第21回 消費者委員会 議事録

日時

2010年3月31日(水)16:00~18:00

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
松本委員長、中村委員長代理、池田委員、川戸委員、櫻井委員、佐野委員、
下谷内委員、田島委員、日和佐委員、山口委員

【説明者】
消費者庁 成田企画課長、西川企画課企画官
金融庁 小野信用制度参事官
国民生活センター 柳橋商品テスト部長、鎌田商品テスト部調査役

【事務局】
齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.集団的消費者被害救済制度について
3.貸金業制度・多重債務者対策について
4.乗用車用フロアマットのアクセルペダル等への影響に関する調査結果について
5.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:14KB)
【資料1】 集団的消費者被害救済制度研究会の検討状況について 【資料2】 貸金業制度・多重債務者対策関連資料(金融庁提出資料) 【資料3】 乗用車用フロアマットのアクセルペダル等への影響に関する調査結果(国民生活センター提出資料) (PDF形式:607KB)

≪1.開 会≫

○原事務局長 それでは、おそろいになりましたので、始めたいと思います。本日は「第21回消費者委員会」、今年度最後ですけれども、開催したいと思います。
では、委員長、どうぞよろしくお願いいたします。

○松本委員長 それでは、議題に入りたいと思います。
本日は、当初予定しておりました集団的消費者被害救済制度についての議題に加えまして、貸金業制度・多重債務者対策について及び乗用車用フロアマットのアクセルペダル等への影響に関する調査結果についても取り上げたいと思います。

≪2.集団的消費者被害救済制度について≫

○松本委員長 最初は、集団的消費者被害救済制度についてです。
これにつきましては、昨年10月の第4回の当委員会でも取り上げましたが、その後、消費者庁において昨年11月から集団的消費者被害救済制度研究会を開催し、検討が進められております。
本日は、消費者庁から、その集団的消費者被害救済制度研究会の検討状況を御報告いただき、それを踏まえて議論を行いたいと思います。
それでは、消費者庁企画課より御説明をお願いいたします。

○成田消費者庁企画課長 企画課の成田でございます。では、私の方から一言申し上げたいと思います。
集団的被害者救済制度研究会についてでございますけれども、御案内のとおり、この制度につきましては、消費者庁及び消費者委員会設置法の附則第6項におきまして、法律の施行後3年を目途として、検討を加え、必要な措置を講ずるとされているところでございます。これを受けまして、昨日、閣議決定させていただきました「消費者基本計画」におきましても、同様の内容を記載するとともに、実施時期については、「平成22年夏を目途に論点の整理を行い、平成23年夏を目途に制度の詳細を含めた結論を得ます。」とさせていただいているところでございます。
一方で、これも御案内のとおり、内閣府国民生活局におきまして、20年12月から「集団的消費者被害回復制度等に関する研究会」を開催いたしまして、昨年8月にとりまとめを行い、委員長から御紹介がございましたけれども、昨年10月26日の消費者委員会において、座長の三木先生からその内容を御説明いただいたところでございます。その際に委員長からは、消費者庁において、「さらに基礎的な調査研究を進め、委員会として随時消費者庁側から検討状況についてお聞きし、庁において一定の論点整理を行っていただいた後に、委員会として、この問題について本格的に議論していきたい」という御指示をいただいたところでございます。
これを受けまして、消費者庁におきましては、昨年11月から集団的消費者被害救済制度研究会を開催し、議論を行っていただいているところでございまして、本日、その検討状況について御報告させていただきたいと思っております。
この研究会におきましては、今年夏ごろを目途に、考えられる選択肢の提示や論点の整理を行っていただきたいと考えているところでございます。研究会の検討状況につきましては、後ほど担当の方から詳しく御説明させていただきたいと思っておりますけれども、参議院の附帯決議におきましても、消費者庁関連3法の附則各項に規定された見直しに関する検討に際しては、消費者委員会による実質的な調査審議を踏まえた意見を十分に尊重して、所要の措置を講ずるとされておりますので、この夏以降、どのようにその議論を進めていくのか、検討を進めていくかにつきましては、消費者委員会の皆様ともよく御相談させていただきながら、対応させていただきたいと考えているところでございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、研究会の状況につきましては担当の方から御説明させていただきます。

○西川消費者庁企画課企画官 それでは、お手元の資料1-1~1-3に基づきまして御説明させていただきます。
まず、資料1-1(PDF形式:30KB)でございます。集団的消費者被害救済制度研究会の検討状況を簡単にまとめたものでございます。
先ほどからもございましたけれども、この研究会、11月から開催されておりまして、資料の4ページと、5ページをお開きいただきたいのですが、このスケジュールのとおり、本年8月末までを目途に、計13回開催するということで現在予定しております。
現時点におきましては、第2回から4回で財産保全についての議論をした後、中間的な論点整理を、海外調査の報告をいただきながら始めたところでございます。今後は、まず集合訴訟についての整理を、第9回、5月まで行いまして、次いで、行政などによる利益剥奪についての整理を7月、第11回のころまで行いまして、最後の2回の研究会で報告書のとりまとめを行う予定でおります。
どういう結論になるのかということについては、本当に議論はこれからということで、まだ見えていないのですけれども、現時点で委員の皆様の共通認識としてあると思われますのは、消費者被害の類型というものは非常に多様なものであるということでございまして、そういった多様な消費者被害については、集合訴訟であれ、あるいは行政による利益剥奪であれ、これ1つで万能であるといった単一の制度はないのではないか。そういう意味で、幅を広げた検討というものが必要なのではないかという共通認識があるという感じかと思います。
次いで、資料1-2(PDF形式:27KB)について御説明させていただきます。
これは、集団的消費者被害救済制度研究会の第5回の議論で使った資料でございまして、集合訴訟型の諸類型について、論点整理の検討に用いた資料でございます。この資料に基づきまして、本日はまずは集合訴訟についての議論の進捗などについて御報告させていただきたいと思います。
もう一つ、行政による利益剥奪というものがあるわけですけれども、これについては、これまで内閣府時代に行われていました研究会で、利益剥奪に関連する制度といたしまして、例えば独禁法とか金商法の課徴金制度などについて議論したという経緯もございますし、今度の研究会でもすでに財産保全の方法の一つとして、例えば国税徴収法の保全差し押さえなどについて議論を行ったところではございますけれども、今度の研究会では、行政による利益剥奪等の手法については、今やっている集合訴訟の議論が一段落した後に議論を行うというスケジュールになっておりますので、そちらの方については、別途お時間をとって御報告させていただければと考えております。
集合訴訟制度についてでございます。消費者保護にとって集合訴訟制度が必要であるという認識というのは、最近では世界的にほぼ広く共有されているのではないかと考えております。消費者被害救済ということについて、行政だけがやるというのではリソースの面からも対応し切れないと思われますし、それから性質としても、行政が例えば行政法規違反にないような民民の問題について直接介入するというのは、一定の限界があると考えられることから、民事訴訟による解決というものが重きをなしているところはございます。
しかしながら、この集合訴訟制度でございますけれども、世界中の状況を見ても、これが決定版であるといったスタンダードというのはないような状況でございます。非常にいろいろな考慮を要するものでございまして、各国においても現在なお模索を続けている発展途上の制度なのかと考えております。
資料1-2(PDF形式:27KB)は、この集合訴訟制度というものを、いわゆるオプト・イン型、オプト・アウト型の2つに大きく類型化いたしまして、それぞれのメリット、デメリットを整理した資料でございます。実際の制度は、諸外国もそうなのですけれども、ここで言っている純粋なオプト・インとかオプト・アウトだけではなくて、その両者を併用するタイプもございますし、またオプト・インかアウトかという議論とはちょっと次元の異なる、後で申し上げますけれども、いわゆる二段階型と言われるものなど、非常にいろいろな集合訴訟の類型が存在いたします。
今、申し上げた二段階型でございますが、この資料1-2(PDF形式:27KB)には出てこないので、先に簡単に申し上げますと、ブラジルのクラスアクションとかフランスで検討されている制度などが、いわゆる二段階型と言われるものでございまして、オプト・アウトと並んで非常に採用されている例が多い制度でございます。
二段階型というのは何が二段階なのかといいますと、集合訴訟にはいわゆる共通争点、すべての原告の方に共通する争点と、もう一つは個々の原告ごとに事情が異なる個別の争点というものがございますけれども、この共通争点と個別争点というものを段階を分けて判断する。これが二段階型と言われるゆえんでございます。
二段階目のうちの第一段階目では、共通争点について集合訴訟で判決を出すということです。共通争点として典型的に挙げられるのが、いわゆる責任の有無というところでございます。
その後、個別争点を個々人の事情に応じて第二段階目で判断することになります。この判断のやり方といたしましては、通常の訴訟だけではなくて、いろいろな調停とか非訟手続などを組み合わせて消費者の負担を減らすというやり方もございます。二段階型に関しては、今後研究会の方で本格的に議論していくので、本日はこのぐらいにさせていただきます。
資料に戻りまして、まず1のオプト・イン型でございます。1ページ目にございます。
それぞれ長所と短所が挙げられておりますが、その長所の1から3、いろいろございますけれども、これはいずれもオプト・イン型というのが、すで存の制度との関係で無理がない制度といいますか、導入しやすい制度であるということを言っております。
長所の4と5については、個々の消費者をいわゆるオプト・インという形で特定することによるメリットが書かれております。
長所の6は、個別訴訟に比べて、個々の消費者の負担が減るということが書かれておりますが、これについてはオプト・アウト型でも同様のメリットがあると考えられるところでございます。
他方、短所もここに挙げられております。
短所の1でございますが、これはある意味、さっき申し上げた長所の裏返しになるのかもしれませんが、現行の制度と比べてあまり差がないのではないかということがあろうかと思います。
それから、短所の2から4については、オプト・インという何らかの行為を消費者がしなければ参加できない、それから来る短所というのがあるのではないかということがあります。ただ、この点については、いわゆるオプト・イン、訴訟に参加できる期限をかなり後まで引っ張ることによって参加がしやすくなるということで、オプト・イン型の制度設計次第で多少は変わるものもあるかと思います。以上がオプト・イン。
2のオプト・アウト型についてでございます。
これは、2ページから3ページ目にございますが、ざっと見ただけでも、長所が4つ書かれているのですが、短所が13個も書かれているということがございます。これは、決して事務局としてオプト・アウト型を導入したくないということで、こういう構成になっているわけではなくて、後でも申し上げますけれども、オプト・アウト型というのが我が国の訴訟制度にとっては非常に新しい制度であるということで、実現に当たって、その分クリアーしなければならない論点がいっぱいある、そういう意味で、理解していただければと思います。
長所についてでございますけれども、オプト・アウト型というのは、オプト・イン型より広い消費者が対象になるということが挙げられます。その分、例えば長所3に書いてありますが、違法行為の抑止ということについても非常に効果が大きいし、それから長所の4に書かれておりますけれども、紛争の一回的な解決が図れるということもあるということが挙げられると思います。
短所といいますか、クリアーしなければならない論点については、いろいろあるのですが、まず1でございます。やはりオプト・アウトということの性質から、消費者の権利を、権利を持っている人からの授権もないのに、なぜ代表原告が勝手に行使できるのかという理論的な解決をまずしなければいけないということがございます。
それから、2番、これもオプト・アウトということの帰結でございますけれども、オプト・アウト型で原告が敗訴してしまったら、結局、オプト・アウトしなかったすべての消費者の権利が奪われてしまうのではないかということでございます。現実には、そういう消費者関係の訴訟というのは勝つのはなかなか大変なわけでございまして、こういったことを考えると、いわゆる消費者の権利についての手続保障の面から問題があるのではないかということがあろうかと思います。
この1番と2番がオプト・アウト型の導入の際に、理論的な意味で、まず壁となって立ちはだかる、クリアーしなければならない論点と言っていいかと思います。
この2つを仮にクリアーできたとしても、やはりオプト・アウト型に伴うものとして、例えば8番にございますけれども、個々の消費者の特定というものが困難であって、そういう人々の損害額をどうやって特定するのか。あるいは、不特定な消費者にどうやって分配するのかといった問題がございます。
それから、これは実務的な話でございますけれども、オプト・アウト型をとる場合には、自分は訴訟に参加したくないという消費者の権利を十分保障するために、すべての関係者に対して通知が必要になると思えるわけでございますが、かといって、この通知をどういうふうにやるのか。個別に一人一人通知していると、非常に莫大な費用と手間もかかりますし、かといって新聞公告だけでいいのかといえば、それは読まなかった人はどうなるのかという感じで、非常に問題が大きいということもございます。
こういった理論的あるいは実務的な困難というものを乗り越えて、仮にオプト・アウト型を導入できたといたしましても、初めに申したとおり、それが万能の制度になるというものではないわけでございます。短所の10番に書いてありますけれども、例えばオプト・アウト型でも、個別の争点は個別にしか審理できないということなので、オプト・アウト型が機能する事件というのは限定されることになるかもしれませし、あるいはオプト・アウト型では、これは短所の9にございますけれども、そういう意味でも対象となる事案が限定されるのではないかという懸念もございます。
この点は外国でも同じ事情がございまして、アメリカのクラスアクション、非常に有名でございますけれども、裁判所の判断で認可されなかった事件というのはいっぱいある状況でございます。
それから、いわゆる偽装表示事件というものに対してオプト・アウト型を使うのがなかなか難しいのではないかという指摘もございます。と言いますのも、偽装表示というのは広告を見た被害者とか被害額というものを特定するのがなかなか難しいというものもございますし、そもそも偽装表示を見たということによる被害というのを、どう観念するのかということ自体が一つの論点でありますので、集合訴訟として構成することができるのかということについての問題点をクリアーしなければいけないということがございます。そういう意味で、例えば偽装表示事件については、行政による金銭の徴収の方が向いているのではないかという指摘もあるところでございます。
また、詐欺的商法というものに対しても、オプト・アウト型といいますか、いわゆる集合訴訟というのがなかなか対応しにくいという要素もございます。これは、理論的にそうだというより、こういった詐欺的商法になりますと、いわゆる加害者の事業者、悪徳業者というものが事業を立ち上げた段階から、すでに債務超過だったりする例が多いわけでございまして、こういったことを考えますと、民事訴訟手続で責任を追及していくよりも、破産手続とか、あるいは刑事事件として処理しなければいけない場面が実際のところ、多くなるかもしれないと思われるからでございます。
いずれにしても、集合訴訟を導入する場合に、現実に使い勝手の悪い制度では意味がないということは言えるわけでございまして、そういう意味では、事務方としては利用者の積極的な運用に耐えられるような制度をつくっていかなければいけないと考えております。それは同時に、裁判所にとっても運用がやりやすくて、あと事業者の立場から見れば濫用のおそれが少ないといった制度というものを目指していかなければならないのではないかと考えております。
したがいまして、集合訴訟については、今後オプト・アウト型あるいは二段階型など、幅広い制度を視野に入れて具体的に検討していきたいと考えております。その際は、これは言うまでもないことでございますけれども、消費者の権利とか企業活動に対する影響が非常に大きいものになるわけでございまして、慎重で緻密な検討というものに努めてまいりたいと考えております。
あと、これは我が国の司法制度にとって非常に新しい制度でございまして、民事訴訟手続だけではなくて、執行手続とか保全手続あるいは行政手続とか刑事手続といった、いろいろなものとの関連を踏まえた大局的な検討も必要になりますので、この点についても消費者委員会の御意見を聞きながら十分に検討してまいりたいと考えている次第でございます。
資料1-3(PDF形式:72KB)は、もう時間も迫っておりますので、詳しい説明は省略させていただきますが、具体的に集合訴訟制度をつくろうとした際に、問題となるであろうという論点を列記したものでございます。
例えば消費者被害、どういうものが対象となるのか、あるいは権利行使の主体はどういう人が考えられるのか、あるいはさっき言ったオプト・インかアウトかといった問題、あるいは通知・公告の問題をどうするのか、いろいろな問題があるわけでございまして、こういった論点について今後検討していきたいと考えている次第でございます。説明は以上でございます。

○松本委員長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして御意見、御質問がございましたらお出しください。
中村委員、どうぞ。

○中村委員長代理 事実確認だけなのですが、資料1-3(PDF形式:72KB)、論点整理案というのはどなたがおつくりになったのですか。

○西川消費者庁企画課企画官 事務方です。

○松本委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員 この間問題になっております未公開株の事業者などが、消費者から違法に収得してため込んでいる財産をいち早く海外に隠匿するなりして、結局被害回復ができなくなるということが繰り返し行われております。私自身が経験しましたジーオーグループの投資詐欺事件でも、約200億円以上の財産がフィリピン等に雲散霧消して、被害がほとんど戻ってこなかった。3%程度の配当しかできませんでした。
そういう経験を踏まえますと、いわゆる財産保全が非常に重要だと思うのです。例えば整理回収機構RCC型の事業者の財産等をいち早く察知して、国民生活センターのPIO-NETで200件とか300件以上の同種被害が申告された場合には、これは一定の行政判断が伴うと思うのですが、金融庁なり消費者庁なり、しかるべき行政庁が裁判所の決定を得て財産を保全する。保全決定後の段階では、事業者は当然事業を続けられなくなると思いますので、かなり大なたの行政処分だと思いますが、あるいは行政措置、裁判所を通した手続になりますが、そういう手続が非常に重要だし、やり得を許さないという観点でも、そういうものを是非実現する必要があると思っております。
先ほどコメントがありました行政処分、いわゆる偽装表示などの場合におけるやり得を許さない。ミートホープ事件とか比内鶏事件などのように、偽装表示で売って不当に利益を収得している業者。これは個別の被害者が裁判を起こして損害賠償というのはほとんど考えられませんので、行政的な処分が必要です。現在、公正取引委員会が課徴金を課しておりますが、それと類似の行政処分を一定の類型の違反行為については行って、やり得を許さないという制度も、これは行政権限として必要だと思います。
そういう行政が行うことで被害抑止、あるいは被害救済を図るという手続と、今、2つの手続、二段階型、それからオプト・アウト型の訴訟手続の御説明がありましたが、このような手続とはまた持ち場、持ち場で違うところがあると思います。したがいまして、今、西川企画官が説明されましたが、幅広くあり方を検討したいという意味では、私自身も保全処分と行政処分で違法収益をはく奪する2つの制度と、それからオプト・アウト型、二段階型の訴訟制度のすべてを複合的に実現して、やっと少し被害の回復が図れるようになるのかなとも思うのですが、そこら辺の検討の視点というのは、そういう幅広でやっているということでよろしいのでしょうか。

○西川消費者庁企画課企画官 委員のおっしゃるとおりでございまして、非常に幅広い分野の検討というものを今後も続けていきたいと思っております。本年夏に研究会の報告が出た以降は、消費者委員会のサイドで検討が進められるのかもしれませんが、その際も是非そういった形でお願いしたいと考えております。
財産保全の方についても、これまでもヒアリングで、委員がちょっとおっしゃったRCCの方からもヒアリングしておりますし、今の御指摘のような観点も踏まえ、検討してまいりたいと思っております。

○松本委員長 櫻井委員、どうぞ。

○櫻井委員 具体的に何をするのかという点について、この話がなかなか大きい問題で、私も少し考えた上でメモ的なものを出さざるを得ないかなとも思っておるのですけれども、基本的にこの検討会の検討は非常に不十分であると思っております。幅広とおっしゃっているのだけれども、全然幅広ではありません。
だから、今日は集合訴訟の点についての御報告ということだったのだけれども、結局現行の民事訴訟が必ずしも機能していないというときにどう対応するかというと、民事訴訟法の考え方でもって、これをどうやって改革していくかということが一つの線ですね。その中で、オプト・イン型とかオプト・アウト型というものがある。だけれども、新規のオプト・アウト的なものについては、実務上受け入れがたいということもあって、非常にハードルが高いというニュアンスの御報告だったと思います。
もう一つの大きなルートというのは、我が国の行政訴訟は、民訴のちょっと飛び出したような感じで、純然たる公法上の訴訟にはなっていないのですけれども、行政訴訟ルート的なものというのがありまして、これは人間も民事訴訟学者と違って人数も少ないし、研究の蓄積も必ずしもないところなので、なかなかそういう議論をされること自体が難しいので、行政としても拾い上げにくい部分のあろうかと思いますが、例えば行政訴訟であれば、主観訴訟の形をとりながら客観訴訟的要素を持っているわけです。だから、取消判決であれば、それは個人が起こした訴訟であっても対世効があるとか、つまりオプト・アウト型の民訴の型では難しい部分が、むしろそこには潜在的に行政訴訟の場合は備わっているわけです。
ということもあり、行政訴訟というのは、いわゆる厳格な司法権の範囲を超えていまして、行政的な作用と司法的な作用の間にあるような、簡単にはとらえがたい特徴を持っています、ということになりますと、純然たる訴訟と行政処分の境目は決してはっきりしているわけではないですね。そうしますと、いろいろな行政的な対応というのは、民訴的な対応に比べて、もっとバリエーションがあるわけで、さまざまな工夫の余地があるのですが、本日のご報告ではそういう御発想はほぼ完璧に欠落しておられる。
申しわけないのですが、検討会の構成員を見ますと、座長の方も座長代理の方も民事訴訟法の先生で、最高裁と法務省が入っているわけですが、いずれも裁判の手続の御専門ということで、そこから逸脱するといいますか、いい意味で離れること自体にニーズにこたえる新しい素地があるにもかかわらず、多分こういう布陣ですと、集合訴訟についても今申し上げたような発想は出てこないでしょうし、それから財産保全に関しては、例えば没収もそうなのだけれども、刑法上の付加刑としての没収だけを念頭に置いておられると思いますけれども、現行法上、実は行政が行う没収というのもあるのです。というようなこととか、多分そういう話はほとんど出てこないと思うわけです。
ということで、こうした非常に狭い発想しかない路線で、民訴の延長上にある種の制度をつくる、しかも法務省とか最高裁が受け入れ可能な仕組みをつくるということが今後想定されますが、だとしますと、何からかの制度そのものはできるかもしれませんが、それは非常に限定的な有効性しか持たない仕組みしかできないだろうと思います。消費者委員会の意見を聞くとおっしゃるのであれば、おざなりではなく、きちんと意見を聞いていただきたいと考えておりまして、そこのところはよろしくお願いしたいと思います。以上です。

○松本委員長 どうもありがとうございました。研究会の方で櫻井委員の御意見をお聞きいただくような場を是非設けていただきたいと思います。
ほかに御意見。池田委員、どうぞ。

○池田委員 山口さん、櫻井さんがおっしゃったことは非常に的を射た話だと思います。今、急がれるのは、現実に悪徳な業者から被害を受けている方をどう救済していくかということです。それが、消費者庁ができ、あるいは消費者委員会ができたことの最大の目的の一つでもあろうと思います。そのような対応をどうするかということは非常に急がれることだろうと思いますので、それがどういう形でできるかということを、スピーディーに検討してもらうことが大きな課題ではないかと思っています。
もう一つ、我々事業者の立場から申し上げると、前回も申しましたけれども、正常な事業をやっている企業にも過失に基づいた事件というのは起こり得ると思います。そのような過失事例の他にも、悪徳業者によるものや偽装表示等、いろいろなタイプがあり、それらが非常に複雑に分かれてくると思うので、かなりきめ細かな対応をとらなければいけないと思います。そういう配慮を是非していただきたいと思います。
また、私はアメリカのことはよく知りませんけれども、よく言われているような、いわゆる訴訟型の社会になってしまいますと、事業者にとっては非常に仕事がやりにくいことになるので、今までの日本のいいところに新しい消費者の目線を加えた制度設計をされることを期待したいと思っております。

○松本委員長 下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 今おっしゃられたこと、全く同感だと思っております。
ちょっとお聞きしたいことなのですが、基本計画の1ページでも言いましたように、1-3(PDF形式:72KB)の2ページで、いかなる消費者被害を対象とするか、消費者をどのように定義するかとありまして、議事要旨を見たのですが、あまりないように思いますので、この辺をどのようにお考えになっていらっしゃるのかということと。
それから、素早く被害の回復に動くことが大事だと思いますので、原告適格につきまして、消費者契約法上は適格消費者団体というものがあります。それから、附帯決議におきましても消費者団体というのがありましたので、その辺のところをどのようにお考えなのかというのを、今後、もう少し詰めていただけるのかどうかということでお伺いしたいと思います。
分配金等については、また利益剥奪のところでさせていただければと思っております。

○西川消費者庁企画課企画官 どういうものを消費者被害の対象にするかとか、消費者をどのように定義するかとか、あるいは集合訴訟の主体として、適格消費者団体なのか、あるいはほかのものが入るのかといったところ、まさに検討中でございまして、その辺に関しては、消費者団体の御意見も十分踏まえた上で検討を深めていきたいと思っております。

○松本委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員 実は、一番私、心配しておりますのは、今年8月、9月から消費者委員会の方でも検討しながら、来年に入ったら法案作成作業をしなければいけないだろう。その上で、再来年春には国会に上程するとなると、法案作成をどこでするのか、だれがするのかということが本当に目先の問題になってくるわけですが、聞いたところによりますと、消費者庁でこの問題に関わっている人は1人しかいない。それで大丈夫なのか。これだけの大ぐくりの制度をつくっていくわけですから、少なくとも3~4人は必要ではないか。
原因を聞くと、定員の枠がないのだという話も聞くものですから、ちょっと待ってよ。来年4月からは、少なくとも3~4人の、あるいは5~6人のスタッフを抱えて、きちんとしたものをつくっていただかないと、政府の約束が守れなくなるのではないかと本当に心配しております。重要な、切実な問題だと思いますので、その点の御配慮も是非よろしくお願いいたします。

○成田消費者庁企画課長 上司に伝えたいと思います。

○松本委員長 ほかにありませんか。

(「はい」と声あり)

○松本委員長 では、どうもありがとうございました。消費者庁におかれましては、本日の議論を参考にして、今後の集団的消費者被害救済制度の検討を進めていただきたいと思います。
委員会といたしましても、随時消費者庁から検討状況をお聞きし、研究会において一定の論点整理を行っていただいた後に、この問題を本格的に議論していきたいと思います。どうもありがとうございました。

≪3.貸金業制度・多重債務者対策について≫

○松本委員長 それでは、次の議題に移ります。昨今の多重債務問題の解決に向けまして、本年6月に改正貸金業法の完全施行が予定されておりますが、これを円滑に実施するための検討が金融庁の貸金業制度に関するプロジェクトチームにおいて行われております。
本日は、金融庁より信用制度参事官にお越しいただいておりますので、先日、プロジェクトチーム座長より示されました改正貸金業法の完全施行に向けた対応についての試案につきまして御説明いただき、それを踏まえて委員会として議論を行いたいと思います。
なお、消費者庁からも政策調整課においでいただいております。この問題につきましては、消費者委員会におきましても、全面施行に向けて大変多くの要望書をいただいておるところでございます。
それでは、まず金融庁より御説明をお願いいたします。

○小野金融庁信用制度参事官 ただいま御紹介をいただきました金融庁で信用制度参事官を務めております小野でございます。よろしくお願いいたします。
お手元に3つの資料がございますが、まずは皆様御存じのこととは思いますが、貸金業法の概要について簡単に御説明したいと思います。横紙の貸金業法改正等の概要(PDF形式:391KB)というものを御参照いただければと思います。
そもそも、この貸金業法の改正を平成18年に行った背景は、御承知のとおり、貸金業者による消費者向け貸付けが非常に増えまして、巨大な貸金業市場が形成されたということを背景としています。この貸金業者による貸付けは、無担保無保証で消費者向けに貸付けを行っており、貸付残高が平成18年当時13.8兆円、利用者が1,170万人となっておりました。このような状況の中、特にいわゆる多重債務問題が非常に深刻化しました。多重債務の定義は一概にはないわけでございますが、例えば5件以上の貸金業者から借りている者が、平成19年2月時点では約180万人いまして、これらの方々の平均借入額が240万円となっていました。このような多重債務の問題の改善を図ることを目的として、貸金業法の改正が行われました。
具体的内容につきましては、2ページをごらんいただきたいと思います。改正は大きく4つの柱からなっております。
まず、貸金業の適正化ということで、貸金業の業界に参入する参入条件の厳格化を図っております。最終的には、最低純資産額を5,000万円にすること。また、いわゆるコンプライアンスオフィサー、貸金業務取扱主任者の資格試験を導入いたしまして、完全施行後はその合格者を営業所ごとに配置することが義務付けられるということになっております。
また、貸金業協会の自主規制機能強化をいたしまして、この貸金業協会を当局の認可を受けて設立する法人にしまして、広告の頻度や貸付過剰防止についての自主規制ルールの制定を義務付けております。
また、夜間のみならず、日中の執拗な取り立てなどの取り立て規制等を強化しております。さらに、貸付けに当たりましては、トータルな元利負担金額などを説明した書面を事前に交付することや、一時社会問題になりました、借り手の自殺によって保険金が支払われるという保険契約の締結を禁止すること等々、行為規制の強化を図っております。
また、先ほど申し上げましたような多重債務問題に直接アプローチしていくために、過剰貸付けの抑制を図っていくということで、まずは指定信用情報機関制度を導入することにしております。これは、貸金業者が指定信用情報機関から借り手の信用情報、つまり借り手がどのぐらい他の貸金業者を含めて借りているのか、借入残高がわかるようにする制度を導入しております。
そして、その制度を前提に、貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超える場合、新規の貸付けは禁止するという、いわゆる総量規制を導入することになっています。
3番目の柱は、金利体系の適正化でございますが、これは出資法の上限金利を引き下げ、いわゆるグレーゾーン金利を廃止するということでございます。
4番目は、ヤミ金対策ということで、ヤミ金融に対する罰則を強化しています。
3ページでございますが、この法律は平成18年12月に公布されましたが、非常にインパクトの大きい法律ということもありまして、段階的に施行しております。すなわち、先ほど申しましたヤミ金等の罰則強化は、公布後直ちに、1か月後に施行しております。それから、取り立て規制強化や自主規制機関の設立などは、1年後に施行しております。そして、3段階目といたしまして、先ほど申しました、いわゆるコンプライアンスオフィサーというものを試験制度が去年6月からスタートしております。また、財産要件も、最終的には先ほど5,000万円と申し上げましたが、昨年6月の段階で、まず2,000万円に1回引き上げております。
そして、マル5、マル6、マル7、すなわち事前書面交付義務の導入、それから収入の3分の1以上の借入残高がある場合、新規借り入れができないという総量規制、それから上限金利の引き下げが今年6月までに施行されることとなっています。これで改正貸金業法が完全施行になるという段階的な施行になっております。
4ページ目は、今お話ししたことでございますので、飛ばさせていただきまして、5ページをごらんいただきますと、総量規制の概要が書いてございます。
左側から見ていただきますと、まず原則、すべての個人向け貸付けというものは、指定信用情報機関に全部登録されます。そして、貸金業者は、顧客が他の貸金業者からどのぐらい借り入れているかを把握するために、指定信用情報機関に照会をかけます。当然、この指定信用情報機関は厳格な情報管理が義務付けられておりますし、貸付けに当たっての照会以外にこの情報を使ってはいけないことになっております。したがいまして、この信用情報機関は誰でもなれるわけではなく、当局が審査して、一定の信用がある、きちんと情報管理ができる者に限って、国が指定する形をとっております。
そして、このような指定信用情報機関に、顧客の信用情報を照会いたしまして、自分の会社だけの場合は50万円以上、他の貸金業者を含めて100万円以上を超える貸付けがある顧客につきましては、年収が本当にどのぐらいあるかの資料を徴求し、返済能力を調査し、一番右側でございますが、原則として総借入残高が年収の3分の1を超える場合には、新規の借り入れはできないという仕組みになっております。
ただ、例外と書いてございますが、借り手の返済能力が定型的に認められる場合については、例外的な借り入れを認めてございます。
それから、6ページが上限金利でございます。
左側が改正前でございますが、これまではいわゆる出資法上の上限金利と利息制限法上の上限金利の間にすき間がありまして、これにつきましては、任意性・書面性を満たす場合には有効であることになってございましたが、今回の改正で、このすき間を基本的になくすことになりまして、出資法上の上限金利を20%に引き下げることになります。したがいまして、今後はこの刻みでいきますと、10万円までが20%、100万円までが18%、100万円以上が15%という利息制限法上の上限が上限金利となりまして、その超過部分は無効になるということでございます。
恐縮でございますが、次の3枚の紙をごらんいただきますと、この法律につきましては、先ほど申しましたように本年6月までの完全施行となっておりますが、実はこの法律に附則というものがございます。1枚目をめくっていただきますと附則の写しがございます。
附則67条で、政府はこの法律が施行後2年6か月以内、つまり今年6月までに、それまでの貸金業者の実態とか市場の需給の状態を見た上で、6月に施行する総量規制や上限金利の引き下げを円滑に実施するために、講ずべき施策の必要性の有無について検討を加え、その検討の結果に応じて所要の見直しを行うものとする、ということが定められております。
したがいまして、この附則の規定に基づきまして、また1ページ目にお戻りいただきますと、昨年11月に貸金業制度に関するプロジェクトチームというものが設置されました。この附則に基づく検討を行うためのプロジェクトチームでございます。
メンバーは、2にございますように、当庁の担当副大臣であられる大塚副大臣、座長代理は消費者庁担当の大島副大臣、事務局長は当庁の田村政務官、それから消費者庁担当の泉政務官と法務省担当の中村政務官がメンバーとして入っています。基本的に貸金業法は金融庁と消費者庁が、利息制限法、出資法は金融庁と法務省が共管となっておりますので、この3つの省庁の三役がプロジェクトチームのメンバーとなっているところでございます。
そして、これまで、このPTの下に金融庁、消費者庁、法務省の3人の政務官からなる事務局会議というものを設置いたしまして、昨年12月以降、13回に及ぶ精力的なヒアリングというものを行ってまいりました。
そして、そのヒアリング結果を基に、3月から親会議と申しますか、貸金業制度に関するプロジェクトチームにおいて検討が行われておりまして、先ほど松本委員長からお話がございましたように、3枚目の紙でございますが、去る3月24日に改正貸金業法完全施行に向けた対応についてということで、大塚座長の座長試案という形で案が提示されました。この案につきましては、プロジェクトチームとしての5人の方々の総意ということで、この案で世に問おうということでございます。
資料(PDF形式:321KB)を1枚おめくりいただきますと、貸金業制度PTの改正貸金業法の完全施行について座長試案となってございます。最初の1、2、3、4パラグラフまでは、今、私がざっと申し上げました、これまでの背景が書いてあります。
5パラグラフ目が、1枚目の紙のポイントでございまして、ここに書いてございますように、多重債務問題の解決を目的とした改正貸金業法については、法に定められた期限である本年6月18日までに完全施行することが総合的観点から適切であると判断する。さらに、改正貸金業法の円滑な施行を図るため、借り手等の実情をも踏まえ、これから御説明します10の柱からなる方策を重層的に推進していくことが必要であると認識しているということでございます。
次に、いよいよ10の方策の中身でございますが、2枚目、3枚目は、これまでの現状認識等が書いてございますので、ここは割愛させていただきまして、4ページ目からがまさに借り手の目線に立った10の方策ということで、改正貸金業法の完全施行に伴い、講ずべき施策について書いてございます。
第1点目は、総量規制に抵触している者の借入残高を段階的に減らしていくための借換えの推進ということでございます。
現状では、例えば100万円とか200万円という一定の限度内で、何回でも借りたり返したりできるという、いわゆるリボルビング契約があるわけでございます。今はまだ総量規制は導入されていませんから、総量規制の基準を超えている方々は、毎月の最低返済額をとりあえず返すのですが、返すとともに、空いた枠の中でまた借りるということを行っている方もいます。返しては借りるということで、結果的には緩やかに残高が減っている場合もあるわけで、そういう方も結構いらっしゃる。ところが、今後総量規制が導入されますと、収入の3分の1を超える残高があると、返すことはもちろんできますけれども、新たに借りることはできなくなる。
もう一つ、若干脱線いたしますが、総量規制を超える借り入れがある人は、6月18日以降は直ちに超える分もすぐ返さなければいけないのではないかという誤解があるわけでございますが、そういうことはありません。あくまでも総量規制の基準を超えていた場合は、新規の借り入れができなくなるということでございます。
いずれにしましても、今、私が申しましたように、月々返しては借りるということで、結果的に返済残高を緩やかに減らしている方々が、今後新規の借り入れができなくなってしまい、返済が困難になるという問題をどうするかということでございます。もちろん、基本的にはまずは残高を減らしていくようなさまざまな努力をしていただくことが必要でございます。
ただ、一つのオプションとして、今までのように返しては借りるということができなくなってきますと、そういうリボルビング契約ではなくて、去年秋に私ども金融庁で中小企業者向けのいわゆる借入条件の変さら等を円滑に進める方策というものを実施しましたが、個人の方もそういう道も用意しておいてあげることが必要ではないかという問題意識に立ちまして、総量規制に抵触している方々が、今後、借入条件を変さらするということも有り得るのではないかと考えています。当然ある程度期限を定めることは必要ですけれども、期限、条件を定めて、月々の返済額を少なくし、なだらかに返していくという措置、例えば返済条件の変さらを伴う借換えも必要ではないかと考えています。
他方、現状の貸金業法では、このような借換えができないことになっております。どういうことかと申しますと、総量規制を超えている場合、現状の制度で借換えのための新規借入れを行うには、借換え前の契約における元本と返済が終わるまでの金利の返済額、つまり借換え前の契約における総返済額が、新規に借換えた場合の総返済額を超えてはいけないということになっております。
当然、この借換えは今の条件より金利を下げていく措置となると考えておりますが、そうはいっても、今まで3年で返す予定だった契約を5年で返すとなりますと、金利の負担からどうしてもトータルの返済額は超えてしまいますので、現状ではこういう借換えができなくなってしまうということでございます。今回、ここに手当てを行い、総返済額が増える借換えにおいても、段階的に残高が減少していくものに関しては、借換えを認める措置を行うということでございます。あくまでも借り手の方のオプションを1つ増やすという観点から、そういうものをやってはどうかというのが、この1番目の方策の趣旨でございます。
2番目は、事業者向けの対策でございます。
個人事業者の方は、事業計画、収支計画、資金計画という3計画を提出して、それらの資料を用いて将来的なキャッシュフローがある、返済能力があることが確認されますと、総量規制の例外として、残高が収入の3分の1を超えていても、事業資金を借りることが可能となっています。
しかし、次のページを見ていただきますと、その3つの計画について、どんなものをつくったらいいのかということが必ずしも法律上は明確ではなく、策定がなかなか難しい、ハードルが高いという声がございます。これにつきましては、実務を踏まえまして、どういう計画であればいいか、最低限記載すべき事項、この3計画をどういう中身にしたらいいのかということにつきましての明確化を図るため、一種のひな形を示したいということでございます。そういうものを示すことによって、個人事業者の方の計画の策定を手助けし、必要な場合には借り入れを行いやすいようにするという方策でございます。
3番目は、同じく個人事業者の方の対策でございます。現在の総量規制というのは基本的に個人というものを念頭に置いているものですので、総量規制のベースとなる年収というものは、給与、恩給、年金、不動産の賃貸収入に限定されております。法令上、個人事業者の年収というものは給与に当たりませんので、計算上ゼロとなるということでございます。
先ほど申しましたように、確かに事業計画等を出せば事業資金として借りられるわけでございますが、当然個人事業者の方は、例えば医療費が必要となる場面や、お子さんの教育費が必要となる場面など、緊急の消費者としての資金用途というものがあるはずでございますけれども、今申しましたように、今のままですと給与に当たらないものですから、個人事業者の年収はゼロとカウントされてしまい、このような緊急の消費者としての借入れができなくなる。
ここの問題を防ぐために、あくまでも安定的な収入ということは当然必要でございますけれども、個人事業者の事業所得であっても、安定的な収入である場合においては、これも総量規制の基準となる給与の定義に追加するという旨の府令の手直しを行ってはどうかということでございます。要するに、個人の場合、給与があれば借りられるのですけれども、個人事業者の場合はどんなに所得・年収があっても、今のままだと借りられなくなってしまいますので、この点につきまして手当てを行うという話でございます。
4番目でございますけれども、総量規制には適用除外と例外がございます。どういうものが適用除外かと申しますと、例えば住宅ローンとか自動車ローンのように、基本的に低金利で返済が長期にわたって、債務額も多額なものはおよそ総量規制になじまないということで、適用除外として総量規制の対象外になっており、これらの貸付けを行った場合、残高も借入総額に算入されません。
ところが、6ページ目でございますけれども、総量規制の適用が外れる場合としてもう一つ概念がございまして、有価証券担保ローンのように、顧客に定型的に返済能力があると認められる定型的な借り入れにつきましては、総量規制の例外として、それ自体は総量規制の基準を上回っていても借り入れは可能ですが、例外の場合、残高は借入総額にはカウントされる。先ほどの適用除外の場合は、残高は借入総額にカウントされないわけでございますが、例外の場合はカウントされてしまうということになりますので、残高が年収の3分の1を超えた場合には、もうその後、新規の借り入れができなくなってしまうということでございます。
今回、この総量規制の適用除外と例外の分類というものにつきまして再検討を行うことを考えています。例えば先ほど申しました有価証券担保ローンや不動産担保貸付は、考えてみれば、もともと有価証券なり不動産なりの資産の担保の裏付けがある貸付けでございますので、そういうものとか、不動産の売却代金により返済される貸付け、これも今、例外に分類されておりますが、これも将来、売却代金が入ってくるということで、将来的なキャッシュフローがあるわけでございますので、これらにつきましては、例外ではなく適用除外に変さらしてもよいのではないかということで、現在検討を行っています。
5番目は、貸金業者の事務手続きの円滑を図るための措置でございます。今後は、特に総量規制が導入されますと、先ほど御説明しましたように、貸金業者は指定信用情報機関を用いて頻繁に返済能力の定期的な調査を実施することが求められます。また、借り手に対しても年収証明書の提出を依頼することが求められます。このような業務について、本当に必要なところに力を集中的にしてもらうために、事務手続きの見直しを行っております。
1点目は、ここに書いてございますように、現在は、自社と他社の借り入れが100万円を超えますと、貸金業者は1か月以内に顧客から年収証明の提出を求めるという手続になっていますが、特に1年目につきましては、周知の期間も必要なので、年収証明の提出期間を1か月から2か月に延ばすということでございます。
2番目は、リボルビング契約で指定情報機関を利用した返済能力の定期的な調査義務について、現在、延滞等のため新規貸付けを停止している場合も、必ず調査を行うようになっておりますが、7ページの上の注でございますけれども、総量規制に抵触することにより新規貸付けを停止している場合には、返済能力の定期的な調査義務は免除されます。この並びで、やむを得ない事情によって新規貸付けを停止している場合、すなわち延滞等によって新規貸付けを停止していることがわかる場合には、定期的な調査義務は解除するということでございます。
3番目は、リボルビング貸付けの中で、現在は貸付残高が10万円以上の場合は、指定信用情報機関を利用した返済能力の定期的な調査が必要となっております。ところが、いろいろ実態を見てみますと、極度額、リボルビング契約の上限を10万円に設定している方がある程度いらっしゃいまして、10万円に張り付いて借りている人がある程度いらっしゃる。もちろん、10万円以上20万円、30万円、50万円、100万円とかいらっしゃるわけですけれども、今だと10万円にぴたっと張り付いている方がある程度いらっしゃる。
そこの10万円に係る調査を一生懸命行うよりは、むしろもっと上の方、20万円、30万円、40万円、50万円、100万円の方の調査を行った方が、資源の集中と選択という観点からはよろしいのではないかということでございます。10万円に張り付いている方は、10万円の範囲で回っているということであれば、そこまでは定型的な調査が必要ではないのではないかという考えでございます。当然残高が10万円を上回って、15万円とか11万円になった場合は、調査を行う必要があると思いますが、このような観点から、今まで残高が「10万円以上」という基準だったところを「10万円超」という基準にしまして、貸付残高が10万円を超えた場合に、定期的な返済能力の調査が必要としてはどうかということでございます。
4番目は、先ほど申しましたように、年収証明書の提出が求められる場合、年収証明書の中には、当然源泉徴収票とか青色申告書がありますけれども、給与の支払明細書も認めております。ただし、給与の支払明細書の場合は直近2か月以上の提出が必要と規定されているわけでございます。ところが、企業によっては、給与支払明細書に地方税額が表示されている場合があります。御承知のとおり、地方税額が表示されていれば、それは当然、過年度分の年収というのがすぐわかるわけでございますので、その場合には1か月分でも年収証明として認めるということでございます。
7ページの下の6番目でございますが、健全な消費者金融市場の形成ということでございまして、ここは簡単にいえば、これまでどちらかというと銀行や信用金庫、信用組合が消費者向け貸付けにあまり熱心に取組んでいなかったということがあり、今後、健全な消費者金融市場を形成していくためには、もちろん、今回この完全施行をすることによって、貸金業者の方々もちゃんとルールを守ってきちっとやっていただく必要がございますけれども、それとともに、銀行等にももっと社会的責任を踏まえてきちっとやってもらうことが必要ではないかという考えでございます。消費者市場に参入してもらって、そこで両者が相まって健全な競争をすることによって、健全な消費者金融市場が形成されていくことが必要ではないかという問題意識でございます。
そのために、8ページでございますが、現行でも銀行や信用金庫、信用組合等の、いわゆる預金取扱金融につきましては、この総量規制等の規制はありません。これはあくまで貸金業者に対する規制でございので、今でも銀行等は消費者ローンができるわけでございまして、最近は熱心に取組んでおります。ただ、総量規制はございませんけれども、多重債務の発生防止とか利用者保護ということは当然踏まえていただかなければいけないわけですので、今回、銀行や信金等が消費者向け貸付けを行う際の適切な審査、きちんと審査する、無理な貸付けはしない、厳しい取り立てはしないという体制整備を求めるべく、当庁の監督指針の改正を行いたいと考えてございます。
7番は、多様なセーフティネットの充実・強化でございます。
改正貸金業法を施行しますと、一方で返済や新規借り入れが困難になった消費者・事業者という方々にどうアプローチし、支援していくかということが問題になってまいります。そのために、セーフティネットの貸付け充実を図っていく。
1つは、消費者向けセーフティネットの充実・強化ということで、例えば厚生労働省がおやりになっている生活福祉資金貸付制度の体制強化を行う。御承知のとおり、昨年秋に生活福祉資金貸付制度の条件の緩和が図られまして、使い勝手がよくなりましたが、これをもっと使ってもらうように体制強化を図るということを考えています。
9ページに行っていただきまして、いわゆる消費者信用生協というものが、今、多重債務者向けの貸付けを一生懸命やっていただいておりますが、今、生協というものは一つの県の中でしか信用事業を行えないという規制がございますので、ここの規制を見直していただいて、例えば隣接する県でも、こういう多重債務者向けの貸付業務を生協が行うようにすることを考えています。
あと、労働金庫などが非常に熱心に多重債務者向けのセーフティネット貸付をやっていただいておりますが、その取組みの一層の推進を要請するということも考えています。
また、NPOバンクでございますが、一部のNPOバンクは生活困窮者向けの貸付けというものに非常に熱心に取組んでいただいています。そういう方々をどう支援するかという観点から、2つ目の柱に書いていますような、一定の条件を満たすNPOバンクで、要件を満たす生活困窮者向けの貸付けにつきまして、先ほど申しました指定信用情報機関というものの信用情報の使用義務を解除するとともに、総量規制の適用除外も行うということを考えています。
こういうことをなぜ行うかといいますと、NPOバンクの方々が行う生活困窮者向けの貸付けというのは、今、失業していて収入がないとか、収入が極めて低くて、3分の1の総量規制にすぐ引っかかってしまうこともあり得ますので、そういうきちんとした貸付け、つまり、コンサルティングも行い、生活再建の計画を策定し、貸すばかりだけでなく、きちんとしたアフターフォローも行うようなものについては、総量規制を適用除外とすることを考えています。そういうことによって、NPOバンクの方々にセーフティネットの一翼を担っていただくことも考えられるのではないかということでございます。
あと、中小企業・個人事業者向けセーフティネットにつきましても、まず相談のところで対応していただく、経営相談をきちんとやっていただくべく、商工会、商工会議所に対してさまざまな取組みをお願いするとか、次のページに行きまして、政策金融機関等を含めて、適切な資金供給に努めていただくことを要請することを検討しています。また、そういう経営相談をするに当たりましては、弁護士会とか商工会とか商工会議所等との相談や連携を強化することを要請したいと考えております。
10ページの8番目でございますが、カウンセリング、相談のさらなる強化を図っていこうということで、これは消費者庁と打ち合わせをさせていただきまして、短期的な施策と中期的な施策に分けて考えております。
まずは、10ページの下に書いてございますように、短期的施策として完全施行を目前にいたしまして、この4~6月というものは、ここに書いていますような団体と一緒になって、多重債務相談や貸金業法の周知を目的としたキャンペーンを実施したいと考えております。
また、多重債務問題に関しまして、特に各地域での横の連携が必ずしも十分ではないという話もございますので、横の連携をもっと強化していくような方策をとっていきたいと思っております。
また、マル4に書いていますように、今、多重債務相談員の方々は一生懸命やっていただいておりますが、どうしても経験の差がございます。そういう経験の差を埋めるために、経験の浅い相談員の方でも手元に置いて使えるような実践的な相談マニュアルを作成していきたいと思っております。
また、中期的施策としましては、マル2に書かせていただきましたように、相談員の方々のレベルアップを図っていくことが必要だろうということで、消費者庁と金融庁が協働いたしまして、全国の相談員の方々に体系的な研修を行い得るような研修プログラムを作成したいと思っております。
また、もう一つの論点としまして、最近よく指摘がございますような、一部の弁護士・司法書士の方々が、債務整理に当たりまして、必ずしも依頼者の意向にそぐわない形で債務整理を進めるとか、過払金が発生しない場合は依頼を受けないとか、高額な報酬を求めるという問題が指摘されておりますので、やはり弁護士等の方々が行う多重債務の経済的再生支援の適正化のために、12ページの上でございますが、日弁連、日司連等に過払金返還請求に係る取組みの強化を要請するということを考えております。
例えば、依頼者・顧客に対して事前説明の履行を徹底するとか。広告内容の適正化を図るとか、社会的責任に応じた自発的対応を促進する等々について、要請することを考えております。
9番目がヤミ金の対策でございます。
これにつきまして、今回、完全施行によりまして正規業者から借りられない人が増えて、ヤミ金被害が拡大するおそれがあるとの指摘もあることも踏まえまして、消費者庁、金融庁、警察庁、一体となっていろいろ対策を実施していきたいと思っております。
1番目に書かせていただきましたように、先ほどの横の連携とも関連する話でございますが、今まで各地方の多重債務対策本部または協議会と、都道府県の県警、警察の連携が必ずしも十分でなかったのではないかということで、今後は警察との連携も強めて、ヤミ金の手口やヤミ金の情報の共有化を図っていきたいと考えております。
2番目としまして、よくこれも指摘があるのですが、どうやってヤミ金の情報を知り得たかというと、インターネットを利用し、いろいろなサイトを見ると、ヤミ金の広告が掲載されていて、それでヤミ金にアプローチしたという例があるということでございますので、今後、そういうインターネットに掲載されたヤミ金の違法な広告を削除する方策について、警察と金融庁で考えていきたいと思います。
また、従来から取組んでいただいているヤミ金に対する対策というものも、積極的に実施いたしますし、13ページの上から3行目でございますけれども、今回、改正貸金業法を完全施行するということもございますので、「ヤミ金取締り強化月間」というものを警察の方で設定していただいて、重点的に取り締まりを行っていくということでございます。
長くなって恐縮でございます。最後でございますが、広報でございます。まだまだ改正貸金業法の認知度が低いとの指摘もございますので、その内容の周知・広報を図っていきたいと思っております。
まずは、利用者にわかりやすいポスター、リーフレットの作成や、もうすでに先日実施しましたが、新聞への広告掲載や政府広報の活用。あと、金融庁のホームページ等を活用しまして、今、若い方は結構インターネットを見ますので、インターネットで周知を図っていくということを考えております。
14ページ目でございますけれども、広くマスコミ、有識者に働きかけていくということとか、先ほど申しましたキャンペーンの実施というもので周知を図っていくということです。
以上、10の方策につきまして、長くなりましたが御報告させていただきました。ありがとうございました。

○松本委員長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして、どうぞ御意見、御質問があればお出しください。山口委員、どうぞ。

○山口委員 ありがとうございました。完全施行に向けて是非御尽力いただきたいと思いますし、基本的な方向としては賛同いたしますし、私は弁護士なのですが、弁護士会の中でも不届きな弁護士あるいは司法書士の問題も指摘されておりますので、これは明日から会長になります宇都宮健児とともに、弊害除去のために努力していきたいし、弁護士会はその責任があると思っております。
2つ気になるところを指摘させていただきたいし、改善をお願いしたいと思います。まず1番目の、借り直しの促進を図るということが書いてあります。
基本的には、それはそれでいいのかもしれないですが、私ども、実務で経験して、これまで一番多かったのは、借換え融資ということで、これまで本当はちゃんと計算すれば過払いで借金はゼロになるにもかかわらず、サラ金の言いなりの金額を借換えるということで、ふたを開けてみたら、実際引き直しを計算すると借金はゼロ、むしろ戻ってくるのに、計算上、5社から100万円ずつ500万円借りているということで、別の高利金融から500万円、自宅を担保に借り入れていたりするわけです。そういうことをすると、新しく借り入れたところの金利分について争えなくなりますので、結局首を締める形になってしまうのです。
その意味で、4ページの借換えの促進のところに、これは促進は構わないのですが、条件として、司法書士なり弁護士なり、その他専門家の、過払い、その他これまでの取引経過の検証をした上で借換えをするということをやらないと、本当は過払いがあったのに、借換え促進のためにそれが固定化されてしまったということになりかねないので、その辺について一定の配慮を条件化していただけないだろうかと思います。
2つ目の問題は、これもほとんど同じような問題なのですが、8ページの7項めのセーフティネットの充実強化というものがあります。これもつなぎで、公的な融資あるいは低利の融資を受けて生き延びることができるようにする。これはこれで非常に重要なことだと思うのですが、その際にも、8番目にカウンセリングの充実が書いてありますが、これとかみ合わせた形で、セーフティネットを実際に実行する場合に当たっては、相談することを条件化して、本当は過払いの人なのにセーフティネットをしてしまう。また借りて借金が増えるだけだったということにならないような、その辺の配慮を、これは弁護士や司法書士の協力が条件になりますが、是非お願いしたいと思います。

○松本委員長 中村委員、どうぞ。

○中村委員長代理 多重債務で被害を受けて苦しむ人の中には、自分でお金を借りたのではないけれども、人の保証のためにこういう破綻をしていくという方も結構いらっしゃるのですが、この中に保証制度がいかに問題であるか、そこに対してどうしていくかというところがあまり見えないのです。難しいかもしれませんけれども、例えば総量規制についても、あまりにも多くの人の債権の保証をするということが破綻の引き金にもなる場合もあるので、そういう保証制度や保証人的な立場の人たちの対策というものは、この辺でどういうふうに考えておられるのかをお聞きしたいと思います。

○小野金融庁信用制度参事官 最初に山口委員のご意見につきましてお答えいたします。
私どもも安易な借換えというのは絶対避けなければいけないと考えておりますので、そこは一定の配慮をしていきたいと思っております。例えば先ほど申しましたように、金利につきましても、当然借り換えたら金利は低くなるということをしませんと、さっきおっしゃったような高金利になってしまったら何の意味もないので、そこはそういうことをちゃんと仕組んでいきたいと思います。
あと、今回の借換えにしろ、先ほどのセーフティネット貸付けにしろ、カウンセリング、相談というものがセットで必要である、相談と貸付けは車の両輪だと思っておりますので、そこはきちんと行うようにしていきたいと思います。もちろん、今後も日弁連、日司連の弁護士、司法書士の方の御協力を求めますし、それでも足りないと思いますので、相談員の方々のレベルアップをどうやって図っていくかということを考えていきたいと思います。
私どもが考えているのは、単に借換えを行うところまでではなくて、1回債務整理して借換えた後のアフターフォローまできちんとできないと、それは最終的には多重債務状態から抜けられないと思っておりますので、そういうアフターフォローもきちんと相談できるような、先ほど申しましたような相談員の方々のマニュアルや研修も行っていきたいと思っております。
保証制度の問題につきましては、もともと保証制度が問題になったことは事実でございまして、それで今回、いろいろ規制はかけておりますし、今後も保証の問題につきましては、例えば監督指針等々でそういうことについて問題にならないように、さまざまな配慮というものは当然していきたいと考えているところでございます。

○松本委員長 ちょっと確認ですが、連帯保証人については、個人信用情報機関に債務者同様、記録、登録されるという感じですか。

○小野金融庁信用制度参事官 連帯保証は登録されません。

○松本委員長 されませんか。そうしますと、連帯保証人というのは債務者と同じ責任を負っているわけで、そちらの方に貸し手側としては請求しても構わないという立て付けですから、保証債務が相当大きくなって、保証の多重債務というのも起こり得なくはないということでしょうか。

○小野金融庁信用制度参事官 そこのところは、今申しましたように、どうアナウンスされていくかということで考えていきたいと思っておりますし、今でも行為規制で、過剰な連帯保証とか、そういうものはしないようにということは、いろいろと監督指針にも書いているところでございますので、そこは引き続きやっていきたいと思いますし、さらに今の問題提起を踏まえまして、どういうことが考えられるか、そこは我々も問題意識を持っていますので、検討していきたいと思っております。

○松本委員長 佐野委員、どうぞ。

○佐野委員 御説明ありがとうございました。貸金業法で大きな改正があるということで、私たちは完全施行を望んでおります。それで、一応金利が20%まで下がったわけですが、私は将来的にはさらに下げるべきだなと考えています。
それで、今10の方策を説明していただいたのですけれども、1のところ、まさに借りなければ返せないという方たちになだらかに返していくような方向をとるということで、本当にきめ細かな相談とか支援をお願いしたいのですが、このなだらかに返していくというのは、一体いつまでというのがはっきり決まっているのか教えていただきたいのが1つと。
それから、情報提供、いかに皆さんに知らせるかというところでキャンペーンをやるということですが、私たちも、もちろん、一生懸命御協力したいと思うのですが、一体どんなキャンペーンをお考えになっているのか。それとも、もう完全に私たちに投げ掛けて、それぞれがやってほしいというのか、どういう形なのかということを1つお聞きしたい。
もう一つは、こういう形で多重債務者の方を少なくしよう、利用者を何とか助けようという一方、最近、リボルビングをしたら楽に返せますと、すごくバラ色に描いたチラシがクレジットカードの領収書と一緒に送られてきます。そちらの方をどうするのか。一方で一生懸命とめていても、もう一方で新しい債務者をつくってしまってはしようがないので、そこの辺りもきちんと情報提供という形で、今どういう状況になっているのかというのをもっと消費者に知らせるべきだと思うのですが、その辺りをどうお考えになっているのか教えてください。

○小野金融庁信用制度参事官 まず1番目ですが、段階的に返済を行っていく期間につきましては内部で相談しております。私の個人的な考えは、5年から10年ぐらいの間にはちゃんと返していかないと、そんなに返済がだらだら続くのはよくないのではないかと考えています。ただ、人によって残高も違いますし、条件も違いますので、一律に数字を置くのが本当にいいのかどうかという論点はあります。実は、これは去年の中小企業者向けの貸付条件の変さらを進める法案の検討のときにも議論があったのですけれども、ある程度一定の基準とか、こういうものだけとやったらいいのではないかという考えがあったのですが、借り手の方々の状況はさまざまでございますので、何らかのめどは必要だと思いますけれども、そこを一律にやるのがいいかどうかという問題があります。この点について、当然問題意識は持っております。そこは大塚副大臣も明確に、だらだら返すというのはだめだ、期間もある程度考えていかなければいけないのだということは申しております。
それから、キャンペーンについては、消費者団体の方々、また被害者団体の方々とも協力して実施したいと思っていますが、皆様に全部丸投げして実施していただこうとは考えていません。今までも、毎年、多重債務相談の集中的なキャンペーンを大体秋にやっていますけれども、今回は前倒しのような形で、例えば相談会場を設けて、単に6月から始めますよということを言うだけではなくて、そこに相談窓口を設けて、土日もできるような会場を設けて、そういうところに今から心配な方々はどんどん来てくださいということで、日弁連、日司連の御協力も得て、弁護士さん、司法書士さんもそこに来ていただいて、そこで無料の相談をしてもらうような相談会場も設け、相談も一緒に実施したら良いのではないかと考えています。
これは、まさに今、宇都宮先生とも話しているのですけれども、6月に向けて、悩んでいる方々、今後特に6月以降の完全施行でいろいろと借りられなくなる方とか、潜在的に相当いらっしゃるはずなので、そういう方々をいかに相談窓口にちゃんとうまく誘導するかということが極めて重要だろうということで、今そういう方向での相談もキャンペーンの中の一つの大きな柱としてやっていきたいと思っております。
また、今、消費者庁とも御相談して、わかりやすい貸金業の概要のリーフレットのようなものをあわせて準備しているところでございまして、そういうものを銀行や貸金業者の方々の店舗の窓口とか、ハローワークとか、できるだけ目に付きやすいところに置くことによって、よく広報していきたいと考えております。
最後の広告の問題につきましては、先ほど申しましたように、貸金業協会というのは自主規制期間として、広告の自主規制もやることになっておりますので、今のような問題意識は向こうにも伝えまして、間違った情報を伝えないようにどうしていくかということについては、相談していきたいと思っております。

○松本委員長 下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 ありがとうございました。何点かあるのですが。
先ほど連帯保証人のことがございましたが、私どもの相談によくあるのは、消費者がお互いが連帯保証人になって借り入れをしているというのが非常に多うございます。そういたしますと、先ほどの御説明では連帯保証人のところは入っていないということでありますので、何人かの委員、委員長からもおっしゃられましたように、是非そこのところは御検討いただきたい。お友達同士でお互いが連帯保証、AさんがBさんの連帯保証をやって、BさんがAさんの連帯保証をやっているというのが非常に多くなっております。みんなこけてしまって、すごい金額になっておりますので、非常に問題だと思います。是非よろしくお願いしたいと思います。
それから、ちょっとお伺いしたいのですが、10万円超というところがどの程度までの範囲なのかということが1点。
それから、NPOバンクというものがございますが、一定の要件を備えるということでありますが、NPOにはいろいろなものがありまして、生活福祉再生支援と言いながら、その手の筋の人たちもかなりいらっしゃると聞いています。そこのところの要件をきちんとどのように把握されているか。それは警察とも当然されていると思いますが、相談にもそういうところに行ったという方もいらっしゃいますので、NPOがいいとか悪いとかではないのです。一定の要件のところをきちんとしていただいてやっていただきたいということが1点。
それから、12ページでございますが、過払金の返還請求に関しまして、取組み強化を検討するということで3つ書いてございます。もう一つ、裁判所を利用する方法もあるのではないか。お金もそんなにかからないと思いますので、簡裁とどのように。今、最高裁がいろいろセンターもあったり、いろいろなことも考えていらっしゃると伺っておりますので、その辺のところも御検討いただければいいのではないかと思います。是非御検討をお願いしたいと思います。あとは、皆さんがいろいろ言ってくださいましたので、とりあえず御回答をいただきたいと思います。

○小野金融庁信用制度参事官 10万円の問題でございますが、幾つか大手のクレジット会社に聞きましたところ、10万円に限度額を設定しているのは、業者によってさまざまですが、会員全体の大体5%から8%です。そういう意味では、一つの固まりではあるわけです。5%から8%の人は10万円以内に限度額を設定してやっている状況です。ですので、先ほど申しましたように、業者の方々のエネルギーの選択と集中という観点から、そこをよりは、もっと上の方々、20万円、30万円、50万円の方に指定信用情報機関を使って、きちんと定期的な調査をやった方がいいのではないかという考えでございます。
それから、NPOでございますが、実は今でもすでにNPOバンクの方は貸金業の登録が求められておりますけれども、先ほど申しましたように純資産要件がございまして、今は2,000万円以上必要なのですが、一定の要件を満たすNPOはすでに500万円以上あれば良いという制度があります。その要件とは何かと申しますと、1つは非営利であること。2つ目は、低金利、7.5%以下の貸付けであること。3番目は、貸付目的が特定非営利法人法に定められた内容、17あったと思いますけれども、貸付目的がその内容か、先ほど申しました生活困窮者向けの貸付けであること。それから、貸付内容等の情報開示が行われていることという要件がございます。
このように、すでに、御懸念のような怪しげなNPOバンクが入らないような規制は設けられているところでございますが、今、考えておりますのは、仮にこういう一定の要件を満たすNPOで要件を満たす貸付け、要件を満たす貸付けとは何かと申しますと、さっき申しましたような、単に助けるだけではなくて、アフターフォローもやるような貸付けであることでありますが、それに加えまして、怪しげなことをやっていないかどうかにつきまして、我々監督当局が定期的にヒアリングをしたり報告を求めたりすることによって、そこは監督していきたいと思いますし、もし仮に問題があるような場合には、私どもはNPOバンクを含めまして、監督権や検査権がありますから、検査もしますし、監督も、場合によっては行政処分も行うということで、ちゃんとエンフォースメントの面でもしっかりやっていきたいと考えているところでございます。
それから、12ページの過払いの問題は、特に弁護士会と司法書士会につきまして、過払いの問題で必ずしも適切でない行動が一部見えるということで、弁護士会、司法書士会の一つのルールと申しますか、取組みとして1、2、3のようなことをやっていただきたいということでございます。
ただ、裁判所等の活用につきましては、ちょっと違うかもしれませんが、今おっしゃったような法テラス等がございますので、そういうものをきちんと活用していくということもありますし、実は私どもも、そういう裁判所を使った制度もありますよということは、今でも相談員の方々に周知しております。ただ、私どもとしましては、さっき申しました、相談員の方のわかりやすいマニュアルにも、そういう裁判所を使う道もありますよということはきちんと書かせていただいて、相談員の方が多重債務でお悩みの方に、裁判所制度も活用できることがあるということをきちんと説明できるようにしていきたいと考えております。

○松本委員長 今、下谷内委員が最初に、複数の借り手がお互いに保証人になる形の貸付けがあるとおっしゃいまして、先ほどの議論だと、連帯保証人の保証債務については、信用情報機関には登録されないのだということでしたが、それでは、例えば複数の、例えば2人の人が連帯債務で100万円を借りたという場合に、それぞれ1人の人の貸付残高は50万円と記録されるのか、それぞれが100万円と記録されるのか、それはいずれなのでしょうか。

○小野金融庁信用制度参事官 実務的にどうなっているか、もう一回調査させていただきたいと思いますが、理論的には100万円ずつ登録すると言うことになるのかもしれませんが、私どもも実務的にどう対応しているかということを考えさせていただきたいと思います。

○松本委員長 実際に連帯保証はよく使われると聞きますが、連帯債務というのが使われていないということであれば、あまり議論する意味はないのかもしれません。
ほかにございませんか。山口委員、どうぞ。

○山口委員 12ページに、インターネットに掲載されたヤミ金の違法な広告の削除を検討するとあります。これは是非お願いしたいのですが、雑誌、特にスポーツ新聞とかもヤミ金の宣伝が載っています。これは弁護士会で何とか自主規制で違法業者の広告自粛をやっていただけないかということを再三お願いしているのですが、なかなかうまくいかないのです。インターネットとあわせて、これは本来は自主規制でやってもらった方がいいのですが、その辺も含めて対策を講じていただければと思います。
もう一つは、これは実際にあるケースなのですが、必ずしもサラ金だけではないのですが、銀行あるいは金融機関の住宅ローンの借り入れが何か月かストップすると保証協会に行きますね。保証協会が最近は3年とか5年ぐらいしか待たないと言うのです。保証協会は一体何のためにあるか。それは県の保証協会だったら、居住者の生活が成り立つようにしてほしい。従前どおり7万円、8万円払い続けますから、しかも家族も連帯保証しますから、保証協会に債権が移っても10年とか15年ぐらい待っていただけませんかと言っても、最近はいや、うちはそんなことはやっていません。3年、5年でしか回収は考えていませんから売ってくださいということを、かなり冷たく言われます。
この辺は、保証協会のあり方で、今日のメインの論点とは違うかもしれませんが、かなり生活がかかった深刻な問題が広がっていると思いますので、できれば御検討いただければと思います。

○小野金融庁信用制度参事官 保証協会の問題につきましては、昨年の中小企業金融円滑化法でも視野におさめておりまして、今は努力義務として、保証協会もできるだけ柔軟に対応するようにということで、経済産業省、中小企業庁からも要請しておりますし、我々としてもきちんとそうなっているかどうかについて、引き続き見ていきたいと思っております。そこは問題意識を十分持っていますし、すでにそういう対応をしているところでございます。

○松本委員長 よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○松本委員長 それでは、ありがとうございました。政府におかれましては、本日の議論を参考にして、完全施行後も含め、今後の検討を進めていただきたいと思います。金融庁の小野参事官におかれましては、お忙しい中、当委員会の審議に御協力いただきましてありがとうございました。

≪4.乗用車用フロアマットのアクセルペダル等への影響に関する調査結果について≫

○松本委員長 それでは、次の報告に移りたいと思います。このたび国民生活センターが乗用車用のフロアマットのアクセルペダル等への影響に関する調査結果をまとめられました。本日は、国民生活センターより柳橋商品テスト部長を初め、御担当の方々にお越しいただいておりますので、この調査結果につきまして御報告いただきたいと思います。
それでは、国民生活センターより御報告をお願いいたします。

○柳橋国民生活センター商品テスト部長 テスト部長の柳橋です。よろしくお願いいたします。
本件につきましては、昨日11時半より、この消費者庁のございます施設で公表いたしました。大手の新聞で報道されたことは皆さん御存じかと思います。結果につきましては担当いたしました鎌田の方から御説明申し上げます。

○鎌田国民生活センター商品テスト部調査役 商品テスト部の鎌田と申します。よろしくお願いいたします。
それでは、私の方から、昨日公表いたしました乗用車用フロアマットのアクセルペダル等への影響に関する調査結果につきまして説明させていただきたいと思います。
まず、この調査を行うに至った経緯なのですけれども、皆様も御存じのように、昨年、アメリカでトヨタ車のアクセルペダルにフロアマットが引っかかってしまって、それが死亡事故につながったという事故がありました。日本国内でも、調べてみますと、まず国交省の自動車リコール・不具合情報に、過去1年間に13件、マットが悪いのかペダルが悪いかというのはありますけれども、ペダルとマットが干渉して危うく事故になりそうになったですとか、あるいは物損事故にもつながっているという事例もありました。また、私どものPIO-NETの方にも、過去5年間で13件ほど、こういったフロアマットが影響した事例が入ってございました。今回、消費者庁の方から、こういった報道がなされまして、私どもの方に調査依頼がありましたので調査いたしました。
2ページ目、3ページ目(PDF形式:695KB)に調査対象の商品を載せておりますけれども、まず車の方は、入手できました26車種、国内は8メーカーございますけれども、それを全部網羅いたしまして、その中から入手できました26車種についてテストを行っております。
この中でアクセルペダルの構造に少し違いがございまして、図1にございますように、吊り下げ式とオルガン式がありました。これは、ほとんどが現在、吊り下げ式のアクセルペダルになっていると思いますけれども、一部オルガン式のものがございまして、26車種中、オルガン式は2車種でございました。
もう一つ、市販マットということで、アメリカで起きた事故の事例を見ますと、マットが純正品ではあったのですけれども、いわゆるフラットなマットではなくて、全天候型というのでしょうか、パケットタイプになっているタイプで、ふちが高くなっていて、雨水とか汚れを車内に落とさないようにという配慮で、こういったマットが売られていると思いますけれども、そういう全天候型のマットを4銘柄、市場から購入しましてテストいたしております。
そのテスト結果を4ページ以降に記載しておりますけれども、まずフロアマットの固定ということで、マットが固定さえしていれば、アクセルペダルに干渉することはないということがありますので、まずしっかりと固定されているかどうかを調べてみました。その結果、この26車種の純正品はすべて固定具等でとめられるようになっておりまして、しっかりと固定できていたということでした。ただ、1銘柄だけ、1車種だけ、前方に足をずらしたりしますとフックが外れてしまうものもございましたけれども、ほかの銘柄にあってはしっかりと固定はされていたということでございます。
通常、アクセルペダルと純正マットの位置関係というのは、吊り下げ式の例とオルガン式の例を写真2に載せさせていただいておりますけれども、フロアマットはアクセルペダルに近い方がL形にカットされておりますので、アクセルペダルを踏んでも干渉しにくくはなっているようです。
次に、6ページは、純正マット本体や車両の取扱説明書に、固定方法のこととか固定に関してどのような表示があるかを調べてみたのですけれども、ほとんどの車両は、特に純正マットの方には、しっかりと固定してほしいということとか、あるいは二重に敷かないでくださいと記載してございました。
次に、7ページでございますけれども、市販マット4銘柄を調べてみますと、4銘柄の中で固定ができるものは1銘柄しかございませんでした。4銘柄中3銘柄は、ただマットを敷くだけでございました。1銘柄は、写真7にございますように、純正マットのふちに固定フックのようなものがございまして、それを市販マットの穴に通して固定するということで、容易にずれないような工夫はされておりました。
次に、(2)アクセルペダルへの干渉ということで、今までの調査では、純正マットが固定されていれば、ペダルがマットに干渉することはなかったのですけれども、万が一、掃除したとか、何かの理由で固定を忘れてしまった場合にどうなるかということで、そういう場合は長年使用しておりますと、どうしてもマットがずれてくるということがございますので、マットがずれた場合に干渉することがあるのかということを調べた結果が8ページの表3でございます。
これをご覧になっていただきますと、最初、左側にナンバー1から24まで吊り下げ式の車種ですけれども、固定していない純正マットがずれた場合ということで、マル1と書いていますが、24車種中7車種につきましては、アクセルペダルにマットが引っかかる場合があったということで、9ページの写真8に載せておりますように、マットがずれてしまいますと、アクセルをべた踏みして戻そうとしても、アクセルがマットの端部、赤い円の中でございますけれども、引っかかってしまう現象が確認されました。
それから、市販マットにつきましても、車種との組み合わせでずれたりしますと引っかかってしまうということで、これも写真9、10、11に載せてございますけれども、純正マットと同じように端部に引っかかるとか、あるいは市販マットに溝が付いているものもありますけれども、そこの溝にうまくアクセルがかかってしまうというものもございました。
それから、10ページでございますけれども、オルガン式の場合は、純正の場合は全く問題はなかったのですが、市販マットでずれてしまいますと、オルガン式というのはマットがアクセルペダルの上に構造上、来てしまいますので、その影響でアクセルペダルが戻りにくくなったりすることがあったということでございます。
それから、11ページに再現テストということで、今までのテストは停止した車両で行っておりますけれども、実際に走行している中でこういうことが起こり得るのか、また起こった場合にどうなるかという結果を調査するために、実際に走らせて、その様子を調べてみました。そうしますと、引っかかりが事前に確認されたものでは、走行中もアクセルペダルを踏み込みますとペダルが引っかかったりしまして、そうなりますとどんどん加速していくという状況になりました。
次に、12ページの2)ですが、アクセルがべた踏み状態になったときに、どんどん加速していきますので、通常はドライバーは危険を回避するためにブレーキを踏むと思いますけれども、そのブレーキを踏んでちゃんととまるかどうかを調査してみましたけれども、表5にございますように、通常時よりは1.1倍から1.4倍程度長くはなりますけれども、停止したものもありましたし、1つの銘柄につきましては、減速はするのですけれども、パワーの方がブレーキよりも勝って、停止しなかったという車種もございました。
以上のテスト結果を踏まえまして、私ども、消費者へのアドバイスとして3点ほど書かせていただきましたけれども、純正に限らず、マットを使用する場合は、必ずずれていないかどうかを確認して使用してくださいということをアドバイスさせていただきました。
あと、万が一、そういう状況になったときには、ブレーキを踏めば停止しますので、強く踏むように。どうしても停止できない場合は、ニュートラルにシフトレバーを戻して強くブレーキを踏んでくださいということを3点目に述べております。
業界への要望が4点ほどございますけれども、まず、市販マットのメーカーに対しましては、固定フックが付いているものが4銘柄中1銘柄しかありませんでした。あと、ずれると干渉するということが多々見られましたので、まずはずれないようにするために必ず固定フックを付けるようにと、今後の改善といたしまして、そういったことを要望いたしました。
自動車メーカーに対しましては、同じように、引っかかるようなものでは改善要求と、今、国交省の方でも検討されつつあるようですけれども、アクセルとブレーキが同時に踏まれたときには、ブレーキの方が勝つといいますか、アクセルを緩めるというブレーキオーバーライドシステムと呼ばれておるようですが、こちらの搭載を全車種にお願いしたいということを要望しております。
最後に、14ページでございますけれども、同じようにブレーキオーバーライドシステムの搭載を業界へ働きかけてほしいということを行政への要望としております。簡単でございますが、説明を終わります。

○松本委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして御意見、御質問がございましたらお出しください。中村委員、どうぞ。

○中村委員長代理 昨日の発表を見まして、初めに感想を申し上げますと、国交省ではなくて国民生活センターがこれだけのことをやって消費者庁から発表したというのは、私は画期的だと思っています。国センだって、やればこんなことができるのだというのが率直な感想でありまして、今までもう少し小物ばかり扱っていたのが、自動車車両を扱われた。今まで私の持っている国センのイメージからすると画期的なのですが、例えば2ページに大変多くの、26種類の車を入手したというのと、あとマットの方は購入したと書いてあるので、入手というのは購入とは違うのかな。本当は、全部これを買ったのだったらすごいなと思ったのですけれども、どういうふうにしてテスト対象車を入手されたのか。
それから、走行テストまでやっておられるのですが、一体どこで走行テストをやったのか。国センの庭でやるにはちょっと狭いのではないかと思う。でも、相模原にかつて自動車走行用の回周道路を国センにつくられた。これは製造物責任法が制定された15年前に、国センのレベルアップということで、原因究明機関ということで国センにも自動車が検査できるような設備と周遊道路が庭の中に相模原の庭の中に取り付けられたのですが、あそこはたしか草ぼうぼうで舗装もろくに修理されていないと思うので、一体どこでやられたか。
そうすると、これだけのことをやるのに、国センは一体どれだけの予算を使われたのか。今後もこういうことができるのだということを対外的に示されたのであれば、その辺をちょっと聞いておいて、これからもどんどんできるのだったら国センに頼もうではないかということになるのではないかと思うので、そういうところをお聞かせいただければと思います。

○柳橋国民生活センター商品テスト部長 車の入手でございますけれども、基本的にこれだけの数を購入してやるというのは無理ですので、原則、ある期間、長い期間ですけれども、レンタカーを借りて実施しております。
それから、テストコースですけれども、産業技術総合研究所でテストコースを所有しておりますので、そちらの方を借りて実施しております。
それから、誤解のないようにお願いしたいのですが、私どもで持っているテストコースというのは、極めて限定的な短いコースですので、限られたテストしかできない状況にございます。
あと、こういうものも国センとして是非積極的に取組んで、テストを実施してまいりたいと思っております。

○中村委員長代理 予算はどのくらいですか。

○柳橋国民生活センター商品テスト部長 予算は、これは200万円弱です。

○松本委員長 佐野委員、どうぞ。

○佐野委員 12ページに、アクセルペダル全開時にブレーキを踏んだときの停止距離というので5車のテストをされていて、14番についてはスロット開度を下げる制御が行われているということで、ほかの車は何もないと考えていいのでしょうか。そうしますと、1車だけ止まらず、ゆっくり低速するということで、そこの辺りの違いというのは何なのか。これだけ見ると、もしかしたらこの22番というのは欠陥車ではないかという気もしないではないので、その辺をお伺いしたい。
それから、止めるに当たって、シフトレンジをニュートラルに戻し、ブレーキをかける、これで停止する。すごくゆったりのような気がして、私、サイドブレーキをやった方がいいようなイメージがあるのですが、その辺の違いを教えていただきたい。
もう一つ、最後に業界への要望とか行政への要望とか、いろいろお書きになっています。これだけのテストをされて、きちんと要望されている、その回答というのは求めていらっしゃらないのか。これは要望しっ放しなのか、いかに業界の方々がこのテストを受けとめて検討するところまで考えているのか、そこのところをちょっと教えてください。

○柳橋国民生活センター商品テスト部長 まず、14番とほかの銘柄との違いでございますけれども、開度が違う。これは日産車なのですけれども、多分オーバーライドシステムをほとんど搭載しているというお話ですので、こういうシステムが働いてこうなったのではないかと考えられます。ほかの車は、こういうシステムが採用されていないと考えられますので、ブレーキを踏んでも停止距離が長くなってしまったということかと思っております。
それから、22番なのですが、これは基本的にブレーキの制動力よりも車を動かそうとする力の方が強いということで、停止できないということかと思います。ただ、この車だけではなくて、ほかにもこういう車があると聞いておりますので、その辺はオーバーライドシステムの採用によって、こういうことが防止されるのではないかと考えております。
それから、アクセルペダルが引っかかったときのとめ方ですけれども、サイドブレーキというのはそれほど強いものではございませんので、それは最後の手段ということで、通常はまず動力を切って、ニュートラルに戻して車を動かそうという力が切れますので、その状態でブレーキをかけると安全にとまれるということですので、こういう状況になるとパニクって、大変な状況でなかなかブレーキも強く踏んだりすることができないかもしれませんけれども、そういう場合にはニュートラルにシフトを戻してブレーキをかけてとまることが最善だと思っております。
それから、業界へ要望しておりますけれども、2団体、自動車用品工業会と小売の協会、2つの団体に要望しておりますけれども、早速、ホームページ上に、1つは注意喚起を強化するということと、もう一つ、マットの形状、構造については、改善を目的とした検討会を立ち上げて対応していくという回答がございました。以上でございます。

○松本委員長 ほかにございませんか。
この問題は、たしか昨年秋にアメリカでの報道がなされた際に、この消費者委員会におきまして意見が出されまして、最終的には消費者庁に対して、日本国内においてもそういう市販のマットを持ち込むことによって、いろいろとうまく合わないような形で類似のケースが起こるかもしれないから、そういう可能性についての注意喚起を消費者庁の方できちんとやっていただきたいという趣旨の要望を委員会として行っております。このたび国民生活センターの方が、その延長上で実際どうなのかという調査結果をまとめられたということは、消費者委員会からの問題提起がこういう形で生かされたのだと、私ども、理解しております。大変ありがとうございました。
国民生活センターの皆様におかれましては、お忙しい中、当委員会の審議に御協力いただきましてありがとうございました。
本日の議題は以上でございます。

≪5.閉 会≫

○松本委員長 事務局より次回以降の日程について御案内がございます。

○原事務局長 夕刻までありがとうございました。
本年度の消費者委員会というのは今日で最後ですが、日程調整をしながら不定期に行ってまいりまして、委員の方々、それから傍聴の方々にも御迷惑をおかけいたしました。
4月からは、前回も申し上げましたように、原則として毎月第2金曜日、第4金曜日の午後3時から2時間ということで予定しております。ただ、幾つか緊急にというのでしょうか、取り上げたいとか、課題がたくさんある場合は、その間でも開催したいと思っておりますので、それはまたその都度、ホームページで御案内を差し上げたいと思います。
そういうことで、来月、4月の委員会は、4月9日金曜日の午後3時と、4月23日金曜日の午後3時ということで予定しております。議題につきましては、また委員とも調整の結果、ホームページでお知らせしたいと思います。
今日はどうもありがとうございました。

○松本委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところお集まりいただきまして誠にありがとうございました。

(以上)