第9回 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ 議事録

日時

2018年9月20日(木)10:00~12:00

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
鹿野座長、池本座長代理、高委員長、樋口委員
【事務局】
二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 消費者政策の現状について
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○坂田参事官 それでは、本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

ただいまから、「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」第9回会合を開催いたします。

本日は、所用により、山本委員が御欠席との御連絡をいただいております。

議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。

お配りしております資料は、議事次第の配付資料一覧に記載しております。資料1、それから参考資料が1から4までとなっております。

不足の資料がございましたら、事務局へお申し付けいただきますようよろしくお願いいたします。

よろしゅうございますでしょうか。

それでは、鹿野座長に以後の議事進行をお願いいたします。


≪2.消費者政策の現状について≫

○鹿野座長 それでは、本日の議題に入らせていただきます。

御存じのとおり、本ワーキング・グループでは、本年8月7日に中間整理を取りまとめ、同8月8日の消費者委員会本会議において報告を行ったところでございます。

本日から、本ワーキング・グループの後半の議論を開始することとしたいと思います。本日の資料で参考資料1が付けられていますが、今後は、この中間整理で掲げた「第4.今後の検討において重点的に検討すべき論点」、19ページに記載されていますが、この5項目を中心に検討を深めて、年内には本ワーキング・グループとしての取りまとめを行うことを予定しています。

ところで、中間整理では、その「第1.はじめに」の項目において、平成15年に国民生活審議会消費者政策部会が取りまとめた「21世紀型の消費者政策の在り方について」に関し、達成された点や残されている課題を確認し、今後進むべき方向を検討する必要性があるということについても触れています。

そこで、本日は、改めまして、中間整理の内容について、更に検討を深めるに当たり、同報告書で指摘された内容を俯瞰した上で、報告書作成時以降の社会や制度の変化を踏まえながら、今後の消費者政策のあるべき姿や克服すべき課題などについて検討を行いたいと思います。

特に、平成21年に消費者庁及び当委員会が設置されるなど、消費者行政における進展が見られます。また、様々な消費者法の改正がなされるなど、法制度上の進展も見られるところでございます。しかし、なお、十分に対応できていない点や、社会の変化により、一層の対応が求められる点もあろうかと思います。こうした観点も踏まえて御議論いただくよう、お願いしたいと思います。

それでは、まず事務局より、資料1の「「21世紀型の消費者政策の在り方について」の構成に沿った課題の実施状況の整理(立法の動きを中心に)」について、御説明をお願いします。

○坂田参事官 それでは、資料を御説明させていただきます。

配付資料が幾つかございますので、まず冒頭、その資料の性格等を補足的に御紹介させていただきます。

資料1につきましては、先ほど座長からお話のありました、国民生活審議会消費者政策部会報告につきまして、報告書の構成を章や節のレベルまで見出し等を列挙いたしまして、その上で、特に取引分野における論点項目に対しましては、報告後の法改正等の主な動き等を追記したものということになります。内容については、後ほどまた詳細に御説明いたしたいと思います。

それから、参考資料1でありますが、8月7日のワーキング・グループで取りまとめた中間整理の確定版ということになります。これは、ワーキング・グループではお配りしておりませんでしたので、改めて配付させていただくというものでございます。

それから、参考資料2でありますけれども、国民生活審議会の消費者政策部会報告の本体そのものでございます。

それから、参考資料3でありますけれども、消費者庁が消費者向けに作成した教材として「消費者問題年表」というものがございます。委員の皆様方には、2017年までの更新版、これは現時点では公表前ということで、委員限りで配付させていただいていますけれども、それを御覧いただければと思います。

次に、参考資料4でありますけれども、当委員会がこれまでに発表した主な建議ですとか意見表明等について、事務局にて一覧にしたものになります。

なお、参考資料3、それから参考資料4につきましては、国民生活審議会の報告以降の消費者行政、並びに社会の動きを俯瞰する際の参考にしていただくという趣旨で配付させていただいております。

次に、資料1にお戻りいただきまして、その内容を御説明させていただければと思います。先ほども御紹介させていただきましたとおりでありまして、この資料は主に取引分野における立法等の成果を赤字で追記したものになります。したがいまして、例えば1ページ目の第3章第1節の「消費者安全の確保」ですとか、2ページに入りまして、第3章第3節の「消費者教育の充実」などの項目につきましては、ここでは節のレベルまでの見出しを列挙するという整理にしておりまして、対応する立法等については明記しておりませんが、今般のWGにおける検討で必要な項目だということがございましたら、本日、御指摘いただければと存じます。

また、赤字で記載している法律等につきましては、部会報告後の法改正等で主なものを抽出したということでございまして、本日の議論において新たに御指摘いただいたものなどについては、追加修正をしていくということもあり得るかと思いますので、抜けている点などありましたら、御指摘いただければ幸いでございます。

まず、第1章、それから第2章をちょっと御覧いただきたいと思いますけれども、ここでは、検討の背景ですとか消費者政策の理念が報告書で記述されている部分ということになりますが、「消費者の位置付けの転換-保護から自立へ-」につきましては、消費者基本法を支える基本的な考え方となっているところでございます。

さらに、IT化、国際化の進展や少子高齢化などについても言及されておりますけれども、これは15年前の当時も大きな問題であったところでございますが、その進展のスピードは現在ではますます高まっていて、今後の対応を考える上でも大きな課題であることに変わりがないということが見てとれるかと思います。

それから、第3章に移りまして、赤字で記載した立法等がそれぞれの項目で見られるところでございますけれども、他方で、それらが十分な対応と言えるのかどうかについても、本日、御議論いただければ幸いに存じます。

それから、第3章で赤字が記載されていない項目が見られます。例えば、自主行動基準の策定等ということになりますけれども、こうしたソフトロー的な対応につきましては、具体的に今回、記載しておりませんけれども、もし記載されていないもので重要な動きがありましたら、本日の御議論の中で御指摘いただければと思います。

なお、第4章第1節の3.国民生活センターの役割の部分につきましては、赤字の記載がありませんけれども、これにつきましては、参考資料2をちょっと御覧いただきたいと思います。41ページ、部会報告でありますが、3の(1)の5から6行目では、「全国の消費生活センターの中核機関としての役割を果たしてきている」といった記述ですとか、その第2段落の4行目から6行目、「消費者利益を侵害する違法・不当行為の取締り等を行う省庁等との間で、なお一層の緊密な情報交換を行い、消費者被害の防止に努める必要がある」。

また、(2)になりますが、次のページのほうに移っていただきまして、2行目になります。「こうした広範な組織が行っている情報提供、紛争解決、消費者啓発等の活動におけるネットワークの中核機関としての機能を強化する必要がある」など、ネットワーク強化を主な提言の内容とするものでございました。

このためということで、資料1にお戻りいただきまして、国民生活センター法の改正のうち、紛争解決委員会の設置につきましては、第3章第4節「苦情処理、紛争解決」の中に入れております。

それから、被害回復の立担保につきましては、第4章の第5節、3ページになりますけれども、その部分に整理しておるということでございます。

御説明のほうは以上でございます。

○鹿野座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまより議論を進めたいと思いますが、まず前提として、先ほど事務局からも御説明がありましたが、本ワーキング・グループが設置されたときに、その目的として、「消費者法(取引分野)におけるルール形成の在り方及びルールの実効性確保に資する公正な市場を実現するための方策並びに行政、事業者、消費者の役割について検討する」こととされていたことから、ここでは取引分野を中心にヒアリング等を行ってきたところでございます。そこで、将来的な取りまとめにおいても、そこが中心になると思われますので、その点を御承知おきください。ただし、安全面と取引面が全く無関係というわけではなくて、それに関わる部分もあるかと思いますので、その点については御指摘がもしあればしていただければと思います。

それから、進め方ですが、恐らくは第3章、第4章の辺りが中心になるかと思いますが、まずは第1章、第2章で、この「21世紀型の消費者政策の在り方について」という報告書が作成された当時の背景認識、あるいはそれを踏まえた大きな在り方ということが、この第1章、第2章に記載されておりますが、それについて、現在のところで社会情勢の変化等があるのかどうかということなども踏まえ、もし御意見があれば御指摘いただきたいと思います。

それではで、まずは、第1章、第2章について何かございませんでしょうか。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 それでは、池本から。

改めて、この「21世紀型の消費者政策の在り方について」の提言を読み返したのですが、本当に全体像をしっかりと俯瞰した上で方向性を示しておられるなということと、その後の15年でかなりいろいろな法制度が作られていった、整備されていったところと、十分でないところがあるというのが本当に見えてきたなというのが、まず全体的な感想であります。

例えば、参考資料2の提言で言いますと、12ページの「行政の責務」というところで、後の消費者政策の展開の中でも出てくるのですが、消費者庁が平成21年に設立されたということは、当時はまだそこまでの動きは全く想定されていなかったのですが、消費者庁あるいは消費者委員会ができたことによって、新たな問題が生じて、それに対して対処するというペースが少し早くなってきたということは、間違いなく言えることだろうと思います。

そういった中で、今回、改めて全体像を見て、何が足りないかを検討していくということですが、特にこの場では各論的なところまでは入りませんし、直接の課題は消費者法のルール形成のところではありますが、国の行政システムとして、消費者庁、消費者委員会ができたことの意義付けと、それから、地方公共団体に対して交付金を注ぐことによって体制が整備されてきたということ、その辺りも最終的に取りまとめをするときには、しっかりと位置付け、評価しておく必要があるだろうと思います。

ただ、地方のことで言いますと、これも本ワーキング・グループで深掘りする時間は余りないと思うのですが、地方公共団体に向けた交付金が今年度から少し転換して、総額も抑えられたし、あるいは負担の仕方あるいは項目、更に言うと、消費者行政は自治事務であるから、最終的には自治体が独自に財源確保をしなさいということは、理念としては正しいのかもしれませんが、現実の地方自治体の状況からして、今、そういう理念、原則だけで手放していいのかという問題があるというところは、押さえておく必要があると思います。それは、後半でやる執行体制、実効性を確保するということに直結するだろうと思いますので、その点を一言感想として申し上げておきたいと思います。

○鹿野座長 ありがとうございました。

それでは、樋口委員、お願いします。

○樋口委員 最初の理念のところですが、これは私の個人的見解ですけれども、この「21世紀型の消費者政策の在り方について」は、基本的に市場メカニズムを活用して、分野によっては異なりますけれども、事前規制から事後チェック型へと移行すべきとの考え方が示されていると思います。この考え方については、消費者庁が設立され、あるいは製品事故の問題についての対応が行われる時点において、かなり変わってきているのではないかと思います。特に、ちょうど21世紀の初頭辺りにこの議論をした時点においては、事後チェックということを厳しくやって、あとは市場に任せようということで議論していたのですけれども、これについては、かなり理念先行であったという議論があったのではないかと私は認識しています。

もう一点は、そういう状況変化がある中で、実は法律だけではなくて、経済の分野でかなり議論が進んでいまして、皆さん、よく御案内の話で、中間報告にも数行入っていますが、行動経済学とか心理学の分野で議論が具体化してきているということです。これについては、OECDの報告書等が数回にわたって出ていますので、そういったものを参照していただければと思いますけれども、契約とか取引の分野についても、例えば有名な言葉で言うとナッジというのがありますが、行政が一定の役割を果たすべきではないか。

特に、超高齢社会という状況の中で、それこそ市場に任せて、事後チェックということだけでは対応し切れないような問題が多々出てきていますが、そういったものについては、例えば行動経済学的な考え方も法制度の中に取り入れて、ナッジをすることによって、例えば認知症の方々について支援するということが現実に可能になるのではないかと思っています。

非常に大きな流れで言えば、この「21世紀型の消費者政策の在り方について」というものは大変よくできているまとめなので、現代においても通用するとは思いますけれども、現在の局面において政策の具体的な中身を考えたときには、大きな状況変化が起きている。実はその状況変化の中で消費者庁や消費者委員会が設置されたということも含めて、ルールの在り方について議論していく必要があるのかなと思います。ここは総論の話なので、私の感想ですけれども、具体的に総論の点については多少めりはりをつけて、新しい議論、2010年代に特に具体化している議論を取り込んだ形でのルール形成ということを将来に向かって考えておく必要があるのではないかと思います。

特に、現在、消費者庁において新しい消費者行政の在り方について、徳島を中心にして検討していまして、その中には、例えば行動経済学に関連するようなものも、既に研究が具体的に始まっていますので、これをルールに反映することは十分可能ではないか。例えばフレーミングの問題とか、あるいはデフォルトの問題ということは、OECDでも10年前から具体的に政策の中に取り込むべきということを言っていますので、そういうことを具体的に取り込んだ議論というのが可能ではないかなと思っております。

やや雑駁な話になりましたけれども、感想ですが、第1章、第2章について、そういうふうに思っています。

○鹿野座長 ありがとうございました。

高委員長、お願いします。

○高委員長 私も、今、樋口委員がおっしゃったこととほとんど同じなのですけれども、この文章だけ読むと並列的に並んでいるようですけれども、実はいろいろなところにからくりがあってつながっていまして、たまたまその当時、委員にいたので、こういう議論はなかなか皆さんの合意が得られないということで、つながりを明確に示すことができなくて羅列的に並んでいるのですけれども、事前規制から事後チェックというのは、当然、その前のバブルの時代の政官財の癒着等があって、事前指導型とか事前相談型という行政というのは健全ではないということで、事後チェックに移行すべきだという合意があって、その流れになってきたのです。

一方で、事後チェックをやるとは言っていますが、事前調整のほうが実は余り資源を投入する必要がないのです。コストがかからないのです。何か不正行為があった、ルール違反があった。その業者を見つけ出して、それに対して何らかの制裁を加えるというチェックをやろうと思ったら、かなりの資源を投入しない限り、これはできない。事後チェック型行政と言いながら、もう1つ、小さな政府、ということもスローガンに掲げていた。ここに矛盾があるのです。幾ら事後チェックでやるぞと言ったところで、小さな政府だったら、なかなか機能しないのです。これについては皆さん、余り声を大にして言わなかった。

そこで、小さな政府でも事後チェックをきかせるためには、一体どうしたらいいのかという課題が残っていたわけです。この課題との関連で、まず企業自身に自主行動基準とありますが、あれは基準だけの話じゃなくて、それに基づいて体制をどう作るかということを求めているのですけれども、これでもって取り組んでいる企業に対しては、後半に連邦量刑ガイドラインの話がありますけれども、そこでめりはりをつけながら、事業者側の協力ももらいながら事後チェック機能を働かせる仕組みを作るべきだという議論になったのですね。

樋口委員がおっしゃったとおりだと私も思います。ただそうした印象を持つのは、結局、事業者側の協力を引き出す仕組みが必要であったにもかかわらず、それを作らないでずっとこれまで来たため、もっと政府を大きくしないと事後チェックはきかないとの話に戻ってしまうわけです。だから、小さな政府を大きくせよ、という考えもありますが、大きくしないで事後チェックをきかせる、というのが本来やるべきことだったのです。話を戻しますけれども、事業者側の協力を引き出すような仕組みを作ること、ちゃんとやっている企業を評価してやる。あるいは、悪意をもって、違反を繰り返す企業には厳しく対処する。めりはりをつけてきちんとペナルティーを課すという仕組みを作ることで、小さな政府で事後チェック機能が働くとの狙いがあったのです。

そういう意味で、今回のルール形成の議論は、私は一つの鍵は、もちろん政府を大きくできるなら、それでいいですよ。できないとするならば、連邦量刑ガイドライン的なめりはりをつけた行政処分のルール、行政処分をやる場合のガイドラインみたいなものを、全ての法律では無理でしょうけれども、何か1つか2つのものを取り上げて、その中にこういう仕組みを作って、まず動かすことを提案することだと思っています。また、その成果を見て、その後、効果があれば、横展開するなり、していけばよいと思っています。

○鹿野座長 ありがとうございました。

幾つかの点について御指摘をいただきました。消費者庁が設置されたことの意義ということを踏まえるべきだ。あるいは、地方への交付金の制度が設けられたことについての意義、位置付けを踏まえておく必要があるということを池本委員から御指摘され、ただし、地方の交付金の在り方については、現在、変化してきているので、それについて注視すべきだということがありました。

それから、大きく事前規制から事後チェックへということが、この「21世紀型の消費者政策の在り方について」という報告書で、かなり前のところで強調されているわけですが、これについては大きく2つの点が指摘されたと思います。

1つは、果たして事前規制を軽くして、事後チェックだけで、あるいは事後チェックに重きを置くということで全てうまくやれるのか、やれない部分があるのではないかという御指摘をいただきました。これは、この報告書の10ページでも、市場メカニズムの活用だけではうまくいかない点もあるということも、特に安全面などについて、そのような点も既に指摘されていたところではありますけれども、樋口委員からは、取引分野についても、それでは十分にうまくいかないところがあるのではないか。特に、最近は行動経済学という観点からの分析も進んでおり、そのような分析も含めて、あるいは踏まえて、何を事後チェックに委ね、あるいはどういう部分で事前規制をなお残すべきかということについても検討すべきだという趣旨の御指摘をいただいたと受け止めました。

それから、高委員長からは、事前規制から事後チェックへということについて、そのような仕組みがうまくやれるための条件を整備するということが必要であって、当時もそのように考えられていたのだけれども、その点が十分には作られていない。特に、事業者側の協力を促すような仕組みということについて、改めて考えるべきだという御指摘をいただいたと思います。

この他に何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。私の今のまとめで、勘違いがもしあれば。よろしいですか。

それでは、この理念に相当する部分については、これぐらいにしまして、第3章について議論を進めていきたいと思います。「第3章 消費者政策の展開」ということについて、御意見、御指摘等がありましたら、お願いします。

池本座長代理。

○池本座長代理 この第3章も、参考資料2では、安全分野、取引分野、あらゆる課題について触れてあるのですが、取引分野に関連してということになれば、19ページ以下、「消費者契約の適正化」という中で、広告表示とか勧誘などのことが提起されて、この辺りが中心になろうかと思います。

この15年間で言いますと、実は消費者契約法が制定されて間もないこの時期に、この報告書の中でも消費者契約法は見直しが必要であるということが早い段階で指摘されていたのです。それが、ずっとこの間、見直しがなかった理由は、実は民法改正の議論が途中から始まって、その民法改正の中に消費者契約法の実体法を取り込んではどうかという議論が、かなり具体的な意見としても出ていたので、そちらの議論があるとすれば、この消費者契約法をどうするという議論を並行していくと混乱するので、様子見だったというのが背景にあったと思います。

ただ、民法改正では、結論的には消費者契約法の個別的な規定、あるいは理念的な規定などを取り込むということは見送りになってしまいました。そうだとすると、消費者契約法の中で具体化していこうということでようやく、かなり遅れてですが、平成28年改正あるいは今回の平成30年改正ということで具体化される見直しがあったという経緯があります。

ただ、そのときに、実は民法改正のときに少し議論されていた、事業者と消費者の格差を踏まえて、基本的なルール、規範をどうするか。それをまた消費生活相談の現場などで具体的に使いやすくする、具体的な規定をどうするかという、本当は二段構えの議論が必要だったはずですが、消費者契約法の検討過程では、個別の規定のほうをどういうふうにするかというところへ、やや集中した嫌いがあったと思います。その意味で、消費者契約に関するルールを今後、更に定めていくというときに、民法改正の中で見送りになったことも踏まえて、消費者契約における基本のルールは何か、そして具体的な規定として更に追加するものは何かという二段構えの議論が必要ではないか。

もちろん、このワーキングで何を入れるという各論ではないのですが、そういう法の位置付け、立て付けのことは、少し方向性として議論しておく必要があるだろうと思います。

とりあえず、まず1点だけ。

○鹿野座長 ありがとうございました。

私自身、法制審の民法改正のときの部会のメンバーでもありましたし、民法の中に消費者ルールあるいは消費者法につなげられるような理念的な格差規定などが結局、一つも導入されなかったことは非常に残念だと思うのですが、今、池本委員から指摘されたように、民法で何かものすごく具体的な規定を置くというような話ではなくて、基本的な考え方というのは、むしろ民法が包含していた、民法の中に本来存在しているものを、例えば消費者契約法とか特商法とかで具体化している、そういう側面があるのではないか。そういうことで、民法の中に改めて、そういう特別法とうまくつなぎやすいようなルールを設けるべきではないかという議論をしていたことを思い出します。

もちろん、民法の中には、信義則とか公序良俗などを初めとして、かなり一般条項的なものがあって、その中の解釈において、そのような考え方というのが育ってきたとは思いますけれども、そこでの議論を改めてどういうふうに消費者法分野のルール形成に今後つなげていくのかということ、この点を御指摘いただいたと思います。

他の点はいかがでしょうか。

樋口委員、お願いします。

○樋口委員 実は、池本委員に賛成なのですけれども、ちょっと質問させていただきたいのですが、私は経済学が専門なので、消費者関連法の立法の際の議論の進め方に前から少し疑問があります。最近の一つの流れとして、消費者被害に関する立法事実の重視というか、具体的な立法事実、客観的なデータや事例を踏まえて立法するという考え方が重視されていると思います。ただ、消費者に関する基本的な規範を作るときに、どういうプロセスが必要かということです。

これは消費者契約法の今後の改正の在り方にも関わる点だと思います。私たちの立場から見ていますと、判例とか実際のトラブルの事例を、契約法で基本的な方向を決めるときに、全て議論して、そこから導かれた答えを法律に書くのではなくて、むしろ多くの関係者が参加して、基本的な国民の選択ですから、そういったことを消費者としての立場から十分議論を尽くすというほうが自然な感じがするのですが。この点について、具体的に立法のプロセスを考える場合に、どのように考えたらいいのかということで、若干イメージをいただければと思うのですが。ちょっと抽象的な質問で申し訳ないです。

○鹿野座長 池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 的確に答えられるかどうか分からないですが、もちろん消費者法分野において立法するということは、これは消費者の利益を守る一方で、事業者の事業活動に対する制約になるものですから、一定の立法事実、規制の必要性があるかどうかという検証は、もちろん真っ先に必要だと思います。

ただ、問題は、こういうトラブルが起きた、こういう問題があった。では、その起きた問題をそのとおり切り取ってきて、法律に張り付けて、こういうことをやってはいけないということで対処していけば、それこそ毎年、違う問題が起きて、またそれについて、どう規制するか。その要件を細かく切り刻んで張り付けていくということでは収拾がつかないわけで、一定の規範として、この問題の根底にある考え方などで、どこまで抽象化していくかという作業が立法作業で一番大事なところ。そこの抽象化の度合いをどうするかが、正に審議をする中で様々な意見を交わすことなのだろうと思います。

その場合でも、行政規制、行政処分のように、行政機関が認定・判断して処分したら活動が直ちに停止されるという行政規制というのは、これは憲法の理念からしても行政権の乱用があってはいけないので、できるだけ具体化・明確化した規定を置きなさいとなります。それに対して、民事ルールは、双方の当事者の主張、解釈の仕方、考え方が対立する場合は、裁判所に持ち出して、裁判所が判決で判断するところなので、民法がそうであるように、非常に抽象化した、さらっと読みやすい条文で、それをどこまで広げるかは、最終的には司法の判断に委ねるということが許される分野だろうと思います。

そういう基本のルールの違いがあることを前提にすると、これは前からちょっと話題にしている、3年前に特定商取引法と消費者契約法が同時進行で、別の調査会でしたけれども、議論がどっちも同じように、規定が明確化していないから、これでは駄目だという言葉で括られていったのかなという気がして、そこは非常に残念だなというところです。

○鹿野座長 よろしいでしょうか。

○樋口委員 よく分かりました。

○鹿野座長 他にいかがでしょうか。

それでは、高委員長。

○高委員長 意見というわけではなくて、報告書のかつての政策の在り方の25ページを読むと、これは教育の話ですね。未然防止の一貫として、消費者被害に遭わないように教育するということで、15年前と今、ほとんど同じ話をしているなという印象を持ちます。そうすると、ブレークスルーすることを何か考えなければいけないのでしょうね。多分、何もここで考えなかったら、今後、また15年後も同じことを書いていることになるのかなと思います。印象を述べました。

○鹿野座長 樋口委員。

○樋口委員 若干関連することと、最初に発言した行動経済学のことと、併せて申し上げたいのですが、表示の話を1つさせていただきたい。私は食品表示を部会で担当しておりますが、今、表示項目が非常に多くなってしまって、表示の基本的な在り方についても部会で議論を進めているところでありますけれども。実は消費者の立場に立ってみると、表示が非常に細かくて、特に私自身も高齢者ですので、高齢者の立場で言うと、表示の記載事項が簡単に見られないような状況になっています。今後、ますます記載すべき事項が増えていくと思います。

この話は、ルール形成に直接関わるものではありませんけれども、本来的にルールに盛り込むべき事項というのは、確かにそれぞれ論理があって、これとこれは是非盛り込むべきだということ自体は当然だと思うのですけれども、実際に、高齢者がその表示を見るという立場では考えられていないのではないか。

先ほどの法律の構成の問題も、こんなことを言っては何ですが、契約法がだんだん難しくなってきている。消費者契約法というのは、消費者であれば、あまねく皆さんが読んで分かるような法制であったほうがいい。表示と同じことですが、行動経済学的に言えば基本が示されているということが重要ではないかと思います。先ほどのお話のように、解釈をめぐっては裁判所で判断が下る部分があると思いますが、およそ企業、消費者、行政、心得ておくべきことは、民事ルールですから、基本的には消費者と企業ですが、規範になるようなものが示されているというところに立ち返らないと、どんどん情報量が増えていって、その結果として、大変分かりにくいものができてしまう。

他方において、おっしゃるように、行政規制の立場ということを考えますと、実際に規制を受ける側のこともあるわけですから、どの範囲ということはできるだけ正確に書く必要がある。ただ、これもなかなか微妙な問題があるのは、例えばビジネスのやり方は日進月歩ですので、これを全て表現しようとすると大変細かくなって、複雑な分かりにくいものになる。特商法も、正直言って大変複雑になっていまして、専門家でないとなかなか読めないような状況です。

そうすると、原点に立ち返って考えると、多くの消費者の方が、まずその法律を見れば分かると。ちょっと言い過ぎかもしれませんが、というぐらいの基本的な法制がしっかりあって、それをベースに消費者が学ぶということをしていかないと、専門家でないと分からない。専門家を育成して、その方々にこれはこういう意味だということを解釈していただかないとなかなか分からないというルールであってはいけないのではないか。

これは表示の話とアナロジーになっていると思います。表示も、もちろん書かなければいけないことがたくさんあることは間違いがないのですが、それを小さな製品の限られた面にいかにきちんと表現するかということは、また別の問題なので、思い切って発想の転換をしないと非常に難しい事態に至るのかなと感じました。

すみません、感想で恐縮です。

○鹿野座長 ありがとうございました。

一言で言うと、ルールの分かりやすさ。あるいは、表示にしても、消費者にとっての分かりやすさということに配慮すべきだということを御指摘いただきました。表示に関しては、私自身も、特に食品とかを買うときは、何が入っているのか、どこで作られたのかということなどを見るほうではありますけれども、なかなか小さな字で見えにくいということもあります。

一方で、個々の消費者によって重要な情報というのが違うというところもあり、私の友人で、アレルギーが強い人がいますが、そのような方にとっては、それに関する情報というのが極めて重要となります。あるいは、化粧品とかについても、肌が弱い方にとって、こういうものが入っていたら自分は大変なことになるということがありまして、そういう情報というのは、消費者に得られないと非常に困ってしまうわけですね。そこのバランスをどうやって取っていくのかということが、極めて重要だろうと思います。表示の適正ということ、あるいは表示の充実ということが今まで言われてきたけれども、本当の意味での充実というのは、分かりやすさとかも含めての表示の在り方というものを考えていかなければいけないのかなと思いました。

もう一つ、ルール、条文のつくりに関して言いますと、これも私、法科大学院で消費者法とかを教えていますけれども、特に特商法などに関して言うと、法科大学院の学生でさえ、最初はどういう構造になっているかが分からず条文が読めません。そういう特商法の構造について、本当は消費者のためのルールなのに、消費者にとって不親切な規定だねという話を冗談まじりに言うこともあるのですが、そういう分かりにくさが消費者のルールの在り方としてどうなのかという問題が、1つあると思います。

それから、消費者契約法は改正によって規定が追加されてきたわけですが、そのとき、先ほど池本委員からも御指摘がありましたように、かなり具体的な場面に限ったような細かなルールが複数追加されました。これにはいい面もあって、恐らくは相談員が相談に当たるときに、この具体的な場面というのはこの条文にぴたっと当てはまるということが、ある意味分かりやすくて、それについての解決が図られやすいという、いい面もあるのかもしれません。

一方で、一般の消費者にとっての分かりやすさがこれで確保されているのかというのが1つありますし、もう一つは、このかなり具体的な規定に対して、少し違うところがあるような事例であれば、結局、考え方としては同じものが妥当するはずなのに、この規定は適用されず使えないという問題が出てきます。そこ、具体的な事例を示したようなルールだけではなくて、基本的な考え方を示したような規定が必要なのではないか。特に民事ルールですから、そのようなものが必要なのではないかというところもあるのではないか。これは私の感想ですけれども、そういうふうに考えているところです。

樋口委員。

○樋口委員 一言補足しますと、表示の場合、海外の事例では総量規制をかけているところがあるのです。問題は、消費者が知りたいことについて、今、いろいろな手段がありますので、適切な形で情報提供をする義務は企業側にあると思います。ただ、表示する部分に関しては、一定の基本事項を表示して、あとは例えば個別の方にとっては非常に重要なこと。アレルギーの情報などについても、全部を記載するのは難しいと思いますから、それについては企業側が、例えばQRコードで提供するとか、ネットで提供するとか、あるいは別の方法で開示する。病院に開示するとか、いろいろなやり方があると思います。

これは一例ですけれども、全ての消費者の皆さんの基本的な要望に応える仕組みというのは、もちろん必要だと思いますが、他方において、ある種の制約があるので、表示画面の基本的機能というものをこの際に考え直すという考え方も、海外ではあるということです。日本については、今、部会で議論している最中なので、どうなるか、全く分かりませんが、更にもっと細かく書こうという考え方ももちろんあると思いますし、逆に細かく書いて、それを読むための道具として拡大鏡を用意すればいいのかもしれないし、読むリーダーを開発すればいいのかもしれない。

それは考え方の問題だと思いますけれども、表示は一例ですが、どこかでそういうことに関して発想を変えないと、どうしても今までの積み重ねでやっていくと、最後は非常に難しいものになってしまうおそれがあるということだけ申し上げたかったということです。

○鹿野座長 誤解を招いたかもしれませんが、私も詳しく、多くの事項を書くほうがいいという趣旨で言ったのではありませんで、そういう人によって違う情報というものの提供の在り方というのも含めて考える必要があるのではないかという趣旨でした。特に、今、おっしゃいましたように、IT化が進んでいます。IT化で新たに出てくる消費者問題というのもありますけれども、一方で、IT化をうまく活用することによって、消費者に役立つ仕組みを作っていくということも、表示の問題も含めて検討する必要があると、私自身も考えているところです。

他にいかがでしょうか。

池本座長代理。

○池本座長代理 参考資料2の提言で言いますと、21ページと42ページの両方へ係るかと思うのですが、勧誘行為の適正化ということで必要な勧誘の規制を拡充すること、あるいは消費者の特性に応じた勧誘という適合性の原則などを具体化していくことという提言があります。そういう辺りが、この報告書以降で、例えば特定商取引法で言うと、過去3回、平成20年、24年、そして28年と、法改正がありました。その都度、改正によって、その分野については被害が少し減るけれども、ちょっと脇へシフトすると、そこがまた被害が増えるということを繰り返してきただろうと思います。

そのために、もうちょっと幅広の実効性ある規定を加えるべきだという、言わば悪質化するものに対して効果的なものを入れたいという意見と、そうすると、事業に対する過度な制約になるのだという反対意見が出ていて、そこの調整がなかなかつかない。でも、本当に必要最小限度の細かな規定を置いて、その分野だけ対処するということを繰り返してきたのだろうと思います。

その意味で、一方では実効性ある具体的な規定を入れるということももちろん繰り返す必要があるのですが、他方で、先ほど高委員長からもお話がありました、事業者による自主的な法令遵守の体制整備ということを導入して、そういう行動を取っているところで、もちろんその中でも従業員のどこかでエラーが出ることはあるかもしれませんが、例えば行政処分をするときに、体制を整備して努力している中でもエラーが出てくる問題なのか、それとも体制整備もない、それこそ組織ぐるみと疑われるような問題がある行動なのかによって、処分の量刑を考える。言わば、事業者の体制整備義務、法令遵守のコンプライアンス体制の整備義務ということが何とか入れられないかということが1つ、問題意識としてあります。

それから、もう一点、42ページで、行政処分の実効性確保ということで、(1)のところに。

○高委員長 もう第4章に行きますか。

○池本座長代理 第4章も含めていいですか。第3章だけ。

○鹿野座長 今は第3章ですけれども、御発言されようとしているのは、第3章と第4章に関わる問題ですか。

○池本座長代理 申し上げるのは専ら第4章のほうになるので、とりあえずさっきのところまでで止めましょう。

○鹿野座長 分かりました。それでは、そろそろ第4章に行きたいと思いますが、第3章について何か。

樋口委員、お願いします。

○樋口委員 池本代理がおっしゃったことに関係してくるのですが、最初に行動経済学のことをちょっと申し上げたのですが、今までの議論の中では、つけ込み型といいますか、相手の状況によって、悪質な業者がつけ込むようなことに関して整理はしたのですが、結果的に法制度として整備されていないという状況があるのではないか。これから、ますますそういう相手の状況につけ込む。行動経済学的に言えば、消費者も限定合理性ということで、完璧な合理的な判断をするわけではないので、状況によって、その方が判断をするときに、どうしてもつけ込まれてしまうようなものはあって当然だというところの議論というものが、そもそもの本質論としてあるのではないか。

賢い消費者という言葉がありますが、最初の理念にも関わるのですが、合理的な判断をする消費者が消費者のモデルだと言われると、いささか疑問を感じざるを得ないという思いがあります。多くの方々は常日ごろ、合理的な判断をベースに考えているわけではなくて、豊かな感情を持ち、そしていろいろな経験を持って、そういう中から判断をしているわけですから、そういったものに対する法制度として、一つの例として、そういう相手の状況ということ、あるいは限定合理的に考えている人の状況につけ込むという悪質業者の問題というのは、非常に大きな問題じゃないかなと思っています。

これは、高委員長のお話のあった自主ルール、自主行動基準に関係するのですけれども、世の中に2つのタイプの事業のやり方があるのではないか。1つは、ある種の自主的な規範を持って、しっかりした事業をしているのだけれども、時に消費者との間でトラブルが生じてしまう。そういったものについては、自主行動規範というのは非常にうまく作用する可能性があって、むしろ法律で決める前に、あるいは法律で決めた以上に自主的な取組というものをしっかりやっていくというタイプの事業のやり方をしておられる方がいるのではないか。他方、ごく少数ですが、消費者の置かれた状況、あるいは消費者の限定合理的な判断ということにつけ込んで、様々な詐欺とか悪質な手口でのビジネスをしていく人たちがいるのではないか。

業者としてはごく少数と思うのですが、これは、被害は非常に大きいわけでありまして、その部分についてのルールの在り方と、事業者全般に自主的にかなり問題解決が図れるような部分についてのルールの在り方というものを、ある程度デュアルな、二重構造で考えていかないと、なかなか問題の解決に至らないのかなと。流れとしては、そういう流れになってきているように思うのですけれども、悪質な事例は特商法の中にもかなり具体的に例示されていますし、そういう悪質な手口を一般の企業がみんなそれをやるわけではないわけでありまして、一般の企業では考えられないような詐欺的な商法の手口というのはあるわけです。

それが消費者側の正に合理的な判断ではなくて限定合理的な判断。これは、ごく自然なことだと思いますが、そういう判断をする消費者に対して、そういう手口がフィットしてしまうので、それが言わば経済学的に見てもつけ込みだと思うのですね。そういうつけ込みについて、ある程度包括的に厳しく規制していかないと。例えば取消権を認めるということもあるのかなと思うのですが。なかなか問題解決が図れないですが、求められていることは、悪質な手口を使う業者に関する対策を充実させることなのかなと思っているのですね。

これまでのルールに関する議論をいろいろ聞かせていただいていると、そういうところが事業者側の代表の方は、全体について規制があることは問題があるとおっしゃるわけだし、悪質業者の代表の人は出てきていませんから、悪質業者を代弁する人がいるわけではないので、事業者と言われた途端に、事業者の方が全体を自分のことに例を捉えて、自分はそんなことはしていないし、自主的に問題解決がかなり図れると思うということなのではないかなと思うのですね。その意味で、ルールを今後、議論していくとすれば、特に悪質なもの、あるいはつけ込んでいくようなことに関しての一般的なルールというものも整備しておく必要があるのかなと思います。

○鹿野座長 ありがとうございました。

では、池本座長代理。

○池本座長代理 第3章の関係でもう一点だけ紹介させていただきたいと思います。

23ページで消費者信用の適正化というところが指摘されています。多重債務問題の深刻化とか支払いトラブルの問題などについて適切に対応する必要があるとだけ書いてあるのですが、冒頭で樋口委員からもお話のあった、事前規制から事後チェックへという大きな流れの中でも、必要な分野については必要な規制を加えていくのだという、一つの例がこの消費者信用の分野だろうと思います。

貸金業法は、2006年、平成18年改正で、登録要件も大幅に強化されましたし、過剰与信規制もかなり具体的な中身で規制を強化したことがあります。それは、その前、ピーク時には、自己破産申立てが年間25万件という本当に深刻な事態だった。それに対する対処として、問題が起きたものだけ事後的にどう解決するかでは済まない。一定の事前規制を強化する必要があるということをきちんと議論した上で、貸金業法の大改正があったと理解しています。そのときには、事前規制強化ということが審議の中でもかなり議論されたと聞いています。現実に、自己破産申立ては、最近は年間7万件台、3分の1以下に減っています。

それから、2008年、平成20年改正の割賦販売法、クレジットの分野についても、個別クレジット業者はそれまでは登録制がそもそもなかったのです。貸金業者が事実上、クレジット業務にも参入したり、本当に悪質業者と連携するような中小・零細のクレジット事業ということも問題になっていました。当時、全国の消費生活センターに寄せられる相談件数の中で、個別クレジット関連が10万件以上あったので、これは何とかしなければいけない。悪質商法をクレジットが助長しているじゃないかということで、かなり批判の声も上がって、正面から議論して、個別クレジットについては、それまでなかった登録制を入れたのです。

そして、苦情の適切処理義務という条文も入りました。消費者から苦情を受けたら、適切に処理する一環として、加盟店・販売業者をきちんと調査し、必要な対処をしなさい。場合によっては、加盟店の契約を切るとか、そういう辺りは自主規制が作られて、かなり細かいところまで書かれて成果を上げて、実はクレジットの問題で言うと、個別クレジットの相談は、以前は年間10万件が今、2万1000件くらいにまで、5分の1くらいに減っているのです。その意味では、分野によって、登録制に限らずですが、一定の規制を加えることによって効果が上がってくる。実際に違法行為があって、事後的な対処だけではない、例えば苦情の適切処理義務という規定というものは意味があったのではないかと感じています。

○鹿野座長 ありがとうございました。

第3章については、よろしいでしょうか。

今、最後のほうの議論においては、先ほどの総論的な議論との関わりもあるのですが、特に池本委員からは、消費者信用に関する大きな法改正ということを例に挙げられ、事前規制がなお必要であるという分野があることを具体的に御指摘いただきました。

それから、その前の樋口委員からの御指摘は、恐らくこういうことかなと思います。つまり、真っ当に事業を継続してやろうという事業者にとって、法令遵守を促すという仕組み作りはもちろん必要であるけれども、一方で、消費者の弱い立場につけ込んで、それで利益を得て、あとは事業を畳むという悪質な事業者によるトラブルというのが、なお後を絶たないということで、そういう生身の人間の限定合理性あるいは状況脆弱性とでも言いましょうか、そういうところにつけ込むような悪質勧誘に対する対処というのを改めて考えていかなければいけないのではないか。それは、今回の消費者契約法の改正で幾つかの具体的な類型は追加されたけれども、なお、あのような形だけで十分なのかという問題の指摘でもあったと思います。

よろしいでしょうか。

それでは、今の第3章のところにも関連するかもしれませんが、次に第4章の検討に入りたいと思います。御意見、お願いします。

○高委員長 第4章はいっぱい言いたいことがあります。

一つ一つ言いますと、まず39ページの真ん中辺に書いてある段落ですけれども、21世紀にふさわしい消費者政策を、政府一体として云々という、ここの文章が2009年の消費者庁の設置と委員会の設置というところに結びついて、大きな成果になったと思っています。

40ページが地方公共団体のお話でして、最初の1段落目は消費者政策を推進しているという書き出しだけですけれども、この報告書が言いたいのは、むしろ、すべきである、あるいはこれが求められるという表現のところですけれども、その2段落目が国との連携が図られなければいけない。最後の段落が苦情を受ける体制も、引き続き整備して機能強化しなければいけない。当時、15年前はこれでよかったのですけれども、果たしてこれで行けるのかというと、地方の財政は縮小している、人口も減っている中で、正に小さな政府という話です。そういう現実がもう起こりつつあって、これを止めることはできない。

そうすると、この報告書全体に係りますけれども、事前の調整型、事後チェックというときに事後チェックの仕組みをちゃんと考えないと、地方行政はこれからどうなっていくのか。我々が自信を持って、責任を持って、こういう施策が展開されるということが言えないと思うのですね。これが1つ言いたいことです。

それで、当時、15年前は、こういう状況になるということだから自主行動基準。今、自主行動基準とか行動基準とかコンプライアンスマニュアルというものは当たり前になっておりますが、15年前、企業の中にはコンプライアンスという担当などなかった。法務部というものがあっても、それは契約書類の作成や確認とか、そんなことをやる部署であって、要はそれまでの政府における議論は、法律さえ強化していけば不正はなくなるだろうと思っていたけれども、よく考えてみたら、それをきちんと守るための企業の体制とかはなかったのです。今は、これが常識になっていますけれども、それを作らなければいけないということで、15年前にこれがスタートした。

スタートしたときというのは、こんなことをやって、本当に企業が取り組むのか。とりあえず、それは公表してもらって、市場で評価してもらえばいいじゃないか、ここからスタートしたのです。ただ、市場で評価してもらうといっても、どうやっていいか分からないから、事業者団体にいろいろ指導してもらって、まずこういう取組でいいのだということで始めてくださいということでやり、確かに成果はありました。多くの企業がそういう体制を作って取り組んできましたけれども、今、ここに来て思うところは、そういう事業者団体に加入しない企業や事業者は、積極的にそういう体制作りなどしないということです。

さっき、発言しましたけれども、当時、ここまでは行きませんでしたが、自主行動基準に基づいて体制を作っていったときに、仮にそういう会社が意図的ではなくて、何らかの不注意からルール違反があったときには、不利益処分の内容を軽くする、そういう仕組みを作っておかなければならないということでした。単に自主行動基準を市場に公表するだけでは、あるところで私は限界に来るなと思っておりました。あれからもう15年たったわけです。いま、不利益処分のところの、もちろん行政規制だけでいくというのは不十分かもしれませんが、日本の状況を考えると、行政規制をまず中心に、量刑ガイドラン的なやり方を導入するほうが合理的と思っていまして、いま、私たちはそこに来ていると思っています。

それから、2番目が54ページの消費者団体訴訟制度のところですね。この団体訴訟制度の議論をやる前に、不当に得た利得というのは、事業者としては吐き出すべきだという議論がありまして、例えば父権訴訟とか、海外の取組はどうなっているのかという議論はあったのですけれども、結局、この報告書にそれが出てこないのは、民事ルールで解決するということであれば、消費者団体がそれを担えばいいじゃないか。それで、今であれば、特定適格消費者団体でしょうけれども、そういうものができたわけですけれども、当時、適格消費者団体に損害賠償請求権というものまで認めなかったら、つまり、単なる差止請求権だけであれば、やがてこういう団体を作ってやったところで、消費者団体は懸命にやればやるほど財政的に細っていくという矛盾があったのです。だから、何とかならないかという議論がありましたけれども、結局、差止請求権までにとどまってしまいました。

これは、公の場で議論したことじゃないのですけれども、2002年か2003年だったと思いますけれども、北海道のスーパーマーケットの西友で産地を偽って肉を誤って販売したので、この事実を公表して、購入された方に返金しようとしたことがありました。不当に得た利益を、事業者が自分の懐に納めてはいないということで、返金しようとしたわけですが、それはうまくいかなかった。悪意を持った暴徒を利する結果となりました。ある事業者が語っていたことですが、こういうことが起こるので、良識的な事業者は、このような場合、不当に得た利益を外部の機関に寄附し、社会にお返しするだろうということでした。この事業者の話に期待を寄せ、私は、それであれば、そのような好循環が起こるのであれば、証明してみようと思って、2004年に消費者支援基金というものを作ってみました。問題があったときに、事業者が善意に基づいて寄附してくれるかどうかを確認してみました。最初、私が幾つかの会社を回って、また本務校にもお願いして回りましたので、一定の金額は集まりました。しかし、自主的にそれをやってくれる企業はほとんどありませんでした。事業者の善意に期待することは難しく、やはり強制的に回収する仕組みを考えるしかないと感じました。もちろん、今、二段階訴訟でもって、不当な利益の回収を行う仕組みが出来ておりますが、この制度にも限界があって、なかなか機能していません。だから、このワーキングで議論したいのは、適格消費者団体とか特定適格消費者団体が継続的に動けるような、財政的に活動を継続できるような仕組みを考えることではないかと思っています。

そもそも父権訴訟のかわりに民間でやってもらうという流れから、適格消費者団体が生まれたわけですから、つまり、民間に公的な仕事をやってもらおうという発想があったわけですから、それら団体の活動に、訴訟による回収資金ではなく、まず「国庫からの公の資金」を利用してもらってもよいのではないかと考えています。

以上です。

○鹿野座長 ありがとうございました。

池本座長代理。

○池本座長代理 今の高委員長の発言に触発されたことと、私なりの意見も申し上げたいと思います。

先般、適格団体のヒアリングをしたときにも、かなり切実な声が出ていましたが、正に差止請求活動というのは、やればやるほど赤字になる、続かないという四苦八苦の状態ですが、それでも各地で、今、19の団体ができて活動しております。更に目指す団体というものが10カ所ほどあって、NPO法人化したり、あるいは弁護士とか相談員とか消費者団体で集まって、いろいろ検討を始めているということですが、これから新しく作るところは、更に弱小な基盤しかないところで四苦八苦していて、なかなか前に進みにくいという話を現実に聞いています。

他方で、私も地元で関わっているのですが、適格消費者団体が差止請求活動をするというのは、実は消費生活センターで同じような苦情が多発している、そういう情報が消費生活センターを通じて消費者にアドバイスし、消費者から情報提供してもらい、それを立件していく。立件するに当たっては、我々、適格団体から国民生活センターに同種苦情が多発している事業者かどうか、問題はどの辺にあるかということを照会して回答も得て、問題の広がりがあるところを見きわめて差止活動に入っていくという循環をしていまして、地元に適格団体があるということは、消費生活センターによる解決機能も向上していくのだという、お互いの連携があるのだということを、本当に実感を込めて申し上げたいと思います。

そこを理解してもらうと、地元の行政としても適格団体を是非作る必要があるということを分かっていただけますし、将来的には、47都道府県全てに最低1つは作られるべきだと思います。消費者庁は以前、全国8ブロックで適格団体のないブロックを解消するとして、四国の愛媛に今年6月にできて、8ブロック全部にできたということが一つの成果ではあります。しかし、それでよしとしないで、消費者庁としては全都道府県に作るのだという政策方針を掲げてほしいし、またそれをやっていくためには、行政的な支援、これは国からもですし、地元の自治体との連携も含めて、支援をしていくことが必要ではないかと思っています。

ちなみに、神奈川が一番最近、8月初めに認可されました。神奈川では、消費者団体の中で事務所を置く場所というのがなかなかスペース的に確保できないということで、地元の横浜市の消費生活センターの空き部屋があるというところを借りて、そこを事務所、拠点にして活動を始めたと聞いています。これは一つの在り方かなと思います。正に、行政と民間が連携して進めていくという事例もどんどん全国に普及して、消費者庁としてもそういうことを進めていただく。適格消費者団体の基盤を支えるということを是非検討していただきたいということがあります。

それから、すみません、ちょっと長くなりますが、適格消費者団体のことで言いますと、消費者契約法、特定商取引法、景品表示法とは別に、食品表示法も権限に入っているのです。ただ、なかなかこれはできません。それから、景品表示法でも、契約条件等の有利誤認は取り上げることができますが、商品の品質、効能効果に関する優良誤認の事案は、現実にはほとんど取り上げられません。なぜなら、品質効能効果などについて確認する手立てがないし、あるいは立入調査をして内部の資料を手に入れることもできない。

そうすると、その辺りの実効性があるためには、例えば合理的根拠資料の提出要求の権限を与えて、事業者が本来持っているはずで、行政からはそういう要求があれば出さなければいけないというルールがあり、事業者は裏付けをきちんととって表示しなさいとなっているわけですから、そういうものを適格団体に付与するとか、適格団体の権限が有効に機能するための付随的な権限の見直しということも、検討課題ではないかと感じています。

○鹿野座長 樋口委員。

○樋口委員 このワーキングの課題から少し離れるかもしれませんが、今、池本委員からお話がありました点について、全くそのとおりだと思いますし、特にちょっと強調しておきたい点があるのですが。

今、神奈川のお話がありましたけれども、適格消費者団体に関するガイドラインというものの見直しが行われていて、パブリックコメントにかかっているのですけれども、その中では、そういう事務所を置く場所の問題等については、むしろ規制的な考え方になっているのではないかと思います。それはどういうことかというと、事業者団体とか事業に関連するところに適格消費者団体を置くことはできないという方向になりつつあるように読めます。

問題は、適格消費者団体を支援するときに、実は事務所問題というのは非常に大きくて、適格消費者団体あるいはそれを目指すものは、結局、収入源がないので、寄附でやっていく場合に寄附は非常に不安定ですから、会費とか寄附はそう簡単には集まりませんので、そこに大きな事務所経費がかかってしまうという大変厳しい状況なわけです。

そういう中で、中立性とか公正性を求めることはもちろん必要だと思うのですが、消費生活センターも一例ですが、公的機関のスペースを適格消費者団体のために提供できるような、場合によったら法的措置あるいはそれに準ずる措置を講じていただいて、むしろ適格消費者団体に実際に補助金を出して支援するという形でなくても、そういう物理的な面で支援するという方法はあるのではないか。

今、お話を伺いましたが、消費生活センターと一体的に事務所等で連携することができれば、これは非常にいい。高委員長からも適格消費者団体の趣旨の話がありました。本来、そういう性格のものであったはずなのですが、消費者団体に過度な負担を負わせるような形が現実だと思いますので、これはこのワーキングの課題をちょっと超えていますが、是非その点については事務局のほうでもひとつ検討していただければということを申し上げておきたいということです。

以上です。

○鹿野座長 ありがとうございました。

高委員長。

○高委員長 細かい話になりますけれども、この報告書のどこに書いてあるか忘れましたけれども、要は少額多数被害の問題にどう対処するかというのが大きなテーマになっていたのですね。そのことを考えていくといろいろな仕組みがあって、さっき言いましたような父権訴訟の話も出てきて、あるいは適格消費者団体の話が出てくるけれども、損害賠償は原告適格がないから、それは駄目だということで、結局、差止請求権だけに終わってしまった。その結果、少額多数被害の問題というのは、放置されることになった。だから、例えば、預託商法など、こういった問題がずっと続いているわけです。

民事ルールだけで解決できるかというと、損害賠償請求してくる人は限られてしまいますので、悪質事業者のやり得となってしまう。ですから、この問題はまた別途考えなければいけない話だなということを感じています。

それから、もう一点ですけれども、43ページに連邦量刑ガイドラインの話があるのですけれども、アメリカの連邦量刑ガイドラインそのものは刑事罰を決める場合のガイドラインですけれども、司法省が企業側と交渉するときには、それを見せながら、あなたが協力しないなら、最終的な罰金はこういうことになって、我々はそれを司法の場で請求しますというのを見せるのですけれども、当時、これに類するものを、日本の行政処分における不利益処分で展開してみてはどうかということが報告書に記されています。ただ、その後、15年経っても、これに関し何の議論も行われてきませんでした。

仮にこれを展開するとしましょう。その場合、いろいろな法律が候補として上がってくるでしょうけれども、消費者保護関連でいくと、一番、実現可能性があるのは景表法の課徴金かなと思っています。例えば、こうした展開を進める場合でも、事業者側の賛同も必要ですし、消費者側の理解も得なければいけません。良識的な事業者が増えることに、消費者の方々は賛成してくれるでしょう。また、きちんと経営している企業や事業者も、メリットがあることが分かれば、これに賛同してくれるはずです。どれだけのインパクトがあるか分かりませんけれども、課徴金は現在3%の固定で決めておりますけれども、もっと柔軟に考えたらよいと思います。こんな具体的な話をするのは変ですけれども、自分なりにメモを書いてみました。

例えば、消費者志向経営ということを宣言している会社であれば、表示に何らかの違反があった場合、3%じゃなくてマイナス0.5にしてあげてもいいのではないか。あるいは、通報制度の仕組みがありますけれども、自分のところで通報を受けて動く会社というのは、これはきちんと評価してあげなければいけない。マイナス0.5にしてあげてもいい。もちろん、行政に通報が行ったり、それからマスコミに行ったり、2号、3号に行ってから自分のところに返ってきて、仕方なく動くのは、課徴金を引き下げる必要はありませんが。

コンプライアンスの仕組みがきちんと動いているところについては、自ら進んで問題を報告してくるところについては、更に0.5マイナスしてあげるとか、こういう仕掛けを作ることで、しかも行政側の裁量が入らないようなガイドラインとしてきちんと作ってあげれば、善良な事業者の取組を後押しすることになるし、あるいは悪質と言うのは変ですけれども、余りそういった取組を意識してこなかった事業者も、それが目に見える形となれば、予測可能性が高まるわけですから、行動を変えてくることになります。これにより、行政がよく多くの資源を投入しなくても、事業者の行動パターンを変えていくことができるわけです。ですから、まずは景表法の課徴金制度を取り上げて、そういう議論をしてもいいのではないかなと思っています。

その際、1つ整理しなければいけないことがあるのですけれども、この議論を始める前にやらなければいけないことですが、かつての消費者委員会での議論を文書でしか私は確認していないので、よく分かっていないのですけれども、課徴金の話と返金の話がごっちゃになっていて、もともとの狙いは、恐らく普通の事業者は良識があるから、もし不当な表示をもって利益を不当に得たとするならば、これは当然返金されるだろう。その返金額というのは課徴金額を大きく超えているから、あえて課徴金というものを計算して課さなくても、これはうまく動くであろうという期待を持っていたかと思います。

だから、返金額が課徴金を超えている場合には、課徴金を支払わなくていい、あるいは一度払ったものであれば返却するという仕組みになっているのですけれども、わずか3%の話であって。わずかというのはすみません。事業者によっては、それは大きいと言われるかもしれませんけれども、課徴金の話と返金の話というのは、私はきちんと分けてやるべきだと思います。課徴金そのものは、あくまでも行政規制に違反したものに対するペナルティーという位置付けにしておくべきで、返金は民事の話なので、別々にしておくほうがよろしいかと思っています。

これは、行政の側から聞こえてきたことなのですけれども、そもそも計算が複雑になり過ぎて難しくなっているというのです。つまり、被害者より領収書をもらってくれば、その分、支払済みの課徴金を行政が事業者に返金するわけですが、ネットなどを通じて事業者が被害者に返金する場合など、ポイントなどで返す場合、領収書をもらえないことも出てくる。こうした複雑な状況が生まれており、行政の現場は苦労していると聞いています。

なお、課徴金制度に量刑ガイドライン的な仕組みを作るというのは、実は、景表法だけで完結する話じゃない、ということを申し上げておきます。例えば公益通報の仕組みにも影響を与えることができますし、消費者志向自主宣言企業を増やすことになります。健全な事業者団体の育成にも貢献することになります。ですから、これは、本ワーキング・グループにおいて議論すべきことだと思っています。

○鹿野座長 ありがとうございました。

池本座長代理。

○池本座長代理 今の高委員長の御発言に続く話になろうかと思いますが、私も非常に大事なポイントを提起されたと思っています。悪質な業者に対して、実効性ある規制をどうしていくかということと、自主的に行動しようとする人をどう誘導していくかという2つに分けて考えると、まず悪質な業者に対してどうするかということについて言うと、その実効性をどう保つか。課徴金制度ももちろんそうですが、例えば報告書の42ページの「制裁金制度等による行政処分の制裁機能強化を検討すべきである」というのは、正にペナルティーを明確化せよというもので、これが景品表示法の中に課徴金制度が入ったというのが、一つの成果だろうと思います。

実は、不当表示の面には入っていて、取引分野の例えば特定商取引法とか、勧誘分野について全くないというのは不十分ではないかなと感じています。その分野についても、特定の行政処分の実効性確保、あるいはそういう事態にならないために、経済的なペナルティーまでやられては困るので、もっと入り口で防止しようという行動につながるような必要があるのではないかという点が、まず1点あります。

そして、昨年から今年にかけて、現在も進行中ですが、ジャパンライフの事件について、本会議の中でもヒアリングを始めたところですが、行政処分で止めなさいと言っても、ちょっと業態を変えて、またやって、また処分をして、またちょっと業態を変えてやり始めてということで、ジャパンライフについては、4回行政処分を加えても、なかなか潰れなかった。それは、もう破綻状態で継続することそのものを止めさせる破産申立権というものが今の制度にはないので、そういうものが必要ではないか。実は、消費者庁ができて、今から数年前、平成25年頃に、中間報告的な検討をされているのですが、その後、そのままになっている。

預託取引を商品預託法でやっていくのか。それも、金融庁の金融商品分野の中で組み込むのかという基本の振り分けの問題はありますが、預託商法だけではない、取引分野のトラブルで被害の拡大防止の実効性を本当に保つためには、破産申立権ということも整備すべきじゃないかということも感じています。

そして、自主的な行動を取る者に対して、どう誘導していくかというときに、先ほどの御提案にあったような公益通報の窓口整備とか、自主行動基準を宣言したところを評価するとともに、先ほど消費者信用の分野で申し上げたような、内部の体制整備といっても、余り人的に体制を作ってというところまではできないでしょうけれども、少なくとも苦情を受け付け処理する義務規定を置き、それに見合う窓口なり責任者なり、そして記録をきちんと作るという、法令遵守をフィードバックするための、これは登録制とかはなくても、規模に関わらず最低限、こういうことはすべきである。

店舗事業者全てにとまでは言いませんが、トラブルが多発している訪問販売とか電話勧誘販売、ネット取引といった分野では、責任の所在なり対処の窓口を明確化し、しかも記録を残すという最小限の義務付けをして、それすらちゃんとしていないところについては、逆に加算するとか、自主的な対応をきちんと行うことと、課徴金その他の制裁の制度に何かリンクできればいいなと感じています。

○鹿野座長 ありがとうございました。

樋口委員。

○樋口委員 1点、執行体制の強化ということで議論を是非進めていただきたいと思っている点があるのですが、中間報告の中でも、12ページでイギリスの例を書いていただいて、ワンストップサービスということを申し上げたのですが、この議論を具体的に深めていく必要があるのではないかと思っています。いろいろ議論を考えてみますと、消費生活センターというものが、従来は消費者の相談を受けるというのがメーンの業務で、それが行政になかなかつながりにくかったという問題があると思います。先ほど、適格消費者団体の位置付けのお話もありましたけれども、消費生活センターの機能を抜本的に強化することはできないだろうか。

やや荒唐無稽なことを申し上げるかもしれませんが、ブレーンストーミングということでお許しいただきたいと思います。消費生活センターがワンストップサービスで、それこそイギリスの例で言えば、民事から刑事まで、あるいは指導までということを担っている局があるわけですが、そういった機能を担うことができないか。それは、一方において消費者庁が支分部局を持っていないということもあるので、それに替わるものが必要なのではないか。これは、ちょっと荒唐無稽のように聞こえますが、実は私たち長野県で消費生活条例を定めたときに、長野県の場合は消費生活センターの所長は県の担当課長が兼務するという形を取りまして、消費生活センターの中に県の部局を置くという形を2009年に実施しました。

そのことによって、消費生活センターが行政処分を機動的に、実際には2枚看板ですね。同じ方が所長であり、県の課長ですから、行政処分をする。職員も相談員と県の職員が一緒のテーブルで仕事をするという形で問題解決を一部でも図ろうということをやってみたのです。これは、試みではあったのですが、イギリスのワンストップサービスの考え方にも通ずるものがあるのかなと。

それをきちんと法律上、位置付けをすることができれば、つまり、消費生活センターが行政としての処分権を持つような性格のものに変わることができれば、消費者庁には地方支分部局はないけれども、都道府県レベルだけでも、47の強い味方ができるわけで、それは実効上、2枚看板ということでやったわけですけれども、法制度上も思い切って踏み込んでみてはどうかなと。これは、いろいろ考慮しなければならない要因があると思いますので、思いつき的な提案で大変恐縮ですけれども、是非そういう行政の在り方にもルールの議論の中の法執行の強化の中で、踏み込んでいただけたら。ここで結論を出すということではもちろんないわけですが、そういったことも少し思い切って発想を変えて考えてみたらどうかなと思いました。

以上です。

○鹿野座長 池本座長代理。

○池本座長代理 今の地方の消費生活センターの役割、位置付けということに関して、共感する部分で私なりの受け止めと、後半部分で、ここはむしろこういうふうにしたほうがいいのではないかという修正意見と、2つ申し上げます。

報告書で言いますと、40ページの地方の推進体制というところで、15年前の時点で既に指摘してあるのが、第2段落ですが、近年、商品・サービスの流通域の拡大、電子商取引の新たな取引形態の出現により都道府県圏域を越えた広域的な消費者被害が増加しつつある。そして、広域的な消費者政策の推進に向けた国・地方の適切な役割分担と密接な連携を図っていくべきである。これは、増加しつつあるではなくて、今や年間の苦情相談件数90万件のうちの30万件を超える数字が通信販売。特に、その中の圧倒的多数がインターネット取引という、正に都道府県域を完全に越えた全国域のトラブルが多発しているわけです。

そうなってくると、例えばこれは2009年、平成21年の消費者庁を作る前提として出された消費者行政推進基本計画の中でも、消費者行政は自治事務であるという基本の括りの中で、自治体がそれぞれ予算と人員を注いで体制を整備するのだけれども、これまで十分でなかったから、当面、カンフル剤として交付金で援助してあげるのだという位置付けで交付金が始まったわけです。もちろん、地域の暮らしの安心・安全という意味で、本質は自治事務という位置付けでいいと私は思うのですが、相談を受け付け、苦情を取りまとめて登録し、それが法執行につながっていくというところは、国と地方の両方に利害関係がある。

正に、地方財政法10条で言うところの国と地方の両方に利害関係があって、国全体の水準を確保する必要があることは、地財法の中に位置付けて継続的に国からも一定の割合を負担するという性質の分野があるのではないか。地方消費者行政は自治事務だから、基本は自治体であり、あくまでも一時的なものとして、そのままこの10年間継続してきたので、推進交付金から強化交付金になって額が減って、地方が四苦八苦してという状態がある。

もちろん、地方公共団体が独自に財源を確保する取組をどう促していくかもやるのですが、一定割合あるいは一定の事務については、国と地方に共通するものがあることをきちんと議論することによって、消費生活センターの役割なり、そこへ国ももっと積極的に関わっていく基盤ができるのかなと思います。

もう一つ、軌道修正と申し上げたのは、消費生活センターが個別案件を相談処理するというのと、被害の防止のための法執行という、実はその中間に、自治体によって呼び名が違うのですが、苦情処理委員会とか被害救済委員会というADR機能が条例上、各都道府県にあるのです。長野県にも作られたと聞いています。ただ、人員が足りないこともあって、東京都を除いてほとんどのところが開店休業であると聞いています。その機能が活性化していくことによって、地域におけるルールを、ちゃんと公表できる中身のものを処理していくとなっていくのではないか。中2階の紛争解決機関の問題も注目しておく必要がある。あるいは活性化する必要があるのかなと思います。

唯一、国民生活センターが年間150件くらい、ADRを一生懸命やっているのですが、全国からといっても、なかなか国民生活センターだけでは担い切れない。自治体のそういう紛争解決機能、ADR機能というところにも注目する必要があるかなと思っています。

○鹿野座長 樋口委員。

○樋口委員 池本座長代理の御指摘のとおりで、私も長野県の消費者被害救済委員会の会長というものを4年ほど務めましたが、1件も扱った話がないのです。これは、全国的におっしゃるとおり、そういう状態にあるのですが、条例を作るときにも議論に参加していたので、位置付けとしてはそうなのですが、これを動かそうという仕掛けが自治体の中で必ずしも十分にあるとは言えない状況なのですね。国民生活センターのほうのADRとも御相談したことがあるのですけれども、自治体側がまだそういう十分な意識を持っておられないという事実があるので、その権限とか中身についても見直しをしてみる価値はあるのではないか。確かに、これが活性化されれば状況は大きく変わると思いますので、是非活用すべきだと思います。

あと、組織論の問題として、先ほどの行政と委員会の関係というものが、行政が事務局を務めているので、委員会そのものに話が来ない以上は、委員会はそういう問題を扱えないという状況になっていまして、行政のほうがどこの県でも案件を上げてくれないのですね。ですから、委員会が事務局を持つとまでは言いませんが、直接に具体的な事例をチェックできるような体制というものを作っていく必要があるのではないか。どこの県でも、審議会と同じように、担当課が事務局で、担当課が消費者被害救済委員会に上げるにはふさわしくないという判断をしてしまうと、もはや何も話が来ないという状態なのですね。

ですから、これは、このワーキングの検討事項かどうかはありますので、これも事務局へのお願いかもしれませんが、是非、具体的にチェックしてみる必要はあるのかなと思います。

○鹿野座長 一言。

○池本座長代理 今の議論は、実はこの15年前の提言の28から29ページで、裁判外紛争解決のADRの整備ということで、その(1)に、都道府県等及び国民生活センターによる紛争解決ということで、紛争解決機関の積極的活用を図る必要があるという提言があります。国民生活センターについては、こういう提言が背景にあって、今から10年ほど前ですか、国セン法を改正して紛争解決委員会を設置して、今、年間150件を超える処理をしている。

それが機能しているというのを見て、東京都がその数年後に条例改正をして、今、年間10件くらい取り組んでいる。東京都の場合、スタッフが大勢いるという非常にうらやましいところはあるのですが、そこまでは行かないとしても、年間何件かでも消費生活センターで解決困難なものを引き上げて、解決できる機能が都道府県の中にもあれば、消費生活センターの解決機能も高まっていく。これによって、個別解決に向けては、都道府県の中の苦情処理委員会が機能する。将来の拡大防止に向けては、行政処分と適格消費者団体の差止めが機能するように配置されていけば、トータルとしての地方での消費者行政の機能、被害の拡大防止・救済という機能が充実していくのではないかと思います。

○鹿野座長 ありがとうございました。

ほぼ予定した時間も近づいてきましたが、第4章について、よろしいですか。

第4章に関しては、様々な観点からの御指摘をいただきました。最後のほうから言いますと、地方の推進体制というところについて、かなり課題があるということで、これも地方によって、かなり格差もあるのではないかと思いますけれども、この課題について検討する必要があるということでありました。消費生活センターの機能強化ということもありますし、ADRも含めて、それがうまく機能していくような方策ということも考えなければいけない。

それから、現在の問題の発生状況ということからすると、単なる地方の自治事務ということで勝手にやってくださいというわけにはいかず、国と地方の両方に関わる問題も増えているのではないか。それとの関連で、地方交付金の在り方ということについても考え方を整理するべきではないかということについても、御指摘をいただきました。

それから、ちょっと前に、消費者団体訴訟制度といいましょうか、この制度の現在の限界ということについても御指摘をいただいたところです。この間、制度としては、差止請求制度が消費者契約法にまずできて、それが幾つかの法律にも導入されていますし、その後、いわゆる消費者裁判手続特例法もできたわけなのですが、このような制度を消費者団体がうまく活用でき、運用できるような仕組みを考える必要があるのではないかということで、そのための基盤整備ということについて検討すべきだという御指摘がありました。

これは、先ほど言いました地方の推進体制とも関わるところでもありますし、当初に比べると、各地方に適格消費者団体の数が随分増えてきたとはいえ、全ての都道府県に設置されているとは言えない。そのような状況にあります。各地方に少なくとも1つは適格消費者団体が必要なのではないかということで、そのようなことを推進するような方策ということについても考えるべきだという御指摘がありました。これは、資金面ということもあるでしょうけれども、さらに樋口委員からは、より物理的な、例えば公的スペースの利用ということも含め、いろいろな側面からの支援というものがあってよろしいのではないかという御指摘がありました。

それから、事業者の自主的な取組を促すということも重要ですけれども、行政規制もなお必要なのだという御指摘が改めてありまして、それとも関連して、課徴金制度の在り方ということについて御議論いただいたところでございます。現在、景表法に課徴金制度が導入されているわけですけれども、これの問題点ということについても御指摘がありましたし、改めて課徴金の、例えば計算方法とか減免の在り方ということを見直して、善良な事業者の取組を促す仕組みを考えてはどうかという御指摘がありました。

さらに、景表法だけに現在あるわけですが、特商法などについても、このような仕組みを導入することが考えられないかということも御指摘いただきましたし、さらには、ジャパンライフの例なども引き合いに出されて、被害の拡大防止を図るような意味での、課徴金だけではなくて、例えば破産申立権などについても設けるという考え方も示されたところであります。

現在、景表法における課徴金制度については、返金制度との関係で課徴金の減免というものが仕組みとしてはあるわけですが、これについての問題点ということについての御指摘をいただいたと思っております。

かなり課題は多く、最後に申し上げただけではなく、様々な問題点を御指摘いただいたわけですけれども、この御指摘に基づいて、今後のワーキングの議論を更に進めていきたいと思っております。

それから、最初のところでも出てきましたが、行動経済学的な分析も踏まえて、大きく制度の在り方というのを検討すべきではないかということ、これも従来から指摘されているところでもありますし、これについては、今後のヒアリング等においても、これを取り入れて、またそこで議論を更に深めていきたいと思っているところでございます。


≪3.閉会≫

○鹿野座長 それでは、本日の検討はこの辺りにさせていただきたいと思います。

事務局からは何かありますか。

○坂田参事官 本日も、長時間にわたりまして御議論いただきまして、誠にありがとうございました。

次回の日程につきましては、改めて御連絡させていただきます。

以上です。

○鹿野座長 それでは、本日は、これにて閉会とさせていただきます。

お集まりいただき、熱心な御議論をありがとうございました。

(以上)