第102回 消費者委員会 議事録

日時

2012年10月16日(火)16:00~18:11

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
 河上委員長、山口委員長代理、稲継委員、小幡委員、川戸委員、
 田島委員、夏目委員、細川委員、村井委員、吉田委員
【説明者】
渋谷区保健所  倉橋俊至所長
主婦連合会  佐野真理子事務局長
特定非営利活動法人消費者機構日本  磯辺浩一専務理事
公益社団法人日本広告審査機構  林 功審査部長
消費者庁  食品表示課担当者
表示対策課担当者
【事務局】
 原事務局長、小田審議官

議事次第

1.開会
2.健康食品について
○説明者: 渋谷区保健所 倉橋俊至所長
主婦連合会 佐野真理子事務局長
特定非営利活動法人消費者機構日本 磯辺浩一専務理事
公益社団法人日本広告審査機構 林功審査部長
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:8KB)
【資料1】 渋谷区保健所提出資料(PDF形式:110KB)
【資料2】 主婦連合会提出資料 【資料3】 特定非営利活動法人消費者機構日本提出資料 【資料4】 公益社団法人日本広告審査機構提出資料 【資料5】 食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)関連資料 【資料6】 消費者契約法に関する調査作業チーム関連資料 【参考資料】 委員間打合せ概要(PDF形式:84KB)

≪1.開会≫

○河上委員長 それでは、時間になりましたので、始めさせていただきます。
本日は、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会(第102回)」会合を開催いたします。
配付資料の確認について、事務局からお願いいたします。

○原事務局長 配付資料ですけれども、一覧が議事次第の下の段に書いてあります。
資料1は、この後行います健康食品についてのヒアリングということで、渋谷区の保健所から御提出をいただいた資料になります。
資料2は、主婦連合会から御提出いただいた資料で、枝番がついていまして、資料2-1、2-2となっています。
まことに申しわけないのですが、傍聴席に配ったものは2ページ抜けた形のものをお配りしているようなので、早速、間に合うように全ページコピーしたもので配付させていただきたいと思います。
資料3は、NPO法人消費者機構日本から御提出していただいた資料です。
資料4は、公益社団法人日本広告審査機構から御提出いただいた資料になります。
資料5は、健康食品のヒアリングに関連して、参考になる形のもので、これまで出されたガイドライン、関係する参照条文などを、資料5-1、5-2、5-3でおつけしております。
資料6は、「消費者契約法に関する調査作業チーム」について、後ほど御報告したいと思っておりまして、その関連の資料をおつけしております。
参考資料といたしまして、この間、10月5日に委員間打合せを行っておりますので、その概要をおつけしております。
不足がございましたら、審議の途中でお申し出いただければと思います。よろしくお願いいたします。

≪2.健康食品について≫

○河上委員長 それでは、議題に入ります。
本日の議題は、「健康食品について」であります。渋谷区保健所、主婦連合会、消費者機構日本、日本広告審査機構、消費者庁におかれましては、お忙しいところを御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
健康食品の表示の在り方に関しましては、第1次消費者委員会の当時から、委員会としても鋭意検討を重ねてきているところであります。第1次消費者委員会では、昨年8月に「健康食品の表示の在り方に関する中間整理」を取りまとめ、第2次消費者委員会ではさらに消費者の利用実態アンケートを実施し、その結果を踏まえて、本年6月に「健康食品の表示等の在り方に関する考え方」を取りまとめたところであります。
今回から数回の委員会で、健康食品の表示の在り方について、論点ごとに、有識者、関係団体等との意見交換を行いまして、その議論を踏まえ、可能な限り速やかに委員会としての見解を取りまとめたいと考えております。
論点としては大きく分けて、第1に、表示・広告規制に係る法執行力に関するもの。第2に、安全性に関する規制、制度についてどう考えるか。第3に、機能性の表示と言われるものについてどう考えるかといった点を考えておりますが、本日は第1回目として、表示・広告規制に係る法執行力について中心に議論を行いたいと考えております。本日は、渋谷区保健所、JARO、主婦連合会、消費者機構日本から御説明をいただいて、議論を行いたいと思います。
それでは、渋谷区保健所、JARO、主婦連合会、消費者機構日本から順次説明をいただきまして、その後で意見交換をお願いしたいと思います。
なお、恐縮ですけれども、各団体、説明は10分から15分程度でお願いできればと思います。
では、渋谷区保健所からお願いいたします。

○渋谷区保健所倉橋所長 渋谷区保健所長、倉橋でございます。
資料1に簡単に内容を用意させていただきました。私には、現場における監視の担い手、特に自治体における監視体制、健康増進法に基づく表示・広告規制に関するガイドラインの内容について、改善点等があればということでお話がございましたので、資料のようなお話をさせていただくということで用意させていただきました。
まず、「保健所における健康食品等の食品監視」という題でございますが、食品の監視のの現場は保健所でございます。健康食品も食品の一種でございますので、まず、大きく食品という形で食品衛生法がございます。特に、健康のためにということで健康増進法がございまして、そちらで定めました「いわゆる健康食品」というものの取決めが健康増進法にあるわけでございます。
法的根拠、1番目にその2つを書かせていただきました。右側は食品一般に関するもの、左側は健康食品に関するものということでごらんいただければと思います。
実際の現場の監視体制といたしましては、食品は、食品衛生監視員という名称で、その下に資格とございますが、衛生監視員。これは、自治体によってその名称が違う場合がございますが、括弧に、略して、歯科医師、薬剤師、獣医師、畜産、水産、農芸化学という意味の頭文字だけ書かせていただきましたが、所定の資格あるいは大学の単位等を習得いたしまして、その証明書で衛生監視員になる資格ができるというものでございます。
プラス(+)と書いてございますのは、栄養士につきましても、実務経験2年がプラスアルファされまして食品衛生監視員になることができる、そういう意味でございます。
左側は、それに対しまして、健康増進法の健康食品を担当している部門でございます。栄養指導員という名称で、栄養指導は、一般には栄養相談をやるときの指導員でございまして、取締りをやるときには必ずしも栄養指導員という名称でなくても構わないのですけれども、一般に呼ばれる係の名称としては栄養指導員でございます。資格は、栄養士あるいは管理栄養士です。行政のこのような業務に携わる者は、栄養士だけではなくて、さらに管理栄養士の資格を持っている者がほとんどでございます。
業務内容でございますが、健康増進法の目的は、健康づくり、健康増進でございます。それに対して食品は、食の安全・安心でございます。このことからわかるように、健康づくりというのは、積極的にさらに健康になろうとするものでございまして、安全は、前提といいますか、当たり前といいますか、安全が保障された上で積極的健康増進、栄養成分表示等を正確に行っていこうというものでございます。
右側の食の安全・安心は、衛生基準、これは最低基準でございますけれども、遵守させること、立ち入り検査等の権限もございます。実は、大きな目的は食中毒の防止でございます。そのために特別に立入検査をし、収去、食品を持って帰って検査をする権限もございます。そこで食中毒等が発生した場合には、営業停止等の強制力を伴う行政措置をする権限を付与されているところでございます。
それに対しまして健康食品は、収去、検査の取決めはございますけれども、営業停止などの強制力はなく、これは、あくまでも相談業務の中でより健康になっていただくという形のものでございます。したがいまして、指導とか監督の権限としましても、健康食品に関しては、一般の食品に関しまして、法的な根拠も強くなく、行政指導という形で、「そうしてください」ということになります。平たく言えば、そういう指導が主だということでございます。
その次の中段をごらんいただきますと、国のレベルでガイドラインが定められています。資料にもございますのでごらんいただきますと、考え方の大きなものは示されておりまして、これに基づいて表示・広告規制等が行われているものでございます。
しかし、それだけでは、細かい実際の広告規制等を行うには不足でございます。例えば、このような具体的な表現がよろしいのか。含まない旨を、「何とかゼロ」とか、「ノン何とか」とか表示する、そういうことはいいのか、悪いのか。具体的なものまで表示しませんと、実際の表示規制には立ち向かえないというか、その業務はできないわけでございますので、そのような具体例を提示しています。そのため都道府県レベルで、パンフレット等、例えば(提示して)これは東京都のものでございますけれども、各都道府県レベルで標準的なものが示されているところでございます。
保健所がそれを参考に対応するわけですけれども、実際には、下のコメ印に書いてございますが、多種多様な表示の申請・相談例がありまして、少数の例示ではなかなか対応できないのが現状でございます。
そこで資料に戻りまして、「民間」と書いてございますが、実は民間が解説書を出しています。恐らく消費者庁とか、その辺の関係の方々も関与されているかと思いますけれども、実際の詳しい例、Q&A、実例をたくさん書かれている書物が、二、三、出ておりまして、それを参考に実務を実施しているというのが現状でございます。
ただ、これは、あくまでもこうなのではないかという民間の示された目安ですので、法律で確固としてそこまでよい悪いというものが示されているものではないところが、若干弱いところはありますけれども、それである程度の統一性が保たれている。地域的な一体性、表示の基準の統一が、ある程度保たれているのが現状でございます。
コメ印の2つ目、大手の企業と書きましたけれども、現実は、本社の所在地等の1か所で申請をすれば販売・流通は可能になります。1か所、東京のど真ん中であろうと、地方の小都市の片田舎であろうと、そこで申請・相談し、オーケーということになれば、これは全国販売されることになります。
課題でございますが、まず、食品監視員と栄養指導員の協力体制。これは実は、最低限のものと、より健康になるというプラスアルファの部分でございますけれども、この二本立てで健康食品等の監視業務を実施しているわけです。しかし、業務内容から考えて、相互に連携協力して実施すべきでございます。資格というのは、上の3行目で御説明したとおり、食品の検査なり指導をするには、食品の化学的な知識、取決めの十分な理解が必要になるので、理科系の科目が多くなりますけれども、栄養の知識を含めました食品化学の知識が必要になります。現行の資格要件としては、そのようなものを持った人間を任命しているわけでございますけれども、内容から考えまして、場合によっては資格を共通化するなども考慮しまして、より協力体制をとって実施すべきであろうと考えているところが1点目の問題点でございます。
2点目の問題点といたしましては、表示に関して御説明しましたように、多種多様な申請がありまして、ある程度の統一はされていますけれども、地域によりましてレベルに違いがございます。多少異なるのが現状でございますので、指導要領のようなレベルの具体的な指導基準を、例えば国の主導で定めていただくことによりまして、全国的に指導する内容やレベルを統一することができる。これはすぐに、どこでも通ったものが全国販売されますので、このようなことが必要ではないかと考えているところでございます。
以上、現状と課題、2つを御説明させていただきました。私からは以上でございます。

○河上委員長 それでは、主婦連合会、お願いいたします。

○主婦連合会佐野事務局長 主婦連合会の佐野です。
資料としては、2-12-22-3になります。今もお話がありましたように、健康食品は食品一般として扱われていることを忘れないように、と思っております。その中で一定の保健機能を法的に認められたものが、特保、栄養機能食品となっています。
先ほど、委員長からも御説明がありましたように、昨年の8月に、中間整理の形で消費者委員会として論点や課題を提起しています。その中で、医薬品との併用に関する警告などの表示の在り方、執行の課題、錠剤・カプセル等さまざまな形の健康食品についての届出制度の可否などについても、課題を提起しています。国民生活センターによりますと、食品全体の苦情相談のうち、約半分が健康食品関連の相談であることも踏まえ、消費者委員会としては、これまでの成果を積み上げる形で、是非、消費者の権利の確立と消費者被害防止の観点から検討に取り組んでいただきたいと思います。
質問を幾つかいただいていますが、その前に3点ほど、意見を申し上げたいと思います。
最初に、(1)としておりますが、いわゆる健康食品の規制の在り方については、消費者委員会の場で何度も専門家の方々からヒアリングを実施していて、その意見が資料として蓄積されていると思いますので、これらの資料を是非活用し、きちんと整理して早急に建議としてまとめていただきたいと思います。
その際、(2)になりますが、健康食品は食品である以上、予定される「食品表示一元化法」と密接に関係することを踏まえ、現在、消費者庁が準備しているのがたった3つの法律、食品衛生法、JAS法、健康増進法だけなので、いわゆる健康食品の監視執行体制の強化は不十分であること。執行体制を整備するには、やはり薬事法、景表法など、関連法律の見直しに踏み込むべきであると思いますので、その辺りも是非検討していただきたいと思います。
さらに3番目は、消費者委員会が6月に発表しました、「健康食品の表示等の在り方に関する考え方」について、主婦連合会としては再考をお願いいたしました。幾つかの意見・質問を添えた意見書を提出し、今日、参考資料2-2で配付していただきました。主婦連合会としましては、いろいろな意見や要望書を消費者委員会に提出しておりますが、今回の健康食品の表示に関しては、意見書を後で読んでいただけばわかると思いますが、消費者委員会が消費者目線を掲げながら、実際は混乱を生じているのではないか。消費者目線についてどう位置づけているのか。消費者委員会の姿勢が問われるようなことを書いてあるにもかかわらず、一向にリアクションがなかったというのは非常に残念でなりません。消費者委員会の熱意も、国民、消費者にはこの形では伝わりませんので、是非、消費者の意見、要望に応える制度の構築を求めたいと思います。
前書きが長くなりましたが、消費者委員会から幾つかの質問をいただいているので、それにお答えしていきたいと思います。
最初に、健康増進法等についてということで、現状を書きましたが、特に2ページの最後のポツ、健康増進法に基づく4半期ごとの調査・発表について、意見を申し上げたいと思います。
これは資料2-3ごらんいただきたいと思います。最後のページになります。インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する要請について、平成24年1月から3月ということで、8月10日に消費者庁がニュースリリースとして公表されています。これは、違反するおそれのある文言を含む表示を調査して、表示の適正化を求めるメールを送信して協力を要請しているものです。
3を見ますと、監視期間の平成23年4~6月、7~9月は、改善要請件数と改善件数が同じ。ということは、すべての事業者が要請に応じてきちんと改善したということですが、10~12月を見ますと、5事業者、5商品の表示が改善されていないことがわかります。これは12月までの調査で、8月10日に発表されているということは、この間、そして今も違反の表示をつけたままの商品が販売されているということではないか。つまり、消費者庁は消費者がだまされているのを知っているにもかかわらず、何もしないということなのだろうかということで、非常に疑問を感じております。
ここで言いたいのは、一生懸命、制度や法律を改善しても、運用がきちんとできていないと何もならないということです。是非、その辺りは消費者委員会が監視をしていただきたいと思います。
3ページのマル1、ここから、いただいた質問にお答えしたいと思います。マル1が「勧告・命令権の自治体への付与」。これは付与すべきであると思います。ただ、その場合、自治体同士の連携、執行に当たっての情報共有化の仕組み、システムをきちんとすることが必要だと考えています。
マル2は、「景品表示法4条2項に類する規定の要否」。これは、食品表示一元化法にきちんと事業者の挙証義務、つまり、事業者に立証する義務を課すことを明記する必要があると思います。ガイドラインについては、今日、資料が配布されていますけれども、事例が古いものとか改善すべき点はありますが、基本的なところは書かれているので、私は、これを格上げして法律にきちんと明記するべきではないかと思っています。中身の改善点については、後ほど申し上げたいと思います。
マル3の「現場における監視の担い手」。これは、活性化基金を活用しながら地方消費者行政の充実・強化をし、行政措置(法執行)のしやすい環境を整備する。つまり、横のつながりをきちんと持って、法改正、中央の支援、各機関の情報共有の在り方を構築するべきではないかと思います。
マル4、「罰則の在り方」です。健康増進法は、景表法と同じように違反について故意・過失を問わない。つまり、違反が故意・過失なのかが問題ではなく、違反自体にそれぞれの措置命令をするわけです。しかし、執行力、実行力が非常に弱い。違反抑制のためにも直罰は必要だと考えています。したがって、食品表示一元化法には直罰制度をきちんと導入すべきであると思っています。ただ、直罰の場合は、別途、ほかの法律との整合性を図ったりしなければならないと考えています。
マル5、「消費者団体による差止請求権の導入」。これは、現在の差止請求訴訟制度の拡大を図るべきだと考えています。当然、食品表示一元化法も対象にすべきであります。適格消費者団体制度の法対象拡大も必要だと思いますが、それ以上に、もっと幅広い消費者団体、市民団体への差止請求権付与の拡大が必要であると考えています。現在、10の適格消費者団体がありますが、食品表示に関しては、もっと幅広い団体を考えてもいいのではないかと思います。
(2)の景品表示法に入ります。これは、マル6の自治体への措置命令権及び4条2項。先ほどもありましたけれども、事業者に立証する義務を課すこと、それを早急に自治体に付与すべきであると考えています。
(3)の健康増進法に基づく表示・広告規制に関するガイドラインは、平成15年に制定されておりまして、既に9年たっているので、中身は、例もいろいろ書かれていますが、古いのではないかというところがかなりあります。
例えば、この中で私が感じたところを申し上げますと、ガイドラインの留意事項を見ますと、「表現の自由は最大限尊重されるべきである」と書かれていまして、まさにそのとおりだと思います。「が」とあって、その後いろいろ書かれているのですが、最後のところに、「営利的言論としての広告等に該当するものとして、規制対象となる場合があり得る」と書かれています。ここで体験談について申し上げたいと思っているのですが、体験談というのは、裏付けとしての学術的な根拠を示さずに、感謝の手紙とか、タレントや著名人がいろいろ物を申す広告があります。ここの類似事項の中を見ますと、誇大表示、偽装表示になるには、体験談そのものが存在しないとか、推薦者が存在しないということになっていますけれども、タレント等の著名人の推薦というのは営業活動であって、営利的言論としての広告に該当し、推薦者になるのが適当かということを疑問に思います。体験談や推薦者については、もっと検討を深めるべきだと思っています。
ガイドラインの中に、「著しく」とか、「明らか」とか、「特別な事情がある場合」など、不明瞭な文言がありますが、それを削除して、もっとわかりやすく、現状に即したものにするべきではないかと思っています。
(4)の「その他」で、また幾つか質問をいただいています。法執行の強化のための自治体間の広域連携、自治体間の関係部署間の連携というのは、今、特商法執行ネット、この4月から景品表示法執行ネットワークというのがスタートしていますが、これは横のつながりがよく見えないので、やはり横のつながりをきちんとして、表示に関する執行ネットのような形でつなげるべきではないかと思っています。関東圏では、5都県が共同して広告表示適正化推進協議会というものを設置していると聞いております。
最後、その他検討すべき事項として、3つほど挙げたいと思います。まず、食品表示一元化法としての執行の統合性・一元化を図るべきであると思います。表示を見ると、薬事法、食品衛生法、JAS法、健康増進法、景品表示法、特商法など、本当にたくさんの法律がかかわっているわけですから、その執行については、きちんと一元化して強化するべきだと思います。
消費者庁には「事故調」ができましたが、事故調に収集される事故例には食品全般も含まれると思います。この点については、すき間を設けないよう消費者委員会がきちんと監視をするべきではないか、監視を強化していただきたいと思います。
法的整備による監視では、その出発点は、いわゆる健康食品業界の実態把握にあると思います。現在、一体誰がどこで何をつくっているのかという、実態が全くわかっていません。海外には、錠剤・カプセル・粉末・濃縮型、また、特定の健康食品あるいは成分について、製造事業者や工場に関する届出制を導入して監視している国もあります。消費者委員会は、適正な監視へ向け、届出制度あるいは許可制度などの導入についても、是非検討していただきたいと思います。
以上です。

○河上委員長 それでは、JAROのほうからお願いします。

○公益社団法人日本広告審査機構林審査部長 JAROの林でございます。
お手元の資料4-1を使って御説明させていただきます。私どもは、広告表示の苦情を受けて、それに関して問題があれば広告主に適正化をお願いするということを中心にやっております。そういった実際の問題広告の審議の場で実感している辺りを、御報告申し上げたいと思います。
最初にパワポの1ページ目でございますけれども、JAROが2年前に当委員会に一度出させていただいておりますが、JAROに寄せられる健康食品の苦情の件数の推移です。このところ、広告に関する苦情が減っているという傾向がございますけれども、21年度で言いますと、健康食品が4.2%、業種別で5番目でございました。22年度は3.2%(第8位)、23年度が3.8%(第5位)ということで、健康食品に関する苦情は、小売、通信、一般食品が上位にまいりますが、それに次いで結構多いということが言えようかと思います。
問題広告については、広告主に見解というのを出しますが、特に法律に抵触すると思われるものは警告という形で出しておりまして、その件数は、21年度は、警告19件のうち11件が健康食品でございました。折込広告が多かったという特徴がございます。22年度は18件のうち半分、9件でございます。23年度になりますと、19件中4件と減っておりますが、テレビ、ホームページなど媒体が多岐にわたってきています。かつては、折込で問題の広告がJAROでは多かったわけでございますけれども、最近はBS・CSなどでも若干問題があるのではないかと思うようなものがございます。いわゆる番組仕立ての情報番組というか、商品を売るものであります。それから、インターネット等でも展開されているという状況がございます。
実際に私どもが、問題がある広告で健康食品に関してどういう法律を適用するかと申しますと、基本的には薬事法の68条を使っているものが多くなっています。ただ、併せて、合理的根拠がないと思われるものは景表法。私どもは4条2項は使えませんので、合理的根拠がなければ、景表法に触れるおそれありという指摘をするにとどまっております。さらに、通信販売の体裁のものがネットや折込広告等にございますので、そういったものについては特商法を重複して適用することもございます。
実際に健増法を適用したJAROの事案を調べましたところ、平成19年に1件だけございました。特保の許可範囲を超えた表示があったということで、薬事法と合わせて指摘をしたケースがございますが、健増法だけで指摘したものはございませんでした。
その次のチャートは、今、いろいろお話が出たので、皆様には釈迦に説法かと思いますが、ときどきいろいろなところでお話をするときに使っているものであります。いわゆる健康食品というのが、特保や栄養機能食品が一定のルールがあるのに対して、その周辺に、明らか食品というか、確実に食品だと見なすものがあって、その間にあるのがいわゆる健康食品と理解しております。この辺についての範疇というのは、定義ももちろんでございますが、はっきりしていないので、特に明らか食品の定義も少しずつ解釈が変わってきているように感じております。そういったところで、健康食品の範囲がなかなか特定できていないということがあるのではないかと思います。
次のページにまいりまして、健康食品の広告の規制というか、行政指導等、私どもが拝見している中での特徴的なものを幾つか御紹介いたします。まず、消費者庁関係では、食品表示課さんが「特保の表示に関するQ&A」を22年6月につくられました。いわゆる健増法による広告・表示を取り締まることを、ある程度明確にしたのではないかというふうに受け取ったものでございます。
しかし、同時にできればつくりたいとおっしゃっていた健康食品全体のガイドラインというのは、結局できなかったので、その辺が今日につながっていると思います。
ただ、インターネットでの監視はずっと続けておられます。ただ、ここでは件数とNGワードが公表されているだけなので、事業者名の公表など、いわゆる勧告の発令等は行われていません。一般事業者等に、健増法の存在を周知し、これを守らなければいけないという意識が、なかなか浸透していない部分もあるのではないかと感じております。
一方、景表法、表示対策課のほうでは、4条2項を使われた適用を健康食品、化粧品等で行われております。私どもは調査検証の機能はありませんので、そういった意味では、4条2項を使った景表法による健康食品の取締りも一つ意義があるのではないかと思っております。
特商法も、通信販売であれば、12条の「誇大広告等の禁止」がございます。そういった意味では特商法も関係してくる。今、いろいろお話がありましたが、景表法、特商法などは、各都道府県でも指示等の行政指導を出しておられることも承知しております。
一方、厚生労働省所管の薬事法の適用においては、「個人の感想です」とか、「推奨広告」等についても、政治家の先生等も問題視されて、そういった指導を強めたいという動きはあるやに聞いておりますが、特に大きく薬事法の行政が変わっているという印象は持っておりません。都道府県等は、「未承認の医薬品等の広告の禁止(68条)」で現実に多々指導をされています。
一方、最近目立つのは、警視庁等の摘発というのもございます。これは当然、被害が大きいものが対象になると思いますが、最近はドロップシッピング事業者とか、Eコマース運営事業者のビジネスが活発で、健康食品にもそういった形での販売が増えているので、取り締まりもそういったところへの関心が高く、問題視しているのではないかというふうに感じております。ただ、そのときに適用されるのは、基本的に薬事法違反ということでやっておられるように思います。
以上、健康食品に関する規制の現状を申し上げましたが、私どもを含めて、事業者が感じていることを申し上げると、いわゆる長寿社会の中で、健康食品の関心が高く、成長市場ですし、各企業もかなり研究開発を重ねて、積極的に広告したいというニーズは高いと思います。ただ、広告表示を規制する法律が幾つかございます。例えば、東京都さんが監修されて私どもが使っているマニュアルは、これくらいの厚さがございまして、これを全部理解するのはなかなか大変でございます。それから、東京都さんは、健康食品の事業者ということで、年1回、(冊子を提示)こういうテキストを使って講習会をやられております。この中では、薬事法、健増法、景表法、特商法、食品衛生法まで含めて、包括的な考え方のようなものを出されているので、こういう形で法律が横断的に説明されると、それはそれで事業者に理解が深まるのではないかと思います。
行政の方々も、それぞれの所管の法律の適用で懸命に御努力とは思いますけれども、どの法律がどういうふうに適用されるかという辺りが、事業者サイドから見ると、バラバラ感だったり、後追い感だったりというようなことが否めない感じもいたします。行政に伺えば、問題ありとご指摘いただきますが、実際にそういった問題がある広告が出回っているという実態もございます。実際に事業者の方からこういう声も聞いたのですが、「みんなで渡れば怖くない」という風潮もあるのではないかというふうに思います。
そんな中で、コンプライアンスを遵守しようとされる事業者の方からは、不公平感とか戸惑いの声も聞こえておりますし、実は媒体社は、広告を掲載する立場では審査・考査をそれなりにやっておられるので、未然に予防機能を果たす役割の一つということではありますが、健康食品に関しては、基準が明確でないため、これはだめとか、いいというのがなかなか言いにくいところがあります。そういった判断のよりどころが、特に審査担当になって新しい方などはなかなか理解できずに、結果として問題広告が出てしまうという現状もございます。
そういった意味では、どの法律を適用するかということも一つあると思いますが、薬事法で健康食品の広告を規制しようとしますと、昔の「四六通知」などである程度チェックできますので、薬事法対応で済んでしまう部分もございます。それから、合理的根拠については景表法が使えるということになりますと、健増法の32条の2の誇大広告の禁止まで持ち出さなくても済んでしまう。それから、警察も薬事法でおやりになるというところで、健康食品の広告規制が健増法中心に行われていないという状況があるように思います。
ガイドラインをおつくりになるということもありましたけれども、特保のQ&Aだけができたことと、ネット監視で、行政指導はもちろん行われているわけですが、いわゆる一般の方たちに、事業者の公表を含めて、実感として伝わっていない。平成15年のガイドラインを参照しながら広告をチェックする、という形に至っていないのではないかというふうに感じております。もし、健増法を健康食品の規制の中心に据えるのであれば、やはりわかりやすい広告ガイドラインができることが、事業者に対する予防効果にもつながりますし、勧告等、具体的な事業者名を出すとか、そういったインパクトのある行政スタンスもお示しいただくほうが、事業者に対する注意喚起になるのではないかと考えております。
ガイドラインの改定についても、内容について意見をというようなことがございましたが、それもさることながら、健増法で規制するということであれば、行政全体のコンセンサスと申しますか、特に薬事行政との連携とか、このガイドラインにもかなりそういったことが書かれておりますが、そういったところをより一層連携していただくと実効性が上がってくるのではないか。都道府県も、実際は薬事法と健増法は所管が分かれていますし、国の行政のほうでそういった指示が出ませんと、都道府県も一体となって取り締まることは難しいのではないかと感じております。その上で、薬事法の適正広告基準のような基準が仕立て直しできればよろしいのではないか、そんなふうに考えております。
健増法については、余りJAROでは取り上げていないと申しましたが、一つだけ、検討してなかなか難しいという事例がありましたので、お手元に資料をおつけしております。昔から効能があると言われている食品でございますけれども、これは、いわゆる折込広告の事例でございます。

○山口委員長代理 済みません。傍聴席には配られておりませんので。

○公益社団法人日本広告審査機構林審査部長 非公開にさせていただいております。
いわゆる食品の広告だと思いますけれども、がんや疾病に効くということが謳われているわけです。苗の形で販売しているので、鑑賞用の植物という考え方もあるのかもしれませんが、実際には中を読んでまいりますと、天ぷらにするとか、食用にすることも書かれておりますので、やはりこれは食品と考えていくべきだろうと。
そうなりますと、御承知のとおり、薬事法等は使えませんので、健増法等で対応するしかない案件かなと思って、実は消費者庁さんにも相談いたしましたが、残念ながら、種苗のたぐいはちょっと難しいという御判断がありました。ただ、こういった広告がどこかで注文をつけられるようになりませんと、疾病にかかっている方が医療の機会を失うという、まさに健増法の趣旨に重なってくるものですので、できればこういったものも、健増法などで言えるといいなという実感を受けた案件でございます。
それから、御質問が一つございまして、前回出席させていただいたときに、同じ事業者が何度も繰り返すというか、再犯の事例というようなお話がございました。今回は時間がなくて持ってまいりませんでしたけれども、5、6年前は折込広告で、似たようなデザイン、似たような表現のものが、例えば商品名は変わって、事業者も変わって、似たような形で出回っている。どこかで共有されているというか、出元が一緒というか、これはかなり悪質な事業者ではありますけれども、そういったケースがございました。
それ以外のケースでは、私どもは何度か警告を出しておりますが、民間が出すものですので、「わかった、薬事とは相談するよ」等、御回答はいただきますが、その後、また別の商品、別の案件で苦情が来て、よく見ると、法的に問題のある広告で改善が見られない。そういった場合には媒体を使い分けておられることも見受けられますので、なかなかいたちごっこのところがあります。
さらに、最近のインターネットの広告で申しますと、いわゆる通販広告主、一つ苦情がまいりまして、その広告をチェックしていると、実は複数の事業者が同じ広告を使ってそれぞれ広告をしているという実態がございます。これをたどっていきますと、実際には通販広告主ではない、広告製作社、広告会社がつくっている。そこが供給しているという実態がわかってまいります。そうすると、製造元ないしは卸の大きなところが商品情報を出して、広告会社がつくる。ただ、どこが主体でやっているかというのは、私どもも調査機能がありませんので、わかりませんが、広告会社がつくっているという実態までわかりました。広告会社さんにお問い合わせをすると、もちろん、つくったのはうちだけれども、情報はそういうところからもらっているし、各通販広告主に提供するのは、広告として使えということを指示したわけではない。いわゆる商品情報として提供しただけであって、それぞれの広告主さんの御判断で使っているものだ。こういうことで、インターネットになりますと、どこが主体で動いているのかが見えないケースもございます。
具体例でお示ししましたが、以上でございます。

○河上委員長 消費者機構日本様から、お願いします。

○特定非営利活動法人消費者機構日本磯辺専務理事 消費者機構日本の磯辺と申します。きょうは貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。
資料3-1資料3-2で御説明いたします。
私どもに消費者委員会の事務局からリクエストがございましたのは、健康増進法への差止請求権の導入についての意見を述べてほしいということでございました。意見としましては、健康増進法への差止請求権導入について、是非、検討を進めていただきたいということでございます。
その理由ですけれども、いわゆる健康食品において、食品に含有される成分の機能性が十分に立証されていないにもかかわらず、体験談を多数掲載するなど、広告総体として特定の効果を期待させるような宣伝が行われていると認識しております。
このような事案については、健康増進法32条の2、「誇大広告の禁止」、並びにガイドラインによって適切な対応を図られる必要があろうかと思いますけれども、これまで同法で勧告された事例はいまだないということでございます。指導の事例はありますけれども、インターネット広告の指導の事例ということで、消費者庁で公表されている資料を資料3-2でつけさせていただきました。公表の仕方が、件数と、一定の類型化した内容についてということで、実はこういう公表のレベルですと、消費者は、自分が購入している健康食品に関する指導があったとしても、その指導内容を踏まえての選択ができません。事業者名、商品名の公表までは指導レベルですので、困難かと思いますけれども、より具体的に、どういう考え方でどういう表示が指導されたのかというレベルの公表まで行われないと、なかなか消費者の知見も高まっていかないのではないかと思っております。
この法律に差止請求権を導入することの意味ですけれども、行政機関に加えて民間の組織である適格消費者団体が、事業者に対する是正申し入れを行うことができるようになるということで、行政機関の努力に加え、事業者の行為是正がより進展することが一つ。
公表内容につきましても、消費者契約法27条で、適格消費者団体には差止請求の結果を公表することが努力義務とされておりますので、健康増進法の適用について、より透明性が高まる。消費者の選択にも資することが期待されるのではないかと思っております。
なお、景品表示法では、優良誤認表示と有利誤認表示について、既に差止請求権が認められているところです。それとの比較で言っても、健康増進法32条の2の規定である「著しく事実に相違する表示」「著しく人を誤認させるような表示」については、当然、適格消費者団体にも差止請求権が認められていいのではないかと考えております。
「差止請求権導入にあたって、検討を求めたい事項」ということで、幾つか気づいた範囲で意見を述べさせていただきます。
一つは、「不実証広告規制の規定の新設と差止請求への適用を」という点でございます。既に差止請求権が認められている景品表示法において、優良誤認の差止請求の件数は非常に少ないか、もしくは、皆無ではないかと受けとめております。この一因としては、不実証広告規制が適格消費者団体による差止請求には適用されていない点があるかと考えられます。適格消費者団体が優良誤認に基づく差止請求を行おうとしますと、「実際のものよりも著しく優良」という点について、自ら立証しないといけないことになりますので、この壁を超えるのがなかなか困難であるということです。
現在、健康増進法には不実証広告規制の規定はないわけですけれども、行政機関による執行を容易にするためにも、景表法と同様の規定を置くべきだと考えます。併せて、適格消費者団体が差止請求の活動を行うに際しても、立証責任が転換されるような規定を準備していただくことが、実際の制度活用という観点から重要ではないかと思っております。
平成15年のガイドラインについて、差止請求を行うという観点から考えると、こういう点が見直されていいのではないかということについて、少し御提案をしたいと思います。
現行のガイドラインでは、対象になる表示は割と幅広く設定されていますけれども、実際にそれが、著しく事実に相違する表示であるか、著しく人を誤認させるような表示であるか、その規定の部分について、例示を含め、非常に厳格ではないかと受けとめております。資料5-1にガイドラインがございますけれども、5ページ辺りが、「著しく事実に相違する表示」及び「著しく人を誤認させるような表示」ということの具体的なガイドラインの内容になります。
いわゆる健康食品においては、商品に含有される成分の機能性が十分に立証されていないにもかかわらず、体験談を多数掲載するなど、広告総体として特定の効果を期待させる、そういう広告が問題になるわけで、そういう対応が可能になるようにガイドラインの再検討がされていいのではないかということです。
例えば、「著しく」という点について、現在のガイドラインでは、「一般消費者が真の効果との相違を知っていれば、『当該食品を購入することに誘い込まれることはない』場合」といったことが例示されているわけですけれども、「真の効果」とは何なのかということを、主張する側が証明することが求められる可能性もあろうかと思います。
そもそも機能性があることが十分に立証されていない成分を含むものが、いわゆる健康食品として流通している実態から考えると、ガイドラインの表記については、例えば「広告等に書かれた事項について、摂取した場合に得られる効果が十分に立証されていないことを知っていれば」購入しない、といった程度の例示に改められていいのではないかというふうに考えるわけです。
2つ目が、「事実に相違する」という点の例示ですけれども、「例えば、十分な実験結果等の根拠が存在しないにもかかわらず、『3ケ月で○キロやせることが実証されています』と表示する場合」といったことが例示されています。これですと、具体的(定量的)な効果ではなく、抽象的(定性的)な効果をうたった広告表示について、例示を見る限り、事実に相違するという判断がつきかねるということがあろうかと思います。そういう意味では現在の表記に加えて、例えば、「十分立証されていないにもかかわらず、痛みが軽減されるとか、動きがスムーズになるとか、肌がうるおう等といった感覚的な効果を表示する場合」といったことも追記して、より判断が広がるようにしていただいたほうがいいのではないかと思います。
次のページですけれども、同じ事項について、「体験談を捏造等し」といった例示がございます。これは、捏造していることが要件になっているように受けとめられかねないわけです。捏造していることが事実に相違することの要件であるかのように受けとめられかねません。そういう意味では、現在の例示に加えて、「または、利用者の中の効果を感じた人の割合を一定の規模において調査し、その結果を記載することなく、個別の体験談等を表示する」ということを追記してはどうか、というふうにも考えるわけです。
「人を誤認させる」という点については、現状のガイドラインでは、「健康保持増進効果等に関し、メリットとなる情報を断定的に表示しているにもかかわらず、デメリットとなる情報が表示されていない」という例示があるわけですが、メリットとなる情報を断定的に表示していなくても、体験談等の集積で実質的に効果を期待させることがあるわけでして、「健康保持増進効果等に関し、メリットとなる情報を直接的か間接的か問わず表示しているにもかかわらず、デメリットとなる情報が表示されていない」といった程度で十分ではないかというふうにも考えるわけです。
そのようなガイドラインの見直し、特に最終段階での「著しく事実に相違する表示」「著しく人を誤認させるような表示」の判断基準のところを、もう少し定性的な事案も対象になることを念頭に置きながら、広げたガイドラインにすることが必要ではないかと考えております。
適格消費者団体に差止請求権が付与されることになりましたら、行政機関との連携が非常に重要かと思っております。消費者庁食品表示課等との連携は、日常的な情報交換を行うことで取組の重複を避ける、もしくは、法令適用の考え方に大きな齟齬を来さないといったような点から必要と思っていますし、適格消費者団体のこれまでの活動分野から考えますと、いわゆる健康食品についての情報提供が今のままの体制で集まるとは考えにくい点もございます。情報収集力を補完する意味合いから、各地元の保健所等との情報交換なども制度的に位置づけられると、より取組が促進されるのではないかと思っております。
今回、私どもは差止請求権のことについて意見を求められましたので、基本的に差止請求権を導入するという方向での意見を述べさせていただきましたが、最後に、やはり何といっても健康増進法による誇大表示の規制は一義的には行政機関の役割ですので、これまで以上に積極的な運用を行っていただいて、選択の権利が確保されるように御尽力いただきたいと考えている次第です。
以上です。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
それでは、一通り御意見を伺いましたので、これから、委員を含めて、御質問、御意見のある方は御発言を願います。
なお、本日は消費者庁にもお越しいただいております。議論において、事実関係の確認が必要な場合には御回答をいただければと思いますけれども、この時点で消費者庁のほうから何か御発言はございますか。よろしいですか。
それでは、御意見、御質問をお願いいたします。いい機会ですので、きょう来られている団体からも発言いただき、意見交換をしながら議事を進めていきたいと思います。よろしくお願いします。
山口委員、どうぞ。

○山口委員長代理 貴重な御意見、ありがとうございました。
今の4者のお話からもはっきりしたと思いますが、やはり健康増進法の執行力の強化がポイントだと思います。健康増進法の「著しく」という条文も含めて、執行の物差し、基準がはっきりしない。これは、渋谷区保健所長の倉橋さんからも御指摘がありましたけれども、基準がはっきりしないことが致命的だと思います。資料5-1を見ても、このガイドラインは本当に出来が悪いと思います。少なくともこの物差しを使って、健康増進法の基準を事業者に守ってもらおうという気がないのではないか。あれやこれやいろいろ書いてありますけれども、結局、何が物差しなのかということがこれを読んでもストンと入ってこない。恐らく保健所においても、この基準を使っても、どこがどうなのかさっぱりわからないと思います。その意味で、早急にこの基準自体をもっとシンプルに、せめて2~3ページにおさめるべきだと思います。その基準について、解説書はそれなりにあっていいと思いますが、こんなダラダラしたガイドラインと、ガイドラインの読み方みたいな、こんなものをつくっても実際使えないと思います。
その意味で私はネックになっているのではないかと思うのが、32条の2項の条文が、「著しく事実に相違する表示」、あるいは「著しく人を誤認させるような表示」をすることについて、一応行政措置の対象にしているわけですけれども、この「著しく」という条文をどかして、事実に相違する表示をしてはならない、あるいは、人を誤認させるような表示をしてはならないという条文に変える。これは直罰規定ではありませんので、科学的に証明されていない効能を広告表示することについては、やはり人を誤認させる、あるいは、事実に反する表示になるということをはっきり書いて、規制してはどうかと思います。
その点について、倉橋所長、あるいはJAROの林さんから、実際にガイドラインの使い勝手について、あるいは、実際に執行するに当たってどういう苦労があるかについて、少しお聞かせいただければと思います。

○河上委員長 倉橋所長、どうぞ。

○渋谷区保健所倉橋所長 山口委員長代理の御発言のとおり、現場においては、なかなか判断に迷うといいますか、そういう例が多くございますので、それをはっきりさせていただきたい。それが課題だと私のほうからも申し上げたとおりでございます。具体的な例というのは、今回、事例を用意してきませんでしたので、すぐにこの場で挙げることはできませんけれども、かなり問題になる例はあると思っております。
特に、それが誤りだという、訴訟ではありませんけれども、損害賠償請求あるいは差止請求等々のものになりますと、現場としては負担になります。ただでさえ仕事が追いついていかないところにもってきて、そういう訴訟などをやるのは、正直言って勘弁してほしいというのが現場の人間の感覚でございます。そういう意味では山口委員長代理がおっしゃるような点は、非常に大きな点であるというふうに認識しております。

○河上委員長 JAROさんのほうはいかがですか。

○公益社団法人日本広告審査機構林審査部長 私のほうは、先ほど申しましたように、事案で健増法を適用することをこれまでやってきていないので、余り詳細にガイドラインとのすり合わせというのをしておりません。実際に薬事法などであれば、例えば東京都の薬事とか、厚労省の広告専門官などと意見交換をするとか、私ども独自に判断するわけにいかないので、この辺が問題なのか、グレーなのかという御示唆もいただきながら、法的な解釈をいたしておりますので、そういった意味では具体的な事案が少ないというのが一つございます。
あと、山口委員長代理がおっしゃった、「著しく」を削除するというのは、むしろ消費者庁のお立場の方のほうがよろしいのかもしれませんが、いわゆる景表法などと同じような建付けになっているわけです。その辺で、これを取ったことによって、いかなる場合でもすべてアウトというのもどうなのかという感じはいたしますので、ほかの法律との整合性も御検討いただけたらというふうに感じた次第でございます。

○河上委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員長代理 これは消費者庁にお聞きしたいのですけれども、例えば、痩身効果を標榜する食品の不当表示で、ウェブサイト上で、「余分なぷよぷよを燃やしては流すダブルのパワー」などと表示した商品について、これは景品表示法で行政処分されているわけです。なぜ、健増法による処分をされずに景表法のほうで処分をするのか。その辺、理由がはっきりしているのだったら御説明いただければと思いますけれども、健増法が使いにくいというのがあるのでしょうか。

○河上委員長 消費者庁、いかがですか。

○消費者庁食品表示課担当者 ご質問の景表法で処分したという事案について、具体的にどのような事案であったのか、今すぐにはわかりかねます。

○山口委員長代理 健康増進法に基づく行政処分例はないですね。

○消費者庁食品表示課担当者 はい。

○山口委員長代理 ですが、景表法に基づく行政処分はなさっている。なぜそうなるのかということですが。

○消費者庁食品表示課担当者 それは、個別の事案に応じてどの法律を適用するかということを、それぞれ判断してやられているということだと思います。一般的にお尋ねされると、なかなか答えにくい部分があります。

○山口委員長代理 これは健増法が、切れない刀といいますか、法律上の要件もガイドラインも、使いにくいのではないか。使いにくいものだから景表法でやるというふうになっていませんか、ということを聞きたいわけです。

○消費者庁表示対策課担当者 表示対策課でございますが、今の事案は、私どものほうで実際処分した事例でございます。その事案の場合は、別に健増法が使いにくいというよりも、通常の事務処理の流れとして、景品表示法違反の疑いのある情報が私どもに来ます。それらを分析した結果、表示の効果・効能に対する不当性といいましょうか、それを見るとやはり景表法の体系でおさまりますので、その結果、処分したということでございます。

○河上委員長 保健所のほうで、例えば「著しい」とか何とか、いろいろなスタンダードについての判断が難しくなったときには、消費者庁に問い合わせをするということをよくなさるのですか。

○渋谷区保健所倉橋所長 はい。保健所は、微妙なところの判断というのは一個人の係員の責任では当然できませんので、上司のほうに上げてまいります。そうしますと、上級庁、私は区の保健所でございますので、都庁に照会をする。具体例を出して、「これはどうか?」という意見照会を、健康食品だけでなく、医事だろうが薬事だろうが、そういうことをします。特に健康食品に関しましては、まず、食品として東京都のほうに照会をかけ、場合によっては、消費者庁に問い合わせをしている例も多数あるかと思っております。

○河上委員長 磯辺さん、どうぞ。

○特定非営利活動法人消費者機構日本磯辺専務理事 今、ちょっと見比べていたのですけれども、健康増進法の32条の2は、「著しく事実に相違する表示」をし、または、「著しく人を誤認させる表示をしてはならない」ということで、誤認のところにも「著しく」がかかっています。景品表示法は、確かに著しく優良であるとか、有利であるとかいうことはありますが、誤認のところには「著しく」はかかっていません。特定商取引法も、12条を確認しましたけれども、同様の規定ぶりになっているので、その辺で運用の差みたいなものがあるのかどうか、教えていただけるとありがたいと思います。

○河上委員長 消費者庁のほうで、運用上の差というか、そういうものは意識されているのでしょうか。

○消費者庁表示対策課担当者 運用上の差というものは、通常、私どもにいろいろな情報が来るときに、これは景表法でできるか、健増法でできるのかという仕分けをします。景表法でできればうちでやりまして、それ以外、例えば健増法あるいはJAS法であれば、食品表示課に情報を回付するという対応をしています。

○山口委員長代理 難しいのは、ちょっとした食品メーカーでしたら、これが健康にいいという論文の一つや二つは持っているわけです。例えば消費者団体が、「どういう根拠で言っているのか?」と言うと、「その辺の学者さんが適当に何人かやったら、効果があった」ぐらいの論文は出しますよ。そうすると、手を出せないかと思います。そういう意味では、特に健康食品については、著しく誤認とか、著しく事実に反するの「著しく」を取ると、私は食品表示課のほうでも行政執行できるのではないかと思いますが、実際問題、そうではないですか。

○消費者庁食品表示課担当者 この場で、是非、議論をいただけたらと思いますけれども、法律の規定上の話ですので、なかなか申し上げにくいところではありますが、広告というのは、事業者が自ら販売する商品なりサービスについて、自ら宣伝のために行っているものであります。それに対して、法律の中でどの程度規制をかけるのかということが議論されて、法律に条文化されているということだと思います。それを、執行の面でやりにくいから、単純に「著しく」を外せばいいのではないかということに関しては、行政庁としては、今、この場で直ちにお答えできる答えを持っていないというのが正直なところかと思います。

○河上委員長 ほかの委員の方、いかがですか。
細川委員、どうぞ。

○細川委員 もう少し大きな哲学的なものがあるのではないかと思っていまして、先ほど林さんが、「みんなで橋を渡れば怖くない」的な、そういう部分があるような感じとおっしゃって、まさにその辺があると思うのです。健康増進法の基準や規制が、緩やかというか、その辺があいまいだからこそ、言うなれば危ない橋を渡ってしまおうかなという気持ちになるわけです。ほかの事業者がやっている。うちもそれをやらないと競争で勝てない。だったら、そのぐらいはいいかなという形でやってきてしまう。
逆に言うと、私は日本語の規制という言葉が非常に問題だと思っていまして、参入させないという意味での規制はよくないけれども、ルールをつくって、それを厳しく監視することは必要なわけです。そこを、日本の行政というのは事業者をおもんぱかるという意識が強くて、結局、それが事業者のためになっていないのではないか。最後はどこかで大きな失敗をして、消費者から支持を失って倒産したり、いろいろな企業がありますね。むしろ適切なルールをつくってやったほうが、事業者も安心してその中で競争すればいいわけです。ビジネスになるわけです。規制するというと、とにかく日本の事業者、事業者団体は反対、反対と言いますけれども、適切なルールと監視があったほうが、安心して競争しビジネスもできる。そういうマインドが日本にはないのではないかというのを日ごろ感じていましたので、ちょっとそういうふうに思いました。
もう一つ、今、「著しい」という基準の話がありましたけれども、アメリカは徹底していて、例えば、ハーフトゥルースは虚偽、半分の真実はウソだという信念が結構通っているわけです。たとえ真実があるとしても、一部の事実、それしか伝えないのだったらそれは虚偽と見なす。そういう哲学的な原則を打ち出して、そのもとに食品とかそういったものの規制の在り方を考えるというふうにしないと、コアの心というか、バックボーンが据わっていないと、そういった規制はなかなかできないと思うので、その辺を消費者委員会で何か打ち出せればいいのではないかというふうに感じました。

○河上委員長 佐野さん、どうぞ。

○主婦連合会佐野事務局長 細川委員のおっしゃるとおりだと思います。消費者庁の方がさっき広告は売るためだとおっしゃいました。それはそうかもしれないけれども、その広告によって、だまされる消費者がいるということを、もっときちんと考えていただきたいと思います。法律は、きちんとしてもなかなか難しいのが、広告のいわゆる行間を読ませるということで、決しておなかの調子とか便通とは言わないけれども、私たちは不思議なくらい、「毎朝すっきり」とか、「毎朝快調で晴々」と言うと、「ああ、便秘の」というふうに勝手に思ってしまう。その辺りもきちんと考えていかないと、それは法律違反ではないし、売るためだからよいということになります。そこはもう少しきちんと、何かしらのルールをつくっていただきたいと思います。
私は、ガイドラインはただのガイドラインと思うので、それをきちんと整理して、法律に一つ格上げをするべきではないかと思っています。例も確かに古くなっているものもありますし、わかりづらいのもあるので、もう少し整理して、執行する方にわかりやすい表示例、考え方を示す。何だったらもっと厚い本でもいいのではないか。もう少し詳しく、例えばこうだったらというのがすぐわかるような形で示していただければ、執行する方もやりやすいのではないか。いわゆる健康食品で、消費者の被害を生まない形の表示、それはどうやったらいいのか、違反を取り締まるにはどうやったらいいのかというところを、消費者委員会としてはきちんと考えていただきたいと思います。

○河上委員長 主婦連から、先ほどの議論で、ガイドラインとか留意事項の格上げという表現を使われたのは、具体的には、健増法の中に文言として何か書けという御趣旨ですか。

○主婦連合会佐野事務局長 今、食品表示一元化がどういう状況にあるのかわからないし、いわゆる健康食品も食品ですし、健増法も一元化に入る予定です。どういう形が一番いいのかというのも、表示一元化を見ながら検討しなければならないと思います。もし食品表示一元化法というのができて、健増法の表示が入るのであれば、そちらのほうにきちんとガイドラインのような形で、「こういうルール」というものを書く形がいいのではないかと思います。

○河上委員長 ほかにはいかがですか。
田島委員、どうぞ。

○田島委員 今のお話ですけれども、ガイドラインを食品表示法の中に取り込むと、いわゆる一般食品の健康効果、あるいは健康期待効果ということも規制しなければならなくなる、そういう心配が出てくるのではないかと私は思います。例えば、ミカンは風邪の予防になるからたくさん食べましょうと、そういったことも言えなくなってしまうおそれがあるのではないか。ですから、食品表示法の中にガイドラインを入れるというのはちょっと無理があって、やはり健康増進法の中、すなわち健康食品に限っての規制にすべきではないか。そのためには、健康食品の定義づけをもっとちゃんとしたほうがいいと思います。今、特保と栄養機能食品と制度化されたものがありますけれども、上乗せといいますか、その外側に、機能性表示を認める代わりに健康食品の範疇として規制を厳しくしていく、そういった姿勢のほうが私は現実的だと思っています。
それから、主婦連の、体験談を規制すべきという話がありました。これはもちろん賛成ですけれども、問題は、体験談以外の、いわゆる女優さんが元気に歩いているというようなイメージ広告、これの規制が果たしてできるのか。私はできないと思います。ですから、体験談を規制しても、イメージ広告が氾濫するだけではないかというふうに思いますけれども、その辺はいかがでしょうか。

○主婦連合会佐野事務局長 体験談については、私どももアンケート調査をしています。体験談はやはり信じてしまう。最近では、「これはただ個人が考えていることです」みたいに、芸能人であっても書かれています。芸能人の場合は、営業活動というのをきちんと何らかの形でわかるようにしてもらえば随分違うと思いますけれども、それがあたかも自分が体験したような形で言われると、非常に格好いい人が「これを飲んだら」と言うと、そういうふうになるのではないかという誤解を生むこともあるので、そこはきちんと整理できると私は思っています。
健康食品については、いわゆる健康食品に枠をつけることに関しては、主婦連合会としては反対です。エビデンスをきちんとやるにはどうしたらいいのか。食品であるにもかかわらず、それを食べて膝が痛くなくなるとか、さらに今より悪い状況になることもあると思います。もし線引きするのだとしたら、つくっている事業者を登録制なり許可制にして、例えばカプセルとか錠剤等を薬事法に入れる形にする。今日は、安全面がテーマではありませんけれども、飲み過ぎとか、それを飲むこと、食べることによって、お医者さんに行かなかったり、ほかの薬と一緒に食べてはいけない等の表示がなかったり、または、表示があっても気がつかなかったり、いろいろなことがあるので、それはどちらかというと薬事法の分野に入れる。特保などは別として、いわゆる健康食品というのは食品であるということにしたほうが、消費者にとっては、惑わされたり、これを飲んだら、食べたらがんにならないとか、治るとか、そういう形での被害はなくなるのではないかというふうに思います。

○河上委員長 ほかに御意見はございますか。イメージ広告の問題とか、広告そのものの在り方についても随分議論があります。川戸委員、何かお考えがあったらお願いします。

○川戸委員 イメージ広告については、先ほど佐野さんがおっしゃいましたけれども、女優さんと一般の体験者を区別するというのは非常に難しい問題だと思います。確かにあの広告をどうやって規制するかというのは非常に難しくて、それだけではちょっと無理かなという気がいたします。

○山口委員長代理 先ほど田島委員がおっしゃったのですが、機能性表示は、消費者庁で検討した11成分についての科学的検証において、機能性評価はまだ無理だということがありますし、中途半端な形で機能性表示を認めるのは、現段階においてはまずいのではないかと思います。そうしますと、今の健康増進法の建付けはそれはそれで悪くないと思うので、健康増進法の32条の2の建付けを、先ほど来言っているように物差しを使いやすくする。使う立場に立って条文を工夫するのでもいいし、ガイドラインをわかりやすくするのでもいいけれども、改めなければ、使えない法律のままではしょうがないだろうと思います。
別の観点から、磯辺さん、佐野さん、御存じだったら教えていただければと思います。これは健康食品に限らないかもしれないけれども、韓国には食品表示の監視員の制度があります。一定の研修を受けた消費者が、半分ボランティア的な形で食品表示を監視している。日本でそれができないのかと思ったら、実は、農水省がJAS法に基づく食品表示に関するモニタリング制度を実施しているわけです。何と年間7,000万円もかけて民間委託してやってきた。これがことしの3月末で廃止になったというので、なぜかと思っていたのですが、実際問題、これだけの費用をかけて一般消費者にウォッチングしてもらっても、なかなかわかりにくいというようなことで、実効性との関係でどうも廃止になったようです。
私は、消費者パワーといいますか、消費者団体でもいいし、一般の主婦でもいいですが、そういう方々に一定の研修を受けていただいて、健康増進法だけではなく、食品表示についても、一般でもいいのですが、ウォッチングしてもらう。そして、ボランティアで活動してもらう。そういう消費者パワーの有効な活用があれば、執行力の強化というのはもう少しできるのではないかと思いますが、その辺については、消費者団体の立場からいかがでしょうか。

○主婦連合会佐野事務局長 私は、食品表示に関しては、適格消費者団体だけではなく、普通の市民団体、消費者団体でも同じような形で活動できる制度にしてもらったら、随分状況は変わるのではないかと考えています。もちろん、何も知らないまま動けるわけはないので、それはきちんと勉強しなければならないと思います。
農水省のモニタリング制度に関しては、スタートしたときに、これは余り意味がないということで、主婦連合会は一回も参加しませんでした。今、終わったというのを知りました。どの表示が違反しているのか判断するのは非常に難しいので、消費者団体なり市民団体のほうが、グループで検討しながら活動でき、良いと思います。例えば、「あなたとあなたとあなた」と言われても、一人でやるというのはすごく難しいので、それが団体であるほうが、もしかしたら山口さんがおっしゃるような形になるのかもしれません。それは検討の余地があると思います。

○河上委員長 磯辺さん、いかがですか。

○特定非営利活動法人消費者機構日本磯辺専務理事 景品表示法で、一般の方に表示を見てもらう仕組みはなかったですか。なくなりましたか。

○河上委員長 現在、消費者庁で、例えば消費者モニターを使ってやるというのは何かございますか。

○消費者庁表示対策課担当者 やっています。一般の方、50名ですけれども、その方々にまず景品表示法の研修をしまして、その方々に消費者の目でインターネット上の表示を見てもらい、年間20本のレポートを出してもらいます。提出されたレポートを踏まえて、その情報を分析して、景品表示法違反につながるおそれがあるなどの問題があると認められた事業者に対しては、啓発に関するメールを送ります。また、場合によっては執行に結びつくこともあります。そういう事案をやっています。

○河上委員長 それは特定の法律についてですか。

○消費者庁表示対策課担当者 景表法でございます。

○河上委員長 景表法についてですか。

○消費者庁表示対策課担当者 はい。

○山口委員長代理 その50人はどうやって人選しているのですか。

○消費者庁表示対策課担当者 公募です。

○河上委員長 磯辺さん、どうぞ。

○特定非営利活動法人消費者機構日本磯辺専務理事 そういった制度を、健康増進法の分野にも別に置くのか、それとも協力してやるのかということはあろうかと思いますが、一般の消費者の方に表示をきちんと見て関心を持っていただいて、情報提供をしていただくという仕組み、ルートをつくるのは重要かと思います。もちろん消費者団体も、例えば勉強会を一緒にやるとか、バックアップするという取組もあっていいと思います。
もう一つ、ガイドラインの表記を幾つかこういうふうに変えれば、対象が広がるのではないかといったところで、「人を誤認させる」のところについて、「健康保持増進効果等に関し、メリットとなる情報を直接的か間接的を問わず表示しているにもかかわらず、デメリットとなる情報が表示されていない」というようなことがルール化できるのであれば、例えば、特定の成分の機能性を前面に出している場合には、その特定の成分について、現時点で論文上、どの程度の学術的な評価がされているのか。されていないケースもこういうふうにあるとか、そういうデメリットを間接的にでも前面に打ち出す。そうやって広告総体によってイメージさせるのであれば、客観的にこういう評価をされているのだということも併せて表示させるということがないと、誤認を生むのではないかというふうにも思っています。そういったルールみたいなことが検討できないか、ということも思ってここの表現ぶりはそうしたわけです。
それはまさしく細川先生がおっしゃったように、半分ウソがあったらそれもちゃんと伝えないといけない、その考え方の具体的な中身ではないかと思いますが、そういうデメリット表示の在り方をきちんと詰めていく、検討することもあっていいのではないかと思います。

○山口委員長代理 河上委員長に教えていただきたいのですけれども、「著しく事実に相違する」とか、「著しく人を誤認させる」という、この「著しく」というのはどう考えたらいいのですか。ガイドラインにはそこそこのことが書いてあるわけです。5ページの(1)に「著しく」というのがあって、「例えば一般消費者が広告等に書かれた事項と摂取した場合に実際に得られる真の効果との相違を知っていれば~これに該当する」となっていますが、わかったような、わからないような表現で。

○河上委員長 評価をするときの、言ってみれば事実の範囲というのは、これは代理に御説明するまでもないことですけれども、一定の幅がありますね。だから、相当の範囲でのブレというのは許容範囲にある。そこを超えてしまったときに「著しく」というふうに言っているのだと思います。ですから、事実にぴったり一致していないとだめだというのではなくて、そこからの相当の範囲でのブレは許容するけれども、それを外れてしまうと要件に引っかかりますということなので、そこそこウソをついてもいいですよという話ではないと思います。

○山口委員長代理 「著しく」という表現は、表示対策課はどうですか。景表法で、先ほど磯辺さんがおっしゃったように、使い分けがされているのですが、

○消費者庁表示対策課担当者 基本的には個別に判断しますけれども、ただ、その表示を見なければ物を買わなかったとか、あるいは、そのサービスを受けようと思わなかったとか、そういう場合ですね。そういう言い方をしてよく説明をしています。

○河上委員長 それは「著しく」とは違う概念ですね。それが決定にとって主要なものになったかどうかという判断なので、事実と相違するのが著しいかどうかの判断とは別問題ではないですか。

○消費者庁表示対策課担当者 一般の目から見てという言い方をしますけれども。通常の人が見て、やはりそれはおかしい、誤解すると、そういう言い方をしていますが。

○河上委員長 それを見たときに誤認をする人のパーセンテージが、ある段階を超えるかどうかという、そういう量的な範囲ですか。

○消費者庁表示対策課担当者 そこまでは厳格に言っていないと思います。誤認が生じているかどうかは、個々の事案における評価ですので、パーセンテージで示せるものではありません。

○河上委員長 ほかにいかがですか。
細川委員、どうぞ。

○細川委員 健康増進法における表示・広告規制については、圧倒的に人的資源も足りないし、執行体制も、昔の通信販売とか、インターネットで、食品とか、こういうものが売られることを想定していなかった時代のものが、時代に即して変わらなく、そのまま残っているような感じが強くいたします。
例えば、倉橋所長がおつくりいただいたペーパーで見ても、例えば大手の企業の製品というのは、本社の所在地で申請、相談すれば、そこでのものが全国で流通する。そういうシステムで、これもどうかなと思いますし、あるいは、本委員会で前に美容・エステの建議をしましたけれども、美容エステの広告も保健所が一義的に所管することになっていて、まさに保健所というのは、地域の保健衛生を守るというところでスタートしたものですね。それが、これだけインターネットが流通して通信販売が当たり前の中で、そういう責務というか、ミッションを担わされていて、やっていけなくてアップアップされているのではないか、そんな感じもします。
そもそも健康増進法自体が、この名前のようにポワッとしていますし、国民の健康増進のためにつくった法律であって、ここでの表示の適正化という視点が余りないのではないかとも思います。そういう意味で言うと、健康増進法から表示規制の部分を切り離して新法をつくるとか、そのぐらいのことをしないと、いつも食品表示課のお話を聞いていても、何かポワッとしていて、本当にやる気がないというか、何を考えているんだろうなと思うことばかりで、それは、健康増進法という枠組みの中で仕事をする、そういう考えがないからではないかというふうにも感じたりします。もう少し時代に即した法体系、あるいは執行体制というものを、もう少し消費者委員会で考えて建議するというふうにしないと、このまま来年も再来年も、あるいは、この2期が終わって3期、4期になっても、同じような議論をしているのではないか、そんな危惧を私は持ちます。

○河上委員長 食品表示課、言い返してあげてください。

○消費者庁食品表示課担当者 いえ、特には。

○河上委員長 ほかには。川戸委員、どうぞ。

○川戸委員 私も先ほどから思っていたのですけれども、保健所のほうでこの執行体制で、健康増進法のもとにそこまで表示の審査だったり、いろいろなことをやらされるのはちょっと無理だと思います。表示の一元化というのを一生懸命やっていらっしゃるから、その意味で佐野さんもそういう意見書を出されたのだと思います。そちらのほうをむしろ初めにきちんとして、そこでもう少し固まった上で、いろいろなチェックをするときに、早急に措置命令権とか、こういう権限を付与するときに、スタンダードをどうつくるかみたいなことを考えないと、今、細川さんがおっしゃったように、いつまでたっても同じことだと思います。だから、表示の一元化でこれをどうするかということを先に建議をしたほうがいいと思います。

○河上委員長 食品業界におられる村井委員がいらっしゃいますけれども、何かございますか。

○村井委員 私も、細川委員のご意見に大きな意味では賛成です。そもそも、いわゆる健康食品というものが、ブームとなっている背景としては、増大する医療費の圧縮には、生活習慣病の予防の観点から、規則正しい生活と適切な食生活と適度な運動が、重要ということで『健康増進法』と『食育基本法』という2つの法律が制定されたことがあると思います。
いわゆる治療から予防へという視点から、疾病予防のために一定の効果・効能が期待される成分や栄養素を医薬品ではなく、食品という範疇で提供することがある意味奨励され、いわゆる健康食品といわれる商品分野の市場が拡大してきたかと思います。
現状を見ますと、『いわゆる健康食品』の提供事業者としては、食品事業者のみならず、医薬品事業者もありますし、農業生産者などもおられるかと思います。また、提供食品も一般的な食品の形態だけではなく、錠剤やカプセル形式まで様々あり、消費者だけなく、事業者も大変わかりづらい状況になっていると思います。
現状の区分は、医薬品以外はすべて食品という2つの区分しかありませんが、この区分けもかなり乱暴かと思いますし、現実には、医薬部外品というジャンルの商品もあります。こうした状況から、現在の健康増進法の広告規制の強化にとどまらず、いわゆる健康食品と言われるものの規格・定義を明確にし、消費者によりわかりやすい制度にした方がいいと思います。
最後に消費者庁の先程のご説明に対する質問ですが、先程、事業者の行き過ぎた広告などに関して、景品表示法で取締りを行うが、健康増進法を適用する場合、関係省庁に情報を流しますということでしたが、これは、薬事法との関係からでしょうか?

○消費者庁表示対策課担当者 もし健増法であれば、同じ庁内の食品表示課に情報を流します。

○村井委員 わかりました。厚労省の薬事関係を意識されているのかと思っておりました。

○河上委員長 夏目委員、どうぞ。

○夏目委員 きょうは、ヒアリングに応じていただきまして、ありがとうございました。
伺っていて、健康増進法を使って取り締まり、執行をするというところに大きなハードルがありますので、もし健康増進法を使ってということであれば、例えば景表法にあって健康増進法にない処分権限とか挙証責任、そういうものをつけないと、健康増進法で執行するのは難しいのではないかと思います。健康増進法でいくのでしたら、磯辺さんが具体的なガイドラインの提案をしてくださいましたけれども、ガイドラインをしっかりつくり直すことに踏み込むのもよろしいのではないかというふうに思った次第です。
今、消費者庁さんのほうも、健康増進法が使いにくいということはお認めにならなかったですけれども、実際にはその前に景表法で対処ができるというような御発言をなさいました。そういう執行の仕方はあるわけで、そこの違いを健康増進法に持ち込むかどうかということが、新しい法律の一元化にもかかわってきているのだろうという感じを持っております。

○河上委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員長代理 食品表示課にお聞きしたいのですけれども、健康増進法の32条の2の「著しく事実に相違する表示」、あるいは「著しく人を誤認させるような表示」の具体的な解釈基準が、健康増進法に規定する内閣府令の20条で、32条の2第1項の、「内閣府令で定める事項は次のとおりとする」と書いてあって、1として、含有する食品または成分の量、2として、特定の食品または成分を含有する旨となっています。端的に言うと、ヒアルロン酸、グルコサミンがどれだけ入っていますかということについて、ちゃんと表示しなさいと読めます。あるいは、例えばイソフラボンが入っているなら入っていると。入っていないのに入っていると書いてはいけません、と読めるわけです。この辺の具体的な執行ですね。つまり、含有する食品または成分の量という場合、どういう成分が入っていれば表示しなさいと。その辺の執行体制はどういうふうになさっているのか、それを教えていただければと思います。

○消費者庁食品表示課担当者 32条の2の話ということですが、この規定は、表示しなさいというものではなくて、虚偽または誇大な表示を禁止している規定です。その際に対象となっているものの範囲として、健康の保持増進効果等と言っている「等」の部分が、内閣府令で定める事項というふうにおっしゃられたことだと思いますけれども、その中に含有する食品ですとか、成分の量が定められているということでございます。こういった、ある成分が含まれている量についての誇大な表示は、32条の2の規制対象範囲になりますという趣旨だと思います。

○山口委員長代理 そうすると、ヒアルロン酸が入っていると書いてもいいし、100グラム中幾ら入っていると書いてもいいけれども、それについて食品や成分の量について、ウソを書いてはいけません。あるいは、入っていないのに入っているとか、入っているのに入っていないと書いたりということはいけませんと、そういう趣旨ですね。

○消費者庁食品表示課担当者 はい。

○山口委員長代理 先ほど、佐野さんが錠剤・カプセル等についておっしゃいましたが、錠剤・カプセルで一定の成分が入っていることで、健康にいいと標榜する場合には、一々登録制というのはなかなか難しいと思うので、100グラム中何グラム入っているということをちゃんと書きなさいと、そういうことをされるのは無理ですか。

○消費者庁食品表示課担当者 32条の2で何かを書かせるということは難しいと思います。何かを書かせるというのであれば、そのような制度が必要だと思いますけれども、それがどのようなものかというのは、今の規定では「ない」という状況かと思います。

○河上委員長 健康食品で錠剤とかカプセルは、もうやめたらどうですか。ああいうのも医薬品と間違えますよ。

○山口委員長代理 委員長、ドラッグストアに行ってくださいよ。ズラッと並んでいますから、あれを全部だめと今さら言うのはなかなか難しい。

○河上委員長 でも、「食品」でしょう。

○田島委員 いわゆる錠剤・カプセル型というのは、旧来型の食品でもたくさんありますので。具体的な名前を言ってはいけませんけれども、ドロップとか。

○河上委員長 構造としては、医薬品のほかは全部食品ですね。だから、医薬品として効果があるものについてはわかる。しかし、そうでない部分の、特保もそうですし、その外の健康食品もそうですけれども、どんどんわかりにくくなってきているわけで、少なくとも形状は、あれは「食べ物」だとは思えません。まるでドッグ・フードみたいですね。
小幡委員、どうぞ。

○小幡委員 きょうは、いろいろ現場のお話も聞けて非常に有意義でしたが、大変難しい問題だと思います。要するに、消費者は効くと思うからサプリメントを買っているわけです。ある程度のお金をつけて売られていて、効くように思って買う。ただし、本当に効くのであれば、それは薬事法上の本当に機能がある薬であるはずです。薬ではないけれども、何か似たような機能があって、でも、それは確たるものではないというところが食品とされているゆえんです。そうは言いながら、薬事法上の薬にすると医療費がかさむからという、今、委員からの御指摘もあって、そこのところが非常に難しいのですが、私も、佐野事務局長がおっしゃるように、本来は、効くということで似たような成分が入っていたりするのであれば、薬なのだろうと思います。サプリメントのように瓶詰めになっていて、いかにも薬のような形状なのですから、食品ではないのではないかと委員長がおっしゃるのは、まさにそのとおりだと思います。
そうすると、そもそも論で、こういう薬に似たものをどのようにとらえるかという本質的な問題があります。そこまで根本論には入らないで、しかし、現状で執行力を強めるようにやっていく。どうしても小手先になるという辺りが一番難しいところで、消費者委員会としては根本的にやるべきだと言われれば、そのとおりなのですが、申し訳ありませんが、極めて難しい問題だと思っていたところです。今、ここで結論というのはなかなか難しいですね。

○河上委員長 予定していた時間が大分過ぎてしまいましたけれども、ここで決着をつけるようなことではございません。本日は、いろいろと貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。

○山口委員長代理 ちょっとよろしいですか。

○河上委員長 では、最後の質問にしてください。

○山口委員長代理 倉橋所長にお聞きしたいのですが、事業者側に科学的根拠の立証責任を負わせるべきという論点があります。実際上、科学的な根拠の挙証責任をめぐって、現場で指導が困難になることは現実にあるのかどうか。つまり、事業者が根拠を提出しないとか、行政側で科学的根拠の立証が困難なために、挙証責任の転換があればもっと執行がしやすいのにということを、お感じになることがあるのかどうか。

○渋谷区保健所倉橋所長 実例としては余りないと思います。一つは、主に科学的根拠が云々されるのは、認可される最初のときです。最初のときに、その表示が適正かどうかという判断をするときには、かなり厳しく判断されると思いますので、そういうときには立証責任が業者側にございますので、それで申請されるということになるかと思います。
具体的には、保健所で窓口として、事務として執行委任されています。それで消費者庁のほうに送付して、そちらで処理されることになっているかと思いますけれども、そちらで根拠というものが判断されるのではないかと思います。そうしますと、表示なり何なりが一たんはオーケーになると思いますけれども、その後、変更等で問題になったとき、これが委員がおっしゃる問題点かと思います。そのときになりますと、なかなか難しい点が生じるだろうというのはわかりますけれども、実際にはそういう判断の部分に関しましては、先ほど言いましたように、照会をかけて消費者庁に問い合わせをする。事例照会をかけて意見をもらった上で、その通りにするということになりますので、実際に食品を収去して、成分がどれぐらいあるかとか、そういうものまで保健所の現場のレベルで測定する例は、実は余りないのでございます。
この考え方は、私のペーパーの最初のところにもお示ししたのですけれども、食品衛生法はその目的が食品の安全でございますので、食べた場合に明らかに害が出るものを監視の主な対象としています。ですから、傷害罪に相当するといえば傷害罪に相当することだと思いますけれども、そのことにつきましては、罰則も含めて、体系的に営業禁止等の手続き、そして、不服申立てなどに関しましても、一連の法令で規則が定められている。十分かどうかは別として、ある程度のものが既にできていて実施されている状況だと思います。
ところが、健康食品につきましては、皆さんからも御指摘のとおり、新しい分野でございます。また、インターネット等の新しい形態が、それに輪をかけた形で新しい対応を迫ってきているところではございますけれども、あくまでもこれは最低限の食品の基準は満たした上で、害はないという前提のもとで、より健康になるためのものでございます。その健康になる文言にウソがあったというと、これは、傷害罪ではなくて詐欺罪かもしれません。罪状の類似性という意味で言えば、そういうことに当たるかもしれないというふうに思っておりますけれども、これにつきましては、正直言いまして、食べれば害になるものは、強制力をもって全国的にも保健所の横の連絡、都道府県、厚労省の縦の連絡、これを駆使して、たちどころに連絡をし、直ちに禁止なり停止なりの措置をすぐできる体制は整っていますけれども、健康食品の部分につきましては、新しいということ、そして、被害というよりは虚偽であるという点などから、緊急性という意味、重大性という意味で、そこまでの体制ができていないのが現状でございます。
これは、つくるかどうかというところを、今、こちらで議論されているというふうに承知はしていますけれども、先ほど、村井委員か細川委員か、どちらかから御指摘がありましたとおり、現状の体制では、そのような膨大な健康食品に対して、現場がそれに対応できる体制が構築できるかと言われると、なかなか難しい状況であるという現状でございます。答えになっているかどうか、なかなか難しいのですけれども、現場の現状としてはそういう状況だというふうに考えております。

○河上委員長 少なくとも、消費者庁さんのほうで疑義があるというふうになったときには、業界の方がいろいろなことの立証はしてくださるということではありますか。

○消費者庁表示対策課担当者 景表法の場合では、専門家に聞くということはあります。

○河上委員長 業界の方からいろいろ資料を出して、それはウソではありませんと証明をしてくださる。

○消費者庁表示対策課担当者 4条2項に基づく不実証広告規制と言われるもので、表示された効果・効能に関する合理的根拠を出してもらいます。

○河上委員長 消費者機構日本さんのほうでは、団体がやるときには、団体にそういう権利を与えてほしいということも意見の中に入っていましたけれども、訴訟の中でしたら、逆に立証責任の転換という形で運用することでも構わないのでしょうか。

○特定非営利活動法人消費者機構日本磯辺専務理事 そういうことです。

○河上委員長 いろいろと御意見をありがとうございました。健康食品の表示の在り方に関する消費者問題を考えるに当たりまして、表示・広告規制にかかる適正化、法執行力をどういうふうに強化していくかというのは、かなり大事な問題であります。一般食品である以上は営業活動もありますし、表現の自由もありますから、介入的であることに対して、慎重であるべきだという考え方がないではないことは私も理解しますけれども、ただ、販売戦略といっても、それが行き過ぎて顧客に誤った観念あるいは優良誤認をもたらしたり、有利誤認をもたらすことがあるとすれば、そこはただしていかないといけないということになります。健康増進法という法律がせっかくあるのですから、それを効率的に執行できるようにして、虚偽・誇大表示をある程度コントロールできるのであれば、そのためのガイドラインは、やはり具体的で平明で、そして、明快なものにして整備しておくことは必要であろうと思います。その点については、きょうの御意見の中では一致したところではないかと思いました。
あと、行政による監視を補完するために、場合によっては、消費者モニターのような市民力を活用する制度の可能性、この辺りも考えられるのではないかと思います。全部を一気にここで解決していくことは難しいかもしれませんけれども、まずはすぐにでも着手できる取組から始めて、健康増進法の執行実績を積み重ねる。景表法だけではなく、これもなかなか使い勝手がいいではないかというふうに思われるように、執行実績を積み重ねていただくことが必要ではないかと思います。
制度改正の必要性等につきましては、まだ決着をつけるつもりはございませんけれども、本日の議論を踏まえまして、引き続き委員の間でも議論を重ねて、速やかに一定の結論を得たいと考えております。
本日は、お忙しい中、御協力をいただきまして、まことにありがとうございました。

≪3.その他≫

○河上委員長 もう余り時間はございませんけれども、私から最後に、消費者契約法に関する調査作業チームについて、これまでの取組の概要等に関して簡単に御紹介させていただきます。お手元の資料6-16-2がそれに関するものです。
消費者契約法の調査作業チームというものが設置されて一定の活動をしてきたことは、これまでの委員会の中でも若干御報告をいたしました。6-1にありますように、第1回から第5回ぐらいまでは、消費者契約法の現状と課題について、委員の間でブレーンストーミング的に論点整理という形でフリーのディスカッションを行い、特に契約締結過程、不当条項規制、海外の現状等々について意見交換をやってまいりました。
さらに論点を深めて、この9月からは、各論点、テーマについて担当者から報告の上で議論を行って、課題を整理するという作業を行っております。この9月の会合から、議事内容のポイントをまとめた議事要旨を消費者委員会に提出することと、来年の1月ごろですけれども、これまでの取組の中で一定の方向が出てきたものについて、シンポジウムを開かせていただいて、事業者の方も含めて一度議論をしたいというふうに考えております。
現在のワーキングチームのメンバーは裏に出ているとおりでございまして、どちらかというと、法律家の学者あるいは弁護士さんが中心で論点整理をしているということでございます。別紙2に議事の一覧が書かれています。
具体的に、先月の9月21日に行われたワーキングチームの会合でどういうことが議論されたかというのは、6-2に出てまいります。議事要旨をごらんいただくと大体おわかりかと思いますけれども、例えばこれまでは、広告の部分は、消費者契約法の規制対象ではないという通説的な考えがあったわけですが、広告も含めた勧誘規制にかかわる法体系の透明性の確保をどのようにしたら図れるかという点が、広がりとして出てきております。
それから、細かいところですけれども、誤認類型のところに勧誘の要件というものがあります。勧誘要件については、広告を含まないという解釈ではなく、そこは勧誘という要件を外したらどうか。あるいは、不実表示型とか、断定的判断の提供等々について、もう少し広めの受け皿的な規制が要らないか。あるいは、現在は取消事由になっているわけですけれども、取消だけではなく、損害賠償請求という効果が考えられないだろうか。困惑類型というものがありますけれども、特に困惑の中でも、「状況の濫用」というような特別な取消権を認める必要はないだろうか。場合によっては、不当勧誘行為を困惑からさらに広げて、一般的に、時代の中で出てくる新しいタイプの不当勧誘行為を捕捉できるような受け皿規定を、併せて考える必要はないかというようなことも議論されています。
取消しをめぐる問題としては、その後の原状回復はどうなるか。取り消した後、契約はなかったことになるわけですけれども、契約がなかったときに、消費者が払ったお金がどの範囲で返ってくるのか。あるいは、受け取った商品をどの範囲で清算しないといけないのかといったことも含めて、原状回復についてのルールをきちんと設ける必要がないか。あるいは、現在の取消権の行使期間がやや短いと言われておりますので、それを若干延ばすことは可能ではないか。あるいは、追認の制度というのが今はないのですけれども、民法の法定追認をそのまま持ってくることは非常に危険だと言われておりますので、やはり消費者契約法に即した追認の考え方も整備しないといけない。
また、インターネット取引における消費者契約の現状をどう考えたらいいか、ということについても別途検討しております。インターネット関係のトラブルで、特に契約締結過程に言えば、広告との関係を議論して整理する必要があるということで、そこに書いてあるようなポツの細かい論点について、議論を積み重ねているところでございます。詳しい内容については、機会を見て更に御報告させていただきたいと思います。

○山口委員長代理 私もこの作業チームに毎回出席させていただいていますが、大変有益かつ示唆に富む、専門家の先生方の高い知見からの意見交換がなされています。私は前から、早くこれをみんなが聞ける公開の場での討議に移行したらどうですかということをお願いしていますけれども、学者の先生方の中には、オープンの場になると、言わなくてもいいことも言わなければいけなくなるとか、率直な議論がしにくいということもおっしゃいましたが、ほぼ論点も整理できているところもありますので、できるだけ早く、この議論は公開の場でみんなに聞いていただきながらやってもらうというふうにしたらどうかと思います。その辺について、どうなるかの方向も示していただければと思います。

○河上委員長 将来的には事業者や、消費者団体の方も入れたほうがいいのではないかとか構成メンバーを見直す必要が出てきます。専門調査会と同じような仕組みにするのはもうちょっと先になるかもしれませんけれども、議論そのものが、ある程度方向が見えてきている段階になれば、公開にしていくことを考えていきたいと思います。
まだ、方向も見えないときには、論点ごとに芽が出た段階で、各委員に対していろいろな御批判が来たり、場合によっては歪んだ形で議論が膨らんでしまうこともありますので、今までは慎重であったわけです。今後、成果を徐々に明らかにしてまいりますが、今回はその第一歩ということで御理解いただければと思います。心づもりとしては、来年の3月ぐらいから、専門調査会方式で公の場で、個々の論点についてのメリット、デメリットを具体的に皆さんで議論をしていただくことにし、その前に、可能な限りオープンにして話を聞いていただく機会ができればというふうに考えております。
本日の議題は、こちらで用意したのは以上でございます。きょうは、お忙しい中、審議に御協力いただきまして、ありがとうございます。

≪4.閉会≫

○河上委員長 最後に、事務局から、今後の予定等について説明をお願いいたします。

○原事務局長 日程の前に、簡単に御報告ですけれども、佐野委員の意見にもありましたように、要望書や意見書をどう扱うかというのは委員会立ち上げ時からの課題です。通り一遍に御回答を申し上げて、「今後の審議に参考にさせていただきます」ではいけないだろうということで、懸案の課題でありました。それで、どういうふうにするかというのは委員間打合せで協議をしていって、できればこの委員会の場を使うことも含めて、何らかの方策は考えたいと思っておりますので、簡単に御報告をさせていただきます。

○河上委員長 場合によっては、委員の方から、こういう意見について自分は気になっているけれども、どうだろうかという発言をしていただいて、私のほうで、委員会での今までの打合せの中での傾向とか、結果について、「今、こんなところでしょうかね」というようなやり取りを見せることで答える手はありますね。

○原事務局長 そうですね。どういった議論をしているかということは、一応項目分けはしてホームページで出していますけれども、一体どういう内容でとか、それについて委員会がどう考えているかというのは、やはりもう少しお知らせする必要があると思っております。ずっと課題でしたので、早いところで実現したいというふうに思っております。
次回の委員会ですけれども、10月30日(火曜日)を予定しております。本日に引き続き、健康食品についてのヒアリングを予定しております。
それから、今週の土曜日、10月20日ですけれども、地方消費者委員会を山口で開催いたします。傍聴の方にも御案内を差し上げましたけれども、どうぞ御案内、よろしくお願いしたいと思います。
以上です。

○河上委員長 高齢者トラブルを中心にやることになりますので、御関心の向きは是非お願いいたします。
それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)