第312回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2019年12月25日(水)14:00~17:30

場所

消費者委員会会議室

出席者

  • 【委員】
    山本委員長、片山委員長代理、生駒委員、大石委員、柄澤委員、木村委員、清水委員、新川委員、丸山委員
  • 【説明者】
    慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究所リサーチャー斉藤氏
    消費者庁調査・物価等担当大森参事官
    消費者庁内藤消費者政策課長
    消費者庁消費者政策課澤野企画調整官
  • 【事務局】
    二之宮事務局長、福島審議官、金子参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 行動経済学の消費者政策への活用について
  3. 消費者志向経営の推進に向けた取組について
  4. 第4期消費者基本計画素案について
  5. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○山本委員長 それでは、時間になりましたので、ただいまから第312回「消費者委員会本会議」を開催いたします。

本日は、受田委員が御欠席です。

それでは、配付資料の確認につきまして、事務局よりお願いをいたします。

○金子参事官 配付資料につきましては、議事次第の下部に一覧を記載してございます。

もし不足がございましたら、事務局までお申し出いただきますようお願いいたします。

○山本委員長 本日、最初の議題は「行動経済学の消費者政策への活用について」です。


≪2.行動経済学の消費者政策への活用について≫

○山本委員長 昨今、各省庁などにおきましても、行動経済学や行動科学の視点を政策に生かそうとする取組が少しずつ広がりを見せています。消費者委員会におきましても、消費者政策の実効性の向上や情報発信の際に、行動経済学の観点を生かすことが必要ではないかという問題意識から、第311回、前回の委員会におきまして、「ナッジ」の活用に向けた取組状況についてヒアリングを行ったところです。

そこで本日は、前回のヒアリングも踏まえまして、海外における政策への導入状況や活用事例などにつきましてヒアリングを行い、意見交換をしたいと存じます。

本日は慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究所リサーチャーの斉藤長行様にお越しをいただいております。

斉藤様におかれましては、お忙しいところを御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、大変恐縮ですけれども、20分程度で御説明をお願いいたします。

○慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究所リサーチャー斉藤様 ただいま御紹介いただきました、慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究所リサーチャーの斉藤と申します。よろしくお願いいたします。

本日はこのような貴重なお時間をいただきまして、誠にありがとうございます。

先ほど山本先生から御紹介がありましたように、私は行動経済学、行動インサイトの立場から、いかに消費者政策を行っていくか、海外の事例を踏まえながら、なぜ行動インサイトを活用することが有効になり得るのかを解説するとともに、皆様方と議論をしていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

1枚めくっていただきまして、大変恐縮ではございますが、自己紹介を少しだけさせていただきたいと思います。2012年に経済協力開発機構(OECD)にポリシーアナリスト、政策分析官として赴任しておりまして、このときは青少年のインターネットの適切利用のための環境作りのための研究ということでOECDに赴任しておりました。

その青少年のインターネットの適切利用の研究、これは正しく消費者の問題であります。消費者が適切にインターネットを使う、そして、消費者がインターネットの契約において不利な立場にならないようになど、そのようなものの研究の発展で、自然と行動インサイト、行動経済学の知見が青少年保護にも生かされるのではないかということで、青少年保護の立場から私は行動経済学を研究するようになりました。

現在は、環境省の日本版ナッジ・ユニットの有識者をさせていただいております。前回の委員会で登壇されました池本様の委員会で活動させていただいております。

あとは、鎌倉市のナッジ政策のアドバイザーをさせていただいておりまして、市の行政、政策においてナッジをいかに生かしていくかということで、鎌倉市でこれから導入していく方向でおります。

3ページ目、こちらは3冊のOECDの書籍ですけれども、こちらを翻訳させていただいております。一番左側の『行動公共政策-行動経済学の洞察を活用した新たな政策設計』なのですけれども、原書が2014年だったのですが、2016年に翻訳させていただきました。こちらは各国の政策動向をまとめているものです。次に真ん中の『世界の行動インサイト-公共ナッジが導く政策実践』ということで、こちらは左側の書籍を踏まえまして、主に先進国なのですが、各国が多様な行動インサイトを取り入れた政策を行っているので、その事例を集めた事例集でございます。こちらを読んでいただくと、どのような政策課題に行動インサイトが取り入れられているのかが分かってまいります。本日の講演はこちらの書籍の報告書の内容を一部取り入れております。一番右が『環境ナッジの経済学-行動変容を促すインサイト』ということで、こちらは真ん中の書籍の主に環境政策に関する内容、事例を集めた事例集でございます。

5ページ目、前段として、なぜ行動インサイトが取り入れられるようになってきたのかという説明でございます。これまで伝統的な政策としまして、コマンド&コントロールの統治、命令、指揮において、国家の統治が行われてきましたけれども、近年においては、1990年以降、グローバル化の進展、情報通信環境、インターネット環境の普及によって、国民の生活環境が変わってきたと。それに伴って、国民自身が発信して、自分で考えてという能動的な立場になってきているというところで、価値観の多様化、国民の権利意識の高まりというものがあります。

ここで、国民の方々に我慢を強いるような政策をとる場合に、どうしても国民の反発が出てきます。しかしながら、国民の方々が納得してその政策を支持していただくのであれば、それは一番良いことでありまして、自然に政策目標を達成するために国民の方々が適切な行動をとれるようにしていくための一つの方策として、行動インサイトというものが使われ始めた経緯があります。

1枚めくっていただきまして、新しい公共政策の在り方というところなのですけれども、この辺りは前回御説明があったかもしれませんが、一つのアプローチとして行動インサイトを取り入れるという中で、セイラー&サンスティーンがリバタリアン・パターナリズムという政策理念を打ち出しております。これは下に線を引いておりますけれども、人々の「選択の自由が妨げられるわけでも、選択肢が制限されているわけでも、選択が大きな負担になる」ことなしに、政策目標を達成しようという方策です。ですから、国民の「リバタリアニズム」ですね。自由が守られつつも、国の政策としては「パターナリズム」的なところの側面から政策目標を達成していこうという政策理念であります。このような公共政策、行動インサイトを用いた政策ということで、オリバーなどは「公共政策の目標を達成するために、人々の行動変容を生じさせる政策」、ランは「規制を設けることなしに規制と同様の成果を得る方策」という定義付けをしております。

下に行きまして、ナッジなのですけれども、これも前回説明があったと思いますが、肘でそっと突っつく、押し出すような形で、社会として望まれる選択・行動のほうに、そっと、さりげなく人々を導いていく方策であります。このナッジの方策として行動インサイトというものが使われている、活用されているということでございます。

1枚めくっていただきまして、では、なぜ政策に行動インサイトを活用することが有効であるのかということで、それを裏付ける行動科学の研究成果なのですけれども、エバンスなどが主張していますけれども、人間は二重過程理論に基づいて行動していると。表のところですけれども、システム1とシステム2があって、システム1は無意識に行動している。そして、何となく行動して、努力せずにふわっと行動していて、感覚的な行動をしているということです。システム2は意識的に行動して、明示的に考えて、熟慮して行動しているということであります。

ニスベットとウイルソンという2人の先行研究があります。1977年と書いているところですけれども、この2人の研究では、人間は自動処理モードを介して行動していても、熟慮的処理モードで行動したと錯覚している。要するに、深く考えて行動したと思っていても、実は何となく行動していることが多くを占めているということです。

そして、鈴木先生、これは青学の先生なのですけれども、ニスベットとウイルソンの主張を踏まえて、何となく行動してしまっていることも、自分が行動していたということで認知的不協和を解消するために、自分が行動したのだと思い込んでしまうのだということを指摘しております。

では、そもそも人間はどのくらいよく考えて、どのくらい余り考えないで行動しているかということなのですけれども、ザルトマンの研究、指摘では、95パーセントが無意識の行動をしていると。残りの5パーセントが深く熟慮しているということで、ザルトマンの指摘を基にすれば、ほとんどの行動は無意識的に行動していると。ですから、意図的に考えて行動しているつもり、意図的に考えて購買しているつもりでも、後でそんなはずではなかったということが起き得るということでございます。

ですから、行動インサイトの政策、方策というのは、この表でいうところのシステム1に対して、人々の行動を適切な行動に導いていく。一つは、何となく判断していることを深く考えるように導いてあげたり、多くの情報があって考えようとしていても考えられないような状態にならないように、余り考えなくても行動できるようにしていくという方策であります。

下のスライドに行っていただきまして、OECD(2017)の主な認知バイアスということで、これは2ページにわたって挙げておりますが、全部読み上げることはせずに重要なところだけ説明させていただきます。

行動インサイトの主なバイアスとしまして、双曲線割引/近視眼というところが真ん中ぐらいにありますけれども、遠い未来の価値を割り引いて現在的な価値を評価してしまう。例えば1年後に1万円もらえるのだけれども、今もらうとしたら5,000円だと。そうすると、今の価値が高く評価されて、遠い価値を低く見積もってしまうということでございます。

人間の社会規範のところも指摘させていただきますけれども、人間が行動するにも、周りの人の様子を見てから行動するというところがあります。

1枚めくっていただきまして、選択肢/情報過多というところなのですけれども、経済学でいうところの限定合理性、情報の非対称性の問題がありますけれども、伝統的な経済学でいうところの情報の非対称性の話でいくと、多くの情報があることのほうが最適な判断ができるという理念に基づいているのですけれども、このインサイトの視点によれば、情報が多すぎると今度は混乱してしまって適切な選択ができなくなってしまうと。ある研究結果では、多くの選択肢があることによって考えることをやめてしまって、購買することをやめてしまう、契約を更新することをやめてしまう、見直すことをやめてしまう、そういうことがあり得るということです。

下に行っていただきまして、今、行動インサイトを適用する各国の政府は数多くあらわれておりまして、国際機関でもOECD、欧州委員会、国連、世界銀行、数多くの機関が行動インサイトを基にして政策を講じているということです。

1枚めくっていただきまして、世界地図があるページですけれども、各国において行動インサイトを取り入れている機関が202あるということがOECDで報告されております。

下に行っていただきまして、ナッジ政策に関する政府・研究・実践機関ということで、これもナッジ政策を行う、行動インサイトを用いた政策を行うに当たって、政府だけではなくて大学の研究機関、民間の研究機関、コンサルタント機関など、ナッジ政策、行動インサイトを用いた政策を支援する体制ができているということを図式化するような形で表しております。

1枚めくっていただきまして、その中で代表的な例を2つ挙げます。英国の行動インサイトチーム、これは報告があったと思いますけれども、こちらはキャメロン首相のリーダーシップというか、政策的な呼び掛け、方向性でナッジ・ユニットが内閣に設置されて、英国のナッジ政策、行動インサイトを用いた政策が講じられているということです。現在は政府機関からスピンアウトして、コンサルティング企業になっております。

次に米国の例なのですけれども、2015年のオバマ大統領の時代に大統領令が出ておりまして、大統領令で行動インサイトを政策に用いていく方向性を出しております。実証実験を行って、行動インサイトの効果があるのであれば、その行動インサイトを取り入れた政策に取り替えていきましょうということを言っています。残念ながら、トランプ政権になってSBSTの活動は凍結されております。

1枚めくっていただきまして、OECDの調査から見えてくるものということで、行動インサイトを導入している国なのですけれども、OECDの報告書によればイギリスの導入事例が非常に多く報告されているということです。

1枚めくっていただきまして、こちらはOECDの報告なので飛ばしながら行きます。行動インサイトを取り入れるきっかけとなったのは、大統領であったり、首相であったり、自治体の首長であったり、そのような政策的なトップダウンで導入されているケースが多いという報告です。

下のスライドで、行動インサイトが適用された介入された政策分野ですけれども、この報告では金融が多いのですが、金融商品も消費者政策的な立場の金融商品です。これは分類がOECDの分類になって、OECDに寄せて書いていますけれども、「金融商品」と記載されていますこの政策内容は、多くが消費者保護に関するものでございました。あとは健康、電気通信、情報通信、情報通信も消費者保護の立場からのものが数多く報告されております。

行動インサイトを導入するとしたら、人を導く方向で講じるものなのですけれども、言い方を換えると誘導しているのではないかという議論にもなってきます。そこで、各国で倫理的な問題があったのかということなのですけれども、62パーセントは倫理的な反論、指摘は国の中では起こらなかったということをOECDの報告書は報告しております。

1枚めくっていただきまして、導入方法としてはRCT、無作為抽出型実験であったり、実験室実験で、人々の行動を観察するような形で介入がされているということです。

1枚めくっていただきまして、臓器提供者数のスライドですけれども、こちらはもう御存じの方もいらっしゃるとは思いますが、オプトアウト方式にしている国のほうが、臓器提供が多いということです。もちろん、これはオプトアウト方式にすること自体を許容する社会であるということが言えるとは思います。

下で、米国の電力消費量削減なのですけれども、こちらの左側の図なのですが、「節約しましょう」「環境に優しく」「より良い未来のため」という表示よりも、「ご近所さんは既にやっています」ということで、近所の人はちゃんと省エネをやっていますという呼び掛けのほうが効果がある、規範意識に訴えかけていると。

次に右側なのですけれども、こちらは電力消費量の平均を表したということでございます。平均を表すと効果があったのです。しかしながら、平均を表すと、自分は平均の人たちよりも省エネをしているのではないかということを認識すると、今度はもうちょっと使っても良いのではないかと逆に思ってしまって、また無駄遣いが増えてくるということなので、今度は右側にスマイルマークが描いてありますが、スマイルマークを付けることによって良い状態をキープする、そういう方策であります。

1枚めくっていただきまして、こちらは同様の取組を環境省が行っているということです。同様の取組なので説明は省きます。

下です。八王子市のがん検診の事例ですけれども、これは損失回避という行動インサイトの知見を基にしております。この2枚のはがきを対象者の市民の方に送って、一つは来年がん検診キットを御自宅にお送りします、今年がん検診を受けたら来年も受けられますよという表示のものと、今年がん検診を受けないと来年キットがもらえませんよと表示した場合、もらえないという損失があった場合のほうが、検診を受ける比率が上がったということです。

次にEUの消費者権利指令なのですけれども、こちらはEコマースの契約のところにチェックボタンのダイアログがありますが、あちらに初めからデフォルトオプションでチェックが入っていると、ついついそのチェックに誘導されて契約してしまうということを指摘して、EUでは事前にEコマースにおいてチェックを入れることを禁止したということです。行動インサイトを用いて事前にチェックを入れることを禁止しております。

下のほうの英国のマイ・データ政策ですけれども、こちらは企業、事業者によって料金の記載方法が違って比較できないということがあります。情報を精査して、消費者が最適を選べるような形、料金の比較ができるような形にするという政策をとった事例でございます。

最後の事例なのですけれども、英国における自動更新契約に関する政策なのですが、英国の場合は固定電話なのですけれども、固定電話の自動更新契約、皆様方も携帯電話の自動更新契約をイメージできると思います。2011年に自動更新契約のオプトアウト方式を英国は禁止しました。なぜかと言いますと、自動更新は契約するときに割引料金を受けられるということで、時間割引をしてしまうと。目先の割引料金に気がいってしまって、2年後の契約更新時の違約金、解約金を気にせずに、目先の安さに気がとられてしまう。それがデフォルトで表示されるので、デフォルトに引っ張られてしまう。2年後の契約解除の期間を自分はマネジメントできると思って、それを受け入れてしまう、自信過剰になってしまう。しかしながら、新しい電話会社に移りたいとか、新しい機種を買いたいときは、この2年後の契約期間に合ってはいないわけです。どうしても目先の安いものにかられてしまう、意識がいってしまって契約をしてしまうということを行動インサイトの立場から英国は認識しまして、禁止しました。

一方、日本政府は、2016年にそのような契約に関しては説明を強化するという説明義務規定を設けています。しかしながら、それが不十分だという認識だったのかもしれません。2019年10月、今年の10月に、また電気通信事業法が再改正されまして、そこでは事業者を移る違約金を1,000円以下にということで、行動インサイトに基づいた形ではないのですが、違約金を下げるという方策をとっています。

最後に、行動インサイトは先ほども申しましたけれども、人を導く方策でありますが、一つ間違えると誘導することにもつながりかねません。社会にとって望ましくて、人々にとっても望ましい公共目的を達成するものとしてはナッジであるとセイラー教授が指摘しています。そして、それが恣意的なものであるとスラッジになってしまうと。ですから、あくまで行動インサイトはナッジに使うべきであって、スラッジに使ってはいけないということをセイラー教授は指摘しております。

最後めくっていただきまして、こちらが行動インサイトチームで行動インサイトを政策に取り入れるときのフレームワークとして、魅力的であって、選択することを簡単にして、社会的な規範的な意識で、社会につながるもの、人と人とがつながってその中で自分が行動するということを認識させるということです。そして、タイムリーにその政策を打っていくことが有効であるということを指摘しております。

詳しい説明は、この後の質疑応答でさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

○山本委員長 ありがとうございました。

早速、ただいまの説明の内容に関しまして、御質問、御意見のある方はお願いいたします。いかがでしょうか。

丸山委員、お願いします。

○丸山委員 短い時間で有用な情報を本当にありがとうございました。

私からは2点ほど質問させていただきます。中心となるのは28ページ以下の自動更新条項についてなのですけれども、イギリスにおけるこのような強い規制は、恐らく通信役務の市場で、お客さんの選択を実質化して、事業者の乗換えを頻繁にして、競争を促進する、そういう辺りに政策的な狙いがあるのではないかという印象をまず受けました。自動更新条項自体は、取引の領域によっては、必要なサービスを更新忘れで途切れないようにするために必要な場合ももちろんあると思います。質問の1点目としましては、イギリスではOfcomの調査などを受けた規制の後に、結果として消費者による事業者の乗換えが増加し、かつ更新忘れなどによるトラブルが増加するということはなかったのかという点が、情報があれば教えていただきたい。

2点目としましては、既に御指摘いただきましたように、日本の1,000円の違約金は契約期間内の解約のハードルを下げる、なくすという意味があるのですけれども、それだけだとも言えるので、仮に市場の活性化、競争の活性化が目標であるならば、期間内の乗換えの促進に因果関係のある有効な対策となったかどうかは今後の市場におけるデータなどを検証してみないと分からないと思うのですけれども、このような認識で良いのかどうかという点、御意見を聞かせていただければと思います。

以上です。

○慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究所リサーチャー斉藤様 ありがとうございました。

第1点目なのですけれども、私もこれは2011年の規制ですので、その後どのようになっているかを調べてはいたのですけれども、特段、Ofcomからその報告書は出ていないというのが現実です。逆に世論的なところで、ウェブニュースなどでもそれを批判するものとか、追随して調査しているものも、私が調査した範囲では見当たらなかった。ということは、社会的な議論にはなっていないというところは考えられます。要するに、オプトアウト方式の自動更新契約を禁止したことに対する批判が出ていないという認識であります。

Ofcomがやっている調査では計量的なところで、逆にオプトアウト方式による自動更新契約があることによって市場の流動性が制限されている、市場の流動性が低い状態にあるということは計量経済学的には証明していると。その後、流動性が上がったかというレポートは、残念ながらないというところです。

日本の法規制の改正で1,000円以下のところなのですけれども、先生がおっしゃるとおり、違約期間前のところで流動性が上がっているかは、法改正してまだ2カ月ですので、今後の調査の検討課題としてやっていきたいと思っております。

○山本委員長 ありがとうございました。

清水委員、お願いします。

○清水委員 説明ありがとうございました。

私は消費者トラブルの未然防止に一番これを利用されると良いかと思っていて、どちらかというとスラッジの例が、消費生活相談員で相談を受けていると非常に多く感じられます。先生の中で、人間の行動の約95パーセントが無意識で5パーセントが意識的ということなのですけれども、本当に相談の現場にいますと、そんなはずではなかった、契約したけれども解約したいという相談が全体の8割を占めているというのは、これで学術的に言えるのかなと思っております。

先ほどのチェックを入れるというところなのですけれども、オプトアウト方式でチェックを外す方式が有効だったけれども、ECでは禁止になった。これは実は5~6年前にクレジットカードをインターネットで作成することが安易にできるようになって、もともとオプトアウトでリボの支払にしますかというのにチェックが入っていたのです。相談の現場で支払がおかしい、残額がどんどん増えていると。調べたら、数社のクレジットカードは最初からチェックが入っていた。私たちは相談のあっせんで、各社に改善をお願いしました。それにより改善されたかどうか分かりませんが、企業の方たちはグローバルに考えているので、恐らくEUが禁止になったから今はチェックが外れていまして、そういう動きはすごいなと感じたところでございます。

先ほど、金融商品で消費者保護の事例があるとのことでしたが、どうしても悪い事例しか私たちは思い浮かばないのですが、金融商品でどんな消費者保護があったか御紹介いただきたいと思います。お願いします。

○慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究所リサーチャー斉藤様 OECDの報告によれば、OECDが加盟国に対して行動インサイトを取り入れた政策はどのようなものがあるかということでリポートをアンケート形式で回収しているデータなのです。多様な分野、労働問題であったり、税の問題であったり、健康の問題がある中で、金融商品の実践例が一番多かった。

その中で何が多かったかというと、契約に関して非常に不十分な理解からトラブルになっているケースがあった。何で契約のときにトラブルに陥るのかを明らかにするための実証実験が各国で行われています。その中では、契約書に余りにも多くの情報があり過ぎて理解できない。その対策として、従来の契約書と、簡素化して要点をまとめて見やすくしたり、字を大きくしたり、そのような形でやった場合との認識のずれはどちらのほうが高いのかという実験をしています。当然ながら文字を抑えて、重要なところを大きくしてという形の契約にしたほうが分かりやすいという実験結果も多く報告されています。

もう一つは、契約をする場合にA社とB社の書き方が違う。そうすると、金融商品も契約のパッケージがありますね。比較しづらいのです。それを同じフレームにするという形の取組をしていると。A社、B社、C社でサービスの記載の方式が違う。契約期間であったり、パッケージの内容、条件が違ったり、金額も違いますので、それをできるだけ同じフレームに当てるということです。それで表示するような形をとっているという方策がありました。

以上です。

○清水委員 ありがとうございました。

○山本委員長 ありがとうございます。

他にいかがでしょうか。

片山委員長代理、お願いします。

○片山委員長代理 とても興味深い御説明をありがとうございました。

私は安全の分野をやっている中で、先生がおっしゃった消費者が無意識の状況で行動することが多いというのは本当に実感していまして、そういう行動をする消費者を前提に安全なものづくりをしないといけないのだということを、いろいろなところでお話もしてきました。

一つお聞きしたいのは、消費者自身が、自分が無意識で行動していることが多いというのを余り認識していないということに関してです。消費者注意といっても、先ほどお話がありましたが、自分では注意しているつもりだけれども、本当に無意識の行動が多くて、その中で被害に遭ってしまうということを消費者自身も認識する必要がある。この行動インサイトの議論の中で、政策としてそういうものをうまく使ってというのは分かるのですが、消費者自身に対してどのように行動インサイトの話をしていけば良いのか教えていただけますでしょうか。

それから、先ほどおっしゃった悪いナッジと良いナッジと、そこを上手に行動インサイトを使わないと変な誘導になってしまいますということでしたが、そこの実際のチェックと言いますか、行動インサイトでいろいろ取り組んでいくときに、それが間違いなく誤った誘導になっていないかどうかをどのようにチェックしたら良いのでしょうか。消費者政策に行動インサイトを取り入れるときの必ずやらないといけない留意点、注意点、そこを教えていただけますか。

○慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究所リサーチャー斉藤様 ありがとうございます。

まず、安全に使うための消費者への呼び掛けについてなのですけれども、残念ながらOECDのこの報告書には、消費者の安全に対する報告は掲載されておりませんでした。ただ、これも消費者の認識のずれから危険な状況に陥るということで、それは活用する幅があると思います。それに対してはこれまでもやってきているとは思うのですけれども、このようなリスクがあることを事前にお知らせするような形が捉えられるのではないかと思います。何となくこのような使い方をしていると問題が起きる。例えば消防庁などがやっている火事が起きるリスクですね。あのような形で事例を紹介していくということが、一つの方策ではないかと考えられます。

派生したことなのですけれども、今、鎌倉市での取組で、鎌倉市には歩行者尊重道路というものがあるのですが、歩行者が多くて狭い道路なのでスピードを落としてもらいたいと。これは消費者の問題ではないのですけれども、通行者と運転手の問題で、運転手に速度を下げてもらうためにどのような形をとれるかということをやっています。一つの方法として、歩行者尊重道路であること自体を知らないので、それを知ってもらうために「歩行者尊重」と道路にそれ書きましょうと。それを書いただけでは「止まれ」と書いてあるのと同じですので、それが浮き出るような形で立体にする。そうすると、道路を通ってくると立体のものが「思いやり」とか、「スピード落として」とか、おおっという感じにさせるということを、鎌倉市で考えてやっているものがあります。話はずれましたけれども、そのような形で、何が言いたいかというと、消費者にも気付かせることが大事であるという視点で返答しております。

もう一つ、ナッジとスラッジ、その線引きの話ですけれども、これはそれに付随するところで、スライドですとページ数がきちんと出ていなくて分からないのですけれども、行動インサイトが適用された介入された政策分野ということで、倫理的な問題のグラフのページがあります。ここで、下に細い字で大変恐縮なのですけれども、「ナッジに対する倫理原則あり」ということで、オーストラリア、カナダ、オランダ、ニュージーランドの各省庁で倫理規定を設けています。ということで、我々は各省庁でナッジを講じる場合における倫理規定で、そこのチェックを通ってから講じる形をとっています。前回の説明にもあったかもしれませんけれども、日本版ナッジ・ユニットにおいても倫理規定の検討がされております。

○山本委員長 ありがとうございます。

その他にいかがでしょうか。

大石委員、お願いします。

○大石委員 御説明ありがとうございました。

ページ数ですと11ページのところです。行動インサイトを適用する各国政府・国際機関という御紹介の中で、ナッジについて「選択を禁ずることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変容させる」と記載されています。これは先ほどから出ているように、一歩間違えれば国の誘導と見えてしまうことにもなりかねないですし、「予測可能な形で変容させる」という意味がよく分からなかったので、この辺りの御説明をもう一度していただければと思います。

○慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究所リサーチャー斉藤様 これはセイラー&サンスティーンが言っている論文を和訳しているものですけれども、彼らが言っている予測可能な形というのは、例えばその前のページとか前の前のページのOECD(2017)が挙げる主要な認知バイアスというスライドがありますけれども、こちらで例えばフレーミングというところが書いてあると思います。フレーミングをすることによって、多くの人に適切な行動をとってもらえるだろうと。例えば事例で、フレーミングは、手術で失敗する確率は10パーセントだよと言われた場合と、90パーセント成功しますよと言われた場合は多くの人は手術を選ぶであろうということなのです。ですから、そういうことでフレーミングをした場合に人はこのように行動するであろうというのを予測しているということです。そういう意味合いです。

あとはデフォルトで、デフォルト設定すれば人はデフォルトに促されてそのデフォルトを受け入れるであろうということで、そのデフォルトを提示することが人々の福祉につながり、人々の幸せにつながり、個人だけではなく公共の福祉にも資するのであれば、デフォルトを提示したほうがよろしいのではないかということです。先ほどの倫理規定にもつながるところでありますけれども、デフォルトを提示したほうが効果的であれば、デフォルトを提示しましょうという意味合いで、それらのいろいろな行動インサイトがありますけれども、この行動インサイトの知見を用いれば、恐らく多くの人はこのように動くであろうという予測の意味合いで、セイラー&サンスティーンは言っております。

以上でございます。

○大石委員 ありがとうございます。

○山本委員長 ありがとうございます。

その他にいかがでしょうか。

木村委員、お願いします。

○木村委員 ありがとうございます。

27ページで、「選択肢過多の問題に対する消費者保護政策」とあるのですけれども、それでこのような「マイ・データ(Midata)イニシアティブ」でデータ開示の強制をする規制ですとか、視覚的にかつ容易に判断できるように表示することということで、これで効果はどのようにはかられるのでしょうか。そういったことをもし御存じでしたら教えていただきたいのです。

○慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究所リサーチャー斉藤様 マイ・データ政策においての効果検証というレポートまでには、取組を行っているという報告書は出ているのですけれども、その効果がどのぐらいあったかという評価報告書などは行き当たっていないところがあります。ただ、これで効果があったかどうかというのは、実験であったり、無作為抽出試験で比較できるような形で表示した場合とそうでない場合、従来型の料金表示であった場合とどちらのほうが最適な判断をしているかを実験することが一つの方策になってきます。

マイ・データではないですが、コロンビアで同様のことをやっています。コロンビアでは、このマイ・データ政策に倣って実際に料金を分かりやすくするために、比較可能にするために、料金のサービスパッケージに合わせて、このサービスでこの料金ということを表示するようにしているのと、そうでなくて今までとおりの情報だけ提示する形の表示の仕方を見せて実験しています。当然ながら、実験の結果は比較可能な形で表示したほうが消費者が混乱せずに最適なものを選んでいるという報告が、OECDの報告書に記載されております。それは結果が出ています。

○木村委員 ありがとうございます。

日本でも例えば携帯の料金プランですとか、いろいろなものが大変見づらいという苦情を受けていますので、これが改良されて効果検証されるとおもしろいのかなと思っています。

○慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究所リサーチャー斉藤様 十分に検証する価値はあるかと思います。

○山本委員長 生駒委員、お願いします。

○生駒委員 御質問なのですけれども、二重過程理論というページで、行動インサイト政策と従来型の規制という比較がありまして、先ほどおっしゃってくださった95パーセントが無意識の状態で我々は活動しているという、無意識的な部分を活用した政策であるとこの表では書かれていますね。暗示的で、自動的で、努力が不要、反射的、広い許容範囲、知覚的な意識とありまして、かなり人間の無意識の部分に働きかける政策なのだなということは分かります。あと、単なる命令ではなくて、今の時代を象徴するような共感型の働きかけなのだということはよく分かるのですが、先ほど何人かの委員からも御指摘がありましたが、性善説に基づく考え方でこれは成り立って書かれているのかと思うのですが、性悪説もありますね。

そうしますと、このセイラー&サンスティーンさんのところに戻りますと、「人々の選択の自由を尊重しつつも、家父長的な立場から」とあるのですが、まずこの「家父長的な立場」はどのように斉藤様に御説明いただけるのかをお伺いしたいのです。つまり、行動インサイトというものと倫理観の兼ね合いについて、基本的にこのお二方はどのように考えて発案されたのかをお伺いしたいのです。

○慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究所リサーチャー斉藤様 御指摘のあった「家父長的な」というところも、私の言葉ではなくセイラー&サンスティーンの言葉であって、セイラー&サンスティーンがどのような意図で「家父長的な」と言っているのかと申しますと、そこは国の政策で、これまで例えば国民に対する規制を強いていたものが、規制ではなく行動インサイトを用いることによって、自ら多くの人が適切な行動をするのであれば、そちらのアプローチをとりましょうと。しかしながら、規制を行うことなしに規制の目的を達成するという意味で、規制自体は家父長的な視点ですので、規制をしないのだけれども結果は同じ結果に導いていくという意図で、セイラー&サンスティーンは「家父長的な」という表現をしていると理解しております。

○生駒委員 ありがとうございます。

もうちょっと理解するのに時間が掛かるかとは思うのですけれども、倫理観のようなものは、この行動インサイトにおいては何か位置付けられた基準などはあるのでしょうか。

○慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究所リサーチャー斉藤様 そこのところで、セイラー&サンスティーンは明確な倫理、こうあるべきだというものは出しておりません。ですから、先ほどもありましたように、各国の政策機関がそれぞれ倫理規定を作って、その倫理規定に基づいて政策を講じようとしております。一つではない倫理だという認識で私も考えております。いかに作っていくのかということだと考えております。

○山本委員長 柄澤委員、お願いします。

○柄澤委員 半分感想で、生駒さんも言われましたけれども、この行動経済学、ナッジの活用というのは、倫理、宗教観、こういうところをどう整理していくのか。非常に効果があると思うのです。私のマンションの管理組合で修繕積立金を大幅に値上げすると来たのです。みんな反対するのかと思ったら、みんな賛成した。これは、このままでいけばあなたのマンションの資産価値が下がりますよと。この言葉で倍にしたものをみんな賛成したのです。本当に効果があるのだなという点において、こういうものは良いのですけれども、基本的には誘導という意味では宗教観もあるのだろうし、倫理観、そういうところに留意が必要だと。

2つ目は質問なのですけれども、ビッグデータやAI、こういうものを行動経済学、ナッジの中で活用できる方向、そういうものは検討されているのでしょうか。

○慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究所リサーチャー斉藤様 ビッグデータやAIに関して、当然ながら今、検討がされています。日本版ナッジ・ユニット、BI-Tech、「Behavioral Insights×Technology」という形で検討がされています。ただ、そこに関しては例えば個人情報の問題がありますので、そこのハードルを越えていかなければいけないというところがありますが、ビッグデータやAIを使うことによって、よりパーソナライズされたナッジを講じることが可能になってくると思います。

というのも、ナッジの方策にもいろいろありまして、先ほどもいろいろな方策があるという御紹介をしました。なおかつ、数字を提示するとしたら、その数字も人によって反応が変わってくるはずなので、そういう形でその人に合った一番効果的なナッジを講じるためにも、ビッグデータの活用はあり得る話だと思います。

もう一つ、先ほどの感想のところで宗教観というお話がありました。臓器提供のデフォルトで、臓器提供をオプトアウト方式にしている国の合意率が高いというところがありました。このスライドです。もちろんオプトアウト方式のデフォルトをしているから合意率が高いとも見えるのですけれども、オプトアウト方式をしても、社会がそれを受け入れる社会だからということも言えると思います。これを見てみると、ざっと見るとカトリック信者が多い国なのです。低いところはプロテスタント信者が多い国なのです。そういう意味からも、社会がこのナッジの方策を受け入れるか受け入れないかというところが出てくると思います。

ということで、倫理観というか、そのさじ加減も国によって、社会によって変わってくるというところが言えるかと思います。

○山本委員長 ありがとうございます。

そのほかによろしいでしょうか。

今日は大変有益なお話をいただいて、ありがとうございます。前回にもこのナッジの話を伺ったのですけれども、そのときには主には行政機関、国家機関あるいは地方公共団体が表示、情報、メッセージを発して、それに対して消費者が、あるいは事業者も含まれるのかもしれませんが、反応するという場面を主に議論いたしまして、そのときにも種々の御意見が出されました。本日の御報告あるいは御意見にも、それとかなり重なる部分があったかと思います。

それに加えまして、今回は事業者と消費者との間の関係で、事業者が情報提供をする、あるいは表示をする、メッセージを発する。それに対して消費者がどのように反応するかという場面を想定していろいろな議論をしていただき、また、御意見を出していただいたと思います。

何度かシステム1と2、意識の世界と無意識の世界という話が出てきたのですけれども、これまでの法制度は意識的に消費者が選択をする、いわばシステム2を前提にしてシステム2が機能するようにいろいろな規律を行うという発想が基本であったと思います。しかし、実はシステム1の部分が非常に大きく、もともと人間の行動は普通の状態でもかなりバイアスがかかった状態にあるという、システム1を前提にして消費者と事業者との間の関係を考えていくことになると、制度の作り方、制度の解釈の仕方も変わってくる可能性があると思います。今日の意見の中にもそういう御意見がございましたし、幾つかの例を示されて、そのようなことを御説明いただいたわけですけれども、そう考えますと、今後の議論のために非常に有益な御示唆をいただいたのではないかと思います。

海外でいろいろな取組が行われていて、日本ではまだ研究段階ということですけれども、更に日本でも関係機関の間で、あるいは関係者の間で議論をすることを通じて、こういった行動インサイトといった考え方を広げていくことが必要ではないかと思います。

消費者委員会におきましても、必要な情報が効果的に消費者に伝わるように、より良い情報発信に向けて、引き続き検討してまいりたいと思います。

斉藤様におかれましては、お忙しいところ、審議に御協力をくださいまして、大変有益なお話をいただきまして、どうもありがとうございました。

(慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究所リサーチャー斉藤様退室)

(消費者庁調査・物価等担当大森参事官入室)

≪3.消費者志向経営の推進に向けた取組について≫

○山本委員長 次の議題は「消費者志向経営の推進に向けた取組について」です。

消費者志向経営につきましては、消費者庁において平成28年4月に「消費者志向経営の取組促進に関する検討会」報告書が取りまとめられ、平成30年度より、消費者志向経営優良事例表彰が新設をされました。他方で、自主宣言をした一部の企業で不祥事が発生するといったこともございました。

本日は、消費者志向経営の推進に向けた取組について、消費者庁からヒアリングを行い、意見交換を行いたいと思います。

本日は消費者庁調査・物価等担当の大森参事官にお越しをいただいております。お忙しいところを御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、大変恐縮ですけれども、20分程度で御説明をお願いいたします。

○消費者庁調査・物価等担当大森参事官 大森でございます。

本日は御説明の機会を賜りまして、ありがとうございます。

お手元に資料2として「消費者庁における消費者志向経営のこれまでの取組について」というものを御用意させていただいていると存じます。

1枚めくっていただきまして、順を追って御説明させていただきます。1枚目の消費者志向経営とは何かというところでございますけれども、消費者志向経営の概念につきましては、委員長からも御紹介のございました平成28年4月の検討会の報告書におきまして、初めて全体像として明らかになったところでございます。

すなわち全体の考え方として、事業者が経営を行うに当たって消費者全体の視点、つまり、これは消費者の権利の確保及び利益の向上を図ることを経営の中心と位置付けるという消費者全体の視点を持つということ。また、健全な市場の担い手ということで、法令遵守はもちろんのこと、消費者に必要な情報の提供を通じて、消費者の信頼を獲得するという健全な市場の担い手であるという位置付け。最後に究極目標ですが、持続可能で望ましい社会、これは後で申し上げますが、SDGsあるいはESGといったものに結び付いていくのでございますけれども、そのような社会の構築に向けて社会的責任の自覚を求める経営、これが我々の消費者経営の考え方となっております。特に持続可能で望ましい社会の構築という点に重点を置く考え方の中で、愛称として「サステナブル経営」というものを付けさせていただいているということでございます。

取組の具体的な柱として、事業者にどのようなことを行っていただくのかということで、下にイメージがございます。右側の6本、これが検討会において示された柱でございまして、経営トップのコミットメント、コーポレートガバナンスの確保、従業員の積極的な活動、事業の関連部門と品消法関連部門の連携、消費者への情報提供、あるいはそれを踏まえた開発の6つの柱があります。

その6つの柱を経営のイメージとして示したのが左の図でございます。経営者と従業員、消費者との関係が、矢印としてございますけれども、これが6つの方針をどのようにして持っていくのかというところでございまして、経営者が自らコミットメントした上で、消費者の意見を聞く。更にコーポレートガバナンスを事業者の中で行うことによって、消費者から情報提供、あるいはサービスを改善していくという好循環を持って経営していく姿が消費者志向経営のイメージというもので書かれているものでございます。

このような理念の下、実際に何をしているかということでございます。これにつきましても大枠の考え方は検討会の報告書で示されておるのですけれども、実際に我々が何をしているのかということについては、大きく分けまして、現状の活動については、消費者志向自主宣言・フォローアップ活動と表彰ということになります。

この自主宣言・フォローアップ活動につきましては、右側にあります推進組織(プラットフォーム)というものを作っております。これにつきましては消費者庁だけではなくて、事業者団体、消費者団体、それから我々消費者庁が推進組織というものを作ることによって、そちらと連携して自主宣言・フォローアップ活動をしていく、企業の登録やフォローアップ活動を行っていくということをやっておりまして、120事業者が現在活動に参加しているということでございます。

また、優良事例表彰につきましては、これは庁の事業ではございますけれども、先ほど委員長から御紹介があったように、平成30年度に第1回を実施し、今回は今年の10月に2回目を実施し、2回の表彰を行ったということでございます。

このほかに、事例の表彰に合わせてシンポジウムを行ったり、公表された自主宣言の内容の発信に努めていくということをした上で、消費者への事業者の認知度向上を図っているというのが、現在の事業ということになってございます。

3ページ目、自主宣言事業者の一覧がございます。先ほどありましたけれども、120事業者ということでございまして、中には登録いただいているのですが、先ほど委員長から御紹介があったように、行政処分を受けた関係で推進組織ホームページの一覧から削除された事業者もございます。現在のところは120事業者でございます。

4ページ目、これは過去の経緯でございますけれども、これまでの推進状況でございます。消費者志向経営の時流が高まったのは2015年の第3次基本計画のところで、志向経営の考え方、事業者の協調という考え方が初めて盛り込まれたものでございまして、そこから検討会を取りまとめたというのが2016年の中でございます。2016年の10月に消費者志向経営のキックオフのシンポジウムが開催され、この時点をもって消費者志向経営が始まったということになります。

それから、2017、2018、2019と年を追うごとにつきまして、特に御賛同いただいている経団連さん、ACAPさんなどの主催によるトップセミナーであるとか、あるいは自主宣言事業者を拡大していくことなどが2017年以降進んでまいりまして、ロゴマークを作ったり、表彰を作ったり、まだ事業を一通り回している段階ではございますけれども、3年間事業を行ってきているところでございます。こちらが4ページのこれまでの推進状況という経緯の御説明ということになります。

5ページ目以降、表彰などの事業で具体的に何をしているのかという説明でございますけれども、5ページ目が優良事例の表彰でございます。これにつきましては、自主宣言を公表し、かつフォローアップをしてくださっている事業者の中で優れた取組を表彰する。これは取組を表彰するものであって事業者そのものを表彰するものではございませんが、2回表彰を行いまして、特に優れたものである大臣表彰には、花王あるいは広沢自動車学校という2つが選ばれているところでございます。今年度につきましては、表彰式を来年の1月24日に日経SDGsのフォーラム内で実施することを予定しているところでございます。

6ページ目、特に我々は優良事例の紹介というものをしておりまして、表彰を受賞した4社、これは最初の平成30年の表彰の取組を紹介するパンフレットの事例集を作っておりまして、現在はもう4社の事例集を来年の表彰式に間に合うように作成しているところでございます。大臣表彰をとった去年の表彰の例がございますけれども、これを庁が主催するイベントなどで配布したりしておりまして、優良事例の周知・広報をさせていただいているというのが、まずパンフレットを用いた周知・啓発というところでございます。

7ページ目、シンポジウムでございます。こちらにつきましては、昨年は11月26日に推進シンポジウムを開催いたしまして、これは表彰式と同時に行ったのですけれども、表彰のみならず基調講演やパネルディスカッションを行うことによりまして、消費者志向経営の考え方を皆で共有していくということをしておるということで、今年度については来年の1月に日経のイベントで行わせていただくことを予定しております。

8ページ目、トップセミナー、これはACAPさん、経団連さんとの共催の事業でございますけれども、同様に消費者志向経営トップセミナーというものを年に1回行っているということでございます。こちらではACAPさん御自身が行う表彰の実施などをしております。また、時々のセミナーにおきましては、事業者が担当者向けにセミナーを行ったり、少人数の意見交換会も行ったりして、我々からも可能な範囲で説明に伺うということもしているところでございます。

9ページ目、これはロゴマークでございます。認知していただくためにはロゴマークが必要ということでございまして、これは大臣表彰、長官表彰も含めて、まず通常のロゴマークをこのような形でイエローとブルーとグリーンという3色で設定しておりまして、先ほど申し上げました消費者全体の視点、あるいは健全な市場の担い手、社会的責任の自覚という3つの原則の意味付けを色で与えまして、更にそれが無限という文字を形づくることによって継続的になっていくという思いを込めて作ってございます。こちらに大臣表彰、長官表彰のデザインを付け加えたもので表彰しているということでございます。

使用できる方は自主宣言事業者あるいは構成団体に限らせていただいているということですが、商品の販売促進に使う資料には用いてはならないという運用をさせていただいているところでございます。

10ページ目以降、今後の進め方になってまいります。10ページ目、消費者志向経営をどのように位置付けるのかというところでございます。これは今後の消費者行政全体の議論とも関係してくるのでございますけれども、これまでは行政から消費者を支援し、事業者には規制するという枠組みで消費者行政が位置付けられることが多くございました。ですが、今後10年を見据えていった際には、例えば消費者ではエシカル消費といったものを用いて、自分が社会に与える影響を考えた消費をしていただく。事業者でも、先ほど申し上げたような消費者志向、あるいは持続可能な社会に向けた経営を推進していく。そこにおいて消費者と事業者と行政が協働していくという望ましい行政にできないのかという目標がございます。

消費者志向経営はそのような望ましい方向に向けて連携・協働型の消費者行政を促進していくというところで、望ましい方向としてSDGsの絵がありますけれども、「誰一人取り残さない」持続可能な社会、あるいは安全・安心で豊かに暮らすことができる社会を実現していきたいという思いがあるところでございます。

それに従いまして、消費者志向経営の考え方をどのように発展させていくのかというところがございます。それが(参考)と書かれた表でございます。1枚目の表で消費者全体の視点、健全な市場の担い手、社会的責任の自覚という平面で切ったような御説明をしましたけれども、これを例えば時系列で御説明していくと、元来、消費者志向経営を行ってきた最初の対応というのは、フェーズ1の企業におけるお客様対応、お客様窓口における消費者への真摯な対応が大原則で、CS経営と呼ばれているものから始まったものであると認識しております。

更にそこから進んだ上で、持続可能な経営基盤という形でガバナンスという点が問われてまいりまして、法令遵守のみならず、経営トップのコミットメント、コーポレートガバナンスといったものを位置付けていく。これはESGのGのところに相当するものではないかと考えております。

そこから更に進みまして、現在、先ほど御説明したような持続可能な社会あるいは未来を考えた場合には、最後に持続可能な社会の実現というSDGsのマークがついてございますけれども、我々として社会的課題を解決するような消費者志向経営を最終形として目指す必要があるのではないか。消費者の要望を踏まえるであるとか、環境問題、最近は食ロス、あるいはプラスチックの問題など、企業が社会的課題の解決に向けた商品を開発あるいはサービスを開発して、それを消費者が選んでいくような取組がなされていると承知しております。そのような課題の解決、あるいは地域社会の貢献という観点で経営されるというものが、例えばそれはCSVに該当するのではないか、あるいはESGのEとSに該当するのではないか。そのような発展した形をとっていけば、最後は消費者志向経営が持続可能な社会の実現に資するのではないかと。そのような消費者志向経営の発展の方向を我々として考えているところでございます。

12ページ目、このような将来向かっていくであろう方向性について考えた上で、最後に我々として基本計画の中でどのように今後、特に来年度、再来年度に位置付けていくのかが最後の資料でございます。基本計画第3期の工程表においてどのように位置付けられているかという点でございますけれども、2016年から始まりまして、自主宣言・フォローアップなどの活動促進ということで、検討会の方向としても、5年間進めてみた上で進捗状況を踏まえて2021年度に見直しをするということが工程表上掲げられているところでございます。したがいまして、現在は2019年度でございますので、表彰を行い、フォローアップなどの活動を行うことによって事例を積み上げていく段階にあるところでございます。

それに基づきまして、来年度の2020年度にどうするのかというのが、下に補足で書かれてあります令和2年度予算案というところでございます。1000万円が来年度予算に措置されたものでございますけれども、これにつきまして、特に評価指標の開発というところに措置されているところでございます。

これにつきまして、考え方といたしましては、表彰あるいは消費者志向経営の達成度合いを考える中で、客観的な指標がなければなかなか広がりを持たないのではないか、あるいはフォローアップ、制度全体の見直しにつながっていくのですけれども、客観的な指標がなければ見直しがなかなか難しいのではないかという考え方がございます。これはまだ我々の腹案の段階でございますが、例えば表彰を行う際に、表彰の基準などについてESG、SDGs、あるいは他のいろいろな例はあるのですけれども、一つの考え方に従って客観指標を一度作ってみようではないかということを来年度行いまして、それに基づいて表彰あるいはフォローアップなどを1回回した上で、2021年度の見直しにつなげていく方向をとりたいということを現在考えているということでございます。

以上、駆け足でございましたが、これまでやってきたことと大体の方向性を御説明申し上げました。

○山本委員長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明の内容に関しまして、御質問、御意見のある方はお願いをいたします。いかがでしょうか。

生駒委員、お願いします。

○生駒委員 御説明ありがとうございました。

日本の企業がエシカルに成長していく良い道筋を作られているなと思って拝聴しておりましたが、お聞きしたいのが、この消費者志向自主宣言事業者、120社既にあるということで、ロゴマークの使用もできると御説明がありました。これらの事業者さんは何か選考委員会、応募して、審査を受けて、この自主宣言事業者になれるのか、あるいは申請すればある程度のことであればどなたでもなれるのか、選考基準のようなものはどのようになっているのでしょうか。

○消費者庁調査・物価等担当大森参事官 これにつきましては、逆算になってしまうのですけれども、自主宣言を行う企業、事業者の皆さんが手を挙げるのは御自由でございますので、まずこの理念に賛同していただけるというものがあれば、手を挙げていただくのは自由でございます。

推進組織(プラットフォーム)、実際は消費者庁のホームページなのですが、推進組織のホームページに一覧として掲載するかどうかが次の段階としてございます。そちらに登録するに当たっては自主宣言をしていただく、それを明らかにしていただくということと、フォローアップを行っていただくことを宣言していただくということがあって、何がしかの例えば消費者庁に深く関連する法令で行政処分を受けるような事例があれば、それは自主宣言した志と一致していないということになりますので、そのときはホームページから削除するという運用をしています。

例えば実際にお話が来たときに、そのような自主宣言をしていただけますか、具体的にしていただけますか、あるいはフォローアップをしていただけますかという聞き取りはいたします。ただし、これは例えば内部通報者の認証のように審査をするものではなくて、あくまで事業者の志を大事にするということを我々は第一にしてございますので、志が足りないからはねるということはいたしておりません。ただ、そうはいっても、例えば事業者の方が申込みをされたときに、行政処分を受けられましたけれども、受けてしまえば1年間はホームページに載らないという運用なので、1年前ぐらいに行政処分を受けたことがありますかとか、そういうことはお伺いすることはあります。ただ、基本的にそういう状況でなくて志に賛同していただける方であれば、現状は広く受け入れるという運用になってございます。もちろんそれについていろいろございますけれども、現状はそういう運用になっております。

○生駒委員 このロゴマークが作られて「消費者志向経営」と飾られていると、消費者からするとすぐ信頼してしまいかねない非常に重要なマークだと思います。私も長らくエシカルであるとかエコの活動に関与してきて、企業がウオッシュと言いまして、エコウオッシュとかエシカルウオッシュという流れがありますね。何か不都合なことを隠すためにエコやエシカルの看板を掲げてしまう。これらの企業が必ずしもそうだとは思わないのですけれども、そういうことも起こりかねないとした場合の予防策はあるのでしょうか。今おっしゃった、企業としての活動はちゃんと調べた上で登録してもらうと判断されていると考えて良いでしょうか。

○消費者庁調査・物価等担当大森参事官 そこが本当に難しいところがございまして、反社の団体とのつながりというのはあるのですけれども、それは論外としても、行政処分が一つのメルクマールでございます。

御指摘されている点もあるのですけれども、もう一つあるのが、この起こりとして、どこの業態ということではなく、消費者の利益を損なうような事例があって、例えばその反省の上に立って消費者を向いていかなければいけないのだという事業者があった場合、その志も無駄にする、はねるわけにはなかなかいかないわけでございます。ウオッシュというのは当然排除していかなければいけないのですけれども、例えばある事業者がそういう状態になった場合に、それを本当に反省して、これを機会に消費者の利益を第一に考えて経営するのだと。そのための宣言を作って、それを社内に徹底していくということであれば、そういうものを駄目だと言うのもなかなか難しい状況ではございます。

○生駒委員 非常によく分かりました。私も日本エシカル推進協議会というものに関わっていまして、企業のエシカル度をランキングする、測るようなことを考えようと提案がよくなされるのですが、スタンダードを決めるのはなかなか難しいのです。ただ、難しいというのは現状だと思うのですが、経験値を積み重ねながらでも良いのですけれども、基準を策定されていかれたほうが良いと思います。先ほども1社不祥事があってこのリストから外されましたと聞きましたが、消費者庁として何らかの基準を策定していかれる方向に持っていかれたほうが良いのかとは考えます。

○消費者庁調査・物価等担当大森参事官 何社かございます。申し訳ございません。

御指摘の点も、私も毎月新しく加わりたいというところを見せていただいているところもあって、そういう意味では運用していく中で明確な基準があったほうが良いという御指摘もございます。その点につきましては、実はこの自主宣言というものを毎月事業者団体、消費者団体から成る推進組織の中で諮っているというところがございます。その推進組織の中で、例えば2ページに経団連さん、同友会さん、ACAPさん、ヒーブさん、消団連さんなどいろいろございます。そちらと毎月この事業者についてはこれこれという御相談をしながら運営をしているということでございまして、実際の運用の仕方については、推進組織の中で御指摘の点も踏まえてまた相談していきたいと考えてございます。

○山本委員長 他にいかがでしょうか。

柄澤委員、お願いします。

○柄澤委員 これまでの取組を見せていただきまして、ありがとうございました。

消費者志向経営に進む消費者庁、行政の方向性については、非常によくやっていただいているなと思います。

御意見のあった、私もホールディングのCEOをやっているのですけれども、傘下の5社も自主宣言をしておりまして、これが本当に適合しているのかどうかというのは心配になりましたが、言われるとおり、まず消費者志向の自主宣言をしていただくということは、いろいろな意見はあるのだけれども、第1段階の取組としては是と。一方で、コーポレートガバナンス・コードとか、スチュワードシップ・コードと作ってきて、我々から見れば本当に余計なお世話だと最初は思っていたわけです。ただ、それを全て受け入れるわけではないけれども、一つのメルクマールができている。それに対して自分たちはどうチェックして、コンプライするのか、しないのか、こういうことを宣言していく仕組みを作っていく必要があるので、先ほど予算の中でKPI、あるいはそれなりの基準を考えていきたいと。これは大変な御苦労だと思いますけれども、是非日本の消費者行政の進展のためには、企業側にそういうKPIであるとか、あるいは基準はこうあるべきなのだと。

もう一つ言わせてもらえれば、悪い事例、これをやってしまえば消費者志向ではありませんよというものを消費者委員の方はいっぱい持っておられるので、これをやったら自主宣言は御遠慮くださいという形で持っていくことを行政側は示していかないと、そこは回らないなと。

逆に「えるぼし」認定などがありますね。女性が輝く先進企業ランキングでも表彰されると、もっとやっていこうと社内は盛り上がるわけです。そうなると、そういう何か認定のランクなどですね。

自主宣言をしていただいて、それで企業が自らそこに進んでいただく、これはものすごく重要な話なのですけれども、一方で、ベストプラクティスを広げていく。それと悪い事例、これをやったら自主宣言は御遠慮いただきますと。行政処分だけではないと思うのです。例えば苦情とかそういうものに対して、何かあった事例を取締役会の中で議論していますか、月に1回ぐらいやっていますかと。このような基準でも良いと思うのです。そういうものを僕はできると思います。それでパブリックコメントに示して、いろいろな指摘をいただきながら、日本の消費者行政の一つのモデル、先進事例を日本において作っていくという志で是非やっていただければ、我々も応援したいと思います。

以上です。

○山本委員長 ありがとうございます。

大石委員、お願いします。後でまとめてお答えいただきます。

○大石委員 御説明ありがとうございました。

今回御説明いただいた中で、宣言していらっしゃる事業者のことについて2点ほどお聞きしたいと思います。3ページに現在120事業者があるということで名前が載っております。表彰を受けたところを見ても同じように感じるのですが、日本はいろいろな業種の事業者さんがいらっしゃるのに、自主宣言をしていらっしゃる方の中での、金融機関の割合がかなり高いなと思った次第です。これはなぜなのかと聞いても、逆になぜだと思いますかと聞き返されそうですけれども。他の業種や事業者さんがもっと宣言するような働き掛けや取組を消費者庁でやっていらっしゃるのであればお聞きしたいなと思います。

同様に、事業者さんの中で、中小企業の方も結構あると思うのですけれども、お名前を見ていると阿波とか、徳島とか、徳島県関連の中小の事業者さんがたくさん載っているように感じました。それ以外の全国の中小の企業も載っていらっしゃるのかもしれませんけれども、印象として一定の地域に偏っているように見えます。

今回受賞されているのは大企業が大変多いわけなのですけれども、逆に言うと、消費者志向宣言、トップのコミットメントなどから考えますと中小から社会を変えていくという意味では、もっと中小企業がどのような自主宣言をして、しかも更に表彰されることによって、日本の社会が少し良いほうに変わっていくということもあるのではないかと期待します。そういう意味で、中小の事業者さんももっと手を挙げていただくためにはどうしたら良いか。私たちも一緒に考えていかなければいけないと思っています。その辺りの取組もあれば是非教えていただきたいと思います。

以上です。

○山本委員長 他にございますか。

清水委員、お願いします。

○清水委員 ありがとうございます。

大石委員の関連なのですが、徳島の首長が頑張った結果ではないかと思っているのですが、今後知名度を上げていかないといけないと思います。これが広がっていくことによって消費生活センターの相談も減っていく、国民全体の消費者力が上がるということで、すごく応援したいのですが、全国的な消費者のレベルからすると、知名度が全然ない。そんな中で成功事例として徳島の首長が頑張ったというのがあるわけですから、今後どういう方向で首長を説得していくのか、計画があれば教えていただければと思います。

○山本委員長 それでは、お願いします。

○消費者庁調査・物価等担当大森参事官 まず業態でございますけれども、これはおっしゃるとおりでございまして、業態ごとに様々な思いがあると思うのですが、現在、生命保険あるいは金融機関が多いということでございます。これは私の推測ではあるのですけれども、特にお客様対応で長い歴史があるところが割と手を挙げやすい傾向にあったのではないかと思っております。

御指摘をいただきましたが、これにつきまして、もう少し我々として裾野を広げなくてはいけないという思いは確かに持っております。特に中小企業への取組が必要かということも思っております。現在、我々としては、消費者志向自主宣言というのは割と自由に書いて良いと。6つの原則があってそれを大事にしてくれるのであれば、自主宣言についてはこうしなければいけないというものは問わないという、割と自由形式にしているのでございます。例えば何を書いて良いか分からないということであれば、ある程度我々でひな形を作ってやって、ここを遵守するというようにすれば良いという考え方もとり得るのではないかと思っておりまして、そこは実は内部でも勉強しているところでございます。

中小企業で、確かに徳島は正に御指摘のとおりでございまして、現状、消費者庁全体として、平たく言ってしまうと拠点を持って足で営業できる拠点は徳島しかないという状況を反映しているところでございます。自治体をフットワークよく回って、三方よしの考えを説得して、だから手を挙げてくれと言うと、割と理解を得やすいと。今年の大賞をとった広沢自動車学校も徳島の企業でございます。

全国展開という宿題を我々は負っておるのですけれども、その中で東京からできることというと、先ほど申し上げたような登録をしやすくする、あるいは発信していくというどうしても空中戦に近いところになってくるのでございますけれども、そういったところでうまく知名度を上げていくこと。また、これは国会の予算の御審議ということもあるのでございますけれども、徳島がまだ来年度以降も続くのであれば、そういった足を使った啓発もやっていかなければいけないなとは思っております。

その中で、悪い事例も確かにございまして、そういったものも実際に運用していく中で、こういったことをすると掲載をお断りするということも分かりやすく示していかなくてはいけないのではないか。これは数が現在120でございますので、まだ当課でマネージできる規模であるのですが、これがどんどん増えていってほしいと思っておりまして、増えていくと、そういう客観基準でマネージしないとなかなか回らないのではないかと思っております。それにはまず最初に表彰というところで良い企業についての客観基準を作った上で、それを広げていって、かつお断りするような客観的な例を出していく方向、柄澤委員からも御指摘があったように、これは避けて通れないのではないかと考えております。

以上でございます。

○山本委員長 ありがとうございます。

片山委員長代理、お願いします。

○片山委員長代理 御説明ありがとうございました。

消費者志向経営の議論が始まったときに、本当にすばらしい政策と言いますか、すばらしいテーマを取り上げていただいていると思いました。ただ、私は消費者団体をやっていますので、いろいろな事業者さんと消費者志向経営という問題について議論する機会もあるのですが、そこで感じるのは、11ページに分かりやすく書いていただいた3段階のフェーズの第1段階のフェーズ、お客様対応は本当にみんな昔から一生懸命やっておられて、すごくイメージもしやすいし、何をしたら良いかというのも分かるのだけれども、フェーズ2のイメージと実践が一番難しいのではないかという点です。事業者さんの側で本当に消費者志向経営を推進していく上では、トップと現場のそれぞれが感じておられる難しさがあると思います。そういう事業者さんの現場の本音と言いますか、ここに書いてあるように、従業員が積極的にやろうという気持ちになってやらないとなかなか消費者志向経営は進まないと思いますので、事業者さんが感じておられるであろう現場の御苦労を今後どうサポートしていくのかが大きな問題ではないかと思っています。

実はフェーズ3のほうがやりやすいのです。フェーズ2はガバナンスの問題、組織の仕組みの問題ですが、フェーズ3は最終目標を示している。最終目標として、単に顧客の声を聞くだけではなくて、もっと積極的に自分たちが消費者全体、社会の要望をくみ上げていって、その解決に向かっていくのだと。そういうものをどんどん取り入れて、正に消費者、社会全体から支持されるし応援してもらえる、そういう企業になるのだ、それが消費者志向なのだというメッセージはすごく分かりやすいのです。フェーズ2、フェーズ3と分けてあるのですけれども、私から言いますと、2と3を一緒にしてしまって目標と進め方みたいな感じで示していかれると、事業者の現場でも内部で推進が一気に進むのではないかと思います。ちょうどSDGsへの取組も皆さん熱心にやっていただいているので、そういう考え方もあるのかなと思っています。その辺り、消費者庁でも、現場で事業者さんが何に苦労しておられるのかをヒアリング等して、是非そこに寄り添って推進していただきたいと思います。

もう一つは8ページで、事業者さんのトップセミナーを開催していただいているのですが、私の発想から言うと、こういうセミナーに消費者団体や普通の消費者の人も一緒に呼んで、事業者さんはこんなことをやっていますよという場をもっと作っていただくのも良いのではないかと。事業者だけではなくて消費者も一緒に交えたグループディスカッションのようなものをされると、消費者は本当にびっくりすると思うのです。事業者はこんなことまでやっておられるのだと。そこで消費者から理解されて、これをやれば消費者から支持されるのだという実感があれば、より一層事業者でも消費者志向経営に取り組みたいという気持ちが強くなるのではないかと思います。そうした事業者と消費者が一緒に消費者志向経営の価値、意味を考える場を是非工夫していただければと思います。

以上2点、要望です。

○山本委員長 その他にいかがでしょうか。

木村委員、お願いします。

○木村委員 ありがとうございます。

消費者という立場から申し上げますと、まだまだこれは認知度が低いと感じるところなのですけれども、消費者から見て、この宣言をされた企業がどういうものなのかが分かりにくいということがあると思うのです。お話を伺っていますと、基準がないというところですので、最低限このくらいはみたいなものがもう少し分かりやすく消費者にも伝わるようにしていただけると良いのかと思うのが1点目です。

3ページを見ていますと、いろいろな企業があって、大企業もありますし、中小もあるのですけれども、拝見していて、中小企業といっても地元にしてみれば必要不可欠な大切な企業もいっぱいあると思いますので、そうしたところは是非資料にある特定の地域だけではなくて、いろいろな地域で宣言ができて消費者志向の経営ができるような、そういった取組をしていただけると良いのではないかと思っています。

質問なのですけれども、2ページ目、消費者志向宣言・フォローアップ活動についてのところで、左側の事業者の結果というところで「実施した取組の具体的内容・結果を公表」というところになるのですけれども、これは頻度としてはどのぐらいのことをやっていらっしゃるのかお伺いします。

○消費者庁調査・物価等担当大森参事官 フォローアップは単純に年に1回を想定しております。ただ、出してくれと言って、督促などをいろいろやったりするのですけれども、年に1回を想定しているところでございます。

いただきました関連する消費者の方とのコミュニケーションでございますけれども、正に消費者志向経営自体が消費者団体、消団連さん、全相協さんも含めた推進組織ということで進んでおりますので、その推進組織の中で進捗状況などを報告し、今後の方向についてもいろいろ意見をいただくような機会を設けたいと思いまして、昨年一度開いてから、まだ推進組織の運営会議を開いておりませんので、そういった運営会議を開かせていただいて、御相談したいと考えております。

近々ですが、来年の1月24日に表彰式を兼ねたシンポジウムを日経SDGsフォーラムの中で開催いたします。近日中に日経新聞から広告の形で参加方法なども出ると承知しておりますけれども、是非御関心ある方の御参加をお願いしたいと考えております。

以上でございます。

○山本委員長 ありがとうございます。

その他にいかがでしょうか。

新川委員、お願いします。

○新川委員 ありがとうございました。少しずつかもしれませんが、消費者志向経営が定着している様子がよく分かりました。

少し先の話になるかもしれないのですが、次の基本計画のこともあるのですが、消費者志向経営は今後どういう目標、到達点、ターゲットみたいなものを持って進めていかれるのかが気になっています。例えば日本中の300万社を全部宣言させるとか、そういうこともあるのかとか、いろいろ勝手なことを考えてはいたのですけれども、この辺り、どういう消費者志向経営の未来の状態を考えたら良いのかが少し気になっていました。みんなが宣言しているという状態でよろしいのか、あるいは先ほど委員からもありましたけれども、より実体的に何がしかの成果が経済的にも社会的にも見える状態が生まれてくるのか、そこがよく分からないので、どういう方向なのかが気になったのが1つ目です。

2つ目に気になったのは、推進組織を作っておられて、これはこれとして役割を果たしておられるのはよく分かったのですが、もう一方では、消費者志向経営そのものを進めるときに、自主宣言をしているところが集まってきたということだけで推進になるのかはとても気になっています。要するに、推進組織や推進をどう進めていくのかが少し見えにくいというのが、今日のお話を聞いた印象としてありました。

このプラットフォームみたいなものが、次のステップでどんな活動に向かっていかれるのか、今のところは表彰、フォローアップ、いろいろな形での関わりをしておられることはよく分かるのですが、そこのところがどうなるのか。先ほどは地域での周知や広報ということで、もっと地道なface・to・faceでの活動というお話もありましたが、これも推進組織としてやれるところ、あるいはやるべきところがあるのかもしれないと思いながら、大きな2つ目は推進組織そのものの今後というか、活動をどうしていかれるのかが気にか掛かりました。

以上2点、もし今のところでの見通しのようなものがあればいただければと思います。

以上です。

○消費者庁調査・物価等担当大森参事官 現状でのお答えというものが、5年間は正に啓発を行うことによって、再来年度の見直しをしていくまでの準備をしているところになるのですが、その中で一つの方向性は、予習になってしまうのですが、私が言って良いのか分かりませんが、資料3-2の計画の15ページにございます。ここが思いとしてあるところでございますが、消費者志向経営がどう位置付けられているかということについては、「消費者と事業者とのWIN-WINの関係の構築」という中に、企業としての社会的責任を果たしていると多様な関係者から評価され、円滑な資金調達等につながるよう取り組むというところがございます。これはいろいろ運営していきながらですけれども、将来像として、まずESGはESG投資というものが背景にあって、そういう評価をしているところは投資を受けやすくなる、あるいは融資を受けやすくなるという、実利という言葉を使っては申し訳ないのですけれども、そのようなところにひも付けられていくのが将来の理想形です。

ただ、それは非常に難しい。ESG、SDGsについてもかなり大きい物語でございますので、結び付けていくのはなかなか難しいところはございます。ただ、様々な世の中の潮流も組み合わせた上で消費者志向経営をしていくことが、ステークホルダー、円滑な資金調達は別に投資だけではなくて様々なやり方があると思いますが、そういった関係者から評価されて、それが実際の企業経営に生かされていくようなものに、次に見直すときには発展させていく必要があるのではないかと思っています。現状の段階ではございますけれども、そういったものが課題としてあるのではないかという思いは持ってございます。

その中で、それは庁が作るだけのものではなくて、多くの特に消費者団体あるいは経営者団体、いろいろな団体の御理解があってこその取組だと思いますので、そういったところと協働してやる枠組みは今のところは変えずにいこうかとは考えてございます。

以上でございます。

○山本委員長 ありがとうございました。

よろしいでしょうか。

種々、御意見をいただきました。SDGsをこれから推進していく上で、この消費者志向経営は非常に重要な意味を持っていると思います。幾つかの課題が委員から指摘をされ、また、大森参事官からもその点についてコメント、あるいはいろいろな問題意識を御提示いただきました。

まず、取組をしている企業を広げていくことが課題であると。現状では業種あるいは規模の点で偏りがあり、例えば、徳島県では中小事業者も熱心に取り組んでおられるけれども、他の地方にそういった取組を更に広げていくことが必要ではないかといった御意見がございました。

そのときに、余りがんじがらめに国から言うのは良くない、志のあるところに手を挙げていただくことが必要であるということが一方にあるのですけれども、しかし、何かメルクマール等々があったほうが手を挙げやすいという面もありますし、消費者志向経営の仕組み自体が事業者あるいは消費者から信頼を得る、評価を高める上でも、一定のメルクマール等はあったほうが良いのではないかという御意見がかなりございました。メルクマール、あるいはベストプラクティスを公表していく、あるいはメルクマールという点から言えば、こういった事業者には遠慮していただくといったものまで含めて、もう一歩進めて示していくことが重要ではないかといった御意見がございました。

その際には、自主宣言をして終わりというのではなく、その後のフォローアップ等が重要になるだろうと思います。その点は先ほど御指摘のあったとおりです。

もう一つの問題として、消費者がこういった事業者を後押ししていくことがこの取組を広げていく上では必要であって、それがあると事業者としても取り組んでいこうということになろうかと思います。その際に、先ほど御意見がございましたけれども、消費者志向経営の仕組みの運営の中に消費者が入っていく。そういう仕組み、あるいはそういう実践をもっと広げていく必要があるのではないかという御意見がございました。消費者と事業者がコミュニケーションを行う場をもっと広げていくことによって、消費者志向経営の取組をみんなで応援して広げていくことが重要ではないかという御意見がございました。

それから、これは非常に大きな話ですけれども、消費者志向経営をこれからどう展開していくのか、あるいは推進組織としてどういう体制をとっていくのかを中長期的に考えていかなくてはいけないのではないかという御意見がございました。その中には、フェーズ2が非常に難しいので、むしろこれをフェーズ3と一緒にすることによって、そこに入りやすく、あるいは理解されやすくしていくことが有益ではないかといった御意見もございました。こういった御意見も参考にしながら、今後とも消費者庁で取り組んでいっていただければと存じます。

消費者委員会としても、引き続き検討を行うとともに、消費者庁あるいは事業者等々の取組を注視していきたいと考えております。

本日は、消費者庁におかれましては、お忙しいところを審議に御協力いただきまして、どうもありがとうございました。

(消費者庁調査・物価等担当大森参事官退室)

○山本委員長 それでは、ここで10分間の休憩をとりたいと思います。4時10分まで休憩にいたします。

(休憩)

≪4.第4期消費者基本計画素案について≫

○山本委員長 時間になりましたので、再開をいたします。

最後の議題ですが「第4期消費者基本計画素案について」です。

本件につきましては、10月4日の第310回委員会におきまして「第4期消費者基本計画の構成(案)」に関する意見募集の結果についてヒアリングを行ったところです。また、これまでの消費者基本計画の検証・評価・監視の中で、第4期消費者基本計画策定に向けた意見を累次発出するなど、検討を進めてまいりました。

本日は、第4期消費者基本計画素案につきまして、消費者庁からヒアリングを行い、意見交換を行いたいと存じます。

本日は消費者庁内藤消費者政策課長、澤野企画調整官にお越しいただいております。

お忙しいところを御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、恐縮ですけれども、20分程度で御説明をお願いいたします。

○消費者庁内藤消費者政策課長 消費者政策課長の内藤でございます。

20分ほどいただいておりますが、恐らく後ろの関係がございますので、手短に御説明をさせていただきたいと思います。

先ほど委員長から御紹介もいただきましたけれども、10月4日の本会議で一度計画の構成、パブコメの結果を御報告させていただきました。その間にいただきました御意見なども踏まえまして、本日は計画の原案を作成いたしておりますので、それの御報告をさせていただきたいと思います。

なお、本日からパブリックコメントに付すことにしてございまして、1月23日まで国民の皆様からの御意見を伺うことにしているところでございます。

最初に全体構成を御説明したいと思っております。資料3-1をお開きいただきたいと思います。こちらは基本計画の全体構成でございます。全部で5章構成になっておりまして、上から1、2、3とございまして、1個飛んで第4章が一番下にございますが、1章から4章まで、こちらが総論、5章が各論という形になっております。

ここでざっくり御説明いたしますと、1章が「はじめに」という前書きの部分でございます。2章が現状認識あるいは現状分析になっておりまして、3章がそうしたことを踏まえた基本方針、4章が5章にある個別の施策、各論に至る前提としての行政インフラの整備の話、そして、5章が各論になっているということでございます。

1章から順にポイントを絞って御説明をさせていただきたいと存じます。資料3-2の1ページをお開きいただければと思います。第1章が先ほど申し上げました前書きの部分でございます。

3つのパートに分かれておりまして、まず消費者問題の歴史と経緯を記してございます。左側に行の番号を書いてございますので、こちらを引きながら御説明させていただこうと思いますが、まず10行目を御覧いただきまして、1968年に我が国の消費者政策の基本的な枠組みとして消費者保護基本法が制定されております。21行目までおりていただきまして、当時の法律におきましては、消費者は行政に「保護される者」という形で受動的に捉えられておりました。ただ、33行目でございます。消費者を取り巻く社会情勢の変化、こうしたことを踏まえまして、次の行の終わりのほうですが、2004年に消費者保護基本法が消費者基本法へと生まれ変わったわけでございまして、その際に、消費者の位置付けが「保護される者」から「自立した主体」という形に転換をされたわけでございます。

次の行、一番下でございますが、消費者基本計画は、この改正によって創設をされたものでございまして、2ページ目の一番上、消費者政策の計画的な推進を図るために政府が長期的に講ずるべき消費者政策の大綱という位置付けになってございまして、今年度まで3期にわたる基本計画期間が経過しているということでございます。

2.はこの10年の歩みの話でございます。9行目でございます。2000年代半ば以降に、消費者の身近なところで大きな不安をもたらす消費者問題が多発をいたしました。14行目でございますが、こうした事態を踏まえまして、2009年に消費者庁、そして、消費者委員会が設置されたわけでございまして、この10年間で、例えば20行目に書いてございますが、消費生活相談窓口の設置が促進されているということ、それから26行目、各省庁の縦割りを超えた分野横断的な法令の整備が推進されております。食品表示法等々でございます。

3ページ目、10年の歩みの3つ目の事例でございますが、5行目「さらに」というところで、各省庁と連携しての施策が推進されてきたという形になってございます。

1章の最後のパート、3つ目が、新しい消費者基本計画の策定についてうたっております。時間の関係で3ページは全部飛ばしまして、4ページ目の20行目まで飛んでいただければと思います。2020年度、来年度から2024年度までの5年間を対象とする新しい計画を第4期として定めまして、この計画に基づいて消費者政策を推進するということにしているところでございます。

5ページ目、先ほど申し上げましたとおり、第2章は現状認識を示してございます。中身は大きく2パートに分かれておりまして、前半では消費者のぜい弱化・多様化の話、後段では社会情勢の変化について述べております。

まず、消費者のぜい弱化・多様化が進んでいるというのを3行目以下に書いてございます。具体的には高齢化の進行ということで、結果としまして、20行目辺りに書いてございますが、高齢者の消費者トラブルの更なる増加あるいは深刻化が懸念されるところでございます。

2つ目、成年年齢の引下げでございまして、こちらも35行目、一番下でございますけれども、成年年齢引下げを契機といたしまして、そのまま6ページ目にお進みいただければと思いますが、若年者の消費者トラブルの急増が懸念されます。

3つ目、世帯の単身化・地域コミュニティーの衰退という部分でございますけれども、こちらにつきましては16行目のところにざっくり書いてございますが、地域社会から孤立した高齢者あるいは若年者が周囲の目から隔離されて、消費者トラブルに巻き込まれやすくなる。トラブルに巻き込まれた際に、誰にも相談できずに一人で抱え込んでしまう傾向にあることから、トラブルの更なる増加、深刻化を招くことが懸念されるとしております。

4つ目、いわゆる訪日・在留外国人による消費の増加としてございますけれども、まとめておりますのが7ページ目、8行目のところでございます。外国人が取引の当事者となる場合の消費者トラブルが増加していくことが懸念されるということでございます。

続きまして、社会情勢の変化でございます。こちらの細かい説明は省略いたしますけれども、1つ目はデジタル化あるいは電子商取引の拡大ということ、8ページ目にお進みいただきまして、自然災害が激甚化・多発化しているということ、同じページの36行目で、持続可能な社会の実現に向けた機運の高まり、いわゆるSDGs、こうした3つによって特徴付けられると現状分析をしております。

これをまとめましたのが9ページ目でございますけれども、課題分析というところでございまして、およそ3点に整理をしてございます。

1つ目、30行目の後段でございます。消費者トラブルの防止を徹底する観点から、多様化する消費者の特性に応じて、行政、消費者団体、事業者等の適切な連携のもと、重層的かつきめ細やかな対策を講じることが必要。

2つ目、34行目以降ですが、デジタル化の進展に伴いまして、37行目、政策面・制度面からの対応の検討が必要。

10ページ目、3つ目でございます。こちらは3行目からですが、持続可能な消費社会の実現に向けた社会的課題を解決する観点から、消費者と事業者との「協働」による取組が必要。こうした分析をしているところでございます。

この分析を踏まえまして、3章、11ページをお開きいただければと思います。政策の基本方針でございまして、こちらも2パートに分けております。

前段としまして、まず目指すべき社会の姿を3つ示しております。3期でも同じような目指すべき姿を書いておりましたけれども、4期においてはそれをできるだけ具体的に示すことを心掛けました。

1つ目は7行目、誰もが安心して暮らせる安全な社会ということでございまして、8行目、消費者被害を防止するための科学的かつ十分な措置がなされ、全ての消費者がその措置を信頼して商品やサービスを合理的に選択・利用できるような社会が目指すべき社会の1つ目でございます。

2つ目が22行目、生き生きと暮らせる持続可能な消費社会ということでございます。いわゆる消費者市民社会を言い換えました。23行目でございますが、自らの消費活動で未来を変えられることを各々の消費者が自覚しながら、持続的に成長する世界の実現に向けて活動的に日々の生活を送ることのできる社会を目指すということにしております。

12ページ目にお進みいただきまして、3つ目でございます。3期の目指すべき姿にはなかったものではございますけれども、2行目で、経済社会や生活環境の絶え間なくかつ激しい変化にも柔軟に対応し、トラブルを適切に処理できる消費者と、個々の消費者の手に負えないような社会的問題を共助で対処・解決するコミュニティーが育成あるいは形成される社会を3つ目として挙げてございます。

25行目まで飛んでいただきまして、こうした「消費者が主役となる社会」を実現するための政策の基本的方向を、次のとおりとして施策を推進するとしております。こちらからが後段になっておりまして、柱が(1)から(4)まで4つございます。これもざっくり申し上げますと、従来の取組をしっかりとやっていきましょうというのが(1)と(2)、新しい取組を進めましょう、あるいは新しい取組の種となるように、そういう意味を込めて記したのが(3)と(4)という形でございます。

既存の取組として、まず何よりしっかりと取り組むべきものは12ページの32行目、消費者被害の防止でございます。例えば、まずマル1厳格な法執行による消費者保護、それから、13ページの10行目、マル2消費者が合理的な判断に必要な情報を得られる環境の整備、こうしたことにしっかり取り組む必要があるということをうたっております。

その際の留意点として、32行目を御覧ください。ここは新たに書き込んでおりますけれども、消費者の多様な特性に応じたアプローチが必要ということでございまして、36行目から御紹介しますが、全ての人が一定の状況のもとではぜい弱化する可能性があることに鑑み、14ページに飛んでいただきまして、消費者の年齢その他の特性に配慮し、多様化する消費者にきめ細かく対応するための施策を消費者政策として積極的に導入し、幅広い取組を進めるとしてございます。

11行目、2つ目も従前の取組をしっかり進めるということで、消費者の自立、それから、事業者の自主的取組の加速としてございます。まず、マル1のように消費者教育その他の普及啓発、いわゆる消費者を育てる、そのための情報を届けるということ、それから、30行目にありますけれども、マル2のような事業者の取組を支援するといった取組でございます。

15ページ目、ここから新しい取組の種を植えているところでございます。キーワードとしましては、協力して働くの協働と、デジタルでございます。

まず、協働による豊かな社会の実現というところですが、2行目でございます。消費者と事業者との関係を、取引等において相対する当事者としての関係から、共通の目標の実現に向けて、協働するパートナーとしての関係へと高める。そのために、柔軟で多様な政策手法を用い、6行目、多様な主体が連携できるような枠組みを構築するとしております。

具体的には3つほど書いてあると思います。まず、持続可能な消費社会の形成といたしまして、13行目、持続可能な経済成長につながるような消費活動を促進するために、関係者が共通の認識、目標のもとで取組を進める。同じ方向を向きましょうということでございますけれども、同じ方向を向けたら次は24行目、余り消費者行政で使わない言葉ですが、消費者と事業者とのWIN-WIN関係を構築することも重要でございます。27行目の最後でございますけれども、消費者と事業者の双方にメリットをもたらすような関係を築く、このため消費者・事業者との間で意見交換を行うということ。それから、34行目まで飛んでいただきまして、事業者が消費者全体の視点に立ち、36行目以降で、消費者の声を聞くことが評価され、円滑な資金調達等につながるように取り組むとしております。

16ページ目、最後にこうした取組を支える公的な枠組みの構築でございます。2行目、消費者が安心して暮らすことができる地域社会の形成を図るということにいたしまして、5行目、6行目でございますが、教育、福祉、医療、保健、防災、警察あるいは消費者団体、事業者団体、ボランティア団体、NPO等の幅広い関係者との連携を図るとしてございます。

(3)は以上でございまして、新しい取組の種として、もう一つはデジタル化への対応でございます。21行目にポイントを書いてございます。デジタル化に伴う取引や決済の分野の急速な変化、あるいはビッグデータの利活用環境の急速な変化への対応を重点的かつ迅速に進めていくということ。26行目後段でございますが、情報化社会の特性を踏まえて、政策面・制度面からの対応や新技術の活用促進といった必要な施策を推進するとしております。

加えまして、国際化対応といたしまして、35行目からでございますが、消費者が越境取引を直接行うことが身近となる中、国内外の消費者の保護のために国際的な連携・協力の強化を図るとともに、次の17ページにお進みいただきまして、12行目、外国人が直面するであろう消費者トラブルへの対応の強化を図るとしてございます。

こうしたことを基本方針としまして、施策を進めるわけでございますけれども、18ページ、第4章でございます。先ほども少し申し上げましたが、第5章以下の個別の施策を進めるに当たりまして、行政インフラが整備をされていることが不可欠でございます。4期計画においては、その重要性について特にスペースを割いて記述を設けてございます。ここでは、必要なインフラを四つ書いてございます。

8行目、情報でございます。9行目以降ですが、情報を政策的に分析・活用することも視野に入れた情報基盤を構築すること。もう一つは21行目、ICTの消費者行政の現場への導入を促進することとしております。

次に、人材でございます。ポイントは27行目でございまして、消費者行政を担う人材を国や地方、官民を問わず幅広く育成するとしております。

19ページ、23行目に3つ目の行政インフラが書いてございます。いわゆる財政でございまして、特に25行目後段ですが、地方公共団体における地方消費者行政の充実・強化を図るとしております。

最後が20ページ、法令等でございます。2行目に、消費者取引の多様化・複雑化に適切に対応するための制度整備等を行うとしているとともに、8行目、法律の執行体制の着実な強化を図る。17行目、行政施策の実施に当たって関係行政機関等との連携を強化するということにしております。

総論部分は以上でございます。

続きまして、各論でございまして、各論につきましては21ページを御覧いただければと思います。計画本体においては、4行目にありますように、重点的に進めるべき施策を記してございます。なお、5行目以下でございますが、それ以外の施策を含む具体的な施策につきましては、工程表を別途定めまして、政策を検証可能な形で体系的・包括的に推進をいたします。工程表におきましては、対象期間中の取組予定及びKPIを明示して、毎年度改定するとしてございます。

以降は各論が並んでおるわけでございますが、こちらの構成につきましては、基本計画の年次計画に当たります工程表との整合性、リンクをとっております。これにつきましては、工程表のほうが分かりやすいと思いますので、恐縮ですが、資料3-3をお手元に御用意いただければと思います。

時間の関係もございますので、個別施策の説明は省略をさせていただきますけれども、5章の各論、工程表の構成につきましては、青く塗ってあるかと思いますが、左上のところでございます。柱としましては「消費者被害の防止」「消費者による公正かつ持続可能な社会への参画等を通じた経済・社会構造の変革の促進」「消費生活に関連する多様な課題への機動的・集中的な対応」「消費者教育の推進及び消費者への情報提供の実施」、最後に「消費者行政を推進するための体制整備」という5本柱としてございまして、私どもとしては、個別施策は漏らさず記載をするということで考えてございます。ただし、4期計画策定の状況に合わせまして、取組についての取捨選択は必要なのではないかと考えているところでございます。

個別施策につきましては、その是非も含めまして、後日工程表の議題のときに改めて議論をしていただければとは思っておりますけれども、3-3でグレーに塗ってある部分が幾つかあると思います。こちらが新しく盛り込む施策になっておりますので、御参照いただければと思っております。

先ほど、施策を全て網羅すると申し上げましたけれども、私どもとしましては、いわゆる隙間をきっちり拾うという観点から網羅をするつもりではございますが、一方で、どこまでを消費者政策として捉えるべきかといった辺りにつきましては、委員の皆様からもまた御意見をいただければと思っております。

恐縮です。少しオーバーいたしましたが、私からの説明は以上でございます。

○山本委員長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明の内容につきまして、御意見、御質問のある方はお願いいたします。いかがでしょうか。

柄澤委員、お願いします。

○柄澤委員 全体の印象としては、消費者の自立あるいは協働という非常に良いフレーズを使っていただいた。このコンセプトの中で、消費者と事業者の向き合う方向はSDGs、CSV、ESG等の観点でベクトルは一緒だと、そうやって一緒に進んでいくというメッセージを強く打ち出されたことは非常に印象深いと思っていまして、非常に良いキーワードだと思います。

もう一点は、かねてからあったと思うのですけれども、悪徳事業者への法執行の厳格化みたいな部分はもうちょっと強く働き掛けて、未然に防止するような仕組み、罰則が全てではないのでしょうけれども、それをやらない限りはなかなかなくならないという前提であれば、どのような法執行が適切なのか、そういう議論も含めて、そのメッセージを強く打ち出していただけたらと思います。

もう一点は質問なのですけれども、こういう消費者の環境の中でサイバーリスクは非常に我々企業でも問題になっているのですが、サイバーテロとかサイバーの問題で消費者が何か被るような環境はあるとみられているのか、そこはもう消費者にとっては基本的にないとみられているのか、そこはどのような環境認識なのかと。

以上です。

○山本委員長 お願いします。

○消費者庁内藤消費者政策課長 御質問をいただいたサイバーの関係も含めて、デジタル化への対応というところで、これは検討していかなければいけないと思っております。たまたまうちの課で担当しておりますけれども、この12月に消費者のデジタル化への対応に関する検討会という有識者検討会を立ち上げておりまして、プラットフォームあるいはSNSといった新しいデジタルサービスへの消費者の向き合い方を今後検討はしていくことにしておるのです。その中でいわゆるサイバー空間の問題なども議論の対象にはなってくるかと思っております。必ずやるというわけではもちろんないのですが、有識者委員の方の議論を踏まえて、必要に応じてそういったところへの取組も考えてまいりたいと思っております。

○山本委員長 ありがとうございます。

その他にいかがでしょうか。

丸山委員、お願いします。

○丸山委員 もしかしたら具体的な工程表のお話になってしまうかもしれませんので、それだったらまたの機会になるのかもしれませんけれども、気になっているのが、23ページから24ページに出てくることで、24ページの6行目辺り、民事的な手法に関連することなのですけれども、被害解決とか救済制度の一層の利用促進に向けた取組ということを書いていただいている部分があります。消費者契約法その他の民事的手法も、最終的には私の認識では違法行為の抑止などにつながっていくものだと思っているのですが、民事的な手法が実効性を上げるのは、現実的に民事手続とかADRが機能して、かつ加害者の財産が隠匿されずに確保されて、被害回復に当てられて初めて実質的に機能するのかと思っております。

そのように考えた場合に、現行ある救済制度の一層の利用促進も非常に大切でありますし、被害回復の実効性を図る仕組みが現実に十分なのかという点についても検証、ここに行政的手法を入れたほうが良いとか、入れるのは無理だという是非の話についてはとりあえず留保するとしても、そういった仕組みの十全性の検証をやるようなことを課題として認識できないかどうかが気になっている点ではございます。

もう一つお伺いしたいこととしましては、資料3-3のところなのですけれども、グレーがかかっているのが新しい部分だとおっしゃっていただいて、前から少し気になっていたのが、チケットの不正転売禁止法という法律ができまして、ただ、私の認識では理論的な位置付けや検討が調べたところでは余り出てきていない。それが消費者利益というところでどのような位置付けがされて消費者庁という形になっているのか、競争の観点から見ていく法律なのか、消費者利益という観点から見ていく法律なのか、どのような捉え方をしている法律なのかを教えていただければと思いました。

以上です。

○消費者庁消費者政策課澤野企画調整官 御質問をいただきまして、ありがとうございます。

まず被害救済といった辺りで、現行の被害救済の運用の確認、被害回復の実効性といったところでございますけれども、御案内のとおり、相手方の財産状況について網羅的に確認するという形を、業を規制、規律している立場にないというところから、例えば、私どもが破産の申立て権限を持てるのかといったところについては非常に高いハードルがあるのだろうと理解しているところでございます。

他方で、消費者委員会の皆様方からは不十分だという御指摘はあるかもしれませんけれども、我々も大規模な事案に対して、繰り返し執行を打つ形であったり、あるいはかなり早期の段階から消費者安全法の注意喚起をするという形によって、被害の拡大防止を図るなり、速やかに消費者の方々の自覚を促すという形の取組をやらせていただいていると理解をしています。

なお、今回の計画の中にも、先期の消費者委員会の皆様方から御意見を最後に頂戴した販売預託商法の関係も含めて、実効性のある取組を検討していくという形の書き方をさせていただいているところでもございまして、被害の回復というところでリーチが効くのかというところはあろうかと思いますけれども、少なくとも消費者被害が大規模な事案を含めて広がりがちであるというところについて念頭に置き、問題意識を一にしながら、次期の計画期間の中でということになろうかと思いますが、今後対応してまいりたいと思います。

○消費者庁内藤消費者政策課長 2点目の御質問でございます。若干答えにくいところもありまして、淡々とポジションだけ答えさせていただきます。

チケット不正転売防止法はいわゆる刑罰法規になっておりまして、不正転売した人を処罰するというのがメインの規定内容でございます。一方で、国なり地方公共団体の義務としまして、いわゆる関係者の相談に応じるべきであるということが課されてございます。そういう意味から、チケットを不正に転売されそうになった方ですとか、あるいはやむを得ない事情で本当に行けなくなってしまって何らかの形で転売、役に立つようなという意味で使いたい方、買い手も売り手もどちらも消費者と位置付けられると思いますので、こうした方々の相談に国あるいは全国の消費生活センターで相談に乗らせていただくということが、消費者庁あるいは消費者行政としての役割と考えているところでございます。

○山本委員長 よろしいでしょうか。

清水委員、お願いします。

○清水委員 今の法強化のところで預託法というお話があったのですけれども、これはどの辺りに書かれている部分ですか。

○消費者庁消費者政策課澤野企画調整官 記載といたしましては、24ページの21行目以下でございます。

○清水委員 ありがとうございます。

既にかぶちゃん農園やジャパンライフなどの被害がありますけれども、現在も類似事案がまた繰り返し起きています。この問題は喫緊に対策すべき、難しい問題だとは感じていますけれども、高齢者の被害額が1000万というものが出てきている現場の状況をお伝えしたいと思います。

25ページ、19行の「割賦販売について」というところも経済産業省での議論があるようなのですけれども、これまた現場では、若者の10万円単位で繰り返しカード等を使っての被害が非常に多く出てきています。こういう被害は業界団体に入っていないアウトサイダーが関わっているケースが非常に多いので、なかなか難しいところがあるのですが、この辺の書きぶりも強化ということで、是非お願いしたいと思います。

○消費者庁消費者政策課澤野企画調整官 割賦販売法のお話を頂戴したかと思うのですけれども、御案内のとおり、今、いわゆる金融・非金融を通じた横断法制の検討をしていく中で、イノベーティブな話と、他方で守るべき、それこそ与信の審査の在り方などについてバランスをいかにとっていくかという御議論をいただいているかと思います。先だってのクレジットカード関係での加盟店への対応状況の厳格化・強化のお話のみならず、恐らくこの常会なりでまた成案を得ていくための取組を経産省が中心になってやられるのだと思いますけれども、そういった今後の新しい制度についての理解増進であるとか、適切な運用の確保に関しては、私どもも状況を注視をしながら適切に対応していきたいと考えております。

○清水委員 よろしくお願いします。

○山本委員長 その他にいかがでしょうか。

生駒委員、お願いします。

○生駒委員 消費者とひとくくりにしましても、今は経済格差がすごく激しく、貧困問題もあると思うのです。詐欺商法に関わってくる問題でもあるのではないかと。目の前のお金が欲しくて、最近は受け子などもいろいろ問題になっていると思うのですが、そういったことに対しては、29ページの「ぜい弱性」や「生きづらさ」に関連しているのかと私なりに思ったのですが、まず貧困対策的なところの要素をどのようにお考えなのか。

もう一つは、29ページにインターネットの適正利用の確保に関する施策、世界保健機関がゲーム障害を重く受けとめて、世界的な病理であると宣言しています。各国で結構取組が始まっていまして、中国や韓国でも政府レベルで子供たちにネットゲームをし過ぎないように規制していくようなことがアクションとしてとられているのですけれども、日本は、日本として、政府としてまだ余り聞こえてこないのですが、消費者庁としてはどのようにお考えでしょうか。

○消費者庁消費者政策課澤野企画調整官 2点お答え申し上げます。

前半におっしゃっていただいた経済格差のところにつきましては、基本的には生活困窮者自立支援法の枠組みに従って対応されており、生活困窮者自立支援事業の中でも義務的な事業と任意の事業という形で事業メニューが構成され、任意の事業の地域間のバランスに結構アンバランスがあってという課題はありますけれども、地方公共団体で困窮者の方々への相談対応の強化・注力化を図っていると理解をしております。多重債務問題の解消という観点からもかなり有効な地に足のついた施策と理解をしておりますので、引き続き厚労省を中心にそこをやっていただけるように、私どもとしてもいわゆる多重債務者問題の関係で、政府の対策本部の本部長は金融庁でやっていただいていますけれども、私どもも本部員として参加している状態でございますので、引き続き、私どもからも働き掛けをしていければと考えております。

後段のネット依存の関係でございますけれども、おっしゃっていただいたように、それこそ韓国でありますとか、いろいろなところで取組がなされており、オンラインのコミュニケーション型のゲームについてののめり込みであるとか、あるいはインターネットの長時間閲覧についての課題があることは理解をしているところです。現時点で我が国としてのエビデンスについては、昨年度であったか、一昨年度であったかが失念し、恐縮でありますけれども、厚生労働科学研究で、若者の方々を中心とするネット依存、ネットを長時間閲覧することの現状がどうなっているかという疫学調査がございました。それから、その他のオンラインゲーム等を中心とする障害等々のありようについてどうなっているかについても、久里浜医療センターでつい先頃も調査研究結果が公表されたと承知をしてございます。

そういった辺りも踏まえながら、ゲーム障害関係では厚生労働省が、それから、インターネットの適正利用関係では内閣府の青少年育成担当が、それぞれ施策の旗振りをしてございますが、私どもとしても、例えばオンラインゲームの高額課金の請求がいきなり親御さんのところに届いてしまうという形で、借金の問題であったり、いきなり高額の決済が生じるというところの課題として、つかみやすい状態はあるのかと思っております。

今、ギャンブル等依存症対策の関係で、相談を寄せられる方々の借金の問題から背景を聞き出して、自助グループ等々へおつなぎして、ギャンブル依存症である方ないし御家族の生きにくさの改善に私どもとしても貢献していく取組をしてございますので、似たような形の取組をしていくことと、そういったものが割に合わないという意味合いでの啓発をしていくことが車の両輪になろうかと思っております。ネット依存等についても、施策の取りまとめ部局と連携しながら、似たような取組をやらせていただければと考えております。

○生駒委員 関係する省庁が多岐にわたって難しい問題だとは思うのですけれども、是非横連携を図っていただきたい。と申しますのも、ネット依存はひきこもりの問題と直結しておりまして、結構社会の大きな課題となっていると思いますので、是非消費者庁の立場から働きかけをしていただけると良いかと思います。

○消費者庁消費者政策課澤野企画調整官 先の国会でも、いわゆる「引き出し屋」に関するお尋ねなども国会審議の場でも頂戴しておりましたので、そういった辺りも踏まえながら対応してまいりたいと思います。ありがとうございます。

○山本委員長 他にいかがでしょう。

大石委員、お願いします。

○大石委員 御説明をありがとうございました。

2点ほど意見を述べたいと思います。まず、これは前のお話に出ているかと思うのですけれども、5ページの第2章の題目です。「消費者のぜい弱化・多様化」というところで、消費者の多様化というのは何となく受け入れられるのですが、ぜい弱化については疑問を持ちました。今は消費者が全てぜい弱化しているかというとそうではなく、これは周りの環境や、その折の状況、場合によって左右されて違ってくるので、全ての消費者がぜい弱化した、というイメージとなるのではと違和感を持ちました。「消費者のぜい弱性及び多様化」くらいだと何となく話が通るのかと思っていますのでご検討いただけますと有り難いです。

11ページの第3章の「政策の基本方針」のところで、「消費者政策において目指すべき社会の姿」というところ、「誰もが安心して暮らせる安全な社会」と書かれております。安全な社会という意味では、特に今年は大きな台風が立て続けに上陸し甚大な被害が出ました。これらの原因となっている気候変動に対する対策については、すべての消費者が関わっていかなければいけないのが現実です。今回の基本計画には、温暖化対策に直結する消費者ができる消費行動、省エネ、再生可能エネルギーの選択、加えて、RE100など再生可能エネルギーを選ぶ事業者を応援するなど、消費者が実際にできることについての記載が出てきていないのが大変気になりました。これは、環境省の分野であると言われるかもしれませんが、しかし、消費者が毎日行動していく中で社会を変えていく、それこそ消費者市民社会での消費者の役割です。その意味で、消費者が行うべきことを載せていただくことは大変大事なことだと思います。今後のパブコメでも指摘があるかもしれませんけれども、基本計画の先の工程表に入れていただきたいと思っております。すでに入っていれば良いのですが、その辺りも是非具体的な内容を加えていただけると有り難いと思います。

以上です。

○消費者庁内藤消費者政策課長 1点目だけ私からお答えさせていただきたいと思います。

消費者がぜい弱化しているというのは、「Vulnerable(バルナブル)」ということで使われていると思うのですが、9月に行われましたG20の関連イベントとしてありました消費者政策国際会合の中でも共通認識として言われていたことであります。一定程度、そういう国際会議の議論を踏まえた使い方になっていると。バルナブルがぜい弱なのか、ニュアンスのところでしかないのですけれども、私どもとしては、バルナブルはぜい弱という使い方を一般的にしていると理解しているところでございます。そういう意味で御理解を賜ればと思います。

○消費者庁消費者政策課澤野企画調整官 後半でございますけれども、31ページをお開きいただけるとありがたいのですが、(3)で「その他の持続可能な」うんぬんというところが20行目ぐらいに見出しで立っていようかと思いますけれども、その辺りの最初の段落です。しまいが「水産エコラベル」の話になっておるのですが、エシカル消費の問題意識として、持続可能性に配慮した商品の選択的な購入、活用というところをまず書かせていただいているところでございます。いただいた問題意識を踏まえまして、本文の更なる加筆としていくかも含めて対応できるかどうかは断言を控えますけれども、少なくとも工程表の調整について、いわゆる省エネ担当をしておられる環境省、あるいは電力関係の経産省辺りと御相談しながら対応してまいりたいと思います。また実務の部分の御審査の中で御指摘を賜れればありがたいと思います。今日の御指摘を踏まえて関係省庁と対応してまいりたいと思います。ありがとうございます。

○山本委員長 ありがとうございます。

そのほか、いかがでしょうか。

片山委員長代理、お願いします。

○片山委員長代理 ありがとうございました。

私から1点、11ページのところで、消費者と事業者の協働によって消費者が生き生きと暮らせる、社会に影響を与えていくという観点で整理していただいたのは大変ありがたいと思っています。ただ、ずっと読み込んでいくと、消費者は消費者でこういう役割を果たす、事業者は事業者で消費者の声を取り入れて取り組んでいくというように、連携とは書かれているのだけれども、どちらもが頑張りましょうというニュアンスがまだ強いかという気がしています。

本当の意味での協働・連携というのは、特に食品ロスの問題はそうですけれども、食品ロスを削減するためには、どうして食品ロスが起こるのか、その原因となる社会の仕組みみたいなものをきちんと原因究明をして、それを事業者と消費者が正に原因を共有して、そこで話し合って、では、このような食品ロス削減の行動をお互いにとりましょうという流れで取り組んでいくことが、本当の意味の協働だと思うのです。ここの本文にそこまでのことが入らないとすれば、少なくとも工程表の中では特に食品ロスの問題はまだ原因もはっきりしていないというか、やれることからやりましょうみたいな対応に事業者、消費者どちらもがなっていると思うので、本当の意味での事業者と消費者の協働を、食品ロス問題を一つのテーマにして是非取り上げていければと思います。少しでもそういうニュアンスが入るような形にしておいていただければ有り難いと思います。希望です。

○消費者庁内藤消費者政策課長 11ページは目指すべき社会ということで、余り強くは書いていないのですけれども、それ以降、基本的な方向のところで協働の話はできるだけ書いているつもりではございます。また後ほど御参照いただければと思います。

食ロスの部分につきましては、御存じのとおり、法律が10月1日に施行されたばかりでありまして、現在、政府部内で食ロスの対策のための基本的な方針を策定中でございます。恐らくこちらも消費者基本計画と同じタイミングで策定をし、それに基づいて各省庁で取組がなされていくと思っておりますけれども、そちらでは正に協働といったことを理念としてしっかりやっていきましょうということになってございます。その辺りのところはまた策定の前後において御説明の機会があれば、担当から御説明をさせていただきたいと思います。

○山本委員長 木村委員、お願いします。

○木村委員 ありがとうございます。

先ほど御説明されたのですけれども、私も5ページの「消費者のぜい弱化」というところは違和感がありまして、ここは世界の情勢がそうなのかもしれないのですけれども、いかがなものかと感じているところです。

もう一点、何カ所か出てくるのですけれども、7ページの一番下の行に「一般的・平均的消費者」があるのですが、これはどういったものをイメージすれば良いのかが具体的に分からないので、そこをお聞かせいただければと思います。

18ページの「情報」のところで「ICTの消費者行政の現場への導入を促進する」ということで、いろいろなシステムを導入するということなのですけれども、こういったことも含めて、ICTやAIの活用などでは留意していただきたいと思うのが、その上のところでPIO-NETの一元化という問題があるのですが、これは確かいろいろなフォーマットが違うとか、なかなか一元化できない状況があると聞いています。そういったことを踏まえて、チャットボット、AIの活用などのときはデータベースとして一元化できるようなものできちんと導入するという方向性はお考えなのかというところをお伺いします。

○消費者庁消費者政策課澤野企画調整官 後段を先にお答えさせていただくと、基本的には18ページの9行目から24行目のくだりでございますけれども、まず消費者行政の根幹的な基盤であるところのPIO-NETについて、少なくとも今は2015というバージョンでやらせていただいてございますが、2020というバージョンに向けた改訂作業を本年度等も含めて予算を確保しながら取組を進めていこうという運びになってございます。

そういった中で、適切な刷新をしていく方向についての検討の対応状況についてまず書かせていただいて、おっしゃっていただいたように、消費者委員会の皆様方からも消費者安全専門調査会の場で、2年ほど前に解析等々を含めたより深掘りができる消費者施策の切り込みの観点から、事故情報データの関係の機関横断的な整合性、項目の整備といった御指摘をいただいているかと思います。そういった方向性について2段落目で書かせていただきまして、他の領域での状況も踏まえながら、データの連携、項目の整合性といったところで書かせていただいた上で、最後につきましては、そうしたデータの統合や活用とは少し切り離しながら、全体としてのICTの消費者行政の現場への導入という中でチャットボット等々について、ユースケースの想定イメージとして書かせていただいているという流れで整理をさせていただいているところであります。ひとまずは、2段落目、3段落目といった辺りが消費者安全専門調査会で御指摘いただいたようなところを敷衍しながら書かせていただいている方向性ということで、御理解いただければと考えております。

○消費者庁内藤消費者政策課長 1点目、2点目でございます。

1点目は先ほど申し上げたとおりでございます。

2点目「一般的・平均的な」という辺りですけれども、ここはワーディングの問題でありまして、その時点でぜい弱とは思われていない消費者というニュアンスで使ってございます。この辺りは、実は5次の消費者委員会の「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」で議論をされておりまして、その議論をある程度踏まえて書いているところでございます。恐縮ですが、その辺りも御参照いただきながら、私どもに対しても御指導いただければと思っています。この言葉が良い悪いということではなくて、そういった議論を踏まえて、とりあえずこういう言い方をしていると御理解いただければと思います。

○山本委員長 新川委員、お願いします。

○新川委員 弱いというところがいろいろ議論になっているので、私も気になっていますので、バルナブルをどう理解するかということですが、単に弱者というよりは、傷つきやすくなっているというのが本来の意味ではないかと思います。何で傷つきやすくなっているのか。それは、それぞれの個体の問題というよりはむしろ環境の変化あるいは関係性の変化の中でそうなっている。そういうところに着目をしなければ、この弱者という概念そのものがへんてこりんな使われ方になってしまうということがあろうかと思いますので、そこは少しお考えいただければと思っています。

そのこととの関係で2つ目に申し上げたかったのは、実は社会経済環境の変化のようなことを考えていったときに、もちろん私たちは高度に情報化をした豊かな消費社会に暮らしているように見えているわけでありますが、もう一方では、そうした消費生活ができなくなってしまっている人たち、買い物弱者が典型的にそうですけれども、もちろん災害時もそうですが、そうした消費者の権利をどう位置付けていったら良いのか。社会経済情勢の変化の中で、実は新しい消費者問題が生まれてきていること、ここにどう目を向けられるのか、あるいはそれは消費者問題ではない、消費者問題が関わるところは小さいと見るのか、ここが少し気になったのが2点目であります。

大きな3つ目としては、弱者ということに関連して、様々な問題、認知症の問題あるいは障害の問題など、丁寧に扱っていただいて、第5章のところでそれはそうだなと思ってはいるのですが、もう一方では、そうした生活の問題、消費問題を考えていったときに、そこはそうした個別の高齢だからとか、若年だからとか、障害だからということで発生するのではなくて、いわばシームレスに一人の人の生き方の中にそれが複合的に関わってきている側面があって、果たして言ってみれば症状縦割りで対処ということで十分なのだろうかということは少し気になっていたというのが3点目であります。

大きな4つ目として、協働ということを強調しておられて、これはとても良いなと思っているのですが、もう一方では、この協働の中身として消費者、事業者というのはよく出てくるのですけれども、行政はどこへ行ったのだろうというのがとても気になっているということだけ申し上げておきたいと思います。

あわせて、協働とも関わるのですが、5つ目に気になったのは、こうした消費者政策を考えていくときに、当然消費者問題の発端のところから考えましても、多くの市民活動あるいは様々な市民の団体が積極的に関わってこられてきた、その声が消費者行政や消費者保護を進めてきたというところがあります。こういう消費者団体、あるいはそう呼ばれるのが嫌な人たちもいるみたいですけれども、そうした様々な活動に関わってこられている方たちと消費者政策が一体どう向き合っていくのか。そこの姿勢が見えにくいというのがとても気に掛かっています。

もちろん仲間で一緒にやっていきますというのは、ここに読み取れるのですけれども、もう一方では、本当にそれぞれの立場をきちんと理解をして、それぞれが共通する目的、あるいはともに協力をしないといけないところ、そういうところを認め合いながら動いていく関係性、あるいはそういう協力関係を見通して考えていったほうが、これからの消費者政策としてはより良い成果を得られるのではないか。そのようなことを考えたものですから、この辺り、どういう向き合い方をしていくのかは気に掛かっていたところであります。

6つ目に、国の役割が今回特に法執行などでは確かにそうなのですけれども、全体としてはどうも消費者と事業者、場合によっては地方というところに関わっていっていて、もっと強く消費者庁の役割が正面に出てきて、例えば省庁間の調整の話であるとか、大きな役割がありますので、そうしたところをもっと強く出していかないと、逆に何となく国の消費者政策、あるいはそれを支えている消費者行政が埋没している印象になってしまうので、ここは何とかならぬかと思っています。

長くなって済みません。国の関係で7つ目に気になるのが、これからどうなるかはまだ分かりませんけれども、今回の工程表の中では少し触れていただいていますが、せっかくの徳島ですので、これをどう位置付けて活用していくのかは、全体的な方針、方向の中でもっと積極的に位置付けられても良いのかなと。これは印象というか、感想かもしれません。

最後にします。協働という話があったのですが、もちろん民間の協働も大事ですが、国と地方行政との協働ももうちょっと言っても良いのかと。単に事務再配分の問題ではなくて、あるいは交付金の話などではなくて、むしろこれからの消費者政策を考えていく上で、もっと緊密に連携して動いていかないといけないところ、例えば都道府県が調査権を行使される場合に、どちらかというとちゅうちょされるケースが多いわけでありますけれども、そうしたところでもっと縦横の連携をとっていくといったことがあると、そういうサポートがあると違ってくるのかななどと勝手に想像しています。この辺りはだんだん意見っぽくなりますので、この辺りでやめておきたいと思いますが、是非その辺りも御検討いただけるとありがたく存じます。

以上です。

○消費者庁内藤消費者政策課長 一部御意見ということで、回答も控えさせていただくところもあろうかと思いますが、可能な限りお答えを申し上げたいと思います。

バルナブルは正に傷つきやすくなっている、そういうニュアンスのことを日本語で「ぜい弱性」という言い方をしているというのが私どもの理解でございまして、重ねて恐縮ですが、御理解いただければと思っているところでございます。

協働の関係、行政の役割のところで幾つか御質問をいただいていると思っておりますけれども、なぜここで行政を外して事業者と消費者の協働の話をしているのかというのは、どうしてもこれまでの過去の消費者行政の成り立ちなどがございまして、要は情報なり交渉能力において格差がある消費者と事業者に鑑み、消費者行政あるいは消費者政策が推進されてきたということがございます。現状、個人間取引に代表されますように、そういう構造的格差ではなかなか一概に捉え切れないような消費者問題が発生してきておりまして、それにどう対応するのかを考えた場合に、従来の対立構造だけではなかなか解決し得ないという意味で、その対立の反対側としての協働を打ち出しているということでございます。

そこに行政が関わってくるのはもちろん大事ではあるのですけれども、あくまで私ども行政は主役ではありませんので、食ロスが代表例でございますが、プレーヤーとしての事業者、消費者のところでうまく共通の目標で同じ方向を向いてやってほしいという感じで、そういう問題意識を持ってこういった表現をしているということでございます。

○消費者庁消費者政策課澤野企画調整官 その他幾つか御指摘をいただいたところで、バルナブルの部分と関係性という御指摘をいただいたので、29ページをお開きいただければと思います。先ほどネットの依存の関係などでも御指摘をいただいた見出しのところなのですが、ここで「生きづらさ」を使わせていただいているのは、それこそギャンブル等依存症対策といった辺りで、いわゆる自己治療仮説が臨床現場などから示されている中で、これもまた「生きづらさ」とレッテルを貼るように見えてしまうのが良いのかという点にかなりちゅうちょしながら、ただ、消費者行政の担い手の方々、相談の現場の方々は臨床のプロではないので、そういった問題意識を持ってやっていただきたいという思いを込めて、そういう意味から、あえて、施策に対する認識・施策実施の背景もかなり詳しく形で整理し、見出しも立てています。

そういった中で、世界的な消費者行政の趨勢などとのバランスを見ながら、英語でバルナブルと言われている書き方をどうするのかは悩みながらも、私どもとしては今、こういった形でと。課長からも申し上げたように、前期の消費者委員会で、ルール形成のワーキング・グループで真摯に御議論いただいて、御提言をいただいていると理解しているので、ひとまずはそれによらせていただこうかという思いもあって、このワーディングを選ばせていただいているところでございます。

買い物弱者の関係ですが、いわゆる消費者行政といった中で、事業者と消費者の問題の財・サービスの利用や契約に絡む部分の前提となる、例えばそういったところにアクセスするための手段といった部分について、どこまで入れられるかはかなり考えてみたところではあるのですけれども、買い物弱者の方の移動支援などそのものについては、なかなか消費者問題として射程を組みづらいところがあって、実際はなかなか言い切れていない状況にあります。自動運転につきましては、損害保険、いわゆる自動車保険の商品構造の問題ですとか、あるいは消費者安全法としての安全性の部分を軸になる部分として入れている形になっているので込めることができている状態でありまして、外延として、工程表に含める形で、消費者行政としての枠の中に収めていくには課題が大きいかという問題意識を私どもとしては現時点で持っています。

認知症、障害者といった、いわゆる縦割りで良いのかという御指摘でありますけれども、ちょうどこの辺りの施策、課題については、いろいろなところで新しい大綱が作られたりする中で、社会資源総ぐるみで総力戦でやっていく、多機関・多職種の連携を確保していくというところが共通した理念になっているかと思っておりますので、そうした個別の取組を消費者行政としても積極的に御協力をしながら、他省庁ともきちんと連携をしてやっていくと。ただ、消費者行政が音頭を取るのが専門性のない中で良いのかどうかというところはございますので、消費生活相談で相談員の方々が現場で御尽力いただいているところのネットワーク力を最大限御提供しながら、御理解もいただきながらという中で、これらの取組をやっていければと考えているところでございます。

それから、国の役割というところで、少し消費者と事業者の部分でというお話があったのですが、20ページをお開きいただければと思います。埋没しはしまいかというお話をいただいたかと思うのですが、13行目ぐらいから、私どもも例えば引越しの関係でトラック協会さんの取組にオブザーバーで参加させていただいたり、いろいろさせていただいていて、基準作り等の中で、消費者団体の皆様や私どもも参画をさせていただきながら、利用者目線を埋め込んでいくことについても個別には対応しているところでございます。そうしたものの働き掛け、逆に、そうしたところで私どもの知見の活用をしていただく、すなわち、事業者の方々なり各省の方々に私どもを使っていただく形も含めて、新しい司令塔という考え方で整理していくこともあり得るかと思っております。こういった辺りを整理していければと思います。

一部でございますが、以上でございます。

○山本委員長 ありがとうございます。

その他、いかがでしょうか。

お願いします。

○生駒委員 一言だけなのですけれども、私も消費者庁の「倫理的消費」調査研究会に2年間参加しておりました立場上、エシカル消費の普及啓発活動というのは消費者庁でされてきておりますが、例えばこの表の中には、全くエシカル消費という言葉が出てきていないですね。エシカルという言葉は本文の中にはたくさん溶け込んでいますが、例えば「政策の基本方針」の(2)や(3)のところに、教育の中にもエシカル消費の教育、普及啓発活動も盛り込めるかもしれませんし、第5章の2.の食品ロスの削減ですとか、こういったどこかにエシカル消費という言葉が社会に根づくことも大切かと思っています。希望でもあるのですけれども、せっかくの消費者庁の大切な施策ですので、こういった新しい方針の中に1項目ぐらい立てて、しっかりとうたっていければと思います。

○消費者庁消費者政策課澤野企画調整官 消費者庁でちょうどエシカル消費の理念を御議論させていただいたのが数年前で、余り予算をかけるのが難しい状態ではある中で、地域でイベントなどをやらせていただいています。

○生駒委員 徳島でもやっていますね。

○消費者庁消費者政策課澤野企画調整官 草の根で進めさせていただいていて、それこそこの前もエシカル甲子園という取組をやらせていただいたりしているので、そういった個別の理解を求めていく取組を、今後次期の計画期間を踏まえて更に深めていくことが重要かと思います。1枚ぺらの中の見出しベースで書いてしまっているところをもう少し工夫できないかなども含めて、また御指摘を踏まえて考えさせていただければと思います。ありがとうございます。

○山本委員長 よろしいでしょうか。

非常に多岐にわたる御意見をいただいておりまして、それを全部私が繰り返すこともできませんので、全体的なことを申し上げ、私が個人的に感じるところも若干申し上げたいと思います。

全体といたしましては、今回の基本計画は、消費者委員会で発出をしてきた意見等を非常に参照していただいて作成されている印象を受けます。従来の基本計画に比べてもその点は非常にはっきりしていまして、この点は評価をしたいと思います。

全体の構成も、従来の基本計画に比べると非常に分かりやすくなっている感じを受けます。とりわけ、第4章で「政策推進のための行政基盤の整備」という項目を立てていただいた点は、私は非常に評価をしたいと考えております。ここが独立の章とされたことによって、問題点、問題意識が非常に明確になっていると評価をしたいと考えております。

個別の点については、いろいろな御意見がございました。表現あるいは力点の置き方に関する御意見もあれば、更に内容に関わる御意見もあったかと思います。「ぜい弱化」という表現に関しましては、大石委員から、せめて「ぜい弱性」ぐらいでどうだろうかという御意見がございました。この点についてはもう少し御検討いただければと思います。

エシカル消費の問題は、最後に項目として立てたらどうかという御意見がございまして、この点についても全体の構成との関わりがあるかと思いますので、更に検討していただければと思います。

デジタル化への対応も大事なのですけれども、他方で、依然として従来からいろいろな問題があって、法執行の点についても更に強調していただきたいという御議論がありました。これは項目の中に法執行が挙がっていますので、現在のバージョンでもその点は示されているかと思います。

それから、いわゆる悪質な事業者に対する対応をどうしていくかということが従来からある問題として、依然としてありますので、その辺りの対応への目配りも必要ではないかという御意見がございました。この点は今回の基本計画の中にもかなり盛り込まれている内容ではあるかと思いますけれども、委員の方からそのような点に注意をしてほしいという意見がございましたので、繰り返しておきたいと思います。

連携ないし協働に関しましては、確かに今回の基本計画の中にもいろいろ書かれているところかと思います。例えば15ページの29行目辺りにも事業者、消費者との間のWIN-WIN関係という中に、意見交換を行ってということが書かれています。ただ、今回この点について意見が出ましたのは、もう一歩突っ込んで書いてもらえないだろうかと。事業者が持っているけれども、消費者の側で十分認識をしていない情報が多々ある。そういったものを更に消費者に対しても示していく、そういう場を広げていけないだろうかという御意見であったのではないかと思います。意見交換という中に含まれているかとも思いますけれども、もう少しその点、現在の問題を強調した表現ができないだろうかということかと思います。

さらに、それぞれで取り組むというだけでなく、目標等の共有をしていくための場を広げられないかといった意見もあったかと思いますので、あるいは表現の問題かもしれませんけれども、その点は基本計画の中で更に強調ができれば良いのではないかと思います。

連携ということで、省庁間の連携、行政部門間の連携という御意見もございました。あるいは地方との関係で申しますと、これは私の個人的な感じになってしまうのですけれども、随分国と地方ないしは都道府県と市町村との間の関係についての考え方が変わってきているところがあるかと思います。もう既にこの中に市町村に対する都道府県の役割ということが書き込まれていますが、このことは少し前までは実は余り強調されなかったと言いますか、あるいは市町村で強調することをやや避けていた面があるかと思うのですが、最近になりまして、随分このことが正面から言われるようになっています。

国と地方との関係に関しましても、そういったことが若干ございまして、例えば現在別の審議会の場で議論していますけれども、情報基盤の整備に関しては、国がむしろもう少し正面から出ていくべきではないかと。それは自治事務と法定受託事務の区別の話とは必ずしも対応関係にないといった議論が行われるようになっています。基本計画案の中にある自治事務あるいは自治体の自主性、自立性ということは、それ自体はもちろんそのとおりであって重要ではあるのですが、他面においてそのような議論が進んでいることをもう少し意識して書かれると良いのではないかという感じがいたしました。これは私の個人的な感想になります。

全体としては、現状においてどういう取組が行われていて、そこにどういう問題があって、それについて分析をした上で中長期的にどう考えていくかということが書かれているところもあるかと思いますが、若干それが弱いと思われるところもあります。例えば22ページの消費者事故情報の収集あるいは事故の発生・拡大防止、ここは書かれていることが一般的な感じがいたしまして、もう少し現状にどのような問題があって、それを中長期的にどのようにしていったら良いか、もう一歩突っ込んで書けると良いのではないかという感じを持ちました。あるいは、片山委員長代理がいろいろお考えのあるところではないかと思います。

時間がございませんので、これぐらいにしておきますけれども、全体として、私は今回の基本計画は従来のものと比べても非常によくできているのではないか、消費者委員会の意見等も非常に反映をしていただいているのではないかと評価をしております。個々の点について、意見が出ましたし、更にこれでパブコメに出されるということですので、ブラッシュアップをしていただければと思います。

消費者委員会におきましても引き続き検討を行い、意見の発出に向けて取り組んでいければと思います。

消費者庁におかれましては、非常にお忙しいところ、時間をかなり超過してしまいまして、申し訳ございませんでした。審議に御協力いただき、ありがとうございました。

今後ともいろいろと御協力をいただければと思います。よろしくお願いをいたします。


≪5.閉会≫

○山本委員長 本日の議題は以上になります。

最後に事務局より今後の予定について説明をお願いいたします。

○金子参事官 次回の本会議につきましては、年明け1月9日木曜日10時30分からを予定しています。詳細につきましては、委員会ホームページを御参照いただければと思います。

なお、この後、委員間打合せを行いますので、委員の皆様におかれましては、委員室にお集まりいただければと思います。

以上です。

○山本委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)