産業構造審議会商務流通情報分科会割賦販売小委員会中間整理についての意見

2019年8月8日
消費者委員会

経済産業省の産業構造審議会商務流通情報分科会割賦販売小委員会中間整理(令和元年5月。以下「本中間整理」という。)においては、我が国の割賦販売法制の在り方について、近年のICT技術の進展に伴う決済テクノロジーの進化の中、技術革新を適切に取り込んでいくための、より柔軟な規制の枠組みが求められているとした上で、規制におけるリスクベース・アプローチや性能規定の導入等が指摘されている。

消費者委員会は、本年6月13日の第299回消費者委員会本会議において、経済産業省から本中間整理に関するヒアリングを実施し、これを踏まえて検討を行った結果、本中間整理について、下記のとおり意見を述べる。

経済産業省においては、今後、本中間整理を踏まえて割賦販売法制の在り方について議論を深めていくに当たり、本意見の趣旨も踏まえて検討されたい。

1.支払可能見込額調査に代わる技術・データを活用した与信審査、及び、指定信用情報機関の信用情報の使用義務に関する考え方について

多重債務者の発生を未然に防止するという現行の支払可能見込額調査義務の趣旨・機能を踏まえれば、本中間整理で検討の対象とされている技術・データを活用した与信審査について、現行の支払可能見込額調査と同程度以上の多重債務防止機能が担保される必要がある。その際、事業者ごとに与信審査方法や審査の基礎となる情報に差異が生じることになったとしても、上記の担保がなされるようにすることが重要である。

この点、本中間整理では、性能規定の考え方に基づき、事業者に求められる取組や行政等の第三者による事前チェック及び事後チェックなどの必要性が指摘されている。今後、事業者に求める取組の内容、事前・事後のチェックの主体・対象・基準等の具体的な内容の検討を進める上では、技術・データを活用した与信審査の基礎となる情報の質及び量並びに与信審査方法の精度を十分に確保するために、いかなる方策が効果的か慎重に検討すべきである。

また、技術・データを活用した与信審査について、指定信用情報機関の信用情報を使用する義務を課さないとした場合に、個々の事業者が把握する情報のみで、利用者の支払可能な能力を判断するために必要かつ十分な情報の質及び量を確保することができるかについて慎重に検討すべきである。

そして、これらの検討に際しては、技術・データを活用した与信審査の精度を検証しながら、支払可能見込額調査義務及び指定信用情報機関の信用情報の使用義務について段階的に緩和を検討する方法なども併せて検討すべきである。

加えて、利用者に対する技術・データを活用した与信審査に使用される情報の範囲・内容や審査等に関する情報提供などの利用者の予測可能性等を考慮した方策も検討すべきである。

2.少額・低リスクのサービスにおける指定信用情報機関への信用情報の登録義務に関する考え方について

少額サービスであっても累積により債務額が利用者にとって多大となるリスクがある。また、少額サービスは若年者にとっても利用しやすいものであると考えられることから、若年者保護の観点が一層重要になる。

これらの観点も踏まえ、低リスクといえるのはどのような場合かについて慎重に検討すべきである。

また、技術・データを活用した与信審査について指定信用情報機関の信用情報を使用せずとも与信可能とすることを前提にして、少額・低リスクのサービスで指定信用情報機関への信用情報の登録義務を課さないこととした場合に、業界全体の水準として現行制度と同程度以上に多重債務防止が担保できるかについて慎重に検討すべきである。

3.指定信用情報機関の運用・システムの在り方の検証・改善について

支払可能見込額調査に代わる技術・データを活用した与信審査や指定信用情報機関の信用情報の使用義務、登録義務について検討を進めるに当たっては、政策課題を指定信用情報機関の運用・システムの在り方を見直すことで対処することが可能かについても並行して検討すべきである。

4.新成年への対応について

本中間整理では、事業者による自主的な取組を紹介した上で「こうした取組を参考とし、今般の見直しに対するセーフティーネットとしての観点も踏まえつつ、新成年への対応を更に充実していくことが必要である。」とされている。

引き続き、新成年に対する健全な与信を確保するため、事業者の自主的取組を推進するための検討を進められたい。

5.技術・データの活用に伴って生じる新たな課題

AI等の技術・データの活用については、消費者に多大な利便をもたらす可能性がある反面、プライバシーの問題や不当な差別につながるおそれがあるという問題等の課題も有していると考えられることから、そのような新たな技術の特性を踏まえた消費者保護に係る取組が欠かせないことにも留意されたい。

6.多面的な議論の必要性

本件については、様々な分野に関わる課題を有すると考えられることから、検討に当たっては、より幅広い主体等に参画を求めつつ、多面的に議論を進めることが望ましい。

以上