第15回 消費者委員会 議事録

日時

2010年2月22日(月)15:00~17:10

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
松本委員長、中村委員長代理、池田委員、川戸委員、櫻井委員、佐野委員、
下谷内委員、田島委員、日和佐委員、山口委員

【説明者】
消費者庁 成田企画課長
国土交通省自動車交通局審査課リコール対策室 板崎室長

【事務局】
齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.消費者基本計画について
3.自動車のリコール制度について(国土交通省ヒアリング)
4.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:13KB)
【資料1】 消費者基本計画(素案)(平成22年2月3日消費者庁公表) (PDF形式:334KB)
【資料2】 国土交通省提出資料

≪1.開 会≫

○原事務局長 それでは、始めたいと思います。本日、お忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございます。「第15回消費者委員会」を開催したいと思います。
それでは、委員長、どうぞよろしくお願いいたします。

≪2.消費者基本計画について≫

○松本委員長 それでは、議題に入りたいと思います。
本日は、当初、消費者基本計画素案に関する議論とだけ予告しておりましたが、更に加えまして自動車のリコール制度についても取り上げたいと思います。
まず、新たな消費者基本計画に関しましては、これまで委員会でも議論を重ね、計画策定の早い段階から意見を述べてまいりました。1月29日には素案が提示され、委員からさまざまな意見が出されたところです。
本日、議論を行うに当たり、まずは消費者庁より、今後の消費者基本計画策定に向けた消費者庁のスケジュールを御説明いただき、その後、事務局より委員会としてのスケジュールを説明いただきたいと思います。
では、まず消費者庁の方からお願いいたします。

○成田消費者庁企画課長 それでは、消費者基本計画の今後のスケジュールでございますけれども、1月29日のこの会議におきまして、素案につきまして御説明させていただきまして御意見をいただきまして、その後、2月3日から23日、明日までパブリックコメントを募集しております。明日締め切らせていただきまして、皆様からの御意見、消費者委員会の方々、あるいは各方面からいただいた御意見を踏まえまして素案の修正作業をしてまいりたいと思っております。
それを踏まえまして、改めて修正した基本計画の素案につきまして消費者委員会の御意見をいただきまして、最終的に消費者政策会議で案を決定し、その後、閣議決定するという手続を年度内に進めていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。以上でございます。

○松本委員長 それでは、事務局。

○原事務局長 引き続き、消費者委員会側のスケジュールを説明したいと思いますけれども、消費者委員会では、今日、委員の方々に十分な御議論をいただき、ある程度重点課題と言うのでしょうか、重点施策というものを絞り込んでいただいて、やはり5年間という時間もありますので、大きな横断的な課題にも取組めるのではないかと考えておりますので、重点施策について詰めていく作業をしたいと考えております。
3月に入った段階で、明日締め切りのパブリックコメントについての御意見の御紹介をいただいた上で、更に委員会でも議論を重ね、3月半ばには締めくくりの審議をしたいと考えておりまして、月末に向けて諮問、答申に結び付けていきたいと考えておりますので、委員の皆様方にも是非十分な御議論をお願いしたいと思っております。事務局からは以上です。

○松本委員長 ありがとうございました。本日は、委員の皆様から消費者基本計画(素案)(PDF形式:334KB)について、政策制度の面で更に進めるべき事項等、重要な課題について意見をお出しいただき、そして委員間で議論したいと思います。
それでは、どうぞ御自由に、どこからでも結構ですから、御意見をお出しください。山口委員、どうぞ。

○山口委員 前からもお話しているとおり、これは消費者庁ができての初めての消費者基本計画なわけでして、消費者政策について司令塔たるべき消費者庁が各省庁の政策をとりまとめて、政策としてどういう形で取組んでいくのかということを国民にもわかりやすく提示するべきものだと思うのですね。そういう観点からすると、全く不十分だと思うのです。したがって、これから大変だと思うのですが、何とか3月中に消費者庁がどういうビジョンを持って全体像を組み立てていくのかをはっきり出すようなものにしていただきたい。
その意味では、前回も希望を出しましたが、168項目を平板に並べてありますが、大見出し、中見出し、小見出しぐらいのものをちゃんと設定して出していただきたいと思います。一番わかりやすいのは、消費者教育については20何項目かあるわけですが、全くの羅列に終わっています。これは、基本的にはいわゆる持続可能な社会の形式に消費者がどういう形でかかわって生活していくのか、あるいはどういう観点で市民社会をつくっていくのかという視点で、消費者教育をちゃんとやっていこうではないかという呼びかけもOECDから出ているわけですから、そういうものも受けて、消費者庁としては、まずこういう観点からやっていくという姿勢を明かしていただきたい。
それについて、各関係省庁の方針をただホチキスでとめるのではなくて、どういうふうに消費者教育をやっていくのかということを、並列的ではなくて、まず消費者庁としてのビジョンを出して、その上で、あるいは文科省と話し合って、出した上で各省庁に出していただくというふうにしていただきたいです。
それから、IT問題です。要するに、情報通信の分野についても、全くの羅列にとどまっております。これについても20項目近く羅列されているわけですが、消費者庁としてこの情報通信の問題について、消費者保護の観点から、どういう視点で施策をやっていくのかというところをきちんと出した上で提示していただきたいと思います。
それから、いわゆる取引被害の分野についても、これも前からすき間事案ということで、無認可、無届けの事業者、特に2月8日にも議論しましたが、いわゆる未公開株の問題について、被害者が続出している。特に高齢者がターゲットになって被害が出ている。そういういわゆる無登録の事業者による犯罪的な消費者被害をどう抑止するのかというのは、これも羅列ではなくて、今、幸い既にチームができて機動していると聞いていますが、消費者庁と金融庁と経済産業省、更には警察庁と合同で、ただ省庁別に政策を並べるというだけではなくて、焦点を絞って出していただきたいと思います。
それから、総論で1点だけ。高齢化社会にこれからなるについて、どういう観点で各政策に反映させていくのかというビジョンもございません。これは総論の中できちんとビジョンを明示していただきたいし、政策の項目の中にも明示していただきたいと思います。
以上、私としては、高齢者問題、消費者教育問題、情報通信の問題、更にはいわゆる取引被害、特に高齢者をターゲットとした金融取引被害についての抑止の問題、せめてこの4つぐらいは見出しを出して、この見出しについて政府がどういう観点からやっていくのか。各省庁がそれについてどう取組むのかという大見出し、小見出しをつくったような出し方を是非していただきたいと思います。

○松本委員長 どうぞ、佐野委員。

○佐野委員 今の山口委員と最初の方は同じ意見なのですが、やはりこの5年間、消費者行政をいかにするかという全体像がここではよく見えないのを、きちんと見えるようにしていただきたい。
それから、このまとめ方なのですが、確かに法律の順番にまとめてあるのも一つのまとめ方なのですが、いざこうやってみると、見づらい。というのは、例えば事故情報関連について、情報を集めて分析して情報を提供する、全部ばらばらに書かれています。項目の立て方というものをもう少し工夫できたら、もっと消費者にわかりやすいと思います。
それから、私としては、一番重要なのが消費者の意見をいかに政策に反映させるかという部分であって、そこが全く抜けているので、それはきちんと書いていただきたい。
それから、パブコメのあり方も、消費者庁だけではなく、各省庁、パブコメを出していらっしゃいますが、なかなかわかりづらい。消費者には答えづらいパブコメがありますので、もう少し消費者にわかりやすく出していただきたい。あと、パブコメのあり方としては、その出した意見をいかに反映させているか、しないのかという情報も、省庁によってはきちんと出されておりますが、省庁によってはいただいたままというのがありますので、意見を出したら、その答えをきちんと出していただきたい。
もう一つ、私が重要だと思うのは情報の発信の仕方であります。ここにも情報発信というところはいろいろあるのですが、情報をいかに届かないところに届かせるかということです。これは今までの課題でもありました。高齢者の事故であったら、高齢者の施設にできるだけ届けるように、子どもの事故だったらPTAを通じて届けるとか、それらのネットワークづくりというものが非常に必要だと思います。高齢者、障害者、消費者団体もそれぞれネットワークがあります。その横のつながりをきちんと構築して、情報をいかに消費者に伝えていくか。そこが重要だと思います。情報を一元的に集めるだけ、発信がホームページだけでは何の役にも立たないということが1つあります。
もう一つ、非常に私どもは重要だと思っているのが、事故の調査機関をどうするかというところで、ここでははっきり見えてこないのです。事故があったときの調査の仕方については、立ち入り調査ができ、それぞれの専門家の方を集めてワーキングをつくり、検討していただく。それらのことをやっていただきたい。それをやるに当たっては、きちんとした一つの事故防止センターのようなものができればいいと思っております。そこで事故情報を収集、分析、調査する。更に必要であれば調査機関の役割もする。そして、事故情報を発信する。それらの役割をすべて集めた一つのセンターができると、事故に関するものが1か所に集まることができると思います。そうすれば、私たちも事故情報を入手しやすいし、発信もしやすいのではないかと思います。そのようなセンターができればいいと思っております。
その3つを私は大きな点として挙げたいと思います。以上です。

○松本委員長 日和佐委員、どうぞ。

○日和佐委員 この構成なのですけれども、テーマ別のインデックスをつくってくださることにはなったのですが、それをやってもやはりわかりにくいと思います。一般の消費者の方にも理解してもらうということも大変重要なことでありますので、構成が、今は消費者の権利を中心にまとめられていますね。ですけれども、そうではなくて、もう少しわかりやすく、環境とか消費者教育とか食品の安全、製品の安全等、テーマ別にまとめていただく方が、具体的で、わかりやすい。インデックスをつくってもわかりにくいと思いますので、まず構成から考え直していただければと思います。
それから、具体的な施策のところは、こういうテーマでそれぞれの省庁は何ができますかということでお答えをいただいたものを、そんな言い方をすると、ちょっとひどい言い方かもしれませんけれども、ただ羅列して並べたというだけで、そこには消費者庁の意志というものが一つも見えないのです。そうではなくて、重点課題は何なのであるか。消費者庁は、何をどのようにしていきたいと思っているのかという意志を明確にした上で、そしてこれを是非やってほしい、あちらがやりますということを、ただ引き受けて羅列するだけではなくて、これをやってほしいというリーダーシップを発揮すべきだと私は思います。
そして、重点課題を幾つか挙げることが必要だと思っておりまして、私は、まず第1には、消費者行政、地方消費者行政も含めての強化が基本的に大事な課題であろうと思います。その後は、事故情報の収集と一元化と情報の発信。情報を収集して発信しただけでは不十分なわけですから、原因の究明と、その後、どのような対応をしていったかという一連の動きがきちんと把握できるような施策。
それと、先ほどから出ておりますけれども、消費者教育が非常に大きな柱としてあると思います。
もう一つは、製品、食品に関しての安全と安心の問題。
それと、消費者委員会に対しての記述が10行ぐらいで、こんなことで私どもはいいのかなという感じがしておりまして、新しく消費者庁と消費者委員会というものができて、新しいパラダイム展開をしていこうということなのですから、消費者庁はどうするかということと同時に、消費者委員会に関して、もっときちんと記述した方がいいと思います。
それから、安全と安心で製品と食品と申し上げましたけれども、総論のところに書かれているのは、製品の安全も食品の安全も一緒になって書かれているのです。これは、製造工程からして、商品の性格からして、製品と食品というものは全く違いますので、ここはきちんと丁寧に、食品の安全に関しては消費者の関心が非常に高い分野ですので、きちんと分けて書くことが必要ではないかと思います。以上です。

○松本委員長 では、中村委員から。

○中村委員長代理 大体皆さん言われていることと同じなのですが、私は閣議決定をする基本計画なので、この国の政府は、このテーマで一体何をしようとしているのかということが明確にわかるように書いた方がいいと思います。皆さん今、言っておられるのでよくわかる、例えば原因究明とか事故調査に関しては、経産省、消費者庁、国交省、国民生活センター等々からそれぞれ出ています。番号で指摘しても、2番、7番、8番、12番、14番、16、17、19、そして後ろの方で159、160とそれぞれが出ているのですが、日本の国というのは事故原因の調査について、どういうことをしようとしているのかということをわかるようにしてもらいたいのです。
消費者庁、消費者委員会の議論が始まるときに、勿論まず情報がばらばらにあったということで一元化しようということになったわけですが、それはパロマの事件などが中心だったわけですが、シンドラーエレベーターの事件では、御存じのとおり、原因を究明する機関すらない。これに対して、我が国はこれからどういうふうにやっていこうとするのかという辺りがなかなか見えにくい。国交省は昇降機等についてちょっと触れていますが、国民生活センターは商品テストレベルのところをNITEとの連携とか、経産省もそう書いていますけれども、もう少し国民にわかりやすく。
確かに大きなものから小さなものがある。それから、商品テストレベルだと、地方自治体にもいろいろな商品テスト部門がある。そういうところも含めて、我が国で何か事故が起こったときに原因究明してもらいたいのは、この製品ならどこへ行けば、どうやってくれるのかというのが描けるような基本計画に是非つくり上げてもらいたいと思います。それがまさに、消費者庁、消費者委員会ができたことの意味だと思います。
そういう観点から、ほかの課題でもすべてそうなのですけれども、総論だけ読むとなかなかまとまってきたと思うのですが、各論の一覧表になってくると非常にわかりづらくなるのです。皆さんおっしゃっているとおりなので、そこはまさに1つのテーマの横串としてきちっとまとめられていなくて、各省庁から出てきたら、そのまま担当省庁というところにばらばら出てくるのですが、4つの省庁から出てきた1つのテーマについて、どうまとめるかというところが、まさに基本計画の基本計画たるゆえんなので、そこのまとめを是非やって、ここだけ読めば事故調査については全部わかるという書き方に是非していただきたいと思います。

○松本委員長 下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 まとめていただきましてありがとうございました。今、各委員からお話がありましたように、基本的には、まず総論のところにおきましてさっぱりと書かれております。消費者教育のところにおいても、4ページに非常に簡単に書かれております。今、消費者教育が重要であるということは非常に強く言われておりますし、これに対応して、71から94番でしたか、消費者教育というものが書かれておりますが、それも先ほど来、各委員が言っているように、それぞればらばらのところでのり付けのように思います。
ただ、消費者教育だけではなくて、先ほど日和佐委員も言いましたように、地方消費者行政につきましては、今、推進本部会議がつくれまして動いておりますから、そこのところでもう少ししっかりと司令塔としての役割を果たしていただくことが必要ではないかと思います。
全体的に見まして、この中では張り付けが多いので、消費者庁が何を考え、何をしていくか。特に私どもでは、すき間事案をどうするかということで、これだけ大きな問題が出たわけですから、そこのところを消費者庁がしっかりと司令塔の役割を持っていただいて、期待しておりましたすき間事案の解消というものに対して積極的な関わり方をお示しいただければよろしいのではないかと思っております。
それから、先ほど来、事故情報の専門機関の設立とかありますが、私たち相談員といたしましては、国民生活センターの書き方も、相談員たちにとっては非常に不十分であるかと思います。テスト機能がしっかりとしなければ、安心して消費者は相談できないかと思います。また、立ち位置がNITEとは違いますので、消費者としてきちんと調査していただけるところ。それから、今は比較テストが余りなくなってまいりましたが、そのような情報の提供をしてくれるところが必要ではないかと思います。それは、国民生活センターに期待することだと思います。
項目別で細かくて申しわけないですが、もう少し国民生活センターなどについて、どのようにお考えになっているのかということがわかればいいのではないかと思います。余りにも項目別になっておりますので、できればきちんと、先ほども委員が言っていましたように、横串を刺したような、司令塔としてのあるべき姿が見られればよろしいのではないかと思います。
パブコメをこれからお出しになるという方に何人かお聞きしたのですけれども、行ったり来たりして細かくて、どこをどう書けばいいのか。項目の番号を書くだけでは、ほかのところの関連性がなかなか見えにくい。書くときはどうしたらいいのだろうかという御相談を受けました。ですから、消費者庁としてこうあるべきだという姿勢を見せていただけるような基本計画、5年間、期待しておりますので、是非そのようにしていただければと思います。

○松本委員長 田島委員、どうぞ。

○田島委員 私も、皆様から出ているテーマ別にまとめていただくということが適切だと思います。私が関わっております食品の安全についても、細かく見ていけばあちこちに出てくるのですが、散逸していて、どこをどう見ていいかよくわからない。恐らくパブコメを出される方も非常に難儀しているのではないかと思います。
食品のところをまとめて見ますと、書かれていることは書かれているのですが、肝心の表示の一元化。せっかく食品衛生法とJAS法の表示に関わる部分が消費者庁に移管されたにもかかわらず、そのことについて一言も触れていないのはどうなのかと思います。
そのほかには、厚生労働省は余り出てこないですけれども、農林水産省に丸投げしているような形になっていて、消費者庁がどう関わっていくかというのが全然見えてこないということで、もう一度検討を加えていただければと思います。

○松本委員長 池田委員、どうぞ。

○池田委員 基本計画の素案に対する文章上の要望というのは、ペーパーで出しておりますので、それをとりあえず参考にしてください。
私は、先ほどから全体像が見えないとか、消費者庁がリーダーシップをとるべきだとか、情報発信とか収集が大事だ。それは一々そのとおりだと思います。ただ、これは私の持論でありますけれども、消費者庁は消費者を窓口にした省庁横断的な組織として新設され、消費者委員会も別の形で組織されたのですけれども、その新設されたということに対する強い政治の意志というものがもう少し具体的に出ない限り、なかなか動きにくいというのが現実問題ではないかと思っているのです。
今の政権は、地域主権が1丁目1番地と言っているわけです。そうすると、この消費者行政というのは、まさしく私は地域主権、1丁目1番地の最たるものではないかと思います。今の組織のままで、各委員が言っていることを、消費者庁が中心になって、霞ヶ関を横断して各省庁のリーダーシップをとっていくということは、今までやってきたこととどれぐらいの差があるのかというのは、私自身は大変危惧します。これは消費者委員会の課題でもあると思うのですけれども、我々は消費者委員会として、内閣に対して勧告できる、あるいは諮問に答えられるのですから、もう少し行政の仕組み全体、消費者行政の中における、日本全体とは言いませんけれども、消費者政策上の行政の仕組みが今のままでいいのか。もっと変えていくべきではないか。あるいは消費者庁を中心として、どういう行政に変えていくのか、言っていくべきだと思います。
もっと地方公共団体の話が消費者計画の素案に出てこないと、住民に身近な、国民に身近な、市民に身近な消費者行政というのは永遠にできないと思います。情報の収集というのは、常に現場にあるわけですし、現場から発信すれば一番消費者に近いわけです。情報を事故の注意喚起とか対策のために一元化することは大事だと思いますけれども、やはり収集は地方でできても、発信というのは中央で考えるとすれば、佐野委員がいつも言われます「届かないところに届ける」ということは、永遠にできない課題ではないかと思います。
そうすると、今までと別なコミュニケーションの方法を新しい仕組みとしてつくり出していかない限り、情報を届けるという課題の答えは出てこないと思いますので、そういう視点での消費者庁のパラダイムシフトを要求すると同時に、我々消費者委員会がそういう課題をきちんと取り上げて、そういう意見を出すべきではないかと私は思います。

○松本委員長 櫻井委員、どうぞ。

○櫻井委員 必ずしも考えがまとまっていないのですが、お話を伺っておりまして、私の感触ということで少し申し上げたいと思います。
まず、この消費者基本計画というのは、先ほど来わかりにくいというお話も随分出ているのですが、消費者基本法に基づいて政府の閣議決定をして決定するものとして存在しておりまして、その名あて人は直接的には各行政庁なわけです。そうすると、いろいろな担当省庁が書いてあって、個別問題中心に書いてあって、それがホチキスどめであるという議論になっているのですが、役所の方からすると、多分こっちの方が責任の所在がはっきりしていて、わかりやすくて、ここに書かれた以上はちゃんとやらなければいかぬということのメッセージになっていると思います。
それで問題は、各省庁に対するメッセージの投げかけと、あるいは要請と言ってもいいのかもしれませんが、それと、それを行政の外側にいる一般の国民が見たときにどういうふうに受けとめるのかという問題は、これは二元的に違うものとして存在しているわけですので、それを一つの文章でやるというのは非常に難しいことだと思います。だから、少し形式を考えられたらいいと思いますが、病気の情報でも、医療従事者向けのものと一般人向けと分けてつくったりしてもいるわけですので、そういう一般的なテーマ別あるいは政策別にわかりやすくバンドルしたものをつくる。
それは、一般的に、必ずしも行政の組織の中にいる者でなくても、わかりやすい形で出していくというバージョンを1つおつくりになって、あとは内部的にもっときつく書いたいい方がところは個別的にたくさんあると思いますけれども、そういうところについては、今の基本計画で出されているものをもう少し厳しくしたものをつくるという感じで、少し形式について工夫してやらないと、多分両方の要請を一遍に満たすのは非常に難しいと思っています。それが1つです。両方こたえていくべきだということです。
2点目は、池田さんもおっしゃったのですけれども、消費者庁が司令塔としての役割を果たすべきだとか言うのだけれども、制度設計としては、消費者庁というのはそんなに強い省庁では全然ないのです。はっきり言うと、各省庁との共管が大変多いわけで、消費者庁はせいぜい物理的な受け皿になっているにすぎないというのが多分ニュートラルな言い方だと思います。
ただ、問題はそれでいいのかという話で、仏像に魂を入れるのはどうしたらいいかとか、あと仕組みそのものは必ずしも強くなくても、それこそ政治の力ということもあるかもしれませんが、動かし方とか運用とか、そういうところで工夫しますといろいろできてくるところがある。各省庁と協議するというのは、それぞれ消費者庁と各担当の省庁というのは対等なので、そこは言うことを聞けと言っても、嫌だと言われて終わりになってしまうので、それははっきり言って政務三役の責任といわざるを得ない。
しかもそれはビジネスモデルとして、それこそ霞が関でやったことはなかったわけですから、やれやれとは言われつつ、実際にはできなかったわけで、したがって、そこのところは大臣も行政機関ですから、行政機関のトップとして、従来のやり方ではできないところについては、自らもう少し介入というか、きちんと仕事をするということだと思います。その際、単純にスローガンを言うとか、新聞の見出しになるような簡単な言葉を言うだけではなくて、何も本当のディテールに踏み込む必要はないのだけれども、もう少しディテールに踏み込んだ形で具体的な指示を消費者庁に対して出し、それから閣議決定する段階では、省庁間の調整のところで政治が入ってくるということでやらないと、それはなかなか消費者庁に言ったってできないし、相手のあることでもあるので、そこのところは責任の所在を少しはっきりさせておいた方がいいかなと思っています。それが2点目です。
3点目としましては、これは日和佐さんがおっしゃったことですけれども、消費者委員会、消費者庁もそうなのですが、制度設計としては深刻な問題があるということは私もいろいろなことで申し上げております。とりわけ消費者委員会と消費者庁の関係が必ずしもうまくないところがあって、消費者委員会がいろいろ言っても、消費者庁の方は必ずしも受けとめる用意ができていない事柄も随分あり、具体的には、たとえば被害者救済の検討会を見学いたしましたけれども、私は行政的な対応も少しすべきであると申し上げているのでありますけれども、実際には消費者庁の検討会の中でそういうことが検討できる布陣には全くなっていないわけだし、恐らく問題意識が理解されていないと思います。
そういうことを含めまして、何でそういうことができないのかというと、運用の問題で改善できるところもありますけれども、制度設計自体に非常に深刻な問題がある。厳しい欠陥があるという感じがあるので、この計画との関係では、委員会、消費者行政組織ということですかね。見直し、改善すべき点については、1つテーマとしてもう少し書き込んでいく必要はあるのではないかと思います。
4点目、内容なのですが、私は各政策が重要だと思っていまして、個別領域と言っても、入ってみると、それはそれは非常に複雑な世界が広がっていて、個々の政策の中で従来、事業者のところに軸足があったわけですから、その軸足を少しずらすというのが消費者政策を消費者の観点で入れていくということで、行政の内容を少しずつ変えていくということが重要だと思うのですが、それは個別政策の中でやってなんぼという話だと思います。
ですので、私は大きな話というよりも、個別政策にいかに入り込んでいくのかということが極めて重要だと思います。従来の消費者法は、最近特商法についてちょっと分析しているのですけれども、どうしても民事的な議論と刑事的な議論しか出てこないのです。それで、行政規制は非常にアバウトだし、例えば消費者の声を政策に反映させるためには、消費者による申し出の制度というのがありますが、あれがきちんと動いて政策まで届くような仕組みになっていないのです。それは、法律の規定が非常に抽象的であって、しかもそれを支えるような制度設計になっていないということで、こういうのもちょっとやる気になってつくれば、下部の組織等々で対応すればよろしいわけだから、幾らでもできると思うけれども、そういう行政法的な発想というものが決定的に弱いと思っています。
具体的には、これまでも申し上げてきたことだけれども、全体としては、各政策について、そういう観点から見直しをしていくということが立法論として必要であると思っております。以上でございます。

○松本委員長 川戸委員、今いらっしゃったばかりですけれども、消費者基本計画について一通り、各委員の皆様から大きなお話を伺ったところなので、川戸委員もこの素案について、もし御意見ありましたら、どうぞお出しください。

○川戸委員 読ませていただいて、私が一番心配だったのは、一番初め、この消費者庁、消費者委員会がなぜできたかという、そこの原点に戻ってほしいなと。ずっと見させていただいて、前の消費者基本計画そのままより、むしろ後退している感じです。この際、新しいところができたのですから、前文も全部がらっと変えるぐらいの意気込みでやってほしかったと、今さらながら言っても仕方がないのかもしれませんが。

○松本委員長 いえ、まだ大丈夫。

○川戸委員 そこの視点から、書きぶり。私、いつもこういう報告書が出てくるときに言っているのですけれども、お役所言葉でなくて、私たちの思いをきちんと伝えるような、もっとわかりやすい。
それから、これを読むのが関係者とかお役所の人だけでなくて、それを手にとった消費者の皆さんが、ああ、こういう新しいものができたのだなと、そういう思いの文章にしてほしい。ですから、細かいところを修文する気に、済みません、余りなれなくて。時間がないのはわかりますけれども、そこを非常に考えてほしかったなというのが1つ。
もう一つ、最後の例ですけれども、これもこれまで出てきたものをホチキスでとめただけという感じがするので、ここももっと大くくりに、安全だったり、食品だったり、分類の方法から変えて、全く新しいスタイルで全体をつくっていただきたかった、その2点だけでございます。遅れて来まして済みません。

○松本委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員 先ほど櫻井さんもおっしゃったのですが、この問題は政務三役の責任、あるいは長官の出番だと思います。つまり、各省庁にちゃんと消費者政策を出せと言って各省庁から出して、それこそ予算折衝ではありませんが、各省庁でどの程度この5年間、この消費者問題に取組むのかということをやるのは、まさに今の民主党政権下で言うと政務三役の仕事だと思うので、それを是非やっていただきたい。
その中でお願いしたいのは、検証・評価という項目があるのですが、例えば消費者教育とかIT問題とか事故情報の問題もそうですが、そういう大きな問題については政府としての工程表をつくってほしいと思います。漠然と頑張りますではなくて、消費者教育の問題について、例えば予算を各省庁でどうするか、あるいはIT問題についてどうするということを、消費者庁プロパーでは工程表をつくりましたけれども、全体として大どころの政策について工程表をつくって検証・評価ができるようにしていただきたい。これが1つです。
2番目は、消費者庁として決断してほしいことがあると思います。大きく言うと3つです。事故調査の問題はずっと出ておりますが、勿論これは国土交通省の事故調査委員会とか経産省の事故原因究明の機関もありますが、要するに一元化してどう効率的にやっていくのかというのは、消費者庁が腹を据えて各省庁に、消費者保護の観点から総合的な事故調査機関をつくろうということを呼び掛けてやっていただく。あるいは、例えば景品表示法の改正とか特定商取引法の改正は、それこそ消費者庁が腹を据えて構えないとできないし、構えればできることなのですから、消費者庁の方で決断してほしいということがあります。
3番目は、私は消費者委員会としての意見をまとめるべきだと思います。今、メインテーブルに配らせていただきましたけれども、例えば池田委員や下谷内委員や田島委員が個別に書かれていることについて、私は全く異存がありません。賛成です。佐野さんや山口の方は、欲張ったことをたくさん書いているものですから、恐らくちょっと異論があると思います。そこら辺は整理して、消費者委員会としての意見ということできちんととりまとめて、各論も含めて大変な作業になるかもしれませんが、私は是非、松本委員長を中心に、各省庁に委員会としてこういうことを、大項目も小項目も含めて要求をきちっと出す。そういう中で、各省庁と場合によっては消費者庁と一緒になって渡り合うぐらいの、消費者委員会としての迫力も求められているのではないかと思います。それについては、私は大いにやりたいと思っていますので、消費者委員会としての意見を是非まとめていただきたい。
4つ目は、これは言い足りなかったところなのですが、物価問題が全く入っていません。今はデフレの世の中ですからいいとしても、便乗値上げやその他の問題もあるわけですから、それにどう取組むのか。あるいは、公共料金、特に鉄道料金、その他電気料金、電話料金ですね。わかりにくいものが非常にありますので、そういう点をきちんと項目に出していただきたい。
それから、今日これからありますが、リコール問題も項目に全く入っていませんので。

○松本委員長 ありますよ。

○山口委員 ありますか。それは見落とししました。やはり項目として挙げていただきたいと思います。

○松本委員長 佐野委員、どうぞ。

○佐野委員 消費者委員会としてまとめることには賛成です。ただ、168の細かなところまですべてまとめるのはちょっと無理なので、消費者委員会として、これはやってほしいという大きな重点課題だけでも私たちでまとめて、提出するという形がいいのではないかと私は思います。

○松本委員長 日和佐委員、どうぞ。

○日和佐委員 今の意見についてなのですけれど、私もそのように思っていまして、細かい課題まで全員が意見を一致させるというのは非常に難しいと思います。それぞれの委員の皆様から出された意見というのを拝見しましたけれども、全部に私自身は合意できない。これは私の意見とは違う、私は違う意見を持っているという項目がかなりありました。それを無理やり合意させるということは非常に難しいと思いますので、佐野さんがおっしゃったように、大きなところで重点課題をどうするかというまとめ方でいいのではないかと思います。

○松本委員長 下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 委員会として意見をまとめるということには賛成です。ただ、今、お二方がおっしゃっていらっしゃいますように、意見というのはそれぞれありますので、並列意見も出ると考えますが、できるだけまとまった意見を5項目ぐらいに絞ってやるという方法もあるのではないかと思います。

○松本委員長 櫻井委員、どうぞ。

○櫻井委員 まとまるならまとめてもいいと思いますが、委員は独立して職権を行使するという条文がありますので、私は別にひとりで闘ってもいいと思ったりもしますが、調整すると大体迫力はなくなりますので、そこは合意できる範囲でということで、条件付きでそういうことはあり得ると思っています。
恐らく、その場合の一つのテーマとして、調査機関の議論が出てくると思いますが、これは本当にものすごく難しい問題をはらんでおりまして、警察等の関係もあるし、それから行政の作用という点からいいますと、行政強制に絡む議論なので、これも戦後の占領法制をどういうふうに組み替えるか、組み替えないか。課徴金すらなかなかつくりがたいというところがあって、問題意識自体が必ずしも行政全般には共有されていない問題です。
それから、各行政庁はそれぞれ執行体制を直接的には持っていないというのは、そういうことの結果としてあるわけですけれども、そういう意味では人員の配置そのものの組み替えとか、そういうことも視野に入れないとできない、大変難しい問題であり、理論的にも非常に難しいと思います。私はそれでもやるべきだという方の立場なのですけれども。そうすると、どういうふうに書くのですか。成算のないことは余り言いたくないというのがあって、どのぐらいの実現可能なところで折り合えるかというところに若干不安を感じているので、その点は申し上げておきたいと思います。

○松本委員長 下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 今おっしゃっていることはよくわかるのですが、やはり委員会としてどう考えるか。そして、反対意見というものが必ずあるというのは、おっしゃるように各委員が独立したものを持っていますので、それは当然だと思います。けれども、そういうものを付記した上で、どう考えるかということをやってもいいのかと思います。並列にもなるでしょうし、こういう意見もあったという書き方でもいいのではないか。

○松本委員長 ほかに御意見ございませんか。いろいろ御意見が出されて、方向性についても少し違う方向もあるかもしれないし、最後のところで少し意見が分かれたように見えますが、恐らく共通にくくれる部分がかなりあるのではないか。
例えば、事故調査機関の問題であれば、着地点を決めて、NITEと国民生活センターを統合するということを、消費者委員会がそういう方向で結論を出すような項目を挙げろということには、多分ならないだろう。ただし、現状においては、統合の可能性等を関係省庁や機関が入って検討するということも挙がっていない。消費者庁として、独立した調査機関のあり方について検討するとされているのみなので、ここをもう少し広げ、関係省庁、機関が集まって、消費者庁のリーダーシップのもとにおいて、どういう条件が満たされればそういうことか可能なのか、あるいはおよそ不可能なのか等の検討を、横串を刺す形できちんとやっていただきたい。
それで、うまくさまざまな行政法上の点がクリアーできて、一元化できるということであれば、消費者の要望にこたえることになるのだろうと思いますから、そのレベルの方向性をここに書き込んでいただくという点では、委員の間では大体一致できるのではないかと思います。そういう例がほかにもたくさんあるのではないかと思います。
ほとんどの方が言っておられた点が、総論は比較的まとまっているけれども、各論の部分が、1つはわかりにくいというのと、前回の第1期基本計画とそんなに変わりばえがしているように見えない。消費者庁ができて、消費者行政がかなり一変された。消費者庁が横串を刺す形で、消費者行政の一元化ということで踏み出したにもかかわらず、その部分が見えていない。従来の縦割りがそのまま横に並んでいるだけであるように見える。
ここの部分を、1つは、見え方をもう少し工夫するという話と、それから見え方だけではなくて、中身についてきちんと消費者庁がリーダーシップをとれるようにしていただきたい。そのためには、櫻井委員おっしゃったように、政治のリーダーシップが不可欠であろう。消費者庁は、関係行政機関の事務の調整権限はありますが、総合調整権限というものがたしかなくて、総合調整権限は大臣に帰属していると聞いておりますから、大臣の出番ではないかと思います。そういう意味で、消費者庁がもっとリーダーシップをとって、各省を巻き込んで行うような課題をもっと挙げていただきたい。それぞれ縦割りの各省がやっていることについて、もっときちんとやってもらうというのも必要ですが、それをくくるような形の項目立てが必要ではないか。
大きな項目としては、消費者教育の問題。各省がそれぞれ、環境省は環境教育、金融庁は金融教育、法務省は法教育、農水省は食育といったように、消費者教育の一部あるいはその隣にあるようなたぐいの、市民の生きる力を養う教育を各省庁が一生懸命やっているわけですが、これを消費者教育とあえて呼ばなくても、市民教育という呼び方でもいいかもしれませんが、そういう観点でくくって、そして文科省と消費者庁が中心になって、各省も巻き込んでやっていくという方向付けが必要ではないか。
各論の項目の立て方についても、消費者基本法の条文の順に並んでいます。それは、最初の基本計画をつくったときにそういうふうにつくったわけですが、確かにトピック別の方が消費者から見ればわかりやすいところがあります。これは、名あて人が各省庁なので、各省庁がわかればいいのだということであれば、このままでもいいかもしれないですが、並べ方を変えてトピック別にしても、この課題はどの省庁がやるということは書いてあるわけだから、そこは余り変わらないので、そうすると、より国民の多くの人にわかりやすい形に並べ方を組み替えるというのも重要ではないか。
それから、佐野委員が消費者の意見を反映する観点の項目がほとんどないということを指摘されていますが、これは消費者基本法の基本理念の中に「消費者の意見が消費者政策に反映される権利」というのが入っているのですが、正面から消費者の権利として条文に立てないで、長い条文の中にこそこそと入れているという欠点があらわれている。消費者の権利の書き方が、正面からではなくて横から書いているところがあるので、意見を反映させるという施策が、このような条文の順での並び方になると入ってこないというところかと思います。
私個人は、消費者庁ができたときに消費者基本法も改正すべきだと思っておりまして、衆議院の特別委員会でもそういう発言をしたのですが、残念ながら基本法は変わらないで、設置法、整備法、安全法ができたということの限界がそういうところでちょっと出ているのではないかと思います。
ほかにも大きな柱としては、事故情報の収集、それから情報を国民一人ひとりへいかに届けるかといった問題。それから、食品表示の一元化の問題。それから、高齢化に伴うさまざまな被害の問題。あるいは、消費者庁、消費者委員会を含めた消費者行政組織全体の見直しの問題。これは、設置法の中の附則で、3年をめどに検討と書かれていたことになるかと思いますが、そういった部分がきちんと柱として挙がっていないのではないかということが指摘できるかと思います。

○山口委員 よろしいですか。

○松本委員長 どうぞ、山口委員。

○山口委員 今の委員長のとりまとめでいいし、すぐにでも消費者委員会として作業に入ってはどうかと思いますが、1つだけ追加させていただきますと、是非総論の中に高齢者対策をきちんとやっていくといいますか、高齢者が安心して消費者生活をやっていける社会にするのだという視点を出していただきたい。
それから、検証・評価についても、もう少しちゃんとやれるような項目の立て方を、先ほどちょっと私、申し上げたのですが、そこら辺は総論に盛り込んでいただけないか。
それから、項目としては、まさに今、委員長がおっしゃったように、事故情報の一元化とか事故調査機関のあり方、それから消費者教育のこと、消費者の声の反映。私は、消費者の声の反映は、特商法の改正あるいは景表法の改正も含むものだと思いますが、そういうことがある。
今、委員長のあれでちょっと抜けていたのが、未公開株対策やその他を含めて、無登録あるいは無届け事業者に対する、すき間事案に対する対応です。そのことと、先ほどどなたかおっしゃいましたが、地方消費者行政の充実、これは予算の面も含めて、そこら辺を項目として立てれば、ほぼ皆さんがおっしゃっていたことが網羅できるのかと。

○松本委員長 無登録事業者は、すき間ではなくて、それ自身違法行為をしているので、安全法で言うすき間には当たらないと思いますから、むしろ効果的に違法業者を抑止する、取り締まるためにどうすればいいかということになるかと思います。
ほかに御意見ございませんでしょうか。

(「はい」と声あり)

○松本委員長 それでは、本日皆様から出されました意見につきましては、消費者庁においても検討いただき、今後の基本計画策定作業に生かしていただきたいと思います。委員会としましても、引き続きこの点についての議論を行っていきたいと思います。

≪3.自動車のリコール制度について(国土交通省ヒアリング)≫

○松本委員長 それでは、次の議題に移ります。最近、新聞等で自動車のリコール関連の報道が連日なされております。本日は、国土交通省より自動車交通局技術安全部審査課リコール対策室の板崎室長にお越しいただいておりますので、自動車のリコール制度について御説明いただき、それを踏まえて委員会として議論を行いたいと思います。
それでは、まず板崎室長より御説明をお願いいたします。

○板崎国土交通省リコール対策室長 ただいま御紹介いただきました国土交通省自動車交通局リコール対策室長の板崎と申します。よろしくお願いいたします。
それでは、お手元にあらかじめ配付されていると思いますが、資料2に基づきまして、自動車のリコール制度につきまして御説明させていただきます。
2ページ目が目次でございます。
3ページ目の、まず交通事故とリコールの現状、一体どのくらいの事故があって、どういった形になっているのか、ざっと概観を見ていただきたいのですが、1.自動車事故とリコールの現状とあります。これは、ずっと交通事故がどういうふうに発生していて、その推移、トレンドがどうなっているか。
一番下のオレンジの線、5,155、これは20年ですから、去年は5,000人を切ったということでございますが、交通事故の死者数は、このように最近少し減少しつつありますが、5,000人程度ある。
それから、上から2番目の赤いラインを見ていただくと、76万6,147とあります。これは、交通事故の中の人身事故でございまして、警察の統計なのですけれども、その他、物損とかになりますと、これの何十倍という数字の交通事故が起きているということでございます。
それで、こういった交通事故を防ぐために、それぞれの立場、すなわちまず1つは、運転の問題、それから道路の問題、そして車両の問題、それぞれの観点からいろいろな安全対策をして、このように一時よりは交通事故の死者数、事故数が減少してきたという歴史がございます。
4ページになりますが、リコールの届け出の件数は、実際どのくらいあるのだということでございます。
棒グラフが届け出の件数、折れ線グラフがその対象となる台数です。これを見ていただきますとわかるとおり、17年以降、毎年300件前後のリコールの届け出があります。それから、台数につきましては、各届け出の部品によりまして台数が異なってまいりますので、上下しますが、20年度ではここにございますように530万件。日本の車の保有台数が7,500~7,600万台ですので、車の1割ぐらいがこういったリコールに該当する。すなわち、リコールというのはそんなに珍しいものではないのですけれども、毎年300件ぐらい、それから届け出台数の1割ぐらいのものがリコールの対象になるというものでございます。
最近は、トヨタの海外でのリコールがメインで、いろいろ新聞に載っていますが、もともと大きな騒ぎがあったのが、12年度辺り、三菱のリコール隠し問題から、ずっとリコールの届け出、リコールの注目というものが上がってきた。そして、平成16年度にちょっと棒が高くなっておりますが、これは最初の三菱とは違います。三菱ふそうの車輪が脱落して、少し大きな事故があった件、御記憶にあるかと思いますが、そういった三菱の事故、この2つがございまして、いろいろリコール制度に対する注目が集まり、またこういった届け出件数なども増えてきた背景があるかと思います。
5ページ目でございますが、先ほど申しましたように、交通事故の対策というのは、人、車、道、それぞれの分野でいろいろなことがなされているわけですが、車につきましては、こちらにございます道路運送車両法といった法律によりまして、車の中でもさまざまな対策がとられているということでございます。
まず、登録制度というものがございます。これは、ナンバーをつけるということでございますが、基本的にすべて走っている車は登録して、その情報を国が持っていて、そういった情報をベースにいろいろな安全対策を行う。また、別途税金とかにも使われるということ。
それから、安全基準というものがあります。これは、それぞれの車につきまして、いろいろな衝突時の安全基準とかブレーキの安全基準、それぞれ非常に細かく決まっております。ただ、車というのは国際商品でございますので、90年代以降、こういった安全基準の日米欧のハーモナイゼーションが非常に進んできておりまして、完全に全体がハーモナイズされているわけではないですが、いろいろな国際協定みたいなものができ上がっておりまして、基本的に大きな差異はなくなっていると思っています。
それから、そういった基準を決めるだけではなくて、型式認証制度というものがございます。これは、新車を販売する前に、こういった非常に複雑な細かな基準が決まっているわけですが、それを国が実際に試験をして、そういった基準を満たしているかどうかをあらかじめ認証したものを売るという制度も、アメリカの一部を除いて、基本的に全世界共通になっております。
あと、右側に参りますと、ユーザーによる点検整備義務、こちらも道路運送車両法の方で書いてございますが、基本的に自動車というのは、保安基準に適合するように適切にユーザーによって維持管理しなければならぬということが書いてありまして、具体的には、日常点検、日ごろオイルの量が大丈夫かとか、外観から見てわかる。これはユーザーの皆さんにやっていただくことが決まっています。また、定期点検ということで、乗用車の場合ですと1年に一度、ブレーキとかエンジンを少し点検してきっちりやっていただくという義務がかかっています。
更に、定期検査制度がございまして、乗用車の場合は3年、2年、2年。最初3年、次は2年ごと、これは国もしくは民間の指定工場で車の状態が基準に適合した状態になっているかどうか、車を持ち込んで実際に検査する。それに適合しているものでないと道路を走れないことになっております。
更に、そういった数々の制度に加えましてリコール制度というものがありまして、リコールを一言で申し上げますと、最初はわからなかったものが、走っている途中、使用過程の中でわかり、またその原因が設計とか製造に起因するような不具合が発見された場合、それを速やかに回収して安全な状態にしていくということでございまして、車におきます安全規制といいますものも、このようにさまざまな制度で行っているということを御理解いただければと思います。
6ページ、では、リコールというと、どういった関係者が関係してくるのか。ユーザー、メーカー、国交省の関係の役割を簡単にあらわしたものでございます。ここにございますように、ユーザーはきっちり管理していく。メーカーは、ユーザーに情報を提供する。それから、こういった不具合を追求してリコールを行っていく。国交省は、こういった制度がきっちり回るように制度を整備し、またいろいろな指導をしていくといった、それぞれの役割を果たすことによりまして、自動車のリコール制度が機能していると理解しています。
7ページ、これはリコール制度の変遷を書かせていただきました。
リコール制度は、昭和44年に通達ベースで始まりましたが、平成7年には道路運送車両法でしっかりと決めまして、その後、幾つかの不正事案、先ほど申し上げましたような三菱の件などを踏まえまして、ちょくちょく制度の強化が図られているところでございます。
平成15年には、リコールの命令制度というものができ上がりましたし、罰則もかなり強いものになっております。次のページで御説明いたしますが、リコールの届け出を行わなかったり、国交省に対して虚偽の報告をした場合などは、1年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金。それから、法人重罰2億円というかなり厳しい法規制になっているところでございます。
また、平成18年には、国交省自体としてもきっちりとその技術的な内容を検証できるようにということで、技術的検証体制の整備ということが行われておりまして、具体的には、独立行政法人の交通安全環境研究所というところがございますが、そちらの方にリコール技術検証部を設けまして、技術的な検証体制も整えているところでございます。
8ページ、リコール制度の概要でございますが、道路運送車両法に書いてあることをポンチ絵にまとめたものでございますが、リコール制度は基本的にはメーカーが自主的に実施する。これが基本の制度になっています。と申しますのは、自動車というのは非常に複雑でございまして、その中身を最もわかっているのは自動車メーカーである。したがいまして、まずメーカーに、こういった不具合を調べ、それを届け出るということを促すというのが制度の基本になっています。
ただ、次のページにありますように、安全上問題がある場合は、国が勧告、公表、命令するという権限も設けられております。すなわち、(2)の権限を背景に、メーカーが自主的にリコールを届け出ていただくという制度で回るように、道路運送車両法では制度設計がなされております。
リコールの概要の(1)ですが、どういったときにリコールをするのかといいますと、保安基準に適合しなくなるおそれがある状態、または適合していない状態。保安基準というのは安全基準のことでございますが、こと細かにいろいろなことが決まっています。そういった基準に適合しないということだけではなく、適合しなくなるおそれがある状態。ですから、少し幅を広げて、危ないかもしれないといった可能性のところまで広げておりまして、なおかつそういった状態が車の設計、製作の過程にある場合において、メーカーが改善措置をすることになっております。
それで、リコール届け出をしていただきまして、そういった届け出があった場合は、国交省はホームページ、プレスに公表、メーカーもホームページ等々で公表。それから、改善措置を実施して、改善措置の実施状況について国交省に報告があるということでございます。
そして、車の場合は、先ほど申し上げましたように登録制度というものがございますので、その登録情報をリコールの場合につきましては、メーカーは利用することができまして、そういった登録情報をベースに、基本的にすべて手紙、レターでこういったリコールに該当しますということをお知らせして、リコールの実施の率を上げているところでございます。
それから、(2)は、こういった自主的なリコールがきっちりと実施されることを担保するための手段ということで、メーカーがきっちりしていない場合は国が命令する権限があるということが書いてあるわけでございます。
10ページに参りますが、こういった基本的な法制度ですが、先ほど申し上げましたような三菱の話などがありましたので、リコールに係る不正行為再発防止策ということで、国交省では、マル1からマル3、すなわち情報収集体制の強化、監査の強化、技術的検証体制の強化ということに取組んでまいっているところでございます。
11ページですが、これはユーザーへどういった形で情報が流れていっているのかということを簡単にあらわしたものですが、リコールの届け出がありますと、国交省は記者発表、それからリコール関連情報をホームページで公開しております。それから、メーカーはユーザーに登録情報をベースにダイレクトメールを送付し、そういったものでそのユーザーは改善措置を受けますし、また不具合情報がありましたら、ユーザーは「不具合情報ホットライン」というものが国交省のホームページ上につくってありますので、そういったところに情報が集まるということをやっております。
12ページ、13ページは、具体的にどんな車がどういうふうにリコールになっているのかという話につきまして、国交省のホームページの中に「自動車のリコール・不具合情報」という画面をつくっておりまして、こちらの中ではどんな車がリコールになっているかというリコール情報。それから、ユーザーの皆さんがいろいろ不具合を感じたときに、その不具合情報を書き込んで、それを検索することができる。また、メーカーから事故情報、火災情報等々をとっておりますので、そういったものもホームページ上で検索したりする。こういった情報提供をやっております。
13ページは、リコール情報の検索ということで、これはこんな感じになっていますという御紹介でございますが、リコール情報検索のところから、次のページ、14ページ、15ページにありますように、リコールの一覧表を出してみたり、該当するリコールの中身を調べようとする場合には、15ページに書いてあるような情報を引き出して見ることができることになっているところでございます。
16ページは、不具合情報の収集でございます。
これは、かつての三菱の案件等々を踏まえまして、ユーザーから直接の不具合情報を集め、それをベースに必要な調査を行っていくことが必要であろうということで、17ページにございますように、12年からホームページ、フリーダイヤル、24時間受付電話で不具合情報の収集体制を強化しているところでございます。
そして、13年から集めました不具合情報は、ホームページで公表しているところでございますが、18ページにありますように、不具合情報の公開。なぜこういったことをしていたのかといいますと、同種の不具合をよりたくさん集めたい。要するに、新たな不具合情報を集めて載せることによってユーザーの関心が高まりまして、より多くの不具合情報が集まるであろうということと。
やはり車というのは、勿論リコールという設計・製造上の問題もございますが、それ以外にも保守管理上、使用上の問題もたくさんありますので、こういった車の不具合情報を載せることによりまして、ユーザーの関心を引き、ユーザーの保守管理に役立てていただきたい。こういうことをねらいとしているわけでございます。
19ページに、ホットラインへの申告件数というものが載っております。5,000件ちょっとの不具合の情報が寄せられているところでございます。
20ページ、21ページ、こちらもホームページの宣伝になってしまうわけでございますが、不具合情報の検索ができることになっておりまして、そこで検索すると具体的にどういう車種のどういう車がどんな不具合になっているのかということを見ることができます。ただし、この不具合情報というのは、あくまでもユーザーからの申告内容を要約したものでございまして、その事実関係についてきっちりと明確になったものではないということでございますが、こういった情報を提供することによって、ユーザーの注意を促しているということでございます。
更に、22、23ページは、自動車の事故・火災情報の検索というページでございます。
こちらは、国交省は法に基づきまして自動車の事故・火災情報を自動車メーカーから集めております。その中で、自動車に起因する不具合につきまして集めたものを、去年1月から公表するということもしているところでございます。自動車に起因する不具合というのは、勿論設計・製造に起因するようなリコールに該当するもののほかに、整備のミスによっていろいろな不具合が起こったり、極端な使い方をして不具合が起こったり、そういったものもございますので、その辺りにつきましてユーザーの関心を高めて適切に使っていただこうというねらいで、去年1月からこういった情報についてもホームページ上で公表しているという現状でございます。
更に、これは全く参考になるわけでございますが、24ページ、25ページにはリコール検討会を御紹介させていただいています。このリコール検討会といいますのは、平成19年、20年度の2か年にわたりまして、24ページに書いてあるような学識経験者、関係業界の方々をメンバーといたしまして、いろいろな意味で車の使用環境が変わりつつあり、リコールの数もなかなか横ばいで減っていかないということから、どういった問題があるのかということを勉強し、その課題を整理して対応策をまとめたものでございます。
こちらの検討会では、4つの課題が整理されております。
御紹介させていただきますと、まず1つ目の課題は、リコールに対する正しい理解の普及ということでございます。リコールそのものは悪いものではないわけでございます。きっちりとリコール制度というものがどういうものであるかを知っていただいて、事故の未然防止に機能しているということを理解していただきたい。
それから、先ほど来申し上げていますが、リコールをきっちりやっていくということに加えて、ユーザーの適切な使用、保守管理も、やはり車の安全を守るためには重要であります。こういったことを知っていただく。
それから、課題2では、ユーザーへの情報提供の充実。それから、不具合発生からリコールに至る過程の透明性の確保といった中身を、更にユーザーに知っていただく努力が必要であろうということで、先ほどもちょっと御説明しましたように、21年6月からホームページに載っていますが、これは1月からの情報を載せているということですけれども、不具合の事故・火災情報、それからホットラインで集まっておりますユーザーからのいろいろな不具合情報がありますので、それを少しまとめた形でわかりやすく公表していく。
更には、これはまさに今、検討していただいておりますが、車というものをしっかり知っていただかないといけませんので、販売時に車はこういう特性があって、こういうものだということをもう少しきっちりとユーザーに伝えていくことも検討しないといけません。
それから、最近、乗用車は、毎年平均寿命といいますか、車の使用期間が非常に長くなっています。平均寿命が今、11年を超える状況になっております。ということは、結局車を設計したときよりも使い方というのが大分変わってきたということもあります。したがいまして、そういったある意味の想定外の使用によって、車というのは注意しなければならないところが出てまいりますので、こういったことにつきましてもユーザーに情報提供するということが必要になってくるのではないかという課題。
それから、課題3といたしましては、リコールに至る自動車の不具合の発生原因の分析と削減。最近、横ばいで300件以上のリコールがずっと出ている。リコールそのものは悪いというわけではないと思いますが、どういうことでこういった不具合が減らないのかということを分析いたしましたところ、1つは、平成16年の三菱ふそうのときに一斉点検を各メーカーにやっていただいていますが、その中で、これまでであれば少し見落としてしまいそうな不具合も、きっちり発見できるような体制をメーカー各社さんとも強化を図ってきている。こういったことから、リコールの件数はかなり増えている。
更に、先ほど申し上げましたように、開発時の想定を超える使用環境。端的にいいますと、かなり古い車まで使われるような状態になっている。その辺りをきっちり対応していかないと、リコールそのものが減っていかないのではないかといった議論がなされております。
更に、課題4として、使用過程の自動車の安全の確保及び環境保全のための、メーカーを初めとした関係者が担うべき役割の明確化。制度というものをいろいろ見直して徐々に強化しているわけでございますけれども、やはりメーカー、ユーザー、国、更には日ごろ車の保守管理をユーザーにかわって行っている整備工場、ディーラーといったところにつきましても、更にリコール制度というものがきっちりと回っていくように、それぞれの役割があるだろうということで、この課題4に書かれたような指摘がありまして、これにつきまして、今それぞれ関係のところで、更によくしていくような努力をしている状況でございます。
27ページに、最近話題になっておりますプリウスのリコールにつきまして資料を付けさせていただいております。
プリウスの場合は、ABSと言いますブレーキの制御の問題がありまして、その制御が必ずしもしっかりしていなかったので、ABSが作動すると、空走感、それから実際制動力が落ちて制動距離が延びてしまうという不具合で、この2月9日に国交省にリコールが届けられております。同時期に、アメリカの方にもリコールの届け出がされたという状況でございます。
あと、資料にはないのですが、アメリカだとかヨーロッパのリコール制度と日本のリコール制度はどう違うのだという御質問があったやに聞いておりますので、簡単にお答え申し上げますと、それぞれ国は法律の体系が違いますので、細々とした書き方は違うと思います。しかしながら、基本的な考え方は同じです。
日本の場合は、保安基準という基準がこと細かに書かれておりまして、その保安基準、安全基準に不適合、もしくは不適合になるおそれという書き方で、その不具合の事象を限定しているわけです。アメリカの場合は、安全上の欠陥を認めるときという一言で書いておりまして、まさに法制度の立て方の問題だと思いますけれども、そういったことで書いている。自主的にメーカーが届け出てやるのが基本というのは、アメリカも同じでありまして、ほとんどのリコールは日本もアメリカも基本的にメーカーが届け出る。
ただ、届け出るに際して、これは日本もアメリカも同じなのですが、メーカーと当局との間で、メーカーから相談が来るわけでございますので、いろいろな指導とかをしてメーカーが届け出る。これが大半になっていまして、アメリカの方もリコールの命令制度がございますが、今回のアメリカで話題になっているアクセルペダルの問題だとか、いろいろなものにつきましても、メーカーからの自主的な届け出のリコールという整理になっているものだと承知しているところでございます。
以上、簡単でございますが、私からの説明は終わらせていただきたいと思います。

○松本委員長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明も踏まえまして、どうぞ委員の皆様から御意見、御質問をお出しください。中村委員、どうぞ。

○中村委員長代理 質問なのですが、「自動車不具合情報ホットライン」にユーザーが書き込んでから公表されるまでの手続、どうしておられるのかちょっと聞きたいのです。要は、入力したら、そのままぱっとオンされるのではなくて、半年分とか、ためて出されて、遅いときには半年ぐらいずっとホームページが動かない。今回は12月31日まで書いてあるので、1か月ちょっと前までよく頑張って載せられたと思いますけれども、時々数か月あいてしまうことがあるのですが、書き込んだ後、公表までの手続をちょっと教えていただけますか。

○板崎国土交通省リコール対策室長 書き込まれた後、その情報は、1つは、我々のいろいろなメーカーに対する調査みたいなものに使っていますが、いろいろ個人情報とか番号がいっぱい書いてあります。それから、書き込まれた情報には、不具合に関係のないような誹謗中傷みたいな話もたくさん書いてありますので、そういったところを少し修正して要約する作業をやっております。
今おっしゃったように、できる限り早く載せたいと思っていまして、今のところ、一月二月ぐらいで載せるように、努力しているところでございます。確かに、過去少し長くかかっていたことがあったことは承知しておりますが、できる限りそういった作業を終わった後、どんどん載せていきたいと思っています。

○松本委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員 2つ教えていただきたいのですが、まず日本のリコール制度には、リコールと改善対策とサービスキャンペーンと3段階あるようです。それで、今はいわゆるリコールについて説明があったようですが、基準不適合ではないけれども、安全上、または公害防止上、放置できなくなるおそれがある。または、放置できないと判断される状態のときには、改善対策の届け出をしなさいとなっているようですし。それから、もう少し緩やかな条件で、サービスキャンペーンの通知というのがあるようです。
ところが、これは消費者委員会事務局の方で調べてみましたら、トヨタのプリウスなどのリコールについては、資料の最後にある届け出がなされているようですけれども、例えば2006年の11月1日付でエスティマの改善対策というのが公表されているのですけれども、この不具合の状況を見ますと、御認識があるかどうか、先ほど説明があった今年2月のプリウスなどのリコールの不具合の状況と、ほとんど同じような記述でして、最後は運転者の予測により制動停止距離が延びるおそれがありますというところで改善対策が出ているのです。
それから、昨年11月19日付けで、エスティマ、ハリアーなど5種のサービスキャンペーンというものが、公表されているのですが、これを見ますと、燃料に含まれる硫黄成分により、ブローバイガス中に生成される硫黄化合物が影響してエンジンの可変式バルブ制御用油圧ホースの内面に亀裂が発生することがあり、そのまま使用を続けると当該ホースに穴があき、オイルが漏れるおそれがありますという、これだけ読むとかなり怖い現象が書かれておりまして、これで何でサービスキャンペーンで済んでいるのだろうという感じがありまして、サービスキャンペーンと改善対策とリコールが実際の運用の中でどういうふうに区別されているのか、その辺の実務の感覚を教えていただきたいのが1つです。
それから、私ども消費者委員会としては、自動車だけではなくて、その他の生活用品の安全についてのこともあるので、もし御存じであればですが、ほかの生活用品のリコールとはどう違うのか、どう特殊的なのか、教えていただきたい。この2つです。

○板崎国土交通省リコール対策室長 まず、改善対策、サービスキャンペーンですが、リコールというのは、こういった車両法できっちり書いてあります。改善対策、サービスキャンペーンというのは、通達に基づく制度でございまして、リコールに本来該当するのに、こういったリコール隠しみたいなことが行われないように、市場の措置をする場合に国交省に届け出てもらう、通知してもらうということでございます。
改善措置というのはどういうものかといいますと、基本的に日本の場合は細かな保安基準がずっと書いてあるわけでございますけれども、基準が全くないようなところもございます。それは、すべての条件をすべて基準で書き切れないものですから、そういったところがございます。そういった場合には、改善対策ということで、3段階に分かれているというよりも、リコールと改善対策はほとんど同じもので、基準できっちり書けていない部分は改善対策になるという理解でございます。
先ほどのエスティマの件が、具体的にどういう件か、もう少し見ないといけないかと思いますが、おそれの部分みたいな話でありますと、それこそ19年、20年とリコール検討会をやっておりますように、そういったものの見方はどんどん厳しくなってきたということはあるかと思います。
それから、基本的にリコールというのは先ほども申し上げましたけれども、安全上の問題があるということと、その問題の原因が設計、製造に起因する問題であるという場合は、リコールなり改善対策になるわけでございますが、使い方とかメンテナンスをやらず、車というのはメンテナンスをきっちりやらないと壊れてしまいますし、これも詳細はもう一回見ないとはっきりしたことは言えませんので、もし間違っていたら大変失礼なのですが、例えば粗悪ガソリンを入れた場合というのは、何らかふぐあいを生じることはあると思います。そういう場合は、これは非常に難しいと思いますけれども、使っている方にも問題があるということなのですが、メーカーとして商品性という意味で、もう少し幅を広げて商品性の高いものにするということから、サービスキャンペーンという形でやられることもかなり多いかと思っています。
2点目の、ほかの制度のリコールがどうなっているかにつきましては、私、不勉強で余りよく知りませんけれども、1つは、いろいろなこれまでの中で、自動車のリコール制度がある程度お手本になっている部分はあるのではないかと思っているところであります。例えばこういった不具合情報の公表ということにつきましては、当初、自動車の場合は13年から具体的に、例えばトヨタのカローラとか、そういうものを出しながら不具合情報を公表していました。自動車の場合は相手がすごく大きいものですし、メーカーの理解も得られていますので、こういうことができたのだと思いますが、当時は、ほかの製品では、そういう個別具体の名前が入ったような情報を出すというのはなかなか難しかったように聞いています。
あと、自動車の場合は、いろいろな制度である意味がんじ絡めに縛っているところがあります。したがいまして、先ほど申し上げましたように、登録情報というのがありまして、登録情報というのは、使用者の住所とか全部登録してありまして、国交省が管理しているコンピュータシステムに全部入っているわけです。勿論、変更届け出をしなければ100%一致しているとは言えないのですが、そういったこともありまして、リコールをやる場合の捕捉率といいますか、改修率は非常に高いと認識しています。基本的に、100%というのはあり得ないのですが、9割回収するまでは報告を求めておりまして、よほどどこかに行ってしまっているもの以外は、まずとらえられるところはすべてとらえてやっているということで、かなり短期間で回収は進んでいるものだと思っております。
ちなみに、今回のプリウスは非常に社会的な話題になっていたため、ユーザーの関心も非常に高く、またトヨタもいろいろ頑張ったと思いますが、もう既に1週間ほどで7割ぐらいは回収が終わっているということですので、ほかの制度と比べますと回収のスピード、率というのは高いのではないかと思っているところでございます。

○松本委員長 櫻井委員。

○櫻井委員 基本的なところをちょっとお伺いしたいのですが、自動車の道路運送車両法上の安全性能審査の手続概要を少し教えていただきたいと思っていまして、実際上の安全性能審査について、行政としてはどういう形で入っておられるのかということが1つです。原発とか建築物については少しわかるのですけれども、それとの比較でどんな感じなのかと思っております。
それから、保安基準というのは、これはさっきアメリカの仕組みについて言及されたのですが、性能規定化みたいなことが随分進んでいるのですが、自動車の場合はどうなのか。そんなにハイテクではないというイメージもちょっとありまして、そうすると従前どおりでよいのかなというのが1つ疑問としてあります。
2点目は、先ほど来リコールは悪いものではないというフレーズがあるのですが、その趣旨、本意をお聞かせいただければと思っております。

○板崎国土交通省リコール対策室長 まず1点目の安全基準、それから審査の話でございます。
安全基準というのは、基本的に自動車の場合は性能で全部書いてあります。ですから、構造基準ではなくて、例えば50キロでこういった壁にぶち当たったときに、頭にどういう力が働く、どういう力以下に抑えなければいけないとか、路面を走ったときに、例えば100キロから思い切りブレーキをかけたときに何メートル以内でとまらないといけないとか、ランプの光度は何カンデラ以上でないといけないということで、基準集だけでもこのぐらいの物すごい分量になっています。
これは、先ほど申し上げましたように、国際調和が非常に進んでおりまして、細かな技術的な議論なのですけれども、国連のECEの中でこういう基準フォーラムというものがありまして、そこでやっているのですが、かなり細かく、いろいろなことが書いてありまして、ほとんど一般の人では理解ができないような状態になっていると思います。
そして、そういった審査をどうするかということにつきましては、日本の場合は型式指定という概念で、道路運送車両法の75条に型式指定の申請というものがあるのですが、まず国土交通省に何とかという型式の申請が参ります。そこで、国土交通省は何を見るかといいますと、1つはサンプル車をテストいたしまして、それぞれいっぱいある基準にすべて適合しているかどうかの試験を、社内データなり、自分たちが自ら、三鷹の交通安全環境研究所に自動車審査部というものが設けられておりまして、そこで排ガスのテストとか衝突のテスト、全部できる設備があって、そういったことをやってレポートをつくる。
もしくは、これは国際商品で相互認証条約というものがございまして、ヨーロッパなどでいろいろなラボがありまして、そこである、例えばブレーキの試験に合格しているものであれば、そのブレーキの試験に合格していますよという認可証みたいなものがありまして、それを提出する。それによって、1つサンプル車としての安全性を確認することと。
更に、生産体制です。その品質管理がきっちりできないと、大量の車が同じような性能になっているかわかりませんので、品質管理、均一性の確認。それは、ISOの何千番、何万番というものも参考にしながら、いろいろな品質管理のチェックの方法がありまして、そういったものをチェックし、また2年に1回だとかの監査をあわせながら、そういった安全性のチェックをしていくという形で認可をやっているものです。
そういうプロセスが、アメリカの場合は、排ガスにつきましてはそういった政府の認証をやっているのですけれども、安全につきましては、アメリカのみ、すべてメーカー自らがそういったいろいろな試験に通っていますよという自己認証制度を導入しておりますけれども、アメリカ以外のヨーロッパ、それから日本は、安全・環境ともこういった政府認証制度が入っておりますし、アメリカにおきましても、排ガスの方は政府認証制度が入っているということになっております。
それから、リコールが悪くないという話は、誤解を与えると非常によくないのですが、基本的にどんなものだって最初から完璧なものがあった方がいいことは、これはもう言うまでもないものだと思っていますが、車というものは、使い方、条件によりまして、最初から完璧なものをつくるというのは、世界的にも、これはちょっと難しいことだと思っております。そうなりますと、少しでもそういった不具合の情報をきっちりウオッチしておいて、できる限り早くそれを回収していく、これが非常に大切なことである。
問題なのは、リコールを隠したり、回収をやらなかったり、遅らせたり、そういったことが悪いのであって、リコールそのものを行うということ自体は悪くなくて、それは積極的にやっていただきたいというのが趣旨でございます。

○松本委員長 日和佐委員。

○日和佐委員 日本とアメリカとの比較なのですが、日本における改善措置は、恐らくアメリカではリコールであろうと思うのですが、日本におけるサービスキャンペーンはアメリカではどのような扱いになるのかを伺いたいのと。
それから、サービスキャンペーン、改善措置、リコールは、それぞれ国土交通省に届け出があるとおっしゃいました。その届け出があったものを、ただ受け取るのではなくて、それがサービスキャンペーンの措置が適切であるかどうかということの判断を、国土交通省はなさるのかどうかということです。
もう一つ、このABSに関して、具体的にいえば、これは要するに踏み込めばとまると盛んにおっしゃっていました。したがって、サービスキャンペーンで大丈夫という考え方があって、リコールが遅れたのではないかという見方があるわけですけれども、その辺りについてはどのようにお考えになっていらっしゃるか、お聞かせください。

○板崎国土交通省リコール対策室長 まず1点目に、アメリカのサービスキャンペーンはあるのか。新聞を見ていますと、アメリカにはサービスキャンペーンがなくて、全部リコールですということが書いてありますが、そんなことはありません。サービスキャンペーンというのが英語的にどうなのか。サービスキャンペーンという呼び名をしているかどうか、これはわからなくて、セーフティー・インプルーブ・キャンペーンとか、いろいろな言い方をしているようですけれども、向こうのセーフティーアクトに入らない範囲での回収というのはあります。ですから、基本的には日本と同じだと思っています。
それから、今回のものにつきまして、トヨタのプリウスのリコールが遅かったのではないかという話ですが、これにつきましては、サービスキャンペーンなのかリコールなのかということで、トヨタが迷ったということは余り私、思っていません。朝日新聞に出たのが2月3日だったと思います。アメリカでふぐあい情報があるという記事が大きく載ったと思いますが、それから1週間ほどで届け出があって、あくまでもリコールというのは、トヨタとして安全上に問題があるからリコールという形で届け出られたものだと思っていまして、我々もそれを受け付けたということでございます。
先ほど、サービスキャンペーン、届け出て、そのまま全部受け取っているのかというお話ですが、基本的にサービスキャンペーンで、これはいかにも違うでしょうというときは、我々は指導します。幾ら何でも、これはユーザーの使い方だとか、そういった判断はちょっと違うのではないかと思われるような場合は、当然ながら指導いたしているところでございます。

○松本委員長 中村委員、佐野委員、川戸委員の順で。

○中村委員長代理 質問が2つと意見1つなのですが、27ページにリコールの届け出一覧表というものがあって、この中に不具合件数84件という欄がありますけれども、この84件がどういう不具合であったかということは、国交省の方でちゃんと集約されているのでしょうか。これは、あくまでもメーカーが書いてきた数字であるということだけなのか、84件、それぞれの事故対応とかふぐあい対応をちゃんと把握しておられるのかどうか、これが1つ質問。
それから、先ほど来何度も出てくる独立行政法人交通安全環境研究所、これは今度の消費者基本計画にも、こちらで現車確認と安全環境性に疑義のあるものについてはやるのだということを国交省の方で言っておられるのですが、今お話を聞いているといろいろなことをやっておられるのですが、マンパワーとか予算とか、どのぐらいのことをやっておられるのか。あるいは、ユーザーが自分がちょっと心配だから見てくれという持ち込み検査もやっていただけるのか、これは質問です。
それから、意見としては、先ほど火災の情報を集めて公表されるということで、23ページに載っていますが、ここの利用に当たっての注意事項を見ますと、自動車製作者や輸入事業者からの情報と書いてありますが、火災については、何といっても警察と消防だと思います。こういうところからの情報をもっと上手に集めて、まさに行政が消費者目線で一体として動いているのだという形にできないものかどうか、これは是非そういう方向は検討していただきたいと思います。以上です。

○板崎国土交通省リコール対策室長 まず最初の、84件、すべて詳細に確認しているのかということでいえば、詳細に1件1件、裏をとっているものではありません。これは、メーカーとして届け出、今回、ABSのふぐあいということでございますけれども、そういった不具合事象が84件、メーカーのルートの中で入ってきている。メーカーの場合は、必ずこういう不具合がありましたら、ディーラーから入ってきて、それをふぐあい情報、品質管理情報ということで全部とることになっていますので、そういったもので入ってきたのが84件ある。
ただ、我々は年に最低1回程度、メーカーに立入監査をやっていまして、ディーラーから上がっている情報がどのくらいあって、それがどういうふうに処理されているかということを確認しているということと。先ほど申し上げましたように、道路運送車両法の63条の4というのが情報虚偽報告の罰則がかかっているところでありまして、これは法人重罰2億円かかるようなところになっていきますので、基本的にそういった大きなうそはないと思っています。
それから、交通研はリコール技術検証部ということで、技術検証官、実際、車に非常に詳しい人は今6人いるだけです。その6人がこういったいろいろな不具合の情報を見ながら、重要なものについて技術的に我々をサポートして、よりよいリコールが回るようにしているところでございまして、確かにマンパワー的にすべてのものができるわけではありません。
それから、基本的にユーザーが何か不具合があったときに持ち込んでやってくれるのか、そういう機能も特段持っているわけではございません。技術検証というのは、あくまでもメーカーと国交省とのやりとりの中で不十分なところがあったら、自らいろいろ実験なり調査をやっていくという機能、それからマンパワー、予算に限られているところでございます。
それから、火災の情報につきましては、これも法の情報報告要請に基づいてとっているものではございますが、一方、消防庁、警察庁。警察の方は事故情報でございます。自動車に起因する疑いがあるという情報を警察庁が持った場合は、我々の方に全部知らせていただくことになっていまして、それに基づいて、我々は必要な確認なり調査をやっている。それから、消防庁の方も、最近、自動車の火災の話だとか、いろいろな製品の火災を公表されていますけれども、ああいう情報を我々もいただいておりまして、その車がリコールをちゃんとやっているのか、漏れがあるのかないのか、その辺りもチェックさせていただいているところでございます。
したがいまして、こういった情報提供のもう少しわかりやすくということにつきましては、リコール検討会などでもいろいろ指摘されているところですし、一層わかりやすいものにしていく必要はあると思っております。

○佐野委員 今の中村委員の質問と少し重なっていたので、84件のところはわかりました。国土交通省にある、先ほど御説明があったホットラインの不具合情報の中には、今回のトヨタのブレーキとかアクセルの情報というのは一切なかったのでしょうか。

○板崎国土交通省リコール対策室長 この話が2月3日以降、非常に盛り上がったと思っていますが、それまでに13件入っていました。いずれも冬場以降、1月で13件入っておりまして、それから2月以降、新聞でかなり話題になってから、100件まで行ったか行っていないか、ちょっとあれですが、同じような情報がばんと集められた状況であります。我々もそういった情報を、1月終わりぐらいには、こういう話があるというのは大体認識したということだと思います。

○佐野委員 認識した時点では、別に国土交通省から何かするということは一切なかった。

○板崎国土交通省リコール対策室長 認識した時点で、国土交通省はメーカーに対して、その事実確認なり背景を聞きます。

○佐野委員 わかりました。

○松本委員長 川戸委員。

○川戸委員 佐野さんと全く同じ質問をしようと思ったのですけれども、つまり認識したというのは、こういう事件が話題になったから、それからさかのぼって調べるというシステムなのですか。つまり、遅いというのは、国交省はいつの段階でこのふぐあいというのを察知して、どういうふうに動き出すのか、そこら辺のシステムがわからないというのが1つと。
もう一つは、先ほど改善とリコール、同じものであって、保安基準がないものが改善とおっしゃいましたけれども、これの取り扱いとか罰金、そこら辺も同じものなのですか。その2点を教えてください。

○板崎国土交通省リコール対策室長 いつという話になりますと、プリウスの事故の情報が、7月に松戸の方で事故があったという情報が8月に入ってまいりまして、それ以降、プリウスのブレーキというのは注目案件になっていまして、ずっとフォローしていたところです。

○川戸委員 国交省の方でフォロー。

○板崎国土交通省リコール対策室長 そうです。その中で、メーカーさんとああだこうだという議論はいろいろ進めていた。そういった中で、12月後半から1月にかけて、10数件、低速でブレーキがきかないというものが入ってまいりましたので、そういった一連のブレーキの調査の中で、そういった新しい情報も加えてやりとりをやってきたということでございます。

○川戸委員 改善とリコールの差がありましたけれども。

○板崎国土交通省リコール対策室長 ですから、リコールというものを届けずにやらなければ、先ほど言いましたように罰則がかかることになりますけれども、改善対策となりますと、そこは車両法の範疇外になってまいりますので、そういった罰則はかからなくなってしまいます。

○松本委員長 下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 お伺いしたいのですが、今回、プリウスの件がありまして、実はプリウスに乗っていらっしゃるベテランのドライバーさんがおっしゃっていました。その方はタクシーをなさっているのですが、最初に自分たちがこの車を運転したときに、何人かは危険性までは感じなかったのですけれども、路面を走っていて継ぎ目のところだとか、凍結したところになるとそういうことがあるということはわかっていた。ただし、それは購入時にはだれからも説明は受けていない。非常にベテランの者がそういうことがわかっていて、今、社内ではそういうことで気を付けようという話になっているということをおっしゃっていたのです。
そういたしますと、製造過程において既にそういうものがわかっていたのではないかということが、一般の消費者としては感じます。そうなると、先ほど安全基準がすごく膨大なものだとおっしゃられましたので、その安全基準にはこのABS等については全然引っかからなかったということなのでしょうか。もしそういうことであるならば、今後、安全基準を何か御検討なさるか、もう既になさっているのかということをお伺いしたいと思います。

○板崎国土交通省リコール対策室長 安全基準は、基本的に性能基準で、ブレーキにつきましても、100キロでブレーキをかけたときにどうこう、滑りやすいところでどうこうとありますけれども、今回のABSの不具合というのは、直接明示的に安全基準で具体的に書いてあるわけではありません。ただ、ブレーキの基準の中に、いかなる速度でも安全かつ有効に機能するものであることという、基本的には性能基準で全部書いてあると申し上げましたけれども、そういう全体的な機能を包括して書くような、機能基準みたいなものも書いてありまして、今回のプリウスのブレーキにつきましては、そこにおそれがあるという判断がトヨタでなされて、リコールになったし、我々もそれでいいのではないかと思っているところです。
基準で具体的な規定を、すべての事象をあらゆるものを書くというのは、もはや不可能だと思っておりますので、こういった部分につきましては、一般的な有効に機能すること、安全にとまれること、少し抽象的な表現になるような部分を、その基準に設けることによって、そういったリコールの必要な場合にはリコールになるということかと思っているのですけれども。

○松本委員長 もう少し突っ込んでお聞きしたいのですけれども、リコールと改善対策の違いについて、制度的に大分違う。しかし、中身は一緒だとおっしゃいまして、その制度の差を埋めようという意向があるのかないのか。それと、今お聞きした限りでは、性能基準とは別に非常に抽象的な、包括的な基準があるということであれば、改善対策というのは実は要らなくて、すべてリコールで読めるような、自動車は安全でなければならないという包括的なものが保安基準にあるという感じもするのですね。
おっしゃるように、アメリカでセーフティーリコールという1つの制度しかない。保安基準に特に違反しているかどうかではなくて、欠陥かどうか、安全かどうかという基準だけでやっているというのは、それはそれで非常にわかりやすいと思います。我々、法律家として議論するときも、保安基準に違反しているかどうかではなくて、欠陥かどうかというところをストレートに議論するわけですね。
にもかかわらず、今の2つに分ける制度だと、1つは法律上の制度であって、違反した場合の制裁が予定されているし、リコールの届け出をすれば、実施状況について定期的に報告しなければならない。しかし、安全対策であれば、届け出は通達レベルではするけれども、あとのフォローアップについては特に書いていないということで、大分扱いに落差があるような気がします。しかし、安全に関わる、しかもその原因は製造・設計段階で生じているという点で中身はほとんど同じなので、1つにすればユーザーにもわかりやすいし、メーカーもどちらで行うかということを悩まなくて、安全に関わるということであれば、もうリコールですということになるのではないかと思うのですが、その辺についてどのようにお考えでしょうか。

○板崎国土交通省リコール対策室長 基本的に安全に関わるものは、原則リコールだと我々は思っていますし、19年、20年、リコール検討会も含めて、そういう方向になっていると思っています。ですから、その改善対策というのは、時代とともに少しずつ変わってきているのは事実だと思います。
今の状況で申し上げると、ブレーキだとか微妙なところで改善対策というのがどうかなという議論だと思いますけれども、例えば自動車の走る、運行する上での機能と全く関係ない部分で言いますと、トランクといいますか、ハッチバックの後ろをあけて物を出し入れすることがありますけれども、ああいうものが突然ばたんと落ちてきて手を挟んだり、そういうことがたまに起こります。そういったものは、道路運送車両法上の安全基準ということにはなじみませんので、どうしても車に付随した形で改善対策という形で今後ともあると思います。
先生方おっしゃるように、アメリカは安全上の欠陥、日本は保安基準に適合しない、または適合しなくなるおそれですから、両方ともかなりケース・バイ・ケースなり、いろいろな環境でどんどん見方が変わってきているということも事実かと思っております。我々もより一層、ユーザー目線、大臣もいろいろな場でユーザー目線が欠けた取組みはいかぬねということを国会の答弁でもおっしゃっていると思いますけれども、今回、ユーザーの視点が少し欠けていたのではないかというお話があったと思いますけれども、我々も19年、20年からずっとやっていて、消費者庁さんができ、また委員会もできた。すなわち、そういったところはより強くなっていくのではないかと思っています。
それから、先ほど、プロドライバーも最初、いろいろ感じたのだけれども、説明がなかったというお話があったかと思いますが、これにつきましても、我々、リコール検討会等々の中で少し問題意識を持っておりまして、25ページの辺りですが、新車のときに車の特性とか特徴をもう少しきっちりとユーザーにお知らせしないといけない。今、買うときは契約だけして、いろいろな細かいことが使い方ブックには書いてありますけれども、あれを見るだけではイメージがわいてこないこともあります。そういったことも含めて、もう少し使い方、特徴といったものをきっちり説明していくということを今、自動車工業会の方でいろいろ検討していただいているところであります。

○松本委員長 では、山口委員。

○山口委員 今の松本委員長の質問にお答えいただいていないと思いますけれども、アメリカのNTSBなり、事故安全についてのチェック機能についてはかなり信頼性が高いと思うのです。アメリカでは危ないと言われているのに、日本ではそのまま売られていることについて、何なのだろうという不信感が日本の自動車行政について、どうしても芽生えてしまうわけです。そこら辺は、先ほど来強調されているように、リコールは別に問題があるからではないのだ。より安全性を確保するために、そういうものをするのだからということを徹底していく中で、この改善対策という甘えの部分は、それこそ制度改善して撤廃したらどうだという、そこら辺については、制度論ですから答えにくいのかもしれませんが、どういうふうにお考えなのか。
当局としても、やはりこれは改善した方がいいのではないか、改善対策ではとどまらないのではないかと思うことがあると思うのです。そこら辺、どうなのか、もう一回伺いたい。

○板崎国土交通省リコール対策室長 改善対策がわかりにくいということになるかと思いますけれども、我々としても、できるだけわかりやすい運用にしていかないといけないと思っていまして、おそれの範囲できっちり考えられる部分は、リコールというものにしていかないといけませんし、先生方おっしゃるように、よりユーザーの皆さんにわかりやすい形にしていく努力は必要だと思っております。

○松本委員長 まだいろいろ御意見もあるかと思いますが、予定しております時間を若干超過しておりますので、質疑につきましてはこの程度にしたいと思います。
国土交通省におかれましては、本日の消費者委員会での議論を参考にして、現在のリコール制度の検証、今後のリコール制度に関する取組みを更に推進していただきたいと思います。消費者委員会といたしましても、今後とも引き続き情報収集を行いつつ、この点について議論を進めていきたいと思います。
板崎室長におかれましては、お忙しい中、長時間にわたり審議に御協力いただきまして誠にありがとうございました。

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○松本委員長 本日の議題は以上ですが、事務局より次回日程について御説明をお願いいたします。

○原事務局長 今日は、どうもありがとうございました。
次回は、3月3日、夕方5時からの時間を予定しております。今日、話の中にありました消費者基本計画に寄せられたパブコメについて御紹介したいということを決めておりますので、それ以外、また追加をすることがあるかもしれませんが、夕刻の時間ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

○松本委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところ、お集まりいただきまして誠にありがとうございました。

≪4.閉 会≫

(以上)