第459回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2025年5月7日(水)10:00~11:10

場所

消費者委員会会議室及びテレビ会議

出席者

  • 【委員】
    (会議室)鹿野委員長、黒木委員長代理、中田委員
    (テレビ会議)大澤委員、小野委員、柿沼委員、星野委員、山本委員
  • 【説明者】
    京都大学大学院法学研究科 曽我部教授
  • 【事務局】
    小林事務局長、後藤審議官、友行参事官

議事次第

  1. レスキューサービスに関する消費者問題について

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1. 開会》

○鹿野委員長 本日は、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから、第459回「消費者委員会本会議」を開催いたします。

本日は、黒木委員長代理、中田委員、そして、私、鹿野が会議室にて出席しており、大澤委員、小野委員、柿沼委員、星野委員、山本委員がテレビ会議システムにて御出席です。

なお、今村委員、原田委員は、本日御欠席と伺っております。

それでは、本日の会議の進め方等について、事務局より御説明をお願いします。

○友行参事官 本日もテレビ会議システムを活用して進行いたします。

配付資料は、議事次第に記載のとおりでございます。もしお手元の資料に不足等がございましたら、事務局までお申し出くださいますようお願いいたします。

以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございました。


《2. レスキューサービスに関する消費者問題について》

○鹿野委員長 本日の議題は「レスキューサービスに関する消費者問題について」です。

トイレの故障、水漏れ、鍵の紛失等、日々の生活の中で困った出来事が突然発生し、自分では対処できないというときに、それらを解決するサービス、いわゆるレスキューサービスに関する消費者トラブルが増加傾向にあります。

本議題に関しては、これまでに計4回の本会議において、行政、業界団体、事業者、被害対策弁護団及び有識者からのヒアリングを実施してまいりました。

本日も引き続き、この問題について調査審議を実施したいと思います。

本日は、有識者として京都大学大学院法学研究科の曽我部教授から、レスキューサービスに関する消費者問題について、デジタルプラットフォームに求められる広告審査の在り方や各種対策の可能性に関して御発表をいただき、意見交換を行いたいと思います。

改めて御紹介させていただきます。

本日は、京都大学大学院法学研究科の曽我部教授に会議室にて御出席いただいております。本日は大変お忙しいところ、どうもありがとうございます。

それでは、まず20分程度で御説明をお願いします。

○京都大学大学院法学研究科曽我部教授 ありがとうございます。今、御紹介いただきました京都大学の曽我部と申します。

資料1が配付されているかと思いますので、それに即してお話をさせていただければと思います。タイトルとしまして「レスキューサービスに関する消費者問題とDPF」ということでお話をさせていただきます。

2枚目をおめくりいただくとプロフィールでございまして、こちらは御覧いただければと思いますけれども、本業は憲法でございまして、憲法の観点から情報空間に関わる諸問題、表現の自由でありましたり、プライバシーでありましたり、その他、人格権の問題等々を研究あるいは社会的活動させていただいてきております。

時間がない中でいきなり余談なのですが、レスキューサービスというのは今回お話をいただいて、そういう名前を初めて知ったのですけれども、思い起こしてみると、私も自宅でパイプが詰まってサービスを呼んだことがありまして、そのときはポストに入っていたマグネットを見ていたのですけれども、一歩間違えるとこういうこともあったのかなと思って、あまり他人事でないような感じで検討させていただきました。ということで余談です。

おめくりいただいて3ページでございます。こちらは事前に事務局と打合せをさせていただきまして、いろいろ宿題をいただきましたので、それに即してお話をするという構成になっております。3点、御覧のとおりです。

おめくりいただいて、4ページを御覧ください。こちらは総務省の「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会」というものが現在進んでおりますけれども、その中で、これは既に一昨年になりますが、なりすまし型「偽広告」という著名人の肖像を使って投資詐欺等のサイトに誘導するというものが社会問題になった関係で、広告の問題について検討をしております。

その中で、今4ページの資料ですが、上の囲みのところです。令和6年6月21日に大規模事業者に対して要請を実施したと。その後、対応状況についてヒアリングを実施予定と書いていますが、これはその後、実施しております。そのときの観点を下のほうに書いてございまして、ざっくり御紹介しますと、左側です。広告出稿時の事前審査等に関する対応ということで、「審査基準の策定・公表等」、2番目として、「自社が提供するSNS等におけるなりすまし型「偽広告」を端緒とした詐欺の手口・実態等を踏まえた審査の実施」、3番目として、「事前審査体制の整備」、4としまして、「被害者から通報があった場合の事前審査の強化」、5としまして、「広告主の本人確認のプロセスや実効性の検証・強化」。

右側の箱でございますが、広告流通後の削除等に関する対応としまして、1つ目、「利用規約等を踏まえた適正な削除対応」、2番目として、削除対応の迅速化、それから透明化です。これは先月から施行になっております情報流通プラットフォーム対処法の観点も入っているのかなと思われます。

5ページをお願いします。その後、先ほどありましたヒアリングが実際に行われました。行われた場は、先ほどの検討会の親会ではなくて、その下に設置されましたデジタル広告ワーキンググループにおいて行いました。こちらで私は主査を仰せつかっておりまして、その関係で本日お招きいただいているのかなと思いますが、この委員会の柿沼様もデジタル広告ワーキングの構成員としてお入りいただいております。

おめくりいただいて、6ページ以下がヒアリング後の総括ということで、これはこのワーキングにおいて取りまとめた総括ということになります。以下ずっと資料では続きますので、時間の関係でこちらは割愛をさせていただきますが、16ページまでヒアリング総括の中のワーキングとしての評価の部分を抜粋してございます。先ほど御紹介しました幾つかの観点がございますけれども、その観点に即してヒアリングを行い、それを踏まえて一定の評価を行ったということですけれども、全般として一定の対応はされているけれども、こういう課題があるよねという、非常にざっくり申し上げると、そういう総括となっております。

広告ワーキングにおきましては、その後、別なアジェンダに取り組んでおりまして、このテーマにつきましては、このヒアリング総括で現在止まっている状況ですけれども、今後またこのアジェンダに取り組むことにしているという形になっております。

17ページですけれども、ごく簡単に私のコメントを書かせていただいております。1ポツ目、「レスキュー広告における不当広告に対応するポリシーはないではないようである」ということで、事業者の広告に関するポリシーを拝見すると、17ページの下にありますように、これはグーグルのものですけれども、不実表示という項目がありまして、不当広告に関しては、こういったものに該当し得るのではないかというふうに、これは規約を見ただけの話ですので、厳密なことではございませんけれども、そういう印象を持っております。この委員会におきましても、前回、弁護団のほうでプレゼンがあったとお聞きしていまして、そちらの資料を拝見しますと、ポリシー違反で通報するけれども、対応が十分にされていないというお話であったかと存じます。そうしますと、1つの課題としては、まずはポリシーに従ってしっかり対応していただくというのが当然まず第一歩の課題になるのかなと思ったりもしております。これが1ポツ目です。

2ポツ目は、今後、広告ワーキングでの論点の共通点と差分を分析してさらなる対策を検討する必要があるのではないかということで、本日のレスキューサービスに関する広告も広告ですので、広告ワーキングで取り組んだ課題が多かれ少なかれ当然妥当すると。ただ、広告ワーキングに関しては、直接的にはなりすまし型「偽広告」の問題を扱っておりますので、そういう意味では完全に同じ論点とは限らないということで、共通点と差分を意識しながら更に検討を深めていく必要があるのではないかなと思っております。

18ページでございますが、これはアジェンダの2つ目です。第三者機関からの情報提供についてということで、要は第三者機関からの情報提供に基づいて、削除なり何なりをするスキームが、違法有害情報に関するほかのテーマでどういったものがあるのかという宿題でございましたので、幾つか事例を御紹介したいと存じます。

まず、児童ポルノに関しては、インターネットコンテンツセーフティ協会(ICSA)の一般社団法人が児童ポルノのアドレスリストというものを作成しまして、インターネットサービスプロバイダの手を挙げた現在52社あるということですが、大手は大体網羅しているということです。こういったISPのほか、検索サービス、グーグルとヤフー、それからフィルタリングサービスの会社にリストを提供していると。各社はそのリストを基に、児童ポルノサイトをブロッキングしたり、検索結果から排除したり、フィルタリング対象にしたりしているということであります。

下の図がICSAさんのサイトからお借りしてきた図ですけれども、左下にありますインターネット・ホットラインセンターという、こちらは後ほども出てきますが、警察庁の委託事業として行われているものでありまして、こちらは児童ポルノに限らず広く違法情報に関する市民というか、インターネットユーザーからの通報を受け付けまして、独自のガイドラインに従って違法性を判断し、違法だと判断した場合に削除要請等を行うということをしている組織になりますけれども、児童ポルノに関しては、更にICSAのほうに情報提供し、リストの作成を行っているという形になっております。

続きまして、19ページです。ただいまのICSAは児童ポルノでしたが、こちらは海賊版サイトです。一時期、漫画村等々で特に漫画の海賊版の被害が非常に大きいという問題がありましたけれども、その後いろいろ対策が進んでおりまして、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)さんがリスト作成もされたりとか、あるいは検索結果表示の停止要請を検索サイトに関しては行っているということであります。

下の図でございますけれども、こちらはグーグルの提供する侵害削除プログラムの枠組みで実施しているということのようです。こちらは私もこれ以上詳細を存じ上げませんけれども、こういったものがあるということでございます。

それから、20ページですけれども、こちらは先ほど御紹介しました警察庁委託事業のインターネット・ホットラインセンターや、セーファーインターネット協会という別の民間団体がございますけれども、そちらがいわゆるホットライン、あるいはセーフラインと呼ばれるものを運営しておりまして、一般市民からの通報を受けて、それぞれのガイドラインに基づき違法有害情報該当性を審査し、削除要請・対応依頼を行っているということであります。

その内容ですが、次の21ページです。こちらはインターネット・ホットラインセンターの例でございますが、基本的には違法情報であって、かつ個人の権利を侵害するものではないというものです。わいせつであったり、児童ポルノであったり、薬物の広告であったり、その他です。そういったものが違法情報として挙がっておりまして、それに付随するようなものが有害情報として対応の対象になっているということであります。ですので、個人の権利侵害、誹謗中傷のようなものはこちらは対象外であるということになります。広告も基本的には、指定薬物等はありますけれども、消費者問題的なものはないということかなと思います。

22ページでございますが、こちらは法務省の人権擁護機関が人権相談を受けて、救済のための措置を行っていると。これは別にインターネットの問題に限らず、実際にはインターネットの問題も多いということであります。こちらは権利侵害、人権侵害ですので、インターネットのプライバシー侵害であったり、名誉毀損、誹謗中傷の類いを扱っているということであります。申告があれば調査をして、審判事実の有無を判断し、救済のための措置を行う。削除依頼等々かと思いますけれども、そういったことを行っているということであります。

23ページですが、こちらが3つ目のアジェンダです。こちらは事務局のほうから幾つか具体的な宿題をいただいていますので、個別の点を幾つかコメントさせていただくという形になります。

まず23ページは、「プラットフォーム事業者に対し、消費者に損害を及ぼすことが予想し得る場合には、調査・確認し広告を表示してはならない義務を課すこと」が可能かどうかということです。例えば極端に安い価格を提示するとか、そういった広告についてはそれだけで削除できていいのではないかということかと思います。

これに対するコメントが下のポツでありますけれども、まず広告表示につきましては事前審査が現に行われておりますし、景表法等で規律もありますので、一定の法的義務を課すことは一般論としてはあり得なくはないのかなという今のところの感触というレベルですけれども、持っております。

ただ、こちらでお尋ねのあるような消費者に損害を及ぼすことが予想し得る場合というのは曖昧過ぎますので、これをそのまま義務として規定するのはさすがに難しいのではないかと思われます。

それから、3つ目のポツです。調査義務に関しても、調査の範囲がどの程度なのかというのは重要な問題になるかと思うのですけれども、広告主となる事業者の実態のようなものまで調査義務を課すのはなかなか難しいだろうと思われます。こういったものについてプラットフォーム事業者は通常知り得ないわけですので、そういったところまで独自に調査をせよというのは過剰ではないかなと思われます。

4ポツ目ですけれども、価格が安過ぎることをもって悪質とみなすというのは、やはり値付けというのは企業活動の根幹でありますので、相場と比較して安過ぎるから、それをもって問題だとすることはなかなか難しいのではないかと思われます。

小さいポツですけれども、実質的に不実表示かどうかは、やはり実態を把握しないと分からないということです。後ほど情報交換、意見交換の項目もございますけれども、いわゆる手口のようなものを情報交換するという中で一定の対応があり得るかもしれないとは思いますが、いずれにしても価格が安過ぎることをもって悪質とみなすというのは、なかなか難しいのではないかと思われます。

最後ですけれども、悪質事業者について情報提供を受けてその広告を表示しない等の対応は考えられますけれども、これは前回以前の資料にもありますが、名義を変えてどんどんやっていくということがありましたので、その辺りに課題があるのかなと思ったりもしております。

24ページですけれども、次は透明性の問題です。透明性に関しては、事業者が求めることはあり得るかと思っております。先ほどの事業者ヒアリングの総括でも透明性に関しては重要だというふうにしておりましたので、先ほど共通点と差分をというふうに申しましたが、この辺りは共通点として広告ワーキングでの議論なども御覧いただきながら検討いただくのがよろしいかなと思われます。

25ページでございます。信頼できる第三者とコミュニケーションを取り、情報交換を行い、削除要請等に対応するということですけれども、事務局のお尋ねの中では、信頼できる第三者とは具体的には消費者庁とか国民生活センター、インタラクティブ広告協会、インターネット・ホットラインセンター等が例として言われておりますけれども、レスキューサービスということで申しますと、国民生活センターさんが様々な情報をお持ちなのかなと思ったりもしております。

2ポツ目ですが、第三者との定期的な意見・情報交換や、個々の問題事例に関する情報提供、こちらは非常に重要かと思います。こういう手口があるという一般論的な情報交換も重要ですし、個々の事業者が問題だと、苦情が多いということもあって、その個々の事例、一般的な手口、傾向といったようなものの情報交換等々に関しては、こちらは非常に重要かなと思います。

先ほど不実表示に関して広告審査、ポリシーにはあるけれども、現実にはなかなか十分に対応してもらえないという課題があったことに言及しましたけれども、これはやはりこういった形で情報提供して、この問題が今深刻なんだということを伝えることによって、事業者側のプライオリティーを上げてもらうという効果が期待できるのではないかと思われます。

それから、3ポツ目です。削除要請に関しては、広告の場合と検索結果の場合はやはり違うところなのだろうと思います。検索結果については、こちらには記載がないのですけれども、義務的に削除させることについては、最高裁判例があってなかなか難しいこともありますので、その辺りとの関係も御検討いただく必要があると思いますが、例えば先ほどの2ポツ目のことと関係しますけれども、こういう事業者が悪質だということであれば、表示の順位を下げてもらうとか、そういった対応も考えられるかと思われますので、いずれにしても情報交換は重要だと思われます。

それから、次のページです。行政機関からのコンテンツモデレーション要請についてですけれども、これもまた総務省の検討会で恐縮ですけれども、昨年取りまとめられましたデジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会取りまとめというものがありまして、こちらは今、オンラインでいらっしゃる山本龍彦先生が御尽力いただいたと承知しております。私は部外者ということでもないですけれども、中心的に関わったわけではないのですが、その中に、偽・誤情報というくくりですけれども、行政法規に抵触する違法な情報に関する行政機関からの申出によるモデレーションの問題について言及があります。こちらは所管する行政機関が削除要請するということはあり得るけれども、削除要請する際には、基準を事前に策定・公表するですとか、その他、事後的に公表するですとか、下の(ア)から(エ)に挙がっているような留意事項が指摘されておりますので、こういったものも参考になるのかなと思っております。

次に27ページですけれども、信頼できる広告主をリスト化し、それをプラットフォームに情報提供し、優先的に表示することを求めるということです。検索結果の表示順位の問題ですけれども、現状、ヤフーの例、グーグルの例と挙げておりますけれども、一定のワードを検索すると、御覧のようなオンラインカジノの問題、それから自殺に関する相談窓口が優先表示されたりするということで、こういう取組自体は存在するということかなと思われます。ただ、この問題、レスキューサービスに関してこういう非常に特出し的な扱いがされるかというところは、問題の深刻さ等々との関わりで決まってくることかと思います。

ということで、最後、ちょっと時間が過ぎて恐縮です。28ページですけれども、4点コメントをさせていただきます。

1つ目は、そもそもレスキューサービスについて、そのジャンルに応じた資格制や公的な規制、業界団体による積極的な取組が必ずしも十分にないということがいろいろな問題の根底にあるのではないかなと思います。例えば業界団体がしっかりしていると、そこのサイトが優先表示されるとか、そういった形でつながってくるわけですね。そもそも土台となる資格制とか公的な規制、業界団体による取組がまずは求められるのではないかと思われます。

2ポツ目は、その一貫として広告表示の自主規制基準などを設ければ、プラットフォーム事業者の広告審査にも資するのではないかと思われます。

3ポツ目は、繰り返しですけれども、冒頭の広告ワーキングでの論点の共通点と差分を踏まえて御検討いただく必要があるのかなというところです。

4ポツ目ですけれども、プラットフォーム事業者の対応を促進するためにも、特商法とか景表法、その他関係法令の解釈整理、現行法上もこういったものは違法になるのではないかという解釈整理でありますとか、あるいは必要に応じて既に弁護団等々から改正提案があったやにお伺いしていますけれども、そういった改正によって違法性を明らかにすることで対応の在り方が替わってくるのではないかと思われます。

ということで、時間を超過して恐縮ですが、私からは差し当たり以上となります。どうもありがとうございました。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

曽我部先生から、デジタルプラットフォームの広告審査、特に総務省ワーキングのヒアリング結果について御紹介いただき、第三者からの情報提供の実情についても御紹介いただき、それを踏まえて、最後にデジタルプラットフォームにおける各種の対策可能性について御意見を頂戴したところでございます。

それでは、ただいまから質疑応答と意見交換の時間といたします。時間は40分程度でお願いします。いかがでしょうか。

中田委員、お願いします。

○中田委員 委員の中田です。曽我部教授、とても分かりやすい御説明をありがとうございました。

私は、ネット上でサービスを販売するという事業の経営に携わっておりましたので、デジタルプラットフォーマーの事業自体、比較的身近で見てきたので、先生の現実的な解決策の御提案等の御説明に大きな気づきがありました。特に、なりすまし型「偽広告」とは異なって、レスキュービジネスの場合は有利誤認の調査とか見極めの判断が白黒なかなかつけられるわけではなくグレーの場合が多く、デジタルプラットフォーマーには立場上、見極めが難しくて、自主的かつ実効性のある対応を依頼することへのハードルがあるという御説明でありましたが、一方で、業界団体等の第三者機関がその違法性を判断した上で、デジタルプラットフォーマーにある意味集団で申入れや削除依頼をすると対応してくれる例があるという御説明に、私は身近で個人で削除依頼を申し入れてもなかなか対応してくれないという声が多い中で、実現可能性という観点からは一筋の光が見えたような気がいたします。

その上で2点コメントをさせていただきます。これは消費者委員会の委員の皆様ともちょっと御議論したい点なのですけれども、消費者に影響力を持つデジタルプラットフォーマーの対応についての議論が今までのところ多くを占めておりますが、私個人の考え方といたしましては、デジタルプラットフォーマーはセカンダリープレーヤーで、プライマリープレーヤーはやはり大もとのレスキューサービスを提供する事業者で、この事業者自体の取締りと、この事業者が行う営業や広告の改善を求めるということが本来は一次的かつ本質的ではないかと考えております。

その上で、悪徳事業者に対しては第三者機関による取りまとめ、実際に提供されたサービス内容と広告に掲載されている内容の比較による有利誤認か否かの判定を例えば第三者機関で行い、事業内容の是正を事業者に対して行い、同時に広告掲載解除等について、広告媒体であるデジタルプラットフォーマーに申し入れるという両輪のアクションを取れる第三者機関をつくる、あるいは今ある機関や業界団体の支援を強化するということが必要なのではないかと思います。

例えば、金融機関の優良誤認広告等については業法で厳しく規定されておりますし、監督省庁である金融庁の指導の下に積極的に監視が行われており、一定の効果を出していると思います。ただ、レスキューサービス業界には業界団体があるわけではなく、もう少し細分化された業界団体、例えば私たちは以前の本会議の御説明を伺ったのですが、ペストコントロール協会さんでありますとか、損保協会さんなどの活動についてはあるのですが、レスキューサービス業界団体というようなくくりで、もう少し影響力のあるような業界団体として区分することが実現可能なのかどうか分からないのですけれども、理想的にはそういった区分がされ、その業界で被害情報の収集をして、監視をして、必要に応じて事業者への指導やデジタルプラットフォーマーへの広告削除依頼を集団で行うというアプローチができれば、もう少し効果があるのではないかと感じました。

2点目としては、現時点では、通報した消費者や被害者が満足のいく、納得のいくような対応はデジタルプラットフォーマー事業者によりされていないと私も思いますが、デジタルプラットフォーマー自体も消費者被害について懸念していないということでは決してないと思っております。それを踏まえて、私たちもデジタルプラットフォーマー企業が抱えている課題が何なのか、レスキュー広告における不当広告に対応するポリシーがあるにもかかわらず、十分な対応がされていないことは果たして有利誤認の認定の難しさや体制整備だけが問題なのか、何が対応を遅延させている要因なのか理解を深める必要があると思います。

先ほど先生から、特商法、景表法の解釈整理や改正により違法性を明らかにするという御意見もありましたが、プラットフォーマーが対応を強化するために何を補完していけばいいのか。私たち消費者委員会としても実際にデジタルプラットフォーマーにもう少し歩み寄って、それらの企業が抱えている課題に寄り添い、彼らだけで対応が難しい状況であることに対しては、第三者機関で対応して協力するなど一歩歩み寄った対応も現実的には必要なのではないかなと感じました。

以上、御質問というよりはコメントです。

○鹿野委員長 御質問も一部含まれていたのかもしれませんが、2点コメントがありました。曽我部先生、お願いします。

○京都大学大学院法学研究科曽我部教授 どうもありがとうございます。2点とも全くおっしゃるとおりだと思います。1点目に関して、プライマリープレーヤーは事業者であるというところもおっしゃるとおりかと思いまして、業界団体がないと、あるいは十分な規模であったり能力がないということは一つ問題だというのもおっしゃるとおりかと思いますが、やはり零細事業者が多い中で、ほかの業種も含めて業界団体の組織率を高めるのは一般論として非常に難しいということもまた事実かと思います。ただ、これは従来この委員会での業界のプレゼンにもあったかと思うのですけれども、例えば劇薬を扱うとか、いろいろな特徴があるわけで、それをフックとして一定の登録制であったり、何らかの公的規制が必要なことは一般論としては事実だと思いますので、そういったものを通じて業界団体のところも何らかの組織をしていただくというようなことはあるのかなと思います。その辺りは行政側の宿題なのではないかと思われます。

2点目のデジタルプラットフォーマーも問題意識は当然一般論としてあるはずだけれども、なかなか実際の取組に結びついていないという点もおっしゃるとおりだと思います。これは別の例になりますけれども、日本でも同和問題という日本固有の問題があって、同和地区の動画を動画サイトに上げて、その住民の不安をあおるということが実は問題になっているのです。ただ、グローバル事業者に同和問題を理解していただくのは非常に難しいという中で、対応が非常に遅れているという課題があります。

あれに関しては、例えば法務省さんですとか、あるいは自治体ですね。東京だと地方の話題みたいになってしまうのですけれども、西日本ではかなり深刻な問題でありまして、そういった関西等々の自治体などが粘り強くお話をされて、まだ十分ではないかもしれませんけれども、一定の成果を上げているといった事例もございますので、やはり実情をしっかり伝えていくということが重要なのではないかなと思います。

○中田委員 ありがとうございました。

○鹿野委員長 ほかにいかがでしょうか。

大澤委員、お願いします。

○大澤委員 曽我部先生、どうも御無沙汰しております。非常に分かりやすい報告をいただきありがとうございました。

基本的には、私は曽我部先生の最後のスライドに非常に共感をするところで、今の中田委員の御発言とも関係するというか、私は中田委員の御意見も本当にそのとおりだと思っているのですが、まずは例えば広告、景表法だったり、特商法の解釈整理だったりとか、あるいはレスキューに関しては業界団体もないということですので、もちろんペストコントロールとか一部のものに関してはあるわけですけれども、例えばレスキュー事業そのものについての広告表示規制であったり、あるいはもっと広く景表法で何か執行しているという状況では、あまりまだ積極的にはないのかなと思いますけれども、こちらのレスキュー事業、要はレスキュー業者自体、特に広告コントロール等を考えるというのがまず1つかなと、私もここは共感するところです。

その上で、26ページのスライドについて伺いたいというか、私も憲法を勉強してもう二十何年以上たっていますので、ちょっと感覚が薄れているというか、ほとんど門外漢ですので伺いたいところです。第三者機関からの情報提供についてというところでは、その前のスライドで国センが出てきたと思うのです。国センは確かにこの種の情報はたくさん持っていますし、例えば消費者安全法でも国センに集まった情報を国民にちゃんと情報提供するとか、そういうシステム自体は存在しているのですが、国センが集めている情報を基に、例えば26ページにあるような広告に対する介入をするというのは、なかなか難しいのかなとも思っているところがあります。これは曽我部先生もおっしゃっていましたけれども、今回のレスキューの問題は、別に偽情報だったり、あるいは違法な内容の広告をしているというよりは、最低金額だけを表示して、例えば1,000円から修理しますと言っておきながら実際は10万円取られましたとか、そういう消費者が非常に困っている状況につけ込んでいる。確かに広告が消費者にとってはきっかけになっているのですけれども、広告自体に何か偽情報があったりとか、ヘイトなことを書いているということではないので、行政機関あるいは国センがその情報を持っていて、そこに介入していくというのは、なかなか広告のレベルでは難しいのかなという気がしているのです。

先生もおっしゃっていたように、価格自体が、例えばトイレの詰まりが1,000円ですと書いていて、1,000円って随分おかしいなと思っていても、それで直ちに違法ということにはならないと思いますので、なかなか悩ましいなと思うところがあるわけですけれども、そうするとやはり基に戻って、今日の最後のスライドにあるように、まずは例えば景表法だったり、あるいはレスキュー商法自体に対する特定商取引法で何か特定類型をつくるとか、何かもっと踏み込んだ対応をして、それによって、何が違法な広告になったり、あるいはどういう勧誘をすると違法になるかということを示していくことで、もしかするとそのプラットフォーム事業者も、例えばデジタル広告のコントロールがしやすくなるのかなと思うのです。

すみません。ちょっと脱線したのですけれども、私が伺いたいのは、26ページのところで、行政機関のコンテンツモデレーション要請ということについて、非常に興味深いと思いつつ、なかなかこれができる情報あるいは広告は限られているのかなという印象も持ったのですが、まさに経済活動の自由等々、あるいは表現の自由もあると思うので、間違っているかどうかを伺いたいという次第です。

以上になります。

○鹿野委員長 お願いします。

○京都大学大学院法学研究科曽我部教授 大澤先生、御無沙汰しております。御質問ありがとうございます。

26ページの取りまとめに関しては、山本委員のほうがお詳しいかと思うのですけれども、ここの前提となっておりますのは、まさに行政法規に抵触するという記載がございますとおり、違法であるということが大前提になっております。ですので、違法ではないけれども不当であったり、消費者にとっていろいろ問題だというようなものですとか、あるいは広告自体は違法ではないけれども、事業者としては悪質だみたいなものは、ひとまずこの26ページの記述の射程に入っていないのだろうと考えております。

その上で、行政法規に抵触する違法なということですので、それで申しますと、最後のスライドにございますように、解釈整理ですとか改正によって、やはり違法なものは違法だというふうにしていった上で、違法な行政法規に抵触するものについて、行政機関から削除要請等を求めるというシナリオになっていくのだろうと思います。これが発動されるのは実際にはかなり限られた局面なのだろうと思っておりますので、そういう意味では対策の柱とはなりにくい部分もあるのかなと思ったりしております。ただ、もちろんこの取りまとめ自体も、本当にそれでいいのかという批判的な御検討の視点もあるかとは思いますけれども、この取りまとめの指摘を前提とする限りは、今申し上げたような形になろうかと思います。

○大澤委員 どうもありがとうございました。

すみません。私の頭の整理がうまくできていなかったから、ちょっと分かりづらくて申し訳なかったのですけれども、やはりレスキューの場合というのは、今先生もおっしゃっていたとおり、このコンテンツ自体が、例えば広告自体が1,000円ですと書いてあって、これで直ちに1,000円はあまりに安過ぎるので違法ですというわけにもいかないとして、問題は、その後の勧誘だったり、実際の取った金額との差額が大きいとか、そこに問題があるというときに、確かにその情報を国民生活センターが持ってはいるのですけれども、例えば国センが情報をたくさん持っているときに、それをプラットフォーム事業者に提供してとか、もうちょっとそこのプラットフォーム事業者との連携をして、例えばデジタルコンテンツがあるときに、それで介入と言ったらあれですけれども、そういう広告を出しているようなプラットフォーム事業者を上位に載せないとか、そういうことはあり得るのですか。それだとあまり介入にはならないのですかね。すみません。もう一点だけ伺いたいです。

○京都大学大学院法学研究科曽我部教授 ありがとうございます。偽広告の問題でも、広告主の本人確認ということが一つテーマになっておりまして、問題のある広告主を排除していくという問題意識はあるかと思います。ただ、本人確認ができるかできないかということと、その事業者が悪質かどうかで一応切り分けることもできるかもしれませんので、本人確認という項目の中で事業者自体の悪質性をどこまで考慮できるのかというのはあるとは思います。ただ、常識的に考えれば、偽広告の問題にしても、問題のある事業者を排除するために本人確認をするということだろうと思いますので、その発想はレスキューサービスに関しても当てはまると思われます。その基になる情報は、国民生活センター等でお持ちであれば、それを活用していただくということもあり得るのかなと思っております。

あと、広告に関しては、100円では安過ぎるということを違法だとは言えないというのはおっしゃるとおりですけれども、料金体系をきちんと表示すべきだとか、そういった規制は当然できるはずで、それは自主広告規制であったり、そういう世界の話になるかと思うのですけれども、現状それもないということで、私も今回いろいろ広告を見てみたのですけれども、確かにどういうところを見たらいいのかというのはよく分からなかったところもあって、ある程度こういうものが表示されていれば、少なくともその限りはまともな事業者で、そういうものすらないのは怪しいというぐらいのことは判断がつくような形で、何らかの基準なりができる必要があるのではないかと思った次第です。

○大澤委員 どうもありがとうございました。

最後の点は、私もそうではないかというふうに思います。なので、プラットフォーム事業者というのが、どうしても今、デジタルを見て、特に若者は検索結果でアクセスしているというのが実態としてあります。ただ、やはり一方で、レスキュー事業について、例えばその自主広告基準すらないという本当に何もない状況なので、このままですと、もちろん被害が収まりにくいというのもありますが、プラットフォーム事業者にとっての基準すらない状況ではないかなと私も思うところです。どうもありがとうございました。

○京都大学大学院法学研究科曽我部教授 ありがとうございました。

○鹿野委員長 ほかはいかがでしょうか。

黒木委員長代理。

○黒木委員長代理 曽我部先生、どうもありがとうございました。非常に勉強になりました。

その中で、まず1点目は、23ページのところです。23ページでは結局、先ほどの高い・安い問題というのはなかなか難しいのではないかという話がありますけれども、同時に、景品表示法の5条3号の広告規制のおとり広告の問題があります。それについて運用指針も定められています。前回の委員会で一般社団法人日本アフィリエイト協議会の代表理事の笠井さんという方が、結局、DPFは、リスティング広告で幾ら業者が払っているのかということについては分かっていると。例えばこのリスティング広告で、クリックした瞬間に業者が3,000円を負担しているのに1,000円からといったら、それは経済的に破綻している。したがって、1000円からというのはおとり広告でしかないという、DPFのリスティング広告という収入源との関係で、DPFの広告収入から考えてあり得ない広告ではないかという御指摘をいただいております。そうするとそれはあり得ないサービスを提供しているということになるので、DPFに対してもその問題を言えるし、あるいはそれは運用指針なり何なりの景表法のところを変えることによって、そういうばかなことをしては駄目だよというような話ができないのかということをずっと考えていまして、その点についての先生のお考えを教えていただければというところが第1点です。

第2点ですけれども、27ページに第三者からの情報提供として、信頼できる広告主のリスト化という話がありました。これは大変興味のある御指摘だと思っております。そのような話の中で、広告のところで、例えば消費者庁の景表法の中で公正競争規約という制度がありまして、公正競争規約に従った広告ですというようなものを広告主が表示した場合をどう考えるかという点です。ここはそういうところに認証されています。あるいは公正競争規約まではなかったとしても、事業者団体としてちゃんとしたところに入っているのですというようなものをプラットフォーマーは優先的に情報提供してはどうかというようなことは考えられないのか。

先生の23ページのところでも、悪質な連中は逃げていくのだから、どんどん替わっているから変わらないという話がありました。同一性の確保に課題があるということですけれども、優良事業者は自分のブランドというか、のれんが出てくるわけですから、それは確保したいと思っているので、こういうばかな、ぐるぐる変えていくことはしないわけですね。そうすると、そのような事業者の広告に対する対応をうまく利用して、良い子に光を当ててあげるというような形でこの問題をDPFとの関係で整理することはできないのかと、この点についての先生のお考えを教えていただければありがたいと思います。

以上です。

○京都大学大学院法学研究科曽我部教授 ありがとうございます。大変貴重な御指摘だと思いますが、なかなかこの場で私が十分にお答えできないのをあらかじめおわび申し上げたいのですけれども、1点目のアフィリエイト協議会さんからの御指摘の含めた部分に関しては、要するに事業者のサービス内での振る舞いから、その悪質性なり何なりを見極めて対応すべきではないかという形での問題提起。若干抽象化すると、そういうふうに受け止めました。ちょっと首を傾げておられるのであれなのですけれども。

そうしますと、ほかのテーマでも似たような話はありまして、ちょうど今、私はこども家庭庁さんで青少年のインターネット上の保護の話をやっているのですけれども、例えばユーザーの年齢を、そのユーザーのサービス上での振る舞いから検知して、青少年だと判断した場合には青少年向けのサービスに切り替えるということをされている事業者が一部あるとお聞きしています。

ということで、サービス内での振る舞いをまさにアルゴリズムで検知して、一定の判断をして、一定の対応をするということ自体はあり得ると思います。先ほど御紹介いただいたようなリスティング広告に幾ら払っていて、3,000円払っているけれどもサービスは1,000円だというのは一見しておかしいじゃないかということ自体がそのとおりなのか、ちょっと私は分かっておらず、例えばキャンペーンのときに赤字覚悟でやるということもあるかもしれませんし、単純にはいかないと思うのです。ただ、複雑な動きをずっと検知していくと、やはり悪質事業者は悪質事業者の特徴としての動きがあるかもしれない。そうしますと、それをヒントに一定の対応をしていくということは一般論としてはあり得るのかなと思うのですが、それ以上、私も技術的なことが分かりませんので、今この場で確固としたことは申し上げられないのですが、一般論としてはそういった振る舞いを検知して、一定の対応をするということはあり得るかなと思います。

2点目の信頼できる広告主に関しては、これもあり得ると思うのです。いろいろなものでも、例えば公的な団体がまず上に出てくるとか、そういうことは多々なされておりますので、検索結果そのものに関して、一定の信頼できる事業者なり団体が優先表示されるということは当然あり得ると思います。

ただ、どういう指標でもって順位を決めているのかというのは、まさに検索のアルゴリズムの話ですので、そこは事業者との協議の中で、先ほどの繰り返しになってしまうのですけれども、この問題についての実情であったり深刻さというものを伝えた上で、彼らのロジックの中で御対応いただくという部分がどうしても残ってしまうのかなと思います。

○黒木委員長代理 ありがとうございました。

一番最初のところは、例えば表示されている料金が最低賃金にも満たないような、しかも、ワンクリックでDPFに払わなくてはいけないリスティング広告の代金にも満たないのを、「から」表示でやっているというような、例えば1,000円からとかいう表示でやっているというのは、これは景表法の表示規制で考えられないか。事業者のサービスの実態の問題ではなくて、客観的、形式的にはじくというような指針をつくればDPFとしては、問題のある広告として規制することはできますかという問題意識をもっています。

○京都大学大学院法学研究科曽我部教授 ありがとうございます。そういうことはあり得ます。違法であるということがある程度明確になっていれば、それは事業者としても格段に対応しやすくなるのだろうと思います。

○黒木委員長代理 ありがとうございます。そうすると、例えば景品表示法5条3号のおとり広告に関する運用指針が今既にあるんですけれども、その運用指針を改正して、この「から」表示の問題、事業者が実際に行う中心価格帯を全然書かずに1,000円からだけとかいうような表示を、運用指針を変えれば、DPFは変わる可能性があるというふうに考えていいでしょうか。

○京都大学大学院法学研究科曽我部教授 そうですね。最近はいわゆる闇バイトの広告を解釈整理によって違法だと位置づけたことによって一定の動きがあったというふうに承知しておりますので、それと似たような話なのかなと思います。

○黒木委員長代理 ありがとうございました。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

それでは、星野委員、お願いします。

○星野委員 御説明ありがとうございました。

コメントになってしまいますが、広告審査のプライオリティーを上げるというところが大事だということでございますけれども、私の理解ですと、私もAIとか、あとは例えば総務省の統計に関する仕事もかなりさせていただいて、そういったところでの意見でございます。現在の生成AI等の状況を見ますと、プラットフォーム事業者が広告内容を自動的にチェックするというのも本当に容易にできるかと思います。そして、先ほど黒木委員とか大澤委員がおっしゃっていたような国センからの情報提供だとか、例えば良い子に焦点を当てさせるだとかということは容易にでき得ることでありますし、かつ金額ですね。例えば特定のサービスだとかの消費量、平均的な金額などは、総務省の統計、家計調査などの仕事もさせていただいておりますけれども、幾らの金額かという情報は出そうと思ったら結構出せる。だから、レンジがどれぐらいあるかみたいなことはかなり分かりますので、そういった情報提供さえ国がすることができ、かつプラットフォーマー側がちゃんと受け入れて、それを審査に生かすということが、やる気になれば全くこれは容易にできることかと思っております。それが結局されないのは、やはりプラットフォーマー事業者側にとっては特段何かしらのやるインセンティブがまだまだ全然ないということかと思います。

前回、22日の本会議でレスキュー商法被害対策京都弁護団の増田弁護士のお話を伺いましたけれども、集団訴訟した後に被害救済しようにも、先ほどの話があったように、広告にかなりお金が充てられていると。つまり、あまり当たらないサービス、なかなかカモになる人たちがあまりいないわけなので、非常に広告費をかけると。万一当たったら、そこに対して数十万とかという形でお金を請求するというようなサービスなので、広告費を非常にかけている。結局、これは広告プラットフォーマーにお金が流れているので、そこに対して何かしら手をつけないと、つまり実際にお金を取り戻せないということが起きているというお話を伺いました。

ということは、やはりそこで集団訴訟になった場合に、広告プラットフォーマー側が例えば集団訴訟で判決が出た段階で、そこから先、またその前段階の広告に関して、何かしら被害救済に充てるだとか、それに加えて賠償金を請求するみたいなことがあると、結局これはインセンティブになりますので、やらなければいけないなと思って広告プラットフォーマーはやると。やろうと思ったら、例えばグーグルなんかですと、彼らがいろいろなAIシステムをつくっているようなレベルから考えても容易にできることだと思いますので、何かしらそういったインセンティブが必要なのかなと思いました。ですから、技術的には可能なところが、何が阻害要因になっているのか。中田委員も、プラットフォーマー側が困っているというような表現をされていましたが、そういった要因もあるかと思いますが、何かしらプラットフォーマー側のインセンティブということに関して御意見ございましたら、ぜひお願いいたします。

○鹿野委員長 コメントということではございましたが、何か。

○星野委員 コメントですが、何か。すみません。せっかくですので。

○京都大学大学院法学研究科曽我部教授 インセンティブの問題は大きいと思います。これは今回のテーマに限らず、違法有害情報対策一般に同じことが言えるかと思いますが、例えば名誉毀損、誹謗中傷に関してはプロ責法、情プラ法になりましたけれども、3条の責任制限規定でもって、何もしなければプラットフォーム事業者も責任を問われるという形で一応のインセンティブ構造のようなものができて、どこまで有効かというところはありますけれども、それはほかの問題について必ずしもそういったものがないということで、現状はそういう法令によるインセンティブ構造を設計するということは十分できていないのが事実だと思います。

でありますから、結局、問題の深刻性を訴えるとか、情報提供するとかいう形になっていかざるを得ないわけですけれども、広告に関しては、ここは私は全く分からないのですけれども、景表法等々の責任をプラットフォーム事業者に負わせることがあるのかないのかといったようなところで今のインセンティブの問題は考えていくのかなと。ちょっと今、印象だけで申し上げて恐縮ですけれども、そう思っております。

○星野委員 ありがとうございます。

○鹿野委員長 ほかにいかがでしょうか。山本委員や柿沼委員は総務省の検討会にも関わっていらっしゃって、この領域の問題にお詳しいと思いますが、何かございませんか。

それでは、柿沼委員から先にお手が挙がりましたので、柿沼委員、そしてその後に山本委員からお願いします。

○柿沼委員 すみません。手を挙げるタイミングがちょっと早くて申し訳ございませんでした。

私の意見なのですけれども、1つ目としては、京都で行われた裁判所の判決では、広告主と事業者が共同不法行為責任を問われて認められた判決だと思います。事業者に光を当ててという話もあったかと思うのですけれども、事業者に光を当てにくい状況であるというところをまず御理解いただきたいなと思います。消費生活センターの現場では、事業者に連絡をしても、いなくなってしまっていたりとか、きちんとした対応がされないというのがそもそものレスキューサービス商法の問題点で、こちらについての議論をテーマとして上げていただいたものでして、なかなか事業者を是正することが難しい局面があるということをまず1つ御理解いただきたいなと思いました。

また、裁判をその都度行うということも、金銭的に考えてなかなか難しいですし、それぞれの弁護団が各地に立ち上がる気配がない現状を思いますと、やはり1つ目として、報告の在り方について光を当てていただけないかなということを私は思っています。

ただ、プラットフォーム事業者も偽情報とか、レスキューサービスについては違法と判断がしにくい状況であるというところは皆さん一致での意見かと思います。また、景表法でのにょろにょろ表示についても、これはおとり広告と捉えるのとともに、にょろにょろ表示については、公取でこういう表示をしてはいけないよというふうに言われてしまって表示ができませんというような意見が管工事組合からもあったかと思います。

やはり私としては、このような表示について、プラットフォーム事業者に言っていくにはどうすればいいかなというところを、曽我部先生の御意見から深掘りをしてお聞きしたかったなというところがあるのですけれども、なかなかそれも難しいというところがまず理解できました。

そうすると、良い事業者を広告のトップのほうに載せていくというのが一番の方法なのではないかなと思ったのですけれども、私の意見になってしまったのですが、曽我部先生としては、今、委員のいろいろな意見を聞いた上で、更なる意見なりコメントがございましたら教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

○鹿野委員長 全体の今までの議論を踏まえた御意見がということですが、曽我部先生、お願いします。

○京都大学大学院法学研究科曽我部教授 ちょっと繰り返しにはなってしまうのですけれども、この業種に関する適正な広告とは何ぞやというところをまずはっきり、これは自主規制であっても結構かと思いますし、法令、ガイドラインでもそうだと思うのですけれども、この業種に関しては標準的な広告フォーマットはこういうものだというものがまず確立しなければ、プラットフォーム側も対応がしにくいでしょうし、消費者も分からないというところがあるかと思いますので、そこがまず一丁目一番地なのかなと思ったりもしております。

あとは、業界団体に関しても、この業界団体に加盟しているから安心だとか、現状そういうことが言えない状態にあるわけですね。やはりそれも何とかしていくべきもので、消費者が見たときに分かりやすいラベルであったり、フォーマットであったりというものを確立していただくのがまず重要なのではないか。消費者自身の判断にもそうですし、プラットフォームに対応を求めるに際してもそうなのかなと思いますので、そのためにどうやるのか。業界団体の整備を求めるのか、あるいは支援していくのか、あるいは法令の解釈整理、あるいは法令改正をするのか、あるいは公正競争規約なるものをやっていくのかといったようないろいろなメニューがあると思うのですけれども、いずれにしても先ほど申し上げたようなことがまず重要なのかなと思いました。

すみません。繰り返しで大変恐縮です。

○鹿野委員長 柿沼委員、よろしいですか。

○柿沼委員 柿沼です。

ありがとうございました。悪質な事業者を排除するというよりも、良い事業者に光を当てて、きちんと整備していくというようなことについては私も共感いたしました。ありがとうございました。

○京都大学大学院法学研究科曽我部教授 あと、連絡が取れない事業者、そもそも連絡先を表示していない事業者もあるとすれば、そこも先ほどの話に当然含まれるかと思います。

○柿沼委員 ありがとうございます。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

山本委員、お願いします。

○山本委員 特にそのとおりだなと思って伺っていたのですけれども、あえてちょっと論点を出すとすると、やはりプラットフォームにどれぐらいの責任ないし責務を課すかというか、想定するかというところが重要な根本的なところかなと。先ほどもあったとおり、いわば広告主というか、そちらが悪いのだけれども、これは例えばCtoCの取引でプラットフォームが媒介するのと同じで、なかなか悪い売り手というか、素人の売り手を把握できないというところで、ある種プラットフォームをコントロールポイントにせざるを得ないというようなことがあったかと思うのです。今回も事業者が悪いといえば悪いのだけれども、どういうふうにこの問題を捉えていくのかというところで、やはりプラットフォームに対して一定の責任、役割を果たしていただくということもあるのかなと思って伺っていたところです。

その上で、曽我部先生のスライドの23ページなのですけれども、これは事務局にも少し伺いたかったのですが、消費者に損害を及ぼすことが予想し得る場合というので、以下の場合で2つポチが出てきて、極端に安い価格表示とか、確かに曽我部先生がおっしゃるように、ここが曖昧であるとなかなかプラットフォーム側も対応しづらいのかなということは私も感じたところです。そういう意味では、先ほどのAIで何か考えるということも、割とAIに広告審査をさせているというか、依存しているところではAIの利活用は有効になると思うのですが、もう一方で、第三者とのコミュニケーションというのがその後で重要性を御指摘されていたと思うのですけれども、信頼できる第三者から何か指摘があった場合というのは、この予想し得る場合というところに当たるのかなと。そういう意味で、この後の議論と、つまり削除要請というところとまた別途で、今の調査義務が生じるきっかけ、契機としての第三者からの通報ということも考えられるように感じました。その辺りをどういうふうに考えていくのかということはあるかなというのが1点目です。

2点目は、大澤先生からも御指摘があったところですけれども、例えば行政機関等からの削除要請について、確かに健全性の総務省の会議で議論したところですけれども、ここは曽我部先生が御指摘のように、偽情報かどうかということを基準に考えるのではなくて、いわゆる行政法規に違反しているかどうか、違法かどうかということで考えていくところかなと思います。

そうすると、やはりここも論点になったように、結局、どういった広告が特商法、景表法に違反して違法なのかということを明確にしておかないと、そもそもうまく機能しない、ワークしないのかなと。逆に言うと、表現の自由との関係で問題が生じるところなのかなと思いました。

ですから、どういう広告が、どういう法律に違反して違法なのかということの基準を明確に整理しておく。それをガイドライン等に記載していくというような手続が先行して必要になってくるかなと思ったところです。

すみません。質問というよりも雑駁なコメントですけれども、以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

今のコメントに、曽我部先生から何かございますか。

○京都大学大学院法学研究科曽我部教授 2点目に関しては先ほど申し上げたとおりですし、山本先生も御賛同いただいたのかなと思っておりますので、時間もないので割愛させていただきますが、1点目に関しては、確かに事業者と連絡が取りにくいというところで、CtoCの構造に似ているというのはおっしゃるとおりだろうと思います。ただ、今日のお話は、だからといってCtoCに寄せていくというよりは、まずBtoCの問題だということを明確にするというのが主な議論だったと思いますので、まずはそちらの方向をやっていくというところで、必要に応じてCtoCでの対応の手法みたいなものも取り入れていくということではないかなと思いました。

調査義務の問題、行政あるいは国民生活センター等が持っている情報をしっかり活用するというところで、いろいろな形で利用され得ると思うわけです。つまり、先ほど申し上げたとおりですけれども、全体的な傾向性の問題、それから、そもそもこの問題が深刻なんだということを示すことですとか、そういうのが一般的な傾向として一方の極にあり、他方では、この事業者が問題だという情報提供も可能かもしれず、そういったものを提供していくことによって、プラットフォーム事業者の側でも広告審査に生かしていくとか、個別の検索の表示等々に活用していただくとか、活用の仕方は様々あると思いますので、そういった中で、消費者に損害を及ぼすことが予想し得る場合の判断に使っていくということもあり得るのかなと思いました。

○山本委員 ありがとうございました。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

ほかはよろしいでしょうか。

御説明、御回答をいただきまして、誠にありがとうございました。予定のお時間を若干超えてしまいましたが、今回の議論は以上とさせていただきたいと思います。

本日は、京都大学大学院法学研究科の曽我部教授に御出席いただいて、貴重な御発表をいただくとともに、我々からの質問に対して非常に的確に御回答をいただきました。大変参考になり、勉強になりました。本日の議論を踏まえて、引き続き、私たちとしても調査審議を行ってまいりたいと思います。どうもありがとうございました。

○京都大学大学院法学研究科曽我部教授 どうもありがとうございました。


《3. 閉会》

○鹿野委員長 本日の本会議の議題は以上になります。

最後に、事務局より、今後の予定について御説明をお願いします。

○友行参事官 次回の会合につきましては、決まり次第、またインターネット、ホームページなどを通してお知らせいたします。

以上です。

○鹿野委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)