みどりの学術賞選考経過報告

第19回みどりの式典 みどりの学術賞選考経過報告

みどりの学術賞選考委員会委員長 塚谷 裕一 

 選考委員会を代表し、第19回みどりの学術賞受賞者の選考経過を、ご報告申し上げます。

 選考委員会は、みどりに関する学術研究に造詣の深い全国の学識経験者約440名に候補者の推薦を依頼し、大変幅広い研究分野から、62名の推薦が得られました。これらの方々について、その業績を約半年の期間をかけて慎重に調査・審議し、選考を進めてまいりました。

 その結果、みどりの学術賞受賞者として、公益財団法人京都市都市緑化協会理事長の森本もりもと幸裕ゆきひろ博士と、東北大学大学院生命科学研究科特任教授の 経塚きょうづか淳子じゅんこ博士の2名を推薦することに決定いたしました。

 森本博士は、都市の自然を再生し、人と生物に快適な環境を形成する観点から、景観構造が生物種に与える影響を明らかにするとともに、都市型洪水の緩和と生物の生息環境の改善のため、降雨を地中に浸透させる「雨庭あめにわ」の実現に尽力されました。さらに、造園技術の社会実装と都市における景観生態学の発展に大きく貢献されました。

 経塚博士は、イネを用いて植物ホルモンのストリゴラクトンと、これに関わる遺伝子が植物の成長力と生産力を支える特性の一つである「分枝ぶんし」に関わることを発見するとともに、根圏シグナル物質としての側面を持つことも明らかにし、植物の基本法則の解明につながる成果を上げられました。また、学会長として関係学会を先導するなど、植物科学の発展に大きく貢献されました。

 いずれも、学術的な観点から極めて優れた業績であるのはもちろんのこと、国民に「みどり」の重要性を伝え、みどり豊かな持続的な社会の形成を導く上で重要な役割を果たした研究として、高く評価いたしました。

 両博士におかれましては、本賞の受賞を契機としまして、さらに「みどり」に関する探求を深めて頂きますとともに、持続可能な未来社会の基盤となる「みどり」に関する深い知識を、国民の方々に一層広めて頂くことを強く期待いたします。

 以上をもちまして、選考経過の報告とさせて頂きます。