プラットフォームが介在する取引の在り方に関する提言-オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会報告書を受けて-

2019年4月18日
消費者委員会

プラットフォームが介在する取引の在り方に関する提言
-オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会報告書を受けて-

消費者委員会では、オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会を設置し、今般、同専門調査会から、オンラインプラットフォーム(注)における取引の在り方に関する専門調査会報告書の提出を受けた。

同報告書では、プラットフォームが介在する取引における消費者トラブルの事例を基に、そこにどのような課題があるかを明らかにし、その課題を解決するための一定の方向性が示されている。また、現行法の状況と限界等に関し、①プラットフォームが介在する取引について、取引の種類や取引の一部の局面に着目した個別法が部分的に存在するものの、プラットフォーム事業者が介在する取引全体に着目した特別法は存在しないこと、②発生しているトラブルについて、現状の規定を適用しようとした場合に課題が生じうること等が指摘されている。それらを踏まえ、消費者保護の観点から、プラットフォーム事業者、関係行政機関、財・サービス提供者(利用者)、購入者(利用者)等が担うべき役割等について提言がなされている。

現在、内閣官房、公正取引委員会、個人情報保護委員会、消費者庁、総務省、経済産業省において、公正競争、電気通信事業法、個人情報保護法の観点等からプラットフォームが介在する取引に関するルール整備に向けた議論が行われている。同報告書は、そこでの議論も見据え、プラットフォームが介在する取引の在り方について、「消費者保護」の観点に基づく議論の結果を取りまとめたものである。

当委員会は、本提言の内容が尊重されることが消費者保護につながると考えることから、プラットフォームが介在する取引に関わる各主体や関係機関が、相応の役割を担うこと等が促進されるよう、内閣官房、公正取引委員会、個人情報保護委員会、消費者庁、総務省、経済産業省に対し、同報告書を踏まえた取り組みをすすめることを提言する。また、これらに関するルール整備の検討について、同報告書の提言内容を踏まえた形で議論が深められ、その施策に反映されることを期待する。

なお、当委員会は、本提言において指摘した今後の課題(後記6)も含め、引き続きプラットフォームが介在する取引の在り方について注目していく。また、本提言への対応について、今後必要に応じ関係行政機関から報告を求めることとする。

(注)本提言では、EC取引のうち、BtoC及びシェアリングエコノミー等のCtoC市場におけるプラットフォーム事業者を念頭においている。

1 プラットフォーム事業者の役割(内閣官房、経済産業省)

(1)財・サービス提供者(利用者)に係る審査(出店・出品審査、モニタリング)の実施

  •  プラットフォームが健全で安全な取引環境を提供するものとなるために、基本的かつ最低限の安全確認事項として、出店・出品審査、提供者、購入・利用者に係る正確な情報を把握し、それを適切に活用すること。
  •  出店・出品審査等にかかる審査基準を可能な範囲で公表。
  •  財・サービス提供者(利用者)、購入・利用者、消費生活相談員等から取引に係る情報提供があった場合の調査、適切なモニタリング。
  •  トラブルの多い利用者等に対する注意、退店勧告等、出店時だけではなく消費者からの情報提供等に基づく事後的な対応。
  •  行政機関と連携した法令違反事業者への対応。

(2)各種取組に関する消費者への情報提供

  •  消費者の選択や利便性に資するようプラットフォーム事業者の相談窓口の設置やトラブル解決のサポート等、取引の安全のために行っている取組について、消費者に分かりやすい形で表示、広報。また、啓発活動の実施、分かりやすいガイドの作成。

(3)分かりやすい財・サービスに係る表示

  •  財・サービス提供者が従うべき表示ルールやガイドラインの整備。
  •  財・サービス提供者に対する表示に関わる法令等の啓蒙。
  •  財・サービス提供者が、画像が多く分かりやすい商品表示や商品説明の表示を行うための仕組みの提供。
  •  消費者トラブルにつながる不適切な表示に関するパトロール、行政等の専門的知見を有する者との連携、情報提供窓口の設置等。
  •  消費者が気付きにくい表示項目の変更で、消費者トラブルに発展する可能性があるもの(価格、送料に関すること等)についての記載の工夫等を財・サービス提供者(利用者)が行うための仕組みの提供。

(4)安心、安全な取引環境を整備するための公正な利用規約の制定と明示

  •  消費者に一方的に不利な取引にならない等、安心、安全な取引環境を利用できるための適切な内容の利用規約の制定。
  •  利用規約の分かりやすい場所への提示。
  •  利用規約を分かりやすく図表等も活用して説明した参考情報の提供。
  •  送料、返品、キャンセルの規定等消費者トラブルに発生しやすい事項に係る利用規約等の分かりやすい表示。

(5)適切な評価システムの提供

  •  レビューがその役割を適切に果たすため、レビューの収集、処理、公表の工夫を凝らす。例えば、相互の評価を同時に公開する等、正直な評価をしやすくする仕組みの提供。
  •  取引実態のないような虚偽的なレビューに対するパトロール、削除。

(6)安全な決済システムと複数の決済手段の提供

  •  安心、安全な決済システムの提供。例えば、取引が適正に行われたことが確認できるまで、プラットフォーム事業者が一定期間支払金を預かるといったいわゆるエスクロー決済の取組。
  •  なりすましサイトやフィッシングへの注意喚起。
  •  消費者の事情等に合わせて選択が可能な複数の決済システム。

(7)消費者トラブルへの対応と消費生活センターとの連携

  •  財・サービス提供者(利用者)、その消費者両方からの問合せ、相談に協力。
  •  相談対応窓口(名称、住所、電子メールアドレス、電話番号等)の設置。
  •  消費生活相談員からの問合せや相談員が行うトラブル解決のあっせん等に協力し、消費生活相談員と共同で問題解決にあたる。
  •  消費者トラブルに係るプラットフォーム事業者と消費生活センターの情報共有。
  •  消費者がトラブルに遭った際に、安心して相談や紛争解決に向けた手段が取り得るよう、消費者に対する第三者的な紛争解決機関(ODR等)の導入。

(8)保険、補償制度の導入

  •  更なる安心、安全の仕組みとして、適用条件をあらかじめ明示し、利用しやすい保険、補償制度の導入。

(9)CtoC取引の場合におけるプラットフォーム事業者の役割

ア 購入・利用者の保護

CtoC取引においては、プライバシー保護の観点から、提供者自らが氏名、住所等の表示を行わないことも考えられる。こうした場合には、プラットフォーム事業者には、利用者間契約をサポートする役割が期待される。例えば、プラットフォーム事業者が補償制度を充実することや、プラットフォーム事業者において一定の属性(財・サービス提供者(利用者)がB又はCであるか等)を表示すること等を通じて提供者とのトラブルを未然に防止し、早期の紛争解決を図ることなどが期待される。

イ 提供者の保護

消費生活相談の現場では、提供者からの相談も発生している。中には、購入者から一方的なことを求められトラブルになることもある。誰でもがプラットフォームが介在する取引に容易に参加できるということから、提供者が事業者であれば備えておくべきトラブル処理能力に欠けている場合もあり、取引がうまくいかない場合に、プラットフォーム事業者が提供者と一体となって解決に向かう取組を行うことも期待される。

2 CtoC取引における消費者としてのプラットフォーム利用者の役割(消費者庁)

(1)提供者の役割

提供者が事業者でない者としてプラットフォーム上で取引をする場合には、特商法、消契法における事業者規制のための規定は適用されないとの理解がある。しかしながら、提供者は取引に参加する上での基本的なルールを遵守することは不可欠であり、民事上の責任は当然負うこととなる。例えば、購入・利用者の選択に、誤認を与えることのないよう適切な表示を行うことや提供しようとする商品・サービスに関連する法令等を確認しそれを遵守することが求められる。また、プラットフォーム事業者が提示しているルールや注意喚起を確認することも求められる。

(2)購入・利用者の役割

購入・利用者においては、CtoC取引においても、民事上の責任は負うことを認識し、規約を適切に確認するといった、取引に参加する上での基本的なルールを遵守することが不可欠である。事業者との取引とは前提を異にし、個人間取引であることを意識し、問合せ窓口が設置されているプラットフォームを利用する、レビューをきちんと確認した上で利用する等のプラットフォームを利用する上での心構えも重要であるとの意見があった。

また、購入利用時においても、取引環境の健全化に向けて役割を担うことが期待され、例えば、レビューにおいて悪質・恣意的な評価をしないことや、違法な商品を購入しないといったことが考えられる。

3 行政機関の役割(消費者庁、経済産業省)

(1)消費者への情報提供

ア 消費者トラブルが生じやすい事項についての情報提供等

商品、サービスに係る表示、送料、返品、キャンセル料の規定等消費者トラブルが生じやすい項目についての情報提供や、そうした項目に係る利用規約の確認を確実に行うことの重要性について周知啓発を行うことが重要である。

イ 法令等の平易かつ明確な周知啓発

財・サービス提供者(利用者)が悪意なく法令等に違反することのないよう、消費者に対し、平易かつ明確な周知啓発を行うことが重要である。

ウ 若年者、高齢者への対応

社会経験の浅い若年者に対しては、よりきめ細かな情報提供等を行うことが必要である。アンケート調査によれば、高齢者は店舗に行く時間が不要、自宅や指定場所での受取りができることを理由に取引に参加していることがうかがわれ、今後も、高齢者の利用拡大を見据えた対応が重要である。例えば、プラットフォームが介在する取引を利用する際の利用者向けガイドブックの策定等も考えられる。

(2)プラットフォーム事業者への情報提供等

プラットフォーム事業者が行政機関と協力して法令違反事業者への対応を行えるよう、行政機関からプラットフォーム事業者に対し、法令違反事業者やその内容について、適切な情報提供を行うことが重要である。

新業態のプラットフォームが出現することや、プラットフォーム事業者に紛争解決に向けた情報共有や協力を求めるには、お互いの業務への理解や信頼関係が不可欠と考える。行政機関は、国民生活センター等とも連携し、プラットフォーム事業者と定期的な情報交換等の場を設けることが望ましい。

また、プラットフォーム事業者の取組の状況や内容は様々であることから、適切な運営や率先的な取組をしているプラットフォーム事業者の仕組み等を好事例として紹介する等の情報提供も必要である。

(3)関連する法令、ガイドライン等の見直し

ア オークションガイドライン

フリマ・シェアリングエコノミーの出品者については、オークションガイドラインの対象となるか否かが明らかではない場合がみられる。そこで、オークションガイドラインが、フリマ、シェアリングエコノミーの出品者についても適用されるかどうか、あるいは、新たにフリマ・シェアリングエコノミーについても、基準を設ける必要があるかについて検討することが考えられる。

イ オークションの出品者の表示義務について

オークションガイドラインの基準等により、個人間売買において販売業者等に該当する者については、氏名、住所及び電話番号等をプラットフォーム上に表示等する必要があることになるところ(法第11条5号、施行規則第8条第1号)、こうした表示義務が課せられることに関し、プライバシーの観点などから、その妥当性について疑問を指摘する意見があった。

上記は、仮に、フリマ・シェアリングエコノミーについても、オークションガイドラインの対象となると考えられる場合、あるいは、新たに同種のガイドラインを策定した場合についても、同様の課題となると考えられる。

4 国民生活センター、消費生活センター、消費者団体の役割(消費者庁)

(1)CtoC取引における国民生活センター、消費生活センターの役割

フリマやシェアリングエコノミー等、ユーザー間取引を対象とするプラットフォームを介する取引に関し、消費生活相談員があっせんを行うことについて、現行法上で対応することが可能かどうかについては、以下のように考えられる。

消費者安全法においては、消費生活相談を行う法令上の根拠規定があり、消費生活相談員は事業者に対する消費者からの苦情に係る相談に応じることや苦情の処理のためのあっせんを行うことが可能となっている。

プラットフォームを介した取引については、消費生活相談員は、消費者から相談があった場合に、取引の相手方がBかCなのかを確認する。その際、プラットフォーム上にその情報が明示されていない場合には、プラットフォーム事業者を通じて確認することになる。こうした対応について、プラットフォーム事業者からは、相手がCである場合に、消費生活相談員の問合せにどこまで情報提供が可能なのか基準が明確でなく、対応に苦慮しているとの指摘があった。

これに対しては、プラットフォームを介した取引について、仮に相談者のプラットフォーム上の取引の相手方が消費者の場合であっても、消費者による苦情相談は、プラットフォーム事業者に対して救済を求める内容を含むものである。したがって、プラットフォーム事業者は、消費者安全法の事業者に該当する。そのため、CtoC取引であっても、消費生活相談員は、プラットフォーム事業者と消費者の間に立ち、苦情相談に応じ苦情処理のためのあっせん等を行うことが可能である。

国民生活センターや消費生活センターは、これらを踏まえ、プラットフォームが介在する取引に関する消費者相談に対応することが考えられる。

(2)消費者団体等による情報提供

消費者が安心、安全に取引に参加できるプラットフォーム事業者を選択することが難しいとの意見に応える方策の1つとして、例えば、消費者団体等がプラットフォームについて、様々な観点から情報収集した上で、消費者に対して有用な情報を提供するといったことも考えられる。

5 プラットフォーム事業者が果たす役割の実効性の確保(内閣官房、経済産業省)

(1)自主的取組、共同規制

まずは、事業者、事業者団体等による自主的取組や、行政機関や事業者、事業者団体等との共同規制といった、いわゆるソフトロー的な取組を進めことも考えられるが、共同規制については一般的に、法律的な補強措置が前提となっている。これに対しては、ソフトローに従わない事業者がいた場合に消費者にどのようにして自主的取組を行っている事業者を選択してもらうかといった課題があるとの指摘があった。

自主的取組や共同規制による場合には、関係者間の協力関係を適切に構築していくことが必要であり、そのため、コミュニケーションのための窓口、担当者、海外の法人であれば我が国における代理人の指定を義務付けること等により、必要な情報を共有する仕組みを確立し、その取組の実効性を高めていくことが重要と考えられる。

また、自主的取組や共同規制については、その実効性の確保が重要となる。そのため、自主的取組や共同規制が機能しているかどうかのモニタリングを継続的に行う仕組みがあることが重要であるとの意見があった。

(2)法律、ガイドライン

現時点で、プラットフォーム事業者の責任とその範囲を明確に定める規定は存在していないといえるが、そうした規制の必要性についての立法事実等を精査した上で、EU、中国及び韓国のように、新たな法律を策定し、明確な規律を設けることも考えられる。また、行政機関が基本的なガイドラインを策定することも考えられる。

(3)認証制度

消費者によるプラットフォーム事業者の選択に資する基準の一つとして、認証制度を設けることも考えられる。一般社団法人シェアリングエコノミー協会において、既に当該制度を実施しており、制度の仕組みを検討するに当たっては、参考にすることも考えられる。

なお、認証制度については、認証機関の主体をどうするか、次々に新しいサービスが登場する本分野において制度として、維持していくことが困難な面もあるという指摘があった。

6 今後の課題(内閣官房、公正取引委員会、個人情報保護委員会、総務省、経済産業省)

(1)利用者の情報の取扱いに関する透明性

インターネットを利用していく中で、プラットフォーム事業者に情報が集積され、それを分析し、消費者の嗜好等を予測する手法はプロファイリングと呼ばれている。それにより、消費者の関心のある事項に係る広告が送られてくる等、見方によって利便性は高まる一方で、意思決定が不当に歪められることが仮にあるとすれば、人権等にかかわる問題が生じる可能性もある。例えば、特定の消費者の心理的な脆弱性をプロファイリングし、この脆弱性につけ込むような広告手法については、今後、その妥当性を検討していくことが考えられるとの指摘があった。

また、消費者に関する様々なデータを集積して、消費者の信用力をスコアリングすることも技術的には可能になっている。例えば、消費者の支払履歴等を分析し、スコア付けを行い、その点数が高いほど、何らかの恩恵がもたらされるといったことが生じうる。こうしたことが差別的に行われると、上記と同様に人権等にかかわる問題となる可能性があるとの指摘があった。

消費者は、自らの情報がどのような使われ方をしているのかについて留意し、その結果、自らにどのようなことが生じているのかを考えて利用することも重要である。

上記で述べた、プロファイリングやスコアリング等について、何らかのルールが必要かどうか、その場合に具体的にどのような方策が考えられるか等について、今後、関係行政機関とも連携しつつ必要に応じて検討していくことも重要であるとの指摘があった。

(2)非マッチングサイトにおける課題

ア パーソナルデータの取扱い

非マッチング型プラットフォーム(SNS、動画サイト等)の多くは、広告収入で成り立つビジネスモデルといえる。現在、インターネット広告の売上げの多くは、閲覧者の興味・関心や属性に応じた行動ターゲティング広告となっている。行動ターゲティング広告を行うためには、閲覧者の興味・関心等を把握することが必要であることから、広告事業者は、クッキーやJavaScriptを利用した閲覧履歴の収集を行っている場合もある。収集された閲覧履歴はクッキーや広告IDと紐づけられるが、広告事業者にとっては、それだけで特定の個人を識別することはできないため、個人情報に該当しないことが多い。

しかしながら、広告事業者が閲覧者の氏名等の個人情報を保有している場合において、これと閲覧履歴を紐づける場合は、例外的に、閲覧履歴は個人情報に該当する。この場合、広告事業者による閲覧履歴の収集は、個人情報の取得と評価されるため、個人情報保護法上の個人情報の取得に関する規律に従う必要がある。具体的には、不正の手段により閲覧履歴を取得してはならないし(個人情報保護法第17条第1項)、利用目的の通知又は公表が必要となる(個人情報保護法第18条第1項)。したがって、広告事業者による閲覧履歴の収集が、個人情報の取得に該当する場合においては、不正の手段による取得であると評価される場合や利用目的の通知又は公表を欠いた場合には、個人情報保護法に違反することとなる。

平成30年10月、個人情報保護委員会は事業者に対して行政指導を行っているが、これはボタンが設置されたウェブサイトを閲覧した場合、当該ボタンを押さなくともユーザーID、アクセスしているサイト等の情報が事業者に自動で送信されていることを理由の一つとしたものであり、上記問題が顕在化したものと見ることができる。

広告事業者が収集した閲覧履歴を、ユーザーの個人情報を含む登録情報を有する事業会社に提供するサービスも見受けられる。事業会社にとっては自らの登録ユーザーがどのようなウェブサイトを閲覧しているかは事業運営上、価値の高い情報である。この場合、広告事業者にとっては個人情報ではない閲覧履歴であっても、事業会社にとっては個人情報となるため、同様の問題が生じる。

以上のことから、プラットフォームが介在する取引におけるパーソナルデータの取扱いについて、今後、関係行政機関とも連携しつつ必要に応じて検討していくことも重要であるとの指摘があった。

イ SNS等における財・サービス等の取引

SNS等は、本来、コミュニケーションの場として利用されていたものと考えられるが、財等の取引が行われている実態がある。こうした取引は、大手のプラットフォーム事業者が介在する取引よりも、消費者トラブルにあう可能性が高いとの意見もあった。非マッチングサイトにおける消費者トラブルの問題について、今後、必要に応じて検討していくことも重要であるとの指摘があった。

(3)海外事業者への対応

消費者は、海外のプラットフォーム事業者を利用することもあり得るが、日本法の適用に関係のある規程としては、上記第3の5のとおり、法の適用に関する通則法と民事訴訟法がある。

法の適用に関する通則法では、消費者契約の成立及び効力は、当事者による準拠法の選択がない場合には、消費者の常居所地法によると規定されており(法第11条第2項)、その場合には、消費者が日本に在住しているときには、日本の法律が適用になる。

民事訴訟法では、消費者契約に関する消費者からの事業者に対する訴えは、訴えの提起の時又は消費者契約の締結の時における消費者の住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所で裁判を起こすことができる旨の規定が置かれている(法第3条の4第1項)。

法律の規定は以上のようになっているものの、実際には、少額の消費者被害について海外事業者と争うことは現実的ではなく、コスト以外にも、時間、言語等がトラブル解決を困難にしている可能性もある。また、各種の業法によっては、海外事業者に適用されないものもあり、適用されるとしても執行が困難であるものが存在する。

海外の事業者全てに問題があるわけではないが、インターネット取引は、国際取引であってもそれを意識しづらく、消費者は海外事業者と取引を行っているのか、そうでないかの区別さえ認識していない場合もある。先に述べたような国際私法の分野では、一定の制度が示されているが、我が国における消費者保護に関する公法の在り方についても、今後必要に応じて検討していくことが重要である。例えば、特商法、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)等の法令については、国内でサービスを展開する海外事業者に対する法適用がなければ、国内の消費者保護に欠けるところが生じるため、法適用の根拠を明らかにし、場合によっては法改正の必要性を検討することが考えられるとの指摘があった。

(4)オンライン紛争解決の充実の重要性

上記(3)のとおりであることからすれば、迅速かつコストに見合った紛争解決手段として、ODRの積極的活用が考えられる。そのためには、行政機関の役割も含めて、ODRを上手く利用できるような環境整備も必要となる。

現在、我が国においては、国民生活センターの越境消費者センターが、海外の消費者相談機関と連携し、越境消費者トラブルの解決のための取組を行っており、国際的には、APECにおいて域内の共通ルールを策定する動きもみられるが、こうした仕組みが充実していくことが重要であるとの指摘があった。

(5)プラットフォームが介在する取引における消費者保護の視点の重要性

プラットフォームが介在する取引は、今後一層、社会における重要性が高まっていくことが考えられるが、この市場が健全に発展していくためには、消費者の自由な選択が基礎におかれ、消費者が安全に取引に参加できることが重要である。プラットフォームが介在する取引に関係するルール、仕組みの検討を行うに当たっては、こうした消費者保護の視点や、プラットフォーム利用契約と利用者間契約が相互に関連している取引であることにも着目した検討を行うことが重要である。