第4回 消費者をエンパワーするデジタル技術に関する専門調査会 議事録
日時
2024年7月2日(火)15:00~17:07
場所
消費者委員会会議室・テレビ会議
出席者
- (委員)
- 【会議室】
橋田座長、相澤委員、坂下委員、原田委員 - 【テレビ会議】
森座長代理、荒井委員、田中委員、鳥海委員、松前委員 - (オブザーバー)
- 【会議室】
黒木委員 - 【テレビ会議】
柿沼委員 - (参考人)
- 【会議室】
丹康雄氏 一般社団法人電子情報技術産業協会スマートホーム部会長
鈴木裕一郎氏 ユカイ工学株式会社取締役COO
河村雄一郎氏 セコム株式会社セキュリケア事業推進室課長 - 【テレビ会議】
小笠原亮氏 パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社 スマートコミュニケーションBU経営企画部長 - (事務局)
- 小林事務局長、後藤審議官、友行参事官、江口企画官
議事次第
- 開会
- 議事
①事業者ヒアリング(パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社)
②事業者団体ヒアリング(一般社団法人電子情報技術産業協会スマートホーム部会)
③事業者ヒアリング(ユカイ工学株式会社、セコム株式会社) - 閉会
配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)
- 議事次第(PDF形式:167KB)
- 【資料1】 パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社提出資料(PDF形式:2419KB)
- 【資料2】 一般社団法人電子情報技術産業協会スマートホーム部会提出資料(PDF形式:2212KB)
- 【資料3-1】 ユカイ工学株式会社提出資料(PDF形式:2635KB)
- 【資料3-2】 セコム株式会社提出資料(PDF形式:3393KB)
≪1.開会≫
○橋田座長 本日は、皆様お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。
ただいまから、消費者委員会第4回「消費者をエンパワーするデジタル技術に関する専門委員会」を開催いたします。
本日は、相澤委員、坂下委員、原田委員は会議室で、森座長代理、荒井委員、田中委員、鳥海委員、松前委員はテレビ会議システムにて御出席いただいております。
なお、本日は所用によりまして山口委員は御欠席との御連絡をいただいております。
消費者委員会からオブザーバーとして、黒木委員は会議室、柿沼委員はテレビ会議システムにて御出席いただいております。
本日は、所用により、星野委員、山本委員は御欠席との御連絡をいただいております。
また、本日は、事業者ヒアリングといたしまして、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社の小笠原様、一般社団法人電子情報技術産業協会スマートホーム部会長、北陸先端科学技術大学院大学副学長の丹様、ユカイ工学株式会社の鈴木様、セコム株式会社の河村様に御発表をお願いしております。
では、本日の会議の進め方などについて、事務局より説明をお願いいたします。
○江口企画官 議事に入る前に、配付資料の確認をさせていただきます。
お手元の議事次第に配付資料を記載してございます。もし不足等がございましたら、事務局までお知らせください。
本日は、報道関係者を除き、一般傍聴者はオンラインにて傍聴いただいております。議事録については後日公開いたします。
以上でございます。
○橋田座長 では、前回に続きまして、デジタル技術の活用例、消費者の支援に活用するアイデア、社会実装するに当たっての課題と考えられる事項などについて、関係者のヒアリングを行った上で、さらなる活用について意見交換をしたいと思います。全体を通じて委員からの積極的な御発言をお願いいたします。
まずは、テレビドアホン、見守りカメラ等を提供されているパナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社様から、御発表を20分程度でお願いいたします。
では、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社の小笠原様、よろしくお願いいたします。
≪2.①事業者ヒアリング(パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社)≫
○小笠原氏 皆さん、初めましての方が多いと思いますけれども、ただいま御紹介にあずかりましたパナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社の小笠原と申します。
私は、後ほど会社概要も御説明をさせていただきますけれども、パナソニックグループの中で、テレビドアホン、あるいはそこに接続される見守り用カメラといったカテゴリーを担当させていただいておりまして、本日は、私が担当しているカテゴリーの商品から見たデジタル技術の今後の活用の方向性を簡単に御紹介を差し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、簡潔に私のほうから御説明を差し上げたいと思います。
まず、弊社の概要でございます。パナソニックという会社は、数年前に持ち株会社制に移行しておりまして、パナソニックホールディングス株式会社という会社の下に、実際の事業を行う事業会社と言われるものが複数存在する、こういった形の組織体制になっております。私が所属しているのは、この中のパナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社、赤枠で囲っておりますが、この会社になります。
いろいろな会社がパナソニックグループの中にありまして、1つ大きなくくりとして左側にパナソニック株式会社というのがあるのですけれども、ここがいわゆる家電、白物家電と設備系、スイッチや配線機器といった商材を担当している一番大きな事業会社なのですけれども、我々はそういう白物家電とは趣を異にしております。こちらのページにより詳細な会社の概要、あるいは担当しているカテゴリーということで記載をしておるのですけれども、基本になっておりますのはテレビ、オーディオ、あるいはビデオ、プラス、カメラ、映像機器といういわゆる黒物家電をベースにした事業会社でございます。
その中に、黒物家電とは少し毛色が違うかもしれませんけれども、コミュニケーションに関係する機器を集めた部門がございます。ここに赤枠でございますように、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーションというのは黒物の他に電話・ファクスであるとか、私が担当しているテレビのドアホン、インターホンと言ったりしますけれども、それとカメラ、ヘッドホン、こういった商材も担当しております。
会社の中をより詳しく申し上げますと、担当する商品カテゴリーによって、ビジネスユニットという形でさらに組織が細分化されておりまして、テレビ、ビデオ、オーディオという王道の黒物家電を担当しているのはビジュアル・サウンドビジネスユニット、放送用のカメラも含めてカメラ、映像機器を担当しているのがイメージングソリューション事業部という組織になっておりまして、先ほど申し上げた電話・ファクスとかインターホンというコミュニケーション関係の商品は、スマートコミュニケーションビジネスユニットという会社内の組織で運営をされております。私も、スマートコミュニケーションビジネスユニットに所属しておりまして、その中でも、とりわけインターホンとホームネットワークという商材を担当しているということになります。
繰り返しになりますけれども、スマートコミュニケーションビジネスユニットが今申し上げた商品を担当しておるのですけれども、過去から非常に高いマーケットシェアを実現しておりまして、とりわけ電話・ファクスという、市場としてはシュリンクする傾向にあるのですけれども、お客様のコミュニケーションを支えるデバイスの一つとしてグローバルでナンバーワンシェアを獲得しております。
今日御紹介するドアホンも、国内の戸建て住宅にフォーカスをしますと、我々が今シェアがナンバーワンということで、かなり多くのお客様に戸建て向けのテレビドアホンを御利用いただいているという状況でございます。
もう少しテレビドアホンの内実に触れながら、今後どういう形でお客様へのお役立ちを拡大していくのか、それを目指したときの課題は何かというところを少し説明したいと思います。
テレビドアホンとしては、今、幸いなことに戸建て住宅というセグメントにおいてはナンバーワンシェアを獲得しているわけですけれども、あくまで、これまでどちらかというとスタンドアローン、住宅の中で完結している商品がほとんど全てでございました。
最近、ここ4~5年、ネットワークに接続するという機能を入れてまいりまして、ネットワークに接続して何をするかといいますと、お客様が来訪されたときに呼びボタンを押すわけですけれども、その呼び出しに住宅の外からでもお客様のスマートフォンを使って応対ができる、そういった機能を第一に訴求をしております。
今後は、ネットワークに接続する機能をもっと拡充してこの機器の役立つ領域を増やしていこうというのが我々が基本的に考えていることでして、ネットワークに対応するドアホンをいかにお客様に分かる形で価値付加を出していくか、あるいは我々も事業者の努力として、ラインナップの上でネットワークにつながるモデルをいかに増やしていくか、こういったところが今後我々がやっていくことかなと考えております。
具体的にはここからが今日の議論のポイントかなと思います。デジタル技術をどういうふうに活用しているかということで、今、外からスマートフォンを使って来客応対ができるという機能にも言及させていただきましたけれども、それだけではなくて、いろいろな技術を活用しておりますので、御参考までということになるかもしれませんけれども、御紹介をしたいと思います。
我々としては、テレビドアホンというデバイスを単なる来訪者応対の機能に押しとどめておきたくはないと考えておりまして、住宅設備におけるお客様とのタッチポイントの一つであると我々は広義に捉えております。
その中で、住まいが進化していく中で、我々のドアホンも機能を進化させていかないといけないということで、今映っていますように、例えばゼロエミッションの住宅が今後増えていく中で、エネルギーマネジメントのシステムと連携して、今、住宅のエネルギーの状況がどうなっているかというのをお客様に正確にお伝えする、そういった形でのユーザーインターフェースも実装しております。あるいは、昨今の自然災害が増えていると我々も認識しておりまして、大雨あるいは地震、そういったときに外部からアラートをこの機器に送ってお客様に警告をお知らせするといった機能も実装しております。
もちろん、各自治体様で取り組まれているような防災無線とか、いろいろな方法はあるのですけれども、通知する手段としては複線化されている方が望ましいと我々も考えておりまして、公的なサービスというわけではないのですけれども、我々の一つのサービスとしてこういった形の通知を画面で行うといったことも行っております。
繰り返しになりますけれども、来訪者応対だけというよりは、暮らしに必要不可欠な情報をきっちりとお客様にお届けするための一つの窓として進化を続けるといったところを我々の目標に一つ置いております。
モニター部分について今深く触れたと思うのですけれども、もう一つは、インプット、情報を収集するデバイスとしてのカメラの有用性も我々は今後よく考えていかないといけないと考えております。
ここにあるのはあくまで現行機種の御紹介にとどまっておるのですけれども、住宅の防犯目的のカメラを我々はドアホンとともにお客様に御紹介させていただいておるのですけれども、単に撮りっ放しのカメラというわけではなくて、このデバイスの中にAIが入っていまして、人の検知のみを行う。人がカメラのエリアを通ると自動的に録画を始めて、その通知をお客様にお届けする。お客様は気になる点があれば外から録画された画像を確認いただくということで、単に撮りっ放しのカメラというわけではなくて、本当に必要なときに作動して、通知も適切にお客様に行う、そういったカメラを頭をよくして、もっといろいろなことに使えないかということを今後は考えていこうと考えています。
こういった各デバイスのそれぞれ進化の方向性も我々は一定考えているわけですけれども、しかしながら、もう少し大ぐくりで考えたときに大きな課題もそこに存在すると考えていまして、今日は私たちの課題認識という点について触れさせていただきたいと思います。
そもそも今後どういうふうに我々のこの商品といいますか、世の中にあるテレビドアホンを発展させるべきかということをいろいろ考えているのですけれども、一つ大きなワードでくくるのであれば、冒頭も申し上げましたけれども、ネットワークで接続してもっとお役立ちを広げたい、あるいは価値提供の幅を拡大したいというのが我々の大きな考え方です。
例えばということになりますけれども、具体例はここには記載しておりませんが、テレビドアホンというのは実は住宅用火災警報器と連動するような仕組みを既に持っております。連動したときに何が起こるかというと、住戸の外にある玄関のピンポンを押すところから、火事が起きていますということを戸外に向けて発報する機能を実装しているのですが、なかなかそれだけでは連携しているメリットを十分にまだ社会として享受できていないと我々は思っています。
これは一例にすぎないのですが、既にある連携とネットワークの接続を使えば、テレビドアホンが住宅用火災警報器の発報を検知すると自動的に消防に通知をする、機械的に通知をする、そういった形の役立ちもできるでしょうし、あるいは、一定の地域の中で何か犯罪が起きたときに、ここの戸前についているカメラをあたかも防犯カメラのような扱いをすることで、地域の中で不審者を捜したり、そういったことも可能性としてはできるのではないかと考えています。どちらかというと、エンドユーザーというかお客様だけではなくて、お客様を含む社会全体がもっと安心・安全・便利というところをネットワーク接続を使うと実現できるのではないかと考えているところです。
この世界観というのは、別にそんなにとがったものではございませんで、進んでいる事例として挙げていますけれども、米国の大きなIT企業なんかは、例えばカメラとかスマートスピーカー、あるいは我々の商品に類似のドアベルカメラというものを自前で準備をして、そこから得られるデータを実際に様々なサービス向上とかパブリックな用途に既に使われています。実際に、犯罪の捜査をするのに、ドアベルカメラが撮りためている画像を警察に提供する。自動的にというよりはネットワークを介して確認ができるとか、そういう連携が既に実現しています。既に米国の場合は、具体的なデータの所有権はユーザーが持ってはいるものの、それをどう利用するかの権利は企業側も保有しているということがこういう商品を購入するときも明記されています。
一方で、それだけ明示したところで、このデータがどういうふうに使われるかということに関しては米国においてもいろいろな議論がありまして、いかに公益に資するとはいえ、勝手に住宅前の画像のデータを警察に提供するとはどういうことだということも含めて、いろいろな訴訟の事案もあると我々は理解をしています。
こういった状況でございまして、我々が今後目指していく方向性は比較的明確ではあるものの、先行事例として米国の例を見ると、社会に受け入れられているかという観点においてはまだまだ難しい部分もあるなと捉えております。
そこで、サマリー的になるのですが、我々の課題認識として少しまとめております。課題認識というのは、端的に申し上げますと、かなり機微なデータも含めていろいろなデータがございますけれども、それをどう利活用するか、それを社会にどう還元して、それが全体としての効率あるいは安心・安全をどういうふうに担保していくのかということに関するコンセンサスを形成していく必要があるのだろうなと考えています。
ここに挙げているような5点、細かくは読み上げませんけれども、端的に言うと、データが誰のものかということも含めて今後はっきりとさせていかないと、より大きな取組が難しくなってきているなと感じております。
そのためにはどうするかということですけれども、やはり我々事業者単独でこういう世界観をつくるのも結構難しいです。これ以上、仲間を増やしてというのも難しい面もありますので、そもそもこういったデータをどういう形で社会に対して還元していくのかとか、そういったところはグレーゾーンを踏まないと我々もなかなか実装できなくなってきています。グレーゾーンを受け入れられれば恐らくいいのでしょうけれども、駄目だという人がいたときに訴訟あるいは係争のリスクもあるということになると、なかなか踏み込めないところがございますので、やはりここは一つ法整備も含めて環境の構築が要るのかなと考えております。
ちょうど20分ぐらいになりましたけれども、我々としては、今後目指していきたい姿と、一方で、そこに対しては大きな課題がまだ残っていると考えておりまして、本日はそれについて発表させていただきました。
以上がパナソニック エンターテインメント&コミュニケーションからの発表でございます。皆さんありがとうございます。
○橋田座長 ありがとうございました。
ただいまの小笠原様からの御発表内容を踏まえて、質疑応答、意見交換をしたいと思います。御発言のある方は、挙手またはチャットでお知らせください。よろしくお願いします。
松前委員、よろしくお願いします。
○松前委員 松前と申します。
本日は貴重な御発表をどうもありがとうございました。
私からは2点お伺いさせていただきたいのですけれども、まず、最後の12ページ「必要と考えられる施策」の1の法規制の整備というところに関して、グレーゾーンがあるというお話があったかと思いますが、もう少し具体的に法制度のどの辺りを明確化してほしいというようなことがおありでしたら教えていただきたいというのが1点です。
もう1点が、11ページでアメリカの先行事例の話があったかと思いますけれども、例えばアマゾンのRingというカメラ付きのドアベルについては、先ほどお話にもありましたように、隣の家が映ってしまうとか、家の前の道路がまあまあ遠くまで撮影できて公道を歩く人や、その音声がとれてしまうといったことも問題になっていたかと思います。この辺りに関連して、御社のセンサーカメラでは契約をした御家族以外の同意をしていない第三者のデータに関してはどういう扱いをされていらっしゃるのか、また、今後サービスを発展させていくときに、こうした同意をしていない契約者以外のデータをどのように扱っていこうと考えられているのかという点を教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○小笠原氏 ありがとうございます。
まず1点目でございます。私は、法規制に関して取り立てて詳しいわけではございませんで、かなりピンポイントな答えになってしまうことは御容赦いただきたいと思います。
まず、テレビドアホンという商品の性質上、来訪者が意図を持って呼び出しボタンを押すと、その来訪者の顔の映像は当然ながら画面に映って、そして、昨今の商品ですと録画もされるということになります。これは、ある意味においては、来訪者というのは自分の顔が録画されることに関して同意をどこかでしているわけではない。しかしながら、社会通念上、テレビドアホンというのはそういうデバイスであるというふうな一般の理解がそこに存在しているので、肖像権といった話にはなりませんというのが、当社の中でもいろいろな議論がある中で、弁護士の先生にその辺を確認させていただいて、現行のテレビドアホンで来訪者が意図を持って来たときの画像はまずはオーケーですと。
オーケーはいいのですけれども、今後、例えば、これは何を確認しようとしたかというと、それこそ公道を歩いている方がいて、公道を歩いている方を検知して、その人が来訪するという意識がない中で録画したり、あるいはそれを誰かが例えば滞留してうろついていますというデータに変換してもいいですけれども、そういう形で何か意味のあるデータをそこから引っ張ってくることは大丈夫でしょうかという確認をしたときに、まず、何の形であれ自分の映像が撮られるという同意を全くしていない人を撮るのは駄目ですと。それは極めて微妙なところになるので、もし肖像権という観点で勝手に撮らないでくださいと言われると、メーカーとしても責任を問われる可能性があるというふうに、我々としては内部でそういう議論があったので、一旦そういう機能はやめましょうということで差し止めたという経緯がございます。
ですので、今後、仮にもし法整備として可能であるならば、例えば、町なかを歩いている人のデータというのですか、画像データのどこまでの解像度というのはあるのですけれども、例えば家の前で何が起きているのかとか、そういうデータを常に録画というか分析しても大丈夫か、何て言ったらいいのか難しいのですけれども、宅外の情報をより精度よく撮れれば、もっといろいろな社会への還元の方法があると思っていまして、それはアイデアベースがいろいろあるので、あまり営業の秘密に触れるとあれなので言いづらいのですけれども、現状、意図を持って来る来訪者か、宅内に許可なく侵入してくる人物の画像しか扱えないところをもう少し幅広にデータを取れるようにしたいなというのが、ちょっともやっとしていますけれども、そういうところの規制を少し変えられないかなと考えているところです。
すみません。上手に言おうとすると我々が考えている事業アイデアみたいなところにタッチしてしまうので、あまりうまく言えなかったのですけれども、そういう点がございます。
○松前委員 大変興味深く拝聴いたしました。どうもありがとうございました。
○小笠原氏 2点目に関しても、今触れたのと同様です。
○橋田座長 では、森座長代理、お願いします。
○森座長代理 御説明ありがとうございました。興味深く伺いました。
教えていただきたいのは、ドアホンのカメラで顔特徴量データを取っておられるのでしょうかということが一つ。
もう一つは、例えば、お話の中にもあったかもしれませんが、御近所といいますか、お向かいの前を映してしまうことにはならないかということです。
3点目ですけれども、警察への提供というのが11ページにありましたけれども、防犯とか捜査当局に映像データを提供するということになりますと、それは回しっ放しというか、宅急便の人が来てドアホンを押したから、誰ですかということで住民としてはカメラ映像を見ると思うのですけれども、そうではなくて、監視カメラのように撮りっ放しになって、それをリアルタイム、場合によってはリアルタイムではないかもしれませんけれども、継続的に撮ったものを提供したりするということなのでしょうか。
3点について教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○小笠原氏 1点目の顔認証といいますか、それについては現行のモデルでは対応はしておりませんが、海外のメーカーを含めて類似の技術を盛り込まれている商品もございまして、将来的には我々も当然実装していく必要があると考えています。
ただ、その使い方というのが、来訪者、誰でも顔の特徴量を蓄積するというよりは、決まった人、家族かどうか、知り合いかどうかとか、どちらかというとライトな形で利便性を増すような方向で活用するのが当面はよかろうと我々は考えております。
2点目に関しては、おっしゃるとおりで、現状どうしても映り込むことは避けられない部分はございます。ただ、先ほど申し上げたように、現状のモデルは、来訪者が来てピンポンを押すタイミングでしか画像を録画しないので、常時、隣が映っているということはございません。
一方で、外を監視する、こういった連動するカメラに関しては、どうしても自分の敷地外についても映ってしまう可能性はございます。ですので、実はデジタル的に敷地外を撮らないという設定ができるようになっておりまして、敷地内で何かが起きたときにだけ画像を撮るといった機能を実装して、不必要に隣家を監視したり、そこで見張られているというようなことがないように配慮はしております。
3点目でございますけれども、将来的には、玄関前のカメラを常時稼働させて、あたかもネットワークカメラのように振る舞わせるのかということについては、将来的な構想の中ではそうです。
実際、先ほど言及がございましたけれども、アマゾンのRingなどはそういった設計思想で既に設計されておりまして、基本的には常時カメラが動いております。必要なときだけ画像を転送するという機能がついておりますけれども、そこに、エッジで大丈夫だと思うのですけれども、エッジAIとか判断系を載せていくと、エッジAIが載ったカメラが一定程度市中にばらまかれるといろいろな解析ができるようになるのかなと思っています。不必要なときは特に起きてはいないのだけれども、何か事が起きたときだけアラートを上げたり、あるいは録画という実際の動作をしたり、そういっためり張りをつけた動作をさせることも将来的には可能なのかなと思っております。
○森座長代理 ありがとうございました。
ちょっと感想を申し上げますと、顔特徴量データのお話は、ユーザー的には誰が来たのかなと見るためのものなので、御家族だったら御家族と分かりますので、それがユーザーのための利便性を上げているのかなというのは疑問に思いました。あと、常時撮影するけれども、エッジAIにすることによって適切な限度で撮影するということなのかもしれませんが、そうは言っても常時撮られるということになりますと、一戸一戸の住宅のカメラがある種の監視カメラになるということだと思いますので、若干、法制度的な敷居が高いのかなと感じました。御説明どうもありがとうございました。
○小笠原氏 ちなみに、補足しておきますと、顔の特徴量に関しては、それで終わるわけではなくて、例えば次のアクション、鍵を開けたり、御家族の方はハンズフリーで入れるとか、そういう使い方を実際に海外メーカーはいろいろされているので、そういうところは利便性かなと思っています。
○森座長代理 なるほど。顔認証として使うということですね。分かりました。ありがとうございました。
○橋田座長 原田委員、お願いします。
○原田委員 御発表ありがとうございました。原田と申します。
御質問と希望が1つずつですけれども、1つはスマートフォン接続が9ページに載っているので、誰かが来訪したらスマートフォンのほうに通知が来るというようなシステムを構築されていると伺いましたが、これは来訪者にスマホから対応されているということが分かるのでしょうか。
なぜこんなことを聞いているかというと、スマートフォンから対応しているということは、その家が留守だということが分かってしまうので、逆に悪用されないのか、この家は留守なのだなと数人で入ってくるみたいなことになるとちょっとあれかなと思ったので、来訪者はスマホで対応されているのか、実際に中から対応されているのかというのが分かるのかどうかというのが1点。
もう一つは、よく訪問販売などのケースですと、私も経験があるのですけれども、ピンポンと鳴らして画面を出すと大体隠れるのですよね。隠れるので顔が映らないで、ただ、ピンポンが鳴ったので出てみると横からひょっと出てくる。悪いやつほどカメラから隠れようとするという人がいるので、例えば、ピンポンと鳴って、今までのように映っているという前提ではなくて、何も映っていないということになったら、例えば訪問販売のケースですと、「契約する意思はありません」みたいな拒否の意思表示みたいな機能がついてくれると有り難いなと。つまり、本人が拒否しているにもかかわらず強引に押し売りをしてくるみたいになれば、特商法的に有利かなみたいなところがあるので、映る画面が逆に何も映っていないとか、訪問販売に対して最初から画面に出ないと拒否をするような機能みたいなことの検討はできるのかというところを2点お願いします。
○小笠原氏 まず1点目の件に関しては、基本的に来訪者側からはどこから応対されているかというのは認識できません。宅内でも、わざわざモニターのところに行かなくてもということで、スマホから応対される方もいらっしゃいます。ですので、全くそこは分からないだろうなと思います。
もう一つの点、我々もエンドユーザーの方とヒアリングしながら年々機能を拡充したり、お客様に対して新しい機能を提案している中で、幾つか同じようなことを課題として伺っています。
これまでやってきたことの一つは、玄関前のカメラを横に広角にする。ほぼほぼ隠れるところがないぐらい、カメラの近くにいたら横にぴったり張りついても誰かいるというのが認識できる程度の広角、170度ぐらいするのですけれども、そういうカメラを今載せている。
もう一つが、自動で応対する。たとえ家の中にいても、会話を始めると相手のペースにはまってしまうというのもあると聞いていまして、お客様が来訪してピンポンを押されたときに、「用件を言ってください」とか、「結構です」とか、機械的にボタンを押したらそのまま話が終わるみたいな、なかなか冷たい対応をしづらい住人の方もいらっしゃいますので、そういうふうに機械的に応対するような機能も実装しています。
それがどこまで本当にお客様のためになっているかというのは、僕らも具体的に分かっているわけではないのですけれども、おっしゃられていたように、お客様からはそういったお声もたくさんいただいておりましたので、スタンドアローンではありますけれども、そういった機能は一定実現してきているのかなと考えています。
○原田委員 ありがとうございます。販売目的を本当はちゃんとその場で言わなければいけないのですけれども、販売目的を言うとまず絶対開けてくれませんので、そこら辺はグレーなところをかいくぐって訪問販売をしている事業者さんがいらっしゃるので、なかなか断れない人が、自動音声で「帰ってください」と言ってもらえるというのは非常にいいのかなと思いました。
もう一個前の御質問に関しましては、ただ、本人が「今、外出中で、いないのですよ」と自分からしゃべってしまったりするだろうなと思ったので、そこはもうユーザーさんの使い方によるということになってしまうということですね。
○小笠原氏 そうですね。そうなってしまいます。
ただ、今おっしゃっていただいたところで、訪問販売は販売目的であるということを言うことが義務づけられているというのはありますけれども、ある意味において、テレビドアホンというのが、訪問者が何であるか、誰であるかというのを認証する一つのデバイスだというふうに広義に捉えていまして、そういう意味では、よくあるのが宅配業者さんだと思うのですけれども、今一番多い来訪者が宅配業者さんで、宅配業者さんが自分は正規の宅配の任を負って来ているということをある種認証したいという思いをお持ちの事業者さんもいるというふうに我々は認識しているので、そういう意味でも、どうやって実現していくとより安全な応対ができるのかなというところについては、今後の発展の芽があるのかなと考えているところです。
○原田委員 ありがとうございます。
○橋田座長 どうもありがとうございました。
小笠原様におかれましては、貴重な御報告をいただきましてありがとうございます。この後、関連する議論も出てこようかと思いますので、差し支えなければ引き続き御参加いただけますと幸いです。
次に、スマートホーム等の取組に関して、一般社団法人電子情報技術産業協会スマートホーム部会様から御発表をお願いいたしたいと思います。
では、一般社団法人電子情報技術産業協会スマートホーム部会の丹先生、20分程度で御発表をお願いいたします。
≪2.②事業者団体ヒアリング(一般社団法人電子情報技術産業協会スマートホーム部会)≫
○丹氏 分かりました。JEITAスマートホーム部会部会長の丹と申します。
JEITAは、電子情報技術産業協会といいまして、日本における自動車工業会に次ぐ規模の大きな産業会になっておりますが、今日御発表されている皆様もJEITAの関連の会社さんで、パナソニックさんなんかは現在セキュリティーのワーキングの委員長をやっていただいたり、プライバシーの委員長もこの間までやっていただいたりという感じですし、セコムさんは初代のセキュリティー委員長でしたが、そういうような感じの皆さんとなっております。委員の先生方にも随分とJEITAとしてはお世話になっております。
私のほうですけれども、私は大学に勤めている人間なので、中立的にネガティブな部分も含めて言えるかなというところで、今日ここに来させていただきました。
JEITAのスマートホーム部会の部会長とともにECHONETコンソーシアムのフェローという立場もありまして、スマートホームというか、もともとはホームネットワーク、さらに遡りますとホームオートメーションと言っていた世界の標準規格や何かに関して30年ほどやっておりますので、経緯や何かも含めて今日はお話しさせていただければと思います。
まず、これが一番厄介なところで、スマートホームとは何ぞやという話です。これは、それぞれの業界団体が定義をすることもあるのですけれども、基本的には定義できません。結局、ICTを活用して家の中で行うことをサポートするようなシステムがみんなスマートホームですというざっくりとした言い方しかありません。
家の中にはいろいろな人がいて、いろいろな活動をしていますよということで、それでいろいろな要求が出てきます。そこで挙げました物理環境の維持とか省エネと書いている、大体この5分野はもう大分確立していて、具体的にどういう製品が出ていて、どういう制度の下で動いているというのが見えているのが5分野なのですけれども、スマートホームといったときに、本当は家という単位で賢くあってほしいと期待するのですけれども、現状はそうではありません。1つのカテゴリーの中のサービスが別のカテゴリーのことはほぼ知らないで動いているという形になりますので、ばらばらに動作をする。一番極端な例が、省エネをするのだったら他のサービスを全部止めて回ればいいではないかという感じの話にもなってしまうということで、本当は家全体として賢くあってほしいのですけれども、なかなかそうはいかない。
さらに、家というのはもともと住宅メーカーさんが造るもので、家の価値はもともとは建物自体にあったのですけれども、そこに機器メーカーさん、あるいは情報系のもともと家とはかなり遠かった人たちが入ってきて、むしろ価値がそちら側に移っているというところで、今度は住宅メーカーさんが危機感を持っているという状況にあります。
この分野は、実はかなり古い分野でして、今、4ページの説明を始めていますけれども、最初は1970年代から始まります。マイコン内蔵の家電が出てすぐに、その家電同士をつなぐという話を日本のメーカーさんは始めていまして、間違いなく日本はこのとき世界のトップランナーで、15年ぐらい世界に先駆けていました。
その後、ホームオートメーションというのがなかなか離陸しないまま90年代に入りまして、デジタル家電という形になりというふうに進んでいくわけですけれども、一番ポイントとなるところは、2000年ぐらいのときに日本のメーカーさんが考えていたホームネットワークとかスマートホーム、ホームオートメーションを一通りつくってみたら商品性がなかったということに気がついて、省エネのシステムは省エネどころか、その機械が食う電気で逆に電気が増えるとか、いろいろと問題が明らかになってきました。
そこを解消するというか、次のポイントになったのがWeb2.0ということで、インターネットの世界になってきて、そこでシステムの考え方が大きく変わっていきます。
それで、2010年というのは、本当は日本においては日本型のスマートホームの一つの終着点がここで出来上がる。NTT東西さんが、この当時でもフレッツは相当な家庭に入っていますし、電話網も黒電話を引き上げてみんなIP電話に替わるということで、ほぼ全世帯にNTTさんの箱が入っているという状況の下、その箱をみんなで使って家の中でサービスをやるという構図をつくり上げるというところまで日本は来ました。そこで、サービスを始めようとした正にその時期に東日本大震災が来て、電気すらないのにそんなことを言っている場合かという話になってしまいました。ということで、日本の場合には、そこで10年間、ほぼエネルギーのほうにそれこそ我々のエネルギーが食われました。
その間に2012年ぐらいから米国で違う動きが出てきて、Amazon Echoというのが2015年なのですね。そこでスマートスピーカーというのがぼんと出てきた後、それがスマートホームだというふうに何となく世の中に認識されて今に至りつつあるということで、実を言いますと、2010年までで日本が目指していた世界とアメリカ型のスマートホームはかなり違ったものであるというところはあまり世の中に知られていません。
それで、今、日本型という流れについては、アメリカ型が普及し始めているので、それを許容しつつも、赤字で書かせていただきました「社会基盤の中のスマートホーム」、これは特に今の総理になってデジタル田園都市国家構想ということで交付金のつけ方もがらりと変わりまして、そちら側で個人に対する私財としてシステムを売るというところから一歩踏み出すというところに差しかかりつつあるというのが今の状況となっております。
一番下に箱でフォーラムとか団体を書いてありますけれども、実を言いますとECHONETというのは20世紀の団体なのですね。それが今でも生きて、規格をつくっています。一方で、スマートホームが出て日本はどうするのだというのでつくられたのがJEITAスマートホーム部会ですので、これだけの時間の差はあるのですけれども、今やっている内容はほぼ重なっていまして、それで今ジョイントのワーキングやなんかを盛んにやっているという状況にあります。
さて、次のページから、スマートホームの実現方法の話をざっと御紹介します。20世紀まではコントローラーというのが家の中にいて、それで全部コントロールするというモデルで大体よかったのですけれども、これは複雑なことをやらせようとすると、ソフトウエアの改修費用で何百万円も毎年かかってしまうということになる。これはちょっとたまらないねということで、「サービス」と書いてある緑色の箱が左側のほうに出現していますが、今度はインターネットというものが出現しましたので、会社の中にあるソフトウエアと家の中にある機械を24時間365日つながっていますよという前提で使うことができるように変わりました。これによって劇的に効率がよくなったという側面がありました。
2000年以降、2002年ぐらいから白物家電のほうが始まりますし、そのちょっと後ぐらいからAV家電というような感じで、今にも至るところが大体こういう、いわゆる垂直統合になってしまうのですけれども、カテゴリーごとの統合のモデルです。
一方で、先ほど申し上げた2010年と言っていたのは、間に集約点のようなものを置き、NTTさんのルーターというところをうまく使って、家の中の任意のものを動かすという構図が日本型のプラットフォームというものです。これは今でもNTT東西さんでフレッツ・ジョイントという形で、サービスはやめていませんが、今さら使うというには、お値段的に合わないという状況になっているというのが実情です。
一方、日本が震災で止まっている間に出てきたのが、次の図で、右上のところにちょこっと今までのゲートウェイが残っていて、ぼこんとインターネットにいきなりつながっているデバイスが現れた。インターネット直結型ホームネットワーク、これがアメリカが持ち出してきたものです。日本のメーカーさんたちの考え方では、これは危なくて、ないだろうというので極力避けていたというモデルですが、スマートスピーカーをはじめ、周辺機器やなんかは基本こういう構図でつながっていますので、そういうものが世の中に増えてきたということはもう否定できない状況にあります。
一方で、エネルギー機器のように下手な操作をされると、変電所以下、自分の近所がみんな停電を起こすことができてしまうようなものを含むものに関しては、従来どおりゲートウェイ型、ゼロエネルギーハウスの補助金もそういう形のものに対して補助金がついているというのが現状となっています。
とは言いながらも、それをいかにインターネット直結型とうまく折り合いをつけて取り込んでいくかということで、プラットフォームのところの検討が今進んでいるというのが今正に行われていることになります。
ここの中で、ゲートウェイ型、つまり、日本型とIoT型(米国型)というものが出てきましたが、これを極端な形で書き表したのが右と左になります。ゲートウェイ型は、そもそもの思想がユニバーサルサービスでデジタル・デバイド解消に役立つというような感じの、どちらかというとターゲットが高齢者であったり、社会課題解決の省エネというところから出発しています。一方で、IoT型というのは、自分でコンフィギュレーションができるような方々を対象として、自己責任ですごい高度なこともできちゃいますというのがアメリカ型という基本的なスタンスの違いがあります。
左側の日本型は、全体として動かしたときに齟齬がないかとか、セキュリティーは大丈夫かというような話を念入りにやってからやりますので、どうしても開発期間が長く、お値段も高くなってしまいます。それに比べると、今世の中で出回っている、それこそアマゾンでぱっと買ってこられるネットにつながる何とかというので、スマートスピーカーから何かできますというパターンは、動くということを誰も担保してくれませんけれども、それを動かして使いこなせる人にとってはとても便利なスマートホームがつくれるかもしれないよというのがアメリカ型です。こちらのほうが製品が素早く出てきますし、似たような製品、どうしてこんなに同じような格好をした製品が違うブランドでいっぱい出ているのだろうという感じのマーケットに今なっているというのが右側になります。この2つは全然違うのですけれども、右側のほうがスマートホームだ、スマートスピーカーの周りにデバイスがあるのだと思っている方が結構多いなというのが実情です。
下のほう絵にありますように、日本型と書いてありますのはここのところが集約点みたいな感じになっているのですよ。アメリカ型のほうはここのところが集約点になっているのですけれども、一番上、これはほかならぬGAFAMがここに座っているわけです。なので、アマゾンがいるのであれば、アマゾンにとってグーグルは不要なのです。だから、グーグルホームがなくて、Amazon Echoだけで家の中を組んでくれれば、それで皆さん幸せになります、そういう基本的な考え方です。
それに対して、左側の日本のほうは、いろいろなメーカーさんもいるし、いろいろなサービスを提供する方もいるし、そこの間でどううまく、ある意味対等関係をつくってビジネスをやっていこうかと、そこが大きな違いになります。現状は、先ほども申し上げたとおり、危険性のあるところはゲートウェイ型なのですが、それ以外のところはIoT型が随分と日本でも広まっているというところになります。
いずれにしましても、家の間取りとか什器の位置という形で、家という形をきちんと認識した上でのインテリジェンスというところまではどちらのアプローチも至っていないというのが現状ということになります。
次のページに図がありますが、先ほど申し上げましたとおり、今日本ではデジタル田園都市国家構想で、個人に何か売るというところから一歩踏み出ようとしています。それを実現するためには、どこのメーカーの製品を買ってもそういうサービスがちゃんと行えるという意味で、メーカー非依存性を出す必要があります。
もう一つ極めて重要な点は、一番真ん中のところに「データ」というドラムが描いてあるのですけれども、これは偶然ではなくて、今価値を生むものはデータです。それで、一つ一つの家電、例えばエアコンの室外機から取れた温度というのは、どこの気象会社も持っていない非常に細粒度の温度です。そこの温度の変動を見て、先週に比べて何度上がると次の週から皆さんはエアコンを使うというのが、実は家電業界ではみんな分かっています。なので、そこに遡って、そこでみんなが一斉に使う前にエアコンを1回試運転しましょう、試運転して故障していたら今のうちに修理をお願いしますという形にして、暑くなってから一気に修理がばっと来ないようにということをやります。
そのデータというものも、実は1社だけのデータでは足りないのです。データにはある臨界点みたいなものがありまして、それ以上の数が集まると非常に有効性が出てくる。それを集めるためには、メーカー横断でデータを集めるということを目指していかなくてはいけない。そういう認識で、JEITAスマートホーム部会のほうではイエナカデータ連携基盤というものを何とかつくれないかということを検討しています。
そこの上の出口のところで、デジタル田園都市国家構想インターフェースなどと書いてあるとおり、今までの個人売りのサービスではなくて、これを行政のサービスでも取り上げてもらうというところを想定しているということになります。
こういうようなお話を進めていきますと、想像が容易かなと思うのですが、こんな複雑なマルチステークホルダーのシステムでどうやって契約して合意を取るのでしょうということが極めて難しい問題になります。
正直なところ、違う業界がいっぱいあって、1つサービスの動き方が変わるだけで、もう一回同意の取り直しということになるような世界ですので、本当は全体像を把握できるようなメカニズムをつくって提示することが必要だというのは認識していますけれども、今のところは決め打ちでこれこれをやりますよというところに関して同意を取るというところで、それによってサービスがどんどん発展していくというところが大分足かせになっているような状況にあるというところが現状になります。
ガイドラインみたいなものを作って個社の同意を混乱なくみんな取れるようにという話もやってみたのですけれども、やはりなかなか厳しいのと、皆さんそう簡単には乗ってくれないところで、難しさはいまだに残っています。AIの活用というのを今後の期待としています。
それで、今課題として出てくるものは、先ほどのパナソニックさんが御指摘になったような話にも関わるところではありますが、まず、今IoT型の製品が増えているので、自分で設定できない高齢者の場合には離れている家族がわざわざ足を運んで最初の設定をしてくる。ところが、セキュリティーのアップデートがかかって、その設定からもう一回パスワードを入れ直して何かやらなければいけなくなったというと、また、おじいちゃんちに行ってくるねという話になる。そういうことが現実に生じています。これは、昔、例えば電話に加入しますといったときに、おじいちゃんちも電話が入ったんだねで終わりなのですけれども、今、スマートホームはそうはならないということを意味しています。
2番目はマイナーな話なので置いておきまして、一番下のところです。クラウド側の機能に依存した形でデバイス側も動いていくというような形で、ここでどこまでがデバイス側のほうに載っていて、クラウド側でどこまでの機能を担うかというところは、設計の自由度があります。
そこの中で、こちら側に重きを置いているデバイスは、クラウド側というものを止めてしまうと、自分の家にある物が大幅に機能制限されることになります。これが目新しい技術系のデバイスで、2年もたったからもう古いんだよというので済めばいいのですけれども、実はスマートロックというような自分ちの鍵でこういうことも起きています。
鍵というのは、本来、住設メーカーさんからすれば、家が壊れるまでということで、本当の住設メーカーさんは電子錠は補修部品を50年分用意するそうですけれども、これがIoT型では買って次の月にクラウドをストップしますと言われちゃったという例も出ています。これは非常に今問題になっているところではありますね。
それから、先ほどのデジタル田園都市国家構想へのインターフェースの実例といたしまして、私が勤めています大学があります石川県能美市が非常に積極的に取組をしてくれています。
この図の一番下のところに並んでますオレンジ色の箱の一番右側が、イエナカデータによる何とかと書いてありますが、これは今年の分のものなので、昨年分のところにはイエナカデータによる高齢者の健康管理とか見守りという話が入っておりました。そこから、そういうシステムをベースにして今どんどん広げていっているという段階に入っています。
次のページです。能美市のシステムは、石川県庁とタイアップして都市OSを構築していますというのもあるのですけれども、何ができているかという話に関しましては、エアコン、空気清浄機のデータから生活パターンが取れます。それから、熱中症で危険な状況になったら強制的にエアコンをかけて温度を下げましょうとか、冬も高齢者は低過ぎる温度で生活するというところをある程度の温度を担保する。ここをメーカー非依存の技術を使って標準技術で、どこのメーカーのものでも基本は動きますよということをやるというのが1つ。
それから、2番目のところにあります、その動作をしたのを今までですと個人加入でしたので、そこで動作しておしまいだったのですが、これから、行政がまとめて入れて、要注意な高齢者のところには一部無料でという感じの話にもなっていますので、当然ながら、その情報は行政のほうと介護事業者、医療関係者、こういうところに自動的に通知することができるということで、独居老人の対処というところも円滑にお互い連携して行うことができるような一つのきっかけになります。
それから、今回我々と一緒に動いているメーカーさんの製品の一部に、言葉をしゃべる機能があります。この機能は、ピーピーと音が出るというのではなくて、人間の肉声をしゃべります。これは、昔ですとその場で音声合成していかにもロボットチックな声が出ていたのですけれども、今は誰かがしゃべったやつを録音しておいたものを発話させることができます。クラウド側から、必要に応じてクラウド側に録音してあったデータを出すことができます。
特に今効果を期待しているのが、災害時の避難誘導のときに、自分の息子とか聞き覚えのある声で呼びかけをするようなことを今やろうとしています。垂直避難が必要になったときには1階と2階の空気清浄機が、1階の空気清浄機が「おばあちゃん、2階に逃げてよ」と言ったところで、2階に上がると、空気清浄機はセンサーの固まりですから部屋に入ってくるとすぐ分かるのですけれども、そのときに「おばあちゃん、2階に逃げてくれてありがとう」と言う。そういう連携もできるということで、そこの可能性を能美市のシステムではこれからも追求しようとしているところになります。
「今後に向けて」は、もう時間もなくなりましたので飛ばしますが、先ほど出ていた倫理的な話ですね。こういうのが必要ですということです。
今までお話をしてきた内容が最後のページに書いてありますが、一番下にありますとおり、スマートホームというのはアメリカのスマートスピーカーがもう完全に先行していて、日本は全然駄目だと見られている節がかなりあるのですが、それは我々としては不本意で、全然違う思想で、もっと着実に、より広く、多くの人々のためになるようなシステムをつくれる可能性が日本にはある。技術的なアドバンテージはまだ一定ありますし、国際競争力という観点でも、まだまだ競争力はこれから期待できるところもありますよということで、継続的な取組が必要だと思っています。
以上です。
○橋田座長 ありがとうございました。
ただいまの御発表内容を踏まえて質疑応答としたいと思います。御発言のある方は挙手またはチャットでお知らせください。よろしくお願いします。
原田委員、お願いします。
○原田委員 御発表ありがとうございます。すごく勉強になりました。IoT型とゲートウェイ型の違いというのが非常に分かりやすかったです。
契約の難しさというところがあったかと思いますけれども、正にそのとおりだなと伺っていたのですが、IoT型のところ、米国のやつも、いろいろな契約をするときに必ず利用規約みたいなものがあって、インターネットとかネットワークを使うものは複数のステークホルダーみたいなものがいっぱい入ってくるので、利用規約に事業者側がみんな免責になってしまって、問題が発生したり、急に動きが悪くなったり、動かなくなったり、乗っ取られたとか、そういうようなシステムチックな問題が起きたときに、事業者側が免責になりますよ、利用者側の責任の下にやってくださいよというふうに、ネットサービスの利用規約は大体なっているのですよね。
そうすると、日本型のゲートウェイ型で、どっちにしろ利用者側の問題になって、利用規約には事業者側は免責になりますよと書いてあったら、結局、どっちを使っても同じかなみたいに逆に思ってしまうのですけれども、そこら辺はどうなのでしょうか。
○丹氏 ありがとうございます。
さっきの図を御覧いただくと、ゲートウェイ型というのは、家の中の入り口のところに、ここにゲートウェイがいるのですね。点線で囲っているところが家の中となります。ゲートウェイ型の一番大きなポイントは、デバイスを増やすときに1つ関門があるということなのです。事業者側が想定していないデバイスを勝手につながれる確率は、ゲートウェイ側のほうが低く抑えることができる。
一方で、完全にクラウド型、IoT型のほうになりますと、このデバイスというのが実は真ん中のクラウドも通らないでいきなりここにつなぐようなやつもあり得まして、ここの上のメーカーというか、上のクラウドのところでちゃんと管理をしていればまだいいのですけれども、簡単に言ってしまうと怪しいものが紛れ込む可能性もある。それで、どこでどれだけ信用のある相手とつないでいるのかというところを、今度はデバイスのところではなくて、クラウドのところでやっていかなければいけないのですけれども、それをちゃんと誰かが統制を取ってやるかという話になってきます。
なので、結局のところは、御指摘のとおり、どちらにしても契約上同じような文面になるかもしれないというのはそのとおりなのですけれども、前提となるというか、実際にやろうと思ったときの状況が結構違ってくるというところはあるのかなと思います。
○原田委員 ありがとうございます。
要は、ゲートウェイ型だとセキュリティー的にはしっかりしている。いきなりへんてこなところがつながってくるようなことはないというところも安全性的にはかなり担保されているから、利用規約にそうあったとしても安全性的には高いということですかね。
○丹氏 そうですね。ですので、今、インターネット原理主義というのは悪口ですかね、インターネット的な考え方、何でもかんでもオープンで対等につながってという観点からすると、今、ゲートウェイ型でやろうとしているときには、ホワイトリストということで、このメーカーさんのこの機器をつないでいいよという機器しか通信の段階でつながせないというような仕組みも実は入っているのです。
それはインターネット的な観点からするととんでもない話であって、お叱りを受けることも多いのですが、先ほど申し上げたとおり、それこそ火事になってしまったり、停電を起こしたりということになりかねないようなデバイスに関しては、そういうことをしてでも安全性を担保しなければいけないのではないかなということで、やはりゲートウェイ型の優位性は一つ残っているのかなと思います。
○原田委員 確かに安全性的なところではそうなのかなと思います。
契約には利用規約が欠かせなくて、その利用規約というのが消費者保護的に見るとやはり事業者側の免責が大きく立ちはだかっていて、結局は不利益を被った消費者の自己責任になるのですよというような内容になっていて、そこら辺の規約の条項自体が問題になったりするケースが多いものですから、そこの部分に免責事項がばっといっぱい入ってしまうと、安全性が高かったとしても、逆にうちは安全性が高いから操作ミスとか何か問題が起こったのは消費者側の問題なのですよというような流れにならなければいいなというところを懸念したところです。ありがとうございます。
○丹氏 ありがとうございます。
御指摘の懸念は分かりました。ただ、僕からすると、IoT型はとにかくもっとひどい状態になっているので、それ以前の問題があるかなというところですね。
○橋田座長 私からいいですか。インターネットの世界でもそんなにむちゃくちゃであるわけではなくて、アプリストアなんかではちゃんとアプリの審査をして、オーケーだったものだけを使えるというふうに管理はしているわけなので、住設機器とか家電に関しても同じようなことはIoT型でもやろうと思えばできるのだろうなと思います。
そこで、この辺りの話が一昨年か去年ぐらいに生成AIが現れて結構変わりつつあると思っています。つまり、もう普通に言葉が理解できるので、お年寄りでもAIと話をすれば、アプリやウェブサイトをいじったり、取説を見たりしなくても、AIが適当にサービスを呼んできて提供してくる、あるいは機器を家のネットワークにつなぐためのプロトコルはこうだから、それをAIが操作してちゃんとつないでくれるみたいなことは、恐らくもう既に技術的には可能になっているんだろうと思うのですよね。
○丹氏 僕はそこまでは楽観的ではなくて、将来的にはAIを活用して、先ほど申し上げた、自己責任で構築しますというところも楽になっていきますし、それから、先ほどの契約というところで書いた、僕自身も少し研究テーマかなと思っているのは、今このサービスを実現しようとしたときに契約の関係がどうなるかとか、自分の開示したデータが、例えば生データから高次データと呼ばれる加工されたデータになります。この高次データ自体がまた新しい価値を持ったりするので、それは再利用したいという意向がいろいろ出てくるのだけれども、僕がここで許諾したのはどこまで含んでいるのかなというのをビジュアライズして見せてあげるという技術が必要で、それは機械的なグラフ的にやれば済む話ではなくて、結構AI的なことをやらなくてはいけないかな。そういうところにAIは使えて、少し問題が解決に向かうということはあるかもしれませんが、近々、劇的に変わるとはあまり思っていないというのが僕のスタンスです。
○橋田座長 機器の扱いに関してはいろいろな課題があるのだろうと思うのですけれども、アプリとかウェブサイトに関してはほとんど技術的にそれが可能になっていると思うので、恐らく10年もしたら誰もアプリやウェブサイトはいじっていない、AIと話をしているというふうになっているのではないか。
そうすると、いろいろな機器を操作する、あるいはネットでも何でもいいですが、いろいろなアーティファクトを操作するというのは、私のパーソナルAIと話をするということであるというのが常識になってくると、家電機器、住設機器だってそうだよねという話になりますよね。
それを前提に考えたときに、さっきおっしゃったような問題は自然にそれで解決されるのだろうし、そのときデータはどうなるかというと、各個人が自分のAIを使っていろいろなサービス等、デジタルに直結するという形になれば、いろいろなサービスに入出力をするデータはおのずと本人の手元に集約されますよね。それを本人が自ら自分のアプリで管理して、それを自分のAIにフル活用させたり、あるいはいろいろなサービス、住設機器とかに食わせてサービスをさせるという流れが自然になるだろうと思うのですが、それはIoT型とゲートウェイ型の中間というのかな、どっちなのでしょうね。
○丹氏 実を言いますと、そのレベルの話は、IoT型かどうかの話よりももう一段先の話なのだと思っています。
今おっしゃった観点はすごく重要で、僕は最初のところで、家としてスマートにするという話が今できていないのですという話を申し上げた。それで、家としてスマートにするというのは、ほかでもない、家としてのエージェントみたいものができて、そこの中で人間として、今、この人間の周りの環境はこうでなくてはいけないのだけれども、それを実現している中で省エネのアプリケーションを動かしてという、そこをちゃんと人間の代わりに判断してくれるような高度な処理が入ってきてしかるべきなのだと思うのです。そうなったときに、裏側がどういう実装になっているかとか、デバイス側がどういう接続になっているかというのは、長い目で見るともうどうでもよくなると思います。
今、現実問題としてIoT型のデバイスが増えているというのは、それはコストの面も含めてそちらのほうに一定の優位性があるからということは事実だと思います。ただ、セキュリティーの面で、例えばそのデバイスが正しくそのデバイスでありますよというのをちゃんと担保するためのメカニズムがないと、インターネットに直接つながるケースの場合だと、それが区別のしようがない。
先ほど来言っているゲートウェイ型というのは、実を言うと物理的に近いところでインターネットとは別の技術でつながっているので、物理的にちゃんとこの近辺とかこの家の中にありますというのを別のやり方で担保しているのですが、それがサイバーの空間の中で証明書を使うなりしてちゃんと全部担保できる、しかも、それがローコストで、将来にわたってもランニングコストは気になりませんというところになってくれば、それはそれで問題がない世界になっていくのだと思います。
○橋田座長 そのときに、本人のところにおのずと集まってくる、本人あるいは家族のデータを本人あるいは自分たちがフル活用できると、本人たちの価値は最大化するわけですけれども、住設機器とかを提供した事業者はデフォルトでどこまでそのデータにアクセスしてもいいのかとか、あるいは、前の御発表の中であったような公共目的に使うときにはどういう仕切りが必要なのかということが整理されていくと随分よくなるのではないかなと私は思っています。
○丹氏 そうですね。ただ、大分先の気はしますけれども、おっしゃるような議論は必要な方向には向かっていると思います。
○橋田座長 他にどなたか御質問、御意見はいかがでしょうか。
坂下委員、よろしくお願いします。
○坂下委員 どうもありがとうございました。委員の坂下です。
丹先生に1つ質問したいのですけれども、能美市の例がありますよね。ここのページを見ると、地理的に分散している孤立無援な住民たちが消費者として動こうとしたときに右下の仕組みが必要だというふうに私は読めるのです。
そのように考えると、この委員会というのは消費者をエンパワーメントするという話なので、これを使うと地理的に分散した孤立無援の方々は最低限のサービスが受けられるようにはなるでしょうと。それを提供するときに問題になるのは契約であると。その際に免責がいろいろ規定されている面倒くさいものに同意をするということはとても困ると。そこをエージェントのようなもので代替できれば、それはエンパワーメントできるのではないのかというふうに読めたのですけれども、そのエンパワーメントするものがAIという技術なのか、それとも今の規定みたいなものを見直して、高齢者の方でも分かりやすい、家族の方でも分かりやすいものをつくるのかというふうに読み取ったのですが、そんな理解でよろしいのでしょうか。
○丹氏 ここで言っているのはそんな高度な話ではなくて、要は、人がどんどんいなくなっている地域は、もう集落がまばらになっていくのですけれども、そこのまばらになっていくそれぞれの集落に公民館が残ったりするのですよ。そこの公民館というのはかなり特殊な建物で、ある意味誰が入ってもいいのですけれども、一方で、お互いに顔がちゃんとつながっている人しか入らないのですよ。
今、デジタル公民館ということで能美市がやろうとしていることは、実は言うと、例えば宅配ボックスの代わりに公民館を使うのですけれども、そのときに配達された物が正確に誰のもので、それに対しては本人しかアクセスできませんということは全く担保しないのですよ。そこは地域コミュニティーの共助というか、コミュニティーの力を想定して、単純に配達する人が鍵を開けるというところだけデジタルになっているという世界なのですね。
だから、これはシステムみたいな話と人間と人間との関係のミックスになっているという例ですね。
○坂下委員 ライドシェアがそうで、ライドシェアは、その地域にコミュニティーがないとなかなか成立しません。だから、顔が見える関係がないと、実はこういうのを入れてもビルトインされなくて、それを誰が仲介するかというと、能美市の場合だと自治体が多分やるのでしょうけれども、そこの自治体も人がどんどん減ってきてサポートができなくなってくる。
この絵を見ていて思ったのが、デジタル村みたいものがあって、そこの村民になれよと読めたので、そういう形のアーキテクチャーの上で動くものなのかなという印象を持ちました。
私からは以上です。
○丹氏 実を言いますと、能美市が今デジ田で先行している一つの大きな理由は、お互いに話し合うという場がかなり特異的にちゃんとできているのです。これは、もともとスタートの点は医療・介護・行政連携だったのですけれども、医療・介護・行政という下手をすると責任の押しつけ合いになりがちな3者が、今、人口が減り、在宅で死んでいく人が何百人も毎年いるような状況の中、どうしたらいいのかということを年間に50回も会議を開いて、もともと人間同士の関係がちゃんとできていて、そこにシステムをぽんと投げ入れたらすごくよく動きましたという話なのですよ。だから、順番はデジタルが先にあるのではなくて、人間のコミュニティーが先にあったという例です。
○橋田座長 他はよろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。丹先生におかれましては、貴重な御報告をいただきました。この後、関連する議論も出てこようかと思いますので、もし差し支えなければ引き続き御参加いただけますと幸いです。
次に、見守りサービス、コミュニケーションロボット等を提供されているユカイ工学株式会社様、セコム株式会社様から御発表をお願いしたいと思います。
ユカイ工学株式会社の鈴木様、セコム株式会社の河村様、合わせて20分程度で御発表をお願いいたします。
≪2.③事業者ヒアリング(ユカイ工学株式会社、セコム株式会社)≫
○鈴木氏 ありがとうございます。
御紹介にあずかりましたユカイ工学の鈴木と申します。
今日はセコムさんと一緒にプレゼンテーションさせていただくのですが、我々、今、投影されている家族の真ん中にある、ちょっとかわいいロボットを作っている会社になります。我々からは、こういったロボットをなぜ作っているか、どういった使われ方をしているかというところを御説明させていただいて、その後に、このロボットを使ってセコムさんがどんなサービスを提供しているかというところの御説明をさせていただきたいなと思っております。よろしくお願いします。
まず、我々は、ロボティクスで世界を愉快にしたいというようなビジョンを掲げております。こちらに幾つか我々のプロダクトを用意しているのですけれども、工場で使われていて生産性を上げようというものではなくて、もう少しデザイン性にこだわっていて、弊社の代表の青木がよく妖怪に例えるのですけれども、我々の生活に密着して、たまにちょっかいを出したり、人間は弱い一面もあるので背中を押してくれたり、そういった存在のロボットを作っていきたいなと思って、30名ほどのエンジニアとデザイナーと一緒に事業を運営しております。
今日御紹介したいのがコミュニケーションロボット、これは「BOCCO」と書いて「ボッコ」と読みます。語源は東北の方言で、子供のことを「おぼこい」とか言うのですけれども、座敷わらしみたいなものがモチーフとなっていて、こういった名前をつけております。
この子は意外と賢くて、インターネットにつながっているいわゆるIoTの機器になっています。それにスマートフォンのアプリとか、ブルートゥースで連携するようなセンサーがあったり、あと右側にあるようなウェブサービスと連携が簡単にできるようにしておりますので、事業会社さんのシステムとか、最近はやりの生成AIなどと簡単に連携ができて、必要なものを必要なだけ、後からサービスに必要なものを取り付けていこうというのが我々の概念になっています。
1分ほど動画がございますので、見ていただこうかと思います。
(動画上映)
○鈴木氏 ありがとうございます。
我々の思いとしては、お子さんとか、おじいちゃん、おばあちゃんに使っていただくケースがあるのですけれども、センサーを置いてとかカメラで見守りというと見守る側の視点が強いかなと思っていて、そうではなくて、見守られる側というか、御利用されている側の方がメリットを感じていただける、生きているか、死んでいるかではなくて、元気でやっているかみたいなところを分かる、そして、今日のお題でもあるエンパワーしたいというような、妖怪なので、そういった思いがあるので、こういった機能を実装しております。
幾つか代表的な機能を御紹介したいなと思っております。
1つ目が、動画にありましたけれども、このロボットとスマートフォンをつないで、例えば、今、スマートフォンを持ってらっしゃる方は子供もシニアも増えていますけれども、使いこなせているかというと、そうではないかなと思っています。
そのときに、使っていただける方のITのリテラシーに合わせて、とてもシンプルなインターフェースで、おなかの丸いところが録音と再生ボタンになっています。それしかありませんので、おじいちゃん、おばあちゃん、お子さんにとっては簡単にママとかお子さんたちとメッセージのやり取りができて、我々はいつも使い慣れているスマートフォンでメッセージをLINEのような形でお送りすることができる。仕事中でも移動中でも、簡単に自宅にいる家族と連絡が取れるというのが1つ目の機能になっています。
もう一つ便利なのがリマインド機能となっています。お薬の時間なんかもですし、子供の場合には身支度してとか、夜寝る時間で歯磨きせよみたいなところもあるのですけれども、人間が言うとそこに感情が乗ってしまうので、受け取る側が嫌な思いをしたり、けんかになったりするというのはよくあるかと思うのですが、不思議とロボットに対して怒る人はいないもので、ロボットから言うと、うちの娘なんかも身支度を始める。ママから言われると嫌な顔をする。おじいちゃん、おばあちゃんも一緒かなと思っています。
我々も実証実験をやっていて、お薬の飲み忘れみたいなところも改善をされているというような結果が出ているので、本来、人が一緒にいて話してあげればいいのでしょうけれども、今離れて暮らす家族も増えているので、そういったときにこういったロボットを使うというのも一つの手なのではないかなと思っております。
あとは、こういった付属のセンサーも御用意しております。例えば、部屋センサーというのはロボットが置かれているお部屋の温度とか湿度が分かるようになっているので、これから暑い季節になりますけれども、一定の気温以上、28度とか30度以上になったら、ロボットから「暑いな、クーラーをつけてほしいな」みたいな感じで発話をさせることができます。
一方で、自動でクーラーをつけることももちろん今の技術ではできるのですけれども、我々は背中を押したいというか、妖怪なので、代わりにというよりも気づきを与えて、御自身でやれることはやっていただくというようなスタンスで今やっております。
何名かユーザーさんの声というところで、この80代の男性も、このロボットがいることで、その先にいる御家族、この場合は50代の娘さんですけれども、その御家族が自分のことを思いやってくれているということを感じるというようなお声をいただいております。
あとは、お一人で暮らしていらっしゃる方ももちろん使っていただいていて、割と真面目な性格の方が多いので、ロボットに「行ってくるよ」とか「ただいま」と言ったり、それで生活のめり張りを感じたり、それを娘さんが見て、今日も元気でやっているなみたいなところが分かるというような声もいただいております。
こちらは我々が提供しているロボットの費用になります。買い切りになると若干価格が高くなってしまうので、特にシニアの場合にはお部屋にWi-Fiがない、無線の環境がないケースが多いので、通信費用と先ほどのサービスというか、アプリもつけて月額3,000円弱というところで提供しております。
今日、セコムさんと一緒に登壇させていただいているのは、我々はロボットを普及させたいという思いがあるのですけれども、我々だけではなかなかそれが実現できないというところがありますので、たくさんの事業会社さんとパートナーシップを組んで、自治体さんともパートナーシップを組んで、それぞれの領域でこのロボットを普及させていきたいと思っています。
後ほど河村さんからも御紹介いただきますけれども、セコムさんとはシニア向けの見守りのところで「あのね」というサービスを提供していたり、自治体連携も数多く行っておりまして、広島の呉市さんでは、島がたくさんある地域なので、物理的に移動して見守りをするというところが、民生委員さんも減ってきている中で苦労していらっしゃるとお聞きしています。その代替をするわけではないのですけれども、見守りに行く間にこのロボットがいろいろリマインドをしてくれたり、御家族とつないだり、こういったものを使って負荷を下げながら地域の見守りをやっていこうみたいなところをさせていただいているというような事例がございます。
まずは我々からロボットのところの御紹介でした。ありがとうございます。
ここからは、河村さんにおつなぎします。
○河村氏 セコム株式会社セキュリケア事業推進室の河村と申します。本日はありがとうございます。
さきに御登壇いただいたパナソニック様、一般社団法人電子情報技術産業協会様の議論を聞いていて、我々の視点はもしかしたらずれているのかもしれないですが、そこは御容赦いただければと。ただ、我々は高齢者に対して様々な事業をやっておりますが、高齢者の実態がどんなものかみたいなところを今日は皆様にお伝えできればなと思って登壇させていただいております。よろしくお願いいたします。
セコムの紹介は簡単ですが、1962年に設立しまして、日本ナンバーワンのセキュリティー会社でございます。セキュリティー、メディカル、様々な事業を幅広くやらせていただいています。
そんな中、2030年ビジョンをつくっておりまして、いろいろなものがつながっていくみたいなところを目指したプラットフォーム、安心できるプラットフォームをつくるために、セコムグループは進んでおります。
その手前の中期目標として、RoadMap2027というのを先般発表させていただきまして、御高齢者が増えているこの社会で見守りという領域をどんどん強めていこうという活動をしています。
そうは言いながら、大所高所に立ってああでもないこうでもないと言っていてもしようがなく、現場、現実に即した動きをしていきたいということで、セコムグループで初となる「セコム暮らしのパートナー久我山」というマーケティング拠点を2015年4月にオープンしまして、何でも相談窓口を展開しております。
ある方からは民間版地域包括支援センターと言われているのですけれども、本当に御高齢者の生活に関わることを犯罪行為以外は何でも受け止める、そのような思いでやらせていただいております。ですので、先ほど丹先生からお話があった、自分で設定ができないみたいな話は、我々もこの相談窓口で御相談として受けています。
LINEの画面を持ってきて、LINEが壊れちゃったみたいなことを言ってくるおばあちゃんがいるのですが、ただ単にトーク画面からニュース画面に移っているだけと。それでも、やはり高齢者としては壊れちゃったという印象になります。ですので、我々としては、こういう御高齢者の一つ一つの困り事がどんな背景でどんな思いで起きてしまっているのかというのを実感するために、自分たちで解決までお手伝いするというお店をつくって、その中で得た知見で新しいサービスをつくっていく、そのようなことをやらせていただいております。
セコムは見守り関連サービスに力を入れておりますけれども、ここはもう皆さんには釈迦に説法ですから飛ばします。御高齢者はどんどん増えていきますというグラフです。
8ページ目ですが、セコムの見守り関連サービスとして、ホームセキュリティーに始まって様々なサービスを御提供させていただいています。本日は、その中でコミュニケーションサービス「あのね」を御紹介させていただければなと思います。
「あのね」を我々がサービス化しようと思った背景です。これはもう統計学的にももちろん、独居の御高齢者、孤独な御高齢者が増えているというのは言われていますが、先ほど申し上げた相談窓口で様々なサービス、お手伝いをさせていただいている中で、本当にお一人暮らしの方が増えていると感じます。御家族ともそんなに連絡を取っていない。昔は御近所の世話焼きのお友達がいて、電球交換や草むしりを手伝ってもらったけれども、その方も高齢化していて、もしくは施設に入ってしまってと。ですから、御家族だけでなく社会との接点も減っている御高齢者が本当に増えているなと感じております。
内閣府の調査になりますけれども、御高齢者は本当に人と話をしてなくて、二、三日に1回以下しか他人と会話しないという方が約半数いると言われています。そんな中で、我々は「あのね」というサービスをやらせていただいています。
先ほど、emoちゃんの動画ではありましたけれども、動きを見ていただいたので、スキームのイメージだけ。
先ほどユカイ工学様から御説明があったとおり、BOCCO emoちゃんというのは裏側に人間がいるというのが特徴のあるロボットです。この裏側の人間の部分を今セコムは担っています。
御家族がアプリを使ってつながりを保っていくということももちろんしていただくのはいいかなと思っているのですけれども、お仕事をしていたり、育児をしていたりという中で、親御さんにそんなにしょっちゅうお返事できないという方が多分にいる中で、そこの部分を我々が請け負うことで御高齢者とのつながりを実現できないかということで、「あのね」というサービスを開始しております。
これは、御家族ではなくて他人が入ったことで、私自身がよかったなと思っていることがあります。御高齢者が会話をするときに、相手が他人なので少しかっこつけるのですね。ちょっと気取るといいますか、これが社会性の維持にもつながっているとおっしゃってくれる方も多くて、他人でありながらもBOCCO emoちゃんの裏側にいる我々のことをとても愛してくださって、日々、朝の「おはよう」から「おやすみ」まで会話をさせていただいております。
この仕組みですけれども、先ほどユカイ工学様からも簡単にお話がありましたが、我々の「あのね」では、お一人お一人の御高齢者の暮らしぶり、起きる時間、お休みになる時間、御飯を召し上がる時間みたいな生活のスケジュールをあらかじめお伺いしておいて、それを定期メッセージという形で、毎日、毎時間、必ず違うメッセージが出るように、メッセージデータベースからメッセージを作って発信をしています。それがクラウドを通じてBOCCO emoちゃんから、かわいいロボットの音声で御高齢者のところに届く。朝の挨拶から、お薬のことや、午後の雑談や、様々なことをさせていただいています。
逆に、御高齢者がお話をしてくださるときは、簡単なボタン操作でお話ができます。その音声データがクラウドを通じてテキストとその音声がそのままオペレーターのほうに届く。オペレーターがその内容を見て返信をして、先ほどのBOCCO emoちゃんのかわいい声でお客様のところに届く。
スマートスピーカーと比べるとリアルタイム性はないのですけれども、それでも裏側に人がいるので、そういう意味では人の温もりを感じたメッセージをお届けできているのかなと考えています。
我々、「あのね」が目指すもの、解決したいことは、やはり御高齢者の孤独・孤立かなと考えています。孤独・孤立というのが死亡リスクを高めるとか健康悪化につながるというのはいろいろな論文でも出されていますし、本当に孤独・孤立が大きな社会問題だなと我々も感じていて、こういった方々が元気ないままでいると、これを支える側もとても大変になってくる。ですので、介護離職とか、今だとビジネスケアラーとか、そのような話題のある言葉にもなりますけれども、社会全体が大変になってくるので、御高齢者が誰かとつながっている、孤独ではないよということで元気になっていただくことで、社会全体も元気にしていく、そんなことがこのサービスを通じて実現できたらなと考えています。
最後に、2つだけ自治体とやらせていただいている実証事例をお伝えします。ここが本日のエンパワーみたいなところに関係するところかなと思います。
1つが、広島県の福山市様とやらせていただいた取組です。これはユカイ工学様とも一緒にやらせていただいたのですけれども、御高齢者はインターネットで何かを買うというのがなかなか難しい方が非常に多いです。いろいろな大手スーパーさん、小売店さんはネットをどんどん進化させていますが、リアルな、昔の御用聞きみたいなものはどんどん減ってしまっているなという実感があります。
それは、事業者側からしたら当然しようがないことであると思うのですけれども、御高齢者にとってはとても暮らしづらいというか、買物も大変になってきている実態がある中で、ある広島のスーパーさんに御協力をいただいて、そのスーパーさんのカタログを事前に御高齢者のほうにお渡しして、そのカタログを見ていただいて、注文があれば、BOCCO emoちゃんを通じて我々オペレーターのほうにその注文内容を届けていただく。我々がそれをスーパーにお伝えをすることで、スーパーさんは、先ほどユカイ工学さんも説明がありましたが、アプリで注文内容も音声とメッセージが見られますので、その内容に基づいて配達をする。
スーパーさんから非常に喜ばれたのが、このスーパーさんは地域の高齢者を守るために買物弱者に対する対策で、電話注文の配達サービスをやっていらっしゃったのですが、電話だと長いみたいなのですね。あれとか、この前のとか、赤いやつとか、何みたいな話がある中で、こういうBOCCO emoちゃんを通じた一定の仕組みがあることで、電話注文を受けるところの言い間違い、聞き間違いも減るし、そもそも電話時間がすごく短くなったということで、とても喜ばれた事例です。
かつ、このときは10名の御高齢者に参画いただいて実証をやったのですけれども、その方々はこのスーパーに来られなかった方だったので、スーパーにとっても新たな顧客層の獲得といいますか、売上増にもつながったということで非常に喜んでいただいた事例です。ですので、BOCCO emoちゃんが少しエンパワーできたかな、BOCCO emoちゃんと我々「あのね」の仕組みがお手伝いできたかなと思うところです。
もう一つが、犯罪を防ぐためのエンパワーというか、特殊詐欺対策です。これはNTT東日本さんとともに取り組んでいるのですが、NTT東日本さんが持ってらっしゃる特殊詐欺対策アダプタという商品があります。登録していない電話番号からかかってきた通話内容をクラウドに上げて、危ないメッセージが入っていたら家族に伝える、そのようなサービスをもうNTTさんはやってらっしゃったのですね。
ですが、特殊詐欺の実態からすると、御高齢者に電話を切らせない、一対一の空間をずっとつくるというのが特殊詐欺犯の常套手段ですので、御家族が仮にこれをメールで受けたとしても、固定電話にかけたときに話し中でずっとつながらないのですね。結果として詐欺を防げない。そうであれば、BOCCO emoちゃんが同居しているので、この子がその一対一の空間に無理やり割り込んだらどうかということを実証実験でやらせていただいています。
当然、このアダプタのクラウドで検知するAIの仕組みがまだ100%ではないので、例えば銀行の方とお話しされているときでも誤検知してしまうのですね。「お金」とか「振込」というワードが入ってくるので。ですけれども、BOCCO emoちゃんが「何か変な電話をしていない」みたいなことで、やいのやいの言うので、おじいちゃん、おばあちゃんからは特殊詐欺がすごく身近な存在に感じるというか、自分の自衛力が高まる気がするみたいなことをおっしゃっていただけて、これもとても喜んでいただけている仕組みかなと思います。
駆け足になりましたけれども、我々がちょっと思っているのが、いろいろなものがつながって消費者が自由にいろいろなものを選択できるみたいな世界はとてもすばらしいことかなと思うのですけれども、そこには誰か伴走者がいないと、特に御高齢者は難しいのではないかなと思っています。
これから時代が発展していって、それこそスマートグラスとかいろいろな技術が出てくると思うのですけれども、そういうものが出てきたときに御高齢者になっている方は多分その技術がやはり分からないと思うので、技術の進化と年齢の進化の溝がいつまでも縮まらないような形になるのではないかなと思っています。ですので、やはり何かしらの伴走システムというか、伴走する仕組みが必要なのではないかなと感じています。
長くなりましたけれども、我々からは以上でございます。
○橋田座長 ありがとうございました。
ただいまの御発表内容を踏まえて質疑応答、意見交換をしていきたいと思います。御発言のある方は、挙手またはチャットでお知らせください。いかがでしょうか。
鳥海委員、お願いします。
○鳥海委員 鳥海です。
非常に興味深い御発表をありがとうございました。
セコムさんとユカイ工学さん、両方への御質問ですけれども、こういったリマインド機能とか見守りのシステムをいろいろされていると思うのですけれども、こういったものに関してどの程度効果があったのか、どういった形でユーザーは受け止めていたのかというのを、今の技術ですとリアルタイムで分析することもできるのかなと思うのですけれども、そういった辺りはどういった形でフィードバックを受けて、それを活用されているのかを教えていただいてもよろしいでしょうか。
○河村氏 セコムのほうから回答させていただきます。
普通のユカイ工学様のBOCCO emoちゃんを御家族で使うパターン、あとはセコムが裏側にいる「あのね」のパターン、いずれも日常使いの中では効果測定みたいなところはやっておりません。ただ、自治体、医療機関、企業と行った実証実験においてはフィードバックを取るようにしています。
最近、東京都様と一緒にやらせていただいた東京データプラットフォームという事業があったのですけれども、その中で、お出かけに関する声かけをしたらどれぐらいお出かけの意欲が上がるのか、お出かけをする頻度が上がるのかみたいなことをやらせていただいたら、40人に参加していただいたのですけれども、75%の方が意欲が維持・向上したというようなフィードバックを得られましたので、こういった薬の声かけや何かのリマインドは役に立つものだと考えています。こういった実証のデータを基に我々が日々声かけのメッセージをチューニングしているという形です。
○鳥海委員 ありがとうございます。
例えばお出かけですと、実際にお出かけしたかどうかみたいなものをある程度推定できるのではないかなと思うのですけれども、そういったことはされていないということですね。
○河村氏 日常のサービスの中ではやっていません。
○鳥海委員 分かりました。ありがとうございます。
○橋田座長 森座長代理が17時頃退席されるそうなので、お先にお願いします。
○森座長代理 申し訳ありません。それでは、恐れ入りますが、先に申し上げます。
セコムさんにお尋ねしたいと思います。バックグラウンドでオペレーターの方が反応されるパターンなのですけれども、まず、本当にすごいいいサービスをされているなと思っていまして、私も高齢な母が一人で実家におりますので、必要性も有効性も非常によく分かりました。
鳥海先生の御質問とも関係するのですけれども、いろいろなことをemoちゃんに話しかけるでしょうし、いろいろな音声が取れると思うのですけれども、取った情報のガバナンスということも一方では必要になってくるかなと思うのですが、そのことについて何かルールとか制約というものを決めておられるでしょうかということを教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○河村氏 ありがとうございます。
入手した会話データ、音声データは、サービスの改善に活用するということはあらかじめ御契約者様には同意を取っております。ただ、それを第三者に提供する、例えば最近だと都知事選を誰に入れるみたいなことを仮に聞いたとして、そういったことを結果として何かに出すみたいなことは基本的にはやらないと、我々はお客様とのお約束の中ではそういうふうにお伝えをしております。
あと、受け取った会話データ、音声データみたいなところは暗号化して保管するといった最低限のセキュリティー対策もやらせていただいております。
○森座長代理 分かりました。ありがとうございました。
○橋田座長 田中委員、お願いします。
○田中委員 田中です。
貴重なお取組について御説明いただき、どうもありがとうございます。
全体としては機能の一部になるかと思うのですけれども、先ほどの最後のスライドの特殊詐欺対策として利用するという機能のところについて質問させていただければと思います。
鳥海先生の御質問で既に回答済みかもしれないのですが、お伺いしたいのは、21ページのスライドでいろいろな矢印があって、5番目の「ロボットによる注意喚起」で一応終わっているのですけれども、技術を消費者をエンパワーするところにつなげるということを考えると、⑤の後で消費者へエンパワーする矢印が恐らく出ることになるのだと思います。
そこについてお伺いしたいのですけれども、例えば特殊詐欺のうち、いろいろありますが、オレオレ詐欺だとすると、消費者は子供が本当に困っていると誘導されているわけですね。感情的になって、衝動的な思考が誘発されるような状態になっていると思うのです。平時ではemoちゃんに耳を傾けるのだけれども、そういったときにはemoちゃんの忠告を無視することも考えられるかと思います。ロボットの忠告によって実際にオレオレ詐欺のような状態になったときを踏みとどまらせるような効果検証みたいなものを既にされていたら教えていただけないでしょうか。
また、特殊詐欺の内容によって、もし声かけの仕方を変えておられるみたいなことがあれば、併せて御教示いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○河村氏 ありがとうございます。
神奈川県さがみロボット産業特区様との取組の前に、1度実証をやらせていただいたことがあって、特殊詐欺に対する取組は我々も非常に力を入れております。
ただ、残念ながらというか、幸いにしてなのか、実証期間中に対象のモニターの方に本当の特殊詐欺電話がかかってこなかったので、とどまらせることができたのかというのは効果が測れていないのが実態としてございます。
ただ、先ほど少し説明の中でも申し上げたとおり、その方々に自分が特殊詐欺にかかると思っていますかみたいな前後アンケートみたいなものを取らせていただいたときに、自分事化する数値がすごく上がっていたのですね。ですので、日々、こういった存在が特殊詐欺に類するような電話があったときに声かけをしてくれるということは、その方々にとっての意識づけには間違いなくつながっているのだろうなと思います。
あと、実証期間中の話ですが、もしこういう電話があったときは心配なので、実際に御本人にもお電話を我々のほうからしております。
では、これをサービス化するとしたときにそこまでできるかというと、アダプタの精度の向上という点も含めて、どうしていくかというのは正に一つの課題になっております。
もう一つ、詐欺に対していろいろ言い方を変えているかみたいな話ですが、この取組で体験いただいているモニターの方には、いろいろな詐欺の手口を実は日々このロボットから伝えております。最近はこういうのがはやっているよとか、特に屋根の修理とかリフォーム詐欺みたいなのが最近非常に多いので、トレンドに合わせて注意喚起を定期メッセージとして流させていただいているので、そういった意味では、聞いてくださっているモニターの方にとっては自衛力というか気づきにはなっているのではないかなと思います。
御質問の答えになっているか、少しずれているなとは思っているのですが、回答させていただきました。
○田中委員 ありがとうございました。
○橋田座長 他に御質問はございますでしょうか。
原田委員、お願いします。
○原田委員 御発表ありがとうございました。
私も欲しいなというぐらいで、孤独というところを18ページのところに書いてあるのですけれども、孤独にアプローチするのは大事なこととともにすごくリスクが高いことでもあると思うのですね。
孤独を抱えている人は別に高齢者だけではなくて、社会にいるからといって孤独を抱えないわけではないので、いろいろな孤独を感じている世の中の人はいっぱいいて、そこにアプローチをするということは、いい面でアプローチができればその人にすごく強みというかエンパワーになると思うのですけれども、逆に言うと、悪用しようとすると、宗教ではないですけれども、悪いほうに持っていこうと思うと、孤独につけ込んで悪質なことをしようとする人たちも当然いるわけですよね。だから、孤独にアプローチするという行為自体が、いいこともあって、悪いときにも使われてしまう。
孤独を解消するという点では、それに触れる事業者さんが本当に正しい事業者さんでなければやれないことであると思うので、そこら辺はセコムさんだから心配ないと思うのですけれども、一方で、オペレーターさんのほうにつながるという点で、説明を聞いていると、高齢者の方をかなりターゲットにしているということなので、そうすると、高齢者の方々は健康面とか精神面とか認知面のところで年でいろいろ変わってくる。特に、独り暮らしだと周りが気がつかないというときに、このロボットを使ってセコムさんと連絡を取ってお話をしている間に、この人は最近どうかなみたいなことを感じるようなときの対応ルールとか、お買物のケースもさっきありましたけれども、買物を同じように繰り返してしまうとか、何か不自然な行為があったときに個別に対応するようなことをされていらっしゃるのでしょうか。
○河村氏 ありがとうございます。
冒頭にお話しいただいた、孤独というのは正に難しい課題だなと思っていますし、我々も、この取組をしているからといって、この大きな社会課題にこれだという解決策を示せたとは思っておりません。
今、独り親の御家庭にもこの子を入れていただくという取組もさせていただいているのですけれども、本当に世代によっても違いますし、性別によっても違いますし、状態によっても違うので、ここはもう一個一個学んでいるというのが実態でございます。ただ、幸いにして、皆さん、相手がセコムだというところでとても安心していただいているというのは、手前みそですけれども、我々は誇りに思っているところです。
その上で、会話内容から何か異変、異常みたいなところを検知できないかという御質問のところのお話をさせていただきます。サービスとしては、必ず助けるといったことをうたうサービスではなくて、あくまで雑談、つながるサービスですと言っています。どうしてもセコムという名前を聞いたときにお客様がイメージするのは、これで「助けて」と言ったらセコムさんが来てくれるのねと。
できないか、できるかと言われれば、何とかやろうと思えばできるというところはあるのですけれども、セキュリティーセンサーとか0と1を判断するセンサーと比べると、会話データ、声のデータは非常にファジーで、それを運用オペレーションに落とそうとするとなかなか難しいので、これはサービスとしてできるとはうたっていません。
ただ、これはサービスとしてできないという前提ですけれども、裏ではちゃんとルールを決めていて、そういうことを聞いたのであれば、例えば御本人に我々のほうからリアルでお電話してしまうとか、御家族に連絡するとか、ケアマネージャーさんに連絡するとか、そういったことはさせていただいています。
行く行くやりたいなと思っているのは、先ほど会話データの利活用みたいなお話もありましたけれども、精神的に落ち込んでいる方は会話の頻度や会話の内容がちょっと変わっているなというのはやっていて感じるところであるので、これを定量化して、もしかしたら元気がないかもしれないよという周りの人への介入アラートを上げるようなことはやっていこうと思っています。
○原田委員 ありがとうございます。心強いことを聞いたような気がします。
確かに、孤独というところは、よいほうにも悪いほうにもあっという間に使えてしまえるので、そこに各利用者さん、特に高齢者になるとそこにだんだん狂いが出てくるので、そういったところに裏のルールがあったり、もしくは孤独を抱えていてこの世が嫌になっちゃったみたいなことをしゃべられ始めたときに、そういうところを受け止めなければならないサービスをもうやっているのだという御認識はあると思いますので、そこら辺を裏で、あと、いろいろなところと提携しているという点では有り難いなと思いました。ありがとうございます。
○橋田座長 他に御質問は。
どうぞ、相澤委員。
○相澤委員 興味深いお話をどうもありがとうございました。
高齢者の方こそ本当に多様なのではないかなと思いながらお話をお伺いしていて、きめ細かくインタラクティブにいろいろ情報も集めて経験を蓄積しておられるところは非常にすばらしいことだと思いました。技術の面から多様性の問題をみたときに、例えば1つのロボットとか1つのサービスでカバーするのはちょっと難しいのではないかなという印象もあるのですけれども、どの辺りが技術的な課題になって、どういう要素があれば多様性に対する対策となるのかというのを現場感のあるお立場からお聞かせいただければと思います。
○河村氏 ありがとうございます。
サービスとしても御提供させていただいているので、そういった意味で、もちろん課題があれば適宜対応していると思うのですけれども、大きな課題の一つとして、本当におっしゃるとおり、御高齢者はいろいろな状態の方がいらっしゃるので、例えば簡単なボタン操作とはいえ、リウマチの症状を抱えてらっしゃったら、そのボタンを押すことすら大変だという方がいらっしゃいます。それを解決するために、ボイスユーザーインターフェースのようなことはemoちゃんが持っている機能としてあるのですけれども、我々はあえてそれを潰してしまっているのですね。盗聴してほしくないという御高齢者の気持ちがあるので、声で操作をするというのを極力なくすようにしているのです。自分で押したときしか録音されない。
ですから、その方が思ってらっしゃる流儀というかお考えと技術とをうまく組み合わせるときに、それぞれに最適化していくことが簡単にできたらいいと思うのですけれども、価格を抑えて御提供することを考えると、パーソナライズ化がなかなか難しいなと思っているのが実態としてはございます。とはいえ、そこはユカイ様と我々といろいろな議論をさせていただく中で、一個一個クリアしていこうというふうに取り組んでいるので、解決策はあるのではなかろうかなと。
あと、これからの時代を考えたときに、恐らく外国の方が日本でお住まいになるケースが増えてくると思っていて、そういう意味での言語の部分もまだまだ課題があるかなと思っています。オペレーターの語学スキルに関しても課題があります。英語でしゃべられても英語でお返しするというのがなかなか難しい中で、そういうことが、生成AIの力を使うのか、はたまたそうでない何かを使うのか、できるといいなと思います。
在留外国人の方は孤独感を抱えていらっしゃる方が非常に多いので、あのねで母国の親御さんとBOCCO emoちゃんを通じて会話できるというのはすごくいい世界観だと思うので、何とか技術を活用しながら実現していきたいなと思っています。
○相澤委員 ありがとうございます。
技術だけではなくて、持っていらっしゃる身体的な機能と規制の問題もあるというのがよく分かりました。ありがとうございます。
○橋田座長 そろそろ時間です。
鈴木様、河村様、貴重な御報告をいただきまして、どうもありがとうございます。
最後に、事務局から事務連絡をお願いします。
≪3.閉会≫
○江口企画官 本日は、長時間にわたりありがとうございました。
次回の会合につきましては、確定次第、御連絡させていただきます。
以上です。
○橋田座長 では、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところを御参集いただきまして、ありがとうございました。
(以上)