大田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成19年3月22日

(平成19年3月22日(木) 19:31~19:53  於:記者会見室)

1.発言要旨

 先ほど、成長力底上げ戦略の第1回円卓会議が終了いたしました。

 この円卓会議は、底上げ戦略を実施するために、経済界、労働界、政府と政労使が一体となった推進体制として設けられたものです。今日の会合では、まず官房長官から円卓会議開催の趣旨について説明があり、今後の進め方、戦略において直ちに取り組む施策などについて議論いたしました。各メンバーからの発言については、事務方から詳しくご説明いたしますけれども、私の方から主立った発言をご紹介したいと思います。

 まず、樋口美雄さんが円卓会議の議長、小島明さんが議長代理ということで了承されました。

 樋口議長から、雇用をめぐる問題、生産性をめぐる問題はそれぞれ一本の式だけではなかなか解けない。例えば、企業の生産性向上なしに最低賃金を引き上げますと、結果的に失業が増えたりするわけで、同時に複数の方程式を解いていくような問題がたくさんあると。したがって、こういう一体的取組を円卓会議で省庁が連携して政策を一つのパッケージとして議論することは意義があると。それから、国民の合意や意識改革も必要ですから、この円卓会議は、政労使が一体となって問題の解決を図る初めての取組である。大変意義があり、しっかりやっていきたいというお話がありました。

 清成先生から、中小企業の中で圧倒的にサービス業のシェアが増えており、サービス産業の中小企業の底上げが重要なのだと。ただ、ここは生業的なものも多いので、やはり新規にスタートアップするようなところからしっかり底上げをしていかないと、全体の生産性向上に結び付いていかないのではないかという御発言がありました。

 また、障害者のためのプロップ・ステーションにおいて、障害者の方も仕事を希望する人は仕事をして、タックスペイヤーになれるようにするという運動をしておられる竹中ナミさんから、世界の動きとしては、福祉というのは弱者のためにあるのではなくて、弱者が弱者ではない人になるためのものである。そのために、例えばITですとか世界最先端の技術を使って、世界的にそういう取組が行われている、これが本当の底上げだという発言もありました。

 意見が分かれましたのは、中小企業の生産性向上を最低賃金をセットで取り上げることは大変よいという評価の上で、中小企業団体中央会の佐伯会長から最低賃金ではなくて生産性向上を先にやるべきだというお話があった一方で、JAMの小出会長からは、中小企業の生産性が向上したら本当に賃金が上がるのか、賃金はメーカーの圧力があって、なかなか上がっていかないと。だから先に生産性向上ありきではなくて、賃金が上がるようにしっかり政府が指導するということが必要なのではないかという御発言がありました。このあたりはこれからの議論だろうと思います。

 連合の高木会長からは、今後の進め方について、いろいろな問題がたくさんあるというお話がありました。論点がたくさんあり、この多岐に渉る論点をどう詰めていくのか。最低賃金の引上げには強い期待がある。しかし、生産性も上げていかなければいけない。また、地域によってもばらつきがある。中小企業のサポート政策もしっかり採っていかなくてはいけないと。こういう多岐に渉る論点を、しっかりまじめに議論していきたいので、そういう場をちゃんと作ってくれというご発言がありました。

 次回の会合は、6月初めと私どもは考えておりましたけれども、こういう御意見もありましたので、できるだけまた早い時期に次の会合を持ちたいと思っております。お忙しい方が多いので、私どもとしては6月に入って第2回目を開き、それまでは事務局でしっかり論点を整理して効率的に議論したいと考えておりましたけれども、今日のような御発言を受けて、6月までの間にもう1回会合を開いていきたいと思っております。

 最後に議長から次のようなことが取りまとめられました。今日の会合では有識者、産業界、労働界の代表者及び政府関係者は成長力底上げ戦略の意義を確認して、今後密接に協力して積極的に取り組んでいくという合意がなされた。今後、取り組んでいく点として第1に平成19年度においては、20年度からの本格実施に向けた準備を進めるとともに、実施可能なものについては直ちに取り組んでいく。また、各地域においても、都道府県版の円卓会議を設けて、地域社会全体でこの戦略に取り組んでいきます。

 第2点として、人材能力戦略につきましては、職業能力形成システムや実践型教育システムを構築するとともに、ジョブ・カードを導入するために構想委員会を設置する、そして具体的構想の検討を開始します。

 それから第3点目としまして、就労支援戦略については「「福祉から雇用へ」推進5か年計画」を新たに策定して実施すると。

 それから4点目として、中小企業の底上げ戦略につきましては、中小企業における生産性の向上と最低賃金の引上げの基本方針について検討を進めていくということで、大体、今日の合意としては、こういう合意が得られました。

 今後につきましては、今申し上げましたように円卓会議を開き、4月、5月の間にできれば1回、それから6月にまた開いて、「骨太方針」に反映させていきたいと考えております。

 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今のお話の中で、樋口先生から、複数の方程式を解いていかなければならないという話がありました。恐らく同義だと思うのですけれども、高木会長からやはり生産性を上げていかなければいけないし、地域によって賃金にばらつきがある、そういったいろいろな問題を解いていかなければならないと。これは相当難しい課題であることは、大臣も重々御承知だと思うのですけれども、円卓会議としては、この後4月、5月に1回で、6月に1回開催するということですが。
(答)4月か5月に1回、6月ぐらいに1回開きたいと考えています。
(問)そうなりますと、やはり事務局で相当具体的な議論を詰めてやっていかないと、本当にいい政策がなかなかできてこないのではないかという懸念はあるのですけれども、そこら辺の本当の地に足が付いた議論をどのように進めようとお考えでしょうか。
(答)まず、こういう政労使が集まって今後の方向について議論する場ができたことは大変意義深いことです。これが、実効性を持つように、事務局としても論点をしっかりと詰めて、いろいろな人の御意見を聞いて、整理できる部分は整理して、円卓会議では実質的な議論ができるようにやっていきたいと考えています。
(問)事務局は、どのようなメンバーでやっていくのでしょうか。
(答)まず、この底上げ戦略を作る時に構想チームというものがありました。そこに参加した役所は推進円卓会議幹事会と名前を変えておりまして、既にこの円卓会議に先立って1回会合を開きました。そのような形で、幹事会で取組の案はしっかりと作っていき、円卓会議にお諮りするということですね。事務局自体は内閣府に置きます。
(問)そうしますと、4月ないし5月に開かれる次の会合では、かなり論点が明確に示されると考えてよろしいでしょうか。
(答)そうですね、はい。
(問)施策によっては、予算計上が必要なもの、制度改正を伴うものが出てくると思うのですけれども、4月か5月と6月で1回ずつ開いて、「骨太」に反映させて、その上で概算要求にも必要なものを計上していくというような話になっていくのでしょうか。
(答)そこは、これからの議論になると思います。19年度は、まずは先行的に取り組んでいきます。そして20年度から本格実施します。どこかの時点でその予算についてはしっかり考えていくということですね。
(問)地方の円卓会議ですけれども、これはできればすべての都道府県にというお話だったと思うのですけれども、そういう方向で、また時期もここに書いてありますように……
(答)6月終わりぐらいには立ち上げたいなと。これは、厚生労働省の各都道府県の労働局が、他の役所の地方支分部局ですとか各都道府県と協力を取りながら進めていきます。 ですから、そのためにも、まず全国の円卓会議をしっかりと、論点も整理しながら立ち上げていくことが大事だと考えています。
(問)人材能力戦略に関してジョブ・カードの構想委員会というのが出てきているのですけれども、これは19年度から設置とありますが、実際には何月ごろに、どういうメンバーで構成するのでしょうか。
(答)これは早急に作ります。円卓会議の下に作りますので、円卓会議の御了解を頂いてからと思っておりましたが、今日御了解いただきましたので構想委員会を作ります。これは、具体的にジョブ・カード制度をどう運用していくかということですので、まだ具体的に人選はしておりませんけれども、企業との連携をうまく取れるような形で作っていきたいと思っております。
(問)高木さんの発言ですが、最後は中小企業へのサポートも必要ということでしょうか。
(答)もうちょっときちんと申し上げますと、いろいろな論点があり、意見調整が必要なものもあると。また事務局に対して次回までに多岐に渡る論点をどう詰めていくのかという御質問がありました。これに対しては事務局として、論点もきちんと整理して、いろいろな人の意見も聞いて効率的に議論したいということを、事務方からお答えしました。
 最低賃金引上げに強い期待があるけれども、実際は生産性をどうやって上げるのか、地域によって有効求人倍率の差が非常にあるのでそこにどう取り組むのか、中小企業サポート政策とセットでやっていかなくてはいけないと。あるいは、地方円卓会議のイメージをどうしていくのか、こういう論点があるからこそ、これからの進め方が大事だという御発言がありました。事務局から、事務局としても論点を整理して効率的にやりたいという答えをした後で、しっかりとまじめにきちんと議論をしたいので、十分キャッチボールをできるような、そういう時間と場を作ってほしいという御発言がありました。
(問)2回目の会合の前倒しを予定しているということですけれども、6月の会合で今年度の実施計画と来年度以降の基本方針を策定するというスケジュール感に変更はありませんか。
(答)はい、私どもとしては、本当に忙しい方ばかり集まっておられますので、いろいろな意見も聞ける限りは聞いて6月に開催しようと思っておりましたが、やはりダイレクトな議論は大事ですので、前倒ししてもう1回会議を持ちたいと考えています。
(問)最低賃金引上げについての合意形成のところですけれども、この中長期的な引上げの方針については、大筋では政労使の誰も反対する人はいないと思うのですけれども、一体具体的にはどういうものを目指して検討されているのかというのが、もう一つイメージが掴めないのですけれども。
(答)そこは、まさにこれからの議論なのだと思います。今日も高木会長から「中長期的」と書いてあり、他の説明で「原則として3年」という言葉もあるので。この辺りの時間感覚もしっかり詰めていく必要があるという御発言がありました。まさに今の点は、これからの議論なのだと思います。どのような時間感覚で、生産性の向上と最低賃金の引上げをやっていくのかは、重要な論点だと思います。
(問)これも、6月の基本方針の中にその合意点を盛り込むという理解でよろしいのでしょうか。
(答)そうですね。そこに向けて合意を作っていきたいと思います。
(問)先日の柳澤大臣の閣議後の会見の中で、今回の合意と中央最賃審議会との関連について、法律的に決めるのは厚労省である。こちらの方は、その参考になるかどうかといった程度ではないかと思っているという、割と懐疑的な発言がありましたけれども、その点についてはどのようにお考えですか。
(答)私はその記者会見をきちんと見ておりません。何か新聞に「参考になるのですかね」という記事が出ているとあったのですが、厚生労働省から必ずしもそのようには大臣は仰っていないという話も聞いたのですね。
(問)いや、ホームページにも出ています。
(答)出ていますか。
 実際の最低賃金の水準をどうするかは、最低賃金審議会で決めます。最低賃金について今後の方向性を今、しっかり見直していこうという議論ですので、その大きい方向性は円卓会議で決めていくということですね。
(問)今日は、成長力底上げ戦略の基本構想は、この会議ではみんな合意されたと考えてよろしいのでしょうか。
(答)はい、そうです。
(問)就労支援の5か年計画策定ということですけれども、これも「骨太」の取りまとめ前に策定して、「骨太」に全部入るのですか。
(答)まだ、そこはしっかり詰めておりません。19年中と考えております。大体それぐらいのスケジュール感でいます。「骨太」には盛り込めるものは盛り込みたいと思いますけれども、5か年計画そのものが「骨太」に入るというのは、少し難しいかもしれません。
(問)生産性向上と最低賃金引上げの基本方針は、「骨太」に盛り込むのですか。
(答)大きい方向性は、盛り込みたいと考えています。
(問)今回の生産性の向上と最低賃金の引上げは、セットで併せてという大方針だと思うのですけれども、以前伺ったかもしれませんが、生産性が本当に上がったかどうかという検証と、その検証に掛かる時間、タイムラグもあると思うのですよね。それと最賃をどう上げるかについては今日、議論はなかったのでしょうか。
(答)ええ。今日は、先ほどご紹介しました生産性向上をまずやってから最低賃金引上げなのだという御意見と、生産性が上がったからといってそれが本当に賃金に反映するかどうかは保証の限りではないから、まず最低賃金をしっかり上げていくべきだという議論はありました。
 今日は閣僚の御発言を私からはご紹介しませんでしたが、甘利大臣からも最賃、生産性、取引適正化という3つの要因があり、最低賃金の引上げには正面から取り組みます、生産性についても、すぐに効果が出るものもありますが、そうでないものもあるので、まずは取引適正化が重要であり、これについてはもう既に取り組んでいるという発言がありました。
 今の御質問も含めて、今後のスケジュール感ではそれが恐らく次回、次々回の大きい論点になるだろうと思います。
(問)「直ちに取り組む施策」というペーパーが出ておりますが、2月15日に発表された基本構想の段階から、より具体化されている点が幾つかあると思うのですが、ご紹介いただけますか。特にないのですか。
(答)基本構想で書かれておらず、ここに書かれているというものはありません。その中で、直ちに取り組むものとして、人材能力戦略ですと構想委員会、就労支援戦略では「工賃倍増5か年計画」の策定があります。中小企業底上げ戦略でいうと、下請取引の適正化、IT化・機械化・経営改善、最低賃金の周知徹底があります、こういうものはすぐにできるものですから、すぐにやっていくということです。2月に発表した段階から新たに加わったものはありません。何か事務方からあれば。(事務方「例えば2ページの中小企業の下請取引の適正化のところに前に出たものよりももう少しブレークダウンした内容が少し入ってございます」)
 中小企業底上げ戦略の下請け取引の適正化のところに書かれておりますのは、既に甘利大臣が事業者団体に要望していますので、その内容が少し書き込まれております。これは、経済産業省としてさらにブレークダウンした取組をつけ加えた部分ですね。

(以上)