
 今日の閣僚会議ですが、甘利大臣から原油価格上昇による中小企業への影響について御報告がありました。お手元の内閣府の資料でいくと、7ページに円グラフがありますね。今日、これよりもさらに新しいデータが出されたということで、収益への影響について、「収益を大きく圧迫している」が37.5%、「収益をやや圧迫している」が55.0%ということで、合計しますと前よりも高くなっていますね。「収益への影響はほとんど無い」というのが7.5%、これが11月調査の結果です。それから、転嫁の度合いですけれども、「0%転嫁」が61.1%、「1~20%転嫁」というのが27.9%、「21~40%転嫁」が4.9%、それから「41~60%転嫁」が3.4%、「61~80%転嫁」が1.8%、「81~100%転嫁」が0.9%となっております。
 これを受けて、新たに対策を講じるということで、中小企業への金融対策として、政府系金融機関からの借入金に関して、既に借りた債務について、中小企業の実情に応じて返済条件を緩和するですとか、あるいは政府系金融機関、民間金融機関に対して、原油等の価格上昇に伴う影響に配慮するよう要請する、あるいは下請適正取引の推進といった策を講ずるというお話がありました。特に、原油価格上昇の影響を受ける農業、漁業、運輸業、こういったところは必要な対策を講じていくという発言がありました。
 それからもう1点、冬柴大臣から、建築着工戸数が落ちておりますけれども、業界団体へのヒアリングでは、改善の兆しが見られるということです。それで、今月末に建築確認件数が発表されますけれども、上向くのではないか、これで住宅着工件数も上向いていくのではないかという発言がありました。
 ただ、雪の季節に入っていますので、ずれ込んだものがそのまま上向いて、そのまま建築に結びつくわけではありませんので、その点は経産大臣にも対策をお願いしたということを言っておられました。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)雇用の判断を下方修正されましたけれども、今回、2カ月連続で完全失業率が悪化しているわけですけれども、この要因がどういうものにあると思われるのかということと、これが一時的なもので終わるのか、今後の見通しなどはどのようにお考えか教えていただけますか。
(答)雇用は、比較的順調に改善してきましたので、足踏み感が出たと見ております。それで、失業率でいいますと、かなりミスマッチによる部分が大きくなってきているのではないかと。雇用の改善による部分が、だんだん減少してきているというのがあると思います。
 それと、もう1点は、今日の資料で5ページを見ていただくと、小規模企業で雇用者数が減少しております。従業員数1人から29人、要は30人未満、それから100人未満のところで、雇用者数が減少してきております。これは、恐らく原油高を転嫁できないがゆえの収益の圧迫というところにあると思います。
 したがって、雇用の背景としては、足踏み感に加え、規模の小さいところで原油高、素材高による収益の圧迫、これが雇用を下押ししていると見ております。特に、雇用者数で見ますと、1人から29人以下という30人未満の企業で、前月比で20万人雇用者数が減っているのですね。ここまで落ちているというのは、やはり収益が圧迫されているということだと思います。それが一番大きい要因ですね。
(問)雇用の関連で、最低賃金法の改正法案が、今日、委員会を通過して、明日、参院本会議で成立の見通しですけれども、今後、円卓会議はいつごろ再開されて、それと、中期的な引き上げ目標を定めるというお話だったと思うのですけれども、これについてどういう目標を想定されてこの議論を進めていくのか、そのあたりを。
(答)年内には開催したいと考えております。したがって、来月、開催いたします。
 今後、どういう考え方でいくかというのは、前回やりましたときに幾つか、考え方の整理で選択肢をお示ししてあります。例えば、平均賃金の何割という形でいくのか、あるいは、今、決まり方が中卒の初任給ですね。それを高卒にしていくかとか、ちょっと今、記憶が定かではありませんが、前回、円卓会議をやりましたときに、考え方を3つか4つ、整理してありますので、その議論を深めていきたいと考えています。
 要は、最低賃金がどうあるべきかを、審議会で毎年議論しているわけですけれども、それを、あるべき姿に向けて何年間かで到達させていくという考え方に大きく転換できるかどうかというのがポイントになろうと思います。
(問)今後、最低賃金の大幅な引き上げにつながっていくというふうにお考えでしょうか。
(答)中小企業の生産性向上とセットで、3年ぐらいかけてある水準に持っていくということで、何をもって大幅というのか、野党が言っているようないきなり1,000円というのはやはり難しいと思いますが、これまでのような1円、2円をどうこうするという議論ではなくて、あるべき水準に向けて3年ぐらいで到達させていきます。
 したがって、今までからすると、引き上げ幅は相当大きくなると思います。既に今年の最賃審議会で、通常ルールでいくと5円ぐらいだったところを14円上げていますので、その動きは既に今年から始まってはいるわけですけれども、さらにそれをしっかりとした上げ幅にしていくということですね。
(問)原油高の影響で、雇用に波及しているという分析なのですが、これは今のところ、零細企業が中心になっていると思うのですが、今後、さらに広がる可能性というのはあるのでしょうか。
(答)これは、どれぐらい転嫁できるかによります。つまり、物価上昇率との関係ですね。今、川上の価格は上がってきています。GDPデフレーターで見ましたときに、川上の輸入デフレーターでいくと、7-9月期はもう5.1%上昇している。やや真ん中あたりの設備投資デフレーターは、7-9月期で0.6%上昇している。
 ただ、家計の消費支出デフレーターが上がらないわけですね。川上から川下になかなか来ていないわけですけれども、これはゆっくりではありますけれども、上がっていくのだろうと思っております。その転嫁がどれぐらいできるかにかかっています。既に、日常的な食料品などは、最終消費支出でも上がってきておりますので、これが徐々に進んでいけば、中小企業の収益の圧迫はやや緩んでくるということですね。
 ただ、いずれにしましても、この原油価格がかなり上がってきていますので、中小企業の収益圧迫というのは、しばらく続くのではないかと懸念しています。
(問)消費への影響はどうなのでしょうか。
(答)原油価格の上昇が、消費者物価に転嫁されてくると消費者マインドを冷やしてしまう、転嫁できなければ中小企業の収益圧迫につながるということですね。消費者マインドも、ガソリン高などを受けて、景気ウォッチャー調査で見ればこのところやや低下してきておりますので、これはどちらかに効いてくるわけですね。
 ですから、本当はこれが転嫁して、それが賃金にはね返って、消費増をもたらすというメカニズム、ここは今、非常に弱いわけですけれども、このメカニズムが働くということが望ましいわけですね。賃金上昇につながってくるというのが、私どもが一番待っているシナリオであるということですね。
 ただ、何にしても原油価格の上昇というのは、所得が海外に移転するわけですから、このこと自体は望ましくないということですね。
(問)収益の圧迫が雇用者数の減少につながっているということは、要するに零細企業そのものが、もう倒産してしまっているということなのでしょうか。
(答)いえ、倒産件数を見ますと、やや住宅着工の遅れの影響は出てきておりますけれども、それ以外のところでは、まだ今の時点でそれほど顕著ではありません。
(問)一時的に雇用を減らさざるを得ないということでしょうか。
(答)増やしていないということだと思います。
 やはり9月に関して言うと、住宅着工件数の遅れの影響もあるのだろうと思います。
(問)賃金への波及が弱いと仰いましたが、なぜそういうふうになるのか、改めて説明していただけますか。
(答)もう何度もお答えしながら、悩ましいところなのですけれども、労働需給は引き締まっているのに賃金は伸び悩んでいると。大きい理由としては、給与が高かった団塊世代がリタイアしているということの影響、それから非正規雇用者が増えているということの影響があります。これが、最近のフルタイム労働者の所定内給与の押し下げにもつながっております。派遣などのフルタイムであっても非正規の労働者がいるわけですね。こういったことが、所定内給与の押し下げをもたらしている一つの要因になっております。
 したがって、なぜ物価が上がらないのかということについては、財の価格というのは、世界的にどこでもそれほど上がらず、世界的に見て上がらないか下がっているわけですが、日本と、アメリカ、EUとを比べて一番違うのは、サービスの物価で、日本ではサービス物価が上がらない。サービス業の賃金とサービス物価というのは、アメリカでもEUでも日本でも相関が明確で、日本の場合はこのサービス業の賃金が上がらず、サービスの物価も上がらないという相関が見られます。
 なぜ賃金が上がらないかということを、いろいろな角度から分析しているのですけれども、主な要因として出てくるのは、非正規労働者が増えているということと、それから団塊世代のリタイアと、これですべて説明できるわけではないのですけれども、その要因が大きいということですね。
(問)先行きの留意点のところで、1点お伺いしたいのですけれども、これまでの月例では、アメリカ経済の動向と原油価格の動向をメンションされていて、今回は「アメリカ経済」にかえて、「サブプライム住宅ローン問題を背景とする金融資本市場の変動」というふうに置き換えられたところでお伺いしたいのですが、アメリカ経済の見方について、減速感は強まっていると思うのですけれども、アメリカ経済のリスク要因が後退したというふうな受けとめ方をされているのでしょうか。この先行きの留意点から、米国経済動向を削除された背景を教えていただけますでしょうか。
(答)「アメリカ経済」を削除して、「サブプライム住宅ローン問題を背景とする金融資本市場の変動」ということを加えているということですが、サブプライムローン問題の発端はもともとアメリカですので、アメリカ経済については引き続き留意が必要だという点は変わりません。しかし、ヨーロッパ経済等についても注意が必要な状態ですので、「サブプライム住宅ローン問題を背景とする金融資本市場の変動」としています。これが、例えば円高を通して日本の実体経済に影響を与える可能性もありますので、より広く書いているということで、アメリカ経済についてリスクと見ていないということでは全くありません。引き続き、アメリカ経済については、十分注意しなくてはいけないと思っております。

(以上)