みどりの学術賞選考経過報告

第6回みどりの式典 みどりの学術賞選考経過報告

みどりの学術賞選考委員会委員長 杉浦 昌弘

 選考委員会を代表し、第6回みどりの学術賞受賞者の選考経過をご報告申し上げます。

 選考委員会は、「みどり」に関する学術に造詣の深い学識経験者等約430名に対し、この賞にふさわしい候補者の推薦を依頼いたしました。その結果、分子・細胞レベルで植物の働きを研究しておられる方から、地球規模で生態系の研究をしておられる方まで、実に様々な分野から約60名の推薦が得られました。
 選考委員会は、この推薦を基に都合3回の会合をもち、候補者の選考を進めてまいりました。その結果、第6回みどりの学術賞受賞者として、琉球大学名誉教授 新城長有博士と、北海道大学教授 中村太士博士の2名を推薦することに決定いたしました。

 まず、新城博士の業績について申し上げます。
 新城博士は育種学の分野において、世界各地のイネの栽培品種や野生種を調査し、従来存在しないと考えられていたイネの細胞質雄性不稔系統をインド・バングラディシュ地域に由来する4品種のイネから発見するとともに、その遺伝様式を明らかにされました。そして、これをもとに雑種イネを育種するための基本材料を開発し、この学術研究成果が中国などにおける雑種イネの育成、米の増産に大きく寄与するなど、育種学及びこれに係わる稲作技術の発展に大きく貢献されました。

 次に、中村博士の業績について申し上げます。
 中村博士は生態系管理学の分野において、森林、河川、湿地等のさまざまな生態系で構成される流域に焦点を当てて研究を行ない、洪水や山崩れなどの地表変動撹乱は、生態系の維持機構として重要な役割を果たしていることを明らかにするとともに、流域内の生態系の相互作用を解明されました。そして、生物種と生息環境を基準にした生態系評価と復元の方法を確立し、この方法が日本の森林、河川、湿地の管理指針として定着するなど、流域生態系の管理手法の確立に大きく貢献されました。

 いずれも我々人間が「みどり」とどのように関わり生きていけばよいか、その道筋を示した研究として高く評価されたものと考えております。
 そして、このような「みどり」に関する学術研究が、そうした知恵をもたらし、社会を動かす源泉となることを選考委員会として心から期待し、念願するものであります。

 以上をもちまして、委員長としての選考経過の報告を終わります。