第10回 オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会 議事録

日時

2018年12月14日(金)15:00~18:14

場所

消費者委員会会議室
東京都千代田区霞が関3-1-1 (中央合同庁舎第4号館8階)

出席者

【専門委員】
中田座長、早川座長代理、生貝委員、石原委員、大谷委員、片岡委員、上村委員、西村委員、畠委員、原田委員、前田委員、森委員
【消費者委員会担当委員】
池本委員長代理、大森委員、蟹瀬委員、鹿野委員、樋口委員、増田委員
【説明者】
小林法学博士(清華大学)・一般社団法人日中知的財産保護戦略連盟事業推進部マネージャー
【オブザーバー】
カライスコス京都大学准教授
【事務局】
二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官、友行企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 役割分担の考え方の整理(2)
  3. 討議
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○中田座長 本日はお忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

第10回「オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会」を開催したいと思います。

本日は、所用により大橋委員、沖野委員及び山本委員が御欠席です。また、遅れてこられる委員の方もおられますが、定刻になりましたので、先に始めさせていただきたいと思います。

最初に、配布資料の確認です。お配りしております資料は議事次第の配布資料一覧のとおりになっておりますので、御確認いただければと思います。今日も大部になっておりますが、よろしくお願いいたします。不足がございましたら、事務局まで御連絡ください。


≪2.役割分担の考え方の整理(2)≫

○中田座長 今日の最初の議題は、役割分担の考え方の整理ということであります。第7回におきまして、比較法的な知見を得るということで、ドイツのオスナブリュック大学のクリストフ・ブッシュ教授から、ヨーロッパにおけるオンライン仲介プラットフォームに係る動向等についてお話をいただきました。非常に刺激的な内容でして、我々の議論にも大きな影響を与えたものではないかと思います。

アジアの中で、とりわけ中国については、電子商取引法が来年1月に施行予定と聞いております。その法規制というのは、オンラインプラットフォームにおける取引に関する規制ということで、かなり先進的な部分があるのではないかと見ております。

今日は小林正弘法学博士(清華大学)・一般社団法人日中知的財産保護戦略連盟事業推進部マネージャーから、中国におけるプラットフォーム責任についてお話を伺いたいと思います。

その前に、私から簡単に小林様の御紹介をしたいと思います。

小林博士は2008年から北京にて中国語の勉強を開始されて、2010年から中国清華大学の法学院博士課程にて、韓世遠教授の指導のもとで中国契約法を専攻されました。韓先生は清華大学の民法の教授で、先進的な契約法の専門家としてとても注目が集まっている先生で、私も親しくさせていただいております。

その後、小林博士は2013年に博士課程を修了し、清華大学で法学博士号を取得されました。そして、中国系の法律事務所で日本企業向けの知的財産保護分野の実務経験を積まれて、2016年から、日中知的財産保護戦略連盟の事業部推進マネージャーとして、北京にて知的財産分野で幅広く活躍されています。

また、学術的な活動としては、2015年には法律出版社より『訳書 法律家シェイクスピア』を出版され、また、潮見教授、松岡教授と、私も編集に加わったのですが、『概説 国際物品売買条約』というテキストの中国語の翻訳も準備されておられます。

今回、専門調査会でオンラインプラットフォームの法的責任に関する中国法の状況を御紹介いただくことになりました経緯として、鹿野先生と私が共同代表として研究を進めているプロジェクトの関係がございます。それはヨーロッパ消費者法を研究対象とする研究会で、ヨーロッパという名称はついているのですが、ただ、その影響を受けているアジアの法の在り方にも対象を広げたものであります。そのプロジェクトの一環として、小林博士にはプラットフォーム運営事業者の法的規律に関する中国法の調査を既に依頼しておりました。このたび、その内容をまとめていただきましたので、その貴重な成果について本調査会においても御報告をいただきたいということで依頼した次第です。

それでは、小林博士、よろしくお願いいたします。

○小林博士 御紹介いただき、誠にありがとうございます。

このたびは電子商取引法の概要を御報告する貴重な機会をいただきまして、中田先生、鹿野先生を始めまして、各委員の先生方、そして、事務局の皆様に深く感謝を申し上げます。

私自身は北京で10年間生活しておりまして、ここ数年、特に中国の電子商取引の発展の状況を肌に感じております。仕事でもプライベートでも、SNSアプリ「ウィチャット」というものを常に使用しております。これは中国版LINEと言われておりまして、LINEの機能のほかに電子決済機能もついております。とても便利なのです。ウィチャットのチャット機能、又はモーメンツ機能等でいろいろな連絡、情報交換を行っています。移動の際には今有名になっているシェアサイクルのアプリやタクシーの配車アプリ、そのようなものを利用しています。一般的な様々な支払につきましては、携帯の電子決済機能を使用しております。最近は出前アプリというのも普及しておりまして、コーヒー1杯から配達してくれる。そのようにこのスマートフォンの各種アプリ、そして、特に電子決済機能がついているコミュニケーションツールであるウィチャットが非常に重要な社会インフラになっているのだと感じております。これによってeコマースが生活の隅々までに浸透してきているという状況です。

それでは、今回御指名いただきました報告に移らせていただきます。時間の関係上、要点のみの簡潔な説明になります。

それでは、お手元の資料「中国におけるプラットフォーム責任」の3ページを御覧いただきたいと思います。まず、電子商取引法の制定の背景ですが、中国は世界最大の電子商取引のマーケットになりました。電子商取引が中国の経済発展の重要な原動力になっております。電子商取引分野の就業者数も激増しておりまして、電子商取引の利便性が大幅に向上していると言えると思います。

4ページを御覧ください。このような電子商取引の急速な発展に伴いまして、新たな問題が噴出してまいりました。そこで、電子商取引市場の秩序、そして、信頼性を守る、その必要性が喫緊の課題となってきたということであります。

5ページを御覧ください。このような問題に対しては個別法で対応すれば足りるのだ、電子商取引分野において専門の法律をつくる必要はない、との意見もございました。しかし、表を御覧いただければ分かるとおり、多くの法律に電子商取引に関する規定が分散しています。また、その内容も電子商取引の特殊性を十分に考慮したものとは言えない部分がございます。

6ページの表を御覧いただければお分かりになると思うのですが、一部の規定につきましては、指針、ガイドラインにとどまる等、法律よりも規定のレベルが低い状況で、十分に効果が発揮できていないという問題もございました。

7ページに移ります。そこで、5年の歳月を費やしまして、今年の8月31日に電子商取引法が制定されました。具体的な制定過程についてですが、通常は法案の成立に関しましては、全人代の常務委員会により3回の審議がなされます。ですが、今回は4回も審議がなされておりまして、極めて異例です。社会の関心の強さ、社会への影響の大きさを考慮して、慎重に起草が行われ、また、各主体間の利益調整がいかに難しかったかということが分かります。

8ページから9ページは、起草資料に示された4つの立法指針です。電子商取引法の特徴を把握する上で有益と考えますので、御紹介させていただきます。

特に②の部分で、電子商取引法では、電子商取引実務において、特に顕著な問題に対し、プラットフォーマーの義務、責任を加重することにより消費者の権利保護が図られています。

また、④にあるとおり、関連法令に規定がある場合には、電子商取引法では特にインデックス的な規定を設けるにとどめておりまして、具体的な規範内容につきましては、他の法律等を援用する必要があるという形になっております。

10ページで、電子商取引の概要について簡単に見ていくことにいたします。

まず1ですが、電子商取引法は全7章89条から構成されております。

11ページの2の部分は電子商取引法の目的で、第1条に規定がございます。電子商取引法の各主体には、主にプラットフォーマー、プラットフォーム内事業者、消費者、そして、知的財産権者も含まれます。

12ページは電子商取引法の定義です。「インターネット等の情報ネットワークを通じ商品を販売し又は役務を影響する経営活動をいう」とされております。この定義から分かることは、BtoC、 BtoB 、CtoC等の取引モデルは問われない。また、取引内容には商品の販売のみならず、役務の提供も含まれますので、家事代行であるとか、旅行関係のチケット販売等、また、ネット配車等のプラットフォームも「電子商取引」に当たるとなっております。

ただし、13ページ(3)ですが、ここで金融関係の商品及び役務、また、ニュース等の役務等に関しては、電子商取引法の適用除外となり、専門の法律によって規律されることになります。

また同(2)には、本法の規定の適用範囲について属地主義が採用されております。

14ページは電子商取引業者の定義になります。「インターネット等の情報ネットワークを通じ商品を販売し又は役務を提供する事業活動に従事する自然人、法人および非法人組織」とされております。これには以下の3つの主体が含まれることになります。

1番目、電子商取引プラットフォーマー、以下「プラットフォーマー」と呼ばせていただきます。

2番目、プラットフォーム内事業者、「ショップ」と呼ぶことがあります。

3番目、自ら開設したウェブサイト、その他のネットワークサービスを通じて商品を販売し、又は役務を提供する電子商取引事業者となっております。

ここで少し注意点がありまして、14ページ※1のところを御覧ください。ここには「事業活動」という文言が入っていますが、これはCtoCのフリマアプリ等で個人が自身の中古品を販売する場合等を電子商取引事業者から除外するために審議の過程において追加されたというものです。事業性の有無は消費者権益保護法の適用のメルクマールですが、これについて15ページにて関連判例を御紹介しております。

15ページでは、個人がフリマプラットフォームで偽造品を販売し、購入者が消費者権益保護法に基づいて当該プラットフォーマーと販売者個人に対して、売買代金の返還と3倍賠償を請求した事案を紹介しております。

この事案では、個人販売者の具体的な取引状況から事業性を認め、個人販売者が事業者に当たると認定しました。そして、消費者権益保護法の適用により原告の請求が認容されています。

次に、同じ案件で争われた点は、プラットフォームにはプラットフォーム上の商品について真贋鑑定を行う義務があるのかどうかで、これについては否定されまして、また、取引の過程においても過失は認められないとされて、プラットフォーマーの連帯責任も否定されております。

これが注意点の1つ目ですが、もう一つ、注意点の2について、17ページですが、「微商」も電子商取引事業者に含めて、市場主体登記を原則として義務づけ、管理の対象とするために、「その他のネットワークサービスを通じて」という文言が規定されています。「微商」とは、先ほど冒頭で触れたウィチャット等のアプリを用いてオンライン取引を行うものの総称です。「微商」では必要な管理がなされておらず、右側の写真のように模倣品が販売される等の違法行為が頻発しております。

また、プラットフォーマーを介さない当事者間の取引、交渉、電子決済になりますので、このような状況でトラブルが発生すると、売主から連絡を一方的に遮断されてしまうことになります。そうすると、非常に権利救済が困難になってしまうという問題があるので、これをその管理の対象とするということで文言を入れたということになっております。

16ページにはプラットフォーマーの定義があります。プラットフォーマーとは、電子商取引において双方又は多方にネットワーク営業所、取引マッチング、情報掲載等の役務を提供し、取引の双方又は多方に対し取引活動を独立して展開させる法人又は非法人をいいます。

この非法人組織というのは、日本の方にはあまりなじみがないと思うのですが、法人格を有しないが、自己の名義で民事活動に従事できる組織で、個人独資企業とかパートナーシップ企業が含まれることになります。ここでの重点は、プラットフォーマーは他の主体と異なり、技術的な要求が高いものとされていることです。また、プラットフォームの管理責任もあり、それに対応する法的責任も負うことになりますので、自然人はプラットフォームにはなることができないということを規定しているものと御理解ください。

18ページからはプラットフォーマーの義務についての概括的な説明になります。プラットフォーマーの上位概念である電子商取引事業者の法的義務に関する一般条項というものが5条に規定されております。

19ページのポツの2点目は、義務の構成となっておりますが、プラットフォーマーの義務というのは、①の電子商取引事業者の一般的な義務と、プラットフォーマー特有の義務から構成されています。さらに、プラットフォーマー特有の義務をプラットフォーマー自身の事業活動に関連する義務と、プラットフォーマーのショップに対する管理義務に分類することができます。内容については、その分類によって見出しをつけておりますので、20ページから24ページにつきましては、御覧いただければと思います。

25ページからプラットフォーム責任の説明に入ります。プラットフォーマーの責任には、主に民事責任、行政責任、刑事責任がございますが、26ページでは、民事責任に関しまして、プラットフォーマーは原則としてショップの販売者としての責任を負担しないこと、また、消費者権益保護法及び製品品質法における販売者としての責任も負担しないこととなっております。

その理由は、プラットフォーマーは売買契約の当事者の取引契約には関与していないという契約の相対性の理由が1点です。また、プラットフォーム内では日々膨大な量の取引が行われております。その膨大な数の消費者に対して、販売者としての責任を負った場合には、プラットフォームとしては生き残れないだろうということも理由になっております。

ただし、例外的にプラットフォーマーが連帯責任を負う場合がございます。それが①ネットワークのサービス提供者の不法行為の責任の一般規定、②消費者の身体、財産の安全等に関する責任、③知的財産侵害についての責任となっております。

以下では、②の38条に関連する責任について具体的に説明させていただきます。

27ページです。配車アプリを利用した運転手によるとても悲しい事件が発生いたしました。それでプラットフォーマーの責任に社会から大きな関心が集まりました。

電子商取引事業者の販売する商品又は提供するサービスが身体、財産の安全性の要求を満たさない場合、電子商取引事業者は、電子商取引法、侵権責任法及び消費者権益保護法の規定に従いまして、相応の民事責任を負うことになります。

28ページで、まずプラットフォーマーがプラットフォーム内の事業者の身元、連絡先の情報を提供しない場合、電子商取引プラットフォーマーは一定の先行賠償義務を負うことになります。

次に、29ページでは、電子商取引法38条1項によりまして、プラットフォーマーがショップの販売する商品又は提供するサービスが身体、財産の安全性の要求に適合しないことを知り、又は知り得たにもかかわらず必要な措置をとらない場合、プラットフォーム内事業者、ショップと連帯責任を負うことになります。

30ページでは、さらに電子商取引法38条2項により、消費者の生命や健康に関わる商品又は役務について、プラットフォーマーがショップの資質、資格について審査を尽くさず、あるいは消費者に対する安全保障義務を尽くさずに、消費者に損害を与えた場合、法に基づき相応の責任を負うことになります。この相応の責任に関しましては、審議段階で連帯責任とするのか、それとも補充責任とするのか、激しい議論がありました。その上でこういう規定がなされております。この法的責任については、特別法が優先適用される場合、例えば食品安全法にはプラットフォーマーの連帯責任が規定されているのですが、こういう特別法が適用される場合を除きまして、裁判所が具体的な事案に基づき、自由裁量で法律に基づき個別に判断していくこととなります。

36ページでは、38条関連の履行を担保するために、過料による行政責任も規定されております。

これはまた違ったテーマになるのですが、まず37ページの写真を御覧ください。左側がタオバオのユーザー評価の画面になっています。いろいろなレビューが書いてあるわけです。右側はタオバオの販売者の信用度のレベルを表示している。こういう格付があります。

38ページでは、取引数量、取引成立件数というのは、消費者が電子商取引事業者の商品、ショップの商品や役務の品質を判断する決定的な要素となります。このため、多くのショップが架空取引によって取引件数を偽造しています。また、ユーザーの評価が低いショップは容易に電子商取引マーケットで淘汰されてしまうため、自ら虚偽の評価を行ったり、他人に評価を委託する等、不当な方法によっていい評価、高評価を捏造している状況があります。そして、ユーザーがマイナス評価をつけた場合には電話で修正を迫ったり、システムの欠陥を利用した技術的手段によってマイナス評価を表示させないようにしたり、削除するという問題が多発しました。

そこで39条2項において、プラットフォーマーによる評価削除を禁止して、81条で過料による行政責任で担保しております。

また、架空取引に関する取引件数又は評価の捏造等については、反不正競争法8条や20条、及び広告法の55条1項により、過料等の行政責任が定められております。

この各論についてはたくさんお話ししたいことがあるのですが、時間の関係上、この2つの紹介だけにとどめさせていただきます。

51ページの7番は、電子商取引紛争の解決メカニズムとなっております。この電子商取引の紛争解決メカニズムにつきましては、様々な分類ができると思いますが、例えば事前、事後の紛争解決又はプラットフォーム内とプラットフォーム外の紛争解決メカニズムといった形で整理することもできます。

ここでは52ページのオンライン紛争解決、ODRという視点から説明させていただきたいと思います。まず、写真の説明です。左側がタオバオの取引規則になっております。そして、また、2番目の写真、中間の写真が、オンラインの調停のプロセスの流れの写真です。一番右の写真が北京インターネット法院の審議の様子の写真になっております。

この電子商取引紛争には次の3つの特徴があると思います。1点目ですが、電子商取引では、遠隔地での取引が多く、原告が被告の地で裁判を起こすにはコストと時間がかかります。また、2点目、膨大な数の紛争を全て司法手続に持ち込むと法院がパンクしてしまうことになります。また、3点目、電子商取引では紛争に関する証拠が全てとは言いませんが、オンライン上にあり、プラットフォーマーが証拠を保存しているという状況があります。そこで、オンラインで起こった紛争につきましては、できる限りオンラインで解決できたほうが効率的だということで、このプラットフォーマー紛争解決システム、オンライン調停、そして、インターネット法院という試みがなされています。

P52ページ(1)のプラットフォーマー紛争解決システムにつきましては、まずショップと買主の2当事者間での交渉が行われ、その返品等を行ったりします。それで問題が解決しない場合にはプラットフォーマーに介入してもらって、紛争解決のサポートをしてもらう。それでも解決できない場合には、(2)のオンライン調停や(3)のインターネット法院への申請、提訴が考えられます。

このインターネット法院につきましては、まず2017年8月18日から杭州でスタートしました。この8月18日から2018年の8月17日まで1年間で、インターネット案件の受理件数が1万2074件で、既に結審されている件数が1万391件となっております。このように、インターネット法院につきましては、また、オンライン調停につきましても、中国全土に普及している状況ではなく、試験的に行われています。インターネット法院については、今は杭州と北京と広州の3カ所で行われています。

非常に駆け足の説明となって聞きづらかったとは思うのですが、こういう形で基本的な説明を終わらせていただきます。

○中田座長 ありがとうございました。

お手元の資料の中にも更に細かく説明がなされている部分があります。この法律、なかなか大部なものでして、資料を作成していただいたときに、これをちゃんと御説明いただくのは少なくとも1時間以上かかるなと思っていたのですが、小林博士には非常に御尽力いただきまして、短い時間で御報告いただくことを無理にお願いした次第です。

御覧になっていただきまして、どういった法律が体系的に整理されているか、また個別の法律の規定があったりとか、私たちにも参考になるところがあります。もちろん中国と日本との違いもありますが、ある程度の共通性もあるように思われますし、この法律自体も表面的に見る限りヨーロッパの動き等も反映されているところがあるかとも思われます。この調査会にはいろいろなサイドの方に来ていただいておりますので、こういう具体的な中国法の状況をどう見るか、つまり、日本でもこういった法律の規定があったらどうなのか、そういう法律の規定が必要なのか必要でないのか、ということについてもご検討いただければと思います。様々な御意見をいただければ幸いです。

まずは小林博士の報告について、もし御意見あるいは御質問等がありましたら、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。

森委員、お願いいたします。

○森委員 御説明ありがとうございました。大変興味深く拝聴しました。勉強になりました。

16ページのプラットフォーマーの定義のところなのですけれども、電子商取引において双方又は多方にネットワーク営業所、取引マッチング、情報掲載等の役務を提供し、取引の双方又は多方に対し取引活動を独立して展開させる法人又は非法人組織をいうということで、いわゆるマッチング型のものですね。モールであったりとか、オークションであったりとか、ライドシェアであったりとか、民泊であったりとか、そういうものは入ってくると思うのですけれども、そういうものではない、例えば掲示板であったりですとか、あるいはSNSであったりですとか、動画投稿サイトであったりですとか、そういう取引といいますか、契約といいますか、そういうところまでは行きませんけれども、一定の需給関係によっていろいろな人が情報交換をするというものはこの定義に入ってくるかどうかを教えていただければと思います。よろしくお願いします。

○小林博士 掲示板とか、どういうものがここに入ってくるのかというのは、実際に機能、状況を見なければいけないのですが 、中国の状況では、そういう物とかサービスを直接に提供していないプラットフォームであっても、例えば先ほど言われた、今、日本でも有名なティックトックというショートビデオがありますね。ああいうものも利用しながら、例えばそこに商品の宣伝を入れたりとか、先ほど言いましたようにウィチャットの連絡先を入れて、そこで連絡をとって取引するようなケースがあります。そういう場合には、結局ここでも先ほど説明しましたように、実際に音声であったりとかビデオのプラットフォームに関しては除外されるのですが、ただ、そういうプラットフォームを利用して販売している人に対しては、その他のネットワークを通じて取引をやっているということで、個人が電子商取引事業者に当たることになると思います。

○森委員 ありがとうございました。

日本でもツイッターを使って商売している人も結構いると思いますが、ツイッター自体はここには入らないけれども、その商売をしている人たちが入るということですね。

○小林博士 はい。

○森委員 ありがとうございました。

○中田座長 早川座長代理、お願いします。

○早川座長代理 どうもありがとうございました。

20ページから続いているところですが、21ページのところのプラットフォーマーの義務についての概観。そちらで13に「ユーザー個人情報の保護義務(23条)」というところがございまして、こちらの新しい法律の中に個人情報の保護というところが載っていたことに関して非常に興味関心を持ちました。

と申しますのは、現在、例えば中国に外資の、特にアメリカの中ですとかアメリカ以外でも非常に支配的な力を持っているいわゆるプラットフォーマーですね。特定の名前を出してもいいぐらいだと思いますけれども、ところが、なかなか中国に参入できないところの一つの理由として、中国の中ではプラットフォーマーとして事業を展開する、あるいはプラットフォーマーの定義に当たらないような形でも電子商取引あるいは電子的な情報交換のハブになるというような事業をやるときに、どうしても政府に対して情報を提供するということを要求され、それに応じることができないというポリシーを持っているところが中国の中で情報を展開できないと。ただ、実際には、例えば私は中国にもよく出張しますけれども、幾つかの日本で使っているサービスは一切使えなくて困ってしまうというのがよくあるのです。

つまり、政府に対して自分の情報が勝手にみだりには提供されないというのも個人情報保護の一つの重要な柱だと私は思っているのですけれども、ただ、他方で23条で書いてあり、しかし、どこまでが正確なのか分かりませんが、少なくとも中国でそういったビジネスを展開するには、中国政府に対して情報提供することが前提になっているとも言われていて、実際にもできていないビジネス企業がたくさんあるということを考えると、ここの関係をどう説明するのかが私にはよく分からなくて、この法律と例えばプラットフォーマーが集めてしまう個人的な情報と政府との関係はどうなるのかということを教えていただきたいのですが。

○小林博士 これは非常に重要な問題なのですが、25条に主管部門に対する電子商取引データの提供義務というものが規定されております。主管部門が行政法規に基づいて電子商取引プラットフォーマーに対して、電子商取引に関する情報を要求した場合には、電子商取引プラットフォーマーは提供しなければならないとなっております。ここでどのようにどれだけの情報を政府の部門が要求してくるのかというところの問題になってくるとは思うのです。そのあたりの具体的なところは、実務的なことなのでなかなか答えられないのですが、そういう規定が設けられていることは事実です。

○早川座長代理 一つの見方としては、23条はあくまで25条を前提にした規定で、つまり、個人情報の保護というのはあるけれども、政府から要求された限りにおいては個人の情報であったとしても、それは無条件、無制限と言うと言い過ぎかもしれませんが、出すことが前提になっていると。逆に言うと、プラットフォーマーとして中国で認められるためには、この25条における政府に対しての電子商取引データは提供するというところは義務になっているということですから、ここが守れないところは入れないということになるという理解でよろしいのでしょうか。

○小林博士 それを守らないことによって罰則を受けるとか、そういうこともあるかもしれないですが、では、それを最初から認めなければ参入できないのかというと、そこまでの状況は把握していません。

○早川座長代理 参入できるのかもしれませんけれども、結局応じないと罰則を受けるのであればヘジテイトするのは当然で、また一部の支配的なプラットフォーマーの中にはその義務を中国側に対して譲歩するから、中国の非常に大きな市場があるので、そこに参入しようとしたところ、内部告発があって最近また大騒ぎということがあったりもしますので、25条というのはほかとの関係ではない規定なのかなと思いました。

○小林博士 そう思います。

○中田座長 ありがとうございます。

畠委員、お願いします。

○畠委員 ありがとうございます。

38ページの評価制度のところなのですけれども、評価制度の削除禁止の背景として捏造が横行しているのでということなのですが、恐らく捏造を行うのはショップなのではないかと思うのですけれども、ショップによって捏造が行われる場合に、一般的にはプラットフォーマーがそれを発見したら削除するという方向につながると思うのです。この説明ですとプラットフォーマーは評価を削除してはならないとなっていまして、捏造があったとプラットフォーマーが判断したらどのような処理になるのでしょうか。

○小林博士 プラットフォーマーが削除する場合というのは、例えばマイナスの評価がされている場合にそういうものを削除してはいけないとなっておりまして、例えばショップのほうからプラットフォームに要請があるだとか、削除してほしいということも考えられます。

もう一度質問をいただけますか。

○畠委員 恐らく評価の捏造というものは、ショップが誰かに頼んでやってもらうのだと思うのです。そうだとすると、それはプラットフォーマーとしては見過ごせないので、それを発見したらそれを削除するという行為を行うのが一般的だと思うのですけれども、この39条の説明によると、プラットフォーマーは評価を削除してはいけないとなっているので、捏造された評価に対してどのようなことをプラットフォーマーは行うことができるかということが分からなかったということです。

○小林博士 削除する状況というのは、それは当然マイナスの評価を削除してはいけませんということなのです。マイナスの評価というのは、消費者にとっては大変に重要な情報になります。例えばこの店から、ショップから買ったのに、ブランドが偽物だったとか、問題があったとか、そのようなマイナスの評価が記載されている場合に、プラットフォーマーは当該評価を削除してはいけないとされています。

また、評価のレビューにはいろいろな形態があります。例えばライバル業者が他のライバルショップの売り上げを落とすために、わざと捏造する場合があります。そういう場合には当然不正競争防止法に基づいてとか、プラットフォームの判断で削除していくことになると思うのですが、基本的にここで想定しているのは、消費者が通常の状況で品質が悪いとか、そういうマイナスの評価についての規定です。

ただ、審議の過程でそういうプラットフォーマーが自分でレビューのよしあしを判断してそれで削除できるというのは困るということになりました。先ほどおっしゃたような、例えば悪質な表現であるとか、本当にひど過ぎる表現、あとは冒涜の行為だというものについては、プラットフォーマーが削除してもよいとする例外規定を設けてはどうかという議論もあったのですが、そういう例外規定を設けると、プラットフォーマー側が結局自由裁量で判断することになりますので、消されてはいけない消費者の声もどんどん消されてしまう可能性があるということで、このような規定になっております。

○中田座長 具体的なやり方については、まだ法律で明確に定まっていないという理解でよろしいですか。

○小林博士 そうですね。具体的には定まっていません。

○中田座長 ほかにいかがでしょうか。

池本委員、お願いします。

○池本委員長代理 貴重な情報をありがとうございます。

28ページのプラットフォーム責任の先行賠償義務というところで、プラットフォーマーがフォーム内事業者の身元、連絡先の情報を提供しない場合には、先行賠償義務を負うということで、それは消費権益保護法44条にも同じような規律があるというところ、非常に関心を持ちました。

関連するところとして、20ページに電子商取引事業者の義務というところで、6番でしょうか。営業許可証情報の公表・更新等の義務という、この営業許可証というところへ、日本の特定商取引法でいえば通信販売事業者は事業者名、住所、連絡先、代表者名を表示せよというものがありますが、それに当たるものが事業者としての表示義務がある、それがここに当たる、という理解でよいのかどうか。

それから、そこに表示してある中身が、例えばその後変更されて正しく表示していなかった、あるいは最初はそこだったけれども、その後、ほかへ移って連絡が現実にとれないという場合も、28ページにある、連絡先の情報が提供できなければ先行賠償義務につながるという理解でよろしいのかどうか。

そして、最後に、プラットフォーマーの責任はCtoCの場合にも一定の範囲には及ぶという最初の説明がありましたが、そうすると、電子商取引事業者であればこういう住所等の連絡先の開示義務がありますが、そうでない場合にはプラットフォーマーはそこへ参画する者の連絡先の確認・確保というあたりは現実にはどういう形で措置がされているのか、あるいはするのかというあたりがお分かりでしたら。

○小林博士 先行賠償制度というところなのですが、結局、裁判を起こすためには被告の情報が必要になります。それは身元であり、連絡先と。その情報と20ページの行政許可情報がそのまま一致するわけではないと思うのです。ですので、ここに書いてあるのは公表されている情報は前提として、また、プラットフォーマーはショップが自己のプラットフォームに参入する段階でショップに提供を求め、審査、確認している情報がありますので、それについて提供していくということだと思います。

その後に、では、身元の住所が変わったらどうなるのか、その変わった住所を提供できなければ義務違反になるのかというところは、恐らく把握している情報を提供すれば、それで義務が果たされたことになる。それはその裁判が提起できればいいので、被告の訴状を送れる情報があればいい。送れなかった場合には公示送達であるとか、そういうものがありますので、裁判は行えることにはなります。ただ、実際にプラットフォーム自身が更新義務は負っていますので、逐次更新して最新の情報については出していかないといけないと思います。

最後の御質問をもう一度お願いします。済みません。

○池本委員長代理 最後の質問は、この20ページの電子商取引事業者としての住所、その他連絡先の公表義務のないような個人ですね。そういう者が参入したときにも、この28ページの対象になるのか。もしなるとすると、プラットフォーマーはそういうものも連絡先を把握するという措置を講じなければならないということになるのだろうかというところです。

○小林博士 結局、この条文は消費者権益保護法を前提にしておりまして、消費者権益保護法では「販売者」と言っています。販売者の情報を、連絡先を提供するということになっています。プラットフォームとしては、販売行為を行う人たちの情報は登録をしないといけないことからある程度把握しているはずなので、その情報は提供していくことにはなると考えます。

○中田座長 ありがとうございます。

いかがでしょうか。

鹿野委員、お願いします。

○鹿野委員 貴重な御報告ありがとうございました。

初めて聞いた内容なので誤解があるかもしれないのですが、この法律の特にプラットフォーム責任の法的な性質に関わるところをお聞きしたいと思います。先ほどの御説明では、この法律は事業者に一定の義務づけを行い、あるいはある一定の行為の禁止を行い、その違反に対して行政措置が設けられ、場合によっては刑事罰が科されることがあるということでした。ただ、一部には民事責任を直接定めた規定も、37条とか38条はそれに当たると思いますけれども、そういう規定があるということでした。

そのうち、行政規制とか刑事罰についてはもちろんその根拠条文があって初めてそれが発動することになると思うのですけれども、民事的な責任等に関しては、日本では不法行為に当たるところの中国では侵権責任法というのですか、そういう一般的な法律もあり、それから、電子商取引法とか、そういう電子商取引に関連する特別法もあるというようなことなのだと思うのです。

そこで、それとの関係で教えていただきたいのですが、27ページの一番下のところに、電子商取引事業者の販売する商品又は提供するサービスが身体、財産の安全性の要求を満たさない場合、つまり13条に当たる場合に相応の民事責任を負うと書いてあるのですが、これはそのような場合に限定されるのですか。それとも、先ほど言いましたような形で、直接的には行政規制的な意味合いがあるところの一定の義務づけとか、あるいはこれをしてはならないという規定があったら、それが一般の不法行為法のレベルでも違法性の認定の一要素として考慮されて、それが不法行為責任につながることはあり得るのでしょうか。具体的には27ページの下3行目の意味合いについて教えていただきたいというのが1点目です。

それと関連して2点目は、先ほどの37条、38条というのは、一般の不法行為などの規定では対応できない問題について、特に政策的な観点を含めて特別の民事責任に関する規定をここに置いたという意味合いのものとして理解したらよいでしょうか。その2点を教えてください。

○小林博士 1番目の質問と2番目の質問は少し関連しておりまして、まずはこの13条に規定するような身体又は安全に関する場合に限定した責任があるのかといいますと、特に電子商取引法ではその部分はすごく重要な問題なので、改めて規定しているという部分があります。

そして、26ページを見ていただきたいのですが、26ページの例外の①というものがあります。これは侵権責任法の36条2項、3項なのですが、これはプラットフォーマーが不法行為責任を負う場合の一般規定と考えていただければいいと思います。問題がある場合に通知されて、必要な措置をとらなかった場合には、そこについては注意義務違反に当たるということで責任を負うとなっています。

こういう規定がありながら、では、なぜわざわざまた38条に規定されたのかといいますと、一つは先ほど御説明したタクシーアプリ事件が起こったり、そこで具体的により義務というものを明確に規定することによって不法行為責任を認めやすくしていくというところにメリットがあります。また、この侵権責任法の36条の2項では、条文を見ていくと、ネットワーク提供者が、ネットワークユーザーがそのネットワークサービスを利用し他人の民事権益を侵害したことを知りながら必要な措置をとらない場合には、当該ネットワークユーザーと連帯責任を負うという規定になっています。ここは知っている場合というのを規定しているので、明文では知り得た場合というのは規定していないのです。ただ、これまでの中国の裁判実務では、この知っていた場合に知り得た場合も含むのだという裁判実務が行われていました。その実務を踏まえて、電子商取引法38条のところで、明確に知り得た部分も明文化したのです。

○中田座長 鹿野委員、補充質問ですか。

○鹿野委員 ついでに教えていただきたいのですが、今御説明いただいた25ページのところで、原則としてはプラットフォーマーは販売者としての責任は負担しないとなっていて、その例外として、侵権責任法の責任を負うとされた規定が載せられているのですが、これは原則と例外の関係に立つのですか。

販売業者としての責任というのは契約責任がまず第一に来ると思うのですが、販売者の立場ではないという場合でも、少なくとも日本の民法的に言うと、不法行為責任を負うという可能性は別個にあり得る。もちろん不法行為の要件を満たさなければいけませんし、どういう場合に違法性が認められるのかというところが重要なポイントになってくるとは思うのですが、これが原則例外という関係に立つのかどうか、また更に教えていただければと思います。

○小林博士 その点につきましては、私ももっと勉強しまして、頭の中を整理する必要があるかなと感じています。ただ、ここではプラットフォーマーは取引の当事者ではないということで、契約責任は負わないと。不法行為責任はどうなのかというところで、それもネットワークサービス提供者の一般的な不法行為の責任の在り方の原則規定が36条2項、3項になっていますので、それを例外と言ってしまうと、またちょっとおかしいと私は思います。ただ、大きな考え方としては、プラットフォーマーが基本的には責任を負わない。だけれども、連帯責任として責任をショップと一緒に負うことがありますよと。そういうざっくりとした考え方で整理しております。

○中田座長 鹿野委員、どうぞ。

○鹿野委員 この例外の侵害責任法の規定なのですが、これは一般の不法行為に対する考え方の中で、プラットフォーマーについてはこの場合だけだということで、責任を特に限定するという意味合いがあるということですね。

○小林博士 そうですね。セーフハーバー理論というもので。

○鹿野委員 分かりました。ありがとうございます。

○中田座長 不法行為と契約責任との関係ということもあると思います。

それでは、まず蟹瀬委員、その後、森委員、お願いします。

○蟹瀬委員 ありがとうございました。大変勉強になりました。

21ページの越境電子商取引のことですが、8月に中国の法令が可決されてから、日本でも越境取引について厳しくなるという情報が新聞にも載せられました。CFDAとかCCCとか、登録しろとか取得しろとか、言われました。この商務法は中国の国民を守るためですということが言われています。逆越境というのはどのぐらい、例えば日本で中国のものを買いました、何か問題がありましたといったときに、違う国の人たちも守られるような法律になっているのかどうか。その辺を教えていただければと思います。

○小林博士 まず、この適用の範囲というのが、中国国内に限定されています。そうすると、中国国内にサーバーを置いているプラットフォーマーがプラットフォーム責任の対象になります。

あとは海外のプラットフォーマー、例えばアマゾンですとか、そこに籍を置いている中国に存在するショップがそこで店舗を出している場合にも、そのショップの人自身は、ショップ自体は中国にありますので、電子商取引事業者の責任義務は負うようになります。ですが、それは中国国内での話になります。だから、そういう人たちがこういう規定に違反すれば、中国の国内で行政処分を受けたりだとか、そういうことはあると思いますが、実際に中国から出てくるものについて、日本にいる人たちが受け取って何か問題があったらどうなるのかというところは、まずはプラットフォーマーがどこに存在しているのかというところにもなってくると思います。

○蟹瀬委員 プラットフォーマーが中国にいた場合は、日本人も守られるのですか。

○小林博士 日本人も守られると思います。

○蟹瀬委員 分かりました。ありがとうございます。

○早川座長代理 今の点ですけれども、座長に言われてですが、条文のほうが配られていまして、26条を見ると、越境電子商取引に従事する場合には、輸出入監督管理の法律、行政法規、国家関係規定を遵守しなければならないと書いてあるので、どちらかというと、私はこの後に御報告させていただくのですが、クロスボーダー取引で被害を受けた消費者を守るとか、そういうほうではなくて、むしろ電子商取引の越境でやると、輸出入管理規制とかいろいろな規制、そこはちゃんと守りなさいというのが多分メーンなのではないかとは思うので、小林先生がおっしゃったように、あるいは御質問のようなところがまだここの射程には、規定の文言上入っていないようにも思えます。

○蟹瀬委員 ということは、この取引法の中には、あくまでも中国の国内に全てあれば問題ないですということですね。例えばプラットフォームをそこに置いていれば問題ない。では消費者がどこまで守られていくのでしょうか、この法律はあくまでも中国人を守るため、中国国内で行われていることを守るためであって、世界的には守られていないという解釈でいいのですね。

○早川座長代理 というよりも、守る、守らないではなくて、中国でクロスボーダーの取引に従事しているビジネス企業に輸出管理規制とか、そういう必要な規制を忘れずにちゃんと守れということを命じているというところがメーンのように思います。

○蟹瀬委員 なるほどね。

○中田座長 この規定はそうで、消費者権益法の具体的ないわゆる消費者の権利とか、そういうものは中国国内での問題として扱われて、日本人が中国のプラットフォームと取引したときにこの法律が適用されるかというと、それは疑問符がついているということではないかと思います。

○蟹瀬委員 ありがとうございました。

私たちが日本で今度これをつくるときに、誰をターゲットにしているのかがとても気になったのでお聞きしました。

○中田座長 もちろん中国と日本とで、これも夢のような話かもしれませんけれども、共通ルールをつくっていくというのは次の段階として十分考えられることかとは思いますが、それはまだそういう問題としては提起されていないということだと思います。

まず森委員、その後、生貝委員、お願いします。

○森委員 ありがとうございました。

私は鹿野委員のお話と同じ26ページのところで、更に同じようなことをお尋ねして申し訳ないのですけれども、今のやりとりで結構理解できたかなと思っておりまして、それを確認させていただきたいということです。26ページの原則のところ、販売者としての責任は負わないというのは、これは普通に販売したものが壊れていましたとか、傷がありましたとか、そういうときに別に責任を負うわけではないですと。例外というかどうかは別として、責任を負う場合もありますと。それが侵害責任法で、この場合は店舗が侵害行為を行った場合なのですね。侵害行為なので別にプラットフォームの反対側の購入者ということに限らず、例えば盗品だったら盗まれた人であったりとか、もしかしたら侵害行為というのは、レビューにおける誹謗中傷とか、そういったことも入るのかなと思います。

その場合、ここにあるのは、責任発生の条件となっているのは太字になっていますが、通知を受ける。そして、通知を受けた後何もしなかったら責任を負うのだよということになっているので、そういう意味ではかなり侵害行為自体は広いけれども、販売に限らないけれども、通知されてプラットフォーマーが何もしなかった場合にだけ責任を負うと。

それとは違う形の責任の負い方、つまり、ここで言う例外のもう一つが生命や健康に関わるもので、それはスライドよりはむしろ今の条文集のほうを見てみますと、7ページに38条がありまして、この38条を見ますと、電子商取引プラットフォーマーはプラットフォーム内事業者の販売する商品、また、提供する役務が身体、財産の安全の保障の要求に適合せず、あるいは消費者の適法な権益を侵害するその他の行為があることを知り、また、知り得たにもかかわらず、必要な措置をとらない場合とありまして、先ほどの知り、又は知り得た素地というものはここにはあります。この身体、健康に関することについては、これは通知は必要なくて、プラットフォーマーの認識があれば、そして、もしかしたら知っていただけではなくて知り得た場合にも責任を負うということで、例外的に責任を負うパターンが2つあるのかなと理解したのですが、そういう読み方でよろしいでしょうか。

○小林博士 それでいいと思います。

○森委員 ありがとうございます。

○中田座長 ありがとうございました。

生貝委員、お願いします。

○生貝委員 貴重なお話をありがとうございました。

1個だけ、今日は短くなのですけれども、私自身、中国法は本当に全然全く勉強が追いついていないところなのですが、例えば最近のサイバーセキュリティー法等を見ていても、例えば日本で言うところの政省令のようなもの、ないしは業界標準といったような形で、非常に抽象的な言葉についての具体的な基準をつくったり、あるいは、実質的に内容が変わっているのではないかといったように見える形での下位規範がつくられる、しかも膨大な量といったようものを見ているところなのですが、今回の電子商取引法に関しては、そういった関連するルールが今後、あるいは今策定されているといった動きがもしあれば教えていただければという質問でございます。

○小林博士 今後ガイドライン的なものが出て来ると思います。例えばこういう規定が出たのですが、細かい部分で明確になっていない部分がたくさんあります。例えば電子商取引事業者の定義に関しても、また例外規定がありまして、自分のたまに取引行為を行う少額のものについては市場主体登記をしなくてもいいという規定があるのですが、では、実際にどれぐらいの取引量だったらそういうものに当たるのか、当たらないのかとか、また、必要な場合には、いつまでにその登記手続を進めていかなければならないのかとか、まだまだ全然決まっていないところがあります。そういう部分では、これからそういう具体的なガイドラインが出てくるのかなというところですね。

また、先ほど申しました38条関係の責任につきましても相応な責任となって、今後様々な裁判例が出てくると思います。裁判所によって違う考え方が出てくると思います。そういう場合には、最終的に最高裁判所が最高裁の指導案例という形で考え方を統一する方向に持っていったりとか、又は司法解釈という形で明文化していくということもあると思います。

○中田座長 今のは中国の立法のプロセスがなかなか複雑だということにも関係するのですけれども。

早川座長代理、どうぞ。

○早川座長代理 今、まさに座長がおっしゃったところなのですけれども、要は中国法を理解するときに、我が国と同じようなシステムの前提に立って考えると全く理解できないので、そもそも三権分立ではないですし、裁判所自身が司法機関と我が国で言うようなところではなくて、自分自身もルールをつくっていくことができる政府の一部です。

そうすると、例えば6ページ目にあるように電子商取引法制定の背景として、一部は法律より規定レベルも低く、十分に効果を発揮できていないとあるのですが、私が少なくともこれまでにいろいろな法を見ていたり、あるいはいろいろなルールを見ていくと、いろいろな省庁が相互の調整なく独自につくっていて、統一的に説明ができていないところはたくさんある。それは何でかというと、背後にあるシステムがそうなっているので、我が国のように政府の中で、例えば相互に一つの法案をつくるときに全省庁で回して調整をするなどということが一切と言うと言い過ぎですけれども、やられていない状況がある中でやられている。

そこから私の質問なのですけれども、そうすると、今回新しい法律をつくられたときに、この法律とはまたある意味矛盾するような形での各省庁なり委員なりのルールというものがつくられたりとか、あるいは当然ですけれども裁判例を尊重しながらも、それとはまた違うような判断、解釈が出ていく可能性はあるのでしょうか。

逆に言うと、先ほど生貝先生はこの法律を前提に、これを下位のものとしてガイドラインがつくられたりしてディテール化されていく。我が国だと当然そう考えるのですが、必ずしもそうではない、いいように言うとダイナミズムがあるのが中国なので、その辺の見通しはいかがでしょうか。

○小林博士 背景から説明しますと、この法律というのが普通の法律であれば例えば商務部とか、そういうところが音頭を取って、自分の管轄の範囲内で法律を規定していくわけなのですが、この電子商取引法は先ほどもお話ししたようにすごく広い、13の政府部門にわたるような内容が規定されています。ですので、規定する段階でも各省庁間、政府部門間の調整が物すごく難しいというところで、この基礎作業の全責任を担ったのが、全人代の金融委員会なのです。そういう部門よりももっと上の段階で、その上から各省を押さえつけながら決めていったという経緯です。

もう一つが、この法律が法律のレベルで規定されているということです。基本的に国務院法令も法律には違反してはいけませんし、また、各部門の部門規定も法律には違反してはいけないというところで、こちらの法律の規定が優先していくことになると思います。

○中田座長 原田委員、お願いします。

○原田委員 今日は貴重なお話をありがとうございます。お疲れのところ済みません。私から質問させてください。

51ページの電子商取引紛争解決メカニズムのところを伺いたいのですけれども、電子商取引事業者さんに関しては、クレームや通報システムを設けるということと、プラットフォーマーさんに関してもそういった窓口があるというようなお話をいただきましたけれども、電子商取引紛争ということで、電子商取引自体は業態を問わないと第2条のところに定義があると聞いておりましたが、これに関してはBtoCが対象になっているものなのでしょうか。要は、プラットフォーマーさんが紛争解決というか、紛争が生じた場合に積極的に消費者をサポートするというのは61条に載っていたりなどするのですけれども、プラットフォーマーさんに関してはBtoCのみであって、CtoCは対象にならないのかということと、もう一つは紛争解決メカニズムがこの法律の中に入った背景とか、もしCtoCが入らないのであれば、なぜ除外されてしまったのかを教えていただければと思います。

○小林博士 基本的にはCtoCも入るという理解です。それはなぜかといいますと、実際にタオバオというのがCtoCの代表的なプラットフォームになっております。その場合にもタオバオが自分の紛争解決システム、ルールというものをつくっておりまして、それにのっとって処理をしているというところですね。

もう一つの質問のほうは。

○原田委員 今回のこの紛争解決メカニズムのようなルールが法律に入ったのは何ででしょうか。

○小林博士 まずはこのプラットフォーマーとたくさんの紛争が起こっている状況をいかにバランスよく処理していくか。全ての紛争が、それが司法にもたらされてしまうとそれだけでも大変な圧力になりますし、また、解決するためのリソースというものがオンラインプラットフォームにそろっているのであれば、それは自主的に解決システムをつくっていったほうが社会のリソースのバランス的にはいいと考えられて、本当に義務ではないのですけれども、このようなシステムをつくっていったほうがいいと推奨しているというところですね。

○原田委員 ありがとうございます。

そうすると、背景としてはそういう紛争がかなり起こっていて、ただ、なかなか司法の場に持っていくにはなじまないような案件が、多分低額だったりとかすると思うので、なじまない。なので、プラットフォームにそういう情報とか条件がそろっているのであれば、プラットフォームのほうで積極的にという内容になったということですね。

○小林博士 そのとおりです。1点補足があるのですが、タオバオでどのぐらい紛争が解決されているのかというところで、ここ5年間で260万件解決されています。

○原田委員 ありがとうございます。

○中田座長 ありがとうございます。

私もこういう細かい規定を見ている中で、例えば14条に領収書提供義務などがあるわけですね。私もプラットフォームで買い物をしたときに領収書を得るために非常に苦労したということがあって、なるほど、こういう細かいところまで義務というものを明示しているのだなと感心したところがあるのです。

消費者サイドのほうで、こういったプラットフォーム取引をめぐる紛争解決のときに、こういう規定があれば非常にいいなというものがあるようでしたら御指摘いただければありがたいなと思うのですけれども、いかがでしょうか。

お手元には条文などもあると思うので、比較法というのは、ある紛争があったときに、こういう解決があるといいなというヒントを与えてくれるところもございます。理論的な御質問もあったところですが、ただ、もう少し消費者サイドからこういう法律の規定の仕方がおもしろいとか、あるいは意味があるのではないかというような御意見をいただけるとありがたいと思います。もしそういう御意見、御指摘がございましたらぜひお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。

鹿野委員、お願いします。

○鹿野委員 こういう規定がというわけではないのですけれども、先ほどの38条の民事責任に関する規定についてです。レジュメの26ページのところでは、不法行為に関して侵害責任法は一般の不法行為より少し限定的な場合にのみ責任を負うとしているということで一応確認しました。ただ、更に今回の電子商取引法38条を見ますと、プラットフォーマーについては、基本的にその前のところの一連の規定でネットワークの安全、安定的な運用を保証するために必要な措置を講じなければいけないとか、公正、公平を遵守しなければいけないという考え方が定められている。

その上で、38条というのは、プラットフォーマーが売主ではないのだけれども、そういう市場を開設している立場で遵守すべき義務があると。その義務に故意過失によって違反したときには責任を負うのですよというような考え方が示されているように思われます。そうすると、この38条に限っては、責任を制限しているというわけではないように思われます。私は日本法の不法行為の発想しかあまり持っていないので中国の基本的な作りがわかっていないのですけれども、責任を制限しているというより、このような場面においてどこまでのことをプラットフォーマーがやらなければいけないのかということを明らかにした上で、これに違反した場合には民事的にも責任を負うのだということを明確化した規定と捉えることができるのではないかと思いまして、民事に関してはそのようなたてつけも参考になるかと思いました。

もちろん明確性がこれだけで確保されるのかという問題はありますけれども、そうはいっても、不法行為の一般的な規定しかない状態よりは随分具体的になっているのかなとも思いました。

○中田座長 鹿野先生の御発言に反応すると、この条文全体の構造を見ると、そういう安全性をきちんとプラットフォーム運営事業者がとった上で、それができていないときに責任を負うというたてつけではないかという感じですね。そのあたりは私もそうではないかと思います。

今日は残念ながら非常に時間が短くて、全体像を御説明いただく形にはならなかったので、そのあたりの視点が十分に御報告の中で得られたかというと、そこは弱かった部分かもしれませんが、条文全体を見るとそういう考え方は十分できるのではないかと思います。

どうぞ。

○早川座長代理 最初に法律を見せていただいたときに、正直、目がくらむ感じがいたしました。それはどうしてかというと、私は法務省の専門調査員などをやったことがありまして、立法作業に携わる法の目から見ると、例えば納税義務とかそれはそうでしょうというところから、領収書は紙で渡せというところまでレベルの差が物すごくあるものが一つの同じステータスで条文として並んでいるので、これは例えば法律をつくった後の政令の下のさらにとかというところのレベル感がぐちゃぐちゃな感じがあって、先ほど申し上げた観点から言うとちょっと気持ち悪い感じがあるのです。

他方で、見方としては、ある種、いい意味で野蛮な形であっても、今ある問題との関係でニーズをきちんと、要は、税を払っていない人がいるから納税義務はちゃんと書かなければとか、領収書を渡さない人がいるから領収書はちゃんと書かなければいけないという、これによると今、何が中国で起こっているのかがよく分かるという面では非常に参考になるのではないかと思いました。

その中で私が一番興味を持ったのは、消費者個人の特徴と関係ない検索結果の提供義務という18条のあたりは、日本で今どこまでそういった、検索をする人の動向に合わせて価格を動かしたりとか、よく考えると、実生活の中ではどうも盛んにあいつはこの骨とう品を見に来るからふっかけてやろうとか、あるいはここで売らないとやばいからこの人は興味なさそうだけれども安く売ろうかというのをやるので、その観点からすると、本当はもしかしたら正当化されてもいいのかもしれないとも思うのです。でも、やはりある種不公正なところもあるので、そういったところがもしも中国の中で、日本にも今後起こり得るような、あるいは盛んに起こり得るようなことが既に起きていて、それに対して対応しているとしたら、そこら辺は非常に勉強になるなと思いました。

○中田座長 コメントありがとうございます。

時間が大分来てしまったので、残念なのですけれども、ここで質疑を打ち切らないといけないと思います。ただ、小林博士には今後も御協力いただいて、さらにここでの質問、また、ほかの条文等で疑問が出てきた場合には御回答をいただければと思います。

今日は短い時間でしたけれども、貴重な御報告をいただきまして、どうもありがとうございました。

今から10分ほど休憩をさせていただきたいと思います。

それでは、休憩に入ります。

(休憩)

○中田座長 それでは、再開させていただきたいと思います。

次は早川座長代理から世界におけるODRの概要等について御説明いただきたいと思います。その後、議論をさせていただきます。

ODRに関しましては、これまでの専門調査会においても断片的な形だったのですが御説明をいただいているところでもあります。例えば第8回の議論におきまして、海外での仕組みや事例でいいものがあれば参考にしたい旨のコメントがあったこととか、あるいは役割分担の考え方や、今日も中国法の説明の中でもそういった考え方が出てきたと思います。仕組みをどのようにつくっていくかというところを議論してきたところであります。

また、本テーマにかかわって、海外事例の導入も問題になるのではないかと思います。そのときでのその場面での実効性とか、あるいは法の執行の可能性です。それについては更に議論を深める必要もあろうかと思います。その点でも重要な意味を持つテーマだと思います。

ということで、資料2がございますので、早川座長代理から20分程度で御説明をいただくということにしたいと思います。

それでは、座長代理、お願いいたします。

○早川座長代理 早川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

報告としましては、資料2を投影する形で使わせていただきますが、それ以外に参考資料として1-1、1-2、1-3がございまして、これは報告の中でCCJと言及します越境消費者センターについての参考資料ということになっております。

それから、配布資料の中には、APECでODRのルールづくりに関するものがありますので、そちらについても若干言及させていただきたいと思います。

それでは、始めさせていただきたいと思います。

最初にまずイントロダクションを御説明しまして、それからヨーロッパと日本の状況、アメリカの状況、さらに国際的なルールメーキングとして国連でのODRワーキンググループと配布資料にもございますけれども、APECで進められているODRのプロジェクトについて説明するということになります。

まず、問題の所在なのですが、クロスボーダーのODR、クロスボーダーの電子商取引、特にBtoCのケースなどでは、買い手である者がA国にいて、売り手である者がB国にいるということが簡単に起こってしまうわけです。B国側のほうも日本向けに日本語のウェブサイトを用意していたりしますので、そうすると、最終的に物は届く。そして、お金を払えばいいだけですから、A側の日本の消費者などは簡単に、あるいは気がつかないうちに電子商取引、しかも国際的なものに巻き込まれているということがあるわけでございます。

もちろん、B側が英語でだけしか提供しないということもございますけれども、その場合であっても単に自分の好きな色を選んで、個数を選んで、クレジットカードを入れればいいだけですので、そんなに手間暇がかかるわけではないですから、若干の英語力さえあれば海外からの通販も簡単にできるというのが実情でございます。

しかし、一回トラブルが起きると非常に困ってしまいまして、相手方が外国の事業者ですと、当然、通常日本語はできない。そうすると、その苦情の処理のためのコミュニケーションで言語的に困ってしまう。そのために、こちらとしてはどのように苦情を言っていいのかよく分からないし、向こう側も苦情も来ないので、あるいは来ても何を言っているのか分からないので、なかなか解決につながらないということがございます。そうしますと、一つの問題として、国際的な電子商取引における紛争においては、言語の問題というものがクローズアップされることになるわけであります。

また、この紛争を例えば訴訟によって解決したいと思ったときも、国際訴訟というのは私の専門ですけれども、非常に大変です。まず、どちらの裁判所でやるかという管轄の問題がありますし、国際的な送達は国によっては、向こうにあなたは訴えられていますと連絡するだけで2年かかります。そうしますと、紛争解決するだけでいろいろな問題が発生してしまいまして、最終的に出た判決も、我が国に相手方の資産がなければ、その国で承認・執行してもらわなければいけないのですけれども、国際的な判決の承認・執行の条約のようなものは存在していない。そうすると、例えば日本で出た判決を中国に持っていくと紙切れ同然ということが起きてしまって、実効的な解決にはなりませんし、そもそも係争額は普通5万円以下なので、5万円以下のために国際訴訟を起こすのかというと普通は起こさないですから、そうすると泣き寝入りに終わっているというのが実情でございます。とすると、電子商取引が国際的に拡大することの一つのボトルネックに、紛争解決をどうするのかがあるということになるわけでございます。

そこでこの言語という問題を中心に、特にEUの中では様々な言語の人たちが一つのマーケットの中で共存しているので、これをアシストするような形でオンラインでの何かの仕組みができないかというところでヨーロッパではもう十数年前からECC-NETという非常に初歩的なODRのシステムができ上がっておりました。

これはどういうものかといいますと、各国ごとにコンシューマーインスティテュートというものを、このECCというところがオーソライズした機関をまずつくるという義務づけがありまして、そちらが相互に連絡をとって、例えばX国のコンシューマーが自国の言語で苦情をすると、そこが英語に翻訳してくれまして、それがY国のほうのカウンターパートのコンシューマーインスティテュートに送られて、場合によってはこの言語の、あるいはこちらで更に現地語に訳してクレームを届ける。そうすると、ベンダーサイドではこのものに対してレスポンスをして、これがまた英語に翻訳されて、最終的には現地のコンシューマーには現地語で渡されるという形で、コミュニケーション、あるいはネゴシエーション、あるいはコンプレインハンドリングの手続を、オンラインを使いながら、しかし、言語によるアシストをつけていくということが、非常に原始的なODRとしてスタートしていたわけであります。

これをまねるような形というとおかしいのですけれども、日本でも、まだ消費者庁が発足する前の経済産業省のころから実証実験としてICA-NETというものがつくられました。ただ、日本にはEUのような面としての様々なカウンターパーティーの国々がいるわけではないので、バイラテラルに個々の国々との間でカウンターパーティーになるような機関を見つけて、そちらとの間で同じような仕組みをつくっていくというのがなされて、それが現在は国民生活センター内におけるCCJという形で展開されているということでございます。

ケース自体は年間4,500件ぐらいでそれほど多くはなく、ただ、これは国際的な紛争のみを扱っておりますので、クロスボーダー以外のところでは、もちろん数はすごく多いわけですけれども、クロスボーダーでは年間4,500件ぐらいなのですが、最近こちらがスマホ対応をするように画面をつくったら一気に6,000件に増えたことが分かりまして、どうもユーザーサイドではもっと潜在的に実は苦情が埋まっているけれども、言語だけではなくて、ITにおけるこの機関へのアクセスのしやすさというところでも工夫の余地があったのではないかとも言われております。

ただ、例えば、このCCJとECC-NETを結びつけると更に大きなことができるわけなのですけれども、これをやろうとしたらいろいろな障害に遭って、結局これは実現されていないのです。その一つは、それぞれで使っているルールというものが違っているので、そのためになかなか両方で乗り合いということができないということがございました。

それから、この仕組みというのはそもそもコンプレインハンドリングですので、B側が自主的に応じてくれればいいのですけれども、そんなものには我々は対応しないと言われたらそれで終わりですので、そうすると、紛争解決が実効的にはできないというパターンも結構あるということなのです。

ただ、今資料が配られておりますけれども、例えば参考資料1-2を見ていただければと思います。相談は様々なものがございまして、それ全体を母数にすると解決率は14%なのですが、相談者からの連絡が途絶えたようなペンディング事案ですね。実際には相談者が言っていることは、あなた、それは苦情ではなくて愚痴ですよねみたいなものもあるようでして、そういうものを除いていくと、実は44%解決している。要は、相手方も必ずしも変な事業者ばかりではなくて、ちゃんとコミュニケーションがとれればちゃんと対応してくれて、消費者側も満足するということは実際には起きているようで、非常に効果を上げているということが言えるかと思いますし、また、ECC-NETのほうでも大体同様の数値が出ております。

では、これ以外のものはどうかというと、例えば10から15%ぐらいというのは、そもそも相手方が悪質な事業者でもう既に消えているようなパターンなので、訴訟を起こしても救済できないというようなパターンです。ただ、その間にはグレーゾーンがありまして、つまり、消費者側の言っていることももっともに聞こえるけれども、事業者側の言っていることももっともだ。そうすると、第三者が出てきて何とかこれを仲介してもらう、判断してもらうというのが必要なのではないかということが、今ヨーロッパでも、そして、日本でも問題視されてきているというのが実情でございます。

そういった観点から言いますと、アメリカは非常に進んでおります。アメリカのODRの立ち上がり方はどちらかというと、まずCtoC市場がeBayの拡大、それから、それを裏づけるものとしてPayPalという決済機関の拡大というところで広がって、しかし、CtoCであるとトラブルが多い。しかし、CtoCであるがゆえに低額、ローバリューの紛争なので、これを効率的に解決するという観点から出てきましたので、ヨーロッパや日本のようにクロスボーダーで言語でというところからこのODRが注目されたのではないというのが一つの特徴でございます。

例えばeBayのODRのレゾリューションは、先ほど280万件が5年間でというのが中国の例としてありましたけれども、1年で6000万件で、どうも1年間のアメリカの全ての訴訟を合わせたよりも多いという実情になっておりまして、そのうち50%は大体和解されて終わっている、解決しているということになります。90%については、今のところ、人間はもう介しなくても自動的に解決ができるように進められているので、ローコストで進められていることになりますし、エクストラジュディシャルプロセスと書いてありますけれども、100%プライベートに執行がなされる。これはどういうことかというと、皆さん、eBayを使うときには、自分のPayPalなりなんなりの口座を持っているので、その口座を使って行っていまして、同意によってこちらでの解決が終わったら、その解決に従って資金移動が自動的になされるということになっているので、結果としては裁判所の強制執行システムみたいなものを使わなくても、最終的になされた結論というものは実行されるということになります。これなどがアメリカの特徴でございます。

こちらからスピンアウトしたモドリアという会社がございまして、これは一つですけれども、つまり、幾つかのODRサービスプロバイダーと言われているような民間事業がアメリカではたくさん出てきておりまして、このモドリアという先駆的なところ、つまり、eBayとPayPalからスピンアウトしたようなODRサービスプロバイダーでは大体3層モデルになっていまして、最初に先ほどのECC-NETやCCJのようなネゴシエーションのフェーズと、第三者が出てきてミディエーション、つまり、両者にとって和解を促すような形のファシリテーションをやってくれるというもの。3層目には、それでもやらない場合にはアジュディケーション、つまり、判断を下して、ただ、それは判決と同一の効力を持つようなものではないというものと、あるいは設計次第ではアービトレーション、つまり、判決と同一の効力、既判力を持つ判断が下されるようなシステムというものも用意されております。やはり100%のプライベートエンフォースメントメカニズムを目指しているというのがこちらでございます。

こうした技術というのは、実はADR、つまり、裁判所外の紛争解決のシステムの中で発達してきたわけですが、現在では、先ほどの中国の例にもありましたけれども、裁判所の中のIT化、実は今も日本の裁判所のIT化は内閣府のもとでシステムの作業が進んでいますが、こちらとも同じような形で全く同じ技術が使われるようになっております。しかも、いろいろな紛争形態ですね。つまり、単なる電子商取引ではなくて、例えば家族法事案みたいなものもこのITの力によってできるだけ効率的、あるいは効果的に紛争解決するような工夫がなされているということになっております。

裁判所の例ですと、例えばアメリカの中ではこうした州や郡によって、実際にこういった事業者が提供するODRのシステムを使った裁判所の中におけるODRシステムというものが展開されておりますし、これはアメリカは入れていませんけれども、カナダのブリティッシュコロンビア州ではかなり進んだものが導入されているということになります。

「According to a statistic」と書いてありますけれども、統計元を今示せなくて申し訳ないのですが、先月の秋に一橋大学で開催されましたODRのシンポジウムの中で、先ほど紹介したモドリアの中心人物である者が講演をしてくれたのですが、そちらによると、プラットフォーマーの消費者というのはODRを経験した者ですね。つまり、トラブルに遭ってODRを経験した人とそうではない人で追跡調査をすると、ODRを経験したほうがよりロイヤリティーの高いユーザーになってくれているということがあるので、アメリカではODRというものを消費者サービスのために外部的に義務づける必要がないと考えられています。つまり、ODRサービスを付加価値としてつけているプラットフォーマーのほうが消費者から人気が高いということで、それによって、マーケットメカニズムによってODRとプラットフォーマーのビジネスというものを結びつけているというところが非常に特徴的であるように思います。

現在、先ほど申し上げたように、全米では様々なODRのプライベートなサービスプロバイダーというものができていて、事業やサービス内容を競っているというのが実情でございます。

こういった動きの中で、しかし、例えばヨーロッパと日本の間において、結局はなかなか統一的なルールですとか協調ができないというところがあったりするので、全世界的に統一的なプラットフォームあるいはルールみたいなものをつくるということが望まれるのではないかということで、国連の国際商取引法委員会、UNCITRALというところでワーキンググループが2000年から2016年まで続けられておりました。大体年間2回会合がございまして、私はそちらで日本からの政府代表を務めておりました。

こちらでは、当初からまずBtoBとBtoC両方をターゲットにしましょうという形でしたね。当時2000年のころにはCtoCはあまり注目されていなかったのですけれども、その後の議論でCtoCも当然入るでしょうということにはなっております。

3ステップモデルというものが採用されまして、最初にネゴシエーション、あるいはコンプレインハンドリング、ミディエーション、それから、アービトレーションという形で、また、全てのプロセスはオンラインで、先ほど中国のODRのシーンは出てきましたけれども、こちらはペーパーベースで全部やりましょうと。だから、当事者同士のヒアリングのようなものをやらないという前提でのモデルをつくっていったことになります。

あと、できるだけ簡単で速いプロセスで、例えば5万円以下の紛争でも、手続費用が5万円かからないようなものをつくっていく必要があるということで、それを前提にしたモデルというものをつくっていったわけであります。その意味で、最初はネゴシエーションですが、その後第三者があらわれて、ニュートラルですが、これが当初はファシリテーションをして、ミディエーション、つまり、和解の形成ができないかを図るのですが、最終的に自分で判断するというモデルがつくられたわけです。もちろん第1段階で終わればハッピーですし、第2段階で終わればハッピーですけれども、最終的にラストリゾートとして判断を下すというところまでやって、紛争を最終的に解決するようなシステムということが考えられたわけであります。

最初のうちは、この国連のオンラインアービトレーションルールをつくろうということで、1人の仲裁人、3人ですとまたコストもかかってしまいますし、時間もかかるので1人だけで、しかも、それは当事者の選定権を奪ってしまって、ODR機関のほうですね。日本で言うと、仲裁機関に当たるところが自動的に選び、判断についてはプライベートの情報を削った上で全部パブリックにして、判例法の形成のようなものを促す。

しかも、先ほどから我々は法律をつくることを考えたりするのですけれども、大体法律が一番悪いという話も出てきまして、特に国際的なものですとどちらの法律が適用されるかというような国際私法の問題が出てきて、そういうものをぐちゃぐちゃやっているうちに時間もコストもかかるので、もう少し判断権者のコモンセンスに任せて、プリンシプルのようなもので判断していって、先例をどんどん積み重ねていって、そうすると、同じような事例で同じような判断という形でやっていくことが重要なのではないかと。私は国際私法というものを専攻している学者なのですが、国際私法が一番悪いという話になってしまいまして、そういったものを排除することはできないかということがございました。

エンフォースメントについてはトラストマークシステム、ここでも出ておりますけれども、これをできるだけ使っていこうという話も出てまいりました。

最初のうちは非常にみんな「そうだそうだ」ということで、どんどん規定もできて、第3回会合ぐらいにはもうルール案というものがほぼでき上がったのですけれども、非常に深刻な問題が浮かび上がりまして、それは何かというと、消費者と企業のBtoCの仲裁合意というものの有効性なのです。実は日本の仲裁法でも附則3条において、これについては消費者側に解除権がある形になっております。アメリカやその他の国々は、それは有効に決まっているでしょうということなのですが、EUや日本やその他の国々は、コンシューマーにはキャンセルする権限があるはずだと言ってまいりまして、そこをめぐって2つの陣営が正面から対立する状況になってしまいました。

この背景には、EUの中で昔はADRやODRというイシューは各国に任されていた事項でございました。その意味において各国ごとに政策が違っていてもおかしくなかったのですが、まさにこの国連での議論をやっている途中に権限が移譲されまして、ヨーロッピアンコミッション、欧州委員会が権限を持つようになって、ヨーロッパが一体した行動をとるようになったわけです。

しかも、そのときにヨーロッピアンコミッションの中でつくられていたのは、消費者に解除権を与えることを前提にした統一的なレギュレーション、あるいはダイレクティブというものがつくられていました。実際につくられてしまったのです。そのときから、最初のうちはイギリスの言っていることをフランスが批判し、ドイツが言っていることをイタリアが批判しみたいなことがあったのですけれども、途中から全EU諸国は同じことしか言わなくなってしまった。そうすると、アメリカとEUのガチンコの戦い。ほとんど後半の数年間はそれだけで費やされてしまいました。実際には、もうこちらの部会では紹介されていますけれども、ODRのレギュレーションのようなものもEUではつくられてしまって、それはしかし、アメリカのポリシーとは違っているというのが実情でございます。

その結果、最終的にヨーロッパ側がこのワーキンググループを潰そうということを提案してきまして、潰れました。ただ、これだけの長い時間を使って何もしないということでは大変なことになるので、「Technical Notes on ODR」というものがつくられまして、ただ、これが法的な拘束力がない不思議な文書で、しかも、3つの段階でやりますと。最初はネゴシエーションしましょう。2番目はミディエーション、あるいはセトルメントファシリテーションをしましょう。3番目は、これについては何も言えませんというような不思議な文書ができ上がりまして、これが国連のウェブサイトで今公開されております。

EUはEUで今ユニフォームルールを、自分たちでODRのものをつくっているのですが、それ以外の国々は統一ルールをつくる場すら奪われるという恐ろしいことが起きてしまった。そこでアメリカが、EUが口出しできない場がないかということで、APECという場がございまして、APECの場でODRの統一的なルールメーキングやプラットフォームをつくっていこうというのが、今進行中でございます。それの11月の会合のニュースというのが、こちらの配布資料に出ているものということになります。

ほかの国々に行っても、やはり途上国も含めてODRをこれから発展させたいと。でも、それにおいてはできるだけ統一的なプラットフォームで相互に協力関係ができたりするようなものをつくりたいと思っておりますし、11月の会合では、先ほどの紹介にありました中国からの代表もたくさん来まして、中国の裁判所のIT化、あるいはタオバオのODRなども様々に紹介されました。APECがこういった場をつくるものとして、しかも、EUが口を出せないところとして理想的な場だということで、現在議論が進んでいるところでございます。

ただ、そのときに、今確認されているのは、BtoCはとりあえず最初の段階では排除しましょうと。BtoB だけでまずルールをつくって、それからBtoCを考えましょうと。BtoCを最初からやると、またいろいろな細かいところで消費者政策は違っているので、ガチンコの戦いになる可能性があるから、まずはBtoB で大きなルールをつくってみて、それの効果を見てBtoCにも拡大していくという、今、2層モデルになっています。ただ、BtoCを今後検討することを排除しているわけではない。つまり、逆に言うと、今のBtoB の議論は将来のBtoCの議論に必ず影響を与えるという意味では重要なことだということになります。

スケジュールとしましては、2017年の8月にこれが提案されまして、2018年の3月にワークショップの第1回が開かれて、7月にジャカルタでインドネシア政府が関係者を呼んで、インドネシアの中でこのプロジェクトを進めたいのでぜひ説明をしてほしいという形で、関係者を呼んだワークショップなどが行われました。

8月にはさらにAPECの中にエコノミックコミッションというものがあるのですが、そちらでこのプロジェクトについて議論されまして、大阪で2日間の、多分全体で80人くらいの専門家が集まった、今世界のODRの専門家の全てがほとんど集まったようなワークショップが開かれて、その成果をもとに、来年の3月には、もしうまくいけばチリのミーティングでプロジェクト全体が採択されたり、現在ドラフトのルールですとかプラットフォームについての案が成立することになり、パイロットプログラムの形で実際のODRプラットフォーム事業者が様々な事業を行うことについて支援していくという形になる予定でございます。

この結果として、スタンダードのODRプラットフォームが形成される可能性がありまして、しかし、これは実は何でこんなに速いスピードで行われているかといいますと、国連の段階でつくられた文書ですね。テクニカルノートに残らなかったようなドラフトがそれまで積み重なっていますので、これらを更に復活させて、現在APECの名前で出てきているところでございまして、実際に国連のUNCITRALのエキスパートは1回潰れたものを復活させてくれるということで、このプロジェクトに非常に協力的でございます。

パイロットプログラムは、このチリでの来年3月のミーティングの後にラウンチされるというのが今期待されるところということになります。

大体私からは以上です。

○中田座長 早川座長代理、どうもありがとうございました。

これまでの議論の部分も含まれていた御報告ではないかと思います。ただ、時間が押していまして、あまり討議する時間がないかもしれませんけれども、今後オンラインプラットフォームにおける紛争解決をしていくときに、どういった手続モデルが望ましいのかというところに参考になる御報告であったと私自身は感じております。

では、内容について、もし御質問、御意見、あるいはこの点について聞きたいというところがございましたら、ぜひ御発言いただければと思います。

生貝委員、どうぞ。

○生貝委員 御説明ありがとうございました。大変よく分かりました。

1点短い御質問でございます。18ページのUNCITRALの初期の取組ということで、3)で「Enforcement by Trustmark system」という言葉が出てくると思うのですけれども、ここをもう少し具体的に教えていただけますか。

○早川座長代理 これは初期の段階で議論がなされていまして、実際には途中、そこまで行く前に宙に浮いてしまったものですので、現在実現されているわけではないのです。当初は国連印のトラストマークのようなものがあれば、その国連印のトラストマークをつけている事業者、あるいはプラットフォーマーは、消費者は信頼に値するところだと思うだろうと。そのトラストマークは何を意味しているかというと、ODRシステムを持っていて、その判断が出たら必ずそれには従いますということを約束しているということです。もしそれに従わないあるいは約束を破るようなことがあれば、そのトラストマークは奪われる。そういう形でプライベートのエンフォースメントメカニズムを実現しようといった構想でありました。APECでも同じような議論は出ております。

○生貝委員 ありがとうございました。

○中田座長 ほかにいかがでしょうか。

カライスコス先生、どうぞ。

○カライスコス京都大学准教授 貴重な御報告をいただき、誠にありがとうございます。大変勉強になりました。

ヨーロッパの状況を踏まえて、ODRの内容や位置づけに関するお考えについて伺いたいのですが、ヨーロッパでは先ほど御紹介いただきましたECC(ヨーロッパ消費者センター)ネットワークというものと、それとは別に2013年の規則に規定され2016年から運用されているODRプラットフォームというものがあります。一般的にODRというと中立的な第三者が判断するものを含めて理解されていると思いますが、御報告ではECCネットワークに焦点を当てられた理由やODRの位置づけに関するお考えについて御教示いただければと思います。

○早川座長代理 分かりました。

まず、プラットフォームではなくて2013年のODRレギュレーションですね。ODRレギュレーションはまさにODRについて対象にしているので、今日の報告がプラットフォームの責任というところの派生のODRだけを焦点に置いてお話しさせていただいたので、必ずしもプラットフォーマーとの関係みたいなことについてはメーンで議論しなかったというのがまず一つでございます。

プラットフォーマーとの関係で非常におもしろいと思ったのは、アメリカではどういう現象が起きているかというと、プラットフォーマーが消費者の保護のために外部からの義務づけのようなことをしてODRみたいなものを持たないとだめですよみたいなことを言われてやっているのではなくて、自分たちでプラットフォーマーの魅力を上げるためにODRを積極的に導入する。というよりも、アメリカのODRサービスプロバイダーはそもそもeBayとPayPalのところからスピンアウトしたあたりから始まっているので、その意味で、始まり方とかプラットフォーマーとの関係性というのが随分ヨーロッパと違うなと思った次第なのです。

ヨーロッパはどちらかというと、ODRというものがあると望ましいけれども、ヨーロッパのプラットフォーマーはそういうものを使おうとしないので、それをどうやって使わせるかという観点からダイレクティブなレギュレーションができ上がっている。もし間違えていたら教えていただきたいのですが、そこは随分状況が違っていて、日本はどちらかというと、今ヨーロッパ寄りなのかなと思っております。

ECC-NETに関しては、そもそもオンラインで紛争解決するというところがヨーロッパの中でどのように立ち上がっていて、実際に今、日本でODRと呼べるものがCCJしかないものですから、CCJを理解するためにはECC-NETを理解しなくてはいけないので、御説明させていただいた次第です。

回答になっていればいいのですが。

○中田座長 ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。

森委員、お願いします。

○森委員 ありがとうございます。大変本当に勉強になりました。

19ページのUNCITRALの会議がもめて動かなくなったというところなのですけれども、日本だと会議が紛糾すると、紛糾した、紛糾したということになるのですが、世界ではもっと紛糾しているのだなと思いましたが、よく分からないのは、米国が何で消費者側の仲裁合意が取消し可能であることについてそれほど抵抗するのかというのは謎だなと思っています。もともとの発想としては、非常に少額で訴訟の敷居が高いということで、多くの場合、これは例えば日本で同じ仕組みを設けたとして、消費者側が裁定に法的には拘束されなくても、ODRがそう言っているのだからと諦める可能性は非常に高いですし、また、訴訟の敷居も高いわけですから、ほとんどの案件をこれでふるい落とせるのではないかと思うのです。もしかしたらeBayのときの経験で、最終的に解決することがすごく大事なのだと思っているのかもしれませんけれども、実効性という意味では消費者側に取消権があっても全然変わらないのではないかと思うのですが、何でこんなにこだわっておられるのかなというのはもしお分かりであれば教えていただきたいと思います。

○早川座長代理 ありがとうございます。

まず、日本はどういう立ち位置だったのかというと、私個人は小さなことでもめているなとずっと思っていまして、ずっと仲介役で、インフォーマルミーティングで私はずっと座長をやっているみたいな形だったのです。

何で小さなことかというと、今、先生がまさにおっしゃったとおり、これは訴訟に行くことがほとんど考えられないケースなのです。国際訴訟をやっても、先ほど説明したように実際には救済されないので、だから、ヨーロッパ側の主張によると、裁判に行く権利を残しておけと言うけれども、そんなことを使う消費者はいますかと。だったら別に裁判に行く権利を残す、つまり、キャンセルする権利は要らないのではないですかと言われると、それは我々の基本権だと。なので、実際にはどうするかではなくて、大きな意味のポリシーの戦いみたいになっているのです。

それに対してアメリカ側にも私は、向こうが認めても、今先生がおっしゃったように、どうせそれを使わないのだから、別にいいではないかと言うのですけれども、それはのめない。そこはなぜなのかというのも、一つはどうもアメリカはクレジットカードのチャージバックシステムを使っていて、そのチャージバックの条件というのが、現在は裁判所による判決が出たり、アービトレーションのように既判力があってもはや覆せないのが出たときに、チャージバックは細かいところは説明は省略しますけれども、一定のものについてはそれが条件になっているところがあって、ここでいわゆる既判力がある判断がないと、自分の国のチャージバックのシステムにはまり込まないのだというのが一つ。

もう一個は、アメリカはそういう紛争形態がどこまであるのか分からないのですけれども、いわゆるクラスアクションがありまして、クラスアクション的なものが起きてしまったときに、アービトレーションクローズがあると、それを排除できるのです。その意味によって、事業者サイドからすると、クラスアクションに持ち込まれないというのがアービトレーションクローズの非常に重要なポイントで、そうすると、アービトレーションクローズではないという消費者側に解除権があるというと、それがクラスアクションに発展する可能性があるので、それを排除したいというのが裏の試みとしてあってのめないということを言っていたということがあるのです。

BtoCになると、それぞれの国々のいろいろな事情によって要らぬ反対をすることがございまして、私個人はこれはそんなに重要な問題ではなくて、セカンドクリックアプローチをすればいいのではないかと言っているのです。つまり、日本の附則3条も紛争前の仲裁合意についてはと書いてあるので、紛争後の仲裁合意についてはもう解除権はないのです。とすると、仲裁の段階になったときに、あなた、この先、仲裁に行きますか、行きませんかというところで、行きますというのでクリックしたら、先に行ったらそこは合意なので、そうすると、もはや解除権はなくなるから、そういうプラクティカルな案を使えば両者とも妥協できるのではないですかというのをさんざん提案したのですけれども、両方とも頭に血が上っていてだめになったというのが実情です。

ですので、先生の御指摘は極めて正しくて、何で争っているのだろうと私はずっと思っていました。

○森委員 ありがとうございました。

○中田座長 ほかにいかがでしょうか。

前田委員、どうぞ。

○前田委員 早川先生、どうもありがとうございました。

11ページに関するeBayの数値なのですけれども、あと、お配りいただいている資料にも書いてあるところで、非常に興味深いなと思っているのが、典型的なトラブルの場合、人工知能が解決案を提示するというようなことが書いてあります。典型的な場合については定型文で出てくるということについての満足度だったり、この11ページに関してはeBayのODRでここに関して特に不満がないということについて情報をお持ちであれば御共有いただきたいというのと、APECのほうの御議論の中でも定型的な質問については定型文でお返しするということについて、そこは大体皆さんの合意が得られているところなのか、あるいはそこで何か議論があるところなのかというところを御教示いただければ幸いです。

○早川座長代理 ありがとうございます。

まず、配布資料の上から3段目、4段目ぐらいですか。「定型的なトラブルの場合、人工知能(AI)が解決案を提示するケースも多い」というのはちょっと言い過ぎだと私は思います。これを目指してみんな頑張っているというところなのですが、まず最初のネゴシエーションのフェーズのときには、これは完全に自動機械化されていまして、向こうが打ち込んだら、打ち込みもテンプレートになっているので、テンプレートになっていることによって不満自体も整理させるわけです。最近はピクトグラムを使っているものも結構多くて、まずあなたは何が不満ですか、デリバリーされない、デリバリーはされたけれども壊れていたみたいなところを単にクリックするだけで、どんどん申し立て書がつくられるようなものもできておりまして、それが向こうに送られて、言語の問題があれば自動翻訳されてという形で、かなり省力化されています。まずここが機械化されていることの非常に重要なポイントだと思います。

問題は判断を下すというところなのですけれども、調停なりであれば案を提示するだけですので、その意味において、それを人がやろうが、機械がやろうが、最終的に両当事者が合意しなければそれは成立しませんので、この限りにおいてはAIを使うのはいいと思うのです。APECの中でも議論が出てきたのは、このプロジェクトをやってきて、最初はAIなどは使えないですよねという話もしているのですけれども、皆様御案内のように、AIはビッグデータがないとワークしないので、膨大な数のこういうケースではこういう判断が出されました、こういう解決がなされましたというある種の量のデータがないと、あなたのケースでは類似のものではこうなっていますけれどもというレコメンデーションができないわけです。なので、その意味では先ほどの内容は言い過ぎで、今はそれをつくっている段階という形なのだと思います。

ただ、そのやり方ですと、人を説得、あるいは納得させるには2つのやり方があって、一つは要件が満たされていますという形のやり方と、要件はどうか分からないけれども、あなたに似たケースはこうなっていますというやり方と2種類あって、後者のやり方を使っていくというのがまさにここでの紛争の解決のやり方なのだと思います。

それに対して人々がどこまで納得感があるのかというのは、法律家の見方から見ると、もしかしたら納得しない人がいるのかもしれませんけれども、eBayの実績では、比較的納得感はとられているということになります。

最後にもう一つですが、これは仲裁とか、いわゆる最終的に拘束力を判断するときに、それが人が返さなくていいのかというのは根源的な問題で、多分リスクヘッジのために人を介さないということは当面の間はあり得ないと思います。どうなるかというと、判断の原案まではAIがつくってくれて、それを人がレビューして、いいと思えば私の意見として出すという形になるのではないかと思っています。

○中田座長 鹿野委員、お願いします。

○鹿野委員 貴重なお話ありがとうございました。

紛争解決のシステムは、特にこういう分野で非常に大切だと思いますし、世界でどのように事態が進んでいるのかということを勉強させていただきました。

一つ教えていただきたいのですが、ODRのときの解決基準についてです。今のお話とも関わるのですが、人工知能等をかりた紛争解決の場合もそうでしょうし、あるいは、国境を越えた紛争においては法律の規制とかはむしろ邪魔なのだというお話もありましたけれども、そうはいっても裁判外の解決をするときに一定の基準がないと、この機関を信頼してこれを委ねていいのかということ自体がよく分からないのではないかと思います。法律家的な発想なのかもしれませんけれども、ルールが必要であるように思うのです。

先ほどコモンセンスでというお話もありましたけれども、コモンセンスによる判断の積み重ねというのは、極めてコモンロー的な発想でもあるとは思うのですが、そうはいっても、特にこのようなプラットフォームの問題もそうであるように、新しい問題について果たしてどのように考えるのかという場合、コモンセンスが既にあるというわけではなく、模索中みたいなところがあると思います。そういう場合に基準となるものというのはどう見出していったらいいのでしょうか。

だから法律をつくればそれでいいと言っているわけではなく、ある意味ソフトロー的なものの存在とか、それを使った紛争解決が重要だとは思っているのです。ただ、いずれにしてもこのような新しい分野における解決基準の在り方を教えていただければと思います。

○早川座長代理 ありがとうございます。

まず一つ訂正は、私が申し上げたのは、コモンセンスをプリンシプルのようなものと一緒にと申し上げたのです。そのプリンシプルというのは、法律のように細かく何条、何条となっているわけではなくて、例えばA4で2枚ぐらいで、このような原則のもとで解決がされますみたいなところ。そこは世界各国いろいろポリシーに違いはありますけれども、大体みんな共有できますねというところまではまずつくって、それとコモンセンスでやっていく方法はあり得るのではないかと申し上げたわけです。

現在、そういう形態の、しかも既判力ある判断を可能にする構造はないかというと、実はありまして、日本の仲裁法の中にもあるのですけれども、善と衡平による仲裁というものが、両当事者が合意した場合に認められています。その場合には法によらないわけなのです。

そこまで行かなくても、今申し上げたようなプリンシプルのようなものは国連なりAPECなりでつくってあって、それは特に法律になってしまうと、例えば日本とアメリカの間でやったときに日本の法律とアメリカの法律は細かいところを見ると違う。そうすると、どちらの法律が適用されるという、そこでまた悩んでみたいな形で、これは国際私法の問題で、それでまた時間もかかってお金もかかってということになってくる。そこまで細かいところはともかく、中二階ぐらいのレベルのところで共有できるところについてはプリンシプルにしてあって、そこについてはこのシステムの中では使いますということはまず共有されている。その上で、パネリストのリストがありますから、そのパネリストのリストの中には信頼に足る人が載っていますし、それは先ほど言ったようなAIなどを使った先例をできるだけ重視していくということも共有されている。

そこまでわかった上で、では、このODRシステムを使いますか、使いませんかという合意がさらに買い物をするときにある種あるわけですね。さらに不満であれば、実際に仲裁手続に至るときにセカンドクリックで、もう一回あなたは本当に行きますかというところをクリックさせるということになるのだろうと思うのです。

つまり、このシステムのもとでは消費者は2つの道が選べて、一つは裁判所というものを使って、法律というものを使って、法律が複数生じるのであればどちらの法律が適用されるのかという迷宮のものも私はつき合いますということをやるというのか、そこは要らないからとりあえず最終的な判断は下してほしい、それによってもしかしたら1,000円、2,000円変わるかもしれないけれども、早く実効的な判断が出るならばそちらのほうがいいというような選択をある種ユーザーに任せて、そのユーザーが後者を選んだときにはこれがワークして、しかも、もしもアービトレーションの枠組みでやるのであれば既判力がちゃんと与えられるという考え方なのだと思うのです。なので、既存のシステムの中でも実は存在していまして、それを応用していくという形なのだとは思います。

○鹿野委員 確認なのですけれども、そうすると、そのプリンシプルというのは善と衡平というような抽象的なところではなく、先ほど中二階とおっしゃったのですが、そのぐらいのところについては基準があると認識してよろしいでしょうか。

○早川座長代理 例えばユニドロワが契約プリンシプルというものをつくっていると思いますけれども、あれなどが一つの例なのではないかと思いまして、実際の国連の中ではCISGが使えるのではないかと。CISGというのはウィーン物品売買国際条約というものがありまして、日本も批准しているものですが、これは抽象的な部分も多いので、それを補充するという意味でもワークしているものとして、UNCITRALという国際機関がつくった契約原則というものがありまして、そういったものは先生は先ほどソフトローとおっしゃいましたけれども、ソフトローとして使うということは提案の中にはございました。

○中田座長 畠委員、お願いします。

○畠委員 コスト負担について伺いたいと思うのですけれども、アメリカのようにプラットフォーマーが自分のプラットフォームの価値を高めるためにこのODRというものを使う場合には、恐らくプラットフォーマーで費用を負担していると思うのですが、他方でAPECのようにプラットフォーマーとは離れたところでこのODRというものが設計されているときに、そのコストは誰が負担しているのか。この資料ですと紛争当事者が1件当たり5万円から10万円程度負担するのではないかとなっているのですけれども、それだけで賄おうとしているのか、あるいは別の方法で何らか資金を調達しようとしているのかというと、どうなのでしょうか。

○早川座長代理 ありがとうございます。

まず、APECもUNCITRALもルールとか構想をつくっているので、実際にAPEC、UNCITRALのほうが自分自身がプラットフォーマーになって何かをする、ODRプロバイダーとして何かをするということではないのです。そこはまず確認です。そうすると、このUNCITRALとか、あるいはAPECででき上がったルールなりモデルというものをどう使うかというのは、基本的に使うほうに任されているということになるわけです。そうすると、大体議論の中で3つぐらいモデルはあるだろうと言われておりました。

一つは、今御指摘にあったようなプラットフォーマー自身が自分のODRシステムをつくるという場合です。あるいは外部業者に委託して、うちはこの業者と提携しているので何かあった場合は大丈夫ですよという場合ですね。その場合には、当然プラットフォーマーのほうがお金を負担することになるわけです。

もう一つのパターンとしては、例えばECC-NETを先ほど御紹介したのですけれども、あれはEUの税金なりEU加盟国の税金で動いているものなのです。ですので、そういったものがそういうシステムをつくって、そのシステムを動かすためのルールとしてUNCITRALのルールですとか、あるいはAPECのルールというものを用いていくというモデルもあるかと思います。

それから、独立した紛争解決機関のようなものがあって、その持ち込んだときにユーザー負担でやっていくというものもルールとしては考えられると思うのですが、私はそれは最終的には同じ話で、つまり、プラットフォーマーはそれを維持するために結局は何らかの形で商品価値に最終的にはどこかに含まれてしまって、それでそれを消費者は買っていくということになります。国のモデルも納税者が最終的には負担しているわけなので、最終的には利用者が全部薄い形で負担しているのだろうなという説明になるのだと思います。

○中田座長 時間が迫ってきましたので、それでは、カライスコス先生、最後に。

○カライスコス京都大学准教授 申し訳ありません。先ほどいただいた御回答の後で、先生がおっしゃったプラットフォームと私が言っていたプラットフォームが違うものだということに気がついたのでそれについて補足をしたいと思います。私が言っていたプラットフォームは、EUで既に欧州委員会がオンライン紛争解決のために提供しているプラットフォームで、そこでは消費者が言語、国やその紛争解決を行う機関等を選んでオンラインで紛争解決を依頼することができるものです。日本法との関係で興味深いと思ったのは、先ほど先生がおっしゃった2013年の規則では、オンラインで物品などを販売している事業者であれば、EUのODRプラットフォームのリンクを必ず張りつけなければならないことが義務化されているということです。そのような方法の存在も含めての御質問だったという点だけ補足いたします。

○早川座長代理 分かりました。ありがとうございます。

○中田座長 それでは、一応この議論はここで一旦終了させていただきたいと思います。

早川座長代理、どうもありがとうございました。

≪3.討議≫

○中田座長 それでは、時間が十分ないので、後でまた事務局と相談して討議についてはまた時間を設けたいと思うのですが、第8回の討議で越境トラブルに関する議論ということで、そのトラブルの議論のベースとなる消費者相談の概要や具体的な事例について、まず事務局から簡単に御説明をお願いできたらと思います。

○友行企画官 それでは、先ほど早川座長代理からも少し言及があったところもございますが、参考資料1-1と1-2と1-3を今回資料としてつけております。いずれも国民生活センター様の資料でございまして、それをこちらで簡単に御紹介させていただくというところでございます。

参考資料1-1でございますけれども、CCJで受けた相談からということで、2017年度の越境消費者相談の概要というところが最初の資料でございます。

この傾向と特徴というところを見ていただきますと、2017年度に寄せられた相談件数は4,086件という形になっております。2013年度以降、4,000件を超えているといったところが特徴というところでございます。

相談が寄せられた取引のほとんどが「オンラインショッピング」に関するものと、決済手段は「クレジットカード決済」が8割を占めるといったことで記載されております。

トラブルの類型といたしましては、「解約トラブル」が相談全体の36%を占めて最も多いというところでございます。

ただ、その中身を見てみますと、商品・サービス別に見ますと、詐欺ですとか模倣品トラブルの対象品となる「衣類」「履物」「身の回り品」などの合計が4割を占めているといったところでございます。

相手方につきましては、「アメリカ」が最も多く、次いで「中国」という形になっているということでございます。

こちらが概要でございますが、中身をめくっていただきますと、2ページ目のところでございますけれども、もう少しデータが示されておりまして、例えば(1)のところの年度別相談件数でございますが、2011年度からデータが入っておりますけれども、直近では4,000件を超えるぐらいで、横ばいぐらいで推移しているということが分かるといったところでございます。

3ページ目、年代のところでございますけれども、相談者の年代別割合のところを見ていただきますと、20代、30代、40代、50代が20%、15%以上ぐらいのところでほぼ多くを占めておりまして、それ以上が高齢者といった形になっているといったところでございます。20歳未満につきましても若干いるといったところでございます。

取引類型につきましては、先ほど申しましたように「電子商取引」の形でございます。

4ページ目、決済手段での類型は何が一番多いかと申しますと「クレジットカード」が77%という形になっておりまして、そのほか銀行、金融機関への振り込みといったもの、現金などもあるといったところでございます。

トラブルの類型のところでございますけれども、(5)のところでございますが、「解約トラブル」が36%を占める形になっております。特にパソコンのソフトウエアの解約トラブルに関する相談が多く寄せられたという記載がございます。続いて、「詐欺・模倣品トラブル」が26%となっているというところでございます。「解約トラブル」と合わせると、これらは全体の約6割を占めているといったようなことでございます。

5ページ目、こちらが図6でどういったものが多いかということで、「解約」が36%、「模倣品到着」「詐欺疑い」といったものも含まれているといったところでございます。

(6)の商品・サービスの類型のところでございますけれども、こちらは詐欺・模倣品トラブルの対象となる「衣類」、スニーカーなどの「履物」、化粧品、バック・腕時計・装飾品などの「身の回り品」は相談全体の約4割を占めるといったところでございます。

次のポツですが、「ソフトウエア」に関しましては、2016年度から9%減少しているといった御紹介もあるところでございます。

6ページ目、(7)相手先事業者所在地というところでございまして、こちらは7ページ目の図表を見ていただいたほうが分かりやすいかと思いますが、「アメリカ」が31%で「中国」は13%、「イギリス」「シンガポール」「香港」「スイス」などが次いでいるといったところでございます。

以上が参考資料1-1でございます。

参考資料1-2につきましては、先ほど早川座長代理から若干御紹介がございましたけれども、越境消費者相談の処理結果というところでございまして、全体で見ると解決率は14%ということで、一見低いという形でございますが、調査中の事案や相談者からの連絡が途絶えたというペンディング事案を除いてみると、解決率は44%といったところでございます。

次の参考資料1-3でございますが、具体的な相談事例ということでございまして、こちらは明らかにプラットフォームが介在しているケースにつきまして、代表的なものということで御紹介しております。相談概要のところが一番最初のところでございまして、インターネットの海外旅行予約サイトでホテルを予約しましたと。予約の際、返金不可の記載がすぐ見つからなかったので大丈夫だと思って予約したと。ただ、その予約を取り消そうと思ったところ、返金不可のプランなので返金はできないといった回答があったというような事例でございます。

こういった一つの事例で様々なことがアドバイスといった形で示唆されておりまして、まず最初のところでございますが、対面の旅行代理店と勝手が違うことを理解しましょうというところでございます。海外企業が運営するホテルの場合は、格安の料金で提供するかわりにキャンセルなどの日程変更の条件が国内の旅行代理店と異なることに注意が必要だといったようなアドバイスがされているところでございます。

裏面を見ていただきますと、それに関連いたしまして、キャンセルや返金の条件がどこに書かれているか分からないといったことにも注意することが必要だというところでございます。

それから、キャンセルや返金の条件が分からない場合もあるといったことでございます。

それから、かかる費用が曖昧に表現されている場合もあり、そちらについても注意が必要だといったところでございます。

こういった一つの事例でございますけれども、海外のサイトでのトラブルの事例としては、こういったものがございますといったところでございます。

事務局からは以上でございます。

○中田座長 それでは、いかがでしょうか。

早川座長代理、お願いします。

○早川座長代理 私はCCJの運営委員をやっているので、どうも御紹介いただいてありがとうございましたということですが、つけ加えさせていただきますと、これはずっと長くこういった統計をとったりいろいろしているのですけれども、非常に勉強になるところがあるように思います。

例えば、先ほど御紹介された参考資料1-3の2ページ目、かかる費用が曖昧に表現されているところで「別途」と書いてあるときに、その「別途」の解釈をめぐってトラブルになったというケースがあるのです。これは必ずしも例えば業者側は別に悪質なわけではなくて、業者側は当然わかってもらえるだろうと思っていたところ、消費者側は必ずしもそうは思っていなくてということがあるので、そうすると、こういう表現を使うと自分たちは気がついていないけれども、実は誤解を招くということがこういうトラブル事例を通じてわかってくるので、サービスの改善ができるという点が非常に大きいように思います。

すなわち、これは消費者を救済するということだけではなくて、消費者にとってフレンドリーであろうとするような事業者においてもどのような形の記載をすればいいのかとか、あるいはやり方をすればいいのかというところで、余計なトラブルを事前に防ぐことができる、勉強ができるということですね。それが非常にやっていて価値のあることだと思います。

すなわち、紛争解決を具体的にやると、お金をばんと払うので一応もうこの問題について不満はないでしょうではなくて、実際の中身として何が不満だったのでしょうかというところを一つ一つ分析せざるを得なくなるわけです。そこでいろいろ分かることがあって、それは多分プラットフォーマー側にも非常に有意義なのではないかというのが一点でございます。

もう一つは、これは私、CCJのデータは全部サマリーを英語に訳されたものを毎回国連のUNCITRALですとか、今、APECの場に持っていくのですけれども、関係者は全部集まっているので、隅のほうに平積みしていると瞬く間になくなるのです。非常に日本のこういったものを毎年とっているのは評判がよくて、いつも感心されるのですけれども、そこで非常に言われるのは、一つは、こういうものをうちもつくりたいのだけれども、どうやって分類データをつくればいいのか分からなかったが、これを模倣したいと言っています。

例えば5ページ目におけるトラブル類型別相談件数のときに、トラブル類型をこのように分けているのですが、うちもこのようにつくりますとか、あるいは4ページ目のほうの決済手段の分類とかですね。これをやると、国際的に統計データをつくるときにインデックスが同じになりますので、相互比較がよくできるという点で非常に価値があるということと同時に、おもしろいのですけれども、トラブル類型が国を超えて、同じようなことがちょっとの時間差で起きていることに気がついたりするのです。

例えば最近11月のAPECのODRのワークショップの中では、カナダでも同じ時期にコンドミニアムトラブルというものが起きていて、それは日本のCCJにも来ていたということです。そうすると、どうも世界的に展開している何かが同じようなトラブルをいろいろなところで起こしていることが判明したりすることがあるわけです。

あるいは、決済手段、例えば4ページ目にありますけれども、これも単年度で見るとあまりおもしろくないのですが、2017、2016、2015、2014とずっと見てくると非常におもしろくて、クレジットカードのトラブルが多いケースとか、現金の振り込みのトラブルが多い年などがある。つまり、何かのことがあって対策をクレジットカード会社が打つと、そうすると、悪質事業者はクレジットカードを使えないことがわかって、銀行の振り込みに変えていくみたいなことが如実にデータからわかってきて、次に規制側はどこに、例えば銀行側に注意をしてこうしなければいけないということもわかってくるのです。

なので、この統計データというのは日本だけではなくて外国でも非常に評判がよくて、こういった活動をするのは非常に大事ですし、これを集めるにはどうするのかというと、結局ODRのシステムを使うことによってケースが集まってくることになると思います。

○中田座長 ありがとうございます。

前田委員、お願いします。

○前田委員 貴重な発表をありがとうございました。

1点質問なのですけれども、ここに上がっている件数、今は4,000件で、先ほど早川先生がおっしゃったところによるとスマホ仕様に変えた瞬間に6,000件という話なのですが、この件数は専ら日本人向け、要は日本語で書かれているサイトで海外事業者が運営しているサイトで生じているトラブルなのか、あるいは日本人の方が、例えば英語で書かれた海外のサイトについて、そこでお買い物をすることによって生じるトラブルも含まれているのかどうかという点を御教示いただければと思います。

といいますのも、後者の場合、海外のそもそも英語あるいは中国語ないし違う外国語で書かれていて、そこで生じたトラブルの場合、言語の問題が出てくるので、まさに早川先生がおっしゃったとおりなのですが、注文するぐらいの言語能力はあるのだけれども、そこ以上の紛争解決になるとなかなか難しいとか、キャンセルがどこに書いてあるのか探しづらいとかという話がより生じ得るのですが、ある意味、それを覚悟の上というのも変なのですけれども、そういう外国ならではの文化だったり言葉の問題だったりというのが自ら行っている消費者のトラブルも含まれているのかどうかというのも御教示いただけると幸いです。

○早川座長代理 私が答えていいのかどうか分からないのですけれども、答えは含まれているということです。これは消費者が不満を言ってくれば全部受け付けているので、唯一の条件は日本事業者との間のものではなくて外国事業者との間の日本の消費者のトラブルであるということですので、その意味で、先ほどおっしゃったようなケースも入っているのです。

このいつも出しているレポートの中で、言語が何だったかというところの分類項目で一つの章が立てられていたかというのは、多分なかったように思うのですけれども、基礎データはあるので、やろうと思えば今のものを過去にさかのぼってどうなっているのかを追跡調査できると思います。

そうすると、まさに前田委員がおっしゃったように、日本の消費者がどういう外国との事業者の間で購買行動をしているのか。つまり、日本語の言語でなくても乗り越えてやってしまっているのかどうかも実態がよく分かると思います。

○中田座長 原田委員、お願いします。

○原田委員 そのお話なのですけれども、CCJで見ている限りですと、4ページの下のほうに注訳が幾つか書いてあると思うのですが、振り込みというのは越境して振り込むことはほぼありませんので、そうすると振り込みというのは日本語でできた詐欺サイトで、ここに振り込んでくださいと国内の銀行口座が書いてあって、そこに振り込んでしまったのだけれども、物が届かない。それが要はURLとかサーバーの位置を見ると海外になっているので、越境という扱いでやっていて、日本語でできているというのがほとんどだったと思います。

それと、ここで出てくるポップアップでウイルス感染やセキュリティーというものに関しましても、基本的に英語で出ることはありませんで、日本語で出まして、それで慌ててクリックして契約してしまう。それが越境でしたということで、本人様は越境だということもあまり気がついていらっしゃらない。

お試しと思って化粧品でしたが継続でしたというのも、私が見る限りこの手口はほぼ全部日本語でして、芸能人か何かの私もこれを愛用していますみたいなことが書いてあって、それで注文したら何百円のレベルだったのですが、実は継続購入になっていましたということで、所在地がサイト上に書いていない。書いていなくて、どうも調べるとサーバー的には海外にいるぞということで越境に分類していると。

先ほど先生からおっしゃっていただいたホテルのものとか、基本的に参考資料1-3に関しても、プラットフォーマーが海外だということと、ホテルの予約先が海外だということで、プラットフォーマーの記載自体はほとんど日本語ですので、どちらかというと全く英語などでできているサイトで直接注文されるというよりは、ここに入っているもののかなりの、多分半分以上の割合は、日本語でできたサイトの越境のものと私は考えてしまっていいのではないかと思っております。

○中田座長 ありがとうございます。

実は事務局ともこの参考資料を用意していただいたときにお話をさせてもらったのですけれども、できればCCJに来ていただいて、もしプレゼンをしていただけるような機会があったらどうかなと。今日も幾つか議論も出ていますし、まさに原田委員がおっしゃっていたように、そんなに越境と日本の事業者とを区別して議論する必要性も必ずしもない部分もあるのではないか、共通する部分がある程度あるのではないかと思いますので、事務局と相談させていただいて、もしCCJにプレゼンをお願いできるようであれば考えさせていただきたいと思うのですが、よろしいでしょうか。

もう一点ありますか。前田委員、どうぞ。

○前田委員 原田委員がおっしゃっているのもまさにそのとおりだと思います。基本的にここに事例で上がっている部分については日本語であるというのはある意味当然のことかなと思っておりました。

ただ、それと早川先生の話をあわせると、自ら英語のサイトに飛び込んでいく人たちは4,000件の中にはそんなにいないという理解でいいのか。といいますのも、例えばそれこそ域外適用だとかほかの法律でもそうなのですが、適用されるかどうかという話になったときは日本人ないし自国の消費者をターゲットとしているかどうか。すなわち、一番分かりやすいのが典型的には言語です。特に日本語の場合は基本日本にいる人しか使わないので日本語ですという整理をされることが多いので、そことの比較で疑問に思っていたところではあったのですが、そこが分かりました。ありがとうございます。

○中田座長 それでは、とりあえず次に進行していきたいと思うのですけれども、討議資料の資料3ということで、今日終わることは今の時間的な状況から言うと難しいと思うのですが、前回論点を提示させていただいて、どういう形で報告書をまとめていくかということも含めて、それぞれの委員のところからこの問題についてということで1、2、3という形で論点を提示させていただいて、それぞれの役割をどのように考えていくかということに焦点を合わせながら役割分担といいますか、それぞれ何をしなければいけないのかという観点から少し整理させていただいているというところであります。資料には、前回、前々回に議論したところもあると思います。

事務局とも相談しながら、どういう形で皆さんの意見をいただくかということを議論しておりますが、まだちゃんと議論されていない論点もあるのではないかという御指摘でも構いませんし、この点、整理されている部分で足りないものがあるのではないかということでもいいのです。前回消費者サイドからの御発言が足りなかったのではないかという気もしていたので、ここをぜひ議論してほしい論点があるという形での御指摘でも構いませんので、もし御意見をいただければありがたいと思います。

時間が限られていますので、今日だけで終わることはないのですが、これからの議論を整理していくときの論点として、これまで議論してきた中で足りない部分等がございましたら、ぜひこの機会に御指摘をいただければありがたいと思います。

それでは、お願いいたします。1については大分議論したかもしれないですが、2、3についてはあまり十分ではなかったと思います。1も含めてで構いませんので、何かございましたら御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。

増田委員、お願いいたします。

○増田委員 消費者がトラブルに遭ったときの解決の方法として、幾つかのルートがあるかと思うのですが、例えばプラットフォームに直接申し入れる、消費生活センターに言う、自身で相手方を探すなど、いろいろなパターンがあるかと思うのです。そういうものの図式というか、分類をしていただくということは議論の中に過去あったのでしょうか。私が分からないのでお伺いしたいのですが。

○中田座長 どうでしたか。ある程度はあったと思うのですけれども。

○友行企画官 それぞれについてお話はあったかも分かりませんが、図式とかといった形での整理の仕方というような御発案はなかったかと思います。

○中田座長 それぞれがどんなメリットを持っていて、デメリットがあるのかという整理も必要かもしれないと思います。

いかがでしょうか。1のところを簡単に見ますと、例えばプラットフォームのブランド力とか安心感ですね。そういったものをどう見ていくのか。信頼という議論をしていたのですが、それに応える形でプラットフォームの責任というものの範囲を確定していくことが考えられます。今日、中国法の議論の中でも出てきたと思うのですが、何を基本的なプリンシプルという形で考えていくのか。そうしたルール形成への合意というか、共通の認識があるのかどうか。プラットフォームの形態にもよると思うのですが、そういった点の議論が必要かなと思います。

前回、取引における透明性ということが議論されたと思うのですが、その具体的なルールづくりが必要です。どんな場面でどういったルールが必要なのか。透明性といっても、これも座長代理からもそれだけでは説明としては十分ではないと指摘があったのですが、ただ、それを一つのプリンシプルとして使いながら具体化できる部分があるかなとは感じております。

消費者への啓発という点についてもどこまで可能なのか。つまり、先ほどの議論の中で出てきた中国法の中でも出てきたのですが、システムをどのように安全に使っていくか。その中で、消費者が選択していくプロセスがありますが、リスクのある選択をそんなにさせないような仕組みというものも必要ではないか。その限りでの説明というものが必要ではないかという議論もあるかと思います。

あと、プラットフォーム事業者が利用者に求めるものは何かという観点で、これもできれば具体的に提示していただいて、その中で消費者がどの程度それに対して応えられるのか。消費者の理解能力を超えるようないろいろな条件をつけても、それはあまり機能しないということになりますし、むしろそういったこととの調整を図っていくことが必要ではないかと思います。

3つ目の論点は、生命・身体ですね。財産に対する安全というものを今までの現行法の中で規定を使うだけで、それで済むのか。むしろそうではなくて、より具体的な規定というものが望ましいのかどうかという論点があるのかなと思います。それを支えるシステムとして認証制度などについて、トラストマークというところで、この間、議論しましたが、そういうものもシステムの中に組み込んでいく必要があるかどうかも問題になるのではないかと思われます。

紛争解決の手段については、オンラインODRもあるのですけれども、我が国では消費生活センターがありますので、消費生活センターがどのような機能を今後担っていく必要があるのかという議論もその中で必要になるように思います。

また、消費生活センターが紛争を解決していくときに、例えば本人を確認していく必要性があるというときに、オンラインプラットフォーマーがそうした情報をどのように提供していくのか。その前提として、本人の同一性をどう確認するのかというルールづくりというものも必要になるのかどうか。特にCtoCが主体となる取引である場合に、それをプラットフォーマーが支えていくというシステムをつくっているときには、そういった問題もきちっと議論しておく必要があるのかなと考えています。

それに関連して、行政、事業者、消費者団体というのが、こういったプラットフォームにおけるルールをどのように形成していくのかという問題も重要な論点として指摘できると思っております。

ただ、今お話ししたところは部分的なものです。気づいていない論点、あるいはそれに派生する論点、あるいはもうちょっと大きな問題として議論すべきであるということがございましたら御指摘をいただき、それを議論にぜひ反映させて今後の検討につなげていきたい。このように考えております。

片岡委員、お願いします。

○片岡委員 今のお話を聞いていて1点思ったのは、3番のところで、特にCtoCの紛争解決に当たって課題になりやすいこととして、CとCの紛争があったときに、お互いの個人情報をどこまで、誰に開示していいのかが不明確な場合があり、そこに消費生活相談員が入った場合にも、どこまでの、どういう情報を相談員に提供していいのかが悩ましいところがあります。紛争解決に当たっての情報の取扱いという点も、議題として上げていただくといいのではないかと思いました。

○中田座長 ありがとうございます。非常に重要な観点ではないかと思います。

どうぞ。

○早川座長代理 積み残った問題ということではないのですが、これまでずっとお話をいろいろ聞いていたり、あるいは今日自分なりに報告をまとめたりする中で非常に問題だなと思ってきたのは、例えば今日アメリカの紹介をする中で、eBayでODRというのがどういう役割をしているのかというところで、むしろ消費者はODRというものがついているプラットフォーマーだから、より希求力があるという傾向があったりすることがあるとすると、日本はそういう状況になっていないというところが一つ問題です。

別にこれはODRに限るわけではないのですが、優良なサービスをしているという御紹介がこれまでにもあって、ただ、優良なサービスをしているから消費者に選ばれているのかというと必ずしもそうではなかったりして、むしろ消費者は単に価格とかというところで購買行動をしてしまっていて、怪しいところにひっかかったりして、そうなってくるとどこかに泣きつく。でも、泣きつくところもよく分からない。そういう状態が今の日本のような状況に思っています。そうだとすると、プラットフォーマー側もこんなに頑張っているのに何でという感じもあるし、そこら辺にもどかしさを、話を聞いていて思ったような気がします。

その意味において、前回も出てきましたけれども、どうやって今スタックしている状態をうまく回るような状態に持っていくかというのが重要で、例えば今単純にトラストマークを導入したとしても、人々はそのトラストマークというものに購買行動をするときにあまり重きを置かない。今の状況でトラストマークを導入しても多分ワークしなくて、かつて省庁等で導入してもうまくいかなかったのと同じことがまた起こる可能性があるので、そこの仕組みというのは、法律をつくるというものよりももう少し大きなところで考えなくてはいけないところがあるのかなとは思っている次第です。

その意味で、2番のオンラインプラットフォーム事業者、利用者には、優良なプラットフォーム事業者であればあるほど賢い消費者であってほしい、自分たちがこんなにやっているのであればそこに対して評価してやってほしいと思っているのではないかと思います。

また、3番についても、例えば消費者団体も、前回そういうことを申し上げてしまったのですが、トラストマークみたいなものを含めてどのように行動すれば自分たちの権利を守ることができるのかを意識した賢い消費者をこれからどうやって育てていくのかというのが課題ですし、事業者団体もそれにどう協力していくか。あるいは行政は、例えばヨーロッパの状況も、ODRとの関係で言うと、結局笛を吹いても踊らないので規制をつくって、EUレベルで同じような先ほど御紹介のあったようなプラットフォームをつくって、そこにリンクを義務づけさせるということを外部から注力することによってその状況を変えようしているわけです。

そのような取組は今の日本の状況だとせざるを得ないのかなとも思いまして、その辺が今の私自身1、2、3で考えたときに、日本の状況と課題みたいなところとして浮かび上がってくることなのかなと思って聞いておりました。

○中田座長 ありがとうございました。

私も同じような印象を持っているところがありまして、どういうところを変えていくことによってプラットフォームという新たな市場をしっかりと社会に安定させて、私たちの経済により貢献するような形に持っていけるのか。他方で、個々の消費者の権利がないがしろにされていいということでは絶対にいけないので、消費者の権利を守りながら発展させていくことが必要ではないか。そういう意味で、紛争解決の在り方というのは非常に大事な部分であろうと思っています。

ぜひこの機会に、ほかにいかがでしょうか。

西村委員、お願いします。

○西村委員 オンラインの契約について、消費者センターがなかなか介入できていないとか、活躍できていない部分は、先ほども少しお話がありましたように、情報自体がプラットフォームの側にあるので、それをお出しくださいとお願いするという話から始まっている部分があります。どこまで個人情報をお伝えするかみたいな話もまたありましたけれども、消費者センターが仲裁機関として機能するためには、情報をいただいた上でお話ができる土台というものがないと難しいかなと思っています。

○中田座長 早川座長代理、どうぞ。

○早川座長代理 その意味で、例えばアメリカでプラットフォーマー自身がODRを組み込んでいるところはそこにも実はメリットがありまして、つまり、購入する段階で万が一トラブルがあった場合に、どういう紛争解決になるかまで決めている。しかも、そこでは当然情報自体は紛争解決にも自分の個人情報は使われることにも同意しているので、その意味でその問題について悩まなくて済むわけです。

というよりも、実務的にもうちょっと言うと、紛争解決とか苦情のためにわざわざ何かをつくる必要すらなくて、自分の情報は購入のときに全部入れていますので、それが紛争解決のための申し立てのフォームに自動的に書き込まれてそのまま先へ進んでいくわけですから、今の点などは先ほど御紹介したプラットフォーマーがODRを組み合わせるというところでは実は解決しているというところは注目すべきだと思います。

○中田座長 今の点、どうですか。事業者サイドとしては、そういった形の組み込みは望ましいと今の時点では考えておられるのか。また全然違う考え方を持っておられるのか、少しお聞かせいただけるとありがたいと思うのですが。

片岡委員、お願いします。

○片岡委員 もちろん、使いやすく、大きな追加コストがかかるわけではなく、役に立つものであれば導入する可能性はあると思いますけれども、今のところまだそういう仕組みがしっかりしているわけではないので、どうかというところです。

ただ、御指摘のあったとおり、今はこの仕組みが中に組み込まれているわけではないので、この方がどこまで、誰に同意をとったかというのは確認しないと分からないことです。ですので、相談員の方から連絡があったときに、即座にここまでの情報を伝えていいのかというのが分からないので、やりとりが何度も起きてしまうという課題はあります。

○中田座長 もしよければ、上村委員、お願いします。

○上村委員 先ほど、eBayの取組で、AIで90%のODRが解決しているという話があったのですが、そういった仕組みがつくれるのであれば、そういったものも入っていいのかなと思っております。

メルカリでは現在購入者と出品者の間でトラブルがあったときに介入はしているのですが、完全にカスタマーサポートの人が入って話を聞いているみたいなところで、結構長期化するところもあるので、そういった割と定型的なものであればシステムでできるというのもあるといいなとは思っております。

○中田座長 畠委員、お願いします。

○畠委員 ODRについては先ほどの片岡委員と同じなのですけれども、コストとか合理的な仕組みになっているのであれば、その可能性はあるのではないかとは思っています。

○中田座長 片岡委員にもお話しいただいたのですけれども、そういったシステムを利用するときに、紛争解決の手段として消費者センターが当然あるわけで、そうすると、事業者側であらかじめ、利用者との間で紛争になったときにはこういう情報を提供しますという合意を約款その他で定めることは十分可能なのでしょうか。それとも、そういうことはビジネスモデル上できないということなのでしょうか。どうなのでしょうか。

畠委員、お願いします。

○畠委員 観点が変わるかもしれないのですけれども、消費者と事業者の境目にあるけれども、やや事業者寄りの方々が、一般の公衆に対して自分の氏名や住所を公開しなければいけないというルールよりは、消費者相談センターの方々に対してだけ開示する仕組みのほうがまだ合理的なのではないかと思います。

○中田座長 いかがでしょうか。

上村委員、どうぞ。

○上村委員 今の畠委員の意見には賛成です。

○中田座長 ありがとうございます。

早川座長代理、どうぞ。

○早川座長代理 先ほどeBayとAIと90%という話があったと思うのですけれども、多分2層とか3層モデルになっていて、1層目は本当にコンプレインハンドリングやネゴシエーションで、ここは多分AIなどと言わないで、今の技術で十分に相手方の苦情をある種テンプレートでまとめて、それを向こうにやって、それが受け入れ可能かどうかというものを交換させるみたいなところはできていると思いますし、それをよりソフィスティケートした形で行うというのはコストもかからないし、多分可能なのではないかと思うのです。

そこで解決できなかったところで、さらに人が入ってくるなり、あるいは将来的にはAIみたいなものでどこまでできるかというところが考えられているということなので、最初から全部AIか人かみたいな話ではなくて、もう少し原始的なレベルから、最初に簡単なITで簡単に解決できるものは除いておいて、残ったところでという形にしていくと、全体にかかるコストはそれほどかからないというところまで達成できるのではないかと思うので、ODRだったら、中身のところもより細かく見ていったほうがいいように思います。

○中田座長 ありがとうございます。


≪4.閉会≫

○中田座長 それでは、時間が来ておりますので、最後に何か全体について御発言したいという方がおられましたら、いかがでしょうか。

では、全体的な議論の方向が既に収れんしたということでは全然ないと思いますので、次回もまた検討していきたいと考えています。役割分担の考え方をどのように整理していくかというのが大きな視点となります。次回もそれを軸にしながら引き続き討議を進めていくことにします。またこの整理については、いずれ事務局から資料を提供していただけることになると思います。

以上をもちまして、本日は閉会とさせていただきます。

お忙しいところ、長時間にわたり、どうもありがとうございました。

(以上)