みどりの学術賞選考経過報告

第8回みどりの式典 みどりの学術賞選考経過報告

みどりの学術賞選考委員会委員長 杉浦 昌弘

 選考委員会を代表し、第8回みどりの学術賞受賞者の選考経過をご報告申し上げます。

 選考委員会は、「みどり」に関する学術に造詣の深い学識経験者等約450名に対し、この賞にふさわしい候補者の推薦を依頼いたしました。 その結果、分子・細胞レベルから地球規模まで、実に様々な分野から約60名の推薦が得られました。
 選考委員会は、この推薦を基に約半年をかけ候補者の選考を進めてまいりました。 その結果、第8回みどりの学術賞受賞者として、大阪大学名誉教授 柴岡弘郎博士と、東京大学名誉教授 井手久登博士の2名を推薦することに決定いたしました。

 まず、柴岡博士の業績について申し上げます。
 柴岡博士は、植物生理学の分野において、植物細胞が細長く成長する機構の研究に取り組み、植物ホルモンのジベレリンが、細胞質表層微小管の配向調節を介して、細胞の成長方向を決めるセルロース繊維の方向を制御していることを解明しました。さらに、植物細胞の細胞骨格による植物形態形成、細胞質分裂制御機構においても国際的に高い研究業績を挙げ、この分野の発展に貢献されました。

 次に、井手博士の業績について申し上げます。
 井手博士は、緑地学の分野において、地形が複雑で多様な自然風土を持つ、わが国にふさわしい土地利用計画の理論と手法を確立しました。特に、自然条件に加え、地域の歴史や文化的背景、社会経済条件も考慮して土地の保全・利用を行う「景域保全」の手法の確立に貢献されました。その結果、今日の国土保全、都市農村整備、緑地緑化等の分野においては、みどりや自然を重視した計画手法が幅広く実践され定着するに至っています。

 いずれの研究も、我々人間が「みどり」を深く理解し、それをどのように活かしていけばよいか、その道筋を示された研究として高く評価しました。
 このような「みどり」に関する学術研究が、新たな知恵をもたらし、社会を動かす源泉となることを選考委員会として心から期待し、念願するものであります。

以上をもちまして、委員長としての選考経過の報告を終わります。