消費者団体ほか関係団体等との意見交換会 議事録(2023年3月20日)

日時

2023年3月20日(月)10:00~12:36

場所

消費者委員会会議室及びテレビ会議

出席者

  • 【委員】
    (会議室)後藤委員長、受田委員長代理、大石委員
    (テレビ会議)飯島委員、木村委員、黒木委員、星野委員
    【説明者】
    国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部
    瀧本 秀美 部長
    一般社団法人Food Communication Compass
    森田 満樹 代表
    昭和女子大学食健康科学部
    梅垣 敬三 教授
    岐阜医療科学大学薬学部
    宗林さおり 教授
  • 【事務局】
    小林事務局長、岡本審議官、友行参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 保健機能食品の今後の在り方
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1. 開会》

○後藤委員長 本日は、お集まりいただきありがとうございます。

ただいまから、消費者委員会と消費者団体ほか関係団体等との意見交換会を開催させていただきます。

本日は、受田委員長代理、大石委員、私が会議室にて出席、飯島委員、黒木委員、星野委員がテレビ会議システムにて御出席です。木村委員も御出席予定ですが、ただいまのところはまだ入っていらっしゃらないようです。

青木委員、生駒委員、清水委員は御欠席です。

開催に当たり、本日の進め方等について、事務局より説明をお願いいたします。

○友行参事官 本日はテレビ会議システムを活用して進行いたします。

配付資料は議事次第に記載のとおりでございます。もしお手元の資料に不足などがございましたら、事務局までお申し出くださいますようお願いいたします。

以上です。


《2. 保健機能食品の今後の在り方》

○後藤委員長 消費者委員会では、今後の審議の参考とするため、消費者団体を始めとした関係団体や有識者の皆様より御意見をお伺いするとともに、委員との意見交換を行っております。

保健機能食品制度は、特定保健用食品制度の制定から始まり、その後、栄養機能食品、機能性表示食品が設立され、制度創設から30年以上が経過しました。この間には、高齢化の進展など、社会的環境が大きく変化するとともに、機能性表示食品が大きく増加するなど、保健機能食品をめぐる状況も変化しております。こうした中、保健機能食品制度の発展・充実に向けて検討が必要な時期に来ているのではないかと思います。

そこで、本日は、保健機能食品の今後の在り方について、有識者の方から忌憚のない意見を頂戴できればと思っております。

本日は、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所、栄養疫学・食育研究部長の瀧本秀美様、一般社団法人Food Communication Compass代表、森田満樹様、昭和女子大学食健康科学部教授、梅垣敬三様、岐阜医療科学大学薬学部教授、宗林さおり様に会議室にて御出席いただいております。

皆様、本日は大変お忙しいところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本日は事前に御用意いただいた資料を用いて10分程度御説明いただいた後に、15分程度、委員との意見交換をさせていただきます。

また、全ての発表、意見交換が終了した後に、全体としての意見交換の時間を45分程度設けておりますので、4名への共通の御質問や、反対に、御出席の皆様から委員や他の御出席者への御意見・御質問などがございましたら、その際に発言をお願いいたします。

それでは、最初に瀧本様、よろしくお願いいたします。

○医薬基盤・健康・栄養研究所 瀧本栄養疫学・食育研究部長 おはようございます。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所、栄養疫学・食育研究部長の瀧本でございます。

私からは、「保健機能食品等の摂取と健康行動」というタイトルで、令和元年の国民・健康栄養調査の結果を御紹介しながらお話しさせていただきたいと思います。

画面共有はそちらでされるのですか。それとも、こちらの配付資料で。

○友行参事官 事務局でございます。

画面共有は特にいたしません。皆様、お手元の資料を御覧いただければと思います。

○医薬基盤・健康・栄養研究所 瀧本栄養疫学・食育研究部長 分かりました。では始めさせていただきます。

最初にスライドの2枚目になりますが、国民健康・栄養調査を私どもの法人では健康増進法に基づいて集計業務を行ってございます。

この調査の特徴ですが、最初に始まったときは東京都内で1945年、第二次大戦後すぐに、国民の食料の状況をきちんと把握するという目的で開始されました。その後、沖縄返還後の昭和48年からは、全都道府県で継続的に実施をされております。ただ、残念ながら、令和2年、3年の調査は、新型コロナウイルス感染症の流行もございまして中止となってしまいました。

この調査の特徴は、全国300調査地区の1歳以上の全住民が対象となっているという幅広いものになっています。開始当初は、調査対象となった世帯の世帯員全員分をまとめて、食べた物を全部量って記録していただく秤量記録法を3日間やっておりましたが、現在、1995年以降は、世帯員が1日の例えば食べたお料理をその世帯員ごとにどれくらいの割合で分けたかという世帯案分法が導入されまして、また、調査も1日となってございます。このことにより、性・年齢階級別の代表値、国民の代表値が計算可能となっています。

さらには、近年、都道府県別の摂取状況、身体状況などを把握するという目的で、2012年と2016年に拡大調査が実施されております。直近の拡大調査である2016年には、栄養摂取状況調査に約2万6,000人が協力してくださっています。

次の3枚目に移りたいと思います。

国民健康・栄養調査の主な目的としましては、国民の身体状況、栄養摂取状況、生活習慣の状況を把握する基礎資料となってございます。厚生労働省が設定している健康・栄養施策である健康日本21(第二次)の中で、「栄養・食生活」という目標が掲げられているのですが、その中の適切な量と質の食事を摂る者の増加ということで、この3枚のグラフにお示ししたように、食塩の摂取量の平均値を8グラムまで低減させる。野菜の摂取量も、20歳以上の平均値を目標350グラム、果物の摂取量が1日100グラム未満の者の割合を3割まで減らすということがございます。

このグラフを見てもお分かりのとおり、残念ながら、食塩の摂取量は緩やかに低下傾向にはございますが、この3つの目標には到達が難しい。野菜・果物に関しましては、ほとんど変化が見られないというような課題がございます。

先ほど、食塩に関しては緩やかに減少傾向があるというお話をしましたが、4枚目のスライドで、どういう食品のグループから食塩を摂っているかということをお示ししたものになります。これを御覧いただきますと、青で塗っています調味料由来のものが最も多くなっています。調味料由来の食塩摂取量も2003年以降、減少傾向にはありますが、近年はほぼ横ばいとなっています。直近の令和元年、2019年の調査では、調味料由来の食塩摂取量が6.5グラムと、全体の約7割を占めているという状況にあります。

次に、5枚目を御覧ください。こちらは、性・年代別に見たときの平均食塩摂取量、野菜の摂取量、果物摂取量が100グラム未満の者の割合を示してございます。平均食塩摂取量を見ていただいて、すぐお分かりと思いますが、若い世代に比べると60歳代、70歳代で高いという特徴がございます。また、野菜の摂取量も若い人のほうが少なくて、60歳代、70歳代では目標に近いぐらいの平均摂取量であることがお分かりになると思います。また、果物を1日100グラム未満しか摂っていないという人の割合も若い人のほうが高くて、60代、70代に比べると10パーセント近く高いという課題が見えてまいります。

こういった性・年代別の課題がある一方で、野菜や果物にフォーカスをしてみますと、どんな栄養素が摂れているかというのをお示ししたのが6枚目のスライドになります。

ビタミンAを見てみますと、野菜から約半分摂っていらっしゃる。ビタミンCも、イメージとしては果物とお考えの方が多いと思うのですが、実は野菜からも4割摂っている。特に若い女性で妊娠を計画されている方にとって摂取が非常に重要な葉酸も約4割が野菜というグラフになっています。

また、生活習慣病のリスク低減のために目標量が食品摂取基準で設定されているカリウムに関しては、いろいろな食品から摂れてはいるものの、この中で一番寄与が大きいのはやはり野菜である。それから、食物繊維も同様に食品摂取基準で目標量が示されていますが、野菜が約3割で寄与が大きいということが分かります。

こういった分析からも分かりますとおり、普段の食生活で健康日本21(第二次)で目標が示されている食品をバランス良く摂っていくことが重要かと思います。

次に移りまして、令和元年の国民健康・栄養調査では、生活習慣調査票の中で健康食品等の利用状況について聞いております。この中で、男女別、年代別にグラフでお示しをしていますが、20歳以上で見てみますと、男性の約3割、女性は約4割が健康食品等を利用しており、特に50~69歳の女性のカテゴリーを見ていただきますと4割を超えているということで、かなり利用者が多いということが見て取れます。

では、その利用者において、どういう目的でこういった食品を使っていますかということを聞いているのですけれども、これも男女ともに健康の保持・増進というのが非常に多くなっています。ただ、年代によって目的が若干異なっていまして、特に10代の女性を見ていただきますと、ビタミンの補充というのが一番多い理由になっています。また、20代の男性ではたんぱく質の補充というのが一番多くなっています。この健康の保持・増進という理由を挙げている人の割合は、年齢とともに多くなっていることが分かります。

次のスライドの御説明に移りたいと思います。生活習慣調査票では、食生活を改善する意思についても、このグラフの右側に示した、「改善することに関心がない」「関心はあるが改善するつもりはない」「改善するつもりである(概ね6か月以内)」「近いうちに改善するつもりである」「既に改善に取り組んでいる(6か月未満)」「既に改善に取り組んでいる(6か月以上)」「食習慣に問題はないため改善する必要はない」、この項目から選択して回答を頂いています。

ここを赤い枠で囲わせていただいたのですが、「関心はあるが改善するつもりはない」という人の割合が男性も女性も一番多いという結果になっています。70歳以上は、「問題はないため改善する必要はない」という人の割合が男性も女性も多いのですけれども、それ以外の年代に関しては「関心はあるが改善するつもりはない」という回答者の割合が一番多くなってございます。

この結果から、食生活改善に対する意識はあるけれども、行動に移していない、あるいは移せない人がそれなりにいらっしゃるということが分かります。

最後、まとめますと、国民健康・栄養調査の年次別の結果からは、食塩摂取は低下傾向にあるものの、野菜や果物といった食品に関しては大きな変化が見られない。また、摂取状況に関しては性別や年代による違いが大きいということが分かります。

さらに、20歳以上の者では、男性の約3割、女性の約4割がサプリメントのような健康食品を利用していまして、また、利用者の約7割が健康の保持・増進を期待して、それを目的に利用しているということが分かります。その一方で、食生活改善の意思を持っている方の割合を見てみますと、半分以下です。

こういった状況を鑑みますと、様々な機能性表示食品が市場に出回っている中、御自身の普段の食生活を見直して改善していくというよりも、市販の様々な食品に対して健康の保持・増進効果を期待している人の割合が今後も増加するのではないかというところは一点懸念すべき点ではないかということが、この国民健康・栄養調査の結果から見えてきたと感じております。

以上です。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの発表内容につきまして、御質問や御意見がある方は発言をお願いいたします。

受田委員長代理、よろしくお願いいたします。

○受田委員長代理 受田です。

瀧本先生、御発表ありがとうございました。大変詳細な国民健康・栄養調査結果をコンパクトにまとめていただいて、この後の論点が明確に整理されているように感じました。ありがとうございます。

個別の中身に関してここで伺っておきたいと思うのですけれども、7枚目に「健康食品の利用状況~令和元年国民健康・栄養調査からみえたこと~」というグラフがございます。これは、男女とも健康食品の利用割合が30パーセントを超えている、また、50代、60代の女性でその傾向が顕著である。これは非常にクリアに出ていることと、こういう状況にあるのだろうなというのは推測と合致しているところかと思います。

伺いたいのは、令和元年のこの結果のみならず、経年的にこの傾向は近年増加する方向にあるのかどうかという点についてはいかがでしょうか。

○医薬基盤・健康・栄養研究所 瀧本栄養疫学・食育研究部長 受田先生、御質問ありがとうございます。

残念ながらこの利用状況を経年的には把握をしていなくて、食事の記録調査のほうでビタミン類等々の摂取状況をきちんと把握していたのが2011年まででして、それ以降は把握がなされていないという状況でございます。

○受田委員長代理 分かりました。

もう一点だけ、先生のお話の中で、消費者が健康の維持・増進に関心があるということと、そのことをいかに行動に結び付けていくか、行動変容というところがポイントになっているということはよく分かりました。

そのときに、例えばまとめの最後の項目でございますけれども、「普段の食生活を見直すよりもこれらの食品に健康の保持・増進効果を期待する者が今後も増加することが懸念される」という表現がございます。

私の個人的印象ですけれども、こういった保健機能食品に対して志向を示すということは、関心から行動変容が起きたという反映になるのではないかとも思うところです。もしかすると、先生のこの行動変容というのは、350グラムの野菜摂取を目指しているところに対して、一般消費者がそのように行動することを期待をして行動と言われているようにも感じるのですけれども、野菜のみならず保健機能食品制度の利用者がこういった志向を目指していくというのもあるべき行動変容というふうにも捉えられないかなと感じるのですが、この後、先生方の御意見を伺いたいところですが、まずは瀧本先生の御意見を拝聴できればと思います。

○医薬基盤・健康・栄養研究所 瀧本栄養疫学・食育研究部長 御質問ありがとうございます。

今回の国民健康・栄養調査は、あくまでこの時点での断面的な調査なので、変化の過程を追えない、あるいは因果関係を確かめることができないというのはこの調査の限界だと感じております。

私としては、まずバランスの良い普段の食生活が一番基本と考えておりますので、先生がおっしゃるように、行動変容した結果、保健機能食品等を選択するという考えももちろんあり得るとは思います。

今回、食習慣改善の意思に関して、何を改善したいかを実は把握をできていないのです。そこが今回の令和元年調査の限界ではあったかなと感じております。

○受田委員長代理 ありがとうございました。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、黒木委員、よろしくお願いいたします。

○黒木委員 ありがとうございます。質問です。

最後のまとめのところに「サプリメントのような健康食品」の括弧書きがありますけれども、これは機能性表示食品とか、トクホとか、全部まとめて書いていらっしゃるというふうに読んでよろしいのかということだけ確認させていただければと思いました。よろしくお願いします。

○医薬基盤・健康・栄養研究所 瀧本栄養疫学・食育研究部長 今回の調査の聞き方ではこのような表現になっておりまして、特定保健用食品とか栄養機能食品を区別せず、まとめて聞く形になっております。

○黒木委員 分かりました。ありがとうございます。

○後藤委員長 木村委員、よろしくお願いいたします。

○木村委員 木村です。御説明をありがとうございます。

私からは質問ですけれども、「健康食品の利用状況~令和元年国民健康・栄養調査からみえたこと~」というグラフがあるのですけれども、ここで回答者が回答している健康食品というのはいわゆる健康食品という意味でよろしいのでしょうか。

もしそうであれば、できれば次回の調査から、いわゆる健康食品というものと、法律で規定されている保健機能食品とを分けて調査は可能なのかということを伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

○医薬基盤・健康・栄養研究所 瀧本栄養疫学・食育研究部長 御質問ありがとうございます。

このときに用いられた定義が、最後のスライドのまとめの「健康の維持・増進に役立つといわれる成分を含む、錠剤、カプセル、粉末状、液状などに加工された食品」という定義になっていまして、特にそういった種類によって区別はしてございません。

次回こういった把握は可能かというのは、厚生労働省の御判断にはなると思うのですけれども、聞くに当たって、こちらの質問の意図を正確に対象者の方へお伝えするというのが、制度について詳しくない方に対してなかなか難しいのかなとは思います。

以上です。

○木村委員 ありがとうございます。

健康食品という定義が回答する方にとって様々だと思いますので、そこの辺りがもう少し整理されると良いかなという感想を持ちました。

以上です。ありがとうございます。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

大石委員、よろしくお願いします。

○大石委員 御説明ありがとうございました。

私からは2点質問をさせてください。

最初に、今回の資料の3ページに、適切な量と質の食事を摂る者の状況を知るために、食塩の摂取量、野菜の摂取量、果物の3つとなっていますけれども、これ以外にも調査の目的はいろいろあると思うのですけれども、今回は健康食品の話なのでこの資料を提示くださったということでいいでしょうかというのがまず1つです。

○医薬基盤・健康・栄養研究所 瀧本栄養疫学・食育研究部長 おっしゃるとおりでして、それ以外にも、例えば食事摂取基準を策定するに当たって、国民の摂取の現状を他の栄養素も含めて報告がなされております。そのほかにも、例えば身体活動量を歩数計で計ったり、血圧の測定等々も調査の中で実施されております。

○大石委員 その上で、今回の資料の9ページのところに、「食生活改善に関心はあるが、行動に移せない人が多い」というまとめがあるのですけれども、この理由といいますか、どうして行動に移せない人が増えているのかというところを、もし何かお考えがあれば。

今回は健康食品の話なのですけれども、若い人たちは意識があるけれども、例えば経済的な理由で難しいのか、それとも、例えば野菜とか果物はどうしても一手間掛けなければいけないので、時間を掛ける手間がなくて難しいのかとか、その辺り、もし何かお気付きの点があれば教えていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○医薬基盤・健康・栄養研究所 瀧本栄養疫学・食育研究部長 御質問ありがとうございます。

今回のスライドには入れなかったのですが、健康的な食習慣の妨げとなる点というのも実は聞いておりまして、この中で男性は「特にない」、女性も「特にない」が一番多いのですが、20代ですと男性で一番多いのは「面倒くさい」、30代、40代、50代はいずれも「仕事・家事・育児等が忙しくて時間がない」、これが一番多くなってございます。女性は20代から50代まで、「仕事・家事・育児等が忙しくて時間がない」が一番になっています。

以上です。

○大石委員 ありがとうございました。

○後藤委員長 ありがとうございます。

一旦ここまでとしまして、後ほどまた御発言をお願いいたします。

続きまして、森田様、よろしくお願いいたします。

○Food Communication Compass森田代表 一般社団法人Food Communication Compassの森田と申します。この度はこのような機会を頂きまして、大変ありがとうございます。

私は、「保健機能食品の現状と課題」ということで、活用をどうするかというときに、まずは今の課題を整理したいと思って発言させていただきます。

2ページ目、先ほど先生のお話にもあったように、「健康食品の摂取状況」でございます。摂取状況の調査は、国民健康・栄養調査はこれが最新で、かつてあまりされていなかったと思います。

消費者委員会でも2012年に1度、1万人対象の大きな調査をされているかと思います。そのときは、「サプリメントのような健康食品」ではなくて、健康食品全般のような聞き方をされていました。人によっては食品形状のようなものも含むため、もっと多くの約6割の消費者が摂取していました。一方で、摂取目的に関しても、疾病を改善するような効果を期待するような人たちも一定数いました。

消費者委員会の調査では健康食品は様々な期待度を持って摂取されることが分かったのですが、そのときも国民健康・栄養調査の結果も、それが保健機能食品かどうかということを聞いていません。なので、保健機能食品かどうかが分からないまま、何となく4割とか、6割というような数値が出てまいりますが、いずれにしても国民の多くが健康食品を何らかの形で摂取しているということかと思います。

次に保健機能食品の位置付けについて、よくある分類の図ですが3ページに示します。医薬品、医薬部外品とは分けて、食品の分類で何等かの機能が表示できるものに、特別用途食品、保健機能食品があります。そして、それ以外の健康食品、一般食品があります。消費者からすると、例えばビタミンCのサプリメントといっても、売場を見れば医薬部外品もあり、保健機能食品もあり、それ以外の単なる健康食品のビタミンCのタブレットもあったり、様々な形状で売られていて、どれに分類されるのか分からないまま購入している人もいる。保健機能食品の位置付けを確認して摂取することができにくい状況もあるのかなと思います。

その証左としまして、4ページ目をお開けください。食品表示の消費者意向調査ということで、トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品、それぞれ知っていますかということで、一番上の栄養機能食品の認知度は14.2パーセントととても低い。トクホはさすがにマークがありますから多いですけれども、それでも3割以下です。機能性表示食品も栄養機能食品よりは多いのは、やはり市場がそれだけ大きくなったからなのかと思いますが、それでも2割弱ということで、いずれも認知度がかなり低いということが消費者庁の意向調査で分かっております。この意向調査はここ数年毎年されているのですけれども、大体このような数字で収まっているので、なかなか周知が進んでいないというような現状も分かります。

5ページ目、保健機能食品の経緯ですけれども、トクホ制度が一番古く、そして、栄養機能食品、そして、2015年に機能性表示食品というふうに、それぞれ時代に応じて新しい制度ができてきた。一方で、機能性表示食品がスタートして以来、トクホがなかなか伸び悩んでいて、そして機能性表示食品が大いに伸びている。2022年には機能性表示食品の受理件数は6,000件を超えており、スーパーに行っても、チョコレート売場や生鮮食品売場に機能性表示食品がたくさん見受けられるということがあると思います。なお、栄養機能食品の件数や市場規模は不明です。

次のページをお願いいたします。6ページ目、「保健機能食品制度とは」ということで、栄養機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品についてこのようにまとめております。

消費者からすると、私は特定保健用食品が一番信頼度は高いと思います。国が安全性・有効性をきちんと確認しているという制度です。その中で構造・機能表示、疾病リスク低減表示があって、一つ一つが食品安全委員会と消費者委員会できちんと審査をしていただいているというところがありますし、対象成分も限定されている。メタボ予防など健康増進に関するもので用途も限定されています。加工食品の形状が多いということがあって、トクホマークが目印ということで、とても活用しやすいということで市場を形成してきたかと思います。

一方で、機能性表示食品が出てきて、届出型ということでたくさんの件数が出ていると思いますが、事業者責任であり、事後チェック制度というところがあります。この事後チェック制度がきちんと機能しているのかどうかというところも、これだけ数が多くなってくると機能しているのか。例えば分析の調査などをされていますけれども、十分なのかということが気になるところでございます。一方、機能性表示食品の表示はトクホよりもうんと幅が広い。リラックスする成分とか、よく眠れるとか、目とか膝とかいろいろなことがあって、消費者にはすごく訴求力が高い制度だとも思います。また、ビタミンやミネラルに関しては除いていますが、トクホと同じような成分のものもあり、期待度が消費者に大きいということで、機能性表示食品の市場を大きく形成してきているかなと思います。

一方、栄養機能食品は一番左側に書いていますけれども、ビタミン、ミネラルを対象成分とし、一定の機能性が表示できます。これは自己認証型で届出もしていないので、実態が見えづらい。例えば、通販のサプリなんかで、栄養補助食品などと同じような名前で売っているものでも栄養機能食品がありますが、その市場がどのぐらいのものかよく分からないなということがあります。

さて、一つ一つ、7ページ、8ページと制度を見てまいります。

7ページ、特定保健用食品の現状として、これはやはり信頼の目印ということで、一つ一つ審査がされているということが目印になっているのかなと思います。疾病リスク低減表示が認められているということで、前回も消費者委員会のトクホの部会で共同の会議があったかと思いますけれども、今後、恐らく増えることが予想されます。

疾病リスクを言えるということは、消費者からすると、単に血圧が下がるとか血糖値を下げるというよりも、糖尿病とか具体的な病気の名前が出ると、そこに何段階かの書き方があったとしても誤認する消費者は一定数出てくるだろうと思います。そこの部分で懸念されます。消費者庁は疾病リスク低減表示に関して検討会を開催し、私も委員でしたけれども、そのときもこうした消費者の誤認があるため、多くの委員が「慎重に取り扱うべき」と報告書に示しているところでございます。

それから、広告に関しては、最近、機能性表示食品があるせいか、トクホをすごく大きく強調した表示が増えたように感じています。これも活用を進めるということなのかもしれませんけれども、そういったものが目立つなと思います。

一方で、許可表示の、例えば血圧を下げるのを助けるという部分を、「血圧」だけを抜き書きするようなものは減っていますけれども、大きな文字で「血圧」と書いて、そこを助けるということを小さく書いたり、相変わらず消費者を誤認させる広告があるのかなということであります。

また、許可内容の詳細ですけれども、健康・栄養研究所のホームページで見られるという話もありましたけれども、見てみますと、一つ一つきちんとヒト試験の結果があるものと、ヒト試験が何も書いていないものがあります。これはやはり義務付けられていないということもあるので、情報が開示されているもの、開示されていないものがある。ここは「開示されていない」と書いてありますが、機能性表示食品は全部情報が開示されていますが、トクホは物によってきちんと書かれていないものが見受けられるという点が課題かと思います。

8ページ目、栄養機能食品の現状と課題ということで、一定量を含んでいれば国が認めた機能性表示ができるということですけれども、自己認証制なので市場規模が分からない。それゆえに、規制が及びにくい。時々保健所などで収去されて調査されている報告も見受けられますけれども、実際の栄養表示がきちんとそれを満たしているのかというところがよく分からないところかなと思います。

また、「栄養機能食品(ビタミン○(マル))」と表示ができますけれども、それ以外の成分を強調している食品もあります。かつて措置命令を受けた物で、それはある成分をすごく強調していた優良誤認だったわけですが、よく見ると、栄養機能食品の「ビタミン○(マル)」とか書いてあったこともあって、栄養機能食品に対する信頼の部分で消費者を誤認させているのではないかという事例もあります。

また、栄養補助食品と同じような位置付けで販売されていることがあって分かりにくい。

それから、国が定めた機能性表示ですけれども、制度ができて20年近く経つということで、その後できた「日本人の食事摂取基準」と合わないような表現があるということで、見直しが求められるのではないかというところがあります。

それぞれの機能性の表示が「栄養素です」や「栄養素の一つです」などとあって、表現がエビデンスと合っていない部分もあるのかなと思いますので、栄養機能食品の文言に関しては整理していただいたほうが良いのかなと思っています。

そして、9ページ目ですけれども、機能性表示食品は事後チェック制度ということがあるので、問題が見つかって届出を取り下げる場合もある。問題がなくて届出を取り下げる場合もありますけれども、例えば届け出た論文に何らかの不備が見つかったということで取り下げる場合もかつてはあったかと思います。そのような事後チェック制度であるということが消費者になかなか知られていない。

それから、機能性表現が大変多岐にわたるので、消費者の期待がすごく広い。消費者の選択の幅が広がったというところは、この機能性表示食品の良いところかなと思いますが、その分だけ期待度が高まって誇大広告も見受けられる。

それから、受理後に消費者庁のウェブサイトで届出情報が開示される。これは、開示されるということで、それだけ消費者の自己責任が問われているということかと思います。が、一般消費者にアブストラクト、要旨が示されますけれども、システマティックレビューで出されたものなんかは、それが分かりにくいものもあるかと思います。

そして、市場が急拡大しているのですが、消費者啓発が追い付いていないということも感じます。機能性表示食品とトクホの違いを分かっている人がどのくらいいるのかなというところもあって、その中で機能性表示食品がこれだけ期待度が高まると、信頼度が高いトクホよりもこちらのほうに行ってしまうのは無理がないのかなとも思います。

10ページをお開けください。機能性表示食品は、これまでも措置命令が出たりと、やはり広告の問題が大きいかなと思います。去年の4月には認知機能に関して、広告で認知機能のチェックテストみたいなことをして消費者を誤認させるような、明らかに問題のある表示について、消費者庁も指導をしております。そういうものが新しい市場に対して指導が追い付かないというようなことも問題かと思います。

機能性表示食品の届出情報検索は、11ページにありますが、このようにきちんとデータベースがあって、ポスターなんかもあるのですけれども、データベースの活用をきちんとされることが大事です。例えば、イチョウ葉の機能性表示食品なんかだと、きちんと届出情報のところに医薬品との飲み合わせなど注意事項が書いてあるわけですね。

次の12ページにありますが、医薬品との飲み合わせなんかは注意点がここに一般公開情報として書いてある。例えば、イチョウ葉のサプリメントだと様々な医薬品との飲み合わせに関してここに書いてある。容器・包装にはそこまで書いている商品もあれば、書いていない商品もありますので、結局、消費者がこういうことを調べたりする必要がある。あとは、消費生活相談員の方に私は研修でお話しする機会があるのですけれども、消費者の方に問われたときは、こういうところを見るとありますよということを知らせてくださいとか、それから、ウェブがなかなか見づらい場合は、一緒に見てあげて、医薬品の飲み合わせはこういうふうに書いてありますよと教えてくださいというふうにお伝えしているところです。こうやってきちんと一般向け公開情報があるのですが、そのことが知られていないというのが残念に思います。

この一般向け公開情報ですけれども、品質のことに関してもそうですが、機能性の基本情報、PICOというところで、誰に対して何をするとどうなるか、こういうこともきちんと書いてあるところもあります。これが機能性関与成分のシステマティックレビューだとここがなかなか見づらいものもあるのですけれども、活用に向けてこうした公開情報があるというところも知らしめていくというのも大事かと思います。

保健機能食品の現状と課題、最後の13枚目です。3つ課題があるかと思いますが、こうした課題をそれぞれ修正しながら、制度も見直しながらきちんと啓発していくことが大事かなと思います。

特に、機能性表示食品は市場が急拡大していて、事後チェック制度の拡充とか調査とか、消費者庁は事後チェック指針を作ったり、例えばトクホでも広告のガイドラインを作ったりと、それぞれのもので規制はしてきたかと思うのですけれども、市場の拡大のほうが大きいのでなかなか追い付かない。それから、事業者の倫理観に委ねられるというところもありますので、そういう部分が難しいところかなと思います。

また、保健機能食品は個々に見直しが行われていますが、国の栄養施策の中での在り方、位置付けについての検討も求められると思います。

また、健康食品市場が拡大する中で、最後に、一般消費者が保健機能食品を上手に利用できるように制度の周知と消費者啓発を進めてもらいたい。それぞれの制度に関して、特徴があり、違いがあり、そうしたことを自分たちで調べて、その上でどういうふうに活用していくかという活用の仕方がまだまだ足りていないのかなと思います。

また、消費者委員会の中でも、今まで健康食品の建議はされてきたと思うのですけれども、トクホに集中していたり、機能性表示食品とか食事摂取基準というところまでまだ言及していないのかなと思います。今回のような機会に、是非全体像をとらまえて、その上でそれぞれの普及啓発に対する課題とか活用方法についてチェックして、きちんと意見をまとめていただけると有り難いと思っております。

よろしくお願いいたします。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

今の発表内容について、御質問や御意見のある方は発言をお願いいたします。よろしくお願いします。

○受田委員長代理 受田です。

森田先生、ありがとうございました。問題点を本当にクリアに御指摘いただき、感謝申し上げます。

大きな質問と少し細かい質問になるかもしれません。最後の全体像とおっしゃったことに関しては、正に同感でございます。もし表現すると、PICOの話を具体例を挙げられましたけれども、保健機能食品制度自体のPICOがもしあるとすると、最後のアウトカムの部分をどんなふうにイメージできるか、ここが不明確ではないかという思いが私個人としてはしております。

そのために、PICOのP、participants、これは国民だと思うのですけれども、保健機能食品を摂取される、あるいはそれを自主的・合理的に選択をすると、これが一般的な今取っている食生活と比べて、もしかすると人生100年に対して、個人に関してはより健康寿命の延伸というようなことがもし明確になると、保健機能食品制度の役割がより国民に周知されるのではないかなとも思っておりまして、全体像というようなイメージなのかというのをまず確認したい。

もう一つ、7ページにトクホの現状と課題ということで具体的に触れていただきました。ここも全く違和感はないのですけれども、私自身、新開発食品調査部会の部会長を今3期目、6年目を迎えていて、非常にもどかしく思っているのは、これだけ調査会や部会において徹底的に議論されている内容が果たしてそれを利用される消費者の方に伝わっているのだろうか。ここまでトクホの信頼のマークを得るまでに多くの皆様が真剣に議論されていることが伝わっていないということで、非常にもどかしい思いをずっとしております。ですから、時々申し上げるのですけれども、調査部会等の議論がガラス張りになっていくようなことがあればよろしいのではないか。そのための証がトクホマークであるというふうに思っているところです。

前置きが長くなったのですけれども、その点に関して、トクホの許可内容の詳細が機能性表示食品ほど開示されていないという例があると御指摘をされました。例えばどういう点が情報として開示されていない場合があるのか、具体的なこととして御指摘いただければ、また参考にさせていただきたいと思います。

○Food Communication Compass森田代表 御質問ありがとうございます。

まずは、全体像というところでPICOの話で、これが全体に及ぶとどうかということですけれども、こちらは梅垣先生の、特定保健用食品の利用に関して、表示をきちんと見ていらっしゃる方とそうでない方の活用の違いといったような論文があったと思います。あと、お茶の水女子大学の赤松先生も書かれていらっしゃると思います。

一方で、全体像の中で、トクホの歴史は長いにもかかわらず、これがどういうふうに国民の健康・栄養に寄与してきたかという大きなものを私は見たことがありません。トクホは30年以上ですけれども、実際にどれだけ寄与してきたのかなというのは分からないところかなと思います。

また、もどかしいというところは全くそうで、消費者委員会のトクホの議論はなかなか見えづらいのですが、大きな施策を決めるときは先月のようにきちんと公開してやっていただいております。その中から徹底的に議論されて厳しい意見もたくさん出ているのだなということも分かりますし、議事録も公開されているかと思います。ただ、一つ一つの議論になるとなかなか見えづらいので、もう少しガラス張りというようなところも大事です。

それからトクホの信頼度、それだけきちんと審査されているというところが知られていないということがあるかと思いますので、それはむしろ議事録の公開というよりも、トクホ制度をそれだけきちんと議論されているマークだよということを、消費者庁とか、業界とか、もっと啓発していっていただきたいと思います。

それから、7ページのトクホの最後の「許可内容の詳細は、機能性表示食品ほど情報が開示されていない」というところですけれども、これは国立健康・栄養研究所のウェブサイトを拝見して、トクホというところを見ていくと、トクホの物がずらっと出てくるのですけれども、その中で、例えばアイウエオだったらオリゴ糖とありますけれども、それを一つ見ていくと、ヒト試験がきちんと公開されている、ヒト試験でこういったデータがありますよということがあるものと、もう一つの製品ではそうした情報が全くない。ヒト試験と書いてあるけれども、何もそこに載っていないのです。やはりそういうふうな製品があるので、トクホの場合は全部が公開されているとは言い難いと私は思います。

選ぶときに、こういうところにきちんと情報を載せて公開しているところのものを選びたいと思いますが、では、そのウェブサイトがどれだけ消費者に知られているのか、トクホを選ぶときにそこのサイトに行って情報を開示しているものをきちんと選べるというようなことにはなかなかなっていないと思います。

○受田委員長代理 ありがとうございました。

この後、梅垣先生の御講演の中にも、トクホの効果等に関しての医学的なエビデンスというデータも御紹介いただけると思いますので、そこと併せてまた御議論させていただければと思います。ありがとうございました。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

ほかにございませんでしょうか。

木村委員、よろしくお願いいたします。

○木村委員 木村です。

森田先生、御説明ありがとうございます。大変よく分かりました。私からは1件質問ですけれども、8ページの栄養機能食品の最後の「国が定めた機能性表示が『日本人の食事摂取基準』とあわないような表現もあり」というところで、森田さんのお考えでは具体的にどのようなところを見直せば良いと考えているかを教えていただけませんでしょうか。よろしくお願いいたします。

○Food Communication Compass森田代表 こちらについては消費者庁が調査もしていて調査報告書も出しているのですけれども、今ある、例えばこれらのビタミンの成分に関して文言の書き方が「栄養素です」という書き方だったり、「栄養素の一つです」というものがあったり、ばらばらであるというところで、「日本人の食事摂取基準」をもう少し強い書き方であるもの、そうでないものと、合わないものがあるということだったり、それから、ビタミンCとかビタミンEに関しては、今の表記の仕方だと一定の根拠が広く取られるところがあるので、そこの書き方をもう少し見直すようなことが必要なのかなと思います。

後で少し調べてお伝えしますけれども、ビタミンCやビタミンDに関しては今の文言は見直すという方向で既に調査されているかと思いますので、そういう部分は見直していただくということが大事と思っています。

○木村委員 ありがとうございます。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

よろしいでしょうか。

それでは、一旦ここまでとし、後ほどまた御発言をお願いいたします。

梅垣様、よろしくお願いいたします。

○昭和女子大学食健康科学部 梅垣教授 昭和女子大学の梅垣です。この度は、このような発表の機会を与えていただきましてありがとうございます。

保健機能食品の問題点というところで、前の先生がいろいろお話になりました科学的なエビデンスをものすごく全面的に出す場合があるのです。けれども、一番重要なのはどうやって使うか、どうやって健康になるか、そこのところがやはり一番重要だと思います。そこで、情報を使えるところに焦点を当ててお話をしたいと思います。

2ページ目を御覧ください。これは前の先生と同じデータで健康食品としての利用状況です。これは健康食品全般を含めています。国民健康・栄養調査のところで、瀧本先生がお話しになられましたが、利用者は大体3割から4割で、60歳以上で多い。これが一つの特徴です。20歳とか30歳ではそんなに健康に気遣う人はあまりいないのです。でも、60歳を超えるといろいろなところが不調になってきて、何とかしたいと。そこで健康食品を利用するということになっています。

利用者の約半数は利用に満足していることが、消費者委員会の調査と東京都福祉保健局の調査で出ています。実際に効果を実感した人というのは1割ぐらいだったと思うのですけれども、それなりに満足している人がいる。これも重要なところだと思います。

現状の問題点は、個々の保健機能食品の特徴が十分に理解されていない。例えば、栄養機能食品はビタミン、ミネラルですね。これは国の健康政策、栄養政策と合致しているものであるべきだと思うのですけれども、そこのところがよく理解されていない。トクホと機能性表示食品の違いもよく理解されていないということです。

効果を過大評価したメディア情報が参照されています。健康食品とかいろいろな物を選ぶとき、皆さんインターネットで調べられますけれども、検索のトップに出てくるのは企業の情報なのです。それは効果が過大評価されています。

医師・薬剤師に利用を伝えずに薬と併用している。健康食品は健康になるために摂っていますけれども、健康障害を起こすというのは問題です。そこのところが十分に把握されていないということです。そういうことから、保健機能食品の効果的な利用、どうやってうまく利用するかという情報伝達が必要なのではないかと考えています。

次のページを御覧ください。保健機能食品の利用法の考え方ということ。どんな食品であっても、誰がどういう目的でどうやって利用するかによって、良いものもあるし、悪いものもある。先ほどのPICOという話がありますけれども、Pというのはpatient、participantという場合もあります。使う人が変われば影響が変わってくるのです。だから、PICOのエビデンスは、例えば科学的な調査をしたその条件に限定されてしまいますから、みんなに適用できるものではない。

効果的な利用で、「何を」というときに、トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品とあります。サプリメント形状のものは医薬品と誤認されやすいという特徴があります。使う人も医薬品的な効果を期待してしまいます。そこが問題だということと、トクホは製品全体で評価されている。一方で栄養機能食品と機能性表示食品は含有成分で評価されている。ビタミンとか機能性成分だけの効果で、本当に製品としての効果があるかどうかというのは検証していないのです。だから、トクホとそれ以外はかなり違うと考えていいと思うのですけれども、そこは一般の人には理解されていない。

「誰が」というのは、原則として健康が気になる人で、対象者が病気の人ではないのです。けれども、60歳代、70歳代と、病気の人がどうしても摂ってしまうという傾向があるのではないかなと思います。

「目的・方法」がやはり重要です。この部分は今までほとんど対応されていなかったと思います。栄養補給、健康の保持増進というのはありますけれども、本来、重要なのは生活習慣の改善なのですね。瀧本先生がおっしゃったように、生活習慣の改善を促すような使い方をしてもらう。後で紹介しますけれども、人によっては生活習慣を改善する人がいて、すごく良い効果を実感されている人もいます。けれども、そうでない人は全く意味がない使い方をしているということです。生活習慣の改善が伴わなければ、保健機能食品は効果がないと思います。食品でそれだけ劇的な効果があったら、これはもう食品としては許可されないですね。いろいろな人が摂っても、そんなに影響がないというのが食品であって、もしものすごい効果があるのなら、それは医薬品として専門職の人の管理下で使うというのが基本だと思います。

次のページを御覧ください。健康食品を摂って有害事象を受けた人がいます。これは東京都福祉保健局が東京都の医師会、薬剤師会を介して10年以上収集された有害事象を分析させてもらったものです。左側の上のグラフは利用目的です。年代別にあります。

栄養補給というのはそれなりに増えていますけれども、一番顕著なのは病状等の改善です。赤色のところです。病状等の改善を目的に利用する人が有害事象を受けている。これは有害事象を受けた人のデータなので全体像ではないのですけれども、有害事象を受けた人は60歳代以降で多い。その下の図のところ、基礎疾患があるかないかというのを見てみますと、基礎疾患がある人が有害事象を受けている。だから、60歳以上の人が基礎疾患を持っていて、健康食品を利用して、有害事象を受けているというのが特徴的なのです。

本来ならば保健機能食品も全て健康のために良いと思って皆さんは摂っているのですけれども、それが悪くなっている。ただ、健康食品という用語で聞いていますから、保健機能食品かそれ以外かは判断できないのですけれども、全体的には同じような傾向があるのではないかなと推定されます。

次のところをお願いします。これは一つの事例です。血糖値に及ぼす難消化性デキストリン含有飲料の事例です。血糖値関係や中性脂肪とかは、関与成分として難消化性デキストリンが非常に多いです。①の短時間の効果ということで、炭水化物と一緒にトクホの中の難消化性デキストリンのものを摂ると血糖値の上がりが緩やかになる。これについてはデータが非常に多い。トクホは製品として許可されますから、いろいろな製品でこの検証をやっているのです。実はメタ分析もしていて、この現象はかなりしっかりしています。ただし、これは短時間の効果なのです。使う人は何を期待しているかというと、血糖値が高めで、お医者さんに空腹時血糖が高いよとか、ヘモグロビンA1cがあなたは高いよと言われたときに、何とかしようと思ってトクホなどを使いますね。

そのとき、②の長期効果、これはトクホで出ているのですけれども、正常な量、4.5グラムを1日3回とか、9グラムという2倍量で多く摂取したとき、ヘモグロビンA1cも空腹時血糖もほとんど影響はないです。だから、影響がないということで、利用方法とか対象者によって効果が変わるということです。

後でお話ししますけれども、ヘモグロビンA1cとか空腹時血糖値に影響するのは何かというと、生活習慣の改善が伴っていることです。生活習慣の改善がなければ全く意味がないということです。

次のところをお願いします。トクホは病気の人が利用するわけではないのです。けれども、これはある先生が糖尿病という学会誌に出されたデータです。真ん中の黒と赤のカラムを見ていただくと、両方、黒と赤はトクホを利用しているのです。でも、黒のカラムの人はヘモグロビンA1cが下がっている、良い効果が出ている。赤のカラムの人は全く効果がない。右側の黒と赤の斜線のカラムは、トクホを利用していない人です。トクホを利用していない人よりも、赤のカラムのトクホを利用していて生活習慣の問題行動がある人はヘモグロビンA1cが高い。

何が言いたいかというと、トクホの利用が食事療法の代わりになると勘違いしている人がいるのです。だから、トクホをもし利用するのであれば、生活習慣を改善するのが前提であって、それをしなければトクホを利用する意味はないということが言えます。

その下の図、これはちょっと特殊な事例ですけれども、規則正しい生活習慣と、高食物繊維、これはβグルカンを長期間摂取させた2型糖尿病患者の人で調べられたものです。これは刑務所に入られている受刑者で調べたデータですけれども、これを見ると、初期値の空腹時血糖が184mg/dlから1か月後に113mg/dlになっています。劇的に下がっているのです。ヘモグロビンA1cも8.4から5.9と、劇的に下がっているのです。これはなぜかというと、ちゃんとした生活習慣を施設で義務付けられているからこういう効果が出るのであって、高食物繊維だけでこんな効果は絶対に出ないです。

そこを考えると、生活習慣の改善というのが一番重要で、保健機能食品は生活習慣の改善が伴わなければ駄目だし、生活習慣の改善をすれば、すごく良い効果が出るということです。

次のところは概略です。どういうことかというと、生活習慣病対応にトクホはほとんどできています。生活習慣病の原因は生活習慣にあるのですね。だから、生活習慣を改善しなければ、薬だって症状の改善はできないですね。ましてや、食品でそんな効果は絶対に出ないと私は思います。そういうことから、生活習慣の改善につながるようなトクホの利用を促す。そこがやはり重要で、トクホの許可要件の最初に書いてありますよね。食生活の改善がいろいろと。そこのところが一般消費者はほとんど理解できていないし、そこまでたどり着けていないという問題があるということです。

次のページは、医薬品と保健機能食品の違いを挙げてみました。医薬品は、製品の品質が明確で、病気の人が対象です。それから、医師・薬剤師の管理下で利用される。医薬品ではこういう利用環境とか製品の製造・流通の環境ができています。

では、保健機能食品はどうかというと、あくまでも食品ですから、医薬品のような品質の管理をすると、もう食品ではなくなってしまう。ものすごく高価になってしまいますから、それはできない。でも、品質はそれなりには定まっていますけれども、医薬品ほどではない。対象は健康な人、健康が気になる人で、病気の人ではない。

一番問題なのが、3番目の選択・利用は消費者の自由、消費者に委ねられていること。消費者の人がよく分かっていたらうまく使えます。生活習慣の改善をしようと思ってトクホを利用しようというと、これは良くなるのです。それが理解できなければ、ほとんど意味がないということです。

一番下に示したところで、医薬品では医師・薬剤師が関与しています。やはり危ないと困るし、ちゃんとした治療効果が出ないと困る。保健機能食品は誰が適切な利用法を伝えているのかということです。今までトクホができて30年経っていますけれども、誰が制度を伝えているか、使い方を伝えているか、ここは非常に不明確なのです。

そういう意味で、一つの案を次に紹介します。安全・効果的な利用に必要な事項ということで、摂って何か効果があるかどうか、皆さん把握されていないのです。

これを出したのは、トクホとかいろいろな健康食品を摂って体調不良を起こす人がいます。でも、メモを取っていなければ、いろいろなものを食べていますから何が原因かが分からない。有害事象を調べるときに、利用者自身が何を摂っているかというメモを取ってほしい。ここはもう一つ意味があって、調子が良いという人も中にはいるのです。そういう人は調子が良いと○(マル)のメモを付ける。こういう利用状況のメモを取るというのが必要です。

ただし、トクホの場合は、お茶もあるし、ヨーグルトもあるし、こんな普通の食品を全部メモし始めたら大変なことになりますから、これはサプリメント形状のものだけということです。サプリメント形状は、摂取しやすいということがありますが、一方で過剰摂取してしまうという懸念もあります。そういう意味で、メモを取ってほしい。先ほどの薬との相互作用という話がありますけれども、薬局でお薬手帳というのを出していますから、このメモがあれば、薬との飲み合わせにも対応できます。

医薬品との飲み合わせというのは、ほとんど今は分かっていないです。分かっているとされているのは、実は偶然分かったようなデータであって、健康食品と薬の飲み合わせはほとんど分からないです。膨大な薬があるし、健康食品だって膨大なものがありますから、これらの組み合わせは分からない。そういう状況で皆さん健康食品を摂っています。使う人自身がメモを取るというのが、安全で効果的に利用する一つの方法だと思います。

最後です。ここは是非伝えたいところです。厚生労働省とか食品安全委員会とか、いろいろなところで講演会があって、私も呼んでいただいて健康食品の問題をお話ししたのです。けれども、そこに来ている人はほとんど来なくていい人なのです。よく理解している。本当は、そういう場所に来ない人にどうやって我々が正しい情報を伝えるかというのが重要です。

それから、消費者庁はホームページに先ほどの機能性表示食品のデータを出されていますけれども、あれを読んで分かる人はそんなにいないと思います。まず読まないと思います。文字がばっと書いてあって、理解できる人は保健・医療の専門職の人だけだと思います。

そこを考えると、情報を伝えるのはそういう専門職の人を介して情報を伝える。消費者に分かりやすい情報を出せと、いろいろなところで言われます。私も言われましたけれども、消費者に分かりやすい情報というのは、効くか、効かないか、安全か、危険か、どっちかなのです。でも、誰が何をどうやって使うかによって、良い場合もあるし、悪い場合もある。それは具体的に、先ほどのPICOというので、Pが自身に合うか、そういうふうに自分に合うかどうかを判断するというのが必要です。それはやはり専門職の介在が必要なのです。

複数の団体・組織が養成・認定しているアドバイザリースタッフというのがあります。アドバイザリースタッフと称する人員もいろいろなところがあるのですけれども、教育機関と連携しているところは、日本臨床栄養協会のNR・サプリメントアドバイザーと日本食品安全協会がやっている健康食品管理士です。それらは医療系の大学と連携して、そこを出た人を対象として認定している。もともと基礎知識があるのですね。そういう人員と連携して健康食品の情報を伝えるというのが必要だと思います。

誰が保健機能食品の情報を伝えるのか。薬剤師だって、保健機能食品の制度を十分理解している人はそんなにいません。だから、そういうところでアドバイザリースタッフを養成している団体を活用する。それをやれば、現状は改善できると思います。

もう一つは、科学的な情報の解釈に関する教育です。中高生に、食品の安全性・機能性に関するリテラシーを伝えていかないと駄目だと思います。こんなことが現実に起こるのかという情報がメディアで出されています。けれども、ちゃんとした知識があれば、これは信頼できない情報というのは分かります。けれども、それができないという状況があって皆さん振り回されているのです。

やはり教育というのが重要です。教育と連携しているアドバイザリースタッフの養成組織というか、認定組織と連携して、そこをうまく活用して保健機能食品の現状を改善することが必要だと思います。

以上です。どうもありがとうございます。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの発表内容について、御質問や御意見がある方は御発言をお願いいたします。

受田委員長代理、よろしくお願いします。

○受田委員長代理 受田です。

梅垣先生、ありがとうございました。問題点を具体的に御指摘いただき、大変参考になりました。

印象深かったのは、糖尿病の視点の部分で、食生活の改善が伴えば期待する効果が得られる、ヘモグロビンA1cの数値における有意差があるということをお示しいただいております。

こういうようなデータが一般の国民にもきちんと伝われば、機能性表示食品を始め、トクホを始め、保健機能食品自体の持っている価値が自分事として極めて明快に伝わってくるだろう。同時に、こういった糖尿病のリスク因子を低下させるということは、国民の医療費に対しても当然試算ができる可能性があるのではないかと思います。

伺いたいのは、これもヘモグロビンA1c、糖尿病に関してではあるのですけれども、こういうデータはほかにないのでしょうかというのが一つと、こういったデータを積み上げていき、医療費の抑制とか介護保険等にもプラスの影響が出てくるとすると、そこの分の国として拠出しないといけないいろいろな予算に対する部分が抑制されることが期待されて、その抑制された分を最後におっしゃった普及啓発の部分に投資していくということを通じて認知度を上げていくということで、うまくサイクルが回っていくのではないかなと想像いたします。いかがでしょうか。

○昭和女子大学食健康科学部 梅垣教授 御質問ありがとうございます。

肥満とか中性脂肪についても、実はデータを見ると、例えば体脂肪に対してBMIが26とか27という人を対象にして体脂肪が減ったというデータがあります。でも、BMIが22とか23の人を対象に過剰量を摂取させた安全性試験をしているのですけれども、ほとんど効果がないです。だから、この食品を摂れば痩せるということはまずありません。体脂肪がそれなりに付いている人は、トクホを利用して効果は期待できるのですけれども、トクホだけを摂取して体脂肪が減るということはまずありません。

だから、生活習慣を改善することが重要です。例えばお茶の飲料がありますけれども、それを摂ることによって、今日は歩いて帰ろうとか、ちょっと運動する。先ほど話がありましたが、そういう行動変容につながれば、体脂肪は減りますし、すごく良い効果があるのです。それはもう当たり前のことなのです。でも、私もそうなのですが、分かっていてもなかなかできないのです。だから、行動変容のきっかけとしてトクホを使うというふうにする。先生がおっしゃったように政策として、健康政策とか栄養政策と結び付けてトクホを運用すれば非常に効果はあるし、悪いものではないです。要するに、良いか悪いか、製品の良し悪しは今いろいろなところで議論していますけれども、どう使うかというところに視点を持ってやっていけば、これは良くなると思います。

今足りない部分は、消費者の認知度。具体的な認知度が低いのです。それをどうやって上げるかというのを、全く今までとは違う方法でやっていくと、保健機能食品というのは良い制度になっていくと思っています。

○受田委員長代理 ありがとうございます。

消費者意向調査の結果もさっき森田先生から御紹介いただきましたけれども、ここが鍵になることは、消費者委員会でも大きな課題であり、どう克服するかということは議論しておりますので、後ほどまた議論させていただきたいと思います。ありがとうございました。

○後藤委員長 ほかにございませんでしょうか。

大石委員、よろしくお願いします。

○大石委員 御説明ありがとうございました。

先ほどの森田先生の御意見とも重なるのですけれども、健康食品という名前からして、これは健康になるものだという認識でいて、実際には薬との飲み合わせであったり、健康食品を過剰に摂ることによってマイナスの面もあるというところが実際に利用する消費者には伝わっていないというのが、今の先生のお話を聞いていて大変気になったところです。

先ほどの調査で、何で野菜とか果物を食べないかというと、面倒くさいという人が多かったというように、そもそもの基本的な生活習慣を変えれば、いろいろな機能性食品を摂ってもその効果があるけれども、その一番基本的なところの教育がきちんとなされない限り、それから、いろいろな情報を適切な場所に出して、それを消費者がちゃんと取りに行かない限り、今のままでは難しい面があるのかなと思いました。

先生が最後に書いてくださったように、教育が大事だというのはすごく感じているのですけれども、一方、教育の現場もなかなか大変だったりして、あとは、健康食品は値段が高い物が多いので、それを利用する人たちと利用したくてもできない人たちとの差も結構あるのではないかと思っているのですけれども、その辺り、社会的な課題として、質問するほうも今混乱しているのですけれども、先生のほうも何か課題として思っていらっしゃるようなことがあれば是非教えていただければなと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○昭和女子大学食健康科学部 梅垣教授 私も明確な答えはないのですけれども、健康食品は高いというのは、高額なほうが良いと消費者が思ってしまうのです。高額な物が効果があると思ってしまうところがあります。だから、例えば原材料が100円で、1,000円、5,000円、1万円と値段を付けたら、大体皆さん5,000円か1万円の製品を買うのですよね。それは単なるイメージなのです。そういうところも教育する、要するにイメージでなくて中身です。どういう原材料でできて、どういう製品管理をされていて、どういう科学的なデータがあるか、そこまで見られれば、別に安い物でいいと私は思います。けれども、今はイメージというのが非常に大きいのですね。そこのところを改善というか、訂正していかないと、なかなか現状は改善しないと思います。

○後藤委員長 よろしいでしょうか。

それでは、一旦ここまでとし、後ほどまた御発言をお願いいたします。

最後に、宗林様、よろしくお願いいたします。

○岐阜医療科学大学薬学部 宗林教授 岐阜医療科学大学の薬学部におります宗林と申します。1年少し前までは国民生活センターにおりました。

私は、今日、食品から医薬品、セルフケアというようなことで、道具として使っていく、健康に関心を持って、処方箋薬を飲まないで、数値化も含めて機能性を確認していけば、先ほど受田先生がおっしゃっていたように医療費の削減にもつながるということで、セルフメディケーションの活用の推進に非常に関心を持っていますので、そういう観点からお話をしたいと思います。その中で、保健機能食品がどう課題があるかということを焦点としてお話をしたいと思います。

次のページをおめくりください。これはよく見る図でございまして、保健機能食品は機能性の表示があり、透明性は高くなったということですが、左図はよく皆さんが見ているものだと思います。一言で言いますと、一般食品も機能性成分は入っているわけですよね。保健機能食品は何かというと、簡単に言えば、機能性の表示ができる表示制度の中の食品であるということをしっかり認識しなければいけないかなと思います。これは3種類あります。

空白のところで、食品のカテゴリーですけれども、いわゆる健康食品と呼んでいて機能性成分が明確に表示されていないのですけれども、健康になりそう、あるいは疾病にもある程度効果があるかもしれないというような、明示的、暗示的な表示をしているものがまだたくさんございます。ここは何らかの整理が行く行く必要ではないかと思ってございます。

そして、右側の図ですが、これは皆さんが御紹介されました消費者庁のホームページの機能性表示食品のデータベースです。これは今5,000以上ございますので、これは非常に活用して、皆さん、第三者も、消費者の方も、事業者の方も、有識者の方も見るのに大変有効ではないかと思います。透明度が高くなったということは、これを指して言ってございます。

次のページを開いてください。ここから課題に入ります。摂取対象者・摂取条件は意外と厳しいのだということを消費者も知らなければいけないのですが、まず事実としてお伝えしたいと思います。

摂取対象者としては、上の囲みにありますように、罹患する前の人、いわゆる健常者、あるいは境界線上の人を対象としているということで、疾病の名前を告げられた人は対象ではないのだということが一つあります。

例えば、血圧などは正常者の範囲がこの10年間で全体的に下がってきているのです。それは、血圧を低くすることが身体的にも良いということで、正常者の範囲が下がってきているので、私は高めの人だったと思っているのが実は高い人になっている可能性もあるかもしれないということで、一応御紹介しておきます。ですから、さっき言ったように、高めの人はいいけれども、高いと言われた人はもう対象ではないということです。

下の図にまいります。左図ですけれども、いろいろな臨床試験でこういうようなRCTのプラセボと比較したデータが出てきますが、ここで大事なことは12週間摂取し続けているということです。では、摂取し続けて12週間で止めていいのかというと、そうではなくて、毎日飲み続ける。トクホの場合ですと食品の形をしたものが多いわけですけれども、それでも摂取し続けることが前提となっているということです。それをきちんと表示の中でも表現していただきたいと思いますし、消費者のほうも認識していただきたいと思っています。

それから、右側ですけれども、摂取の仕方です。これは実際のガムのものですけれども、下のところを見てみますと、鍵括弧で書いてありますが、1日摂取目安量が1回に3粒5分、そして1日7回を目安にと書いてあります。これだけこのガムを噛み続けて食べていくものが摂取条件となっているということ。そして、それを12週間毎日続ける。そして初めて保健機能が発揮されるものであるということ。こういったものが摂取対象者と摂取条件という意味では大変重要ではないかと思っています。これを課題としたのは、これを消費者としては分かっているか、あるいは事業者としてはそれを示しているかということでございます。

次のページにまいりまして、課題2ということで、実生活上での機能性の検証ということでございます。星が3つありますけれども、一番下のところで見てみますと、実生活で使用された際の機能性がどの程度であるのか、実際の調査結果があまりないということが一つ挙げられると思います。もちろん生活習慣を変えながらというような御紹介がありましたけれども、実生活の中で、例えば感想でもいいし、実際に血圧が下がったとか、いろいろな数値の取り方があります。睡眠であれば、今、スマートウォッチとかそういうものもあるわけですけれども、実際にそれを実生活の中で大数的に分析をしたデータがないので、私は是非これは自分でもやってみたいと思っているところでございます。これがない中で、これだけの市場を形成しているということです。

2番目としまして、一番上の星印でございます。保健機能食品制度が開始されてからも、糖尿病が強く疑われる者や血清総コレステロールが高い者が減少していないということで、次のページを御覧ください。

今日何度も出てきています国民健康・栄養調査のものですけれども、私はその中で、「生活習慣病疾病の最近の傾向」という部分を持ってまいりました。まず、「糖尿病が強く疑われる者」の割合ですけれども、一番上の箱ですが、この10年間で男女とも有意な増減が見られないということであります。

それから、2番目の箱ですけれども、血清総コレステロールについては、10年間で見てみると、男性では有意な増減は見られないが、女性では有意に増加しているという結果が示されております。

3番目の血圧に関しましては、この10年間で男女とも有意に減少しているということが示されております。

ある意味、これは先ほど実態調査がない、実際の実生活の調査がないということでしたけれども、細かく調べたものはないですが、生活習慣病を機能性としてうたうことも大変多い保健機能食品を摂取されている実態の中では、こういう結果なのではないかということでお示しをしたいということでお持ちしました。

それから、2つ目の星印ですけれども、同じ機能性成分でも、商品によって1日摂取目安量当たりの含有量は大きな差があるということと、摂取すべき機能性成分の適正量が不明であるということでございます。

これは、先ほどのページを飛ばしていただいて6ページを見ていただきたいと思いますが、これは国民生活センターにおりましたときに実施した健康食品のテスト結果でございます。同じ機能性成分の例えばGABAとかルテインでも、いろいろな商品をテストしてみますと、含有量に非常に大きな差があるのです。10倍以上の差があります。米印が付いているものは機能性表示食品でございます。ルテインのほうも同じく10倍以上の差があるということでございます。

次のページを見ていただきますと、これは同じくEPA・DHAについて抜き出したものでございます。一番上の段が医療用医薬品、これは今スイッチ化しておりますけれども、一般用の医薬品としてもありますが、エパデールというEPAのお薬があります。これは、1日摂取目安量当たりの服用量が1,800mgということでございます。

それに対して、サプリメント形状のものとかいろいろなものが健康食品の中であるわけですけれども、これで見てみますと、例えば、赤線を引っ張りました780というものがあって、2倍ぐらい摂ってしまうと医薬品に結構近いかなというような製品から、一番下のところに12という数字がありますけれども、それの10分の1どころか、それ以下というようなものがあります。

DHAについても同じく差がすごく大きいわけですけれども、ここで問題なのは、一番上に青く囲ってあるのですけれども、EPA等に関しまして、EPAは機能性成分ですよね、そうすると、「血中の中性脂肪を低下させる機能が報告されています」ということで、含有量に関係なく同じ表示が記載されてございます。これはもちろん違法ではなくて、そういう表示をしてくださいということになっているので、こういう表示がされているのですが、これですと、多いものを選べばいいのか、多いものというのも、これはどれぐらい多いのかはほかのものと比較しないと分からないという現状なのですね。そうしますと、これは多いのか、少ないのか、摂ったものはどれぐらいなのかが分からない。

そして、先ほど言いましたように毎日毎日食べ続けていくものということになるわけですけれども、究極には、錠剤であれば日常の食生活に1日どれだけプラスオンしていくべきなのか、あるいはどのぐらい摂るのがベストなのかということが分からないという状態です。

そうしますと、これは消費者が戸惑って情報が足りないということだけではなくて、消費者のリテラシーを上げるだけで解決するということではなくて、事業者側が業界として、これはこういうふうに摂らなければいけないとか、1日摂取目安量はこんなに差があって、同じ表現だと分かりにくいので、そこを何か補完する、あるいはこのぐらいの摂取量が必要なのだということを出していただいて、初めてそれを理解するという段階、両方とも欠けているかと思います。ここが、こういったものを利用していくという意味では、制度自体にはまってはいますけれども、これをもう少し改善すべき点と思っているわけです。これが先ほどの課題の3点になります。

そして、次のページを見ていただきますと、「機能性表示食品ではこんな商品が」ということで、これは2022年8月に、血圧とか睡眠という形で先ほどのデータベースで検索をかけたものでございます。それぞれ多くの数の商品が機能性表示食品で出てまいります。

例えば、血圧でペプチドというものもたくさん出てくるわけですけれども、この場合にペプチドは、医薬品でもアンジオテンシン等の酵素の阻害ということでの同じ作用機序のものもあるわけですけれども、これは医薬品とどれぐらい違うのかというと、あまりデータがないのですが、過去のデータを見てみると、福島県立大学とか帝京大学のものを見ますと、10分の1どころか100分の1ぐらいの差があるということが示されているものがありまして、この大きな差が、作用機序は一緒でも、利用する側が分かっているのか、分かり得るのかというような点も気を付けなければならない。だから、あくまでも高い人は駄目で、高めの人なのかなとは思いますけれども、そういったところで期待し過ぎないということがあると思います。

それから、GABAに関しては、これは例示ですけれども、GABAは血圧のほかに精神的ストレスの緩和等、700以上の機能性表示食品があります。そうなってくると、GABAということではなくて、いろいろな機能性をうたえる成分がありますので、自分がどういうことを求めて、書いてあることをきっちり読んで選んでいかないと、多種類の機能性を持っている成分も結構あるということになります。

そして、一番下にありますけれども、一方OTC、一般用医薬品は、街で買える物の中には生活習慣病対応のものは全くないのです。睡眠のところで幾つか承認されたものがありますけれども、生活習慣病にはないという状態で、食品からいきなり処方箋薬ということになる状態でございます。

まとめでございます。保健機能食品を実生活の中で機能性を発揮して活用するには、まず機能性成分の含有量は大差がある、どのぐらい飲めば良いのかということが、事業者も数値をきちっと整理して、それを消費者にも伝えなければいけない。消費者もそれを読み込まなければいけないということがありますし、摂取対象者・摂取条件に合致して利用していって初めて保健機能が発揮されているということをよく分からなければいけない。それから、消費者に分かりやすい、複数の保健機能食品を飲んでいらっしゃる方、いわゆる健康食品を飲み合わせている方もいらっしゃるので、これらの整理も必要だと思いますし、最後に、セルフケア、セルフメディケーションということを考えますと、自分で選択できる一般用医薬品も含めてセルフメディケーションの道具となるように、いろいろなところのゆがみを補正していく必要があるのではないかと考えます。

以上でございます。ありがとうございました。

○後藤委員長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの発表内容につきまして、御質問や御意見がある方はお出しください。よろしくお願いします。

受田委員長代理、よろしくお願いします。

○受田委員長代理 受田です。

宗林先生、ありがとうございました。データでお示しをしていただいたものもあり、この内容自体、しっかりと理解することができました。ありがとうございます。

まず、今のお話を拝聴していて、自分も十分に摂取条件に関して理解していなかったなと思ったのがガムの例でございます。こんなにいっぱい食べないといけないのかというのは実は全然知らなかったというところで、新たな気付きでございました。

一つお伺いしたいのは、生活習慣病疾病の最近の傾向ということで、国民健康・栄養調査の糖尿病、総コレステロール、血圧、その有意な増減や増加している事例を御紹介いただいたのですけれども、このことと保健機能食品制度がどういうふうにつながっていくかについて推測をすると、糖尿病に関しては増減が認められないので、これは国民病としては変化がない。つまり、保健機能食品制度、トクホが始まって30年以上経ったが、ここには貢献していないと見るということでしょうか。ほかの点についても、保健機能食品制度やトクホとの関わりの部分をどういうふうに解釈をするかというのが1点です。

それから、今日のお話で、関与成分が含量において相当多様である。まとめていただき、国民生活センターのデータについてはもう衝撃的だとさえ思いました。さらに、この話を複雑にする可能性があるのは、機能性表示食品の中には生鮮が入っているということです。この点を含めていくと、この含有量の多様性は更に大きくなっていくと思うのですけれども、この点を更にどういうふうに今後見ていけばよろしいのでしょうか。

2点でございます。

○岐阜医療科学大学薬学部 宗林教授 御質問ありがとうございます。

まず1点目の御質問の健康・栄養調査との関係ですけれども、私は最初に実生活上で実際にこの保健機能食品だけを取り出して、それを飲んだら数値が変わったというデータがないのです、私はこれから調査をしてみたいと思っているのですとお話ししましたけれども、ざくっと見ると、この栄養調査の中で、生活習慣病に対応するものが大変多いので、トクホもそうですし、機能性表示食品も多い。保健機能食品というのはすごく多いので、それを先ほど御紹介がありましたように、30パーセント、40パーセントの人が、こればかりを飲んでいるか分かりませんけれども、相当利用しているという前提で社会が動いているのだろうと思います。実態はこういうふうにこの10年間で増減がないということが出ていましたので、これを細かく分析したものはないので分かりませんけれども、大きく寄与はしていないかなという感じでございます。実生活上の詳細データはないですが、結局は変わっていないという結果が出ている一例ということでお持ちしました。これは、本当は細かくやっていかなければいけないと思います。

それから、2点目でございますけれども、生鮮はそのもの自体の数値も幅がありますけれども、まずは、先ほどお話ししましたように、ずっと食べ続けていく物、あるいは摂り続けていく物という前提になりますので、どのくらい必要なのかという数値が、昔、食品安全委員会でイソフラボンをプラスオンの場合はということで評価したことがありますけれども、それに近いような形で、食生活にプラスオンしてこの成分はどのぐらい摂っていくのか、あるいはトータルでどのぐらい必要なのかということが分かった上で、そこから入っていくしかないかなと思います。

今はあまりにも個々を見てもばらばらですし、全体でどのぐらい摂って良いかが事業者の中でもばらばらで、付いている文献に従ってその数値を決めている、あるいは少ないほうが安価にできるからということもあるかもしれません。そこは是非、事業者団体とか有識者も含めて検討していくべきだと思います。

○受田委員長代理 ありがとうございました。

○後藤委員長 ほかにございませんでしょうか。

大石委員、よろしくお願いします。

○大石委員 宗林先生、御説明ありがとうございました。

今の話の中で一番気になったのが、事業者側がきちんと消費者に使用量などについての説明ができていないのではないかというところでして、先ほどの7ページのEPA・DHAのところでも、実際にはこんなに差があるのだということに大変驚いたところなのですけれども、そうは言っても、商品には1日の摂取量の目安をどの事業者も書いていらっしゃいますよね。それのエビデンスみたいなものは全く問われず、これは事業者が自分の考えでその量を決めていいという状況になっているということなのでしょうか。

○岐阜医療科学大学薬学部 宗林教授 御質問ありがとうございます。

機能性表示食品の場合は、自分が届出をしたときに添付した根拠論文等を根拠にこのぐらい摂ればこういう効果があるということからつながって、1日摂取目安量は何錠と書いてありますけれども、その中に含まれる関与成分の機能性成分はその後ろ側の文献との連動で決めているということだと思います。なので、事業者側は必ずしも根拠がないわけではありません。

先ほどの事業者側の責任という話は、全体としてこんなに差がある、みんなちゃんとエビデンスはあると思いますが、同じ表現になって表示をするという制度になっているので、ここは事業者側だけに押し付けるというよりは、栄養学者とかが、機能性のことを含めて、第三者も入って、やはりプラスオンはこのぐらいが適切な量ということも並行的に進めていかないといけないかなと思います。事業者側に一方的に責任をというわけではございません。

○大石委員 ありがとうございます。

おっしゃるとおりです。あと、使う側の条件が全く違ってくると思うので、どういう人がどういう場合にどれだけという、先ほどの先生方のお話にもありましたけれども、その説明もすごく重要であるし、それをちゃんと消費者が理解して使うことが必要なのかなと思ってお話をお聞きしました。ありがとうございました。

○後藤委員長 よろしいでしょうか。

どうもありがとうございました。以上で皆様からの発表が終了いたしました。

これより、全体を通して、時間の許す限り意見交換をしたいと思います。先ほどの時間内にできなかった質問や意見のほか、発表いただいた皆様からも御質問などがありましたら、遠慮なく御発言いただきたいと思います。予定時間は20分ぐらいを目処としております。よろしくお願いいたします。

星野委員、よろしくお願いいたします。

○星野委員 先生方の御説明、ありがとうございました。非常に勉強になりました。

私は統計学の専門で、医学系研究者と共同研究をして、医学系の論文を幾つか出しておりまして、その観点で今日の話は非常に重要だなと思いました。

まず、因果関係が不明というようなお話を何名かの先生方がされましたけれども、疫学とかパネル調査とか、後ろ向きのコホート研究、実際に病気になったとかならなかったという方に対してどういうような曝露要因があったのか。具体的に、医学系だと喫煙だということになろうと思いますし、この場合ですと健康食品の摂取ということになろうと思いますけれども、私も専門外なところでもし御知見を頂ければと思いますけれども、どのように疾病予防に影響するかというのは、健康食品に関して、特に中立な研究者がそのような研究をして調べているというようなことは、海外でもいろいろあるかと思いますけれども、それはかなり整理されている状況なのでしょうか、というのがまず1点目でございます。

それがありますと、因果関係、特に後ろ向きコホートではかなりいろいろ問題となりますけれども、パネル調査などをされている例がありますと、同じ方を追いかけていくということになりますので、いろいろなことが言えると思うのですけれども、そういった研究がかなり蓄積されているのか、それとも全然、著名なGABAとか、分かりませんけれども、そういったものだけでもあるかと思うのですが、そういったものに関して研究例がございましたらお教えいただければと思います。

もう一点、これも重要なところで、プレレジストレーションです。医学系研究、あと社会科学全般でそうですけれども、RCTを1回やっただけだと、たまたま例えば50人とか25人にやって有意差は出なかった、出なかったからもう一回やって出なかった、もう一回やって出ましたみたいなことを繰り返すことは今は容易にできるということで、特に研究費さえあれば100人とか50人の小さなものをいっぱいやって、10回やって、何なら100回やって5回出れば5パーセントの有意差ですから、出ることがあるので、今はもうそれはやめましょうとなっているわけです。医学系研究、社会科学でも心理学なんかも非常に厳しく言われておりますし、そういったプレレジストレーションみたいなものが行われているのかどうなのかということですね。

それができるかできないかということで、RCTの質自体も、単にRCTをやっただけでは全然許されない。先にこういう研究をしますよと言って、実際に結果が出たというところで非常に信じられますので、そういったことに関する、特に健康食品関連の分野で、海外でもいいですけれども、そういったものがございますでしょうか。

あと、幾つもあって申し訳ないのですけれども、非常に関心がありますので。あと、先ほど宗林先生がおっしゃっていた話、これは医学系だとリアルワールドデータ、リアルワールドエビデンスという話と非常に密接に関わると思います。医学系研究だと、これまでエビデンスレベルでRCTのメタ分析とかシステマティックレビューが一番高いと言われておりましたけれども、最近だとそれでは駄目だと。実際にそこで知られたレジメンでやっても、多くのリアルワールドの普通の診療所でやると効果が出なかったりすることは結構あるというのは、正に先ほどおっしゃったように対象者ですね。うまい結果が出るような人たちに対してしかやらないということがあって、それはかなり問題となっておりますけれども、そういったリアルワールドみたいな話とかはこの業界に何かあるのかなと思いました。これが3つ目の質問でございます。

もう一点、意見でございますけれども、トクホはまだあれですけれども、機能性表示食品は要求されるエビデンスの質が低過ぎるなと思います。医療行為を何なら阻害しているのではないか。健康食品を飲んでいるから医療行為を受けなくても良いと思って病院に行かなかったり、運動しなかったりして、致命的な影響を及ぼしているのかなと思いました。これは最後に意見でございます。長くなりまして恐縮でございます。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、4名の先生方にそれぞれ御関心のある部分についてコメントを頂ければと思います。特にコメントがない場合には、なしということでも結構ですので、問題点がたくさん出ておりますので、どこかについてコメントを頂けたら有り難いと思います。よろしくお願いいたします。

それでは、瀧本様からよろしくお願いします。

○医薬基盤・健康・栄養研究所 瀧本栄養疫学・食育研究部長 御質問いただき、ありがとうございました。

健康食品摂取に関する後ろ向きのコホート研究等々、あるいは前向きコホートで検証された研究があるかという御質問なのですけれども、日本人を対象にしたコホート研究は残念ながらあまりないですね。

というのは、恐らく日本の有名なコホート集団をフォローアップし始めた時期はまだこの制度がこのように整理されてくる前から開始をされているので、ベースライン調査で健康食品の摂取というのを把握ができていなかったというのもあるかと思います。

最近、例えばがんセンターなどで大規模コホートなども、これからデータが出てくるのではないでしょうか。摂取状況を厳密に把握して、長期の摂取が行われたかどうかというのを把握するのはなかなか難しいことだと私も思います。自分でも食事調査の中で摂取の有無というのは把握をしたことがあるのですけれども、本当に多岐にわたっていて、よくよく厳密に調べないと、報告される方は医薬品もサプリメントとして報告されたりするので、非常に技術的に難しいと感じております。

以上です。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、森田様、お願いいたします。

○Food Communication Compass森田代表 たくさんの御質問があったかと思うのですけれども、まず1つ目で、コホート研究と食品との関係ですけれども、栄養機能食品でビタミンとかミネラルに関しては、食事摂取基準の中でたくさんのコホート研究などを参考にそれぞれのエビデンスがまとめられているかと思います。それが5年ごとに新しいSRとかメタアナリシスなども参考にきちんと文章が書き換えられて最新情報になっているので、私はそういう意味では「日本人の食事摂取基準」が信頼が高いと思っています。

先ほどの木村先生の御質問にちょっと関係するのですけれども、例えば、この栄養機能食品ができたのは2000年代の最初の頃ですけれども、その当時のビタミンとミネラルのエビデンスと、その後どんどんと研究が蓄積されてきたときによってエビデンスの内容が変わってきている。

具体的にどういうのがあるのかということで、ビタミンEだと、今のビタミンEの栄養機能食品の場合は、「ビタミンEは、抗酸化作用により、体内の脂質を酸化から守り、細胞の健康維持を助ける栄養素です」と書かれているのですが、その後、いろいろな研究で、抗酸化作用というのは実は限定的だということや、それから、それは細胞膜の脂質の酸化を防止するということは分かってきたけれども、それ以上のところはないというところになると、今のような抗酸化作用で細胞全体みたいな書き方はおかしいのではないかということが分かってきて、そういうものの差が出てくるので、8ページで言ったように表示と合わない部分が出てきます。そうした常に新しい研究をきちんと反映したような表示が良いのではないかと思っています。

なので、1番の質問に関しては、健康食品の個別のものについてコホート研究はないけれども、ビタミンとかミネラルの様々な疫学の研究などは、食事摂取基準に反映されています。日本人の食生活そのものの見直しということがあり、そして、栄養機能食品はその一部を、ビタミンとかミネラルの有効性を表現する形ということで、表示がそれに合ったものになってほしいということがあります。

2番目の御質問は、事前の届出はあるか。何回もやったらいつかは当たるみたいなのではなくて、事前に届出をすることに関しては、機能性表示食品ではそうした項目が、事前のガイドラインの項目があって、UMIN登録をするということが定められていると思います。これは恐らく先生方がフォローしていただけると思います。

それから、4番目の先生の御意見で、機能性表示食品に関しては、医療の機会を見逃したり、消費者がきちんと内容が分からなくて使うことによって様々な弊害が起こるのではないかというのは全く同感です。

以上となります。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、梅垣様、よろしくお願いいたします。

○昭和女子大学食健康科学部 梅垣教授 前の先生がおっしゃったように、日本では健康食品としてどれだけ疾病の予防に関係したというのは多分ないと思います。それは、健康食品という定義がすごく曖昧なのです。いわゆる健康食品というのを保健機能食品も含むという話もありますから、非常に混乱しているのですね。そこの定義がないので、今の時点では調べようがない。もう一つは、製品のデータベースがないのです。例えばこの製品にビタミンがどれぐらい入っているとか、この成分はこれぐらい製品に入っているというデータベースがないので、研究者が調べようと思っても多分できない。

そういう点では、アメリカのダイエタリーサプリメントの制度は1994年にできたのですけれども、あれはデータベースができているのです。どれぐらいの人が使っているかという報告もしょっちゅう出ています。それで見ると、アメリカで、ビタミンとかミネラルを摂ってもほとんど意味がないというデータが論文に出ています。要は、使い方が良くないのだと思うのですね。薬的な使い方をしているというのは良くないのです。そこのところがアメリカの報告を見ると、ビタミンはいっぱい摂っても無駄だよという論文は何回か見たことがあります。

ついでに言いますが、アメリカのダイエタリーサプリメントの制度は非常に良いというか、日本の機能性表示食品の制度に参照されたのですけれども、アメリカでも例えば肥満は減っていないです。その原因は、製品を恐らくうまく使えていないのだと思います。

アメリカでは、日本のようなサプリメントアドバイザーとかアドバイザー資格は多分なかったと思います。以前に調査をしたことがあるのですけれども、私の知る限りはなかった。要するに、消費者がダイエタリーサプリメントを自由にセルフメディケーションに使う。自分たちで分かっていて使うのだったらいいのです。けれども、ほとんど分からないで、皆さんコマーシャルを見て、表示をちょっと見て使う。だから、そこのところがアメリカのダイエタリーサプリメント制度も欠けているのです。

日本の機能性表示食品はアメリカのダイエタリーサプリメントの制度を参考にしてできていますけれども、消費者がどうやって使うか、そこの視点がほとんどないのですね。そこをアメリカのデータを見るとそういう問題がある。でも、アメリカはビタミン、ミネラルはダイエタリーサプリメントのデータベースができています。NIHだったと思いますけれども、データベースがあるのです。それで、研究者が調べた後、この製品にはこれぐらいのビタミンが入っているからといって摂取量を把握することはできる。日本はそれがありませんので、できない。

だから、健康食品という定義がないというのと、定義がなくて調べ方がなかなか難しいというのと、あとデータベースがないから、これを摂ってどれぐらい効果があったかというのは調べられないと思います。そういう問題がある。

あとは、さっき森田先生がおっしゃったように、機能性表示食品はUMIN登録をしないと駄目です。良い効果が出たときだけ発表するというのは駄目ですよというのはガイドラインに多分書いてあったと思います。

機能性表示食品もトクホもそうですが、どうしても医薬品のレベルを、エビデンスは求めるのですけれども、それは難しいと思います。薬理実験なんかをやっていると、例えば疾病動物を使うと例えば血圧なんかは下がりやすいのですけれども、正常な動物を使うとなかなか血圧は下がらないです。血糖値だって下がらないです。だから、正常な人とか正常に近い人でそういうデータを取るというのはなかなか難しいというのが現実的にはあります。

でも、食品で一番重要なのは、表示がうそであってはいけないというレベルで考えるべきだと思います。全く根拠がないのに何とかの効果があるとすると、それは虚偽の表示ですから、それはあってはいけない。トクホとかほかの制度も、そこに医薬品的な効果を求めるというか、出すというのは、対象者が健常に近い人ですから、これは影響が出にくいと思います。

それから、薬と勘違いして使うというのが一番問題で、効果がないのに使うというのは、それはいいかもしれません。けれども、一番有害事象が出やすいのは、先ほど先生がおっしゃったように治療を断念する、これが一番問題なのです。ですから、栄養機能食品の文言が分かりにくいというのがありますけれども、あれは医薬品と勘違いしないような文言にしてあるのです。

例えば、「鉄は、赤血球を作るのに必要な栄養素です」、何か分からないから、ある人は消費者にもっと分かりやすい表示をしてほしいというのはあるのです。けれども、貧血予防と書いたら、鉄欠乏の貧血だけではない、ほかの貧血もあります。例えば、ビタミンB12とか葉酸が不足して貧血を起こします。消化管から出血している場合だって貧血を起こします。原因が分かって初めて何かを使うというのは妥当ですけれども、それを消費者が自分で判断してやると、どうしても薬と勘違いして使うことがあって、本来良い食品が悪くなってしまうのです。

だから、使い方のところをもっと対応していかないと、この制度はなかなかうまくいかないと私は思います。消費者に全部委ねるというのは、ちょっと難しいと思います。どうしても助言をする人が必要だと先ほど私は発表しましたけれども、現状はそういうところだと思います。

以上です。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、宗林様、よろしくお願いします。

○岐阜医療科学大学薬学部 宗林教授 3点ほどお話をします。

1つは、この保健機能食品というのは単に健康維持ということではなくて、具体的な生活習慣病であったり、目のピントの調整をうまくできるようにするとか、すっきりとした目覚めのための睡眠を深くするとか、物忘れが気になる方にとか、機能性という意味では、より健康になりますよということだけではなくて、その中でピンポイントで機能性をうたっているものが保健機能食品であるということをよく覚えておかなければいけないと思います。

それに対して、先ほどのRCTの話がございましたけれども、初発がどのぐらいでどのぐらいの差が付いたのかを統計的に5パーセントの危険率、1パーセントの危険率という話がありますけれども、これはn数を増やしていくと小さい差でも実は有意差が出てくるというトリックもあります。例えば、図を見ますと、幾つからと書いてあるものはなくて、ゼロのところから少し差があるよというものを思い切り縦軸を広くして差があるように見るというものが多いのですね。なので、n数をある程度定めていると思いますけれども、n数が多くなってくるとRCTの有意差は出やすいというようなトリックもあると思います。

先ほどの何回やってということではないと思いますけれども、そういう問題もあって、その差が実際に生活している上で、絶対値として実生活上の意味ある差なのかどうか。例えば収縮時の血圧が5下がることは意味があるかどうかということを自分の中でよく考えなければいけないという部分も一つ検討の余地があると思います。

それから、梅垣先生からアドバイザリースタッフの話がありましたけれども、我が国においては、医師・薬剤師、そしてドラッグストアで具体的に売っているような者などがあるわけですけれども、この方たちへの保健機能食品のセルフメディケーションもそうですけれども、周知とか勉強する機会、例えば薬剤師や栄養士の国家試験にこの分野がもう少し重視される、また、医師も理解していただいて、例えば医者が疾病のお薬を出しているときに、保健機能食品も併用しているかもしれないので、最初にいらっしゃるときにそこも必ず聞くとか、入院しているときも飲んでいるかもしれないで、そういったところも医師・薬剤師、そして食品のアドバイザリースタッフというところも連携して、説明をうまくなだらかにできるということもとても大切だと私は思っています。

以上です。

○後藤委員長 ありがとうございました。

○星野委員 申し訳ありません。今のお話を伺ってもう一点だけお願いしたいのですが、よろしいでしょうか。

日本で研究がないのはなぜなのかということですけれども、いろいろ理由があり得ると思いますね。研究者がいないのか、研究費が付かないのかというところですね。というのは、先ほど梅垣先生がおっしゃった健康食品のマスター作りをやろうと思ったら、結構ちゃんとやろうと思えるわけです。また、例えば何を摂取したかを報告するのは難しいということに関しては、今はカメラで撮って自動的に機械学習にかけるみたいなことも行えるかと思います。お金があれば前向きコホートすらできると思うのですけれども、なぜこの研究が進まないのか。社会的意義、国民の関心も高い。学術的にも、医学系研究との関連で、特定の薬を飲んだけれども同時に健康食品も飲んでいるみたいなことが、有害事象系の話、私も薬学の先生方とやっていますけれども、そういったものとも関連するので、社会的にも学術的にも意味があると思うのですけれども、研究者がいないのか、例えばAMEDとか科研費とかで出すようなことができないような研究なのか、どちらのために研究が行われていないのかということを短い時間でお答えいただければ有り難いと思います。

○後藤委員長 これはどなたからでも。

○岐阜医療科学大学薬学部 宗林教授 実際幾つというのは存じ上げませんけれども、私は科研費も含めてあまり見たことがありません。

あと、外郭団体で、例えばOTCの業界団体ではないけれども、振興財団や、そういったところが一部やっているところがございますけれども、省庁自体でそれにポイントを当ててやっているという感じはないと思います。

○後藤委員長 梅垣先生、お願いいたします。

○昭和女子大学食健康科学部 梅垣教授 有害事象についてはありますね。我々もやっていますし、それは研究費が付いたりします。けれども、有効性については研究費がなかなか付かないです。

私はそれをやってみようと思って話したときに、ある先生に、それを集めても体験談と同じじゃないのと言われます。良いデータばかり出てくる。そこは体験談とは違う手法なり、考え方を取り入れて調査をされれば、多分認められると思うのです。けれども、ただ単に調子が良かったですかというのは駄目です。例えばバイオマーカーを使ってきっちり評価をする。集団も限定するというやり方をすれば、本当に役に立っているかどうかというのは分かります。

先ほど紹介しました糖尿病の患者さんは病院で調べられているのですね。だから、対象者を限定して、フィールドをきっちり作って、食事とか運動とかもコントロールしてデータを収集すれば、結構面白いデータが出てくると思います。

でも、恐らく、生活習慣を改善しないとほとんど何も効果がなかったですよというデータが出てくるのではないかと予想します。そこで、生活習慣を改善している人は良い効果を実感しているとか、効果が出ているというのは出てくるのではないかと思います。

以上です。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

受田委員長代理、よろしくお願いします。

○受田委員長代理 受田です。

今日は4人の先生方から、それぞれの観点で詳細なお話を頂き、また、課題を明確にした上で今後どうしていくべきかという示唆を頂いたものと思っております。これは今後を考える上では極めて重要な御指摘だったと重くまず受け止めたいと思っております。

その上で、私自身の考えを3点ほど申し上げたいと思いますので、その点について短いコメントをもし頂ければ幸いでございます。

トクホ制度が始まって30数年経ってきたということで、保健機能食品制度の在り方というのは、今の社会に照らして全体像を考えていくことの必要性はどんどん高まっているのではないかと思っております。森田先生からも全体像というお話を頂きました。

その際に、私も一研究者として、トクホの制度が始まるときには研究分野で関心を持って見ておりましたけれども、いつもこの議論は制度が真ん中にあったり、食品が真ん中にあって全体を考えていくというスキームでした。

でも、今日いろいろお話をお聞きしている中で、中心はやはり消費者であり、国民であるべきだと思います。国民を中心に置いたときに、この保健機能食品制度がどういうふうに課題を抱えているか、また、その目的の部分をどういうふうに位置付けるかということを改めて考えていく局面にあるのではないかというのが1点です。

2点目は、これとも関連するのですけれども、まず理解をし、行動変容につなげていくことが必要である、この御示唆も頂きました。ただ、大切なことは、目的は行動変容ではなくて、食生活の改善の更に先、先ほどの話ともつながるのですけれども、消費者、国民を真ん中に置いたときに、それぞれのウェルビーイングを高めていくことが目的であるはずであって、消費者としての行動変容はそのプロセスであるべきである。ですから、ここの部分をあまりに保健機能食品制度として目的化し過ぎているために、ボトルネックとして見えているのではないかと感じるところです。

最後ですけれども、やはり啓発の部分が重要であるということを今日もそれぞれの先生から御意見として頂きました。特に、梅垣先生から、ダイエタリーサプリメント、これもセルフメディケーションと教育の部分に関しては、教育の部分が非常に明確に打ち込まれているにもかかわらず今に至っています。ですから、教育が非常に重要であることは前から示唆されているにもかかわらず、ここがうまく回っていない。消費者意向調査においても、この数値の改善はほぼ認められていない。この現状に対して、国はということもそうですし、業界団体がどうするかということもそうですし、我々研究者もどうするかということを相当真剣に考えていかなければならないのではないかと思います。

これだけ硬直化してしまうと突破口が必要で、その突破口として政策誘導の部分も必要ではないかと強く思います。

先ほど議論させていただいたように、トクホあるいは保健機能食品プラス行動変容が医療費や介護費等の抑制につながっているとすると、国のコストの削減につながり、その部分の政策誘導に対する投資はもしかすると可能になっていくのではないかと思います。

したがって、消費者を真ん中に置いてと冒頭に申し上げた、これをもう少し見える化していくことによって、国全体が保健機能食品制度という日本の先駆的な制度をもっともっと、人口減少や、生産年齢人口が減っていき、高齢化が甚だしい、この改善に向けて積極的に活用できる仕組みにもう一遍再構築できるのではないかなと強く思うのですけれども、いかがでしょうかという点でございます。

○後藤委員長 それでは、お一人ずつお願いしたいと思います。

瀧本さん、いかがでしょうか。

○医薬基盤・健康・栄養研究所 瀧本栄養疫学・食育研究部長 御意見ありがとうございます。

国民を真ん中に置くということは正におっしゃるとおりだと思います。

宗林先生の御発表を聞いて、製品によって含有量がすごく幅があるというところで改めて驚いたのですけれども、製品によっては一般食品に限りなく近いようなものも多く売られている中で、過剰摂取のリスクが高い小児や妊娠中の方、高齢者、そういうリスクの高い方へのリスクをどう減らしていくかというのは重要なのではないかと考えました。教育は、消費者もそうですけれども、専門職に対する教育もすごく重要なのに、そこはあまりうまく回っていない。重要な課題なのに回っていないというところは何とかしなければいけない部分だと思います。

行動を変えるというのはすごく難しくて、厚生労働省でも「自然に健康になれる持続可能な」ということで昨年検討会も開かれて報告書も出されたのですが、意識しなくても自然と選択が可能になるような、そういった研究もどんどん必要なのではないかと話を伺って思いました。

以上です。

○後藤委員長 森田様、いかがでしょうか。

○Food Communication Compass森田代表 御意見ありがとうございました。

国民を中心に置く、消費者を真ん中に置いて考えたときということで、健康食品は確かに保健機能食品の活用の方法ということも分かります。私はよく消費生活センターとかで話すのですけれども、一方で、食品安全委員会が出している、本当にあなたにとって健康食品は必要ですかという17のメッセージというのがあります。この17のメッセージをきちんと伝えて、健康食品で本当にそれが必要かと。自分はその対象者であるか、そして、表示をきちんと見て活用するといったことも併せて消費者にお届けをしないと、きちんと活用できるようにはならないし、活用できないといろいろな弊害も出てくるということだと思います。

なので、活用のためには、私は今、内閣府で立場は違うけれども、健康食品は必要ですかと、一方でそちらのほうのメッセージもあり、それを踏まえつつ、私にとって本当に今漫然と飲んでいる、半数の人は飲んでいるわけですから、それは合っているのか。

今日、梅垣先生のお話にもあったように、健康食品は実は健康な人を対象にしているという点でギャップがあるのではないかと思います。そのギャップを埋めるのが教育であり、今日は保健機能食品の話ですけれども、もっと全体的に、健康食品全体のときに「私にそれが必要か」というところも含めて、情報提供が必要だなと改めて感じました。ありがとうございました。

○後藤委員長 梅垣様、よろしくお願いします。

○昭和女子大学食健康科学部 梅垣教授 先ほどおっしゃったように、国民を中心にするというのは正に最も重要なことで、本来この制度は消費者のためにある制度だと思うのですね。でも、どちらかというと経済的な、事業者の制度で、いろいろな文言を付けたいと、そこで動いている。でも文言を例えば製品に書いても消費者はほとんど見ていないと私は思います。見ているのはキャッチコピーかキャッチフレーズですよね。そこのところをもう少し理解してもらうというのが必要です。

トクホができて30年なのですけれども、例えば「おなかの調子」というのはものすごく製品として多くて、便秘の人が薬を飲む前にトクホのヨーグルトとかいろいろなものを使えば、薬に頼ることなく症状はかなり改善できる。薬ではないのですけれども、そこのところも意味としては非常に大きいと思うのです。要するに、何度も言いますが、使い方が重要なのです。どうやって使うかというところが理解されていない。薬のように使うものではないし、1つの食品として使うものだと。そういう位置付けをもう少し広めていかなければいけないのだと思います。

医師・薬剤師とか保健師とかいろいろな専門職の人がいますけれども、この分野はものすごく複雑で、食品でもないし、医薬品でもない、中間に位置するものなのですね。ですから、そういうものについて、さっき言いましたが、よく勉強しているような人はいるのです。アドバイザリースタッフというのは厚生労働省が民間に要請して作ったのです。それは保健機能食品にくっ付いてできたものなのです。ところが、制度が厚生労働省から消費者庁に移ったときにほとんどフォローされなくなったのです。そこをもう少しちゃんとやっていればもっと改善できたと思うのです。保健機能食品に付いてできたものがアドバイザリースタッフなので、アドバイザリースタッフをもっと活用するようにしてほしい。先ほど2団体と言いました。そういう団体を行政側がうまく使ってあげるというのが私は必要だと思います。

一番の問題は、アドバイザリースタッフの認知度がものすごく低いのです。認知度が低いと、そういう資格を勉強して取るという人も多くはない。でも、一般の人の調査をすると、やはり健康食品について助言してくれる人が欲しいというニーズは非常に高いです。でも、どこにアドバイザリースタッフがいるかというのは分からない。助言していく人をもう少し活用する。行政側が、アドバイザリースタッフに使われるのではなくて、行政側が使うという視点でアドバイザリースタッフを活用していくのが、私は今のいろいろな問題点を改善する一番の方向だと思います。

そのアドバイザリースタッフというのは企業倫理みたいなものを教えているのですね。ですから、変な売り方をすることも多分ないでしょうし、そこのところをもう少し考えていったほうが良いと思います。

実は、機能性表示食品ができたときに私は検討会に入っていて、もっとアドバイザリースタッフを使ってほしいと言ったら、そんな特定の団体に肩入れをするのはできないと拒絶されました。でも、うまく使う、行政側がそういう人を仲間にして、自分たちの制度なりをうまく広めるという視点でやれば、何も問題にはならないと私は思っています。

以上です。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、宗林様、よろしくお願いします。

○岐阜医療科学大学薬学部 宗林教授 ありがとうございます。

もともと食品表示法の中に、初めて消費者の権利という言葉が基本理念の中に入りました。安全性を担保し、正確で合理的な選択をするための表示というのは消費者の権利なのだということで、消費者庁が持つ食品表示法ができています。

そういう意味では、先ほどの行動変容とか消費者ができることということはもう先生方がたくさんお話をされましたので、まさしくそれは同意見ですけれども、表示を見て行動が変わったり、食生活、運動も含めて変わって、それと併せて利用していくものだということが分かるような食品表示の一部であっていただくというのが、機能性表示食品の食品表示というのは一定のものだけではなくて、使い方も分かるようなものであってほしいということが1つでございます。

今日、私は何回も言っていると思いますけれども、機能性表示食品、トクホもそうですけれども、トクホはある程度安定している状態になってきていますけれども、先ほど言ったようにプラスオンでずっと摂っていくようなものになるわけですから、食品の形をしているもの、あるいは錠剤のものもたくさんあるわけですね。それについてどのぐらいプラスオンしたら安全性は問題ないのかという点や、それから、機能性としてどのぐらい以上飲まなければ何の意味もないよねというところが全く抜け落ちていて、各社それぞれのエビデンスはあって使っているので、それ自体は間違いではないのですが、国民がそれをうまく使っていくためには、そこがどうしてもある程度必要だと思っています。

なので、行政、有識者、事業者も入って、こういうような誤認のないような数字は、数字自体も誤認してしまう可能性があるので、誤認しないような表示、それから数字を書くときにどのぐらいというのを議論するときが来ているのではないかなと思います。

以上でございます。ありがとうございました。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

ほかにございませんでしょうか。

黒木委員、よろしくお願いします。

○黒木委員 黒木です。

非常に難しいというか、私は法律家でよく理解できていなくて、この機能性表示食品、保健機能食品については去年1回ヒアリングがあって、今回が2回目ですけれども、その関係でお尋ねしたいのは、機能性表示食品の届出件数が増えていて、かつトクホの許可件数が伸び悩んでいる状況だということは御説明いただきました。このトクホ活性化の方策というのはどういうふうに考えていったらいいのかということについて、御意見を頂ければと思います。

疾病リスクの低減表示というのが、消費者の理解促進、今ずっとその理解促進のお話を頂いておりましたけれども、どんどんこれを活用していっていいのかということについても教えていただければと思います。大変素朴な質問で、今非常に高度な議論をしていただいている中で、制度はどうなのですかみたいな話をして申し訳ないのですけれども、その辺りを少し教えていただければ有り難いと思います。御意見がある先生、どなたでも結構でございます。よろしくお願いいたします。

○後藤委員長 それでは、どなたでも結構ですので。宗林様、よろしくお願いします。

○岐阜医療科学大学薬学部 宗林教授 今、疾病リスク低減はカルシウムと葉酸に限られております。例えば葉酸については二分脊椎症がある程度防げるということで、他国では小麦などに最初から入れ込んでいるところもあるぐらいで、積極的に摂取を推進するという意味ではよろしいのではないかなと思います。

ただ、今後、疾病リスク低減の表示をしていくときに、疾病名をどこまで行くのかというところについてですけれども、2段階、3段階になって、これができて、これができるからそうなって、そうしたらこうなるよみたいなことがあるのかもしれませんが、それが国民にとって、実は最終的にはこっちに効くのだわと思うようなことにならないようにしていかなければいけないということが一つと、疾病名があまりにも、現在、急性の疾病で倒れてしまいそうとか重篤になりそうなものをあまり持ってくると、場合によっては治療の開始を遅らせてしまう。疾病リスク低減に使えるものを使っていくのは反対するものではありませんが、非常に慎重に、誤解がなく、そして、最終的な機能性表示があまりにも急性的だったり、重篤、そこで期待したがゆえに治療が延びてしまう、治療に入るのが遅れてしまうようなもの、そうすると、その後、もっと重篤な疾病につながってしまうような、あまり急な変化が起こるようなものは慎重にしていただきたいと思っています。ちょっと抽象的で申し訳ないのですが、よろしくお願いします。

○後藤委員長 ほかの先生方はいかがでしょうか。

○黒木委員 トクホの活性化の方策とかはどうでしょうか。機能性表示食品との関係で届出件数が伸び悩んでいるという問題があると思っていますけれども、その辺りは。

○後藤委員長 梅垣先生、お願いいたします。

○昭和女子大学食健康科学部 梅垣教授 トクホと機能性表示の違いが分かっていないのですね。機能性表示はほとんどが文献レビューなのです。文言に何とかと報告されていますと。報告されていますというのは、その製品でデータを取ったわけではないので、含有量のばらつきが出てくるのですね。本来ならば、その製品で検証したデータに基づいて表示をしなければいけない。それをやっているのがトクホなのです。

トクホと機能性表示の違いがほとんど分かっていない。機能性表示食品では、企業がいろいろな商品を出すときに表示ができるハードルを低くした。そしたら、みんなそこを飛び越えていくのです。当然ハードルが高いトクホを取る人はいない。でも、本当に国民に役立つものは、錠剤・カプセルの機能性表示食品ではない。普通の食品、ヨーグルトとかお茶とかスープ、そういうものが食生活に役立つ。トクホはものすごく良い制度なのだけれども、それが理解されていない。

もう一つ言いますと、トクホは有害事象を起こしたことはほとんどないです。今までにトクホで何か害があったというのは、下痢とか腹痛はあるかもしれませんけれども、重篤な被害を起こしたことはないのです。それは食品形態をしているというのが一つの特徴です。例えばヨーグルトを1日に10パック飲むとかはできないですよね。だから、それは食品の安全性を確保するためには非常に重要なのです。錠剤・カプセルだと人によっては、例えば事業者が1日2粒と言っても10粒飲む人もいるのですね。それはセルフメディケーションではないけれども、自分で判断して、効かないからもっと飲んでみよう、そういう思いが出てくるので、やはり使い方がうまくできない。

何が言いたいかというと、トクホは機能性表示と全く違うというのをもっと一般の人に伝えていかなければいけない。本当は、トクホはそんなに良いものだと消費者が理解したら、事業者もトクホの許可を取ろうとしますし、消費者もトクホを利用しようとする。現状では違いが分からないからトクホを利用する人が減る。そうすると、企業もそれに参入しない。そういう悪循環が今起こっていると思います。

それから、疾病リスクの低減のことを言いますと、リスクの低減と予防とは違うのですね。一般の人は、リスク低減は予防だと思っているのですが、予防は医薬品にしか書けないです。食品に書けるのはリスクの低減なのです。そこの違いが消費者は分からないので、拡大解釈する可能性がありますね。そこも、文章で書いて伝えるのではなくて、専門職を介して個別に情報を伝えていくことをしないと、正しい理解は多分できないと思います。

以上です。

○黒木委員 ありがとうございます。

○後藤委員長 宗林先生、よろしくお願いします。

○岐阜医療科学大学薬学部 宗林教授 トクホですけれども、最終製品でヒト試験をすることは必要かと思いますけれども、そこから消費者委員会に行き、食品安全委員会に行き、また戻ってきて、厚労省とすり合わせをしてと、審査に相当長く掛かってきたので、これを並行的にするとか、審査期間を大幅に縮めることが一つの方策ではないかと思います。

今言ったように、最終製品のというところのお墨付きを第三者がしているというところの特徴はある程度残していかないといけないので、出す頃には製品がモデルチェンジしちゃうよという話にならないように、そこは期間の短縮を是非したら良いかなと思います。

以上です。

○黒木委員 ありがとうございました。

○後藤委員長 よろしいでしょうか。

それでは、予定の時刻を超過しましたので、本日の意見交換会は以上にしたいと思います。

本日、御出席いただきました瀧本様、森田様、梅垣様、宗林様におかれましては、保健機能食品の今後の在り方について貴重な御意見を頂きましたこと、誠にありがとうございました。消費者委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

保健機能食品の現状を踏まえて、更に有効に活用される制度となるために改善すべき課題について、有識者の皆様から重要な御意見を頂きました。その際の大きなポイントとしまして、消費者が保健機能食品を効果的に活用できるよう、制度に対する理解向上が図られることが大変重要であるというふうに認識しました。

医薬品の場合には、医師・薬剤師の管理の下で使われるわけですけれども、保健機能食品の使用は基本的には消費者に委ねられています。

そういうことから、保健機能食品を上手に使うということが大事であって、どのように使うのかという視点が非常に重要ということになりますけれども、この点において日本の制度には欠けている部分があるということ、健康食品の定義がない、そのことからデータを取ることにも困難があるということが指摘されまして、今後に向けての重要な視点であると思います。

使い方への対応としましては、消費者に全部委ねるということは無理があるのではないかという御意見を伺いまして、これは先ほど受田委員長代理がおっしゃいました国民・消費者を真ん中に置くという考え方に通ずるものであると私は理解いたしました。

こうした保健機能食品についての課題を本日認識させていただきました。

それから、急拡大しております機能性表示食品については、事後チェック等によって引き続き運用改善を図っていくことも重要であるという御指摘も頂きました。

保健機能食品制度が国民の健康の維持・増進に一層役立つものとなるよう、引き続き制度の充実・発展に向けての検討や取組が進むことを期待したいと思います。

委員会としましては、本日頂戴した御意見を踏まえて、関係省庁の取組を注視し、必要に応じてその取組を後押しできるように調査・審議を行ってまいりたいと思います。


《3. 閉会》

以上をもちまして、本日は終了したいと思います。お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございました。

(以上)